JP4155708B2 - 球技用ボール - Google Patents

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Description

本発明は、サッカーボール、ハンドボール、バレーボールなどの球技用ボールに関する。
従来、この種の空気封入構造の球技用ボールには、貼りボールと縫いボールの2種類がある。
貼りボールは、たとえば特許文献1に示されるように、空気非透過性ゴムよりなり、バルブを介して圧搾空気が封入される球形中空体のゴムチューブと、このチューブ上にナイロンフィラメントなどの繊維を数千m分あらゆる円周方向に巻いて形成され、ボールとしての品質(重量、大きさ、真球性、耐久性、球状維持性、経時変化に対する強度向上)の安定化を目的とする補強層と、この補強層上に接着された加硫ゴム薄層よりなるカバーゴム層と、このカバーゴム層上に接着された複数枚の皮革パネルよりなる表皮層にて構成される。カバーゴム層は、皮革パネルをボールに強く接着させる作用をもつ。皮革パネルとして、人工皮革または天然皮革パネルが使用される。なお、通常皮革パネル裏面端部は斜めに切除され(コバ削ぎと称される)、皮革パネル接合部に略V字状の溝が形成されることが多い。
かかる構造のボールにあっては、製造が機械化できるため生産性(重量、大きさのバラツキが少ない)がよく、一般に安価である。また真球性、耐久性に優れている。他方、パネル接合部の溝の幅が広く(通常約8mm)、かつ浅い(通常約1mm)ために、空気抵抗が減少せず、飛距離が伸びないという問題がある。また、グリップ性に劣り掴みにくいという問題もある。
縫いボールは、複数枚の皮革パネルをその端縁同士を内側に折り込んで、糸(通常約10000デニールの糸)にて縫い合わせて球状とした表皮層内に、前述と同様のチューブを収納したものである。皮革パネルとして、前述と同様の人工皮革または天然皮革が使用され、通常その裏面に複数枚の織布を貼りあわせてなるバッキング材が接着されている。すなわち、これら織布はラテックス、糊などの接着剤にて皮革パネル裏面に接着され、皮革パネルを補強するのである。かかる構造の縫いボールは、たとえば特開平9−19516号公報に開示されている。
かかる構造のボールにあっては、皮革パネルがバッキング材とともに内側へ折り込まれるので、この部分に形成される溝は、幅約2.5mm、深さ約2.0mmと、貼りボールのそれに比較して、幅は小さく、かつ深い。それゆえ、空気抵抗が小さくなり、飛距離が大きくなり、またグリップ性すなわち手に持ったときの掴みやすさ、操作性、ボールコントロール性に優れているという利点がある。しかしながら、ボールが立体であることからミシン縫いができず、手縫いに頼らざるを得ず、熟練を要し、個人差が大きく、生産性が悪いという問題がある。品質も不安定であり、重量、大きさ、真球性にバラツキを生じやすい。
ボールには、約1.0kg/cm2の内圧および蹴球等衝撃が加わったときには、数100kg以上の力または衝撃が加わる。このため縫い目開きという不具合を生じ、ボールサイズが規格より大きくなったり、あるいは変形することがある。また最悪のばあい衝撃のため糸が切れ、または糸の結び目がほどけてチューブがとびだす危険がある。通常縫いボールの耐久性は貼りボールの1/2〜1/3程度である。
米国特許第4,333,648号明細書
本発明の目的は、貼りボール構造における空力特性などを改善することである。叙上の課題をボールの皮革パネルの接合部に縫いボールと同様の溝を形成することにより解決したものであり、貼りボールの品質(重量、大きさ、真球性、耐久性、形状維持性、経時変化に対する強度向上)を維持しつつ、縫いボールの飛距離、グリップ性、ボールコントロール性を併せもつボールを実現するものである。
