JP4083036B2 - チタニアナノ微結晶膜とこのパターンを備えた物品並びにその製造方法 - Google Patents

チタニアナノ微結晶膜とこのパターンを備えた物品並びにその製造方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
この出願の発明は、チタニアナノ微結晶膜とこのパターンを備えた物品並びにその製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来より、チタニアのもつ光触媒活性や超親水性等の特性が注目されており、チタニアそのものからなる薄膜とともに、シリカとチタニアを主成分とするチタニア分散膜(SiO2−TiO2系膜)といった、チタニアを含有する薄膜を用いた、浄化、抗菌、防汚等の各種の機能を有する物品の開発が進められ、実用化されている。
【0003】
この出願の発明者らは、以上のようなチタニア薄膜の優れた特性とその広い応用の可能性に注目して、すでに、チタニアアナターゼ微結晶膜からなる高光触媒活性の、超親水性の透明性薄膜を開発し、実用技術として提示している。
【0004】
この技術についてさらに発展させることを発明者らは努めてきているが、発明者らが提示したチタニアアナターゼ微結晶薄膜は、高い光触媒活性を示すものの、光触媒反応の反応選択性がなく、接触しているほとんどの有機物を分解してしまい、基板へ撥水性など機能性を付与するために使用される有機物なども、光分解させてしまうという特徴がある。
【0005】
この光触媒機能を応用展開していく上では、基板上へ、光触媒機能などの機能を有する場と、光分解されない他の機能を有する有機物の場を、任意な部位・形状で、パターニングさせることも望まれているところである。
【0006】
そこで、発明者らは、光活性チタニアアナターゼ微結晶薄膜のパターン形成技術について、シリコンアルコキシド、チタニウムアルコキシド、β−ジケトンから得られる複合金属酸化物ゲル膜へ、フォトマスクを通してUV照射し、照射部を硬化させた後、非照射部をエッチングし、ついで温水処理して、非照射部表面にチタニア微結晶を析出させる方法を新たに開発し、これを提案している(特許出願1)。
【0007】
ただ、この新しいチタニア微結晶膜においては、エッチング処理が欠かせないことが実際的には改善されることが望ましい点としてあり、また、チタニア薄膜への各種機能の付加を容易とするとの点においてはさらなる工夫の余地があった。
【0008】
【特許出願】
特願2002−237606号
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
そこで、この出願の発明は、発明者らの提案したチタニア微結晶膜とその製造方法についてさらに発展させるべく検討を進め、エッチング処理を必要とすることなく、実用的な製造プロセスとして簡便であって、各種の機能付与の点においても可能性の大きな、新しいチタニア膜とその製造方法を提供することを課題としている。
【0010】
【課題を解決するための手段】
この出願の発明は、上記の課題を解決するものとして、第1には、オルガノシルセスキオキサン−チタニア膜の部位とともにチタニアナノ微結晶膜の部位とを基板表面に有していることを特徴とするチタニアナノ微結晶膜を提供し、第2には、チタニアナノ微結晶膜の部位が所定の平面配置パターンとして配設されていることを特徴とするチタニアナノ微結晶膜を、第3には、オルガノシルセスキオキサン−チタニアは、その組成が、次式
〔RSiO3/2x〔TiO2y
(Rは置換基を有していてもよい炭化水素基を示し、xおよびyは組成比を示し、0<x<100、0<y<100であって、x+y=100であることを示す)
で表わされることを特徴とするチタニアナノ微結晶膜を提供する。
【0011】
