JP4155754B2 - ポリフェニレンスルフィド樹脂組成物 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は靱性(衝撃強度)、ウェルド強度、耐熱クリープ性、耐水蒸気透過性および耐油性、耐薬品性、耐熱性に優れたポリフェニレンスルフィド樹脂組成物に関するものであり、さらには、家電・OA機器のシャーシー材料、筐体材料、そしてさらにはリチウム金属電池、リチウムイオン電池(以下リチウム電池と略称する)、ポリマーイオン電池、ニッケル−水素電池、鉛蓄電池、アルカリ蓄電池などの二次電池の電槽(容器)、二次電池を構成するシートまたはフィルム材料として好適に用いられる二次電池電槽用ポリフェニレンスルフィド樹脂組成物に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、非強化のポリフェニレンスルフィドは、その結晶性に起因して流動特性が良好で。耐熱性、耐水性に優れるため電子分野で利用されているが成形材料として、靱性(衝撃強度)に劣る欠点を有するため各種成形品(特に大型成形品)に利用することが困難である。
このためポリフェニレンスルフィドのこれらの欠点を解消するため各種樹脂、各種熱可塑性エラストマー等とブレンドまたはアロイ化する試みが数多く提案されている。例えば、特公昭56−34032号公報にはポリフェニレンオキサイド類とポリフェニレンスルフィド類から成る成形性、難燃性に優れた樹脂組成物が提案されており、特開昭59−164360号公報にはポリフェニレンスルフィド樹脂とポリフェニレンオキサイド樹脂の混合物にエポキシ樹脂を配合してなる樹脂組成物が提案されている。
【0003】
また、本出願人が提案した特開昭58−27740号公報には、ポリフェニレンスルフィドや他のエンジニアリング樹脂とα,β−不飽和カルボン酸の誘導体で変性した水添ブロック共重合体からなる、耐衝撃性、耐界面剥離性に優れた変性ブロック共重合体組成物が提案されており、さらに同様に、特開昭58−40350号公報には、ポリフェニレンスルフィドや他のエンジニアリング樹脂とα,β−不飽和カルボン酸の誘導体で変性した水添ブロック共重合体およびエポキシ基含有重合体から成る耐衝撃性に優れた熱可塑性グラフト共重合体組成物がある。
【0004】
そして特開昭58−154757号公報にはポリアリレーンサルファイドとα−オレフィン/α,β−不飽和酸のグリシジルエステル共重合体からなる耐衝撃性、成形加工性に優れたポリアリレーンサルファイド樹脂組成物が提案されており、特開昭59−207921号公報にはポリフェニレンスルフィドと不飽和カルボン酸またはその無水物またはその誘導体をグラフト共重合したポリオレフィンおよびエポキシ樹脂からなる耐衝撃性に優れた組成物が提案されており、さらに特開昭62−153343号公報、特開昭62−153344号公報、特開昭62−153345号公報には特定のポリフェニレンスルフィドとα−オレフィン/α,β−不飽和酸のグリシジルエステル共重合体からなる耐衝撃性に優れたポリフェニレンスルフィド樹脂組成物が提案されている。
【0005】
そしてさらに特開昭62−169854号公報、特開昭62−172056号公報、特開昭62−172057号公報にも特定のポリフェニレンスルフィドと不飽和カルボン酸またはその無水物またはその誘導体をグラフト共重合したポリオレフィンからなる耐衝撃性に優れたポリフェニレンスルフィド樹脂組成物が提案されている。
一方、ポリフェニレンスルフィドおよびポリフェニレンエーテルを含む樹脂組成物に関しては、その混和性改良を目的として、特開平01−266160号公報および特開平02−75656号公報には、酸変性ポリフェニレンエーテルと変性ポリフェニレンスルフィドの混和性改良にスチレンとオキサゾニル基を有するエチレン性不飽和モノマーとの共重合体を用いる方法が提案され、特開平01−213359号公報、特開平01−213361号公報、特開平02−86652号公報、特開平05−339500号公報には、ポリフェニレンエーテルとポリフェニレンスルフィドの混和性改良にスチレンとグリシジル基を有するエチレン性不飽和モノマーとの共重合体を用いる方法が提案されている。
【0006】
さらに特開平03−20356号公報には、ポリフェニレンスルフィドとポリフェニレンエーテルの混和性改良にスチレンとオキサゾニル基を有するエチレン性不飽和モノマーとの共重合体を用いる方法が提案され、そしてさらには特開平02−155951号公報、特開平04−227636号公報、特開平05−279568号公報、特開平06−172489号公報、さらには特開平06−271759号公報には、エポキシ基含有ポリフェニレンエーテルとポリフェニレンスルフィドからなる樹脂組成物が開示されている。
【0007】
しかしながら、これら先行技術に開示された組成物はポリフェニレンスルフィドとポリフェニレンエーテルからなる樹脂組成物の分散性、靱性付与および成型品のウェルド強度の観点で十分な材料設計がなされていないのが現状である。
さらに、特開平09−161737号公報にはポリフェニレンスルフィドとポリフェニレンエーテルの混和性改良にスチレンとオキサゾニル基を有するエチレン性不飽和モノマーとの共重合体を用いた組成物が密閉型アルカリ二次電池の電槽用として利用できる旨の内容が開示されている。しかしながら、ここで開示されている組成物に関しても、分散相の分散性、靱性付与および成型品のウェルド強度の観点で十分な材料設計がなされていないのが現状である。
【0008】
一方、材料の利用観点から見ると、家電・OA機器はそのシャーシー材料、筐体材料として金属から熱可塑性樹脂への転換がなされているものの、耐熱性、剛性、成型品のそり、寸法安定性の観点から樹脂製材料として未だにこれらの性能が不十分である用途が存在しているのが現状である。
さらに移動機器用駆動電源、コンピーューターのデーターバックアップ電源、太陽エネルギーの有効利用を目的とした太陽電池、さらには環境保護の観点から各種二次電池の用途が拡大されつつある。特に、自動車の内燃機関の所要電力を供給するために二次電池が多く使用されていることは周知であるが、更には、内燃機関の代わりに直接二次電池を駆動電源とする、いわゆる、電気自動車の開発が地球環境保護の観点より盛んに行われている。
