JP4133688B2 - 高強度高曲げ加工性を有する銅合金 - Google Patents

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本発明は、コネクタ材等に使用する銅合金に関するものであり、特に、優れた曲げ加工性と強度とを同時に実現した銅合金の製造技術を提供するものである。
チタンを含有する銅合金(以下、「チタン銅」と称する。)は、比較的強度が高く、応力緩和特性にあっては銅合金中最も良好な領域に位置しているので、コネクタ材等に使用され、近年その需要は益々増大の傾向にある。それは、携帯端末に代表されるように小型化及び軽薄化が著しい電子機器に使用される各種部品には集積密度の高い機能が求められ、コネクターについても、リード部をファインピッチ化及び薄板化することによって省スペース化が図られている。一方、コネクターとして信頼性の高い通信機能を得るには、めす端子とおす端子とを嵌合したときの接圧が重要で、高いほどよい。また、コネクターの接圧は、素材の強度が高いほど高くなるので、リード部が細く又は薄くなった場合に十分な接圧を得るには、素材強度が高くなくてはいけない。更に機能集積度の高い電子機器には、嵌合時の接触安定性が高いベローズ型のコネクターが使用される事が多いが、コネクターが小さくなればなるほど苛酷な曲げ加工が施されることになる。即ち、コネクターが小さくなるほど、素材強度と曲げ加工性が重要になってくるのである。近年この傾向は更に強まり、それに対処すべく、チタン銅のさらなる高強度化に関する研究開発が種々行われている。従来の銅合金には、チタン銅にNiおよびAlを添加するものがある(例えば、特許文献1参照。)。また、チタン銅にAlおよびMgを添加したものもある(例えば、特許文献2参照。)。さらに、チタン銅にSn、NiおよびCoを添加したものもある(例えば、特許文献3参照。)。近年においては、チタン銅にCr、Zr、NiおよびFeを添加する技術が提案されている(例えば、特許文献4参照。)。また、結晶粒の微細化に関する技術も開示されている(例えば、特許文献5参照。)。さらに、チタン銅にZn、Cr、Zr、Fe、Ni、Sn、In、PおよびSiを添加する技術も提案されている(例えば、特許文献6参照。)。
特許1045416号公報 特許1047328号公報 特許1456429号公報 特開平6−248375号公報 特開2001−303158号公報 特開2002−356726号公報
上述した従来技術は、チタン銅に第3元素を加えることによって、析出硬化を狙ったものや、結晶粒を微細化して耐力の向上を狙ったものであるが、これらの技術をチタン銅に適用することが如何に困難であるかを以下に述べる。チタン銅は、溶体化処理によって過飽和固溶体を形成させ、その状態から低温時効を施すと、準安定相である変調構造が発達し、その発達段階の或る時期において著しく硬化する。これが発達し過ぎるといわゆる過時効の状態となり、最終的には安定相であるTiCuが析出し、この相が増えると逆に軟化してしまうという性質がある。
この一連の時効過程において、高い強度を示す変調構造は、不安定な過飽和固溶体から起こり得る変化であり、安定相であるTiCu相から準安定相である変調構造へは変化し得ない。一方、溶体化処理が不十分だった場合、母相中に固溶仕切れなかったチタンは、TiCu3として析出したままの状態で残ることになる。よって時効での硬化を最大限に引き出すには、その前工程の溶体化処理でTiCu3相を完全に無くす、言い換えればチタンを完全に母相中に固溶させる必要があり、そのためには、チタンの固溶限がチタン含有量を超える温度まで加熱する必要がある。例えば、銅にチタンを3%含有させた場合には、チタンを完全に固溶させるには、800℃以上の温度まで加熱して溶体化処理をする必要がある。
一方、チタンが完全に固溶する高温領域では、結晶粒が粗大化し易いので、従来技術において結晶粒の微細化により耐力向上を実現するには、完全に固溶する高温領域より低温側で溶体化処理をしなければならない。例えば、銅にチタンを3%含有させた合金においては、前記800℃では結晶粒が微細化しないので、750〜775℃で溶体化処理をすることにより、結晶粒を微細化させているのである。このため、従来技術でチタン銅の結晶粒を微細化させたものは、チタンの固溶が十分でなく、安定相であるTiCuが析出してしまう。前述したように、この時点で粒界に析出したTiCuは、後工程の時効で硬化に寄与しないばかりか、曲げ加工性を悪化させるという欠点があった。またチタン銅に第3元素(Fe、Co、Ni、Cr、V、Zr、BまたはP)を添加し、それらの成分を含んだ第2相の析出による析出硬化を狙った従来技術では、析出硬化が十分得られるだけの添加量を確保すると、変調構造の形成が阻害されるという欠点があった。