そして、この出願の発明は、第4には、基板上のオルガノシルセスキオキサン−チタニア膜に光照射し、次いで温水処理することによりチタニアナノ微結晶を析出させることを特徴とするチタニアナノ微結晶膜の製造方法を提供し、第5には、部位選択的な光照射を行い、所定の平面配置パターンとしてチタニアナノ微結晶を析出させることを特徴とするパターン化されたチタニアナノ微結晶膜の製造方法を、第6には、フォトマスクの使用、レーザー光の照射あるいは光学的集光処方により部位選択的な光照射を行うチタニアナノ微結晶膜の製造方法を、第7には、オルガノトリアルコキシシランとβ−ジケトンで修飾したチタニウムアルコキシドとのゾルゲル反応によりオルガノシルセスキオキサン−チタニア膜を生成することを特徴とするチタニアナノ微結晶膜の製造方法を、第8には、上記の製造方法において、オルガノシルセスキオキサン−チタニアは、その組成が、次式
〔RSiO3/2x〔TiO2y
(Rは置換基を有していてもよい炭化水素基を示し、xおよびyは組成比を示し、0<x<100、0<y<100であって、x+y=100であることを示す)
で表わされることを特徴とするチタニアナノ微結晶膜の製造方法を提供する。
【0012】
また、この出願の発明は、第9および第10には上記いずれかのチタニアナノ微結晶膜を備えていることを特徴とする物品、もしくは上記いずれかの製造方法により製造されたチタニアナノ微結晶膜を備えていることを特徴とする物品を提供する。
【0013】
【発明の実施の形態】
この出願の発明は上記のとおりの特徴をもつものであるが、以下にその実施の形態について説明する。
【0014】
この出願の発明は、発明者によって得られた、オルガノトリアルコキシシランと、あらかじめβ−ジケトンで化学修飾したチタニウムアルコキシドから、ゾルゲル法で得た、オルガノシルセスキオキサン−チタニア(RSiO3/2・TiO2)膜は、これにUV照射し、さらに温水処理することにより、チタニアアナターゼ微結晶膜となることが初めて、見出され、これが光触媒活性を示すことや、さらに、フォトマスクなどを介し、UV照射し、温水処理することでチタニアアナターゼ微結晶薄膜のパターン化が可能であるとの知見に基づいて完成されている。
【0015】
発明者らが先に特許出願した技術に比べて、特徴的なことは、非照射部には、RSiO3/2−TiO2膜が残っており、このR(種々の置換基)により、種々の機能を与え得ることが可能であること、さらに、エッチング操作の必要がなく、工程簡略化されること等の優れた特徴を有していることである。
【0016】
この発明技術は、光触媒活性部と、例えば撥水部を微細にパターニングでき、双方の機能を有効に活用できるなど、光触媒活性機能と、他の有機物機能を兼ね備えた多機能性薄膜を提供するものとして、今後の光触媒活性薄膜の応用展開に際して有意な技術である。
【0017】
この出願の発明の製造方法について説明すると、その概要は図1のように、オルガノシルセスキオキサン−チタニア(RSiO3/2−TiO2と略記)の薄膜に光照射し、次いで沸とう水等の温水により処理し、光照射された部位においてチタニアナノ微結晶を析出させる。これによってチタニアナノ微結晶を形成する。
【0018】
この方法においては、オルガノシルセスキオキサン−チタニアは、その組成は、前記のとおりの
〔RSiO3/2x〔TiO2y
で表わすことができるものである。もちろん、この組成には、原料に由来するもの等の不可避的不純物の混入が許容されることは言うまでもない。
【0019】
前記式における符号Rは、置換基を有していてもよい炭化水素基であって、この場合の炭化水素基としては、鎖状あるいは環状のいずれでもよく、また、飽和あるいは不飽和のいずれでもよい。具体的には、この炭化水素としては、メチル基、エチル基、プロピル基等のアルキル基やビニル基等のアルケニル基、フェニル基、トリル基等のアリール基などが例示される。また置換基としては、ハロゲン原子をはじめ、許容される各種のものであってよい。たとえば前記Rとしては、Cn2n+1のパーフルオロアルキル基等が例示される。
【0020】
符号Rとしての有機基にどのようなものを用いるかによって、製造された薄膜にはチタニアに由来する以外の各種の機能を付与することや、チタニア由来の機能をより相乗的に高めることなどが可能となる。
【0021】
