JP4135879B2 - 鉱物の合成方法、合成鉱物及び鉱物の合成プラント並びに鉱物の合成用石炭灰と石炭灰の処理方法 - Google Patents

鉱物の合成方法、合成鉱物及び鉱物の合成プラント並びに鉱物の合成用石炭灰と石炭灰の処理方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、含ホウ素環状ケイ酸塩鉱物の合成方法と合成鉱物及び鉱物の合成プラント並びに鉱物合成用石炭灰と石炭灰の処理方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
ホウ素を含有する環状ケイ酸塩化合物としては、ショール(Schorl NaFe3Al6(BO3)3Si6O18(OH)4)、ドラバイト(Dravite NaMg3Al6(BO3)3Si6O18(OH)4)、エルバイト(Elbaite Na(Li,Al)3Al6(BO3)3Si6O18(OH)4)等が天然に存在する。これらの結晶構造中でショールのFe3、ドラバイトのMg3、エルバイトの(Li,Al)3の位置は、Li、Mg、Al、Fe、Ti、Mn、Co、Ni、Cu、Znのうちいずれか1種以上の元素と、ショール、ドラバイト、エルバイトのAl6の位置はAl、Fe、Mgのうち1種類以上の元素と部分的にまたは全部置換可能である。また、(OH)4の位置はFが部分的にまたは全部置換可能である。
【0003】
これらの鉱物は、結晶構造がC軸方向で対称性を持たない事によって、際だった焦電性を有しており、感熱素子等への応用が期待できる。
【0004】
この種の鉱物の合成法として、高温高圧の条件を用いる水熱合成が行なわれている。例えばアメリカン・ミネラロジスト(American Mineralogist)第71巻第7/8号971〜976頁(1986)においては、450〜600℃、100MPaの条件で30〜60日保持することでこれらの鉱物を合成している。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
こうした水熱合成法では、例示したように50MPa〜100MPaという非常に高い圧力条件が用いられており、こうした高圧ゆえ、使用する容器容量も小さくせざるを得ず、工業的規模でこれらの鉱物を合成することが極めて困難であった。
【0006】
本発明の目的は、含ホウ素環状ケイ酸塩化合物の鉱物を工業的規模で生産可能な合成方法、それを用いて合成された合成鉱物及び鉱物の合成プラント並びに鉱物合成用石炭灰と石炭灰の処理方法を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者等は、前述の鉱物を工業的に合成する方法を検討した結果、原料中に含まれるカルシウム分を制限することによって、350〜650℃において15〜30MPaの比較的穏和な圧力条件でこれらの鉱物が合成可能であることを見出した。
【0008】
この合成条件では、圧力源として例えばボイラからの高温高圧蒸気が適用出来る領域であり、また圧力容器にしても比較的大型化が容易な圧力範囲であることから、容易に工業化が達成できる。
【0009】
本発明は、ケイ素と、ホウ素と、リチウム、ナトリウム、マグネシウム、アルミニウム、カリウム、チタン、バナジウム、クロム、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、銅及び亜鉛の中から選ばれる2種類以上の元素と、0.2〜5重量%、好ましくは0.2〜4.0重量%のカルシウムとを含み、AQ 3 R 6 (BO) 3 Si 6 O 18 X 4 〔但し、 A は Ca 、 Na 、 K の1種類以上、 Q は Li 、 Mg 、 Al 、 Fe 、 Ti 、 Mn 、 Co 、 Ni 、 Cu 及び Zn の1種類以上、 R は Mg 、 Al 、 V 、 Cr 、 Fe の1種類以上、 X は OH 、 F の1種類以上の元素からなる〕の含ホウ素環状ケイ酸塩の結晶構造を有することを特徴とする合成鉱物にある。
【0010】
前記含ホウ素環状ケイ酸塩の結晶構造は、ショール、ドラバイト及びエルバイトのいずれかまたはそれらの混合物である。
【0011】