【0009】
このように、産業技術の発展に伴い二次電池の需要は益々増加する傾向にあり、二次電池は小型軽量化、大電気容量化の要請が高まっている。このような二次電池は、電解液と電極を収納する電槽(容器)、電槽シートまたは電槽フィルムが不可欠であり、該電槽用樹脂材料に要求される主な特性としては、▲1▼電解液に対する耐性▲2▼長期安定性が挙げられる。
電解液に対する耐性としては、例えばアルカリ蓄電池ではアルカリ水溶液に対する耐性、リチウムイオン電池では有機電解液〔例えば、6フッ化リン酸リチウム(LiPF6)が溶質、プロピレンカーボネート/1,2−ジメトキシエタンが主成分の有機溶媒で構成して成る有機電解液〕に対する耐性(自動車用途に用いられる場合は、更に耐油性などが要求される)、鉛蓄電池では酸に対する耐性が要求される。また、長期間にわたって電解液の性状を適正に維持する必要があり、例えば、アルカリ蓄電池では電槽内のアルカリ水溶液中の水分が電槽外へ透過すると性能が劣化したり、リチウムイオン電池では逆に外部から電槽内に水分が入り込むと有機溶液中のリチウム塩〔例えば、6フッ化リン酸リチウム(LiPF6)やホウフッ化リチウムなど〕が分解して性能が劣化したりする。
【0010】
さらに、長期間にわたって充電時または放電時の化学変化に伴う発熱、内圧上昇に耐えうる性能が要求される。中でも密閉型二次電池においては、可能な限り小型・軽量で、且つ大電気容量、電池寿命が長いことが要求される。このため、密閉型二次電池の電槽は、薄肉時における靱性(衝撃強度、伸び)の付与が望まれ、且つ、充電時または放電時の発熱、内圧上昇などの過酷な条件に耐えうる耐熱性、耐熱クリープ性、熱時剛性に優れた樹脂材料が要求されており、電槽シート分野に於いても同様な性能が望まれている。
【0011】
従来の二次電池の電槽用樹脂材料は、ポリプロピレン樹脂、ABS樹脂が多く採用されているが、ポリプロピレン樹脂は成形時の流動性、耐温水透過性(耐水蒸気透過性)、耐ガス透過性に優れるものの、薄肉リブ構造の製品の射出成形において、成形収縮率が大きかったり、剛性、特に高温時の剛性や耐熱クリープ性に劣る等の欠点をもっていた。
一方、ABS樹脂は、自動車用途において、ガソリン、オイル(例えばブレーキオイル、防錆剤)に対する耐性が十分でなく、さらには温水透過性、ガス透過性が高いため、長時間使用において電解質の性状を維持できなくなり、二次電池の生命である長時間電気容量確保が達成できなくなるなどの欠点を有している。
【0012】
これらの視点より、上記に挙げたポリフェニレンスルフィド樹脂組成物の先行技術で得られる組成物は二次電池電槽(容器、シート、フィルム)用材料として上記した要求性能を満たすものの、分散相の分散性、靱性付与および成型品のウェルド強度の観点で十分な材料設計がなされていないのが現状である。
【0013】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、ポリフェニレンスルフィドとポリフェニレンエーテルからなる樹脂組成物の混合分散性を改良し、層剥離を無くし、靱性(衝撃強度)、ウェルド強度に優れたポリフェニレンスルフィド樹脂組成物を提供することにあり、家電・OA材料のシャーシー材料、筐体材料、さらには二次電池用電槽材料(容器またはシート、フィルム)として長期間にわたって初期の電解質の性能を維持するために、靱性(衝撃強度)、ウェルド強度、耐熱クリープ性、耐水蒸気透過性、耐熱性、耐酸性、耐アルカリ性、耐油性に優れた二次電池電槽用ポリフェニレンスルフィド樹脂組成物を提供することにある。
【0014】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、このような現状に鑑み、ポリフェニレンスルフィド樹脂とポリフェニレンエーテルからなる樹脂組成物において、これらの成分の混合性と靱性(衝撃強度)およびウェルド強度に関し、鋭意検討を重ねた結果、官能基量とオリゴマー量を特定したポリフェニレンスルフィドと、特定の方法で得た官能化ポリフェニレンエーテルとを溶融混合して得られる樹脂組成物が、靱性を大幅に改良し、かつ、ウェルド強度に優れたポリフェニレンスルフィド樹脂組成物を与え、家電・OA機器のシャーシー材料および筐体材料として利用でき、さらには二次電池電槽(容器またはシート、フィルム)材料として利用できることを見いだし本発明に到達した。
【0015】
すなわち、本発明は、
1.(a)塩化メチレンによる抽出量が0.7重量%以下であり、かつ−SX基(Sはイオウ原子、Xはアルカリ金属または水素原子である)が15μmol/g以上であるポリフェニレンスルフィド樹脂1〜99重量部、(b)下記一般式(1)で示されるビスフェノールA型樹脂、または下記一般式(2)で示される不飽和基を全く含まないポリグリシジルエーテル化合物と融点が140〜260℃であるポリフェニレンエーテルをその融点以下の温度(20〜230℃)、かつ非溶媒下で反応させて得られる1分子鎖あたり平均0.1個以上のエポキシ基含有ポリフェニレンエーテル99〜1重量部からなることを特徴とするポリフェニレンスルフィド樹脂組成物。
【化3】
(式中、X1及びX2は芳香族炭化水素、Aは脂肪族炭化水素、nは0または1以上の整数)
【化4】
(式中、Rは脂肪族炭化水素、nは0または1以上の整数)
【0016】
2.(a)成分と(b)成分の合計100重量部あたり(c)ビニル芳香族化合物を主体とする少なくとも1個の重合体ブロックAと共役ジエン化合物を主体とする少なくとも1個の重合体ブロックBとからなるブロック共重合体およびまたは該ブロック共重合体を水素添加してなる水添ブロック共重合体1〜50重量部からなることを特徴とする上記1に記載のポリフェニレンスルフィド樹脂組成物。
【0017】
3.(a)成分と(b)成分の合計100重量部あたり、(d)無機フィラー1〜200重量部からなることを特徴とする上記1に記載のポリフェニレンスルフィド樹脂組成物。
4.(a)成分、(b)成分および(c)成分の合計100重量部あたり、(d)無機フィラー1〜200重量部からなることを特徴とする上記2に記載のポリフェニレンスルフィド樹脂組成物。