オルガノシルセスキオキサン−チタニア膜については、たとえば、オルガノトリアルコキシシラン:RSi(OR13(Rは前記のものを示し、R1は同一または別異の炭化水素基を示す)と、β−ジケトンで修飾したチタニウムアルコキシド:Ti(OR24(R2は同一または別異に炭化水素基を示す)とのゾルゲル反応によって基板上に生成させることができる。この場合のβ−ジケトンについては各種のものから選択されてよく、たとえばアセト酢酸エチル等が代表的なものとして示される。このβ−ジケトンによる修飾は、チタニウムアルコキシドとの混合によって可能とされる。
【0022】
ゾルゲル反応については、たとえばオルガノトリアルコキシシラン:RSi(OR13のアルコール液酸性水を添加し、その後、チタニウムアルコキド:Ti(OR24とβ−ジケトンとのアルコール混合液を添加することにより実施することができる。
【0023】
この際の溶液のモル比については、RSi(OR13:Ti(OR24:H2O(酸性)=1:0.5〜1.5:2〜6、Ti(OR2):β−ジケトン=1:0.5〜2を目安とすることができる。
【0024】
反応後には室温(15〜25℃)で乾燥し、その後80〜110℃程度の温度で0.5〜1.5時間程度加熱処理することが好ましい。
【0025】
そして、この出願の発明のチタニアナノ微結晶膜は、部位選択的な光照射を行なうことで、温水処理後に所定の平面配置パターンにチタニアナノ微結晶が析出されたものとすることができる。この場合の部位選択的な光照射では、フォトマスクの使用、レーザー光の照射、あるいは光学的集光処方等によりパターニングを行うことができる。図2は、フォトマスクを使用した場合について例示したものである。
【0026】
この出願の発明では、RSiO3/2−TiO2膜(R=ビニル、メチル、エチル、フェニル基等)をそのまま温水処理してもチタニア結晶は、ほとんど析出しないが、紫外光照射して、一部SiO2−TiO2膜にして、さらに温水処理を行うことでアナターゼナノ微結晶を析出させる。
【0027】
図2に示したように、マスクを介して紫外光照射を行えば、RSiO3/2−TiO2膜上の所望の箇所に、選択的にアナターゼ微結晶を析出させることができる。
【0028】
また、温水処理中に振動などの外部刺激を与えれば、チタニアナノシート微結晶も析出させることができる。
【0029】
得られた、チタニアナノ微結晶パターンを備えた基板は、RSiO3/2有機官能基Rの効果によって撥水性などの機能と、チタニア微結晶による超親水性や光触媒活性などの機能を併せ持つことになる。
【0030】
温水処理については、好ましくは80℃以上の温水が用いられるが、沸とう水による処理とすることがより好ましい。この処理では、温水中への浸漬、温水の噴霧、温水の流下等の各種の手段を採用することができる。
【0031】
そこで以下に実施例を示し、さらに詳しくこの出願の発明について説明する。もちろん以下の例によって発明が限定されることはない。
【0032】
【実施例】
<1> (100−x)RSiO 3/2 ・xTiO 2 ゾルの調製および試料の作製方法
図3には(100−x)RSiO3/2・xTiO2ゾルの調製およびコーティング膜の作製方法を示した。
【0033】
有機官能基Rとしては、メチル基(R=Me)、エチル基(R=Et)、ビニル基(R=Vi)を選択し、原料オルガノトリアルコキシシラン(RSi(OR13)として、MeSi(OEt)3、EtSi(OEt)3、ViSi(OEt)3(信越化学工業製)を用いた。所定量のこのオルガノトリエトキシシラン:RSi(OEt)3をエタノール:EtOHと混合し、5分間攪拌した後、0.1wt%の希塩酸(和光純薬特級)を加え、1時間加水分解・重縮合を行った後、アセト酢酸エチル(CH3CH2COCH2COCH3、キシダ化学株式会社製、以下EAcAcと略す)およびEtOHと1時間攪拌したチタンテトラノルマルブトキシド(Ti(O−nBu)4、和光純薬特級)溶液を加え、さらに1時間攪拌することにより、(100−x)RSiO3/2・xTiO2ゾルを調製した。溶液組成はモル比で、〔RSi(OEt)3+Ti(O−nBu)4〕:H2O(in HCl solution):EtOH=1:4:1、Ti(O−nBu)4:EAcAc=1:1とした。このゾルを用いて、石英ガラス、あるいはシリコン基板上にディップコーティングを行い、(100−x)RSiO3/2・xTiO2膜を作製し、室温で40分間乾燥後、種々の温度で1時間熱処理を行った。その後、超高圧水銀灯を用いて種々の時間紫外光照射を行った。さらに、ビーカーに純水を用意し約100℃まで加熱した後、コーティング膜を所定の時間浸漬させることにより試料を得た。
