JP4121902B2 - 圧縮着火式内燃機関の制御装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、混合気を自己着火により燃焼させる圧縮着火式内燃機関の制御装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、この種の圧縮着火式内燃機関の制御装置として、例えば特許文献1に開示されたものが知られている。この内燃機関では、吸気弁および排気弁の開弁および閉弁タイミングがそれぞれ可変に構成されている。また、この制御装置では、自己着火の発生タイミングが、内燃機関の圧縮行程の開始時における作動ガスの温度が高いほどより早くなるという関係にあることに着目し、この自己着火の発生タイミングを制御するために、この作動ガスの温度を制御する。具体的には、排気弁の閉弁タイミングをより早く、吸気弁の開弁タイミングをより遅く設定することによって、燃焼ガスの一部を燃焼室内に残留させる(内部EGR)。また、この残留量(以下「内部EGR量」という)を、排気管に設けられたセンサによって検出された排気ガスの温度に応じて制御することで、作動ガスの温度を制御する。これにより、自己着火を適切なタイミングで発生させることによって、ノッキングや失火を防止するようにしている。
【0003】
【特許文献1】
特開2001−289092号公報
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
上述したように、この従来の制御装置では、自己着火を適切なタイミングで発生させるために、燃焼ガスの熱を利用し、その内部EGR量を制御することによって作動ガスの温度を制御するように構成されており、燃焼ガスの温度を表すパラメータとして排気ガスの温度が用いられている。しかし、この制御装置では、排気ガスの温度を検出するセンサは、排気管に設けられており、すなわち、燃焼室から既に排出された排気ガスの温度を検出するものであるため、それによって検出される排気ガスの温度は、次回以降の燃焼によって生成され、残留する燃焼ガスの温度を良好に反映しない。このような排気ガスの検出温度と残留される燃焼ガスの温度との差は、特に、内燃機関の過渡運転時には、運転状態の変化によって燃焼ガスの温度の変化度合が大きくなるため、大きくなる傾向にある。
【0005】
このように排気ガスの検出温度が、残留される燃焼ガスの温度と異なる場合には、それに応じて内部EGR量を制御しても、圧縮行程の開始時における作動ガスの温度を精度良く制御することができない。その結果、自己着火を適切なタイミングで発生させることができず、それにより、ノッキングや失火を防止することができないおそれがある。
【0006】
本発明は、このような課題を解決するためになされたものであり、燃焼ガスの温度を適切に推定でき、それにより、推定した燃焼ガスの温度に応じて作動ガスの温度を精度良く制御することができることによって、ノッキングや失火を防止することができる圧縮着火式内燃機関の制御装置を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
この目的を達成するため、請求項1による発明は、混合気を自己着火により燃焼室3c内で燃焼させるとともに、燃焼により生成された燃焼ガスの一部をEGRガスとして燃焼室3c内に存在させるEGR装置(実施形態における(以下本項において同じ)電磁式動弁機構10)を有する圧縮着火式内燃機関3の制御装置1であって、内燃機関3は、燃焼モードを、混合気を自己着火によって燃焼させる圧縮着火燃焼モードと、火花点火によって燃焼させる火花点火燃焼モードに切換可能に構成されており、燃焼モードを圧縮着火燃焼モードまたは火花点火燃焼モードに決定する燃焼モード決定手段(ECU2、図2のステップ2)と、燃焼モードが圧縮着火燃焼モードのときに、燃焼室3c内に存在するEGRガスの量を推定するEGRガス量推定手段(ECU2、図4のステップ11)と、推定されたEGRガス量(推定EGRガス量NEGR)に応じて、混合気およびEGRガスを含む作動ガスの燃焼によって生成される燃焼ガスの温度を推定する燃焼ガス温度推定手段(ECU2、図5のステップ15,図6のステップ27,28,24)と、推定された燃焼ガスの温度(推定燃焼ガス温度TEXGAS)に応じて、燃焼室3c内に存在させるべきEGRガスの量(目標EGRガス量NTEGRCMD)を決定するEGRガス量決定手段(ECU2、図9のステップ33)と、燃焼室3c内に吸入される吸入空気の温度TAを検出する吸入空気温度検出手段(吸気温センサ23)と、を備え、燃焼ガス温度推定手段は、燃焼モードが火花点火燃焼モードのときには、検出された吸入空気の温度TAに応じて燃焼ガスの温度を推定する(図6のステップ26,28,24)ことを特徴とする。