5.(d)成分の無機フィラーが、無機塩、ガラス繊維(ガラス長繊維、チョップドストランドガラス繊維)、ガラスフレーク、ガラスビーズ、カーボン繊維、ウィスカ、カオリン、マイカ、タルク、カーボンブラック、酸化チタン、炭酸カルシウム、チタン酸カリウム、ワラストナイト、熱伝導性物質(グラファイト、窒化アルミニウム、窒化ホウ素、アルミナ、酸化ベリリウム、二酸化ケイ素、酸化マグネシウム、硝酸アルミニウム、硫酸バリウム)、導電性金属繊維、導電性金属フレーク、導電性を示すカーボンブラック、導電性を示すカーボンファイバーから選ばれる1種以上であることを特徴とする上記3又は上記4に記載のポリフェニレンスルフィド樹脂組成物、に関するものである。
【0018】
本発明の樹脂組成物の(a)成分のポリフェニレンスルフィド樹脂(以下PPSと略記する)は、塩化メチレンによる抽出量が0.7重量%以下、好ましくは0.6重量%以下、特に好ましくは0.5重量%以下である。上記抽出量の範囲は、PPS中に比較的低分子量(約10〜30量体)の低いオリゴマーの存在が少ないことを意味するものである。該抽出量が上記上限値を超える場合は、得られる樹脂組成物のポリフェニレンスルフィドと(b)成分のエポキシ基含有ポリフェニレンエーテルとの混和性が劣り、得られる樹脂組成物のウェルド強度の改良が望めず、かつ靱性としての耐衝撃性の低下が著しく好ましくない。
【0019】
ここで、塩化メチレンによる抽出量の測定は以下の方法により求めることができる。すなわち、PPS粉末5gを塩化メチレン80mlに加え、6時間ソクスレー抽出を実施した後、室温まで冷却し、抽出後の塩化メチレン溶液を秤量瓶に移す。更に、上記の抽出に使用した容器を塩化メチレン合計60mlを用いて、3回に分けて洗浄し、該洗浄液を上記秤量瓶中に回収する。次に、約80℃に加熱して、該秤量瓶中の塩化メチレンを蒸発させて除去し、残渣を秤量し、この残渣量よりPPS中に存在するオリゴマー量の割合を求めることができる。
【0020】
さらに(a)成分のPPSは、−SX基( Sはイオウ原子、Xはアルカリ金属または水素原子である)が15μmol/g以上、特に好ましくは20〜60μmol/gである。該基が上記下限未満では得られる樹脂組成物のポリフェニレンスルフィドと(b)成分のエポキシ基含有ポリフェニレンエーテルとの混和性が劣り、得られる樹脂組成物のウェルド強度の改良が望めず、かつ靱性としての耐衝撃性の低下が著しく好ましくない。
【0021】
ここで、−SX基の定量は以下の方法により求めることができる。すなわち、PPS粉末を予め120℃で4時間乾燥した後、乾燥PPS粉末20gをN−メチル−2−ピロリドン150gに加えて粉末凝集塊がなくなるように室温で30分間激しく撹拌混合しスラリー状態にする。
かかるスラリーを濾過した後、毎回約80℃の温水1リットルを用いて7回洗浄を繰り返す。ここで得た濾過ケーキを純水200g中に再度スラリー化し、ついで1Nの塩酸を加えて該スラリーのPHを4.5に調整する。次に、25℃で30分間撹拌し、濾過した後、毎回約80℃の温水1リットルを用いて6回洗浄を繰り返す。得られた濾過ケーキを純水200g中に再度スラリー化し、次いで、1Nの水酸化ナトリウムにより滴定し、消費した水酸化ナトリウム量よりPPS中に存在する−SX基の量を知ることができる。
【0022】
上記したPPSの製造方法は、通常、ハロゲン置換芳香族化合物、例えばp−ジクロルベンゼンを硫黄と炭酸ソーダの存在下で重合させる方法、極性溶媒中で硫化ナトリウムあるいは硫化水素ナトリウムと水酸化ナトリウムまたは硫化水素と水酸化ナトリウムあるいはナトリウムアミノアルカノエートの存在下で重合させる方法、p−クロルチオフェノールの自己縮合等が挙げられるが、中でもN−メチルピロリドン、ジメチルアセトアミド等のアミド系溶媒やスルホラン等のスルホン系溶媒中で硫化ナトリウムとp−ジクロルベンゼンを反応させる方法が適当である。
【0023】
これらの製造方法は公知の方法で得られるものであれば特に限定されるものではなく、例えば、米国特許第2513188号明細書、特公昭44−27671号公報、特公昭45−3368号公報、特公昭52−12240号公報、特開昭61−225217号および米国特許第3274165号明細書、英国特許第1160660号さらに特公昭46−27255号公報、ベルギー特許第29437号明細書、特開平5−222196号公報、等に記載された方法やこれら特許等に例示された先行技術の方法で得ることが出来る。
【0024】
ここで、塩化メチレンによる抽出量が0.7重量%以下、−SX基が15μmol/g以上を満足するPPSの製造方法の具体例を挙げるとすると、特開平8−253587号公報の第(0041)〜(0044)段落に記載された実施例1および2の製造方法や特開平11−106656号公報の第(0046)〜(0048)段落に記載された合成例1および2等がある。
本発明で用いるPPSは320℃における溶融粘度(フローテスターを用いて、300℃、荷重20Kgf/cm2、L/D=10/1で6分間保持した値。)が1〜10000ポイズの中から任意に選ぶことが出来、さらにPPSの構造は、上記した特徴を示すものであれば直鎖状、分岐状のものいずれでも良く、中でも直鎖状のものがより好ましい。
【0025】
つぎに本発明の樹脂組成物で供する(b)成分の1分子中に2個以上のオキシラン環を含む多官能エポキシ化合物と融点が140〜260℃であるポリフェニレンエーテルをその融点以下の温度(20〜230℃)、かつ非溶媒下で反応させて得られる1分子鎖あたり平均0.1個以上のエポキシ基含有ポリフェニレンエーテルとは、その反応前のポリフェニレンエーテル樹脂(以下、単にPPEと略記)が、結合単位(式1):
【0026】
【化5】
【0027】
(ここで、R1,R2,R3,およびR4はそれぞれ、水素、ハロゲン、炭素数1〜7までの第一級または第二級低級アルキル基、フェニル基、ハロアルキル基、アミノアルキル基、炭化水素オキシ基または少なくとも2個の炭素原子がハロゲン原子と酸素原子とを隔てているハロ炭化水素オキシ基からなる群から選択されるものであり、互いに同一でも異なっていてもよい)からなり、還元粘度(0.5g/dl,クロロホルム溶液,30℃測定)が、0.15〜2.0の範囲であることが好ましく、さらに好ましくは0.20〜1.0の範囲にあるホモ重合体および/または共重合体である。
