JP4137660B2 - 液体燃料電池 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、液体燃料電池に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、パソコン、携帯電話などのコードレス機器の普及に伴い、その電源である二次電池はますます小型化、高容量化が要望されている。現在、エネルギー密度が高く、小型軽量化が図れる二次電池としてリチウムイオン二次電池が実用化されており、ポータブル電源として需要が増大している。しかし、使用されるコードレス機器の種類によっては、このリチウムイオン二次電池では未だ十分な連続使用時間を保証する程度までには至っていない。
【0003】
このような状況の中で、上記要望に応え得る電池の一例として、空気電池、燃料電池などが考えられる。空気電池は、空気中の酸素を正極の活物質として利用する電池であり、電池内容積の大半を負極の充填に費やすことが可能であることから、エネルギー密度を増加させるためには好適な電池であると考えられる。しかし、この空気電池には、電解液として使用するアルカリ溶液が空気中の二酸化炭素と反応して劣化してしまうために自己放電が大きいという問題がある。
【0004】
一方、燃料電池は上記のような問題がなく、中でも、液体燃料を直接電池の反応に利用する燃料電池、例えば直接メタノール型燃料電池は、小型化が可能であり、将来のポータブル電源として有望視されている(例えば、特許文献1参照。)。
【0005】
この直接メタノール型燃料電池の電極は、正極および負極共にカーボン粉末上に貴金属粒子を高分散した触媒、プロトン交換樹脂およびポリテトラフルオロエチレン(PTFE)を含んでいる。このPTFEをバインダとして使用することで一定の強度を有する電極を形成できると共に、電極に撥水性を付与することができる(例えば、非特許文献1参照。)。
【0006】
【特許文献1】
特開2000−268836号公報
【0007】
【非特許文献1】
コーデェッシュ(Kordesch)、外2名、「イーシーエス プロシーディングズ(ECS Proceedings)」、(米国)、1982年、第82−2巻、第265号、p.427−428
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
ここで、上記燃料電池は、負極に燃料が供給されて反応し、正極では酸素が反応する。したがって、燃料および酸素の供給さえ行えば連続的に使用することができる。しかし、従来の燃料電池では、複数の燃料電池単位セルを積層して構成されていたため、電池全体が嵩高くなっていた。また、酸素および燃料をそれぞれの正極、負極へ流通させて供給しなければならず、そのための補器が必要とされていた。このため、燃料電池はリチウムイオン二次電池などの小型二次電池に比べてはるかに大きなものとなっていた。
【0009】
一方、酸素および燃料を強制的に流通させる補器をなくして燃料電池の小型化を図ることは可能であるが、出力が低下するという問題が生じ、また、放電反応で生成した二酸化炭素などのガスが燃料室に滞留し、燃料の消費に伴って燃料が負極と接触しなくなるという問題が生じることが考えられる。
【0010】
上記放電生成物による問題を防ぐためには、PTFE製の多孔膜を配置した排気孔を燃料室に設け、発生したガスを外部に排出することが考えられるが、燃料の組成によっては、例えば高濃度のアルコール水溶液を使用した場合などは、上記多孔膜を燃料が透過して外部に漏れ出すという問題が生じてしまう。
【0011】
さらに、複数の燃料電池単位セルを配置し、互いに電気的に接続して燃料電池を構成する場合には、各単位セルごとに燃料漏れを防止するための封止部が必要となり、封止が不十分な場合には燃料漏れしやすくなるため、信頼性を高めようとして封止部が複雑な構造となり、ある程度以上の小型化が困難になるという問題が生じやすくなる。
【0012】
また、電池全体の構造もさることながら、各燃料電池単位セルの構成も改善の余地があった。例えば、上記燃料電池の正極では、気体である酸素が反応するため、この反応を阻害する水分を除去する必要から撥水性が要求される。一方、負極では液体燃料であるメタノールなどが反応するため、逆に撥水性があると電極の濡れ性が悪くなり液体燃料の酸化反応が進みにくくなる問題がある。しかし、従来の直接メタノール型燃料電池では、正極および負極は共にバインダとしてPTFEを含んでおり、正極および負極のいずれにも撥水性が付与されていたため、負極としては必ずしも最適な構成とはなっていなかった。