<2> 温水処理方法
試料を500ml用ビーカー中に入れた約500mlの温水(約100℃)中に浸し、スターラーで攪拌しながら温水処理を行った。
<3> ViSiO 3/2 −TiO 2 系膜について
RSiO3/2−TiO2系膜に紫外光照射を行うことにより、アモルファス状態のTiO2による光触媒反応が起き、有機官能基Rが脱離する。つまり、紫外光照射後のゲル膜には、有機官能基と結合している三官能のSiと四官能のSiが存在していることになる。一方、発明者らは、すでに、SiO2−TiO2系膜を温水処理することよりアナターゼナノ微結晶の析出に成功しているが、RSiO3/2−TiO2系膜の温水処理では、チタニアナノ微結晶はほとんど生成しない。このことにより、紫外光照射を行ったRSiO3/2−TiO2系膜では、膜の構造が部分的にSiO2−TiO2となり、温水処理することにより膜表面にTiO2ナノ微結晶が析出すると考えられる。
【0034】
すなわち、SiO2−TiO2系膜を温水処理すると、膜中のSi−O−Ti結合が加水分解され、Ti−OH基が生成する。その後、生成したTi−OH基を有する化学種が水に溶解したまま膜表面へと拡散する。溶解しているTiO2種の濃度が過飽和に達して、TiO2種の再析出が起こり、アナターゼナノ微結晶が生成すると考えられる。
【0035】
さらにマスクを介して紫外光照射を行う、あるいは紫外光レーザーで選択的に光照射を行えば、膜表面の所望の箇所に、選択的にアナターゼナノ微結晶を析出させることが可能になる。
【0036】
実際に、紫外光照射有り、無しの80RSiO3/2・20TiO2膜の温水処理によるIRスペクトルを測定することにより、温水中での構造変化について検討を行った。
【0037】
図4(a)は紫外光を1時間照射した80ViSiO3/2・20TiO2膜の、図4(b)は未照射の80ViSiO3/2・20TiO2膜の種々の温水処理時間におけるIRスペクトルを示したものである。
【0038】
図4(a)より、温水処理時間の増加に伴い900cm-1付近のSi−O−Ti結合に帰属されるピーク強度が減少しており、SiO2−TiO2系膜と同様に、Si−O−Ti結合が加水分解され、開裂していることがわかる。また、1100cm-1付近のSi−O−Si結合に帰属されるピーク強度も減少している。これは、Si−O−Ti結合が加水分解された後、シリカ成分が水中へ溶出したためであると考えられる。これらの構造変化は4時間の温水処理でほぼ完了しており、4時間以降のIRスペクトルに大きな変化は観察されなかった。
【0039】
一方、図4(b)においても同様にSi−O−Ti結合とSi−O−Si結合に帰属されるピーク強度が減少しており、加水分解されていることがわかる。こちらのスペクトルでは、4時間以降もSi−O−Ti結合に帰属されるピーク強度は減少していた。ここで図4(a)と図4(b)を比較すると、3400cm−1付近のOH基に帰属されるバンド強度が、紫外光照射した80ViSiO3/2・20TiO2膜では強いことがわかる。すでに温水処理前の段階で、未照射の膜よりも強く、温水処理に伴いさらに増加している。80ViSiO3/2・20TiO2膜では紫外光照射により膜表面にSi−OH基が増加するため、水に対する接触角が大きく低下することがわかっている。このため、さらに温水処理を行うことにより、接触角が低い紫外光照射したゲル膜は加水分解されやすく、膜表面および膜内部でSi−OH基、Ti−OH基が生成しやすいと考えられる。
【0040】