本発明は、石炭灰とホウ素とを含む原料を、高温高圧の水熱反応により、 AQ 3 R 6 (BO) 3 Si 6 O 18 X 4 〔但し、 A は Ca 、 Na 、 K の1種類以上、 Q は Li 、 Mg 、 Al 、 Fe 、 Ti 、 Mn 、 Co 、 Ni 、 Cu 及び Zn の1種類以上、 R は Mg 、 Al 、 V 、 Cr 、 Fe の1種類以上、 X は OH 、 F の1種類以上の元素からなる〕の含ホウ素環状ケイ酸塩の結晶構造に合成する鉱物の合成方法であって、前記含ホウ素環状ケイ酸塩の結晶構造の形成に必要な前記元素を前記原料中に加えると共に、前記原料中のカルシウム量を前記合成後において0.2〜5重量%に調整することを特徴とする。特に、カルシウム量は限りなくゼロに成るようにするのが好ましいが、工業生産上、上述の含有量のカルシウムを若干含む含ホウ素環状ケイ酸塩の結晶構造とするものである。
【0012】
本発明は、ケイ素と、ホウ素と、リチウム、ナトリウム、マグネシウム、アルミニウム、カリウム、チタン、バナジウム、クロム、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、銅及び亜鉛の中から選ばれる2種類以上の元素と、カルシウムとを含む原料を、高温高圧の水熱反応により、ショール、ドラバイト、エルバイト等と同様のAQ 3 R 6 (BO) 3 Si 6 O 18 X 4 〔但し、 A は Ca 、 Na 、 K の1種類以上、 Q は Li 、 Mg 、 Al 、 Fe 、 Ti 、 Mn 、 Co 、 Ni 、 Cu 及び Zn の1種類以上、 R は Mg 、 Al 、 V 、 Cr 、 Fe の1種類以上、 X は OH 、 F の1種類以上の元素からなる〕の含ホウ素環状ケイ酸塩の結晶構造に合成する際に、原料中に含まれるカルシウム量を制限することにより、生成物中のカルシウム量を0.2〜5重量%となるように原料中のカルシウム量を低減することで容易に鉱物を合成することが可能となるものである。本発明の鉱物の合成可能な温度圧力条件は、350〜650℃、15〜30Mpaが好ましい。
【0013】
生成物中のカルシウム量の上限を5重量%以下とする理由は、これ以上のカルシウムが含まれた場合、使用する温度圧力領域においてはアノーサイト(Anorthite CaAl2Si2O8)が安定相であり、これが生成する事によって原料成分のうちSi、Alが不足するのみならず、組成の均衡が崩れ、SiとMgの複合酸化物やNa、Al、Siの複合酸化物が形成され、含ホウ素環状ケイ酸塩鉱物が全く形成されなくなるためである。
【0014】
また、本発明の鉱物合成に際して、試薬や工業材料を原料として用いることが可能であるが、その他にAl源、Si源として、原料の一部に石炭灰が使用可能である。石炭灰は主たる組成がAl、Siの酸化物であり、これにNa、Mg、Fe、B等の元素を加え、さらに含ホウ素環状ケイ酸塩鉱物のAl/Si比と一致させるために不足分のAl2O3またはSiO2を加えることによって、前記鉱物を合成することが可能である。ただし使用可能な石炭灰は、生成物に含まれるカルシウム量を0.2〜5重量%となるものに限られる。
【0015】
本発明を成立させる上で、原料中に含まれるカルシウム量を制限する方法としては、カルシウム含有量が少ない原料を用いるか、又は、イオン交換反応によって原料中のカルシウム量を低減させる前処理を行なう。生成物中のカルシウム含有量を5重量%未満に止めることが期待できる原料としては、試薬の他、工業材料が適用できる。また前述の様に石炭灰のうちカルシウム含有量が少ないものが使用可能である。
【0016】
イオン交換による原料中のカルシウム量低減は、イオン交換容量の比較的高い原料を使用する場合に適用可能である。すなわち、ガラス質の物質や一部のアルミノケイ酸塩等に適用可能である。これらの物質を他の正イオンが優勢な溶液等に浸漬することにより、カルシウムイオンと当該正イオンとがイオン交換し、結果として物質中のカルシウム含有量が低下する。
【0017】