【0028】
このPPEの具体的な例としては、例えばポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレンエーテル)、ポリ(2−メチル−6−エチル−1,4−フェニレンエーテル)、ポリ(2−メチル−6−フェニル−1,4−フェニレンエーテル)、ポリ(2,6−ジクロロ−1,4−フェニレンエーテル)等が挙げられ、さらに2,6−ジメチルフェノールと他のフェノール類(例えば、2,3,6−トリメチルフェノールや2−メチル−6−ブチルフェノール)との共重合体のごときポリフェニレンエーテル共重合体も挙げられる。
【0029】
中でもポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレンエーテル)、2,6−ジメチルフェノールと2,3,6−トリメチルフェノールとの共重合体が好ましく、さらにポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレンエーテル)が好ましい。かかるPPEの製造方法は公知の方法で得られるものであれば特に限定されるものではなく、例えば、米国特許第3306874号記載の第一銅塩とアミンのコンプレックスを触媒として用い、例えば2,6−キシレノールを酸化重合することにより容易に製造でき、そのほかにも米国特許第3306875号、同第3257357号および同第3257358号、特公昭52−17880、特開昭50−51197および同63−152628号公報等に記載された方法で容易に製造できる。
【0030】
かかるPPEは通常、粉体であり、取扱いの観点から10μm〜1000μmであり、より好ましくは30〜700μmである。なおこれら粉体PPEの融点は140〜260℃であり、通常、示差熱走査型熱量計(DSC)を用い、PPEを20℃/分で第一回目に昇温するときに得られる温度−熱流量グラフで観測されるピークのピークトップ温度で定義される。ピークトップ温度が複数ある場合はそれらの最も高い温度をかかるPPEの融点と定義する。
【0031】
次に、この粉体PPEに反応させる1分子中に2個以上のオキシラン環を含む多官能エポキシ化合物とは、エポキシ樹脂として総称される化合物のグループから選ばれた物であり、特に好ましくは:
【0032】
【化6】
【0033】
(式中、X1及びX2は芳香族炭化水素、Aは脂肪族炭化水素、nは0または1以上の整数)で示されるビスフェノールA型樹脂、または:
【0034】
【化7】
【0035】
(式中、Rは脂肪族または芳香族炭化水素、nは0または1以上の整数)
で示される不飽和基を全く含まないポリグリシジルエーテル化合物である。
このエポキシ化合物の状態は特に限定されないが、上記したポリフェニレンエーテルと反応させる温度および圧力条件下において、気体あるいは液体であることが好ましい。
【0036】
これら粉体PPEと1分子中に2個以上のオキシラン環を含む多官能エポキシ化合物の反応は、通常、室温(20℃)以上で粉体PPEの融点以下で行われ、具体的には20〜230℃、好ましくは100〜230℃、さらに好ましくは150〜230℃である。反応温度が20℃未満では多官能エポキシ化合物と粉体PPEとの反応が不十分であり、また反応温度が230℃を超える場合は反応速度が速くなるものの、多官能エポキシ基化合物の副次的な反応が進み多官能エポキシ樹脂の架橋や、多官能エポキシ樹脂とPPEとの架橋反応が起こり、目的とする官能化されたポリフェニレンエーテルに残留している活性なエポキシ基が無くなり好ましくない。
【0037】
なお反応する時間は、反応させる温度、および使用する多官能エポキシ化合物の種類により異なり、平均0.1個以上のエポキシ基を含有したポリフェニレンエーテルを得る時間を任意に選ぶことができる。これら反応を実施するには通常、加熱冷却可能なオートクレーブ、ヘンシェルミキサー、密閉型ニーダー、タンブラー型ブレンダー等が挙げられるがこれに限定されるものでは無い。
【0038】
かかる平均0.1個以上のエポキシ基を含有したポリフェニレンエーテルを得るために、供する多官能エポキシ化合物の量は、通常、ポリフェニレンエーテルの末端フェノール基量(ゲルパーミエーションクロマトグラフィ:GPCを用いてポリスチレン換算で求めたポリフェニレンエーテルの数平均分子量を代表分子鎖として算出)に対して0.1〜10倍モルの多官能エポキシ化合物が用いられ、好ましくは0.8〜5倍モル、より好ましくは1.1〜3倍モルである。かかる多官能エポキシ化合物の添加量が0.1倍モル以下では平均0.1個以上のエポキシ基を含有したポリフェニレンエーテルが得られず、また10倍モルを超える場合は、未反応の多官能エポキシ化合物が残留したり、エポキシ化合物同士の反応や、架橋反応が進行し好ましくない。
【0039】
なお、かかる反応形態の一つとしてPPEを良溶媒に溶かした溶液状態で該1分子中に2個以上のオキシラン環を含む多官能エポキシ化合物を反応させる方法があるが、この方法でPPEに多官能エポキシ化合物を反応させると、PPE鎖間のグラフト反応が極度に進んだり、若しくは全くPPEと多官能エポキシ化合物のグラフト反応が全く起らず、 PPEと多官能エポキシ化合物の反応を制御することが困難であり、工業的に1分子鎖あたり平均0.1個以上のエポキシ基を含有したポリフェニレンエーテルを安定して得ることができないので好ましくない。
【0040】
なお、本発明では上記の粉体のPPEと1分子中に2個以上のオキシラン環を含む多官能エポキシ化合物の反応において、反応を促進するために塩基性化合物を加えることが最も好ましい。かかる塩基性化合物とは、具体的には、リチウム、ナトリウム、カリウム、ナトリウムメチラート、ナトリウムエチラート、トリエチルアミンやトリブチルアミン等の第3級アミン、イミダゾール、ナトリウムフェノキシド、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸カリウム、炭酸ナトリウム等が挙げられるが、中でもナトリウムメチラート、トリエチルアミン、トリブチルアミン、水酸化ナトリウムが好ましく用いられる。上記のほかに第4級アンモニウム塩も好ましく用いることができる。
