JP4137425B2 - 膝義肢の傾斜付大腿骨部及びこれを用いた膝義肢 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、膝義肢において脛骨板、及び時には脛骨板に適用されるインサート、即ち、脛骨半月板部材、の挿入物を含む脛骨板、と協働する大腿骨部並びにこの大腿骨部を含む膝義肢に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来技術によれば、膝義肢における大腿骨部は、トロクレア部(滑車形関節部)と少くとも1つ、好ましくは2つ、の関節丘を含み、かつ、この大腿骨部の外面にはトロクレア部軌道が形成される。大腿骨部はまた、大腿骨の先端の整形面に接続する内側空間における一連の平面部を有する。これらの平面部は大腿骨部の内側空間の内面に設けられ、平面部同志の間の縁部の組合せにより内側空間における一連の縁部を形成している。
【0003】
上記のような膝義肢を装着する場合、大腿骨の先端に膝義肢の大腿骨部を固定するため大腿骨の先端を先ず整形する。この整形は通常、大腿骨の先端に複数の平面部と平面部同志の間の縁部を設けるように行われる。この場合好ましくは、これらの平面部の1つは大腿骨により定義される軸線に垂直をなすように設けられ、他の平面部はこの1つの平面部に関して傾斜を与えられる。
【0004】
膝義肢を装着する場合、同様に脛骨の整形も必要とされるが、この場合、脛骨の先端に、好ましくは脛骨の長手方向軸線に対して垂直をなす1つの面が形成される。
【0005】
任意の膝義肢について、この膝義肢の内側と外側を通る面、即ち、ソケット左右方向面(lateral medial side) 、が定義される。このソケット左右方向面は、一方の脛骨軸線に平行な面であり、かつ、他方の脛骨軸線を含む面である。また、内側とは、膝義肢において、他方の膝義肢又は患者の健康な方の膝の位置する側であり、外側とは前記任意の膝義肢において患者の外側に位置する側である。
【0006】
脛骨が、従来技術において中立切除として知られる方法、即ち、脛骨の軸線に垂直をなす平面を形成する切除、により整形される場合、脛骨の上面内側よりも脛骨の上面外側においてより多くの骨が切除される。しかしながら、大腿骨の中立切除では、内側及び外側の関節丘に関して同量の骨が切除される。従って、整形された脛骨と大腿骨の間には、膝義肢が作られて装着される前の状態において平行四辺形でなく台形の容積部分が形成される。実際に、脛骨の整形面の外側部分に垂直をなす方向における脛骨と大腿骨の間の距離は、内側部分におけるこれに対応する距離よりも大きい。
【0007】
この台形容積部分は不利である。即ち、この台形容積部分は、付帯する靱帯には内側では過度にきつく作用してこれを傷つけるか、又は、外側では余りにも緩く作用する。従って、台形容積部分の形成を回避しようとして、大腿骨の取付けの時に大腿骨に外方への回転を与えることが行われる。大腿骨の回転と共に、長方形容積部分を形成するべく面の外側部分よりも面の内側部分においてより多くの骨が切除される。しかしながら、このように大腿骨を外方へ回転させ、特に外側の骨よりも内側の骨をより多く除去する切除手術の結果として、以下のように多くの不具合が発生する。
【0008】
1)先ず、大腿骨が外方に回転させられると、あり継ぎ(dovetail)部分が内側に向って後退させられるため、トロクレア部軌道の端が外側に曲げられる。これにより、膝義肢を装着して膝を曲げた時、トロクレア部は中間の線を横切って内側中央に移動する。トロクレア部軌道が中央に近づくという事実は、トロクレア部の移動によりトロクレア部が正しい位置にあることを妨げ、そのため痛み、骨折、関節の緩み、摩耗の加速、等を引起す原因となる。
【0009】
2)大腿骨を外方に回転させた時に、膝を伸ばした状態において大腿骨と脛骨との調心を行うために脛骨を外方に回転させることも合理的に行われる。この場合、脛骨義肢の基板は骨を越えて突出するため、このような事態を回避するべく外科医は脛骨部をより小さく作らなければならない。このように脛骨義肢をより小さくした場合は、骨の全体的な保護カバーが減少するので、これも回避すべきである。