このような鉱物の合成においては、電気炉等の炉とオートクレーブ等の高圧容器を用いて実施する事が可能である他に、合成に要する熱源、圧力源の全部または一部に、ボイラから供給される高温高圧蒸気を使用することが可能である。例えば火力発電プラント用のボイラでは、最高蒸気温度が600℃を超え、圧力も25MPaに達する条件を用いている。こうした水蒸気は厳密には超臨界状態というべきであるが、ここでは水蒸気または単に蒸気と称する。このようなボイラを用いることにより、従来昇温昇圧に必要であった電気やガス等燃料のエネルギーを使用することなく、または使用しても従来より少量で合成が可能である。
【0018】
こうした鉱物は以下の構成の装置で合成可能である。すなわち、ボイラと、原料を供給して高温高圧における水熱反応によって鉱物を合成する水熱反応器と、前記ボイラによって製造される高温高圧水蒸気を前記水熱反応器内部に供給する水蒸気供給配管とを有する装置である。
【0019】
いま一つは以下の構成の装置で合成可能である。すなわち、ボイラと、原料を供給して高温高圧における水熱反応によって鉱物を合成する水熱反応器と、前記ボイラによって製造される高温高圧水蒸気によって前記水熱反応器を昇温するための水蒸気供給配管とを有する装置である。これらの装置として以下に示す具体的な装置により鉱物の合成が可能なように、前記水熱反応器内部の温度は300〜650℃、圧力は15〜30MPaに保たれている。
【0020】
具体的には、本発明は、ボイラによって製造される高温高圧水蒸気によって回転するタービン及び該タービンにより回転する発電機によって発電する火力発電プラントと、原料を貯蔵する容器と、前記原料を前記高温高圧水蒸気と共に供給され高温高圧水蒸気反応によって鉱物に合成する水熱反応器と、前記容器から前記原料を前記水熱反応器内に供給する原料供給配管と、前記ボイラによって製造される前記高温高圧水蒸気を前記水熱反応器に供給する水蒸気供給配管とを有する合成プラントにある。
【0021】
また本発明は、高温高圧水蒸気による反応によって原料から鉱物を合成する鉱物の合成プラントであって、前述の水熱反応器は、内管と外管とを有する筒型容器と、前記内管と外管との間に設けられた配管または空間と、該配管内または空間に高温高圧水蒸気を供給する供給口とを有することが好ましい。
【0022】
本発明は、石炭灰とホウ素とを含む原料を用いて、高温高圧の水熱反応により、 AQ 3 R 6 (BO) 3 Si 6 O 18 X 4 〔但し、 A は Ca 、 Na 、 K の1種類以上、 Q は Li 、 Mg 、 Al 、 Fe 、 Ti 、 Mn 、 Co 、 Ni 、 Cu 及び Zn の1種類以上、 R は Mg 、 Al 、 V 、 Cr 、 Fe の1種類以上、 X は OH 、 F の1種類以上の元素からなる〕の含ホウ素環状ケイ酸塩の結晶構造に合成する鉱物の合成用石炭灰であって、前記合成後において前記石炭灰中のカルシウム量が0 . 2〜5重量%であることを特徴とする鉱物合成用石炭灰にある。
【0023】
また、本発明は、石炭灰を酢酸アンモニウム溶液中にて処理を行ない、前記石炭灰中のカルシウムをアンモニウムイオンとイオン交換反応させることによって低減することを特徴とする石炭灰の処理方法にある。
【0024】
【発明の実施の形態】
(実施例1)
表1に示す組成の石炭灰5.25gに、α-Al2O3 1.32g、B2O3 1.09g、MgO 0.96g、Na2CO3 0.33g(いずれも試薬)をそれぞれ加え、乳鉢で混合した後、オートクレーブに25cm3の水と共に入れた。この配合比は含ホウ素環状ケイ酸塩の化学組成に近いものである。但し、ホウ素については1.2倍当量、ナトリウムについては1.1倍当量としている。
【0025】
【表1】
Figure 0004135879
【0026】
これを475℃、26MPaで72時間保持した後、冷却し、得られた生成物をオートクレーブから取出した。生成物は110℃で3時間乾燥した。
生成物を一部採取して、ICP発光分光分析によってカルシウム量を分析したところ、0.94重量%であった。
【0027】
粉末X線回折を用いて生成相を同定した。結果を図2に示す。図に示す通り、NaMg3Al6(BO)3Si6O18(OH)4の回折ピークが認められた。この組成はドラバイトであり、石炭灰と試薬から含ホウ素環状ケイ酸塩鉱物が合成可能である。