【0041】
そして上記した反応方法で得たポリフェニレンエーテルに結合しているエポキシ基の量は、下記手順にて求める事ができる。
(1)反応後の粉体PPEのトルエン5%溶液を大過剰のメタノールに滴下し沈殿させたもの濾液分離し、沈殿ポリマーを150℃×0.1mmHgの条件下で1時間減圧乾燥し、乾燥ポリマーとして得る。
(2)乾燥ポリマーを重クロロホルムに溶解し、ピークのケミカルシフトはテトラメチルシランのピーク(0.00ppm)を基準として270MHz−NMRにて測定を行い、ポリフェニレンエーテル1分子当たりのエポキシ基の数は、ポリフェニレンエーテルの芳香環3,5位プロトンに起因するピーク(6.47ppm)とエポキシ基に起因するピーク(2.74ppm、2.89ppm、3.34ppm)の面積比から求める。
【0042】
つぎに本発明の(c)成分として用いるビニル芳香族化合物を主体とする少なくとも1個の重合体ブロックAと共役ジエン化合物を主体とする少なくとも1個の重合体ブロックBとからなるブロック共重合体および該ブロック共重合体を水素添加してなる水添ブロック共重合体は、(b)成分のエポキシ基含有ポリフェニレンエーテル中に分散したり、(a)成分のポリフェニレンスルフィド樹脂中に分散し、得られる組成物の靱性付与に大きな効果を奏するものである。
【0043】
ここで、ビニル芳香族化合物を主体とする少なくとも1個の重合体ブロックAと共役ジエン化合物を主体とする少なくとも1個の重合体ブロックBとからなるブロック共重合体とは、例えばA−B、A−B−A、B−A−B−A、(A−B−)4−Si、A−B−A−B−A等の構造を有するビニル芳香族化合物−共役ジエン化合物ブロック共重合体であり、結合したビニル芳香族化合物を5〜95重量%、好ましくは10〜80重量%含んだブロック共重合体である。
【0044】
またブロック構造に言及すると、ビニル芳香族化合物を主体とする重合体ブロックAとは、ビニル芳香族化合物のホモ重合体ブロックまたはビニル芳香族化合物を好ましくは50重量%を超え、更に好ましくは70重量%以上含有するビニル芳香族化合物と共役ジエン化合物との共重合体ブロックの構造を有しており、そしてさらに、共役ジエン化合物を主体とする重合体ブロックBとは、共役ジエン化合物のホモ重合体ブロックまたは共役ジエン化合物を好ましくは50重量%を超え、更に好ましくは70重量%以上含有する共役ジエン化合物とビニル芳香族化合物との共重合体ブロックの構造を有するものである。
【0045】
これらのビニル芳香族化合物を主体とする重合体ブロックA、共役ジエン化合物を主体とする重合体ブロックBは、それぞれの重合体ブロックにおける分子鎖中の共役ジエン化合物またはビニル芳香族化合物の分布がランダム、テーパード(分子鎖に沿ってモノマー成分が増加または減少するもの)、一部ブロック状またはこれらの任意の組み合わせで成っていてもよく、該ビニル芳香族化合物を主体とする重合体ブロックおよび該共役ジエン化合物を主体とする重合体ブロックがそれぞれ2個以上ある場合は、各重合体ブロックはそれぞれ同一構造であってもよく、異なる構造であってもよい。
【0046】
このブロック共重合体を構成するビニル芳香族化合物としては、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、p−tert−ブチルスチレン、ジフェニルエチレン等のうちから1種または2種以上を選択でき、中でもスチレンが好ましい。また、共役ジエン化合物としては、例えば、ブタジエン、イソプレン、1,3−ペンタジエン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン等のうちから1種または2種以上が選ばれ、中でも、ブタジエン、イソプレンおよびこれらの組み合わせが好ましい。
【0047】
そして共役ジエン化合物を主体とする重合体ブロックは、そのブロックにおける結合形態のミクロ構造を任意に選ぶことができ、例えば、ブタジエンを主体とする重合体ブロックにおいては、1,2−ビニル結合が2〜90%が好ましく、より好ましくは8〜80%である。また、イソプレンを主体とする重合体ブロックにおいては、1,2−ビニル結合と3,4−ビニル結合の合計量が2〜80%、より好ましくは3〜70%である。
【0048】
本発明で用いる(c)成分のブロック共重合体の数平均分子量は、5,000〜1,000,000であるものが好ましく、特に好ましくは20,000〜500,000の範囲のものであり、分子量分布〔ゲルパーミエーションクロマトグラフィで測定しポリスチレン換算した重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)の比〕は10以下であるものが好ましい。
さらに、このブロック共重合体の分子構造は、直鎖状、分岐状、放射状あるいはこれらの任意の組み合わせのいずれであってもよい。
【0049】
このような構造をもつブロック共重合体は、上記したブロック共重合体の共役ジエン化合物を主体とした重合体ブロックBの脂肪族系二重結合を水素添加反応を実施し、本発明で用いる(c)成分の水添ブロック共重合体として利用できる。かかる脂肪族系二重結合の水素添加率は、少なくとも20%を超えることが好ましく、更に好ましくは50%以上、特に好ましくは80%以上である。かかる水素添加率は例えば核磁気共鳴装置(NMR)等を用いて知ることができる。
【0050】
さらに本発明で(d)成分として用いる無機フィラーとは、上記した(a)、(b)および(c)成分からなる樹脂組成物に対して数多くの機能を与える成分であり、例えば、剛性の付与、耐熱性の付与、熱伝導性の付与、導電性の付与、成形収縮率の改善、線膨張率の改善などその目的に応じ選択することが出来、これら効果を引き出す(d)成分の無機フィラーとしては下記のものが挙げられる。
【0051】