また、それらの元素の析出硬化を最大限に引き出す溶体化条件及び時効条件が、チタン銅本来の変調構造による強化を最大限引き出す溶体化条件及び時効条件との間にずれが生じているため、第3元素の析出硬化とチタン銅の変調構造の発達とを十分に両立することができなかった。このように、従来技術ではチタン銅の優れた強度特性を十分に生かして高強度を得ることが難しかった。
本発明の目的は、チタン銅の強化機構の本質を尊重し、その優れた特性をそのまま維持した上で、更なる強度向上を狙うことである。
本発明者らは、鋭意研究した結果、チタン銅の製造工程において溶体化処理で結晶粒を微細化しつつ,その後の冷間圧延加工及び時効により高強度化を図る上で、その効果を最大限に発揮させるための方法を見出した。
即ち、
(1)Tiを2.0〜4.0質量%含有する銅基合金において、第3元素としてFe,Co,Ni,Si,Cr,V,Zr,B,Pのなかから1種または2種以上を0.01〜0.50質量%含有し、断面検鏡によって観察される面積0.01μm以上の第2相粒子を対象としたとき、第2相粒子中のTi組成が25原子%以上である粒子の合計面積が、第2相粒子全体の面積の30%以下であることを特徴とする銅合金、
(2)Tiを2.0〜4.0質量%含有する銅基合金において、第3元素としてFe,Co,Ni,Si,Cr,V,Zr,B,Pのなかから1種または2種以上を0.01〜0.50質量%含有し、母相中のTi組成と合金全体のTi組成との差異が1.0質量%以下であることを特徴とする上記(1)記載の銅合金、
である。
本発明によれば、Tiの含有量の適正化、第3元素群の含有量の適正化、および結晶粒界に存在する第2相粒子発生の適正化をそれぞれ図ることで、優れた曲げ性の実現と強度向上の達成とを同時に高いレベルで実現することができる。よって本発明は、コネクタ材等に好適な銅合金を製造することができる点で有望である。
以下に本発明の限定の理由を述べる。
(1)第2相粒子中のTi量について
本発明は、十分な時効硬化能が得られるための必要条件として第2相粒子中のTi量を規定している。第2相粒子には、炉材等の外来性の介在物、溶解中に生成する反応生成物、凝固中に生成する晶出物、焼鈍中に形成される析出物があるが、本発明が対象とする合金系では、第2相粒子のほとんどが析出物となっている。Ti−Cu系合金の析出物は、Cu中のTi固溶限がTi含有量より狭い温度領域(Tiを3%含有する銅合金においては、780℃以下)において、TiCu(Ti:25at%,Cu:75at%)の組成で析出する。この相は一旦形成されると(450℃以下の)比較的低温でも成長しやすく、この相が多くなり過ぎると、強度が低下し曲げ加工性が低下する。
溶体化処理を低温で行なうほど結晶粒が微細化し、溶体化処理後の強度は向上するが、この時に析出したTiCu相は後工程の時効において、更に成長し、時効硬化能の低下及び曲げ加工性の低下を引き起こす。しかし、この第2相粒子が他の元素を含んだ場合その量が多いほど、言い換えれば、第2相粒子を構成するTiの比率が少ない程、その成長は遅延されるので、時効硬化能の低下及び曲げ加工性の低下は少なくて済む。そこで本発明では、比較的微量の添加により、Cu中のTi固溶限がTi含有量より十分に広い温度領域(Tiを3%含有する銅合金においては、800℃以上)で溶体化処理をしても結晶粒を微細化させる元素として、第3元素(Fe,Co,Ni,Si,Cr,V,Zr,B,P)の中から1種または2種以上を選定し、その量を規定している。これらの元素を適量添加すると、CuとTiと複合してCu−Ti−X系の粒子となり、第2相粒子全体に占めるTiCu相の割合を低減させる。このCu−Ti−X系の粒子は、溶体化処理中または溶体化処理前に形成させることができ、溶体化処理時の再結晶粒の成長を抑制する働きをもつ。曲げ加工性を低下させずに十分に時効硬化させるTiのより好ましい範囲は、2.5〜3.5質量%である。