本発明にかかわるボールは、圧搾空気が封入された球形中空体の弾性チューブ、該チューブ表面全面に形成された補強層、該補強層上に直接またはカバーゴム層を介して接着された複数枚の皮革パネルよりなる球技用ボールにおいて、前記皮革パネルはその周縁部が内側へ折り込まれるとともに、前記皮革パネルの折り込まれた部分にて囲まれた皮革パネルの裏面に、前記皮革パネルの折り込みにより生じる段差を解消する厚さ調整部材が接着せしめられてなるものである。かかる構造であれば、隣接する皮革パネルの接合部に、縫いボールと同じ形状の溝ができ、この溝は空気抵抗を減じ、グリップ性を向上させ、ボールを掴みやすくし、したがって操作性、ボールコントロール性を向上させる。また厚さ調整部材の存在により、皮革パネル裏面は平坦面となり、したがって折り込みにより生じる段差が皮革パネル表面に現れることはない。
また、前記皮革パネルの周縁部が内側へ略180度折り込まれてなることが好ましい。かかる構成であれば、皮革パネルの折り込み部がカバーゴム層または補強層に接着されるために、かりにパネル接合部に剥離を生じても、折り込み部がめくれてボール表面に現れるおそれは少ない。
また、前記皮革パネルの周縁部が内側へ略90度折り込まれてなることが好ましい。かか構造であれば、皮革パネルの折り込み部がカバーゴム層または補強層と厚さ調整部材との間に入り込むことはないから、この折り込み部の厚さが皮革パネル表面に凹凸となって現れるおそれはない。
また、前記皮革パネルが隣接する皮革パネルとの接合部において接着されてなることが好ましい。かかる構造であれば、皮革パネルの接合部からの水分の侵入を防止する。また、皮革パネルの剥離を防止し、耐久性を向上させることができる。
また、前記皮革パネルの折り込まれた部分に、切り込みが形成されてなることが好ましい。かかる構造であれば、湾曲線状に折り込まれるばあいでも、無理なく折り込むことができる。
また、前記厚さ調整部材が織布よりなることが好ましい。かかる構成であれば、織布のもつバイアス効果により、ボールに外力が加わったとき、その変形が阻害されることはない。また皮革パネルに傷を生じるような外力が加わったばあいにも、その力は織布にて阻止され、チューブは保護される。
また、前記厚さ調整部材が衝撃緩衝部材よりなることが好ましい。かかる構成であれば、ボールに加わる外力がこの衝撃緩衝部材にて吸収緩和され、ボールが人体にぶつかったときの感触をソフトなものとする。
また、前記厚さ調整部材が、織布と衝撃緩衝部材の積層構造からなることが好ましい。かかる構成であれば、織布によりその内側の衝撃緩衝部材およびチューブが保護され、衝撃緩衝部材により衝撃緩衝作用が得られる。
また、前記衝撃緩衝部材が、発泡材、不織布、嵩高織物またはハニカム構造部材からなることが好ましい。かかる構成であれば、織布によりその内側の衝撃緩衝部材およびチューブが保護され、衝撃緩衝部材により衝撃緩衝作用が得られる。
また、前記皮革パネルと前記厚さ調整部材の間に補強層が介在せしめられてなることが好ましい。かかる構成であれば、チューブの内圧により皮革パネルを拡張しようとする力が加わったとき、補強層がその拡張を阻止し、ボールの膨脹を抑える。また皮革パネルに傷を生じるような外力が加わったばあいにも、その力は補強層にて阻止され、チューブは保護される。
また、前記補強層が、ポリエステルフィルム、PVCフィルム、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルムのいずれかよりなることが好ましい。かかる構造であれば、可撓性を有し、軽量かつ薄い補強層がえられる。
本発明の球技用ボールは、耐久性が高く、かつコストが低いため、オリンピック等の公式試合だけでなく、学校の体育の授業やクラブ活動に用いられるいわゆる練習用のボールとして有用である。
つぎに、本発明の実施例にかかわる球技用ボールにつき、添付図を参照しつつ詳細に説明する。
実施例1