【0008】
この圧縮着火式内燃機関の制御装置によれば、圧縮着火燃焼モード時には、燃焼後に燃焼室内に存在させられた燃焼ガスであるEGRガスの量が推定され、推定されたEGRガス量に応じて、混合気およびこのEGRガスを含む作動ガスの燃焼によって生成される燃焼ガスの温度が推定され、推定された燃焼ガスの温度に応じて、燃焼室内に存在させるべきEGRガスの量が決定される。この場合における「EGRガス」には、内部EGRによって残留させられる燃焼ガス、および排気再循環によって再循環される燃焼ガスが含まれる。このように、燃焼室内に存在(残留または再循環)するEGRガス量に応じて、このEGRガスを含む作動ガスの燃焼によって生成される燃焼ガスの温度を推定するので、燃焼ガスの温度を、EGRガスが有する熱量を良好に反映させながら、適切に予測することができる。
【0009】
また、このように予測された燃焼ガスの温度に応じて、燃焼室内に存在させるべきEGRガスの量を決定するので、これを燃焼室内に実際に存在させることとなる燃焼ガスの温度の高低に合わせて適切に設定できる。したがって、従来と異なり、燃焼ガスの温度が大きく変化する内燃機関の過渡運転時においても、その影響を受けることなく、次回の圧縮行程の開始時における作動ガスの温度を精度良く制御することができる。これにより、この圧縮行程の開始時における作動ガスの温度を、自己着火に適した温度に精度良く制御でき、それにより、ノッキングや失火を回避することができる。なお、内部EGRによってEGRガスを残留させる場合には、EGRガスとして用いる燃焼ガスの温度を直接的に推定することができるので、本発明による上述した効果をより効果的に得ることができる。また、燃焼ガスの温度を推定によって求めるので、これを検出するためのセンサが不要になり、制御装置を安価に構成することができる。
さらに、燃焼ガスの温度が、火花点火燃焼モード時には、検出された吸入空気の温度に応じて推定される。一般に、火花点火燃焼モード時には、点火プラグによって混合気が点火されるため、圧縮着火燃焼モード時と異なり、作動ガスの温度を自己着火が生じやすいような温度に維持する必要がないため、EGRガス量の吸入空気に対する割合は非常に小さい。したがって、火花点火燃焼モード時には、燃焼ガスの温度を、吸入空気の温度に応じて推定することによって、適切に推定することができる。
また、一般に、内燃機関の出力が非常に高いことで、排気ガスの温度が非常に高い場合において、燃料を通常よりも余分に噴射し(燃料のリッチ制御)、燃焼されずに残った余分な燃料によって、燃焼温度を低下させ、排気ガスの温度を低下させることにより、排気ガスを浄化する触媒装置の温度の上昇を抑制し、保護することが知られている。これに対して、本発明によれば、上述したように燃焼ガスの温度を適切に推定することができるので、上記の排気ガスの温度を低下させるための燃料のリッチ制御を、実際に排気ガスの温度が非常に高い場合に限って実行することができ、その分、燃費を向上させることができる。
【0010】
請求項2による発明は、請求項1に記載の圧縮着火式内燃機関3の制御装置1において、燃焼モードが圧縮着火燃焼モードのときに、燃焼室3c内に充填された作動ガスの充填量を推定する充填量推定手段(ECU2、図3のステップ7)をさらに備え、燃焼ガス温度推定手段は、燃焼モードが圧縮着火燃焼モードのときには、推定された充填量(目標充填効率ETACC)にさらに応じて、燃焼ガスの温度を推定する(図5のステップ15,図6のステップ27,28,24)ことを特徴とする。
【0011】
この構成によれば、燃焼モードが圧縮着火燃焼モードのときには、燃焼ガスの温度が、EGRガス量に加えて、推定された作動ガスの充填量に応じて推定される。これにより、燃焼ガスの温度を、作動ガス中のEGRガス量の割合、すなわちEGRガスによる温度の上昇度合を反映させながら、より適切に予測することができる。
【0015】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照しながら、本発明の好ましい実施形態を詳細に説明する。 図1は、本発明による制御装置1、およびこれを適用した圧縮着火式内燃機関(以下「エンジン」という)3を概略的に示している。
【0016】
エンジン3は、例えば、車両に搭載された直列4気筒(1気筒のみ図示)タイプのガソリンエンジンであり、各気筒のピストン3aとシリンダヘッド3bとの間に燃焼室3cが形成されている。ピストン3aの上面の中央部には、凹部3dが形成されている。また、シリンダヘッド3bには、吸気管4および排気管5がそれぞれ設けられている。この排気管5には、排気ガスを浄化するための三元触媒11が設けられている。