例えば、無機塩、ガラス繊維(ガラス長繊維、チョップドストランドガラス繊維)、ガラスフレーク、ガラスビーズ、カーボン繊維、ウィスカ、カオリン、マイカ、タルク、カーボンブラック、酸化チタン、炭酸カルシウム、チタン酸カリウム、ワラストナイト、熱伝導性物質(グラファイト、窒化アルミニウム、窒化ホウ素、アルミナ、酸化ベリリウム、二酸化ケイ素、酸化マグネシウム、硝酸アルミニウム、硫酸バリウムなど)、導電性金属繊維、導電性金属フレーク、導電性を示すカーボンブラック、導電性を示すカーボンファイバー等が挙げられる。これらの無機フィラー類は、上記した(a)成分のポリフェニレンスルフィド樹脂、(b)成分のポリフェニレンエーテル樹脂への分散性を改良する目的で公知の表面処理剤や加工時の取り扱い性を改良する目的で公知の集束剤などで処理した物も好適に使用できる。
【0052】
本発明のポリフェニレンスルフィド樹脂組成物は、上記した必須成分の(a)成分のポリフェニレンスルフィド樹脂を1〜99重量%、(b)成分のエポキシ基含有ポリフェニレンエーテル99〜1重量%からなる樹脂組成物であり、また(a)成分と(b)成分の合計100重量部に対して、(c)成分のビニル芳香族化合物を主体とする少なくとも1個の重合体ブロックAと共役ジエン化合物を主体とする少なくとも1個の重合体ブロックBとから成るブロック共重合体およびまたは該ブロック共重合体を水素添加してなる水添ブロック共重合体1〜50重量部を含む樹脂組成物である。
【0053】
さらに(a)成分と(b)成分の合計100重量部に対して、(d)無機フィラー1〜200重量部を含む樹脂組成物であり、そしてさらに(a)成分、(b)成分および(c)成分の合計100重量部に対して、(d)無機フィラー1〜200重量部を含む樹脂組成物である。
中でも、最も好ましい態様の組成は、(a)成分のポリフェニレンスルフィド樹脂を30〜90重量部、(b)成分のエポキシ基含有ポリフェニレンエーテル10〜70重量部、(c)成分のブロック共重合体およびまたは水添ブロック共重合体を3〜30重量部を含むポリフェニレンスルフィド樹脂組成物である。なおこれら成分以外に(d)成分の無機フィラーを含む樹脂組成物の最も好ましい態様は、上記(a)、(b)、(c)および(d)成分の合計100重量部に対して、1〜150重量部である。
【0054】
以下、本発明のポリフェニレンスルフィド樹脂組成物の製造方法について説明する。
本発明のポリフェニレンスルフィド樹脂組成物を工業的に容易に得る方法として最も好ましい実施態様としては、
(1)上記した各成分を溶融混練するための溶融混練機が、ニーディングブロックをスクリューの任意の位置に組み込むことが可能な二軸以上の多軸押出機であり、用いるスクリューの全ニーディングブロック部分を実質的に(L/D)≧1.5、さらに好ましくは(L/D)≧5 〔ここでLは、ニーディングブロックの合計長さ、Dはニーディングブロックの最大外径をあらわす〕に組み込み、かつ、(π・D・N/h)≧50〔ここで、π=3.14、D=メタリングゾーンに相当するスクリュー外径、N=スクリュー回転数(回転/秒)、h=メタリングゾーンの溝深さ〕を満たし、
【0055】
(2)これらの押出機は、原料の流れ方向に対し上流側に第一原料供給口、これより下流に第二原料供給口を有し、必要に応じ、第二原料供給口より下流にさらに1つ以上の原料供給口を設けても良く、さらに必要に応じこれら原料供給口の間に真空ベント口を設けた二軸押出機を用いる。
【0056】
本発明のポリフェニレンスルフィド樹脂組成物を製造する方法で、基本となる原料供給方法は、第一原料供給口より(a)成分〜(c)成分の全量を供給する方法、(b)成分のエポキシ基含有ポリフェニレンエーテル全量と(a)成分のPPS全量の50%を超えない範囲範囲で(a)成分のPPSの共存下で供給し、第二原料供給口より残部の(a)成分のPPSを供給する押出方法が好ましく、その際の(c)成分のブロック共重合体およびまたは水添ブロック共重合体の供給は、第一原料供給口より(a)成分のPPSと(b)成分のエポキシ基含有ポリフェニレンエーテルと一緒に配合して供給する方法が好ましい。また、さらに(d)成分の無機フィラーを供給する場合は、(a)成分〜(c)成分が完全に溶融混練されている状態下に供給することが好ましく、通常、第二原料供給口以降の原料供給口へ供給することが好ましい。
【0057】
また、押出機バレル設定温度は通常、溶融混練するゾーンが280〜350℃、好ましくは280〜310℃、スクリュー回転数は100〜1200rpm、好ましくは100〜500rpmの条件で溶融混練し製造することができる。
本発明では、上記の成分の他に、本発明の特徴および効果を損なわない範囲で必要に応じて他の附加的成分、例えば、更なる耐衝撃性向上を目的としてエポキシ基およびまたはオキサゾニル基を含有する不飽和モノマーを1〜20重量%の割合でα−オレフィン(好ましくはエチレン)と共重合してなる共重合体を本発明の樹脂組成物100重量部に対して1〜20重量部添加するともできる。
【0058】
その他に通常用いられる酸化防止剤、金属不活性化剤、難燃剤(有機リン酸エステル化合物、縮合リン酸エステル系化合物、ポリリン酸アンモニウム系難燃剤、芳香族ハロゲン系難燃剤、シリコーン系難燃剤など)、フッ素系ポリマー、可塑剤(低分子量ポリエチレン、エポキシ化大豆油、ポリエチレングリコール、脂肪酸エステル類等)、三酸化アンチモン等の難燃助剤、耐候(光)性改良剤、造核剤、スリップ剤、各種着色剤、離型剤等を添加してもかまわない。
【0059】
このようにして得られる本発明のポリフェニレンスルフィド樹脂組成物は、従来のポリフェニレンスルフィド系樹脂組成物が持つ欠点を解消し、靱性(耐衝撃性)の他に、成型品のウェルド強度に優れるため電気・電子、自動車部品の成型品に好ましく利用でき、さらにこの改良された性能に加えてポリフェニレンスルフィド自体が有する耐熱クリープ性、耐水蒸気透過性、耐薬品性とが相まって利用できる用途で、直接、電極、電解液およびセパレーターを内蔵する二次電池電槽用材料(射出成型品、シートもしくはフィルム)として特に有用である。そして本発明のポリフェニレンスルフィド樹脂組成物は、従来より公知の種々の加工方法、例えば、圧縮成形、射出成形、押出成形、多層押出成形、異形押出成形などにより用途目的に応じた各種の成形体として成形できる。
【0060】
【発明の実施の形態】
本発明を実施例によって、さらに詳細に説明するが、これらの実施例により限定されるものではない。
(a)成分のポリフェニレンスルフィド樹脂