図1において、1はサッカーボールの一例を示し、2は、ブチルゴムなどの空気非透過性を有する弾性材料にて球形中空体に形成されたチューブで圧搾空気が封入されている。3は、このチューブ2に圧搾空気を注入するためのバルブであり、約1.0kg/cm2の内圧に設定される。4は、チューブ2の表面に繊維たとえばナイロンフィラメントを約3000mほど、円周上のあらゆる方向に巻回して形成した補強層である。この補強層4により、前述したようにボールとしての品質の向上と安定化が図られる。補強層4としては、前記のごとく糸を巻くほかに、複数枚の綿布などの織布をチューブ2表面に重ねて貼りつけることによってもまた織布を球形に縫い合わせて形成することもできる。このほかポリウレタン、ポリエステル、ナイロン、ポリオレフィン等のエラストマーを球形に成形したもの、或いは強化繊維を配合したゴムにて形成したものもチューブとして使用でき、かかる構造のチューブは、それ自体補強機能を有するから、別途補強層を設ける必要はない。チューブ表面に補強層を有するとは、上記構造のチューブを含む意味で使用される。5は、補強層4上に形成された天然ゴムなどよりなるカバーゴム層、6,6,‥‥‥は、カバーゴム層5上にCR(クロロプレン)系接着剤などの接着剤により接着された皮革パネルである。なおこの皮革パネル6の裏面には、後述する厚さ調整部材10が接着されている。
本実施例においては、厚さ調整部材10を接着した12枚の5角形パネルと20枚の6角形パネルにて、球面全体が被覆される。ガハーゴム層5は、皮革パネル6及び厚さ調整部材10との接着を強固にする作用をなすが、これを省き直接補強層4へ皮革パネル6を接着する構造も可能であり、特に補強層4として織布の貼り構造又は織布の縫い構造を採用したとき、カバーゴム層5を省略することが多い。またカバーゴム層5を皮革パネル6,6,‥‥‥の接合部のみに形成することもできる。皮革パネル6,6,‥‥‥として、人工皮革(合成皮革を含む。以下同じ)または天然皮革が使用される。この皮革パネル6の裏面には、補強のため織布等よりなるバッキング材を接着することもでき、この場合、皮革パネル6とは、バッキング材を含む意味として使用される。
図2および3に示すように、皮革パネル6,6,‥‥‥は、その端部が裏面側へ略180度折り込まれている。それ故、皮革パネル6,6,‥‥‥の接合端部は、断面ほぼ半円形となり、縫いボールの溝と同一形状の溝7が形成される。皮革パネル6,6,‥‥‥のカバーゴム層5への接着の際、皮革パネル6,6,‥‥‥同士の突き合わせた接合部を接着してもよい。かかる構造とすれば、皮革パネル6,6,‥‥‥の接合部において両者が分離することがなく、貼り目からの水分などの侵入が防止され、さらにボール自体の膨脹が抑制されることにより耐久性が向上する。
皮革パネル6の端部を裏面側に折り込むばあい、その折り込み部分は、図3に示すように折り込み部8,8,‥‥‥の中間にV字状の切り込み9,9,‥‥‥を設ける必要がある。多角形皮革パネル6の各辺S,S,‥‥‥は、球面に沿わせるためにわずか外側へ湾曲せしめられているからである。折り込み部8,8,‥‥‥の幅は、約1〜10mm好ましくは約3mmとすることができる。
10は、前述の皮革パネル6の裏面の折り込み部8,8,‥‥‥にて囲まれた領域に接着された厚さ調整部材で、皮革パネル6と、ほぼ同一厚さに設定されている。すなわち、皮革パネル6の厚さは、通常約1.6〜1.8mmであるから、厚さ調整部材10もまた、この厚さに設定されるのである。これにより、折り込み部8,8,‥‥‥と皮革パネル6裏面との間に生じる段差が解消される。この厚さ調整部材10として、単数または複数枚の織布を使用することができる。複数枚の織布を使用するばあい、これらは重ね合わされてラテックス糊などで接着する。通常、織布として、綿布または綿とポリエステルの混紡が適しており、これを3〜4枚重ね合わせると、前記厚さとなる。
貼りボールにおいては、補強層4により真球性などその形状が維持されるため、この上に直接またはカバーゴム層5を介して皮革パネル6を接着したばあい、厚さ調整部材10が存在しないときは、皮革パネル6側が折り込み部8,8,‥‥‥の段差に沿って折れ曲がって補強層4側に接着されることになり、滑らかな球体表面がえられないという問題がある。厚さ調整部材10は、これを解消るもので、皮革パネル6の裏面を平坦な面とし、したがってその表面を滑らかなものとするのである。