【0017】
また、シリンダヘッド3bには、燃焼室3cに臨むようにインジェクタ6および点火プラグ7が取り付けられている。インジェクタ6は、燃料ポンプ(図示せず)に接続されており、その燃料噴射時間(開弁時間)は、後述するECU2によって制御される。また、点火プラグ7には、ECU2からの駆動信号により点火時期に応じたタイミングで高電圧が加えられ、次に遮断されることによって放電し、それにより、各気筒内で混合気の点火が行われる。また、エンジン3は、その燃焼モードを、燃焼室3c内の混合気を点火プラグ7の火花により点火する火花点火燃焼モード(以下「SI燃焼モード」という)と、自己着火により着火する圧縮着火燃焼モード(以下「CI燃焼モード」という)とに切換可能に構成されている。
【0018】
吸気弁8および排気弁9は、それぞれ電磁式動弁機構10(EGR装置)によって駆動される。各電磁式動弁機構10は、2つの電磁石(図示せず)を備えており、ECU2からの駆動信号により、これらの電磁石の励磁・非励磁のタイミングを制御することによって、吸気弁8および排気弁9が開閉駆動されるとともに、これらの開閉タイミング(以下「バルブタイミング」という)が自在に制御される。
【0019】
また、排気弁9の閉弁タイミングを通常よりも早くするとともに、吸気弁8の開弁タイミングを通常よりも遅くするように制御することによって、燃焼ガスの一部をEGRガスとして燃焼室3c内に残留させる(以下「内部EGR」という)とともに、その残留量であるEGRガス量を制御することが可能である。
【0020】
さらに、排気弁9を駆動する電磁式動弁機構10には、バルブリフト量センサ21が取り付けられている。このバルブリフト量センサ21は、排気弁9の実際のバルブリフト量EVLを検出して、その検出信号をECU2に出力する。
【0021】
ECU2には、クランク角センサ22から、パルス信号であるCRK信号およびTDC信号が出力される。このCRK信号は、エンジン3のクランクシャフト(図示せず)の回転に伴い、所定のクランク角度ごとに出力される。ECU2は、このCRK信号に基づき、エンジン回転数NEを求める。また、ECU2は、バルブリフト量EVLおよびCRK信号から、排気弁9の実際の閉弁タイミングCAEVCACTを求める。TDC信号は、各気筒のピストン3aが吸気行程開始時のTDC(上死点)付近の所定クランク角度位置にあることを表す信号であり、エンジン3が4気筒タイプの本例では、クランク角180゜ごとに出力される。
【0022】
さらに、ECU2には、吸気温センサ23(吸入空気温度検出手段)から、燃焼室3c内に吸入される吸入空気の温度(以下「吸気温」という)TAを表す検出信号が、アクセル開度センサ24から、アクセルペダル(図示せず)の開度(以下「アクセル開度」という)APを表す検出信号が、それぞれ出力される。
【0023】
ECU2は、本実施形態において、EGRガス量推定手段、燃焼ガス温度推定手段、EGRガス量決定手段、充填量推定手段および燃焼モード決定手段を構成するものであり、I/Oインターフェース、CPU、RAMおよびROMなどからなるマイクロコンピュータで構成されている。前述した各種センサ21〜24からの検出信号はそれぞれ、I/OインターフェースでA/D変換や整形がなされた後、CPUに入力される。
【0024】
CPUは、これらの入力信号に応じて、エンジン3の運転状態を判別し、判別した運転状態に応じ、ROMに記憶された制御プログラムなどに従って、エンジン3の燃焼モードをSI燃焼モードまたはCI燃焼モードに決定するとともに、その結果に応じて、CI燃焼モード中におけるEGRガス量の制御などを実行する。
【0025】
ECU2で実行される制御の概要を述べると、まず、エンジン3の燃焼モードを決定し(図2)、圧縮行程の開始時における混合気およびEGRガスを含む作動ガスの温度の目標値である目標作動ガス温度TCYLGASCを算出する(図3)。また、燃焼室3c内に残留した実際のEGRガス量を、推定EGRガス量NEGR(推定されたEGRガス量)として推定する(図4)とともに、圧縮行程の開始時における実際の作動ガスの温度を、推定作動ガス温度TCYLGASとして推定する(図5)。さらに、燃焼によって生成される燃焼ガスの温度を、推定燃焼ガス温度TEXGAS(推定された燃焼ガスの温度)として推定(予測)する(図6)。最後に、算出または推定した目標作動ガス温度TCYLGASCおよび推定燃焼ガス温度TEXGASを用いて、目標EGRガス量NTEGRCMD(燃焼室内に存在させるべきEGRガスの量)を算出する(図9)。以下、各処理ごとにその内容を説明する。
【0026】