第3元素の添加量の合計値が0.01%以下では、Cu−Ti−X系の第2相粒子を析出させる効果が小さく、逆に0.50%以上では、Cu−Ti−X系粒子といえども粗大化して曲げ加工性が悪化する。より好ましい範囲は、0.03〜0.30%である。また、第2相粒子を構成するTi量を規定したのは、上述したようにTiCu相が多いと時効硬化能と曲げ加工性が低下するからである。第2相粒子中のTi量が25at%であれば、それはTiCu相であるとみなすことができ、第2相粒子中のTi量が25at%未満であれば、Cu−Ti−X系の粒子であるとみなすことができる。TiCu相は時効処理中にも形成され、完全に0にすることはできないが、第2相粒子全体の30%以下の面積率であれば(Cu−Ti−X系粒子が第2相粒子全体の70%を超える)なら時効硬化能の低下と曲げ加工性の劣化が非常に少ない。
Cu−Ti−X系粒子をより多く得るには溶体化処理の昇温速度を高くし、TiCu相が析出しやすい温度を素早く通り抜ける必要がある。また、Cu−Ti−X系粒子といえども析出し過ぎると、母相中のTi濃度が低下し、時効硬化能が低下する。母相中のTi濃度が合金全体のTi組成より1質量%以上低下するとこの傾向が顕著になり、曲げ加工性も悪化する。第3元素の添加量が規定の範囲内であっても、溶体化処理の加熱時間が長いか、時効し過ぎると母相中のTi濃度が低下する。
本発明を発現するためには、第2相粒子を均質に微細分散することが重要であり、以下の点について工程を管理する必要がある。
1)インゴット製造工程
適当量のCuに第3元素群としてFe、Co、Ni、Si、Cr、V、Zr、B、Pの中から1種以上を0.01〜0.50質量%添加し、十分保持した後にTiを2〜4質量%添加する。
第3元素群を有効に作用させるに溶け残りをなくすため、十分に溶解・保持する必要があり、また、Tiは第3元素群よりCu中に溶け易いので第3元素群の溶解後に添加すればよい。
2)インゴット製造工程以降の工程
このインゴット製造工程後には、950℃以上で1時間以上の均質化焼鈍を行うことが望ましい。偏析をなくし、後述する溶体化処理において、第2相粒子の析出を、微細かつ均一に分散させるためであり、混粒の防止にも効果がある。その後、熱間圧延を行い、冷延と焼鈍を繰り返して、溶体化処理を行なう。途中の焼鈍でも温度が低いと第2相粒子が形成されるので、この第2相粒子が完全に固溶する温度で行う。第3元素群を添加していない通常のチタン銅であれば、その温度は800℃でよいが、第3元素群を添加したチタン銅はその温度を900℃以上とすることが望ましい。
さらに、溶体化処理直前の冷間圧延においては、その加工度が高いほど、溶体化処理における第2相粒子の析出が均一かつ微細なものになる。
溶体化処理前時効の実施は、本発明の発現のための必須ではないが、実施する場合には、450℃以下が条件となる。それ以上の高温で時効すると第2相粒子が粗大化してしまうからである。第2相粒子を微細に析出させるには、なるべく低温の方が望ましいのである。
5)最終の溶体化処理
チタンの固溶温度までの昇温速度を速くする。Tiが完全に固溶する温度まで一気に加熱すればTiCu単独の析出が抑制され、それ以外の成分が優先的に析出させることができるからである。
2)最終の冷延加工度・最終の時効処理
上記溶体化処理工程後、冷間圧延及び時効処理を行う。溶体化処理後の冷間圧延加工度は本発明品を作りこむ上で非常に重要な因子である。この時点の加工度は30%未満が望ましい。加工度が高いほど次の時効処理でTiCuが析出しやすいためである。時効処理については、添加元素によって異なるが、最終の時効処理は300〜450℃で行う。時効により強度は向上するが、時効し過ぎると安定相であるTiCu相が増えて、強度と曲げ加工性が供に低下する。好ましくは、420℃×1時間〜400℃×3時間である。
本発明例の銅合金を製造するに際しては、活性金属であるTiが第2成分として添加されるから、溶製には真空溶解炉を用いた。また、本発明で規定した元素以外の不純物元素の混入による予想外の副作用が生じることを未然に防ぐため、原料は比較的純度の高いものを厳選して使用した。
まず、実施例1〜10および比較例11〜20について、Cuに、Fe、Co、Ni、Si、Cr、V、Zr、BおよびPを表1に示す組成でそれぞれ添加した後、同表に示す組成のTiをそれぞれ添加した。添加元素の溶け残りがないよう添加後の保持時間にも十分に配慮した後に、これらをAr雰囲気で鋳型に注入して、それぞれ約2kgのインゴットを製造した。