図5には、紫外光を照射しなかった場合と1時間照射した場合の80ViSiO3/2・20TiO2膜の種々の温水処理時間における膜表面FE−SEM観察像を示した。
【0041】
FE−SEMの観察としては、ゲル膜の表面および断面観察を、電界放射型走査電子顕微鏡(S4500型 日立製作所、以下FE−SEMと略す)を用いて行った。試料はダイヤモンドカッターを用いてSi基板ごと割って、表面および破断面を得た。試料は銀ペーストを用いて試料台に付着させ、真空デシケーター中で約30分間真空乾燥させた後、クイックコーター(ULVAC VPS−020)を用いて白金スパッタを行った。
【0042】
以上のFE−SEMの観察によれば、温水処理前の膜表面は滑らかであり、析出物は全く観察されないが、1 時間温水処理することにより、析出物がわずかに膜表面上に確認される。温水処理時間が増加しても、この析出物の量はほとんど変化していないことがわかる。一方、1時間紫外光照射を行った80ViSiO3/2・20TiO2膜は、1時間の温水処理により析出物としてのアナターゼナノ微結晶が膜表面全体に確認でき、4時間以上の温水処理によりさらに増加していることがわかる。紫外光未照射の膜と比較すると、析出物の形状は粒状であり、一つ一つが大きく成長していることがわかる。
【0043】
紫外光照射を行った80ViSiO3/2・20TiO2膜を温水処理することにより、膜表面に多量のアナターゼナノ微結晶が析出することが確認されたことから、アナターゼナノ微結晶の析出に伴うゲル膜の特性変化について検討を行った。
【0044】
まず図6に、紫外光未照射と、1時間照射した80ViSiO3/2・20TiO2膜の温水処理時間に伴う硬度変化を示した。温水処理時間の増加に伴い、照射したゲル膜でのみ大きな硬度増加が起こっていることがわかる。これは膜表面にアナターゼナノ微結晶が析出したためであり、初めは析出量が少なく硬度増加は小さいが、徐々に析出量が増したために著しく増加したと考えられる。一方、照射していないゲル膜では析出量が微量であるため、硬度増加はほとんど起こらなかった。
【0045】
図7には、1時間紫外光照射した80ViSiO3/2・20TiO2膜の種々の温水処理時間におけるUV−VIS透過スペクトルを示した。温水処理を行ったゲル膜でも、高い光透過率を有していることわかる。また、温水処理に伴い、吸収端が長波長側へシフトしていることが確認できる。これはアナターゼナノ微結晶が析出したことによるものである。
【0046】
有機官能基(R)がビニル基(Vi)以外のものについても検討を行った。その結果を、図8および9に示した。メチル(Me)基、エチル(Et)基の場合もビニル(Vi)基の場合を同様に、紫外光照射によってSi−C結合が切断されることと、照射後温水処理によってアナターゼナノ微結晶が析出することがわかる。
【0047】
図10には、Me系膜、Et系膜、そしてVi系膜に析出したアナターゼナノ微結晶による光触媒活性の評価結果をメチレンブルー:MBの光分解反応の経時変化を示した。この触媒活性の評価では、メチレンブルー4水和物(C16183S・C14・H2O、和光純薬工業製、以下MBと略す)を用いて1×10-5MのMB水溶液を調製し、パイレックス(登録商標)(登録商標)ガラスセル中に一定量(2.0g)入れ、片面に膜をコーティングした無アルカリ基板を挿入した。コーティング面積は1.0cm2に統一した。次に、色ガラスフィルター(UV−33、東芝硝子株式会社製)を用いて、300nm以下の光をカットした紫外光を基板の裏側から照射し、その際のMB水溶液の濃度変化を紫外可視吸収スペクトルより求め、光触媒活性の評価を行った。
【0048】
対象とした組成は80RSiO3/2・20TiO2膜であり、80SiO2・20TiO2膜の結果も示した。アナターゼナノ微結晶の析出条件は同じとし、紫外光照射は1時間、温水処理時間は4時間とした。温水処理後の膜厚は、Me系膜で約0.7μm、Et系膜で約0.65μm、Vi系膜で約0.8μmであった。80SiO2・20TiO2膜は2時間の温水処理時間を行い、膜厚は150nmであった。図10の結果より、どの系膜でも吸着がほとんど起こっていないことがわかる。3種類の系膜において、Vi系膜の光触媒活性が最も高く、SiO2−TiO2系膜とほぼ同じ値となっているが、Et系膜、Me系膜はVi系膜に比べわずかに低いことがわかった。これは1時間の紫外光照射、4時間の温水処理という条件では、Vi系膜において最も多くアナターゼナノ微結晶の析出が起き、Me系膜では析出が起こりにくく、析出量が少ないためだと考えられる。