【0010】
3)大腿骨部は、大腿骨部と脛骨部の間に介装されるポリエチレン材で作られたインサートの摩耗を減少させるため、広い範囲の動きを行う回転に関して調心を行うことが必要である。即ち、大腿骨部と脛骨部の双方が外方に回転する場合には、大腿骨と脛骨の間の接触面積は、膝を伸ばした時に最大となる一方、膝を曲げると共に減少し、調心の適合性が減少する。
【0011】
脛骨部が、外方に回転させられた大腿骨部と中立をなす位置においてセットされた場合、調心の適合性は膝を曲げた時に減少し、膝を伸ばすと共に増大する。従って、接触面積は膝を曲げた時に最大となり、膝を伸ばした時に減少する。かくして、調心の適合性は、大腿骨が外方に回転している時は曲げの全範囲において、脛骨部の方向性とは無関係に維持することはできない。このことは、高い精度を要する膝の組立には非常に重要な要素又はパラメータとなる。
【0012】
4)大腿骨を外方に回転させることは、前方外側における骨をより多く切除し、切欠きを形成する可能性を増大させる。これは大腿骨を破壊点まで弱めることとなるので、回避すべきである。
【0013】
5)最後に、前方内側の大腿骨から不適切に骨を除去することは義肢と骨の間に空間を生じさせ、これにより義肢の正確な位置決めを妨げる。
【0014】
この点について、多くの従来技術の中で、ミールケ(Miehlke) のドイツ実用新案G 89 11 095.1による義肢が知られている。この義肢においては、大腿骨部の内側空間における縁部が関節丘の最先端部における接線に平行をなしており、トロクレア部軌道が前記接線の面から伸びる垂直線又は関節丘が水平にセットされた時に関節丘により定義される基準線に関して傾斜している。
【0015】
同じく、ライス(Ries)の米国特許第 5,824,105号により開示された義肢がある。ここにおいて、縁部は関節丘の最先端部における接線に平行をなす一方、トロクレア部軌道はこの接線の面に垂直をなしており、脛骨板と関節丘の間には傾斜のついたインサートを配置し、図4に示された台形空間をうまく満たすようにしている。
【0016】
ホリスター(Hollister) の米国特許第 5,326,361号には別の大腿骨義肢が開示されている。その明細書によれば、大腿骨部の内側空間( 及びその縁部) は関節丘によって定義される正接面( 又は基準線) に関して傾斜し、トロクレア部軌道も前記正接面から伸びる垂直線に関して傾斜している。最後に、カウフマン(Kaufman) の米国特許A 6,013,103における義肢は、関節丘の接線に平行をなす内側空間部と前記接線の面から伸びる垂直線に関して傾斜したトロクレア部軌道を教示する。
【0017】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上述のような従来技術の問題点を解決するため、特に、脛骨の中立整形から生じる問題点、即ち、大腿骨の整形時に大腿骨を外方へ回転させずに整形したことにより脛骨と大腿骨の間に生じる台形空間の存在、を解決する新しい大腿骨部を提供することを課題とする。
【0018】
本発明はまた、上記の本発明による大腿骨部を用いた膝義肢を提供することを課題とする。
【0019】
【課題を解決するための手段】
本発明によれば、大腿骨の外方への回転により引起される問題は、この外方への回転を要しないように補償され、かつ、同時に、膝義肢に付帯する靱帯は膝義肢の内側及び外側の間で種々の応力を受けることがない。
【0020】