【0028】
(比較例)
表2の組成の石炭灰6.47gに、α-Al2O3 0.26g、B2O3 1.00g、MgO 0.95g、Na2CO3 0.27g(いずれも試薬)をそれぞれ加え、乳鉢で混合した後、オートクレーブに25cm3の水とともに入れた。この配合比は含ホウ素環状ケイ酸塩の化学組成に近いものである。但し、ホウ素については1.2倍当量、ナトリウムについては1.1倍当量としている。
【0029】
【表2】
Figure 0004135879
【0030】
実施例1と同様の熱処理を行ない、生成物についてICP発光分光分析を実施した結果、カルシウム含有量は5.7重量%であった。粉末X線回折によって生成相を同定した結果、図3に示す様にアノーサイトCaAl2Si2O8が多量に認められ、この他にα-Al2O3、タルク、アルバイトが認められ、含ホウ素環状ケイ酸塩鉱物の回折線はほとんど認められなかった。
【0031】
実施例1と比較例の大きな差異は、原料に用いた石炭灰のカルシウム含有量である。実施例1の石炭灰では灰中1.52重量%であるのに対し、比較例の石炭灰では7.36重量%である。比較例では石炭灰に含まれるカルシウムが、水熱反応によって安定相のアノーサイトを形成したため、含ホウ素環状ケイ酸塩鉱物の形成が阻害されたと考えられる。このようにカルシウムが多い系では、含ホウ素環状ケイ酸塩の合成に適さないと考えられる。
【0032】
(実施例2)
実施例1及び比較例と同様に、但し石炭灰には様々なカルシウム含有量の石炭灰を用いて、含ホウ素環状ケイ酸塩鉱物の合成を試みた。なお、石炭灰以外の構成元素源としては試薬を用い、配合割合は実施例1及び比較例と同様、ドラバイトNaMg3Al6(BO)3Si6O18(OH)4組成の含ホウ素環状ケイ酸塩鉱物の化学組成に近いものとした。但し、ホウ素については1.2倍当量、ナトリウムについては1.1倍当量とした。
【0033】
得られた生成物についてそれぞれ粉末X線回折を測定し、チャートの回折ピーク積分強度を求めた。ドラバイトの最強ピーク(面間隔約2.58Å)の積分強度をID、アノーサイトの最強ピーク(面間隔約3.2Å)の積分強度をIAとした時、以下の式で生成物中のドラバイト量RD1を比較した。RD1=1のときアノーサイトが存在せずドラバイトが多量を占め、RD1=0ではドラバイトが存在せずアノーサイトが多量を占める。
RD1 = ID / ( ID + IA ) (式1)
【0034】
図1は、得られた生成物をそれぞれ、ICP発光分光分析で分析して、含有されるカルシウム量を定量し、分析から得られたカルシウム含有量と生成物中のドラバイト量RDの関係を示す線図である。図1から判るとおり、カルシウム量の増大とともにドラバイト量は急激に減少し、生成物中のカルシウム量が5重量%以上の領域ではドラバイトが生成しない。このことから、含ホウ素環状ケイ酸塩の合成には、生成物中に含まれるカルシウム量が5重量%未満となる条件が望ましいと言える。より好ましくは、0.2〜4.0重量%である。カルシウムの低減を0%にすることが最も望ましいが、工業的には前述の範囲とするものである。
【0035】
(実施例3)
比較例で用いた石炭灰10gを乳鉢で約1時間粉砕した後、1.0mol/リットル酢酸アンモニウム溶液1リットルが入った三角フラスコに入れた。これをシリコンゴム栓で密閉しスターラーで攪拌しながら約80℃で24時間保持した。保持後に処理物を濾過して、得られた粉末を充分水洗した後、110℃の恒温槽で1時間乾燥した。乾燥後の粉末を一部取り出して、ICP発光分光分析で含有成分を定量した。結果を表3に示す。
【0036】
【表3】
Figure 0004135879
【0037】
表2と比較するとわかる通り、酢酸アンモニウム溶液処理によって、石炭灰中のナトリウムおよびカルシウムの量が大幅に減少している。また、その他の成分については、それほど大きな変化は認められない。これは、石炭灰中のアルカリイオン、アルカリ土類イオンである、ナトリウム、カルシウムイオンが液中のアンモニウムイオンとイオン交換した結果、石炭灰中にはアンモニウムイオンが入り、ナトリウム、カルシウムイオンは液中に出ていったためと考えられる。