【0013】
本発明は、前述した従来の液体燃料電池が抱える問題点を解決するものであり、小型でかつ安定的に発電することのできる液体燃料電池を提供する。
【0014】
【課題を解決するための手段】
本発明は、酸素を還元する正極と、液体燃料を酸化する負極と、前記正極および前記負極の間に配置された電解質層とを含む燃料電池単位セルを複数備えると共に、液体燃料を貯蔵する液体燃料貯蔵部を備えた液体燃料電池であって、複数の前記燃料電池単位セルが、略同一平面上に配置され、前記液体燃料貯蔵部が、気液分離膜を含む気液分離孔を備え、前記気液分離膜が、撥油処理を施した多孔質フッ素樹脂膜、または、多孔質フッ素樹脂膜と他の気体透過性材料との積層複合体であって撥油処理を施したものである液体燃料電池を提供する。
【0015】
【発明の実施の形態】
本発明の液体燃料電池は、酸素を還元する正極と、液体燃料を酸化する負極と、正極および負極の間に配置された電解質層とを含む燃料電池単位セルを複数備えると共に、液体燃料を貯蔵する液体燃料貯蔵部を備えた液体燃料電池であって、複数の燃料電池単位セルが、略同一平面上に配置されている。各燃料電池単位セルをこのような配置とすることにより、電池の厚さを薄くすることが可能となり、さらに複数の燃料電池単位セルが、同一の液体燃料貯蔵部から液体燃料の供給を受けることができるので、電池を小型化することが可能となる。
【0016】
また、本発明の液体燃料電池は、複数の燃料電池単位セルの各電解質層が、互いに連続した一体の電解質層を構成していることが好ましい。連続した一つの電解質層に対して複数の燃料電池単位セルを隣接して形成することにより、各燃料電池単位セル間の隙間が電解質層で覆われることになり、従来各単位セルごとに必要とされた燃料漏れを防止するための封止部を省略ないしは簡略化することができ、液体燃料の外部への漏れ出しを防ぐのみならず、電池の組み立ての簡易化、電池のより一層の小型化を実現することができる。
【0017】
また、本発明の液体燃料電池は、複数の燃料電池単位セルの各電解質層が、絶縁体層を介して互いに独立しかつこの絶縁体層と共に一体化された連続層を構成していることが好ましい。これにより、上記互いに連続した一体の電解質層を用いた場合に得られる効果に加えて、隣接する燃料電池単位セルの電極間で放電反応が進行してしまうことを防ぐことができる。即ち、互いに連続した一体の電解質層を用いた場合は、電池の小型化のために隣接する単位セル間の間隔を非常に小さくすると、同一単位セルの正負極間での放電反応が進行するだけでなく、隣接する単位セルの正極と負極の間で放電反応が生じ、電池の実容量が低下する現象(短絡)が発生する可能性が高くなるが、絶縁体層により各単位セルの電解質層を互いに独立させることによりこれを防ぐことができる。
【0018】
また、本発明の液体燃料電池は、液体燃料貯蔵部が、気液分離膜を含む気液分離孔を備えていることが好ましい。これにより、放電反応で生成した二酸化炭素などが電池内に滞留することがなく、二酸化炭素などをスムーズに電池内から放出させることができるため、燃料供給のための補器をなくし電池を小型化することができる。
【0019】
また、本発明の液体燃料電池は、上記気液分離膜が、撥油処理を施した多孔質フッ素樹脂膜、または、多孔質フッ素樹脂膜と他の気体透過性材料との積層複合体であって撥油処理を施したものであることが好ましい。これらの材質の気液分離膜は、メタノールやエタノールなどの親油性の液体燃料が気液分離孔を透過することを防止することができるので、親油性の液体燃料の濃度が高い場合にも液体燃料の漏れを防ぐことができる。
【0020】
また、本発明の液体燃料電池は、負極が、イオン伝導性を持たずかつフッ素を含有しないバインダを含むことが好ましい。これにより、負極と液体燃料との濡れ性が向上して電極特性が改善されるため、燃料電池単位セルの放電特性を向上させることが可能となる。また、バインダがイオン伝導性を持たないことにより、液体燃料によるバインダの膨潤、溶解が生じ難いため、電極の安定性が向上して燃料電池の信頼性を向上させることができる。
【0021】
以下、本発明の実施の形態を説明する。
【0022】
(実施形態1)