a−1:溶融粘度(フローテスターを用いて、300℃、荷重20Kgf/cm2 、L/D=10/1で6分間保持した後測定した値。)が500ポイズ、塩化メチレンによる抽出量が0.4重量%、−SX基量が29μmol/gのPPSをa−1とした。
a−2:溶融粘度が500ポイズ、塩化メチレンによる抽出量が0.7重量%、−SX基量が30μmol/gのPPSをa−2とした。
a−3:溶融粘度が500ポイズ、塩化メチレンによる抽出量が1.2重量%、−SX基量が31μmol/gのPPSをa−3とした。
a−4:溶融粘度が500ポイズ、塩化メチレンによる抽出量が3.0重量%、−SX基量が29μmol/gのPPSをa−4とした。
【0061】
a−5:溶融粘度が500ポイズ、塩化メチレンによる抽出量が0.6重量%、−SX基量が7μmol/gのPPSをa−5とした。
a−6:溶融粘度が200ポイズ、塩化メチレンによる抽出量が0.5重量%、−SX基量が36μmol/gのPPSをa−6とした。
a−7:溶融粘度が250ポイズ、塩化メチレンによる抽出量が3.1重量%−SX基量が40μmol/gの東レ(株)製のPPS(L3340)をa−7とした。
a−8:溶融粘度が500ポイズ、塩化メチレンによる抽出量が1.8重量%、−SX基量が9μmol/gのPPSをa−8とした。
【0062】
(b)成分のエポキシ基含有ポリフェニレンエーテル
b−1:還元粘度が0.37dl/gであるポリフェニレンエーテル100重量部に対して、ビスフェノールA型エポキシ樹脂(旭化成エポキシ(株)製Grade250)10重量部およびトリ−n−ブチルアミン0.8重量部を配合し、150℃に制御した密閉加熱型オートクレーブを用いて1時間、ポリフェニレンエーテルが粉体状態で加熱撹拌し反応を行った。ここで得た反応物ポリマーを5%のトルエン溶液にし、大過剰のメタノール中に滴下し、さらに濾別して得たポリマーを150℃×0.1mmHgの条件下て1時間減圧乾燥し乾燥ポリマーとして得た。(b−1成分とする)
【0063】
この乾燥ポリマーをプロトンNMR測定を実施し、ポリフェニレンエーテル1分当たり平均1.6個のエポキシ基を含有していた。なお、反応前後のポリフェニレンエーテルの分子量変化の有無を確認するため、反応前のポリフェニレンエーテル、乾燥ポリマーそれぞれを0.02gを20mlのクロロホルムに溶解しGPC(ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィ)にて確認したところ、分子量曲線に変化は見られず、上記反応で架橋反応が起こっていないことを確認した。
【0064】
b−2:b−1で用いたビスフェノールA型エポキシ樹脂の代わりに、下式
【0065】
【化8】
【0066】
のエチレングリコールジグリシジル(A)を4重量部を用いた他は、b−1と同じ方法で反応及び精製を行い、ポリフェニレンエーテル1分当たり平均1.3個のエポキシ基を含有していた。(b−2成分とする)
なお、反応前後のポリフェニレンエーテルの分子量変化の有無を確認するため、反応前のポリフェニレンエーテル、乾燥ポリマーそれぞれを0.02gを20mlのクロロホルムに溶解しGPC(ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィ)にて確認したところ、分子量曲線に変化は見られず、上記反応で架橋反応が起こっていないことを確認した。
【0067】
b−3:b−2で用いたエチレングリコールグリシジル(A)の添加量を0.6部に変えたほかはb−2と同じ方法および条件で反応を行い、ポリフェニレンエーテル1分当たり平均0.17個のエポキシ基を含有していた。(b−3成分とする)
なお、反応前後のポリフェニレンエーテルの分子量変化の有無を確認するため、反応前のポリフェニレンエーテル、乾燥ポリマーそれぞれを0.02gを20mlのクロロホルムに溶解しGPC(ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィ)にて確認したところ、分子量曲線に変化は見られず、上記反応で架橋反応が起こっていないことを確認した。
【0068】
b−4:還元粘度が0.37dl/gであるポリフェニレンエーテル100重量部に対して、ビスフェノールA型エポキシ樹脂(旭化成エポキシ(株)製Grade250)10重量部およびトリ−n−ブチルアミン0.8重量部をトルエンに溶かし10重量%溶液とした。このトルエン溶液を密閉加熱型オートクレーブに入れ150℃に温度制御し、1時間撹拌し反応を行った。反応後、室温まで冷却し、さらにトルエンを添加しポリマー溶液を5重量%のトルエン溶液とし、大過剰のメタノール中に滴下し、さらに濾別して得たポリマーを150℃×0.1mmHgの条件下て1時間減圧乾燥し乾燥ポリマーとして得た。(b−4成分とする)
【0069】
反応前後のポリフェニレンエーテルの分子量変化の有無を確認するため、この乾燥ポリマー0.02gを20mlのクロロホルム溶かしたが、クロロホルムに不溶な固形分が多く見られた。またクロロホルム可溶分をGPC(ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィ)にて確認したところ、反応前のポリフェニレンエーテルには見られない高分子量側に高分子鎖が存在する分子量曲線を示した。上記の溶液反応でポリフェニレンエーテルで何らかの架橋反応が起こっていることを確認した。
【0070】
b−5:b−2で用いたエチレングリコールグリシジル(A)の添加量を0.3重量部に変えたほかはb−2と同じ方法および条件で反応を行い、ポリフェニレンエーテル1分当たり平均0.05個のエポキシ基を含有していた。(b−5成分とする)
なお、反応前後のポリフェニレンエーテルの分子量変化の有無を確認するため、反応前のポリフェニレンエーテル、乾燥ポリマーそれぞれを0.02gを20mlのクロロホルムに溶解しGPC(ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィ)にて確認したところ、分子量曲線に変化は見られず、上記反応で架橋反応が起こっていないことを確認した。
【0071】
(c)成分のブロック共重合体、水添ブロック共重合体
