本発明は、メチル化DNA検出方法およびその利用法に関するものであり、より詳細には、メチル化DNA検出方法と、当該方法を実施するための検出キット、および当該検出方法、検出キットを用いた疾患判定方法に関するものである。
高等真核生物において、ゲノムDNA配列中に存在する5’−CG−3’DNA(以下、CpGとする)部分では、当該グアニン(G)の5’側に位置するシトシン(C)がメチル化される現象が知られている。このCpGのメチル化修飾は、遺伝子発現に影響を及ぼすと考えられており、特にCpGに富む領域(CpG島)が遺伝子のプロモーター領域内に存在する場合には、遺伝子発現に対して重要な影響を及ぼすと考えられている。
通常、染色体における多くの遺伝子は上述したメチル化から保護されているが、何らかの原因により、遺伝子のプロモーター領域に存在するCpG島がメチル化された場合、遺伝子の転写が抑制されることになる。このため、CpG島の異常なメチル化によって、例えば、ヒト生体内における癌抑制遺伝子の転写が不活性化された場合、細胞増殖の制御が効かなくなり、癌などの細胞増殖性疾患が進行してしまうことになる。
一方、近年の分子生物的手法の発展によって、上記DNAのメチル化の有無を検出することで癌や腫瘍の早期発見および治療をモニタリングすることが可能になってきている。例えば、特許文献1、2(以下、従来例とする)では、CpG含有核酸中のメチル化を迅速に検出するためにPCRを利用して、DNAのメチル化を特異的に検出して、癌等を診断する方法が開示されている。
これらの方法は、組織または細胞系から核酸試料を調製し(核酸抽出工程)、重亜硫酸塩等により非メチル化シトシンをウラシルに変換する修飾(重亜硫酸塩による処理工程)を行い、次いで、非メチル化DNAとメチル化DNAとを区別し得る特異的なプライマーによりPCRで増幅(PCR増幅工程)し、メチル化DNAを検出する方法である。上記方法により、特定の遺伝子の塩基配列中にメチル化DNAが存在することを検出することで、癌や腫瘍の早期発見および治療をモニタリングすることが可能になる。
特表2000−511776号公報(平成12年9月12日公表)
国際公開第02/38801 A1号パンフレット(2002年 5月16日国際公開)
しかしながら、上述した検出方法は、それぞれ以下のような問題点が生じる。
従来例では、重亜硫酸塩による処理を行うための核酸試料(DNA試料)は、組織または細胞系から抽出された核酸試料である。すなわち、組織または細胞系からタンパク質等が除去された核酸の混合物を核酸試料として用いている。
したがって、従来例において細胞から核酸を抽出する核酸抽出工程では、タンパク質等を除去する工程(タンパク質除去工程)が必要になる。検出するべき細胞検体が多数ある場合、上記タンパク質除去工程により、核酸抽出工程は煩雑で手間がかかり、さらに時間もかかるという問題が生じる。
また、上記核酸抽出工程で得られる核酸試料は、抽出の過程で核酸のロスが生じるため、多量の検体から核酸試料を抽出しなければならない。そのため、従来例の実施例では、組織および各種細胞系から1μgのDNA試料を抽出し、次いで、重亜硫酸塩による処理を行い、該1μgのDNA試料中、約50ngのDNAのみをPCR増幅に用いている。すなわち、1試料に対して、DNAのメチル化をPCR増幅により検出するために、DNA1μg相当の組織または細胞系が必要になる。したがって、DNAのメチル化を検出するため、多量の組織または細胞系から核酸試料を抽出しなければならないという問題が生じる。
したがって、検体から核酸試料を調製する工程を省き、容易にかつ微量の細胞検体からメチル化されたDNAを検出することができる方法の開発が強く望まれていた。
本発明は、上記課題に鑑みられたものであって、その目的は、細胞検体中の細胞から核酸を抽出する工程を省き、容易にかつ微量の細胞検体からメチル化されたDNAを検出することができる方法およびその利用法を提供することにある。
本願発明者は、上記課題を鑑み鋭意検討した結果、極微量の細胞検体を溶解して調製した細胞検体溶解液を、重亜硫酸塩で直接処理することにより、タンパク質除去等の過程を行わずに細胞検体に含まれるDNAを修飾することができることを見出し、これにより、メチル化DNAを容易にかつ微量の細胞検体でメチル化DNAを検出する方法を実現し、本発明を完成させるに至った。
すなわち、本発明に係るメチル化DNA検出方法は、上記の課題を解決するために、細胞検体を溶解液により溶解させて細胞検体溶解液を調製する細胞溶解工程と、上記細胞溶解工程により得られる細胞検体溶解液を重亜硫酸塩含有試薬で処理し、当該細胞検体溶解液に含まれるCpG含有DNAの塩基配列中の非メチル化シトシンをウラシルへと変換するDNA変換工程と、上記DNA変換工程により得られるCpG含有DNAを、所定のメチル化特異的オリゴヌクレオチドプライマーを用いて、ポリメラーゼ連鎖反応により増幅させるDNA増幅工程と、上記DNA増幅工程によって、上記CpG含有DNAが増幅されたか否かを検出するメチル化検出工程と、を含むことを特徴している。
上記メチル化DNA検出方法によれば、細胞溶解工程で得られた細胞検体溶解液を重亜硫酸塩で処理することにより、CpG含有DNAの塩基配列中におけるメチル化されていないシトシン(非メチル化シトシン)はウラシルに変換されるが、メチル化されたシトシン(メチル化シトシン)は変換されない。このため、DNA変換工程後におけるCpG含有DNAを、所定のメチル化特異的オリゴヌクレオチドプライマーを用いたPCRにより増幅することによって、増幅されるか否かによって、簡便かつ容易に、当該CpG含有DNAの塩基配列中にメチル化シトシンが含まれるか否かを判定することができる。
上記の方法によれば、細胞検体を溶解液により溶解し、この細胞検体溶解液を重亜硫酸塩で処理している。したがって、従来のように、タンパク質除去等を含み複雑で煩雑な核酸抽出工程で得た核酸試料を重亜硫酸塩で処理する必要がなく、非常に簡便かつ容易な方法といえる。
また、上記の方法によれば、DNAのメチル化を検出するために、多量の検体から核酸試料を抽出しなければならないという問題は招来しない。すなわち、上記の方法では、上記細胞溶解工程で細胞検体を溶解した細胞検体溶解液中に含まれるDNAを全て上記遺伝子修飾工程に用いているので、上述した従来例における核酸抽出工程でみられる核酸のロス等は生じない。したがって、本発明に係る方法によれば、多量の細胞検体を必要とせず極めて微量の細胞検体から、メチル化DNAを検出することが可能になる。
また、本発明に係るメチル化DNA検出方法は、上記DNA変換工程により得られるCpG含有DNAを、さらに、所定の非メチル化特異的オリゴヌクレオチドプライマーを用いてポリメラーゼ連鎖反応により増幅させる上記DNA増幅工程を含むことを特徴としている。
上記の方法によれば、メチル化特異的プライマー、および非メチル化特異的プライマーの両方を用いて、DNA変換工程後におけるCpG含有DNAをPCR増幅することになる。このため、より高精度でメチル化されたDNAを検出することができる。
また、本発明に係るメチル化DNA検出方法では、上記CpG含有DNAが、遺伝子のプロモーター領域に存在することが好ましい。CpG含有DNAが遺伝子のプロモーター領域に存在している場合に、当該CpG含有DNA中のシトシンがメチル化されているか否かを検出することにより、当該遺伝子の発現異常(例えば、発現抑制など)の有無を判定することができる。このため、例えば、当該遺伝子の発現異常によって引き起こされる疾患の診断、治療、および予防に非常に効果的である。
また、上記遺伝子は、癌抑制遺伝子または癌関連遺伝子であることが好ましい。癌抑制遺伝子の発現異常を検出することができ、癌の早期発見、診断、治療などに利用することができる。
また、上記遺伝子は、SHP1遺伝子、またはp16Ink4a遺伝子、またはp15Ink4b遺伝子、またはCDH1遺伝子、またはCDH13遺伝子であることがより好ましい。なお、ここでいう「SHP1遺伝子」とは、プロテインチロシンホスファターゼSHP1遺伝子のことである。
また、上記細胞検体が、造血器細胞を含む細胞検体であることがより好ましい。上記細胞検体が造血器細胞である場合、上記の方法により、悪性リンパ腫や白血病といった造血器腫瘍を調べることができる。
また、上記細胞検体が、血液、担体に吸着させた血液、凝固血液塊、骨髄液、および担体に吸着させた骨髄液のうち少なくとも1つから選ばれる細胞検体であることが好ましい。上記の方法では、細胞検体として、新鮮血液だけでなく、濾紙に吸着させた血液、または凝固血液塊も使用することができる。このため、例えば、家庭で耳朶から血液を採取し、当該血液を濾紙などに付着・乾燥させたものを、家庭から遠隔地に存在する病院に送付し、当該病院において上記メチル化DNA検出方法を実施することにより、容易にメチル化DNAの有無を検出することができる。このため、例えば、癌の早期診断などについて、非常に汎用に利用することが可能となる。