図1に本発明の実施形態1の液体燃料電池の断面図を示す。正極8は、例えば、多孔性の炭素材料からなる拡散層8aと、触媒を担持した炭素粉末、プロトン伝導性物質およびフッ素樹脂バインダを含む触媒層8bとを積層して構成される。正極8は酸素を還元する機能を有しており、その触媒には、例えば、白金微粒子や、鉄、ニッケル、コバルト、錫、ルテニウムまたは金などと白金との合金微粒子などが用いられる。また、プロトン伝導性物質としては、例えば、ポリパーフルオロスルホン酸樹脂、スルホン化ポリエーテルスルホン酸樹脂、スルホン化ポリイミド樹脂などのスルホン酸基を有する樹脂を用いることができるが、これらに限定されるものではない。このようなプロトン伝導性物質の含有量は、触媒担持炭素粉末100質量部に対し、2質量部〜200質量部とすることが好ましい。この範囲内であれば、十分なプロトン伝導性が得られ、また電気抵抗が大きくならず、電池性能が低下しないからである。
【0023】
フッ素樹脂バインダとしては、例えば、PTFE、テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)、テトラフルオロエチレン−エチレン共重合体(E/TFE)、ポリビニリデンフルオライド(PVDF)およびポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)などを用いることができる。このバインダの量は、触媒担持炭素粉末100質量部に対し、0.01質量部〜100質量部とすることが好ましい。バインダは使用しなくてもよいが、0.01質量部以上含有されることにより十分な結着性が生じて触媒層の成形、保持が容易となる。また、100質量部以下であれば電気抵抗の上昇を抑制できるので、電池性能が低下するのを防ぐことができる。
【0024】
また、拡散層8aの触媒層側には撥水性の向上のため、PTFE樹脂粒子を含む炭素粉末のペーストが塗布されている場合もある。
【0025】
電解質層10は、電子伝導性を持たず、プロトンを輸送することが可能な材料により構成される。例えば、ポリパーフルオロスルホン酸樹脂膜、具体的には、デュポン社製の“ナフィオン”(商品名)、旭硝子社製の“フレミオン”(商品名)、旭化成工業社製の“アシプレックス”(商品名)などにより電解質層10は構成されている。その他では、スルホン化ポリエーテルスルホン酸樹脂膜、スルホン化ポリイミド樹脂膜、硫酸ドープポリベンズイミダゾール膜などからも構成することができる。
【0026】
負極9は、液体燃料からプロトンを生成する機能、即ち液体燃料を酸化する機能を有しており、例えば、多孔性の炭素材料からなる拡散層9aと、触媒を担持した炭素粉末、プロトン伝導性物質およびフッ素樹脂バインダを含む触媒層9bとを積層して構成される。
【0027】
触媒を担持した炭素粉末、プロトン伝導性物質およびバインダは、上記正極と同様のものを使用することができる。炭素粉末と触媒の質量比は、炭素粉末100質量部に対し、触媒を5質量部〜400質量部とすることが好ましい。この範囲内であれば、十分な触媒活性が得られ、また触媒の粒子径が大きくなりすぎず、触媒活性が低下しないからである。
【0028】
プロトン伝導性物質の含有量は、触媒担持炭素粉末100質量部に対し、2質量部〜200質量部とすることが好ましい。この範囲内であれば、十分なプロトン伝導性が得られ、また電気抵抗が大きくならず、電池性能が低下しないからである。
【0029】
上記フッ素樹脂バインダに代えて、あるいはフッ素樹脂バインダと共にイオン伝導性を持たずかつフッ素を含まないバインダ(非フッ素系バインダ)を用いることにより、負極と液体燃料との濡れ性が向上し、電極特性が良好となる。
【0030】
イオン伝導性を持たない非フッ素系バインダとしては種々のものが使用できるが、熱可塑性であることが好ましい。電極の製作が容易になるからである。この熱可塑性のバインダとしては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ナイロン、ポリエステル、アイオノマー、ブチルゴム、エチレン・酢酸ビニル共重合体、エチレン・エチルアクリレート共重合体およびエチレン・アクリル酸共重合体からなる群から選択される少なくとも一つを含むことが好ましい。
【0031】
ただし、イオン伝導性を持たない非フッ素系バインダとして熱硬化性樹脂も使用可能である。例えば、エポキシ樹脂、キシレン樹脂、ジアリルフタレート樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、フェノール樹脂などである。
【0032】