【0038】
上記の酢酸アンモニウム溶液処理した石炭灰6.32gに、α-Al2O3 0.23g、B2O3 1.02g、MgO 0.97g、Na2CO3 0.41g(いずれも試薬)をそれぞれ加え、乳鉢で混合した後、オートクレーブに25cm3の水とともに入れた。この配合比は含ホウ素環状ケイ酸塩の化学組成に近いものである。但し、ホウ素については1.2倍当量、ナトリウムについては1.1倍当量としている。
【0039】
これを475℃、26MPaで72時間保持した後、冷却し、得られた生成物をオートクレーブから取出した。生成物は110℃で3時間乾燥した。生成物を一部採取して、ICP発光分光分析によってカルシウム量を分析したところ0.66重量%、酸化物に換算して1.07重量%であった。
【0040】
粉末X線回折を用いて生成相を同定した結果、主要な回折ピークはNaMg3Al6(BO)3Si6O18(OH)4のであった。この組成はドラバイトである。この結果と実施例2の結果を比較したとき、もともとカルシウム含有量が多い石炭灰であっても、これをイオン交換によって灰中のカルシウム量を少なくすると、含ホウ素環状ケイ酸塩鉱物が合成可能であることがわかる。このように、原料中のカルシウム量を化学的処理によって低減することで、結果として生成物中のカルシウム含有量を低減でき、含ホウ素環状ケイ酸塩鉱物が合成可能となる。
【0041】
(実施例4)
図4は、熱源に火力発電プラントのボイラから得た高温高圧水蒸気を使用する場合の含ホウ素環状ケイ酸塩鉱物合成装置を備えた火力発電と鉱物合成一貫プラントの全体構成図である。図4の例では原料を高温高圧水蒸気と直接混合することによって合成系を昇温昇圧するものである。
【0042】
含ホウ素環状ケイ酸塩鉱物に近い組成に調整された原料は、原料ホッパ9から原料タンク5に供給され、ここで所定量の水と混合されてスラリ状又は溶液状になる。この原料は送液ポンプ4によって原料供給ライン8を介して水熱反応器3に送られる。水熱反応器3は必要に応じて複数設置され、原料供給バルブ12の切り替えによって原料を導入したり、容器を密閉状態にすることが可能である。一方、ボイラ1によって発生された高温高圧蒸気は主水蒸気管6を介してタービン2に供給されている。その一部を分岐させて水蒸気供給ライン7を介して水熱反応器3に導入される。水熱反応器3が複数設置されている場合には、高温高圧蒸気の供給部分も水蒸気供給バルブ11の切り替えによって、各反応器に高温高圧蒸気を送り込んだり、供給を停止させたりすることが可能である。
【0043】
水熱反応器3は、耐圧性の容器であり、この例では高温高圧蒸気と原料を直接混合して水熱反応を生じせしめ、含ホウ素環状ケイ酸塩鉱物を合成させることが可能である。また、水熱反応器3はその外周又は容器壁内又は内部に、保温用水蒸気ライン10を経て供給される高温高圧蒸気を流通する管を設置することにより、容器内の温度・圧力を含ホウ素環状ケイ酸塩鉱物合成のそれらに維持することが可能である。保温用の高温高圧蒸気は、保温用水蒸気バルブ17によって流通の有無及び流通量の調節が可能であり、これによって、水熱反応器の温度を調節する。
【0044】
水熱反応器に送られる高温高圧蒸気は、含ホウ素環状ケイ酸塩鉱物の合成反応を行うために、原料を溶解、反応及び結晶化させるための高温高圧条件を作り出すために用いられるが、そうしたエネルギー全てを上記高温高圧蒸気のみでまかなえない場合には、補助的に他のエネルギー、すなわち電気やガス等の燃料のエネルギーを用いて合成条件の温度圧力に到達させることも可能である。水熱反応器3内で所定時間保持した生成物は、冷却され、生成物排出バルブ13を経て乾燥機15で乾燥されて製品ホッパ16に収められる。
【0045】
図5は、高温高圧水蒸気と原料を直接混合して水熱反応を生じさせる場合の水熱反応器の構造を示す断面図である。容器は二重構造であり、外管18と内管20の間に、保温用水蒸気供給ライン10が巻かれ、管の間は保温材19を充填して断熱性を高めている。原料供給ライン8からはスラリ状又は溶液状の原料が供給された後、水蒸気供給ライン7から高温高圧蒸気が供給され、水熱反応条件まで昇温昇圧される。保温用水蒸気供給ライン10には高温高圧蒸気が供給されて、水熱反応器の温度を維持する。反応後の生成物は生成物排出ライン22を経て外部に出される。