上記インゴットを酸化防止剤を塗布して24時間の常温乾燥後、980℃×12時間の加熱をして熱間圧延をして、板厚10mmの板を得た。次に偏析を抑制するために再び酸化防止剤を塗布後980℃×2時間の加熱をして水冷した。ここで水冷したのは、可能な限り溶体化させるためであり、酸化防止剤を塗布したのは、粒界酸化及び表面から進入してきた酸素が添加元素成分と反応して介在物化する内部酸化を可能な限り防止するためである。各熱延板は、それぞれ機械研摩及び酸洗による脱スケール後、板厚0.2mmまで冷間圧延した。その後、この冷間圧延を施した圧延材を急速加熱が可能な焼鈍炉に挿入して、昇温速度50℃/秒でTiの固溶限が添加量より大きくなる温度(例えば、Tiの添加量が3質量%では800℃)まで加熱し、2分間保持後水冷した。この際、平均結晶粒径(GS)を切断法により測定した。
Figure 0004133688
その後、酸洗して脱スケール後冷間圧延し、不活性ガス雰囲気中で表1に示す条件で時効して本発明例の試験片とした。
表1に示す本発明例として作製した試験片および比較例として作製した試験片をW曲げ試験を行って割れの発生しない最小半径(MBR)の板厚(t)に対する比であるMBR/t値を測定するとともに、0.2%耐力を測定して発明例の有効性を検証した。
第2相粒子の組成の確認は、電界放出型オージェ電子分光分析装置(FE−AES)によって、単位面積当たりに存在する面積0.01μm以上の第2相粒子の組成を全て測定し、Ti量が25at%以上の粒子(以下、A群)とTi量が25at%未満の粒子(以下、B群)とに分類し、それぞれの面積の合計値を求め、A群の合計面積(a)が第2相粒子全体の合計面積(a+b)に対する割合(以下C値)を求めた。同様にFE−AESにより、母相のTi濃度をランダムに5箇所測定し、その平均値を表1に示すTiの湿式分析値から引いた値(以下D値)を求めた。表2に本発明例および比較例のC値、D値、結晶粒径(GS)、0.2%耐力、MBR/tを示す。
Figure 0004133688
表2に示すが如く、発明例においては、いずれも0.2%耐力が850MPa以上でMBR/t値が1.0未満となっている。特に発明例No.3〜10は、Tiが好ましい範囲となっているので、0.2%耐力が更に向上し、870MPa以上の値となっている。No.4〜6はそれぞれ、Fe,Co,Niに加えてPを、そしてNo.9〜10はそれぞれV,Zrに対してBを添加しているので、結晶粒が更に微細化し、880MPa以上の0.2%耐力が得られている。
一方、比較例No.11は、Tiが2.0質量%より少ないので、十分な0.2%耐力が得られていない。逆に、比較例No.12は、4.0質量%を超えてTiが含有しているので、曲げ加工性が悪化している。比較例No.13は、本発明で規定した第3元素が添加されていないので、ほとんどの第2相粒子がTiCu(C値>30%)となり、加えて結晶粒が微細化せず、十分な0.2%耐力が得られていない。また、結晶粒が粗大化しているために曲げ加工性も劣る。逆に比較例No.14〜17は、第3元素の合計値が0.5質量%を超えているために、第2相粒子が必要以上に析出してしまい、曲げ加工性が悪化している。特に比較例No.16〜17は過剰な第2相粒子の析出によって母相中のTiが失われ(D値>1.0質量%)、時効硬化能も低減して十分な0.2%耐力が得られていない。
比較例No.18は、溶体化処理でTiが完全に固溶する温度までの加熱速度が遅かったために、第3元素の添加量は適正範囲であるが、第3元素を主成分とする第2相粒子よりTiCu単独の析出の割合が多くなり、その結果時効硬化に支障をきたし、十分な0.2%耐力及び曲げ加工性が得られなかった。比較例No.19は、最終の冷延加工度が高すぎたために、最終の時効処理で第2相粒子の析出が多くなり、十分な0.2%耐力及び曲げ加工性が得られなかった。比較例No.20は、最終の時効処理において加熱しすぎたために、第2相粒子が析出し過ぎて、十分な0.2%耐力及び曲げ加工性が得られなかった。

Claims (2)

  1. Tiを2.0〜4.0質量%含有し、第3元素としてFe,Co,Ni,Si,Cr,V,Zr,B,Pのなかから1種または2種以上を0.01〜0.50質量%含有し、残部が銅及び不可避的不純物からなる銅合金において、断面検鏡によって観察される面積0.01μm2以上の第2相粒子を対象としたとき、第2相粒子中のTi組成が25原子%以上である粒子の合計面積が、第2相粒子全体の面積の30%以下であることを特徴とする銅合金。
  2. 相中のTi組成と合金全体のTi組成との差異が1.0質量%以下であることを特徴とする請求項1記載の銅合金。
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