ここで、イオン伝導性を持たない非フッ素系バインダの粒子径は、0.01μm〜100μmであることが好ましい。この範囲内であれば、十分な結着性が得られ、またバインダ自体が嵩高くならず、触媒中に均一に分散できるからである。
【0033】
また、バインダの含有量は、触媒担持炭素粉末100質量部に対し、0.01質量部〜100質量部とすることが好ましい。この範囲内であれば、十分な結着性が得られ、また電気抵抗が大きくならず、電池性能が低下しないからである。
【0034】
次に、以上の材料を用いた正極および負極の製造方法について説明する。先ず、上記触媒を担持した炭素粉末、プロトン伝導性物質、バインダおよび水と有機溶剤とを均一に分散してスラリーとする。このスラリーの固形分量は、スラリーの全質量100質量部に対して1質量部〜70質量部が好ましい。1質量部未満では十分な粘性が得られないため作業性が悪く、70質量部を超えると粘性が高くなりすぎて作業性が悪くなるからである。これらの材料の分散は、例えばボールミル、ホモジナイザー、超音波分散機などを用いて行うことができるが、これらに限定されない。また、上記有機溶剤としては、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノールなどが使用できる。
【0035】
その後、上記で得られたスラリーを、多孔性の炭素材料からなる拡散層に塗布して乾燥する。続いて熱プレスを行うことで、バインダが溶融・結着し、電極が形成される。熱プレスの温度は、バインダの種類によって異なるが、使用するバインダのガラス転移点以上、ガラス転移点を20℃上回る温度以下に設定することが好ましい。プレスの圧力は3MPa〜50MPaが好ましい。3MPa未満では電極の成形が十分でなく、50MPaを超えると電極内のポアがつぶれてしまい、電池性能が低下するからである。
【0036】
上記正極8および負極9で電解質層10を挟持し、熱プレスで圧着して燃料電池単位セルを作製できる。熱プレスの温度は、100℃〜180℃に設定することが好ましい。プレスの圧力は3MPa〜50MPaが好ましい。100℃未満または3MPa未満では電極の形成が十分でなく、180℃または50MPaを超えると電極内のポアがつぶれてしまい、電池性能が低下するからである。組み立てられた複数の単位セルは略同一平面上に配置され、互いに電気的に接続されて液体燃料電池が組み立てられる。
【0037】
負極9の電解質層10と反対側には液体燃料4を貯蔵する燃料タンク3が隣接して設けられている。燃焼タンク3は、複数の燃料電池単位セルに液体燃料4を供給している。即ち、複数の燃料電池単位セルが、同一の燃料タンクを共用している。
【0038】
液体燃料4としては、例えば、メタノール水溶液、エタノール水溶液、ジメチルエーテル、水素化ホウ素ナトリウム水溶液、水素化ホウ素カリウム水溶液、水素化ホウ素リチウム水溶液などが用いられる。
【0039】
燃料タンク3は、例えば、PTFE、硬質ポリ塩化ビニル、ポリプロピレン、ポリエチレンなどのプラスチックや、ステンレス鋼などの耐食性金属から構成されている。ただし、燃料タンク3を金属で構成する際には、略同一平面上に配置されているそれぞれの負極同士が電気的に短絡しないように絶縁体を導入する必要がある。
【0040】
燃料タンク3の負極9と接する部分には燃料供給孔3aが設けられており、この部分から液体燃料4が負極9へと供給される。また、液体燃料4を含浸して保持しかつ負極9に液体燃料4を供給する液体燃料含浸部として燃料吸い上げ材5が、負極9と接する個所を含む燃料タンク3の内部に設けられている。これにより、液体燃料4が消費されても、液体燃料4と負極9との接触が維持されるため、液体燃料4を最後まで使い切ることができる。燃料吸い上げ材5としては、ガラス繊維を用いることができるが、燃料の含浸によって寸法が余り変化せず、化学的にも安定なものであれば他の材料を用いても良い。
【0041】
正極8の電解質層10と反対側にはカバー板2が設けられており、カバー板2の正極8と接する部分には空気孔1が設けられている。これにより、空気孔1を通して大気中の酸素が正極8と接することができる。カバー板2の端部には、カバー板2と燃料タンク3を貫通する構造を持つ気液分離孔6bが設けられている。この気液分離孔6bの燃料タンク3と反対側には脱着可能な気液分離膜6aが設けられている。この気液分離膜6aは細孔を持つPTFE製シートからなり、放電反応で生成した二酸化炭素などを、液体燃料4を漏液させることなく燃料タンク3から放出させることができる。また、気液分離膜6aを脱着可能とすることで、この気液分離孔6bは液体燃料4を補充する時の充填口ともなる。気液分離孔6b、カバー板2および空気孔1は、例えば、燃料タンク3と同様の材料から構成することができる。