【0046】
高温高圧蒸気と原料を直接混合して水熱反応を生じさせる場合の水熱反応器3の動作手順は以下の通りである。(1)原料供給バルブ12を開け、原料を導入する。(2)原料供給バルブ12を閉じる。(3)水蒸気供給バルブ11を開け、水蒸気を導入する。(4)水蒸気供給バルブ11を閉じ、水熱反応を継続させる。(5)反応後、生成物排出バルブ13を開けて、反応器から生成物を取り出す。
【0047】
以上の手順において、温度維持のため保温用水蒸気供給ライン10に流通させる高温高圧蒸気は、原料を水熱反応器3に導入する時点で流通させていても、流通させていなくても良いが、流通させている場合には、試料導入と同時に水熱反応器内の圧力が上昇するために、輸送ポンプ4はその圧力以上の吐出圧を有する必要がある。
【0048】
図4の例では水熱反応器3内で高温高圧水蒸気と原料とを直接混合するが、この他にも高温高圧蒸気との熱交換により間接的に原料を昇温昇圧して水熱反応を生じせしめ、含ホウ素環状ケイ酸塩鉱物を合成させることが可能である。その場合、昇温昇圧のための高温高圧蒸気と、保温のためのそれとを共用しても良い。
【0049】
(実施例5)
図6は、高温高圧蒸気との熱交換により間接的に原料を昇温昇圧して水熱反応を生じさせる場合の水熱反応器3の構造を示す断面図でる。構造の大略は図5に示した高温高圧蒸気を原料に直接混合して昇温昇圧する場合と同じであるが、水蒸気供給ライン7が存在しない。本実施例においても実施例4の火力発電と鉱物合成との一貫プラントが可能である。
【0050】
高温高圧蒸気との熱交換により間接的に原料を昇温昇圧して水熱反応を生じさせる場合の動作手順は、前記の高温高圧蒸気を直接混合する場合とほぼ同じであるが、実施例4の(3)、(4)に示す水蒸気供給バルブの開閉操作が不必要である。
【0051】
水熱反応器3を複数設けている場合には、ひとつの反応器が含ホウ素環状ケイ酸塩鉱物合成温度圧力に保持されている間に。他の水熱反応器3に原料を導入したり、生成物取り出しを実施することが可能である。
【0052】
反応に使用される水蒸気は、ボイラの主水蒸気に限定されず、バイパス水蒸気や再熱水蒸気、場合によっては復水後の高圧水であっても、水熱反応条件として温度、圧力が達成できるものであれば問題ない。原料供給は本実施例ではスラリ又は水溶液の形であるが、粉体状の原料をロックホッパで供給することも考えられる。
【0053】
また、原料の供給、生成鉱物の取出しを手動で実施する場合等には、水熱反応容器における原料を供給する部位と生成鉱物取出しの部位を一緒とし、オートクレーブの様に蓋を開閉することで供給、取出しが可能となる構造も適用できる。更に、水熱反応容器を加熱する際には、水蒸気の利用と共に、電気炉を用いて加熱することができる。また水蒸気を用いず、電気炉のみで加熱することも可能である。
【0054】
(実施例6)
実施例1と同じ石炭灰を用い、これに実施例1と同じ割合でα-Al2O3、B2O3、MgO、Na2CO3を加え、乳鉢で混合した。オートクレーブに表4の分量で混合粉と水を入れ、表4に示す条件でそれぞれ168時間保持した。このうち試験No.1〜5はほぼ同じ圧力で温度を変えた試験、No.6〜9はほぼ同じ温度で圧力を変えた試験である。
【0055】
【表4】
Figure 0004135879
【0056】
降温後にそれぞれ試料をオートクレーブから取出し、濾過、水洗した後、110℃で4時間乾燥して生成物粉末を得た。粉末X線回折装置を用いて、それぞれの試料につき回折線積分強度から生成相の定量を行った。ドラバイトの最強ピーク(面間隔約2.58Å)の積分強度をID、α-Al2O3ピーク(面間隔約1.60Å)の積分強度をICとした時、以下の式で生成物中のドラバイト量RD2を比較した。RD2=1のときα-Al2O3が存在せずドラバイトが多量を占め、RD2=0ではドラバイトが存在しない。
RD2 = ID / ( ID + IC ) (式2)
【0057】
各試料について合成条件とRD2の関連性をまとめた結果を図7と図8に示す。図7は温度の影響、図8は圧力の影響を示した。