図4は、3枚の織布11,11,11を貼り合わせて厚さ調整部材10を形成した構造を示す。織布11は、縦糸(経糸)と横糸(緯糸)を交差させ、互いに相手の糸の上側または下側をぬう連続した波形構造であり、縦糸および横糸に対し45度方向など角度をつけた方向に引っ張ったばあい、大きな伸縮作用がえられ、これをバイアス効果という。織布11は、このバイアス効果により、ボールに外力が加わったとき、外力に応じて伸縮したボールの変形を阻害することはない。また織布11の縦糸および横糸方向には、強い引張強度を有するから、皮革パネル6を強化する作用も果たす。さらに皮革パネル6を傷つけこれを破損するような外力が加わったばあいにも、その力は織布11にて止められるから、チューブ2まで破損することは少ない。
図5は、厚さ調整部材10として、織布11に代えて、衝撃緩衝部材12を使用した構造を示す。衝撃緩衝部材12の材料として、たとえばクロロプレン(CR)、ポリウレタン(PV)、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)、ポリエチレン、ポリ塩化ビニル(PVC)、天然ゴムラテックス、合成ゴムラッテクス、ポリスチレン、ポリオレフィン、エチレン-プロピレン−ジエン3元共重合体ゴム(EPDM)などよりなる発泡材又は、不織布、3次元織物の嵩高織物、ハニカム構造部材が適している。この発泡材等のシートが、皮革パネル6の裏面に接着され、折り込み部8の段差が埋められる。厚さ調整部材10としては、上記例のほか、織布11と衝撃緩衝部材12の積層構造を採用することもできる。なお、ここで嵩高織物とは、複層の織物において、横糸をそれぞれの層の織物にからませた構造よりなり、柔らかい3次元構造の織物である。また、ハニカム構造部材とは、不織布又はスポンジ(ポリウレタン、EPDM、クロロプレンゴムの発泡体)をハニカム状に打ち抜いたものである。
図6は、皮革パネル6と厚さ調整部材10の間に補強層13を介在させた構造を示し、補強層13の材料として、ポリエステルフィルム、PVCフィルム、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルムが適している。これらのフィルムは、引張強度が大きく、可撓性を有し、軽量かつ薄く形成できるからである。この補強層13は、厚さ調整部材10として、織布11より衝撃緩衝部材12を使用したばあいに、より効果的である。機械的強度において、衝撃緩衝部材12の方が織布11より弱いからである。
図7は、別の形態を示し、皮革パネル14の周縁部が内側へ、角部が丸みをもって略90度折り込まれ、この折り込まれた部分にて厚さ調整部材15の側面を被覆したものである。皮革パネル14には、前述の皮革パネル6と同様、その裏面に補強のため織布等のバッキング材を被着してもよく、この場合、皮革パネル14とは、かかるバッキング材を含む意味として使用される。厚さ調整部材15は、織布16と、衝撃緩衝部材17の2層構造からなる。ここで、織布16は、前述の厚さ調整部材10と同一材料が使用でき、織布1枚又は2枚重ねた層とすることができる。また衝撃緩衝部材17もまた、前述の衝撃緩衝部材12と同一材料が使用できる。これらの材料は、天然ラテックス、クロロプレン(CR)系接着剤、プリウレタン(PU)系接着剤等の接着剤にて互いに接着され、かつ皮革パネル14裏面に接着されている。厚さ調整部材15を接着した皮革パネル14は、前述の例と同様、カバーゴム層5上にCR系接着剤にて接着されている。皮革パネル14の全体の厚さは、2〜10mm、このうち衝撃緩衝部材17の厚さは、1〜7mmとすることができる。かかる構造であれば、略90度折り曲げた皮革パネル14の周縁に溝7が形成される。この溝7が形成される皮革パネル14の接合部が開くのを防止するために、この接合部は、PU系接着剤等にて接着される。これにより、水分が突き合わせ部から侵入するのを防ぐことができ、また接合部が開くことがないから一定の美観を長期間維持できる。また皮革パネル14及び厚さ調整部材15の剥離を防止でき、ボールの耐久性を向上させることができる。