【0042】
ここで、上記細孔を持つPTFE製シートに代えて、気液分離膜6aを、撥油処理を施した多孔質フッ素樹脂膜、または、多孔質フッ素樹脂膜と他の気体透過性材料との積層複合体であって撥油処理を施したもので構成することにより、親油性の液体燃料が気液分離孔を透過することを防止することができ、高濃度の親油性液体燃料を用いる場合にも、燃料タンク3から外部に液体燃料4が漏れるのを防ぐことができる。
【0043】
上記多孔質フッ素樹脂膜に使用できるフッ素樹脂としては、PTFE、PFA、FEP、E/TFE、PVDF、PCTFE、クロロトリフルオロエチレン−エチレン共重合体(E/CTFE)、パーフロロ環状重合体、ポリビニルフルオライド(PVF)などが挙げられる。
【0044】
上記撥油処理を施した多孔質フッ素樹脂膜を作製する方法としては、例えば、多孔質フッ素樹脂膜の表面に、2個以上のフッ素原子を持つフルオロアルキル基を有するポリマーからなる被覆膜を形成する方法を挙げることができる。上記フルオロアルキル基としては、炭素数が4個以上のものが好ましく、水素原子の全てがフッ素置換されたパーフルオロアルキル基が最も望ましい。このようなフルオロアルキル基を有するポリマーを溶解あるいは分散することのできる有機溶媒、例えば、パーフルオロベンゼン、パーフルオロトリブチルアミン、パーフルオロヘキサンなどのフッ素系溶媒を用いて、上記ポリマーのコーティング液を作製し、これを撥油処理剤として多孔質フッ素樹脂膜に塗布、あるいは多孔質フッ素樹脂膜を上記撥油処理剤に浸漬するなどの方法により、多孔質フッ素樹脂膜の表面に上記フルオロアルキル基を有するポリマーからなる被覆膜を形成する。このような撥油処理剤の市販品としては、例えば、ダイキン社製の撥水・撥油加工剤“ユニダイン”(商品名)などを用いることができる。また、上記被覆膜を形成する処理の後に、多孔質フッ素樹脂膜を50℃〜200℃程度の温度で熱処理することにより、撥油性能を向上させることができる。
【0045】
さらに、上記多孔質フッ素樹脂膜を単独で用いることができることに加えて、多孔質フッ素樹脂膜と他の気体透過性材料、例えば、織布、不織布、ネット、フェルトなどとの積層複合体を用いることもできる。このような積層複合体の場合は、多孔質フッ素樹脂膜への撥油処理ではなく、これと積層される気体透過性材料に撥油処理を行うものであってもよい。もちろん、多孔質フッ素樹脂膜の側に撥油処理を行うものでもよく、両者に撥油処理を行ってもよい。
【0046】
上記のような撥油処理を施した少なくとも多孔質フッ素樹脂膜を有する積層複合体の市販品としては、例えば、日東電工社製のフィルター“NTF2131A−PS06”(商品名)、“NTF2133A−S06”(商品名)などを使用することができる。
【0047】
なお、本実施形態の液体燃料電池に用いる撥油処理を施した多孔質フッ素樹脂膜は、液体燃料がメタノール、エタノール、ジメチルエーテルなどの他、親油性の溶液であれば全てに対して漏液防止効果がある。
【0048】
各燃料電池単位セルの電気的な接続は、以下のようにしてなされている。正極8と接する箇所から、隣接する燃料電池単位セルの負極9と接する箇所に渡って集電体7が設置されており、正極8と隣接する燃料電池単位セルの負極9は電気的に接続されている。集電体7は隣接する燃料電池単位セルを電気的に直列に接続する役割を持ち、略同一平面上に並べられた全ての燃料電池単位セルは集電体7によって電気的に直列に接続される。これにより、電池を小型化しつつ、電池の出力を高めることができる。集電体7は、例えば、白金、金などの貴金属や、ステンレス鋼などの耐食性金属、またはカーボンなどを用いることができる。
【0049】
なお、上記略同一平面上に並べられた燃料電池単位セルは、単層のみでなく複数個重ねた積層型とすることもできる。
【0050】
(実施形態2)
図2に本発明の実施形態2の液体燃料電池の断面図を示す。本実施形態は、燃料タンク3の上部および下部を略対称に形成した以外は、実施形態1と同様の構造である。
【0051】
(実施形態3)