【0058】
図7より、含ホウ素環状ケイ酸塩鉱物は300℃〜650℃の領域において合成可能であり、300℃未満、および650℃より高い温度においてはほとんど合成できないことがわかる。これは300℃未満では、原料が一旦溶解して含ホウ素環状ケイ酸塩鉱物の骨格を形成する反応が生じにくい事、また650℃以上では、含ホウ素環状ケイ酸塩鉱物の分解反応速度が合成速度を上回ったことによると考えられる。
【0059】
図8より、圧力10MPa未満では含ホウ素環状ケイ酸塩鉱物がほとんど生成されておらず、合成に適した圧力は10MPa以上であることがわかる。圧力は高いほど合成に適しているが、実際の工業的な合成を考えた場合、30MPaを超えてある程度の量を合成するためには、安全面から反応容器を非常に厚くせざるを得ず、実際的ではない。
【0060】
これらの結果より、含ホウ素環状ケイ酸塩鉱物の合成に適した条件は、温度が300〜650℃、圧力は10〜30MPaの範囲である。
【0061】
【発明の効果】
本発明によれば、工業的に大量に製造できる手法で達成可能な条件において、含ホウ素環状ケイ酸塩鉱物を合成することが可能になる。尚、本発明は前述に記載の実施例に限定されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【図1】 生成物中のカルシウム含有率とドラバイト生成分率(RD1)との関係を示す線図。
【図2】 生成物中のカルシウム含有率0.94重量%の場合の生成物の粉末X線回折図。
【図3】 生成物中のカルシウム含有率5.7重量%の場合の生成物の粉末X線回折図。
【図4】 本発明による含ホウ素環状ケイ酸塩鉱物の合成装置を有する火力発電プラントの構成図。
【図5】 高温高圧水蒸気と原料とを直接混合する本発明の水熱反応器の断面図。
【図6】 高温高圧水蒸気によって原料を間接的に昇温昇圧する本発明の水熱反応器の断面図。
【図7】 ドラバイト生成分率(RD2)に及ぼす合成温度の影響を示す線図。
【図8】 ドラバイト生成分率(RD2)に及ぼす合成圧力の影響を示す線図。
【符号の説明】
1…ボイラ、2…タービン、3…反応容器、4…輸送ポンプ、5…原料タンク、6…主蒸気管、7…水蒸気供給ライン、8…原料供給ライン、9…原料ホッパ、10…保温用水蒸気供給ライン、11…水蒸気供給バルブ、12…原料供給バルブ、13…生成物排出バルブ、14…ブロワ、15…乾燥機、16…製品ホッパ、17…保温用水蒸気供給バルブ、18…外管、19…保温材、20…内管、21…フィルタ、22…生成物排出ライン、23…昇温昇圧用兼保温用水蒸気供給ライン。

Claims (14)

  1. ケイ素と、ホウ素と、リチウム、ナトリウム、マグネシウム、アルミニウム、カリウム、チタン、バナジウム、クロム、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、銅及び亜鉛の中から選ばれる2種類以上の元素と、カルシウムとを含む原料を、高温高圧の水熱反応により、 AQ 3 R 6 (BO) 3 Si 6 O 18 X 4 〔但し、 A は Ca 、 Na 、 K の1種類以上、 Q は Li 、 Mg 、 Al 、 Fe 、 Ti 、 Mn 、 Co 、 Ni 、 Cu 及び Zn の1種類以上、 R は Mg 、 Al 、 V 、 Cr 、 Fe の1種類以上、 X は OH 、 F の1種類以上の元素からなる〕の含ホウ素環状ケイ酸塩の結晶構造に合成する鉱物の合成方法であって、前記原料中のカルシウム量を前記合成後において0.2〜5重量%に調整することを特徴とする鉱物の合成方法。
  2. 請求項1において、前記原料の一部が石炭灰であることを特徴とする鉱物の合成方法。
  3. 石炭灰とホウ素とを含む原料を、高温高圧の水熱反応により、 AQ 3 R 6 (BO) 3 Si 6 O 18 X 4 〔但し、 A は Ca 、 Na 、 K の1種類以上、 Q は Li 、 Mg 、 Al 、 Fe 、 Ti 、 Mn 、 Co 、 Ni 、 Cu 及び Zn の1種類以上、 R は Mg 、 Al 、 V 、 Cr 、 Fe の1種類以上、 X は OH 、 F の1種類以上の元素からなる〕の含ホウ素環状ケイ酸塩の結晶構造に合成する鉱物の合成方法であって、前記含ホウ素環状ケイ酸塩の結晶構造の形成に必要な前記元素を前記原料中に加えると共に、前記原料中のカルシウム量を前記合成後において0.2〜5重量%に調整することを特徴とする鉱物の合成方法。