図2に示す燃焼モード決定処理は、所定時間(例えば20msec)ごとに実行される。まず、ステップ1では、エンジン3の要求トルクPMECMDを、エンジン回転数NEなどを用いて次式(1)によって算出する。
PMECMD=CONST・PSE/NE …… (1)
ここで、CONSTは定数であり、PSEはエンジン3の要求出力である。この要求出力PSEは、PSEテーブル(図示せず)に基づき、アクセル開度APおよびエンジン回転数NEに応じて設定される。このPSEテーブルは、0%〜100%の範囲内の所定のアクセル開度APごとに設定された複数のテーブルで構成されており、アクセル開度APがこれらの中間値を示す場合には、要求出力PSEは補間演算によって求められる。また、これらのテーブルでは、要求出力PSEは、エンジン回転数NEが大きいほど、およびアクセル開度APが大きいほど、大きな値に設定されている。
【0027】
次いで、燃焼モードを決定し(ステップ2)、本処理を終了する。この燃焼モードの決定は、燃焼モード設定マップ(図示せず)に基づき、算出した要求トルクPMECMDおよびエンジン回転数NEに応じて行われる。同マップでは、燃焼モードは、要求トルクPMECMDが低〜中負荷領域にあり、かつエンジン回転数NEが低〜中回転領域にあるときには、CI燃焼モードに設定され、それ以外のときには、SI燃焼モードに設定されている。また、燃焼モードがCI燃焼モードに決定されているときには、CI燃焼モードフラグF_HCCIが「1」にセットされ、それ以外のときには、これが「0」にセットされる。
【0028】
なお、燃焼モードがSI燃焼モードの場合において、推定燃焼ガス温度TEXGASが所定温度(例えば800℃)を超えたときには、通常よりも燃料が余分に噴射されるように上記の燃料噴射時間を制御する(燃料のリッチ制御)。これにより、排気ガスの温度を低下させることで、三元触媒11の温度の上昇が抑制され、三元触媒11が保護される。
【0029】
図3に示す目標作動ガス温度の算出処理は、所定時間(例えば10msec)ごとに実行される。まず、ステップ5では、上述したCI燃焼モードフラグF_HCCIが、「1」であるか否かを判別する。この答がNOで、SI燃焼モード中であるときには、そのまま本処理を終了する。
【0030】
一方、ステップ5の答がYESで、CI燃焼モード中であるときには、ステップ6において、エンジン回転数NEおよび要求トルクPMECMDに応じ、マップ(図示せず)を検索することによって、目標作動ガス温度TCYLGASCを求める。この目標作動ガス温度TCYLGASCは、圧縮行程の開始時における作動ガスの温度を自己着火が生じやすいような温度に制御するために設定され、このマップでは、エンジン回転数NEが低いほど、および要求トルクPMECMDが小さいほどより大きな値に設定されている。これは、エンジン回転数NEが低いほど、燃焼サイクル間の時間間隔が長いことで、自己着火が生じにくく、また、要求トルクPMECMDが小さいほど、噴射する燃料量が少ないことで、自己着火が生じにくいので、これを生じやすくするために作動ガスの温度を高めるためである。
【0031】
次いで、求めた目標作動ガス温度TCYLGASCに基づき、目標充填効率ETACC(推定された充填量)を、テーブル(図示せず)を検索することによって求め(ステップ7)、本処理を終了する。この目標充填効率ETACCは、作動ガスの充填効率(燃焼室3cの容積と行程容積との和に対する作動ガスの充填量の比)の目標値である。このテーブルでは、目標充填効率ETACCは、目標作動ガス温度TCYLGASCが大きいほど、より大きな値に設定されている。これは、目標作動ガス温度TCYLGASCが大きいほど、作動ガスの温度を高めるために、より多量のEGRガスを燃焼室3c内に残留させる必要があるためである。
【0032】
図4のEGRガス量の推定処理は、CI燃焼モード中においてのみ、TDC信号の入力に同期して割り込み実行される。本処理では、ステップ11において、推定EGRガス量NEGRを、排気弁9の実際の閉弁タイミングCAEVCACTおよび要求トルクPMECMDに応じて、マップ(図示せず)を検索することによって求める。同マップでは、推定EGRガス量NEGRは、排気弁9の閉弁タイミングCAEVCACTが早いほど、および要求トルクPMECMDが大きいほど、より大きな値に設定されている。これは、排気弁9の閉弁タイミングが早いほど、燃焼ガスが排気管5に排出されにくく、EGRガス量がより多くなるためであり、また、要求トルクPMECMDが大きいほど、発生する燃焼ガスの量がより多いので、それに応じて残留するEGRガス量もより多くなるためである。
【0033】