本発明によれば、膝義肢の大腿骨部はトロクレア部と少くとも1つ、好ましくは2つ、の関節丘を含み、ここにおいて、トロクレア部軌道が大腿骨部の外面のトロクレア部内に形成され、かつ、一連の平面部が大腿骨の先端の対応する整形面に接続するように設けられる。これらの平面部は大腿骨部の内側に開放空間を形成し、かつ、それぞれの平面部の間に縁部を形成している。関節丘は、水平面上に配された時、関節丘と水平面との接触線としての基準線を形成する。この膝義肢の大腿骨部は、ソケット左右方向面に関するトロクレア部軌道の垂直投影線が基準線に対して垂直をなしており、かつ、縁部は、ソケット左右方向面に直角に投影された時、前記基準線に関してゼロ以外の値の傾斜角をもって傾斜していることを特徴とする。
【0021】
大腿骨部の内側の平面部が、関節丘が載置される脛骨板に関して傾斜しており、これにより、内側の開放空間が傾斜するので、従来技術における台形空間が完全に満たされ、その結果膝義肢に付帯する靱帯には膝義肢の内側及び外側において等しい応力が加わるようになり、従来種々の問題があった大腿骨の外方への回転を伴う整形を行うことが不要となる。
【0022】
本発明の実施の形態によれば、上記の内側の開放空間を形成する平面部は5つの平面部からなっている。
【0023】
本発明の実施の形態によれば、関節丘の外形は球状である。
【0024】
本発明の実施の形態によれば、縁部の傾斜角は、大腿骨の外方回転整形法を用いる場合に必要とされる大腿骨の回転の角度に相当し、これにより大腿骨の外方回転整形法の採用は不要となる。
【0025】
本発明はまた、一対の上記の大腿骨部、即ち、左膝義肢の大腿骨部及び右膝義肢の大腿骨部、に関し、ここにおいて、上記の傾斜角は左膝義肢については時計方向に、右膝義肢については反時計方向に算定される。
【0026】
本発明はまた、上記の大腿骨部とこの大腿骨部と協働する脛骨板を含む完全な膝義肢に関し、ここにおいて、好ましくはポリエチレン材で作られた半月板部材、即ち、脛骨インサート、が脛骨板と大腿骨部の間に介装される。
【0027】
【発明の実施の形態】
本発明を添付の図を参照して例示により説明する。
【0028】
図1において、大腿骨部1は、2つの関節丘2と1つのトロクレア部3を有する。トロクレア部3はトロクレア部軌道を形成し、その軌道の垂直投影線はソケット左右方向透視面(medial lateral perspective)としての図2において符号4によって示されている。各関節丘2の外面は、図1に見るようにその断面が円形に形成され、これがソケット前後方向面(antero-posterior plane)を形成している。トロクレア部3についても同様に、そのトロクレア部軌道がその断面を円形に形成されている。大腿骨部1の内側には開放空間が形成され、その内側面には5つの平面部5、6、7、8、9が形成されている。5つの平面部5、6、7、8、9は、縁部15、16、17、18によって互いに区分されている。平面部7には2つのピン19、20が設けられ、これらのピン19、20に対して整形された大腿骨の端部が接続され固定されるようになっている。平面部5、6、7、8、9は、図4に示した大腿骨の整形面に寸法においても傾斜形状においても一致するように形成されている。縁部は、特に縁部15について明白に見られるように、図2におけるトロクレア部軌道の垂直投影線4に垂直をなす面22に関して、ソケット左右方向透視面において、角度α=3°をもって傾斜している。この傾斜角度αは各患者の大腿骨によって変化し、その値は一般的に1〜10°、好ましくは2〜5°、の範囲にある。本発明の大腿骨部は、外形では従来の膝義肢のものと同じ形状を有するが、内側の空間は従来のものに比べて回転を与えられた形状に作られている。即ち、従来の内側空間は膝義肢に関して平行をなすように作られている一方、本発明の内側空間は膝義肢に関して若干傾斜するように作られている。
【0029】
図2は、脛骨に平行をなす透視面における左膝義肢を示している。ソケット左右方向透視面におけるトロクレア部軌道の投影線4と、同じ透視面における縁部15の投影線に垂直をなす線23との間の角度はマイナス3°であり、回転は三角法としての負の方向に三角辺を形成するように実施されている。
【0030】