また、上記溶解液は、グアニジンチオシアネートまたはヨウ化ナトリウムを含む溶液であることが好ましい。
また、上記重亜硫酸塩含有試薬は、重亜硫酸ナトリウムを含む試薬であることが好ましい。上記の試薬を用いることにより、確実かつ簡便に本発明に係るメチル化DNA検出方法を実施することができる。
また、本発明に係るメチル化DNA検出キットは、上記の課題を解決するために、細胞検体に含まれるメチル化DNAを検出するためのメチル化DNA検出キットであって、上記細胞検体を溶解するための溶解液と、上記細胞検体に含まれるCpG含有DNAの塩基配列中の非メチル化シトシンをウラシルへと変換するための重亜硫酸塩含有試薬と、上記CpG含有DNAの塩基配列中に含まれるメチル化シトシンの有無を判定するための所定のメチル化特異的オリゴヌクレオチドプライマーと、を含むことを特徴としている。
上記の構成によれば、簡便かつ確実に、上記メチル化DNA検出方法を実施することができる。このため、上記メチル化DNA検出方法を汎用的にするのに非常に有効である。
また、さらに、PCR用試薬を含むことが好ましい。より一層使用しやすくなるという利点がある。
さらに、非医療機関において、被験者の抹消血を、被験者自らまたは第三者が採取するための採血キットを含んでいることが好ましい。これにより、非医療機関において、被験者の抹消血液を被験者自らまたは第三者によって採血することができるため、より一層上記メチル化検出キットの汎用性が拡大する。
また、本発明に係る疾患判定方法は、上記の課題を解決するために、上記のメチル化DNA検出方法およびメチル化DNA検出キットのいずれか1つの方法またはキットを用いて、細胞検体中のメチル化DNAの有無を検出することにより、DNAのメチル化による遺伝子の発現異常が原因となって引き起こされる疾患の発症または当該疾患の発症可能性を判定することを特徴としている。
上記の方法によれば、シトシンがメチル化されたCpG含有DNAが、例えば、遺伝子のプロモーター領域に存在する場合、当該遺伝子の発現状態に異常、例えば、発現抑制が起こる。このため、上記の方法またはキットを用いてメチル化DNAを検出することにより、かかる遺伝子の発現異常によって引き起こされる種々の疾患または当該疾患の発症可能性を、簡便かつ高精度で判定(診断)することができる。
また、本発明に係る疾患判定方法は、上記の課題を解決するために、上記のメチル化DNA検出方法およびメチル化DNA検出キットのいずれか1つの方法またはキットを用いて、細胞検体中の複数の遺伝子のプロモーター領域に存在するCpG含有DNAのメチル化の有無を検出することにより、前記DNAのメチル化による遺伝子の発現異常が原因となって引き起こされる疾患の発症、または当該疾患の発症可能性を判定することを特徴としている。
複数の遺伝子の発現異常をモニタリングすることによって、当該遺伝子の発現が関連する疾患の発症、又はその発症可能性をより高精度・高感度に判定することができる。
さらに、本発明にかかる疾患判定方法は、上記遺伝子が、癌抑制遺伝子または癌関連遺伝子であることが好ましい。
複数の癌抑制遺伝子または癌関連遺伝子をモニタリングすることによって、癌の発症又は癌発症の可能性をより高精度・高感度に判定することができる。
またさらに、本発明にかかる疾患判定方法は、上記癌抑制遺伝子または癌関連遺伝子が、SHP1遺伝子、および/またはp16Ink4a遺伝子、および/またはp15Ink4b遺伝子、および/またはCDH1遺伝子、および/またはCDH13遺伝子であることが好ましい。
上記複数の遺伝子の発現異常をモニターすることによって、悪性リンパ腫・白血病等の造血器細胞腫瘍の発症、又はその発症可能性をより高精度・高感度に判定することができる。
ところで、上記本発明にかかる疾患判定方法は、細胞検体中にメチル化DNAが存在する場合に、疾患の発症または当該疾患の発症可能性が高いと判定することができる。シトシンがメチル化されたCpG含有DNAが、例えば、遺伝子のプロモーター領域に存在する場合、当該遺伝子の発現状態に異常、例えば、発現抑制が起こる。このため、上記の方法またはキットを用いてメチル化DNAを検出することにより、かかる遺伝子の発現異常によって引き起こされる種々の疾患または当該疾患の発症可能性を、簡便かつ高精度で判定(診断)することができる。
また、上記本発明にかかる疾患判定方法は、上記細胞検体として造血器細胞を含む細胞検体を用いることが好ましい。上記構成によれば、造血器腫瘍の発症または造血器腫瘍の発症可能性を判定できる。
また本発明にかかる疾患判定方法は、上記疾患は、細胞増殖性疾患であることが好ましい。ここでいう細胞増殖性疾患としては、例えば、腫瘍や癌(悪性腫瘍)などが挙げられる。
また本発明にかかる疾患判定方法は、上記細胞増殖性疾患が、造血器腫瘍および固形腫瘍であることが好ましい。上記の方法によれば、例えば、新鮮血液、濾紙に吸着させた血液、または凝固血液塊を用いることにより、簡便かつ高精度で造血器腫瘍および固形腫瘍の発症、またはそれらの発症可能性を判定することができる。
なお、この方法をさらに拡張し、そのほかの固形腫瘍を含む細胞増殖性疾患および、胞状奇胎、Wilms腫瘍等のゲノム刷り込み異常疾患、統合失調症、Rett症候群等を含むエピジェネテイクス関連疾患のモニタリング、診断、発症可能性予測等を、血液検体の他、喀痰、尿、脳脊髄液等の体液を用いておこなうことが出来る。
以上のように、本発明に係るメチル化DNA検出方法によれば、タンパク質精製などのDNA抽出工程を経ることなく、極微量の細胞検体を直接用いて、簡便かつ高精度でDNAのメチル化を検出することができるという効果を奏する。
また、本発明に係るメチル化DNA検出キットによれば、簡便かつ容易に上記メチル化DNA検出方法を実施することができるという効果を奏する。
さらに、上記のメチル化DNA検出方法またはメチル化DNA検出キットを利用して、DNAのメチル化による遺伝子の発現異常が原因となって引き起こされる種々の疾患または疾患可能性を、効率的かつ高確率で判定(診断)することができるという効果を奏する。このため、本発明は、非常に社会的インパクトの強い重要な発明であるといえる。
本発明の目的は、細胞検体を直接用いることにより、従来技術のように核酸を抽出する工程を省き、容易にかつ微量の細胞検体について、所定の遺伝子のメチル化の有無を検出することができる方法およびその利用法を提供することである。
例えば、遺伝子のプロモーター領域において、DNAのメチル化が起こっている場合、当該遺伝子の発現が抑制されることになる。さらに、この遺伝子が癌抑制遺伝子である場合、生体において癌抑制遺伝子の発現が抑制されるため、癌が発生し進行してしまうことになる。したがって、本発明に係るメチル化DNA検出方法により、所定の遺伝子、特に癌抑制遺伝子のプロモーター領域についてメチル化の有無を検出することによって、簡便かつ高精度で癌等の細胞増殖性疾患の判定(診断)を行うことができるという点で、本発明は、非常に社会的インパクトが強いものである。
さらに、本発明は、煩雑なDNA検体を抽出する必要もなく、直接細胞検体からDNAのメチル化を検出することができる。しかも、方法の実施に必要な細胞検体は、非常に微量であってもかまわない。最も身近な細胞検体として、例えば、血液を挙げることができるが、本発明に係るメチル化DNA検出方法によれば、乾燥した血液や凝固した血液を用いても、新鮮な血液を用いた場合と同様の精度で検出することができる。
このため、例えば、細胞検体として血液を利用する場合、少量の血液を被験者自らが抹消血管から採血し、当該血液を濾紙などに染み込ませたものを遠隔地に存在する疾患判定センターに送付するだけで簡便に癌などの疾患の判定が可能となるという利点もある。すなわち、医師による採血に依らずに、例えば、家庭から血液検体を郵送することで、疾患の判定、診断、検査ができるようなメチル化DNA検出法を開発した。この方法により、造血器腫瘍などの疾患について、早期発見が可能となると考えられる。また、わざわざ、被験者が医療機関に出向き、採血してもらい、その上で検査してもらう必要がないため、被験者だけでなく医療機関にとっても、手間や時間を節約できるという点でも非常に優れた発明である。
以下、本発明のメチル化DNA検出方法について詳細に説明する。本発明に係るメチル化DNA検出方法の実施の一形態について、図1〜図13に基づいて説明すれば以下の通りである。なお、本発明はこれに限定されるものではない。
(1)メチル化検出方法
本発明に係るメチル化検出方法は、細胞検体を溶解液により溶解させて細胞検体溶解液を調製する細胞溶解工程と、上記細胞溶解工程により得られる細胞検体溶解液を重亜硫酸塩含有試薬で処理し、当該細胞検体溶解液に含まれるCpG含有DNAの塩基配列中の非メチル化シトシンをウラシルへと変換するDNA変換工程と、上記DNA変換工程により得られるCpG含有DNAを、所定のメチル化特異的オリゴヌクレオチドプライマーを用いて、ポリメラーゼ連鎖反応により増幅させるDNA増幅工程と、上記DNA増幅工程によって、上記CpG含有DNAが増幅されたか否かを検出するメチル化検出工程とを含む方法であればよく、その他の具体的な条件、方法などは特に限定されるものではない。