  4. 請求項1〜3のいずれかにおいて、前記水熱反応の温度が300〜650℃、及び圧力が10〜30MPaであることを特徴とする鉱物の合成方法。
  5. 請求項2〜4のいずれかにおいて、前記原料中に存在するカルシウムをイオン交換反応によって低減する工程を有することを特徴とする鉱物の合成方法。
  6. 請求項1〜5のいずれかにおいて、前記合成に要する熱エネルギー源の少なくとも一部に電力を用いることを特徴とする鉱物の合成方法。
  7. 請求項1〜6のいずれかにおいて、前記水熱反応における熱源及び圧力源の少なくとも一部にボイラから供給される高温高圧水蒸気を用いることを特徴とする鉱物の合成方法。
  8. 請求項1〜6のいずれかにおいて、前記合成に電気炉を用いることを特徴とする鉱物の合成方法。
  9. ケイ素と、ホウ素と、リチウム、ナトリウム、マグネシウム、アルミニウム、カリウム、チタン、バナジウム、クロム、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、銅及び亜鉛の中から選ばれる2種類以上の元素と、0.2〜5重量%のカルシウムとを含み、AQ 3 R 6 (BO) 3 Si 6 O 18 X 4 〔但し、 A は Ca 、 Na 、 K の1種類以上、 Q は Li 、 Mg 、 Al 、 Fe 、 Ti 、 Mn 、 Co 、 Ni 、 Cu 及び Zn の1種類以上、 R は Mg 、 Al 、 V 、 Cr 、 Fe の1種類以上、 X は OH 、 F の1種類以上の元素からなる〕の含ホウ素環状ケイ酸塩の結晶構造を有することを特徴とする合成鉱物。
  10. 請求項9において、前記含ホウ素環状ケイ酸塩の結晶構造が、ドラバイトであることを特徴とする合成鉱物。
  11. ボイラによって製造される高温高圧水蒸気によって回転するタービン及び該タービンにより回転する発電機によって発電する火力発電プラントと、原料を貯蔵する容器と、前記原料を供給し前記高温高圧水蒸気をその内部に導入することにより水熱反応によって鉱物を合成する水熱反応器と、前記容器から前記原料を前記水熱反応器内に供給する原料供給配管と、前記ボイラによって製造される前記高温高圧水蒸気を前記水熱反応器内部に供給する水蒸気供給配管とを有することを特徴とする発電と鉱物の合成プラント。
  12. ボイラによって製造される高温高圧水蒸気によって回転するタービン及び該タービンにより回転する発電機によって発電する火力発電プラントと、原料を貯蔵する容器と、前記原料を水と共に供給し前記高温高圧水蒸気の加熱による水熱反応によって鉱物を合成する水熱反応器と、前記容器から前記原料を前記水熱反応器内に供給する原料供給配管と、前記ボイラによって製造される前記高温高圧水蒸気によって前記水熱反応器を昇温する水蒸気供給配管とを有することを特徴とする発電と鉱物の合成プラント。
  13. 石炭灰とホウ素とを含む原料を用いて、高温高圧の水熱反応により、 AQ 3 R 6 (BO) 3 Si 6 O 18 X 4 〔但し、 A は Ca 、 Na 、 K の1種類以上、 Q は Li 、 Mg 、 Al 、 Fe 、 Ti 、 Mn 、 Co 、 Ni 、 Cu 及び Zn の1種類以上、 R は Mg 、 Al 、 V 、 Cr 、 Fe の1種類以上、 X は OH 、 F の1種類以上の元素からなる〕の含ホウ素環状ケイ酸塩の結晶構造に合成される鉱物の合成用石炭灰であって、前記合成後において前記石炭灰中のカルシウム量が0 . 2〜5重量%であることを特徴とする鉱物の合成用石炭灰。
  14. 石炭灰を酢酸アンモニウム溶液中にて処理を行ない、前記石炭灰中のカルシウムをアンモニウムイオンとイオン交換反応させることによって低減することを特徴とする石炭灰の処理方法。
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