図8〜図10は、皮革パネル14及び厚さ調整部材15の接着方法を示し、例えば6角形に裁断した皮革パネル14の裏面に厚さ調整部材15、すなわち織布16、続いて衝撃緩衝部材17が積層されて天然ラテックス、CR系接着剤、PU系接着剤等の接着剤にて接着される。皮革パネル14の周縁部には、厚さ調整部材15を覆う折り曲げ部19が形成されている。皮革パネル14の各角部は、図8に示すように、折り曲げたとき尖った部分が形成されないよう、丸く裁断されている。皮革パネル14は、折り曲げ部19に上記同様の接着剤が塗布された後、厚さ調整部材15の形状に略等しい形状の凹部20を有する金型21にて、皮革パネル14及び厚さ調整部材15をプレスすることにより形成される。このとき折り曲げ部19は折れ曲がり、厚さ調整部材15の側面を被覆してこれに接着する(図9、10)。パネル突き合わせ部の接着は、皮革パネル14の折り曲げ部19と、これに隣接する皮革パネル14の折り曲げ部19とを接着することによりなされる。
図11〜図13は、皮革パネル14の別の構造を示し、図11は、厚さ調整部材15を、衝撃緩衝部材17とこれを挟む2層の織布16a、16bにて構成したものを、図12は、厚さ調整部材15を、2層の織布16a、16b及び2層の衝撃緩衝部材17a、17bにて構成しこれらを交互に積層したもの、さらに図13は、厚さ調整部材15を3層の織布16a、16b、16c及び2層の衝撃緩衝部材17a、17bにて構成しこれらを交互に積層したものを示す。織布16を複数層としこれを増やすことによって、厚さ調整部材15の強度を増すと同時に、チューブ2(図7)を保護する作用を向上させる。すなわち、ボールが鋭利な物体にぶつかって皮革パネル14が破れたとすると、まず織布16aにて阻止され、これが破れても次の織布16b、さらに織布16c(3層の場合)にてチューブを保護するのである。
通常5角形及び6角形の皮革パネルは、球形表面を覆うためにその各辺がわずか外側へ湾曲した曲線とされるが、実際の手縫いボールにあっては、皮革パネルの接合部が縫い糸にて引っ張られ、滑らかな曲線とならず、皮革パネル周辺が糸部分が突出した波形状を呈することが多い。それ故これを模して、図14に示すように皮革パネル14の周辺に予め波状の凹凸22を形成しておくこともできる。かくすれば、より手縫いボールに類似した外観を呈するボールを実現することができる。またかかる構造であれば、接合部の溝の縁が凹凸を描くことから、グリップ性が増し、かつ空力特性が向上する。皮革パネル14の周辺の波形の凹凸22は、熱プレス又は高周波加工により形成することができる。
前記の実施例1では、サッカーボールの例をあげて説明したが、これに限らずハンドボール、バレーボール、ドッジボール、バスケットボール、ラグビーボールなどにも適用できる。ハンドボールのばあい、皮革パネルの形状はサッカーボールのそれと略同じであり、バレーボールおよびドッジボールのばあい、皮革パネルの形状は、各辺が外側に湾曲した長方形に設定される。
次に本発明実施例にかかわるボールと従来のボールとの特性を比較した結果につき、説明する。本発明の実施例にかかわるサッカーボール(5号サイズ)として、チューブおよび糸巻補強層を従来の構造とし、皮革パネルとして、周縁部を内側に90度折り込み、厚さ調整部材として1枚のポリエステル・綿混紡織布とCR発泡体を積層し、皮革パネルおよび厚さ調整部材合計の厚さ5mmのものを使用した。また皮革パネル同士の突き合わせ部に形成される溝の幅は、2.5mm、深さは、2mmであった。また比較例として、典型的な同一サイズの手縫いボール及び貼りボールを使用した。
圧縮試験:次表1は、ボールの直径方向に33%圧縮、30,000回繰り返した場合における成長率(円周の膨張率)を示す。
Figure 0004155708