すなわち、本発明のメチル化DNA検出方法では、まず、細胞検体を溶解液で溶解して細胞検体溶解液を調製し(細胞溶解工程)、この細胞検体溶解液を直接重亜硫酸塩含有試薬で処理し、当該細胞検体溶解液に含まれるCpG含有DNAの塩基配列中の非メチル化シトシンをウラシルへと変換する(DNA変換工程)。そして、これにより得られたCpG含有DNAを、所定のメチル化特異的オリゴヌクレオチドプライマーを用いて、ポリメラーゼ連鎖反応法(PCR)により増幅させた後(DNA増幅工程)、上記CpG含有DNAが増幅されたか否かを検出する(メチル化検出工程)というものである。
以下に、(1−1)細胞溶解工程、(1−2)DNA変換工程、(1−3)DNA増幅工程、および(1−4)メチル化検出工程について詳細に説明する。
(1−1)細胞溶解工程
上記細胞溶解工程は、細胞検体を溶解液により溶解させて細胞検体溶解液を調製する工程であればよく、その他の具体的な方法、条件等は特に限定されるものではない。
上記の工程では、細胞検体を溶解液で溶解することにより、当該細胞検体の膜構造は破壊される。これにより、細胞検体に含まれるゲノムDNA等の核酸が露呈することになる。従来のメチル化DNA検出方法では、核酸以外のタンパク質、膜等を除去し、精製したDNA検体を用いてメチル化DNAの検出を行っていた。しかしながら、本発明のメチル化DNA検出方法では、このようなDNAの精製工程は必要なく、細胞検体に含まれるゲノム(CpG含有DNA)を直接DNA検体として用いることができるため、従来のように複雑で煩雑な工程を経ることなく、非常に簡便かつ迅速にメチル化DNAを検出することができる。
上記「細胞検体」とは、ヒトをはじめとした哺乳動物一般の細胞を含む体液、組織、または培養細胞等であればよく、その具体的な種類、性質などは特に限定されるものではないが、好適には、造血器細胞を含む検体、例えば、血液、骨髄液または造血器細胞を含む培養細胞系などが好ましい。
さらに、上記「造血器細胞をはじめとする細胞増殖性疾患を含む細胞検体」としては、上記の採取した血液(新鮮血液)の他に、担体に吸着させた血液、凝固血液塊、骨髄液、または担体に吸着させた骨髄液であってもよい。本発明に係る方法によれば、後述する実施例に示すように、新鮮血液のみならず、採血後・乾燥させた血液を細胞検体として用いても、十分DNAのメチル化を検出することができるためである。
ここで、「担体に吸着させた」血液または骨髄液とは、濾紙等の紙の担体やその他、樹脂やプラスチックなどの従来公知の担体に付着(吸着)させた後、乾燥させた血液または骨髄液をいう。担体の材質は特に限定されないが、好適には、後述する実施例に示すように、濾紙等が好ましい。また、「凝固血液塊」とは、文言どおり、採血後、乾燥・凝固させた血液の塊のことである。
なお、血液や骨髄液を採取する方法、担体に付着させた血液、骨髄液を調製する方法、凝固血液塊を調製する方法としては、従来公知の方法が利用でき特に限定されるものではない。具体的には、後述する実施例に示す方法が挙げられる。
また、末梢血と骨髄液に関して上記の当処理操作における違いは全く無く、どちらも同様に反応させることが可能である。あえて異なる点をあげるならば、当処理操作以前の採血操作に違いがあるといえる。すなわち、末梢血は医師に頼らなくとも採血可能であるが、骨髄液は個人では不可能であること、そのため、骨髄液の採血および診断は病院で行われると考えられるので、血液凝固剤の入った採血管に採血されることとなり、主には「非凝固血液」として、また一部は「濾紙に吸着」の方式が取られることになると考えられる。一方、末梢血では、個人の時は「濾紙に吸着」もしくは「凝固血液」方式となり、病院での採血時は骨髄液同様に「非凝固血液」として、また一部は「濾紙に吸着」の方式が取られることになる。
上記「溶解液」としては、上記細胞検体を溶解し、膜を開裂させることができるものであれば、特に限定されないが、タンパク質の変性を引き起こす試薬が好ましい。具体的な溶解液としては、例えば、グアニジンチオシアネート、ヨウ化ナトリウム等の従来公知のタンパク質変性剤を含む溶液が挙げられる。さらに、これらにβ−メルカプトエタノール等の従来公知の架橋開裂剤が含まれていてもよい。
なお、細胞溶解工程での溶解液の組成、濃度、反応温度、および反応時間等の反応条件は、特に限定されず、溶解液で溶解する細胞検体の濃度、種類などにより適宜設定することができる。また、細胞検体と上記溶解液とを混合した後、一定時間、当該混合溶液を加熱する工程を含むことが好ましい。細胞検体と溶解液とを混合した後、加熱することにより、一層細胞溶解を促進させることができるためである。
また、「細胞検体溶解液」とは、上述したように、細胞検体が溶解液によって破壊され、当該細胞検体中のゲノムDNAが細胞外に流出している溶液のことをいう。
以下に、本細胞溶解工程の好適な条件について、具体的な一例を挙げて説明する。
まず、溶解液として、グアニジンチオシアネートを含む溶液を使用する場合、その組成は、〔6.5M Guanidium Thiocyanate/ 0.81% N-Lauroylsarcosine sodium salt/ 40.63mM Sodium Citrate/ 163mM β-mercaptoethanol (pH7.0) 〕であることが好ましい。ここでは、この溶液を6.5 Mグアニジンチオシアネート溶解液と称する。そして、この6.5 Mグアニジンチオシアネート溶解液を保存液として用意する(ただし、濃度は少々違っていても使用量で補正することができるのであくまで目安である。)
続いて、上記溶解液を用いて、細胞検体溶解液を調製する方法について、細胞検体として血液を使用する場合を例に挙げて説明する。まず、(i)血液を直接使用する場合:血液5μlに6.5 Mグアニジンチオシアネート溶解液を40μl加えて最終濃度5.8Mとして使用する(ただし、1μl〜25μlの血液を直接反応させても可能であり、その際に蒸留水で容量を補正する必要はない)。(ii)血液を濾紙に吸着乾燥させて使用する場合:血液を付着させた濾紙に6.5 Mグアニジンチオシアネート溶解液を40μl加えて最終濃度6.5Mとして使用する(ただし、25μl以内の蒸留水を加えて反応しても影響は無い)。(iii)凝固血液塊を使用する場合:凝固血液塊に6.5 Mグアニジンチオシアネート溶解液を40μl加えて反応させる。
また、溶解液として、ヨウ化ナトリウムを含む溶液を使用する場合、その組成は、6M NaIとすることが好ましい。そして、上述の6.5 Mグアニジンチオシアネート溶解液の代わりに6M ヨウ化ナトリウムを使用する。
また、上記の溶解液と細胞検体とを混合した後、100℃で10分間加熱することが好ましい。
(1−2)DNA変換工程
上記DNA変換工程は、上記細胞溶解工程により得られる細胞検体溶解液を重亜硫酸塩含有試薬で処理し、当該細胞検体溶解液に含まれるCpG含有DNAの塩基配列中の非メチル化シトシンをウラシルへと変換する工程であればよく、その他の具体的な方法、条件等は特に限定されるものではない。
上記DNA変換工程では、重亜硫酸塩処理により、CpG含有DNAの塩基配列中でメチル化されていないシトシンはウラシルに変換される。一方、メチル化されたシトシンは、重亜硫酸塩処理を行っても、シトシンのままである。したがって、CpG含有DNAの塩基配列中のシトシンがメチル化されているか否かは、重亜硫酸塩処理により、ウラシルに変換されているかどうかで区別することができる。以下、重亜硫酸塩処理によるDNA変換の原理について、図1および図2を用いて詳細に説明する。
まず、DNAを重亜硫酸塩(Bisulfite)で処理すると、シトシンはウラシルに変換される。具体的には、図1に示すように、シトシンが重亜硫酸塩によりスルホン化(Sulphonation)され、さらに加水分解により脱アミノ化(Hydrolytic deamination)され、さらに、アルカリ存在下での脱スルホン化(Alkali desulphonation)により、ウラシルに変換される。これに対して、メチル化されたシトシンは、重亜硫酸塩処理してもウラシルに変換されない。
図2は、同一の塩基配列を有するDNAについて、その塩基配列中のCpGがメチル化されている、またはメチル化されていない場合の重亜硫酸塩処理を表わしている。同図に示すように、メチル化されていないDNAでは、上述のように重亜硫酸塩処理によりすべてのシトシンがウラシルに変換される。これに対して、メチル化されたDNAでは、重亜硫酸塩処理により、図中のメチル化された(図中円で囲んだMで示す)シトシンはウラシルに変換されず、それ以外のメチル化されていないシトシンのみがウラシルに変換される。すなわち、同一の塩基配列を有するDNAであっても、メチル化されているか否かで重亜硫酸塩処理後の塩基配列に違いがみられる。この塩基配列の違いを検出することにより、上記CpG含有検体のメチル化の有無を検出することができる。