図5の作動ガス温度の推定処理は、上述したEGRガス量推定処理と同様、CI燃焼モード中にのみ、TDC信号の入力に同期して割り込み実行される。本処理では、ステップ15において、推定作動ガス温度TCYLGASを、吸気温TA、図4の前記ステップ11で求めた推定EGRガス量NEGR、および図3の前記ステップ7で求めた目標充填効率ETACCなどを用いて、次式(2)によって算出する。
TCYLGAS=(TEXGASZ-TA)・NEGR/ETACC・NTCYLMAX+TA ……(2)
ここで、TEXGASZは、図6の処理によって算出された推定燃焼ガス温度TEXGASの前回値であり、NTCYLMAXは、燃焼室3cの容積と行程容積との和(以下「最大充填量」という)である。
【0034】
この式(2)の右辺の(TEXGASZ−TA)は、燃焼ガスと新気との温度差を表し、NEGR/ETACC・NTCYLMAXは、作動ガス中に占めるEGRガスの割合を表す。したがって、両者の積、すなわち第1項は、EGRガスによる作動ガスの温度の上昇分を表し、それにさらに吸気温TAを加算することによって、圧縮行程の開始時における実際の作動ガスの温度である推定作動ガス温度TCYLGASを、適切に算出することができる。
【0035】
図6の燃焼ガス温度の推定処理は、TDC信号の入力に同期して割り込み実行される。まず、そのステップ21では、現在の推定燃焼ガス温度TEXGASをその前回値TEXGASZとして設定する。なお、この前回値TEXGASZは、エンジン3の始動時には、所定温度(例えば150℃)に設定される。次いで、フューエルカットフラグF_FCが「1」であるか否かを判別する(ステップ22)。この答がYESで、フューエルカット(以下「F/C」という)が実行されているときには、燃焼ガス温度暫定値TEXGASTを、所定値TCYLWALに設定する(ステップ23)。なお、この所定値TCYLWALは、F/Cにより燃焼が行われない場合において、それまでの燃焼によって加熱されたシリンダブロックの温度に相当し、例えば80℃である。
【0036】
次いで、今回の推定燃焼ガス温度TEXGASを、その前回値TEXGASZ、および設定した燃焼ガス温度暫定値TEXGASTなどを用いて、次式(3)によって算出し(ステップ24)、本処理を終了する。
TEXGAS=TEXGAST・(1-TDTGAS)+TEXGASZ・TDTGAS ……(3)
ここで、TDTGASは、値1.0未満の所定のなまし係数(例えば0.9)である。
【0037】
一方、前記ステップ22の答がNOで、F_FC=0、すなわちF/Cが実行されていないときには、CI燃焼モードフラグF_HCCIが「1」であるか否かを判別する(ステップ25)。この答がNOで、SI燃焼モード中のときには、ステップ26において、吸気温TAおよび要求トルクPMECMDに応じ、SI燃焼モード用のTEXGASSIMマップを検索することによって、マップ値TEXGASSIMを求め、燃焼ガス温度中間値TEXGASαとして設定する。この燃焼ガス温度中間値TEXGASαは、燃焼によって直接的に得られる(外部からの影響を受けないと仮定したときの)燃焼ガスの温度に相当する。
【0038】
図7は、このSI燃焼モード用のTEXGASSIMマップを示しており、同マップでは、マップ値TEXGASSIMは、吸気温TAが高いほど、および要求トルクPMECMDが大きいほど、より大きな値に設定されている。これは、吸気温TAが高いほど、燃焼室3c内に充填される混合気の温度がより高いことにより、燃焼ガスの温度がより高く、また、要求トルクPMECMDが大きいほど、エンジン3の出力がより大きいことにより、燃焼によって発生する熱量、すなわち燃焼ガスの温度がより高いためである。なお、マップ値TEXGASSIMは、所定の下限温度TAL(例えば−10℃)から所定の上限温度TAH(例えば100℃)までの計6つの所定の吸気温TAに対して設定されており、吸気温TAがこれらの所定の温度にないときには、補間演算によって求められる。
【0039】
一方、前記ステップ25の答がYESで、F_HCCI=1、すなわちCI燃焼モード中のときには、ステップ27において、前記ステップ15で算出した推定作動ガス温度TCYLGAS、および要求トルクPMECMDに応じ、CI燃焼モード用のTEXGASCIMマップを検索することによって、マップ値TEXGASCIMを求め、燃焼ガス温度中間値TEXGASαとして設定する。
【0040】
図8は、このCI燃焼モード用のTEXGASCIMマップを示しており、このマップでは、マップ値TEXGASCIMは、要求トルクPMECMDが大きいほど、および推定作動ガス温度TCYLGASが高いほど、より大きな値に設定されている。これは、推定作動ガス温度TCYLGASが高いほど、圧縮行程の開始時の作動ガスの温度が高いことにより、その燃焼によって生成される燃焼ガスの温度がより高く、また、前述したように、要求トルクPMECMDが大きいほど、燃焼ガスの温度がより高いためである。