表より明らかなように、実施例のボールは、貼りボールと略等しい成長率を示し、手縫いボールは成長率が大きいことがわかる。このことは、耐久性において、実施例のボールおよび貼りボールは優れているが、手縫いボールはこれらに比較して劣るということを意味している。この耐久性の差は、主として補強層のに差によるものである。
飛距離試験:図15は、キッキングマシンにて一定の初速度で一定角度に蹴り出した場合の飛距離(直進方向)を示す。この結果より以下のことがわかる。
(a)実施例のボールおよび手縫いボールは、貼りボールより飛距離が大きい。
(b)実施例のボールと手縫いボールの飛距離は、略同等である。
(c)実施例のボールに比較して手縫いボールおよび貼りボールは左右方向のブレが大きく、ブレの大きさは、実施例のボール<手縫いボール<貼りボールの順である。
手縫いボールのブレが大きいのは、手縫い部分の溝形状が不均一(手で縫われることが原因)であるため、ボール球面の部位によって空気抵抗に差を生じるためと考えられる。これに対し、実施例のボールは、皮革パネルおよび厚さ調整部材の接着作業を機械にて行なうことが可能であるため、その品質が安定しており、したがってパネル接合部の溝は、形状が均一であり、したがってその空気抵抗は均一となり、飛跡にブレを生じないと考えられる。
貼りボールの飛距離が小さいのは、その溝の形状から空気抵抗が低下しないためである。また貼りボールの飛跡のブレが大きいのは、溝による飛跡安定効果が小さいためである。以上より、実施例のボールが最も飛距離が出て、かつブレが小さく、それ故選手にとってコントロールしやすく使いやすいボールであることが分かる。
カーブ特性試験:図16は、上記同様のキッキングマシンを用いて、一定の初速度、一定角度でかつ回転を与えて蹴り出した場合のカーブ特性を示す。なお、貼りボールは、実施例のボールおよび手縫いボールに比較して直進方向、左右方向ともにブレが極端に大きいため、データを除外した。上記二種のボールにつき、以下のことがわかる。
(a)実施例のボールは直進方向のブレは手縫いボールに比較して小さい。
(b)カーブの割合は、手縫いボールの方がわずかに大きい。
この結果より、実施例のボールは、カーブ特性において手縫いボールに比較して僅かに劣るものの、着地領域のバラツキが小さいことが分かる。実際の競技においては、カーブ特性におけるこの程度の差は、ほとんど問題にならず、着地領域のバラツキが安定していることの方が重要である。選手にとって、ボールのカーブ特性は、一旦それを認識すればコントロールできるのに対し、飛距離のブレは予測できないからである。
上記試験においては、ボールの補強層として従来構造の糸巻補強層、すなわちナイロンフィラメントを約3000mチューブ表面のあらゆる方向に巻いてボールに真球性、球状維持性、強度、耐久性を付与した補強層を使用した場合につき説明したが、このほか、前述した複数枚の織布を貼り合わせあるいは縫い合わせて球状とし上記特性を付与する補強層、さらにそれ自体補強機能を有するチューブを使用した場合においても、略同様の結果が得られる。重要な点は、補強層がチューブ全面に略均一に形成され、したがってボールとしての真球性およびその形状維持性に優れていることであり、かかる前提に加えて、本発明にかかる皮革パネルを使用することにより、前述の飛距離の向上および飛跡の安定化、カーブ特性の安定化が実現されるのである。
本発明の請求項1〜3によれば、真球性、形状維持特性、耐久性などにおいて貼りボールと同等の品質が維持され、かつ皮革パネル接合部に縫いボールと同じ形状の溝を有することから空気抵抗を減少させ、飛距離を伸ばすことができる。またこの溝によりグリップしやすくなるから、操作性およびボールコントロール性を向上させることができる。また、皮革パネルの表面は、なめらかな球体を描くから、製品としての見栄えをよくすることができる。さらに本発明にかかるボールは、基本的に貼りボール構造であるから、機械的な生産が可能であり、安定した品質と安価なコストを達成することができる。