上記「重亜硫酸塩含有試薬」としては、従来公知の重亜硫酸塩を含有する試薬であればよく、特に限定されるものではないが、例えば、重亜硫酸ナトリウム(Na2S2O5、メタ重亜硫酸ナトリウム、二亜硫酸ナトリウムまたはピロ亜硫酸ナトリウムともいう)を好適に用いることができる。さらに、重亜硫酸化合物と尿素とを併用してもよい。
上記「CpG含有DNA」は、上記細胞検体中に含まれるDNAであって、CpG配列を含む塩基配列を有するDNA検体であれば、特に限定されるものではない。ここでいうDNA検体は、ゲノムDNAのことである。
また、上記「CpG含有DNA」は、遺伝子のプロモーター領域に存在することが好ましい。さらに、この遺伝子が、癌抑制遺伝子または癌関連遺伝子であることがより好ましい。
遺伝子のプロモーター領域にCpG配列に富む領域(CpG島)が存在する場合、当該CpG島におけるシトシンのメチル化は、その遺伝子の転写制御に関連する。したがって、遺伝子のプロモーター領域におけるシトシンのメチル化を検出することにより、当該遺伝子の発現異常(例えば、転写が活性化されているのか抑制されているのか)を検出することができる。さらに、上記遺伝子が癌抑制遺伝子である場合、癌抑制遺伝子のプロモーター領域におけるCpG島のシトシンのメチル化を検出することにより、上記細胞検体に含まれる細胞が癌細胞であるか否かを検出することができる。
また、上記癌抑制遺伝子は、特に限定されないが、例えば、プロテインチロシンホスファターゼSHP1遺伝子・p16Ink4a遺伝子・p15Ink4b遺伝子・CDH1遺伝子・CDH13遺伝子が好ましいが、その他にも、p15、p14,DAPK、p73,CDH1,APC,GSTP1、アントロゲン受容体、エストロゲン受容体、TGF−β1、TGF−β2、p130、BRCA、NF1、NF2、TSG101、MDG1、GST−pi、カルトニン、HIC−1、エンドセリンB受容体、TIMP−2、TIMP−3、06−MGMT、MLH1、MSH2およびGFAP等の遺伝子が挙げられる。例えば、造血器腫瘍の患者、特に、悪性リンパ腫や白血病患者では、SHP1遺伝子のプロモーター領域に存在するCpG領域がメチル化されてしまうため、SHP1タンパク質が発現できずに細胞増殖の制御が効かなくなるというメカニズムが知られている。
また、p16Ink4a遺伝子は、Cyclin-dependent protein kinase 4および6(CDK:サイクリン依存性蛋白リン酸化酵素4および6)と結合しその活性を阻害することにより、RBタンパク質のリン酸化を抑制し、細胞周期を調節している因子である。急性リンパ性白血病、膀胱癌、食道癌、膵臓癌、家族性メラノーマやグリオーマにおいて高頻度に失活(染色体欠失)している。成人T細胞白血病においては、HTLV-1の癌遺伝子Taxがp16と結合しCDKとP16の複合体形成を阻害し、そのためCDKキナーゼ活性が上昇し、細胞周期がG1に進行することが示されている。乳癌や食道癌ではp16Ink4a遺伝子は正常であるが、そのプロモーター領域のDNAにメチル化が起こり遺伝子発現の低下が生じている。この遺伝子のプロモーター領域のメチル化の有無を調べることにより、癌細胞の有無を検討することが可能であることが知られている。
またp15Ink4b遺伝子は、Cyclin-dependent protein kinase 4(CDK:サイクリン依存性蛋白リン酸化酵素)と結合し、その活性を阻害する細胞周期調節因子である。染色体9p21に存在するp16Ink4a遺伝子に隣接して位置しており、多くの癌細胞でp16Ink4a遺伝子と一緒に欠失することが確認されている。この遺伝子のプロモーター領域のメチル化の有無を調べることにより、癌細胞の有無を検討することが可能であることが知られている。
またCDH1(Eカドヘリン)遺伝子については以下のことが知られている。カドヘリンは、分子量120kDaの細胞間接着に関連した糖タンパク質であり、胎性期の組織構築、器官形成に重要な役割を演じている。癌細胞に於いてもEカドヘリン(上皮由来)(CDH1)が癌細胞間の接着を司っていることが知られており、脈管内に浸潤した癌細胞が解離し標的臓器に漂着する癌転移の過程に関与していると考えられている。Eカドヘリンは、急性骨髄性白血病あるいはHodgkinリンパ腫の腫瘍細胞において発現が消失することが知られており発症との関連が示唆されている。
またCDH13(Hカドヘリン)遺伝子については、細胞内ドメインを欠き、細胞間接着のみならず細胞内シグナリングにも関連している事が知られている。また異常なDNAメチル化あるいは遺伝子欠失により、卵巣癌、乳癌、肺癌、大腸癌など様々な癌に於いてHカドヘリンの発現が消失していることが報告されている。最近本発明者等のグループの研究を始めとするいくつかの研究により、早期慢性骨髄性白血病あるいはインターフェロン治療低応答性慢性骨髄性白血病においてHカドヘリン・プロモーターの強いメチル化が観察されること、又びまん性大細胞型B細胞リンパ腫においてHカドヘリンDNAの異常メチル化および対立遺伝子欠失により、遺伝子発現の低下・消失が観られることが知られている。
したがって、SHP1遺伝子や、p16Ink4a遺伝子や、p15Ink4b遺伝子や、CDH1遺伝子や、CDH13遺伝子のメチル化を調べることで、効果的に造血器腫瘍の早期発見、遺伝子診断などに利用することができる。
なお、上記重亜硫酸塩処理における反応時間、反応温度、および重亜硫酸塩の濃度などの反応条件は、上記細胞検体溶解液中に含まれる核酸濃度などの細胞検体溶解液の条件に合わせて適宜設定することができる。
さらに、上記の重亜硫酸塩処理されたCpG含有DNAは、細胞検体溶解液から抽出し、後述するDNA増幅工程でPCR増幅される。このCpG含有DNAを細胞検体溶解液から抽出する方法としては、特に限定しないが、従来公知の方法を用いることができる。例えば、後述する実施例に示すように、グラスビーズにCpG含有検体を吸着する方法が挙げられる。この方法は、グラスビーズに上記CpG含有DNAを吸着し洗浄後、再度グラスビーズに吸着されたCpG含有DNAを溶出する方法である。また、CpG含有DNAを抽出する方法としては、エタノール沈殿を用いた方法でもよい。
また、本発明のメチル化DNA検出方法には、細胞検体を溶解液で溶解するとともに重亜硫酸塩含有試薬で処理する場合も含まれる。すなわち、細胞溶解工程とDNA変換工程とを一貫して連続的に行ってもよい。例えば、細胞検体を、重亜硫酸塩を含有する溶解液で一貫処理することにより、細胞検体溶解液を調製するとほぼ同時に、非メチル化シトシンをウラシルへと変換することができる。この場合、細胞溶解工程とDNA変換工程との2つの工程を別々に行う場合に比べ、より短時間で重亜硫酸塩処理されたCpG含有DNAを調製することができる。
以下に、本DNA変換工程の好適な条件について、具体的な一例を挙げて説明する。
上記重亜硫酸塩含有試薬として、6.2M Urea/2M Bisulfite溶液を用いる。上記細胞溶解工程により得られた細胞検体溶解液に対して、6.2M Urea/2M Bisulfite溶液208μlと10mM Hydroquinone 1μlを混合し(少々量が異なっても反応可能である)、ミネラルオイルを3滴重層する。そして、95℃5分加温後、「95℃1分、55℃1時間」を20サイクル繰り返す(少々条件が異なっても反応可能である)。上記の反応液を6M NaI(ヨウ化ナトリウム)と混合後、10μlのGlassbeadsを添加し、DNAをGlassbeadsに吸着させる。遠心分離後、DNA・Glassbeads複合体を〔10mM Tris・HCl(pH7.5)/1mM EDTA/100mM NaCl/50% ethanol 〕溶液で洗浄する。DNA・Glassbeads複合体に20mM NaOH/90% ethanolを添加し37℃15分反応させ、DNAの脱スルホン化を行う。90%ethanolでDNA・Glassbeads複合体を洗浄後、10mM Tris・HCl/1mM EDTA緩衝液でDNAを溶出させる(なお、Glassbeads法でなくてもエタノール沈澱法でもDNAは回収可能である)。
(1−3)DNA増幅工程
上記DNA増幅工程は、上記DNA変換工程により得られるCpG含有DNAを、所定のメチル化特異的オリゴヌクレオチドプライマーを用いて、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)により増幅させる工程であればよく、その他の具体的な方法、条件等は特に限定されない。