【0041】
前記ステップ26または27に続くステップ28では、前記ステップ26または27で設定した燃焼ガス温度中間値TEXGASα、および前記ステップ23で用いた所定値TCYLWALなどを用いて、燃焼ガス温度暫定値TEXGASTを次式(4)によって算出するとともに、前記ステップ24を実行し、本処理を終了する。
TEXGAST=TEXGASα・[1-KTEXGME・(TDCME-TDCMEα)]
+TCYLWAL・KTEXGME・(TDCME-TDCMEα) …… (4)
ここで、KTEXGMEは、値1.0未満の所定のなまし係数(例えば0.01)であり、TDCMEは現在のTDC信号の周期である。また、TDCMEαは、エンジン回転数NEが、高速時F/Cが実行される限界回転数(例えば6000rpm)にあるときのTDC信号の周期に設定されている。
【0042】
上記の式(4)の右辺の第1項は、燃焼によって直接的に得られる燃焼ガスの温度に相当し、第2項は、燃焼ガスの温度に対するシリンダブロックの温度の影響分に相当する。また、式(4)から明らかなように、右辺中に第2項が占める割合は、TDC信号の周期TDCMEが長いほどより大きい。これは、TDC信号の周期TDCMEが長いほど、燃焼サイクル間の時間間隔が長いことで、燃焼ガスの温度に対するシリンダブロックの温度の影響度合がより大きく、それにより、燃焼ガスの低下度合がより大きいためである。
【0043】
以上のように、CI燃焼モード中においては、作動ガスの充填効率の目標値として目標充填効率ETACCを求める(図3のステップ7)とともに、燃焼室3c内に残留した実際のEGRガス量として推定EGRガス量NEGRを推定する(図4のステップ11)。そして、推定EGRガス量NEGRおよび目標充填効率ETACCに応じて、推定作動ガス温度TCYLGASを、推定した圧縮行程の開始時における実際の作動ガスの温度として算出する(図5のステップ15)。また、推定作動ガス温度TCYLGASおよび要求トルクPMECMDに応じて、推定燃焼ガス温度TEXGASを推定した燃焼ガスの温度として算出する(図6のステップ27,28,24)。
【0044】
このように、推定作動ガス温度TCYLGASを、推定EGRガス量NEGRおよび目標充填効率ETACCに応じて算出するので、圧縮行程の開始時における実際の作動ガスの温度を、作動ガス中のEGRガス量の割合、すなわちEGRガスによる温度の上昇度合を反映させながら、適切に推定することができる。また、そのように適切に推定された推定作動ガス温度TCYLGASを用いて推定燃焼ガス温度TEXGASを算出するので、燃焼ガスの温度を適切に予測することができる。
【0045】
図9の目標EGRガス量の算出処理は、TDC信号の入力に同期して割り込み実行される。まず、ステップ31では、CI燃焼モードフラグF_HCCIが「1」であるか否かを判別する。この答がNOで、SI燃焼モード中のときには、目標EGRガス量NTEGRCMDを値0に設定し(ステップ32)、本処理を終了する。
【0046】
一方、ステップ31の答がYESで、CI燃焼モード中のときには、ステップ33において、図3の前記ステップ6および7でそれぞれ求めた目標作動ガス温度TCYLGASCおよび目標充填効率ETACC、図5の前記ステップ15で用いた最大充填量NTCYLMAX、ならびに図6の前記ステップ24で算出した推定燃焼ガス温度TEXGASなどを用いて、次式(5)によって目標EGRガス量NTEGRCMDを算出し、本処理を終了する。
NTEGRCMD=ETACC・NTCYLMAX・(TCYLGASC-TA)/(TEXGAS-TA) ……(5)
【0047】
この式(5)の右辺の(TCYLGASC−TA)は、目標作動ガス温度と新気の温度との差を表し、(TEXGAS−TA)は、燃焼ガスと新気との温度差を表す。したがって、両者の比(TCYLGASC−TA)/(TEXGAS−TA)は、EGRガスによって可能な温度上昇分に対するEGRガスによって上昇させるべき温度の割合を表す。したがって、この比にETACC・NTCYLMAXを乗算することによって、目標EGRガス量NTEGRCMDを適切に算出することができる。
【0048】
図10は、目標バルブタイミング算出処理を示している。本処理は、吸気弁8および排気弁9の目標バルブタイミングを算出するものであり、TDC信号の入力に同期して割り込み実行される。また、算出された目標バルブタイミングになるように、各弁のバルブタイミングが制御される。まず、ステップ41では、CI燃焼モードフラグF_HCCIが、「1」であるか否かを判別する。この答がNOで、SI燃焼モード中のときには、吸気弁8の目標開弁タイミングCAIVOCMDを、SI燃焼モード時用の所定の吸気開弁タイミングCAIVOST(例えば上死点前30°クランク角)に設定する(ステップ42)。次いで、吸気弁8の目標閉弁タイミングCAIVCCMDを、所定の吸気閉弁タイミングCAIVCST(例えば下死点前30°クランク角)に設定する(ステップ43)。