また、皮革パネルの接合部からの水分の侵入を防止することができる。また、皮革パネル剥離を防止し、耐久性を向上させる。
本発明の請求項によれば、通常多角形であってその各辺が外側へわずか湾曲しているこの種ボール表面を達成する皮革パネルの周縁を裏面側へ折り込むに際し、無理なく折り込むことができ、真球性が損なわれたり、皮革パネルの接合部に凹凸が生じたりすることはない。
本発明の請求項によれば、皮革パネル自体の強度が増すと同時に、チューブが保護されているから、ボールに皮革パネルが破れるほどの外力が加わったばあいにも、チューブまで損傷することは少ない。
本発明の請求項によれば、大きな衝撃緩衝作用がえられ、ボールが人体に当たったときの衝撃を緩和し、痛みをやわらげ触感をソフトなものとすることができる。
本発明の請求項によれば、織布によりその内側の衝撃緩衝部材およびチューブが保護される。また、衝撃緩衝部材による、衝撃緩衝作用が得られる。
本発明の請求項によれば、発泡材、不織布、嵩高織物またはハニカム構造部材が軽量であることから、ボール自体の軽量化が図られ、かつそのクッション性により優れた衝撃の吸収緩和作用が得られる。
本発明の一態様にかかわる球技用ボールを示す一部切欠斜視図である。 図1のA−A線断面図である。 皮革パネルの裏面を示す平面図である。 皮革パネルの一態様を示す断面図である。 皮革パネルの他の態様を示す断面図である。 皮革パネルのさらに他の態様を示す断面図である。 皮革パネルのさらに他の態様を示す断面図である。 皮革パネルと厚さ調整部材との接着方法を示す説明図である。 皮革パネルと厚さ調整部材との接着方法を示す説明図である。 皮革パネルと厚さ調整部材との接着方法を示す説明図である。 皮革パネルのさらに他の態様を示す断面説明図である。 皮革パネルのさらに他の態様を示す断面説明図である。 皮革パネルのさらに他の態様を示す断面説明図である。 皮革パネルのさらに他の態様を示す平面説明図である。 飛距離を示すグラフである。 カーブ特性を示すグラフである。

Claims (10)

  1. 圧搾空気が封入された球形中空体の弾性チューブ
    該チューブ表面全面に形成された補強層
    該補強層上に直接またはカバーゴム層を介して接着された複数枚の皮革パネルとを備えた球技用ボールにおいて、
    前記皮革パネルは、その周縁部が前記弾性チューブ側に折り曲げられる折り曲げ部を有し、前記皮革パネルの折り曲げ部にて囲まれた前記皮革パネルの裏面に、厚さを調整する厚さ調整部材が接着せしめられ
    前記皮革パネルの折り曲げ部に設けられる接合部において、隣接する皮革パネルと接着されてなる球技用貼りボール。
  2. 前記皮革パネルの周縁部が内側へ略180度折り込まれてなる請求項1記載の球技用貼りボール。
  3. 前記皮革パネルの周縁部が内側へ略90度折り曲げられてなる請求項1記載の球技用貼りボール。
  4. 前記皮革パネルの折り込まれた部分に、切り込みが形成されてなる請求項2記載の球技用貼りボール。
  5. 前記厚さ調整部材が織布よりなる請求項1、2、3または記載の球技用貼りボール。
  6. 前記厚さ調整部材が衝撃緩衝部材よりなる請求項1、2、3または記載の球技用貼りボール。
  7. 前記厚さ調整部材が、織布と衝撃緩衝部材の積層構造からなる請求項1、2、3または記載の球技用貼りボール。
  8. 前記衝撃緩衝部材が発泡材、不織布、嵩高織物又はハニカム構造部材よりなる請求項または記載の球技用貼りボール。
  9. 前記皮革パネルと前記厚さ調整部材の間に補強層が介在せしめられてなる請求項1、2、3、4、5、6、7または記載の球技用貼りボール。
  10. 前記補強層が、ポリエステルフィルム、PVCフィルム、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルムのいずれかよりなる請求項記載の球技用貼りボール。
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