上記DNA増幅工程では、CpG含有DNAの塩基配列中のシトシンがウラシルへと変換したか否かを、所定のメチル化特異的オリゴヌクレオチドプライマーを用いたPCRにより調べている。すなわち、この所定のメチル化特異的オリゴヌクレオチドプライマーは、重亜硫酸塩処理によりCpG配列中のシトシンがウラシルに変換されていないCpG含有DNA(以下、メチル化CpG含有DNAとする)と特異的にアニーリング(相補)する。したがって、上記メチル化特異的オリゴヌクレオチドプライマーを用いたPCRによって、メチル化CpG含有DNAは特異的に増幅されることになる。
一方、重亜硫酸塩処理により、CpG含有DNAの塩基配列中のシトシンがウラシルに変換されたCpG含有DNA(以下、非メチル化CpG含有DNAとする)は、上記メチル化特異的オリゴヌクレオチドプライマーとアニーリングしないため、当該メチル化特異的オリゴヌクレオチドプライマーを用いたPCRでは増幅されない。
したがって、メチル化特異的オリゴヌクレオチドプライマーを用いたPCRによって、上記DNA変換工程によって得られるCpG含有DNAが増幅されるか否かを検出することで、当該CpG含有DNAの塩基配列中のシトシンがメチル化されているかを検出することができる。
ここで、「所定のメチル化特異的オリゴヌクレオチドプライマー」とは、細胞検体に含まれるDNA(ゲノムDNA)のうち、CpG配列を含有する任意の領域に対して特異的にアニーリングするよう設計されたオリゴヌクレオチドプライマーであって、特に、当該領域中のCpG配列は保存されたまま、かつCpG配列以外のC(シトシン)はT(チミン)に変換された塩基配列を有するオリゴヌクレオチドプライマーである(図3(b)参照)。このように設計することにより、当該メチル化特異的オリゴヌクレオチドプライマーは、上記メチル化CpG含有DNAと特異的にアニーリング(相補)することができる。なお、上記メチル化特異的オリゴヌクレオチドプライマーでは、フォワードプライマー(Forward Primer)およびリバースプライマー(Reverse Primer)のうち、どちらか一方のプライマーのみが上記メチル化CpG含有DNA領域と特異的にアニーリングするものであれば、DNAのメチル化を検出することができるが、より好適には、フォワードプライマー(Forward Primer)およびリバースプライマー(Reverse Primer)のいずれもが、上記メチル化CpG含有DNA領域と特異的にアニーリングするものであることが好ましい。
ここで、プライマーの設計について図3を用いて簡単に説明する。図3に示すように、DNAを重亜硫酸塩処理すると、メチル化されていないシトシンはウラシルに変換されるが、メチル化されたシトシンは変換されずに保存される。ここで、細胞内でメチル化を受ける可能性のあるシトシンは、5’配列側からCGと並ぶCG配列(5’−CG−3’)のシトシン(C)のみである。このため、重亜硫酸塩処理により、上記CG配列以外のシトシンは全てウラシル(U)に変換されてしまう。そこで、全てのCG配列がメチル化を受けたものとしてCpG含有DNAの塩基配列を変換し、プライマーを設定する。なお、DNA中のウラシルはチミン(T)として認識され、PCRによりチミンに置換されることになる。
上記メチル化特異的オリゴヌクレオチドプライマーの具体的な例としては、例えば、癌抑制遺伝子(SHP1遺伝子・p16Ink4a遺伝子・p15Ink4b遺伝子・CDH1遺伝子・CDH13遺伝子など)やその他の遺伝子のプロモーター領域に存在するCpG配列を含む領域に対するオリゴヌクレオチドプライマーであって、当該領域中のCpG配列は保存されたまま、かつCpG配列以外のC(シトシン)はT(チミン)に変換された塩基配列を有するオリゴヌクレオチドプライマーを挙げることができるが、これに限定されるものではない。
また、「ポリメラーゼ連鎖反応」とは、PCR(Polymerase Chain Reaction)でもよいし、PCRを用いないLAMP法等でもよく、その具体的な方法、条件等は特に限定されない。
また、上記DNA増幅工程では、上記DNA変換工程により得られる、非メチル化シトシンがウラシルへと変換されたCpG含有DNAを、さらに、所定の非メチル化特異的オリゴヌクレオチドプライマーを用いてポリメラーゼ連鎖反応(PCR)により増幅させる工程を含んでいてもよい。
これにより、非メチル化特異的オリゴヌクレオチドプライマーを用いたPCRでは、非メチル化CpG含有DNAは増幅される。一方、メチル化CpG含有DNAは増幅されない。したがって、非メチル化特異的オリゴヌクレオチドプライマーを用いたPCRの結果、DNA検体が増幅されるか否かにより、CpG含有DNAの塩基配列中のシトシンがメチル化されているかを検討することができる。このように、メチル化特異的オリゴヌクレオチドプライマー、および非メチル化特異的オリゴヌクレオチドプライマーの両方を用いて検出することにより、一層検出精度が上昇する。
ここで、「非メチル化特異的オリゴヌクレオチドプライマー」とは、細胞検体に含まれるDNA(ゲノムDNA)のうち、CpG配列を含有する任意の領域に対して特異的にアニーリングするよう設計されたオリゴヌクレオチドプライマーであって、特に、当該領域中のすべてのC(シトシン)がT(チミン)に変換された配列を有するオリゴヌクレオチドプライマーである(図3(a)参照)。また、上記非メチル化特異的オリゴヌクレオチドプライマーの具体的な例としては、例えば、癌抑制遺伝子(SHP1遺伝子・p16Ink4a遺伝子・p15Ink4b遺伝子・CDH1遺伝子・CDH13遺伝子など)のプロモーター領域に存在するCpG配列を含む領域を挙げることができるが、これに限定されるものではない。
(1−4)メチル化検出工程
上記メチル化検出工程は、上記DNA増幅工程によって、上記CpG含有DNAが増幅されたか否かを検出する工程であればよく、その具体的な方法、条件等は、特に限定されるものではない。
上記メチル化特異的オリゴヌクレオチドプライマーを用いたPCRによりCpG含有DNAが増幅されるか否かを検出する。これにより、上記CpG含有DNAの塩基配列中にメチル化シトシンが存在するか否かを簡便かつ迅速に、そして高感度で検出することができる。
具体的な検出法方法としては、例えば、プライマーを蛍光ラベル、ビオチンラベル、DIGラベルや放射性同位元素ラベルで標識してもよく、ゲル電気泳動法、リアルタイムPCR法、キャピラリー電気泳動法、フラグメント解析、プレート・リーダー法、免疫染色等、どのような機器、方法を用いてもよい。また検出感度と検出精度を向上させる為に、1回PCR反応を行った反応液の一部をとり、内側に位置するプライマーを用いて2回目のPCRを行ってもよい。
(2)メチル化検出キット
本発明に係るメチル化検出キットは、上記細胞検体を溶解するための溶解液と、上記細胞検体に含まれるCpG含有DNAの塩基配列中の非メチル化シトシンをウラシルへと変換するための重亜硫酸塩含有試薬と、上記CpG含有DNAの塩基配列中に含まれるメチル化シトシンの有無を判定するための所定のメチル化特異的オリゴヌクレオチドプライマーと、を含むキットであればよく、その他の構成は特に限定されるものではない。
上記の「溶解液」、「重亜硫酸塩含有試薬」、「所定のメチル化特異的オリゴヌクレオチドプライマー」としては、例えば、上記(1)欄で記載したものを用いることができる。
また、上記キットには、さらに、PCR用試薬やPCRを用いないDNA増幅試薬が含まれることが好ましい。それらの試薬は、従来公知のものを利用可能である。
さらに、上記キットには、非医療機関において、被験者の抹消血を、被験者自らまたは第三者によって採取するための採血キットを含まれることが好ましい。上記の採血キットを含むことにより、例えば、医師によらずに、被験者自らまたは第三者がメチル化DNA検出用に抹消血を採取することができる。このため、わざわざ医療機関に出向いて採血する必要がなく、時間や手間を省くことができる。なお、上記メチル化検出キットは、極微量の血液に基づいてDNAのメチル化を検出することが可能であることから、家庭などの非医療機関で極微量の血液を採取することで十分に被験者のDNAについてメチル化を検出することができる。
上記採血キットの一例をあげて具体的に説明する。本採血キットは、被験者が自分の末梢血を被験者自らまたは第三者が採血することにより、メチル化DNA検出キット用の細胞検体を得るためのキットである。
本採血キットを用いた血液を細胞検体として利用する場合の形態としては、(1)濾紙に血液をしみ込ませて使う形態、(2)血液を凝固させて使う形態、(3)直接血液を使う形態、の3通りがある。上記(1)(2)は、乾燥させた後に運搬もしくは郵送で検査センターへ送ることが可能であるが、上記(3)は検出キットが被験者の手許にあるときのみ有効である。
採血キットは、例えば、滅菌済み採血用カッターまたは採血用針、滅菌済み採血用キャピラリー(スポイト)、滅菌済み採血用マイクロチューブ、滅菌済み濾紙小片(約2mm x 4mm)、滅菌済み簡易ピンセット、滅菌済み血液凝固用プラスチック容器(サンプルチューブ・バイアル等)、滅菌済み輸送用プラスチック容器(サンプルチューブ・バイアル等)を備えていればよい。