C−1:ポリスチレン−水素添加されたポリブタジエン−ポリスチレンの構造であり、結合スチレン量が33重量%、数平均分子量が175,000、水素添加する前のポリブタジエン部の1,2−ビニル結合量が46%である水添ブロック共重合体。
C−2:ポリスチレン−水素添加されたポリイソプレン−ポリスチレンの構造であり、結合スチレン量が43重量%、数平均分子量が137,000、水素添加する前のポリイソプレン部の1,2−ビニル結合量と3,4−ビニル結合量の合計量が5%である水添ブロック共重合体。
【0072】
(d)成分の無機フィラー
d−1:ガラスフレーク: 平均粒径600μm、平均厚み5μm、平均アスペクト比5120のアミノシラン処理されたガラスフレーク
d−2:ガラス繊維 : 直径13μm、平均長さ3mmのアミノシラン処理されたガラス繊維
d−3:マイカ : 平均フレーク径90μmのアミノシラン処理されたマイカ
【0073】
【実施例1〜17および比較例1〜18】
表1〜表3に示した(a)〜(d)の各成分を、温度290〜310℃、スクリュー回転数500rpmに設定した二軸押出機(ZSK−40;WERNER&PFLEIDERER社製、ドイツ国)を用い、押出機の第一原料供給口より(a)成分〜(c)成分を供給して溶融混練し、第二原料供給口より(d)成分を供給し、溶融混練したポリフェニレンスルフィド樹脂組成物をペレットとして得た。
このペレットを用いて290〜310℃に設定したスクリューインライン型射出成形機に供給し、金型温度130℃の条件で引張試験用テストピース、ウェルド引張試験用テストピース、アイゾット衝撃試験用テストピースおよび荷重撓み温度(DTUL)測定用テストピースを射出成形した。
【0074】
つぎに、これらのテストピースを用いて引張強度試験(ASTM D−638に準拠:測定温度23℃)を行ない、引張強度およびウェルド引張強度を測定し、アイゾット(厚み1/8、ノッチ付き)衝撃強度(ASTM D−256に準拠:測定温度23℃)および荷重撓み温度:DTUL(ASTM D−648:1.82MPa荷重)を測定した。これらの結果を併せて表1〜表3に載せた。
【0075】
これらの結果より、ポリフェニレンスルフィド樹脂中のオリゴマー量の指標である塩化メチレンによる抽出量が0.7重量%を超えるポリフェニレンスルフィド樹脂を用いた場合、靱性(衝撃強度)、ウェルド引張強度が著しく低下することが明らかとなった。さらに、ポリフェニレンスルフィド樹脂中のオリゴマー量の指標である塩化メチレンによる抽出量が0.7重量%以下であっても、ポリフェニレンスルフィド樹脂中に存在する−SX基(Sはイオウ原子、Xはアルカリ金属または水素原子である)量が15μmol/gに満たないポリフェニレンスルフィド樹脂を用いた場合、靱性(衝撃強度)およびウェルド引張強度が著しく低下することが明らかとなった。
【0076】
また更に、用いる(b)成分であるエポキシ基含有ポリフェニレンエーテルが本発明で開示している方法で得たものを使用した場合は、靱性(衝撃強度)、ウェルド引張強度の改良が見られるものの、溶液反応でエポキシ化した変性ポリフェニレンエーテルを用いたものは靱性(衝撃強度)、ウェルド引張強度の改良が見られないことが明らかになった。
【0077】
【表1】
【0078】
【表2】
【0079】
【表3】
【0080】
【発明の効果】
本発明のポリフェニレンスルフィド樹脂組成物は、供するポリフェニレンスルフィド樹脂として、特定したオリゴマー量および特定の官能基量を有するポリフェニレンスルフィド樹脂と特定の方法で得る特定の官能基量を有するポリフェニレンエーテルを用いることによって、ポリフェニレンスルフィド樹脂、ポリフェニレンエーテルおよびブロック共重合体からなる樹脂組成物に対して靱性(衝撃強度)、ウェルド強度が顕著に改良された効果をもたらす。
Claims (5)
- (a)塩化メチレンによる抽出量が0.7重量%以下であり、かつ−SX基(Sはイオウ原子、Xはアルカリ金属または水素原子である)が15μmol/g以上であるポリフェニレンスルフィド樹脂1〜99重量部、(b)下記一般式(1)で示されるビスフェノールA型樹脂、または下記一般式(2)で示される不飽和基を全く含まないポリグリシジルエーテル化合物と融点が140〜260℃であるポリフェニレンエーテルをその融点以下の温度(20〜230℃)、かつ非溶媒下で反応させて得られる1分子鎖あたり平均0.1個以上のエポキシ基含有ポリフェニレンエーテル99〜1重量部からなることを特徴とするポリフェニレンスルフィド樹脂組成物。
(式中、X1及びX2は芳香族炭化水素、Aは脂肪族炭化水素、nは0または1以上の整数)
(式中、Rは脂肪族炭化水素、nは0または1以上の整数) - (a)成分と(b)成分の合計100重量部あたり(c)ビニル芳香族化合物を主体とする少なくとも1個の重合体ブロックAと共役ジエン化合物を主体とする少なくとも1個の重合体ブロックBとからなるブロック共重合体およびまたは該ブロック共重合体を水素添加してなる水添ブロック共重合体1〜50重量部からなることを特徴とする請求項1に記載のポリフェニレンスルフィド樹脂組成物。
- (a)成分と(b)成分の合計100重量部あたり、(d)無機フィラー1〜200重量部からなることを特徴とする請求項1に記載のポリフェニレンスルフィド樹脂組成物。
- (a)成分、(b)成分および(c)成分の合計100重量部あたり、(d)無機フィラー1〜200重量部からなることを特徴とする請求項2に記載のポリフェニレンスルフィド樹脂組成物。
- (d)成分の無機フィラーが、無機塩、ガラス繊維(ガラス長繊維、チョップドストランドガラス繊維)、ガラスフレーク、ガラスビーズ、カーボン繊維、ウィスカ、カオリン、マイカ、タルク、カーボンブラック、酸化チタン、炭酸カルシウム、チタン酸カリウム、ワラストナイト、熱伝導性物質(グラファイト、窒化アルミニウム、窒化ホウ素、アルミナ、酸化ベリリウム、二酸化ケイ素、酸化マグネシウム、硝酸アルミニウム、硫酸バリウム)、導電性金属繊維、導電性金属フレーク、導電性を示すカーボンブラック、導電性を示すカーボンファイバーから選ばれる1種以上であることを特徴とする請求項3又は請求項4に記載のポリフェニレンスルフィド樹脂組成物。
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