図3に本発明の実施形態3の液体燃料電池の断面図を示す。本実施形態では、内部に燃料吸い上げ材5を含む燃料供給路14により、燃料タンク3と外部の燃料タンク13とは接続されている。燃料タンク13には燃料タンク3と同様に液体燃料4が充填されており、燃料供給路14を通じて連続的に液体燃料4を供給する機能を有している。燃料タンク13は、例えば、燃料タンク3と同様の材料から構成することができる。燃料供給路14は、例えば、燃料タンク3と同様の材料や、天然ゴムなどの柔軟性のゴムなどから構成される。燃料タンク13には燃料充填口12が設けられており、液体燃料を追加して充填する機能を持つ。なお、11は気液分離孔である。本実施形態の他の構成は実施形態1と略同様である。
【0052】
(実施形態4)
図4に本発明の実施形態4の液体燃料電池の断面図を示す。本実施形態は、燃料タンク3の上部および下部を略対称に形成したこと以外は、実施形態3と同様の構造である。
【0053】
(実施形態5)
図5に本発明の実施形態5の液体燃料電池の断面図を示す。本実施形態は、実施形態1における燃料電池単位セルの各電解質層が、互いに連続した一体の電解質層10を構成しているもので、電解質層10の構造以外は、略実施形態1と同様の構造である。ここで、各燃料電池単位セルの間隔は、隣接した単位セルの電極間での電流リーク(液短絡)を防止するため、正極8と負極9の距離(電解質層10の厚さ)の10倍〜500倍が好ましく、10倍〜100倍とするのがより好ましい。
【0054】
本実施形態では、各燃料電池単位セル間の隙間が電解質層10で覆われるため、単位セルごとに液体燃料4の漏れを防ぐ封止部を設ける必要がなく、実施形態1〜4に比べて簡単な構造で燃料漏れを防止することができる。
【0055】
(実施形態6)
図6に本発明の実施形態6の液体燃料電池の断面図を示す。また、図7は本実施形態に用いる電解質・絶縁体連続層の平面図であり、図8は図7のA−A’部の断面図である。本実施形態は、燃料電池単位セルの各電解質層10aが、絶縁体層10bを介して互いに独立しかつこの絶縁体層10bと共に一体化された電解質・絶縁体連続層10’を構成しているものである。即ち、実施形態5の電解質層において、単位セル間に存在する電解質層の部分が絶縁体層に置き換えられ、一体の電解質・絶縁体連続層10’とした以外は実施形態5と同様の構造である。
【0056】
上記絶縁体層10bの材質としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、アクリル樹脂、ポリスチレン、ポリビニルアルコール、ポリ四フッ化エチレン、ポリビニルピロリドン、ポリエチレングリコール、ポリカーボネート、ナイロン、シリコン、エポキシ、ポリジメチルシロキサン、セルロース、ポリエチレンテレフタレート、ポリウレタン、ポリグリコール酸、ポリブチレンテレフタレート、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリフェニレンスルフィド、ポリアミドイミド、ポリエーテルイミド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリイミドなどが挙げられる。
【0057】
本実施形態では、各燃料電池単位セルの電解質層10aが絶縁体層10bで分離されるため、各燃料電池単位セルの間隔を狭くした場合でも液短絡の発生がなく、上記実施形態5よりもさらに電池の小型化を図ることができる。
【0058】
【実施例】
次に、本発明の液体燃料電池を実施例に基づき具体的に説明する。ただし、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0059】
(実施例1)
以下のようにして、図1と同様の構造の液体燃料電池を作製した。
【0060】
正極は以下のようにして作製した。先ず、ライオンアクゾ社製の“ケッチェンブラックEC”(商品名)を50質量部、平均粒子径3nmの白金微粒子を50質量部担持した白金担持カーボンを10質量部、エレクトロケム(Electrochem)社製のプロトン伝導性物質“ナフィオン(Nafion)”(商品名、固形分濃度5質量%)を75質量部、フッ素樹脂バインダとしてダイキン社製のPTFEエマルジョン溶液“D1”(商品名、エマルジョン濃度60質量%)を10質量部および水を5質量部準備した。これらをホモジナイザーで混合・分散し、拡散層であるカーボンクロスに白金量が8mg/cm2になるように塗布して乾燥した。次に、120℃、10MPaの条件で2分間熱プレスを行ない電極として成型し、正極を得た。