上記採血キットを用いて、簡便に採血を行うプロトコールについて説明する。
(1)濾紙に吸着させる場合:まず、指先もしくは耳朶をよく消毒後、針かカミソリで切って血液を出し、キャピラリー(スポイト)で濾紙小片にしみ込ませる。もしくは、ひとたび、マイクロチューブに血液を分取後、濾紙にしみこませる。1回のメチル化検出方法の実施に、血液を染み込ませた濾紙の小片を3〜4枚使用した方が良い結果が得られるので、それを見越して、血液を染み込ませた濾紙は多めに作成しておくことが好ましい。血液が付着した濾紙はラップの上に置いて、もしくはマイクロチューブの中で風乾する。乾燥後は室温で1ヶ月は保存可能である。乾燥後、解析センターへ郵送する。
(2)凝固血液を使用する場合:指先もしくは耳朶をよく消毒後、針かカミソリで切って血液を出し、少量をキャピラリー(スポイト)にてマイクロチューブに分取して、フタを開けたまま風乾する。乾燥後はフタをしめて、室温で保存可能である。乾燥後、解析センターへ郵送する。
(3)非凝固血液を直接用いる場合:まず、後述するメチル化DNA検出キット中の0.5ml チューブを65℃程度のインキュベーターもしくは湯銭に入れて溶解液を溶解後、保温する。次に、指先もしくは耳朶をよく消毒後、針かカミソリで切って血液を出し、少量をキャピラリー(スポイト)にてマイクロチューブに分取する。血液が凝固しないうちに、5μl(1〜25μlでも可)を保温中の0.5ml チューブにそれぞれ添加して、素早く攪拌する。その後、100℃・10分加熱する。その後、後述の検出プロトコールのステップ(IV)へ進む。加熱後、そのまま、4℃保存で1週間ほどは保存することも可能である。
また、以下に本発明に係るメチル化DNA検出キットの具体的な一例を挙げて説明する。本検出キットは、例えば、細胞検体として微量血液を調べることにより、造血器腫瘍の有無を検出することができるシステムの検出キットである。細胞検体として血液を用いる場合は、上述のとおり、(1)濾紙にしみ込ませた血液、(2)乾燥させた凝固血液塊、(3)新鮮血液、の3通りのものを使用することができる。なお、(1)(2)では、運搬もしくは郵送で送られてきた検体を検出することが可能である。
本メチル化DNA検出キットは、例えば、血液溶解液試薬(例えば、グアニジンチオシアネートを含む溶解液)入り0.5mlマイクロチューブ、Urea粉末、Sodium Metabisulfite粉末、NaOH顆粒、Hydroquinone粉末、ミネラルオイル、6M Nal溶液、Glassbeads、Wash液 〔10mM Tris・HCl(pH7.5)/1mM EDTA/100mM NaCl/50% ethanol 〕、Ethanol、溶出溶液 〔10mM Tris・HCl(pH7.5)/1mM EDTA 〕、PCR用 Bisulfite処理済みヒト正常細胞ゲノムDNA、PCR用 Bisulfite処理済みヒト造血器腫瘍細胞株ゲノムDNA、PCR用造血器腫瘍細胞付着済み乾燥濾紙、メチル化DNA検出用PCRプライマー(蛍光標識付き、または非蛍光)、非メチル化DNA検出用PCRプライマー(蛍光標識付き、または非蛍光)、Bisulfite処理DNA検出用PCRプライマー(蛍光標識付き、または非蛍光)を備えていればよい。
上記メチル化DNA検出キットを用いた簡便プロトコールについて説明する。
(I)新鮮(非凝固)血液を直接用いる方法:まず、上記(1)の0.5ml チューブを65℃程度のインキュベーターもしくは湯銭に入れて溶解液を溶解後、保温する。次に、指先もしくは耳朶をよく消毒後、針かカミソリで切って血液を出し、少量をキャピラリー(スポイト)にてマイクロチューブに分取する。または、従来通りの注射シリンジによる静脈採血を行い、血液凝固阻害剤込みの状態で血液を分取する。血液が凝固しないうちに、5μl(1〜25μlでも可)を保温中の0.5ml チューブに添加して、素早く攪拌する。その後、100℃10分加熱する。ステップ(IV)へ進む。加熱後、そのまま、4℃保存で1週間ほどは保存することも可能である。
(II)濾紙に吸着させた血液を用いる方法:まず、上記0.5ml チューブを65℃程度のインキュベーターもしくは湯銭に入れて溶解液を溶解後、保温する。乾燥血液付着濾紙小片を0.5mlチューブ1本につき小片を3〜4枚入れて、100℃10分加熱する。ステップ(IV)へ進む。
(III)凝固血液塊を使用する方法:まず、上記0.5ml チューブを65℃程度のインキュベーターもしくは湯銭に入れて溶解液を溶解後、保温する。凝固血液塊を(1)の0.5ml チューブにピンセット等で入れて、100℃10分加熱する。ステップ(IV)へ進む。
(IV)上記のマイクロチューブに、6.2MのUrea/2M Bisulfite (pH5.0)を208μl、10mMのHydroquinoneを12μl加える。そして、フタをしてよく攪拌後、スピンダウンしてミネラルオイルを3滴重層する。95℃5分間加熱後、〔95℃1min, 55℃ 1hr 〕を20 cycle 行い、DNA変換工程を行う。
(V)ミネラルオイルを取らないようにして、反応液を750μlの6M NaI(ヨウ化ナトリウム)と混合後、10μlのGlassbeadsを添加し、DNAをGlassbeadsに吸着させる。遠心分離後上清を捨て、DNA・Glassbeads複合体を〔10mM Tris・HCl(pH7.5)/1mM EDTA/100mM NaCl/50% ethanol 〕溶液で洗浄する。上清を捨てたDNA・Glassbeads複合体に50μlの20mM NaOH/90% ethanolを添加し37℃15分反応させ、DNAの脱スルホン化を行う。90%ethanolでDNA・Glassbeads複合体を洗浄後、上清を捨て、30μl の10mM Tris・HCl/1mM EDTA緩衝液でDNAを溶出させる。その後、−80℃にて保存する。
(VI)全体量20μlのPCR反応系にDNAを2μl使用する。PCRプライマーとしてメチル化DNA検出用PCRプライマー(メチル化特異的オリゴヌクレオチドプライマー)を使用する。コントロールとして非メチル化DNA検出用PCRプライマー、Bisulfite処理DNA検出用PCRプライマーを使用する。同時にキットに含まれるPCR用 Bisulfite処理済みヒト正常細胞ゲノムDNA、PCR用 Bisulfite処理済みヒト造血器腫瘍細胞株ゲノムDNA、PCR用造血器腫瘍細胞付着済み乾燥濾紙を使用するとよい。
上述のように、本発明に係るメチル化DNA検出キットを使用することにより、簡便かつ容易に本発明に係るメチル化DNA検出方法を実施することができる。
(3)疾患判定方法
上述したように、本発明に係るメチル化DNA検出方法、またはメチル化DNA検出キットを用いることにより、極微量の細胞検体から、DNAのメチル化の有無を検出することができる。このため、例えば、DNAのメチル化によって、遺伝子の発現異常が生じ、その結果引き起こされる疾患の判定(診断)を行うことができる。
すなわち、本発明に係る疾患判定方法は、上記メチル化DNA検出方法およびメチル化DNA検出キットのいずれか1つの方法またはキットを用いて、細胞検体中のメチル化DNAの有無を検出することにより、DNAのメチル化による遺伝子の発現異常が原因となって引き起こされる疾患または当該疾患の発症可能性を判定する方法であればよく、その他の具体的な方法、条件等は特に限定されない。
上記の方法によれば、細胞検体中にメチル化DNAが存在する場合には、DNAのメチル化による遺伝子の発現異常が原因となって引き起こされる疾患であると判定できる、あるいは当該疾患の発症可能性が高いと判定することができ、高い確率で上記疾患の遺伝子診断を行うことができる。これは、遺伝子のプロモーター領域にCpG配列が存在する場合、当該CpG配列のシトシン(C)がメチル化されることにより、当該遺伝子の発現が抑制されてしまうことにより、種々の疾患が引き起こされてしまうと考えられるためである。また、上記遺伝子が例えば、癌抑制遺伝子である場合、上記疾患は、癌や腫瘍などの細胞増殖性疾患となる。
また、本発明に係る疾患判定方法は、上記の課題を解決するために、上記のメチル化DNA検出方法およびメチル化DNA検出キットのいずれか1つの方法、またはキットを用いて、細胞検体中の複数の遺伝子のプロモーター領域に存在するCpG含有DNAのメチル化の有無を検出することにより、前記DNAのメチル化による遺伝子の発現異常が原因となって引き起こされる疾患の発症、または当該疾患の発症可能性を判定することを特徴としている。
複数の遺伝子、特に任意の疾患の発症に関連する一連の発現異常をモニタリングし、その結果を総合的に判断することによって、一つの遺伝子のみのモニタリングでは見過していた当該遺伝子群の発現が関連する疾患の発症、又はその発症可能性をより高精度・高感度に判定することができる。