この角度は、図3においては、回転が反時計方向、即ち、三角法としての正の方向、に三角辺を形成するように実施され、プラス3°の値をもって示されている。即ち、図3は右足の膝義肢を示している。
【0031】
図4は、大腿骨に外方回転を与えることなく整形された大腿骨と脛骨の膝義肢装着前の状態を示し、大腿骨と脛骨の間には台形空間が形成されている。図5は、大腿骨に外方回転を与えて整形された大腿骨と脛骨の膝義肢装着前の状態を示し、大腿骨と脛骨の間には、本発明を適用した時と同様の長方形空間が形成されている。この場合の大腿骨の外方回転と本発明の縁部の傾斜のそれぞれの角度は互いに同じ絶対値を有する。
【0032】
2つの関節丘2が載置される水平面を示す実線が基準線である。即ち、図2におけるトロクレア部軌道の垂直投影線4に垂直をなす線22が同時に基準線22を形成している。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の膝義肢の大腿骨部を示す側面図。
【図2】本発明の膝義肢の大腿骨部を図1の左側から見た側面図で、ここにおける大腿骨部は左膝義肢に関わるものである。
【図3】同じく本発明の膝義肢の大腿骨部を図1の左側から見た側面図で、ここにおける大腿骨部は右膝義肢に関わるものである。
【図4】大腿骨に外方回転を与えることなく大腿骨と脛骨を整形した時の膝を曲げた状態において示す説明図。
【図5】大腿骨に外方回転を与えて大腿骨と脛骨を整形した時の膝を曲げた状態において示す説明図。
【符号の説明】
1 大腿骨部
2 関節丘
3 トロクレア部
4 トロクレア部軌道投影線
5、6、7、8、9 平面部
15、16、17、18 縁部
19、20 ピン
22 基準線

Claims (8)

  1. トロクレア部(3)と少くとも1つ、好ましくは2つ、の関節丘(2)を含む膝義肢の大腿骨部であって、前記大腿骨部は、前記大腿骨部の外面の前記トロクレア部内に形成されるトロクレア部軌道;前記大腿骨部の内側に開放空間を形成し、大腿骨の先端の対応する整形面に接続するように設けられ、かつ、それぞれの間に縁部(15、16、17、18)を形成する一連の平面部(5、6、7、8、9);及び、前記関節丘が水平面上に配された時、前記関節丘と前記水平面との接触線として形成される基準線(22)を有してなるものにおいて、前記トロクレア部軌道の垂直投影線(4)は、ソケット左右方向透視面において前記基準線(22)に対して垂直であり、かつ、前記縁部は、ソケット左右方向透視面に直角に投影された時、前記基準線(22)に関してゼロ以外の値の傾斜角(α)を有してなることを特徴とする膝義肢の大腿骨部。
  2. 前記開放空間を形成する一連の平面部は5つでなることを特徴とする請求項1記載の膝義肢の大腿骨部。
  3. 前記関節丘の外形は球状でなることを特徴とする請求項1又は2記載の膝義肢の大腿骨部。
  4. 前記縁部の傾斜角は、大腿骨の外方回転整形法を用いる場合に必要とされる大腿骨の回転の角度に相当し、これにより大腿骨の外方回転整形法の採用を不要にしてなることを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の膝義肢の大腿骨部。
  5. 前記縁部の傾斜角は、1〜10°の絶対値を有してなることを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載の膝義肢の大腿骨部。
  6. 一対の請求項1ないし5のいずれかに記載の膝義肢の大腿骨部であって、前記一対の大腿骨部のそれぞれの傾斜角は、互いに反対方向に三角辺を形成するようにしてなることを特徴とする一対の膝義肢の大腿骨部。
  7. 前記一対の大腿骨部のそれぞれの傾斜角は、互いに同じ絶対値を有してなることを特徴とする請求項6記載の一対の膝義肢の大腿骨部。
  8. 脛骨板と請求項1ないし5のいずれかに記載の膝義肢の大腿骨部とを含んでなることを特徴とする膝義肢。
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