【0049】
次に、排気弁9の目標開弁タイミングCAEVOCMDを、SI燃焼モード時用の所定の排気開弁タイミングCAEVOST(例えば下死点前30°クランク角)に設定する(ステップ44)。次いで、排気弁9の目標閉弁タイミングCAEVCCMDを、所定の排気閉弁タイミングCAEVCST(例えば上死点前30°クランク角)に設定し(ステップ45)、本処理を終了する。
【0050】
一方、前記ステップ41の答がYESで、F_HCCI=1、すなわちCI燃焼モード中であるときには、ステップ46において、吸気弁8の目標開弁タイミングCAIVOCMDを、エンジン回転数NE、要求トルクPMECMD、および図9の前記ステップ33で算出した目標EGRガス量NTEGRCMDに応じて、マップ(図示せず)を検索することによって求める。
【0051】
このマップでは、吸気弁8の目標開弁タイミングCAIVOCMDは、エンジン回転数NEが小さいほど、要求トルクPMECMDが小さいほど、および目標EGRガス量NTEGRCMDが多いほど、より遅くなるように設定されている。なお、この理由については後述する。
【0052】
次いで、吸気弁8の目標閉弁タイミングCAIVCCMDを、CI燃焼モード時用の所定の吸気閉弁タイミングCAIVCEC(例えば下死点前30°クランク角)に設定(ステップ47)する。次に、排気弁9の目標開弁タイミングCAEVOCMDを、所定の排気開弁タイミングCAEVOEC(例えば下死点前30°クランク角)に設定する(ステップ48)。
【0053】
次いで、ステップ49において、排気弁9の目標閉弁タイミングCAEVCCMDを、エンジン回転数NE、要求トルクPMECMDおよび目標EGRガス量NTEGRCMDに応じて、マップ(図示せず)を検索することによって求め、本処理を終了する。
【0054】
このマップでは、排気弁9の目標閉弁タイミングCAEVCCMDは、エンジン回転数NEが小さいほど、要求トルクPMECMDが小さいほど、および目標EGRガス量NTEGRCMDが多いほど、より早くなるように設定されている。これは、前述したようにエンジン回転数NEが小さいほど、および要求トルクPMECMDが小さいほど自己着火が生じにくいために、これが発生しやすいように作動ガスの温度を高めるべく、EGRガス量を増加させるためであり、また、目標EGRガス量NTEGRCMDに対応するようにEGRガス量を増加させるためである。
【0055】
また、前述した吸気弁8の目標開弁タイミングCAIVOCMDの設定は、これに対応したものである。すなわち、排気弁9の目標閉弁タイミングCAEVCCMDが、エンジン回転数NE、要求トルクPMECMDおよび目標EGRガス量NTEGRCMDに応じて、上述したように設定されることにより、EGRガス量が多くなるのに応じて、このEGRガスの分、燃焼室3c内に供給する混合気の量を減らすためである。また、排気弁9の閉弁タイミングが早められるのに伴って、吸気弁8の開弁タイミングを遅くしないと、燃焼ガスが吸気管4内に流入するおそれがあるので、これを回避するためである。
【0056】
以上のように、CI燃焼モード中において、目標EGRガス量NTEGRCMDに応じて、吸気弁8の目標開弁タイミングCAIVOCMDおよび排気弁9の目標閉弁タイミングCAEVCCMDを設定することによって、実際のEGRガス量が目標EGRガス量NTEGRCMDになるように制御される。
【0057】
以上のように、本実施形態によれば、CI燃焼モード中において、目標充填効率ETACCおよび推定EGRガス量NEGRに応じて推定作動ガス温度TCYLGASを算出し、これに応じて推定燃焼ガス温度TEXGASを算出するので、燃焼ガスの温度を適切に予測することができる。また、そのような推定燃焼ガス温度TEXGASに応じて目標EGRガス量NTEGRCMDを算出するので、燃焼ガスの温度が大きく変化するエンジン3の過渡運転時においても、その影響を受けることなく、次回の圧縮行程の開始時における作動ガスの温度を精度良く制御することができる。これにより、この圧縮行程の開始時における作動ガスの温度を、自己着火に適した温度に精度良く制御でき、それにより、ノッキングや失火を回避することができる。さらに、燃焼ガスの温度を推定によって求めるので、これを検出するためのセンサが不要になり、制御装置1を安価に構成することができる。
【0058】