【0049】
また、図11および図12には、1時間紫外光照射した後、4時間温水処理を行った80ViSiO3/2・20TiO2膜のTEM観察像を示した。膜断面のFE−SEM観察像からは、1時間の温水処理により、膜表面にのみ微結晶の析出が確認でき、膜内部には析出していない。高分解能の写真(図12)からは、格子間隔が0.35nmであり、膜表面の析出物はアナターゼナノ微結晶であることが判明した。また、アナターゼナノ微結晶は膜表面にしか析出しておらず、膜内部は均質なアモルファス状態であることも確認できた。この結果より、80ViSiO3/2・20TiO2膜の温水処理による析出物はアナターゼナノ微結晶であると判断され、紫外光照射を行ったViSiO3/2−TiO2系膜を温水処理することにより、多量のアナターゼナノ微結晶を生成させることが可能であることが確認された。
<4> マイクロパターンの作製
これまでの結果より、紫外光を照射していないRSiO3/2−TiO2系膜を温水処理しても微量のアナターゼナノ微結晶しか析出しないが、紫外光照射後に温水処理することにより、膜表面のSi−OH基が増加し、多量のアナターゼナノ微結晶が析出することがわかった。
【0050】
そこで、300℃で熱処理した後、フォトマスクを介して2時間紫外光照射した80MeSiO3/2・20TiO2膜の3次元表面粗さを見ると、フォトマスクの開口部は40×40μmであり、ピッチは140μmである。紫外光照射部はネットワーク構造の緻密化が起こっており、膜厚約0.6μmに対して約60nm減少していることがわかった。
【0051】
また、300℃で熱処理した後、フォトマスクを介して2時間紫外光を照射し、さらに2時間温水処理した80MeSiO3/2・20TiO2膜の紫外光照射部と未照射部のFE−SEM観察像によると、紫外光照射部においてアナターゼナノ微結晶が一様に分散していることがわかる。
【0052】
図13には、(a)フォトマスクを介して1時間紫外光を照射したもの、(b)その後4時間温水処理した80MeSiO3/2・20TiO2膜のAFM観察結果を示した。UV照射後、光照射部分は、Si−C結合の切断によって約35nm収縮して凹んでいる。一方、温水処理4時間後は、光照射部分は、周りよりも180nm程度高くなっている。これは、アナターゼが析出したことと、未照射部分が、温水処理中にわずかに溶解したためであると考えられる。以上の結果より、フォトマスクを介して紫外光照射を行うことにより、温水処理後のゲル膜の表面にはアナターゼナノ微結晶の析出量が大きく異なるパターニングが可能となることがわかった。
【0053】
作製したパターンにおいては、照射部と未照射部でアナターゼナノ微結晶の析出量が大きく異なるため、特性の違いは生じる。300℃熱処理後、2時間の紫外光照射有り、無しの80MeSiO3/2・20TiO2膜の温水処理時間に伴う水に対する接触角の変化を見ると、300℃熱処理後の紫外光照射により、接触角は20°程度低下しており、メチル基が脱離し、Si−OH基が生成していることが確認できる。また、2時間の温水処理後により、紫外光照射した膜は32°、紫外光照射していない膜は88°に低下しており、照射部と未照射部の接触角差が56°であるマイクロパターンが形成可能であると判断される。
【0054】
このパターンでは、照射部では析出量が多く、未照射部では析出量が少ないため、選択的に光触媒活性を抑制したパターンが可能であるし、照射部と未照射部で接触角が大きく異なるため、濡れ性を応用したマイクロパターンの作製にも応用可能であると考えられる。
【0055】
【発明の効果】