【0061】
負極は以下のように作製した。先ず、上記“ケッチェンブラックEC”を50質量部、平均粒子径3nmの白金ルテニウム合金微粒子(合金質量比1:1)を50質量部担持した白金担持カーボンを10質量部、上記“ナフィオン”を75質量部、非フッ素系バインダとして平均分子量15000で平均粒子径1μmのポリエチレン粉末を5質量部および水を10質量部準備した。これらをホモジナイザーで均一に混合・分散し、拡散層であるカーボンクロスに白金量が8mg/cm2になるように塗布して乾燥した。次に、120℃、10MPaの条件で2分間熱プレスを行ない電極として成型し、負極を得た。
【0062】
電解質層は、デュポン社製の“ナフィオン117”(商品名)を用い、正極および負極でこの電解質層を挟持し、120℃、10MPaの条件で3分間熱プレスを行ない、燃料電池単位セルを作製した。なお、電極面積は正極、負極ともに10cm2とした。
【0063】
カバー板および燃料タンクは、ステンレス(SUS316)に絶縁性の塗膜として日本ペイント社製のフェノール樹脂系塗料“マイカスA”(商品名)を塗布したもので構成した。正極集電体は厚さ10μmの金製のシートからなり、エポキシ樹脂を用いて正極と接着した。液体燃料としては、5質量%のメタノール水溶液を用いた。負極集電体は正極集電体と同様の材質で構成した。気液分離膜は細孔を持つPTFE製の膜から構成した。
【0064】
(実施例2)
負極の非フッ素系バインダとして上記ポリエチレン粉末5質量部に代えて、平均粒子径1μmのエチレン・エチルアクリレート共重合体粉末5質量部を用い、プレス時の加熱温度を160℃としたこと以外は、実施例1と同様にして液体燃料電池を作製した。
【0065】
(実施例3)
負極のバインダである上記ポリエチレン粉末5質量部と水10質量部に代えて、フッ素樹脂バインダである前記PTFEエマルジョン溶液“D1”10質量部と水5質量部を用い、プレス時の加熱温度を160℃とした以外は、実施例1と同様にして液体燃料電池を作製した。
【0066】
以上のように作製した実施例1〜3の液体燃料電池に対して、室温(20℃)下で500mAを印加したときの作動電圧を測定した。その結果を表1に示す。
【0067】
【表1】
【0068】
表1から明らかなように、実施例1および実施例2では、実施例3に比べて作動電圧が高いことがわかる。これは、実施例1および実施例2では、負極に非フッ素系バインダを用いているため、メタノール水溶液に対する負極の濡れ性が大きくなり、メタノールの酸化反応が進み、負極性能が向上したものと考えられる。
【0069】
(実施例4)
先ず、図7、図8に示すように、厚さ50μmのポリエーテルスルホンからなる絶縁体シートを準備し、正極、負極を積層する部分に電解質層を配置できるように貫通穴を開けた後、その貫通穴にエレクトロケム社製の前記“ナフィオン”溶液を流し込み、その後乾燥して固化し、電解質・絶縁体連続膜を形成した。
【0070】
次に、図6に示すように正極8は、多孔度78%、厚さ280μmのカーボンペーパーからなる拡散層8aと、粒子径2nm〜5nmの白金粒子を粒子径30nmのカーボン粒子に担持して形成した厚さ50μmの触媒層8bから構成した。
【0071】
ここで、正極8は、以下のように作製した。まず、市販の上記白金を担持したカーボンとイオン交換水とを混合・攪拌した後、粘度を調整して触媒用のインクとした。このインクを上記カーボンペーパー上に塗布し、乾燥した後、上記絶縁体シートに形成した電解質層の部分にホットプレスすることで接合した。
【0072】
負極9は、上記白金を担持したカーボンの代わりに、粒子径5nm〜10nmの白金−ルテニウム合金粒子(合金質量比1:1)を用いたこと以外は上記正極8と同様の方法で作製した。
【0073】
このように作製した燃料電池単位セルと、液体燃料として3質量%のメタノール水溶液を用い、これら以外は実施例1と同様にして図6に示すような液体燃料電池を作製した。
【0074】
(実施例5)
図9に示した構造を用いた以外は実施例4と同様にして液体燃料電池を作製した。
【0075】
(実施例6)
図1に示したように、複数の燃料電池単位セルの各電解質層の間に絶縁体層を配置せず、燃料電池単位セルをそれぞれ分離して形成した以外は実施例4と同様にして液体燃料電池を作製した。
【0076】