例えば、上記遺伝子が、癌抑制遺伝子または癌関連遺伝子である場合が挙げられる。癌等における発症のメカニズムは、単一の遺伝子の関与によって引き起こされるものではなく、複数の遺伝子の関与によって引き起こされるものである。よって、上記のようにその発症に関与する一連の遺伝子群をモニタリングし、その結果を総合的に判断すれば、病型の診断・分類・予後の推定等高精度・高感度に行うことができる。
なお上記癌抑制遺伝子または癌関連遺伝子の具体例としては、SHP1遺伝子・p16Ink4a遺伝子・p15Ink4b遺伝子・CDH1遺伝子・CDH13遺伝子等が挙げられる。かかる遺伝子は、悪性リンパ腫・白血病等の造血器細胞腫瘍の発症に関与する遺伝子である。よって、上記複数の遺伝子の発現異常をモニターすることによって、悪性リンパ腫・白血病等の造血器細胞腫瘍の発症、又はその発症可能性をより高精度・高感度に判定することができるものといえる。この他、癌抑制遺伝子・癌関連遺伝子としては、p15、p14,DAPK、p73,CDH1,APC,GSTP1,アントロゲン受容体、エストロゲン受容体、TGF−β1、TGF−β2、p130、BRCA、NF1、NF2、TSG101、MDG1、GST−pi、カルトニン、HIC−1、エンドセリンB受容体、TIMP−2、TIMP−3、06−MGMT、MLH1、MSH2およびGFAP等の遺伝子が挙げられる。
なお「癌抑制遺伝子」とは癌の発症を抑制する遺伝子のことを意味し、「癌関連遺伝子」とは癌の発症に関与する遺伝子のことを意味する。
また、上記細胞検体として造血器細胞をはじめとする細胞増殖性疾患を含む細胞検体(造血細胞を含む細胞検体)を用いる場合、造血器腫瘍および固形腫瘍またはそれらの造血器腫瘍の発症可能性を判定することができる。すなわち、被験者の抹消血を極微量採血し、当該抹消血を用いて、メチル化DNA検出方法またはメチル化DNA検出キットを用いることにより、簡便かつ迅速に造血器腫瘍および固形腫瘍またはそれらの造血器腫瘍の発症可能性を判定することができる。
なお、疾患の「発症可能性」とは、疾患が発生する危険度を示す指標をいい、発症可能性が高ければそれだけ疾患になりやすく、逆に発症可能性が低ければ疾患になり難いということを示すものである。
(4)本発明の利用
上述のように、本発明に係るメチル化DNA検出方法等は、極微量の細胞検体を直接利用することができる。さらに、細胞検体が血液の場合、濾紙に吸着させた血液でも、凝固血液塊であってもよい。このため、上述の採血キットなどを用いることにより、医師による採血に依らずに、家庭などにおいて多くの人がより容易に血液を採取し、血液検体を郵送することでメチル化DNAの検査、ひいては疾患判定方法を実施できるシステムを構築することができる。
上記メチル化DNA検出システムまたは疾患判定システムについて、図11に基づいて説明する。
被験者は、家庭・学校・職場などの非医療機関において、例えば、上記採血キットを用いて、耳朶や指先から抹消血を採血する。採血した血液は、濾紙に吸着させるか、または凝固血液塊として調製し所定の検査センターに送付する。
また、被験者は、病院などの医療機関において、医師により採血されることも可能である。この場合、採血された血液を濾紙に吸着させるか、凝固血液塊として調製するか、または非凝固血液(新鮮血液)として検査センターに送付する。なお、病院等の医療機関と検査センターとが一体となっていてもよい。
そして、検査センターでは、本発明のメチル化DNA検出方法を行う。この際、例えば、上記のメチル化DNA検出キットを用いて、本発明のメチル化DNA検出方法を行うことが好ましい。また、本発明の疾患判定方法により、疾患を判定(診断)する。
上記のメチル化DNA検出システムまたは疾患判定システムによれば、医師による採血を必ずしも必要とせず、家庭等の非医療機関で採血した抹消血を用いて、DNAのメチル化または疾患を判定(診断)することができるため、非常に効率的かつ簡便に癌や腫瘍などの疾患の遺伝子診断が可能となる。なお、この場合は被験者(検診者)の同意書を添付するようなシステムにすることが好ましい。
以下添付した図面に沿って実施例を示し、本発明の実施の形態についてさらに詳しく説明する。もちろん、本発明は以下の実施例に限定されるものではなく、細部については様々な態様が可能であることはいうまでもない。さらに、本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、それぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
〔実施例A〕(予備実験)プライマーの検討
まず、上述のプライマー設計条件で設計した、PCR増幅で用いるプライマーが実用可能かを検討する予備実験を行った。具体的には、重亜硫酸塩による処理により得られたDNAに対し、SHP1遺伝子プロモーター領域内のメチル化特異的プライマーSHP1MSP、非メチル化特異的プライマーSHP1UMSPおよび重亜硫酸塩処理DNA特異的プライマーBSP2を用いてPCRを行い、これらのプライマーの特異性を検証した。
(A−1)DNA試料の調製
DNA試料は、健常人10人の末梢血および造血器腫瘍培養細胞9種類から、従来のProteinase K/SDS法(Molecular Cloning, A Laboratory Manual, J.Sambrook, E.F.Fritsch, T. Maniatis, Cold Spring Harbor Laboratory Press)により精製した。以下、健常人の末梢血から精製されたDNA試料を単に健常人DNAとし、造血器腫瘍培養細胞9種類から精製したDNA試料を造血器腫瘍DNAとする。
(A−2)重亜硫酸塩による処理
重亜硫酸塩による処理で用いる試薬の組成は以下の通りである。
・洗浄液〔10mM Tris・HCl(pH7.5)/1mM EDTA/100mM NaCl/50% ethanol〕
・脱スルホン化液〔20mM NaOH/90% ethanol〕
・DNA溶出用緩衝液〔10mM Tris・HCl/1mM EDTA〕
上述の(A−1)欄で精製したDNAを0.3N水酸化ナトリウムにより37℃で30分処理し、1本鎖DNAに変性させた後(DNA変性段階)、6.2M Urea/2M Sodium Bisulfite(重亜硫酸ナトリウム)溶液208μlと10mMヒドロキノン12μlとを混合し、ミネラルオイルを3滴重層した。上記混合液を反応系とし、95℃で5分反応後、「95℃1分、55℃1時間」の反応を1サイクルとして20サイクル繰り返した(重亜硫酸塩による反応段階)。この反応液を、6MNaI(ヨウ化ナトリウム)を混合後、10μlのGlassbeadsを添加し、修飾したDNAをGlassbeadsに吸着させた。上記混合液を遠心分離した後、沈殿したDNA・Glassbeads複合体を洗浄液で洗浄した。次いでこのDNA・Glassbeads複合体に脱スルホン化液を添加し、37℃で15分反応させ、DNAの脱スルホン化を行った。その後、90%エタノールでDNA・Glassbeads複合体を洗浄後、DNA溶出用緩衝液でDNAを溶出し修飾DNA溶液を調製した(修飾DNA回収段階)。
(A−3)PCR増幅
上記修飾DNA溶液のそれぞれに対し、メチル化特異的プライマーSHP1MSP、非メチル化特異的プライマーSHP1UMSPおよび重亜硫酸塩処理DNA特異的プライマーBSP2のそれぞれを用いてPCR増幅を行った。ここで、メチル化特異的プライマーSHP1MSP、非メチル化特異的プライマーSHP1UMSPは、それぞれSHP1遺伝子のプライマー領域のCpG配列を含む塩基配列に対して設計されたプライマーである。
また、重亜硫酸塩処理DNA特異的プライマーBSP2は、SHP1遺伝子のうち、CG配列を含まない領域に対して設計されたプライマーであり、当該塩基配列中のシトシンをチミンに変換した塩基配列を有するものである。重亜硫酸塩処理DNA特異的プライマーは、重亜硫酸塩処理が適切に行われているか否かを確認するためのプライマーである。
PCR増幅のためのプライマーの塩基配列およびPCR反応条件は以下の通りである。
(i)メチル化特異的プライマーSHP1MSP
MF2: 5’- GAA CGT TAT TAT AGT ATA GCG TTC(配列番号1)
MR2: 5’- TCA CGC ATA CGA ACC CAA ACG(配列番号2)
94℃30秒、58℃1分、72℃1分 45サイクル
(ii)非メチル化特異的プライマーSHP1UMSP
UF22: 5’- GTG AAT GTT ATT ATA GTA TAG TGT TTG G(配列番号3)
UR22: 5’- TTC ACA CAT ACA AAC CCA AAC AAT(配列番号4)
94℃30秒、59℃1分、72℃1分 45サイクル
(iii)重亜硫酸塩処理DNA特異的プライマーBSP2