以上詳しく説明したとおり、この出願の発明によって、発明者らがすでに提案したチタニア微結晶膜とその製造方法についてさらに発展させるべく検討を進め、エッチング処理を必要とすることなく、実用的な製造プロセスとして簡便であって、各種の機能付与の点においても可能性の大きな、新しいチタニア膜とその製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】この出願の製造方法についてその概要を示した工程図である。
【図2】フォトマスクを使用したパターニングについて概要を示した工程図である。
【図3】実施例としての工程手順を示した図である。
【図4】紫外線照射の有(a)無(b)による温水処理時間毎のIRスペクトルを例示した図である。
【図5】紫外線照射の有無にともなう温水処理時間毎のFE−SEM観察像を例示した図である。
【図6】紫外線照射の有無にともなう温水処理時間毎の硬度を例示した図である。
【図7】1時間紫外光照射の沸とう水処理時間毎の透過スペクトルを例示した図である。
【図8】種々のUV照射時間におけるSi−C結合に帰属されるピークの強度を例示した図である。
【図9】1時間UV照射した後の温水処理時間毎のFE−SEM観察像を例示した図である。
【図10】1時間UV照射した後の膜を浸漬させたMB溶液のUV照射による濃度変化を例示した図である。
【図11】UV照射1時間と温水処理2時間後の膜全体のTEM観察像を例示した図である(膜表面にのみ析出物:アナターゼが観察される)。
【図12】膜表面の析出物の高分解能TEM観察像を例示した図である(アナターゼ0.35nm格子が観察される)。
【図13】(a)マスクを介して1時間UV照射と(b)その後の4時間の温水処理を行った場合のAFM観察結果を例示した図である。

Claims (10)

  1. オルガノシルセスキオキサン−チタニア膜の部位とともにチタニアナノ微結晶膜の部位とを基板表面に有していることを特徴とするチタニアナノ微結晶膜。
  2. チタニアナノ微結晶膜の部位が所定の平面配置パターンとして配設されていることを特徴とする請求項1のチタニアナノ微結晶膜。
  3. オルガノシルセスキオキサン−チタニアは、その組成が、次式
    〔RSiO3/2x〔TiO2y
    (Rは置換基を有していてもよい炭化水素基を示し、xおよびyは組成比を示し、0<x<100、0<y<100であって、x+y=100であることを示す)
    で表わされることを特徴とする請求項1または2のチタニアナノ微結晶膜。
  4. 基板上のオルガノシルセスキオキサン−チタニア膜に光照射し、次いで温水処理することによりチタニアナノ微結晶を析出させることを特徴とするチタニアナノ微結晶膜の製造方法。
  5. 請求項4の方法において、部位選択的な光照射を行い、所定の平面配置パターンとしてチタニアナノ微結晶を析出させることを特徴とするパターン化されたチタニアナノ微結晶膜の製造方法。
  6. フォトマスクの使用、レーザー光の照射あるいは光学的集光処方により部位選択的な光照射を行う請求項5のチタニアナノ微結晶膜の製造方法。
  7. 請求項4ないし6のいずれかの製造方法において、オルガノトリアルコキシシランとβ−ジケトンで修飾したチタニウムアルコキシドとのゾルゲル反応によりオルガノシルセスキオキサン−チタニア膜を生成することを特徴とするチタニアナノ微結晶膜の製造方法。
  8. 請求項4ないし7のいずれかの製造方法において、オルガノシルセスキオキサン−チタニアは、その組成が、次式
    〔RSiO3/2x〔TiO2y
    (Rは置換基を有していてもよい炭化水素基を示し、xおよびyは組成比を示し、0<x<100、0<y<100であって、x+y=100であることを示す)
    で表わされることを特徴とするチタニアナノ微結晶膜の製造方法。
  9. 請求項1ないし3のいずれかのチタニアナノ微結晶膜を備えていることを特徴とする物品。
  10. 請求項4ないし8のいずれかの製造方法により製造されたチタニアナノ微結晶膜を備えていることを特徴とする物品。
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