次に、実施例4〜6の液体燃料電池を用いて各燃料電池単位セルの出力を測定した。出力の測定は、100mAの定電流で放電を行い、放電開始から20分後の各単位セルの電圧を測定することにより出力を求め、各単位セルの出力の平均を求めた。その結果を表2に示す。
【0077】
【表2】
【0078】
表2から明らかなように、実施例4および実施例5の液体燃料電池の出力は、実施例6の液体燃料電池の出力に比べて大きく、小型化に適する構造であることがわかる。
【0079】
また、実施例5が実施例4に比べて出力が高いのは、実施例5では外部の燃料タンク内の液体燃料の液圧により、負極近傍への液体燃料の移動がスムーズになったためと考えられる。
【0080】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明は、小型でかつ安定的に発電することのできる液体燃料電池を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の実施形態1の液体燃料電池の断面図である。
【図2】 本発明の実施形態2の液体燃料電池の断面図である。
【図3】 本発明の実施形態3の液体燃料電池の断面図である。
【図4】 本発明の実施形態4の液体燃料電池の断面図である。
【図5】 本発明の実施形態5の液体燃料電池の断面図である。
【図6】 本発明の実施形態6の液体燃料電池の断面図である。
【図7】 本発明の実施形態6で用いる電解質・絶縁体連続膜の平面図である。
【図8】 図7のA−A’部の断面図である。
【図9】 本発明の実施例5の液体燃料電池の断面図である。
【符号の説明】
1 空気孔
2 カバー板
3 燃料タンク
3a 燃料供給孔
4 液体燃料
5 燃料吸い上げ材
6a 気液分離膜
6b 気液分離孔
7 集電体
8 正極
8a 拡散層
8b 触媒層
9 負極
9a 拡散層
9b 触媒層
10 電解質層
10’ 電解質・絶縁体連続層
10a 電解質層
10b 絶縁体層
11 気液分離孔
12 燃料充填口
13 燃料タンク
14 燃料供給路
Claims (13)
- 酸素を還元する正極と、液体燃料を酸化する負極と、前記正極および前記負極の間に配置された電解質層とを含む燃料電池単位セルを複数備えると共に、液体燃料を貯蔵する液体燃料貯蔵部を備えた液体燃料電池であって、
複数の前記燃料電池単位セルが、略同一平面上に配置され、
前記液体燃料貯蔵部が、気液分離膜を含む気液分離孔を備え、
前記気液分離膜が、撥油処理を施した多孔質フッ素樹脂膜、または、多孔質フッ素樹脂膜と他の気体透過性材料との積層複合体であって撥油処理を施したものであることを特徴とする液体燃料電池。 - 複数の前記燃料電池単位セルが、同一の前記液体燃料貯蔵部から液体燃料の供給を受ける請求項1に記載の液体燃料電池。
- 複数の前記燃料電池単位セルの各電解質層が、互いに連続した一体の電解質層を構成している請求項1または2に記載の液体燃料電池。
- 複数の前記燃料電池単位セルの各電解質層が、絶縁体層を介して互いに独立しかつ前記絶縁体層と共に一体化された連続層を構成している請求項1または2に記載の液体燃料電池。
- 複数の前記燃料電池単位セルが、電気的に直列に接続されている請求項1〜4のいずれかに記載の液体燃料電池。
- 液体燃料を含浸して保持しかつ負極に液体燃料を供給する液体燃料含浸部をさらに備えた請求項1〜5のいずれかに記載の液体燃料電池。
- 前記負極が、イオン伝導性を持たずかつフッ素を含有しないバインダを含む請求項1〜6のいずれかに記載の液体燃料電池。
- 前記バインダが、熱可塑性バインダである請求項7に記載の液体燃料電池。
- 前記バインダが、ポリエチレン、ポリプロピレン、ナイロン、ポリエステル、アイオノマー、ブチルゴム、エチレン・酢酸ビニル共重合体、エチレン・エチルアクリレート共重合体およびエチレン・アクリル酸共重合体からなる群から選択される少なくとも一つを含む請求項7に記載の液体燃料電池。
- 前記バインダの粒子径が、0.01μm〜100μmである請求項7〜9のいずれかに記載の液体燃料電池。
- 前記液体燃料貯蔵部が、連結部を介してさらに別の液体燃料貯蔵部と接続している請求項1〜10のいずれかに記載の液体燃料電池。
- 前記連結部の内部に、液体燃料含浸部を備えた請求項11に記載の液体燃料電池。
- 複数の前記燃料電池単位セルが、前記液体燃料貯蔵部を介して対峙している請求項1〜12のいずれかに記載の液体燃料電池。
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