また、SI燃焼モード中において、吸気温TAに応じて燃焼ガス温度中間値TEXGASαを求め、これに応じて推定燃焼ガス温度TEXGASを算出するので、燃焼ガスの温度を適切に推定することができる。これにより、前述した三元触媒11を保護するための燃料のリッチ制御を、実際に燃焼ガスの温度が非常に高い場合に限って実行することができ、その分、燃費を向上させることができる。
【0059】
なお、本発明は、説明した実施形態に限定されることなく、種々の態様で実施することができる。例えば、説明した実施形態は、本発明を内部EGRを実行するエンジン3に適用した例であるが、本発明はこれに限らず、排気再循環装置を用いて燃焼ガスを再循環させるエンジンに適用することが可能である。また、本実施形態では、推定されたEGRガスを含む作動ガスの充填量として、目標充填効率ETACCを算出したが、これに代えて、燃焼室3c内に充填された実際の作動ガスの量を推定してもよいことはもちろんである。さらに、本発明は、クランク軸を鉛直方向に配置した船外機などのような船舶推進機用エンジンを含む、様々な産業用の圧縮着火式内燃機関に適用することが可能である。その他、本発明の趣旨の範囲内で、細部の構成を適宜、変更することが可能である。
【0060】
【発明の効果】
以上のように、本発明の圧縮着火式内燃機関の制御装置によれば、燃焼ガスの温度を適切に推定でき、それにより、推定した燃焼ガスの温度に応じて作動ガスの温度を精度良く制御することができることによって、ノッキングや失火を防止することができるなどの効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の制御装置およびこれを適用した内燃機関を概略的に示す図である。
【図2】燃焼モード決定処理を示すフローチャートである。
【図3】目標作動ガス温度算出処理を示すフローチャートである。
【図4】EGRガス量推定処理を示すフローチャートである。
【図5】作動ガス温度推定処理を示すフローチャートである。
【図6】燃焼ガス温度推定処理を示すフローチャートである。
【図7】図6の処理で用いられるTEXGASSIMマップを示す図である。
【図8】図6の処理で用いられるTEXGASCIMマップを示す図である。
【図9】目標EGRガス量算出処理を示すフローチャートである。
【図10】目標バルブタイミング算出処理を示すフローチャートである。
【符号の説明】
1 制御装置
2 ECU(EGRガス量推定手段、燃焼ガス温度推定手段、EGRガス量決定手段、充填量推定手段、燃焼モード決定手段)
3 エンジン
3c 燃焼室
10 電磁式動弁機構(EGR装置)
23 吸気温センサ(吸入空気温度検出手段)
NEGR 推定EGRガス量(推定されたEGRガス量)
TEXGAS 推定燃焼ガス温度(推定された燃焼ガスの温度)
NTEGRCMD 目標EGRガス量(燃焼室内に存在させるべきEGRガス の量)
ETACC 目標充填効率(推定された充填量)
TA 吸気温
Claims (2)
- 混合気を自己着火により燃焼室内で燃焼させるとともに、燃焼により生成された燃焼ガスの一部をEGRガスとして前記燃焼室内に存在させるEGR装置を有する圧縮着火式内燃機関の制御装置であって、
前記内燃機関は、燃焼モードを、混合気を自己着火によって燃焼させる圧縮着火燃焼モードと、火花点火によって燃焼させる火花点火燃焼モードに切換可能に構成されており、
前記燃焼モードを前記圧縮着火燃焼モードまたは前記火花点火燃焼モードに決定する燃焼モード決定手段と、
前記燃焼モードが前記圧縮着火燃焼モードのときに、前記燃焼室内に存在するEGRガスの量を推定するEGRガス量推定手段と、
当該推定されたEGRガス量に応じて、混合気および前記EGRガスを含む作動ガスの燃焼によって生成される燃焼ガスの温度を推定する燃焼ガス温度推定手段と、
当該推定された燃焼ガスの温度に応じて、前記燃焼室内に存在させるべきEGRガスの量を決定するEGRガス量決定手段と、
前記燃焼室内に吸入される吸入空気の温度を検出する吸入空気温度検出手段と、を備え、
前記燃焼ガス温度推定手段は、前記燃焼モードが前記火花点火燃焼モードのときには、前記検出された吸入空気の温度に応じて燃焼ガスの温度を推定することを特徴とする圧縮着火式内燃機関の制御装置。 - 前記燃焼モードが前記圧縮着火燃焼モードのときに、前記燃焼室内に充填された作動ガスの充填量を推定する充填量推定手段をさらに備え、
前記燃焼ガス温度推定手段は、前記燃焼モードが前記圧縮着火燃焼モードのときには、前記推定された充填量にさらに応じて、燃焼ガスの温度を推定することを特徴とする、請求項1に記載の圧縮着火式内燃機関の制御装置。
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