MF4: 5’- GGG TTG TGG TGA GAA ATT AAT TAG(配列番号5)
MR4: 5’- CCT CAA ATA CAA CTC CCA ATA CC(配列番号6)
94℃30秒、60℃1分、72℃1分 45サイクル
(A−4)PCR産物の塩基配列決定
PCR産物をT4 DNA polymeraseにより平滑末端にした後、T4 polynucleotide kinaseにより末端をリン酸化し、挿入DNA断片を調製した。平滑末端化させたプラスミドpBluescriptと、上記挿入DNA断片とをT4 DNA ligaseを用いて連結させた。その反応液を大腸菌DH5αに公知の方法により導入し、アンピシリン含有培地中で得られたアンピシリン耐性株から目的のプラスミドを回収した。このプラスミドをBigDyeシーケンスキット(Applied Biosystems社)により蛍光ラベル反応させ、ABI3100 sequencer(Applied Biosystems社)を用いてDNA塩基配列の決定を行った。
(A−5)結果
図4は、上記の方法により得られたPCR産物の電気泳動による解析データを示している。図4(a)〜(c)はそれぞれ、メチル化特異的プライマーSHP1MSP、非メチル化特異的プライマーSHP1UMSP、および重亜硫酸塩処理DNA特異的プライマーBSP2を用いたPCRにより得られたPCR産物の電気泳動図を示す。なお、レーン1〜10は健常人DNA、レーン11〜19は造血器腫瘍DNAについてのPCR増幅の結果を示し、レーン20は、DNA試料が存在しない状態で上記の方法を行った結果を示す。レーンMは、分子量マーカーの電気泳動を示す。図4(d)は、メチル化特異的プライマーSHP1MSPを用いたPCR産物のDNA塩基配列を決定した結果を示す図である。
図4(a)のレーン1〜10に示すように、メチル化特異的プライマーSHP1MSPを用いて、健常人DNAを鋳型としたPCR増幅では、このPCR産物の分子量に相当するバンド(以下単にバンドとする)は検出されなかった。これに対し、図4(a)のレーン11〜19に示すように、造血器腫瘍DNAを鋳型DNAとしたPCR増幅では、バンドが検出された。
これらのPCR産物が、本当にメチル化されたDNAのPCR産物であるかどうかを確認するために、PCR産物の塩基配列を決定した。図4(d)に示すように、PCR産物中に存在する5ケ所のCG(図中の塩基配列の上に線を引いた箇所)がすべてCGとして保存されていたこと、その他のCはすべてTに変換されていることより、CGのCはメチルシトシンとして存在していることが示された。
また、図4(b)のレーン1〜10に示すように、非メチル化特異的プライマーSHP1UMSPを用いて健常人DNAを増幅させた場合、バンドが検出された。これに対し、造血器腫瘍DNAでは、上記プライマーによるPCR産物のバンドが検出されないもの(レーン11,12,16)と検出されるもの(レーン13〜15,17〜19)とが存在した。これより、上記造血器腫瘍培養細胞検体中にはメチル化状態の細胞と非メチル化状態の正常細胞とが共存していることが示唆された。
さらに、図4(c)に示すように、重亜硫酸塩処理DNA特異的プライマーBSP2は、DNAのメチル化や非メチル化に関わらず、健常人DNAおよび造血器腫瘍DNAどちらに対しても、PCR産物のバンドを検出することができる。このことは、重亜硫酸塩によりDNAの塩基配列中の非メチル化シトシンがウラシルに変換されていることを示している。
〔実施例B〕
造血器細胞の溶解条件の検討を行った。
(B−1)細胞溶解工程
骨髄性白血病の患者の骨髄液をRPMI1640培養液で2倍希釈した細胞希釈液を骨髄液腫瘍細胞の供給源として利用した。このうち、0.5mlを用いて上述のProteinaseK/SDS法によりDNAを抽出・精製し、精製骨髄細胞DNAを対照実験用に調製した。
また、上記細胞希釈液を25μlずつ分注し、それぞれを(1)グアニジンチオシアネート(GTC)溶解液、(2)ヨウ化ナトリウム溶解液、(3)尿素溶解液、および(4)SDS溶解液にて溶解し、100℃で10分間加熱した。また、上記精製骨髄細胞DNAに関しても以下同様の操作を行った。
上記(1)〜(4)の溶解液の組成および反応系は以下の通りである。
(1)グアニジンチオシアネート溶解液
組成:6.5M Guanidium Thiocyanate/ 0.81% N-Lauroylsarcosine sodium salt/ 40.63mM Sodium Citrate/ 163mM β-mercaptoethanol (pH7.0)
上記組成の溶液を6.5M GTC溶解液と称し、この反応系で使用する。上記細胞希釈液25μlに対して、この6.5MGTC溶解液を40μl加えた65μlの系を反応系とし、100℃で10分間加熱した(細胞検体溶解液)。したがって、この細胞検体溶解液に含まれるGTCの最終濃度は4Mである。
(2)ヨウ化ナトリウム溶解液
組成:6M NaI (pH11)
上記組成のヨウ化ナトリウム溶解液をこの反応系で使用する。上記細胞希釈液25μlに対して、上記組成のヨウ化ナトリウム溶解液25μlを加えた系を反応系とし、100℃で10分間加熱した(細胞検体溶解液)。したがって、この細胞検体溶解液に含まれるヨウ化ナトリウムの最終濃度は3Mである。
(3)尿素溶解液
組成:6M Urea (pH11)
上記組成の尿素溶解液をこの反応系で使用する。上記細胞希釈液25μlに対して、上記組成の尿素溶解液25μlを加えた系を反応系とし、100℃で10分間加熱した(細胞検体溶解液)。したがって、この細胞検体溶解液に含まれる尿素の最終濃度は3Mである。
(4)SDS溶解液
組成:1.25% SDS (sodium dodecyl sulfate)
上記組成のSDS溶液をこの反応系で使用する。上記細胞希釈液25μlに対して、上記組成のSDS溶解液20μlを加えた系を反応系とし、100℃で10分間加熱した(細胞検体溶解液)。したがって、この細胞検体溶解液に含まれるSDSの最終濃度は0.5%である。
(B−2)重亜硫酸塩による処理
上述の(1)〜(4)の溶解液を用いて溶解処理を施した細胞検体溶解液に対し直接重亜硫酸塩による処理を行った。(1)〜(3)の溶解液で溶解処理を施した細胞検体溶解液については、上記の予備実験で行った水酸化ナトリウムによるDNA変性段階を行わず、重亜硫酸塩による反応段階および修飾DNA回収段階のみにより修飾DNA溶液を調製した。また、(4)の溶解液で溶解処理を施した細胞検体溶解液については、予備実験で行ったDNA変性段階、重亜硫酸塩による反応段階および修飾DNA回収段階により修飾DNA溶液を調製した。
(B−3)PCR増幅
(B−2)で重亜硫酸処理した各DNA溶液に対し、上記メチル化特異的プライマーSHP1MSPを用いて予備実験と同様の条件でPCR増幅を行った。このPCR産物を電気泳動し、PCR産物の分子量に相当するバンドの有無を検出した。
(B−4)結果
図5はそのPCR産物の電気泳動図を示している。なお、この骨髄液腫瘍細胞に、SHP1遺伝子にメチル化DNAが存在することは、上記細胞溶解工程で対照実験用に精製したDNAを鋳型としてメチル化特異的プライマーSHP1MSPを用いたPCR増幅により確認している。
レーン1〜4は、それぞれ上記細胞希釈液を上記溶解液(1)〜(4)で処理したときのメチル化DNA検出結果を表わす。なお、レーン5〜8は骨髄細胞より精製したDNAを溶解液(1)〜(4)を用いて同様に処理した対照実験である。また、レーン9は、上記精製骨髄細胞DNAに細胞溶解処理を施さないときの結果である。
図5のレーン1、2に示すように、溶解液として(1)GTC溶解液、および(2)ヨウ化ナトリウム溶解液を用いたとき、細胞希釈液からDNAを抽出・精製しなくてもPCR産物のバンドが見られ、これによりSHP1遺伝子のメチル化DNAを検出することができた。これにより、細胞検体を溶解させる溶解液は、GTCまたはNaIを含む溶解液を使用することが好ましいことがわかった。
〔実施例C〕
濾紙に吸着させ乾燥させた骨髄液を用いても、骨髄細胞中のSHP1遺伝子がメチル化されているか否かを検出できるかどうか検討した。
(C−1)細胞溶解前工程
実施例Bで用いた細胞希釈液25μlを、(1)クロマトグラフィー用濾紙(Wattmann社 3MM)、(2)乾燥採血濾紙(アドバンティック東洋)、(3)DEAE(diethylaminoethyl)フィルター(Wattmann社 DE81 paper)、(4)ナイロンメンブレン(アマシャム社Hybond-N+)、および(5)ナイロンメンブレン(アトー社Clear Blot Membrane-p)の小片(2mm×4mm)に、それぞれ吸着させ乾燥させた後、3週間室温放置し、濾紙吸着細胞検体(1)〜(5)を調製した。
(C−2)細胞溶解工程
溶解液として、6.5MGTC溶解液を用いた。上記の(1)〜(5)の細胞検体が吸着した濾紙をそれぞれ、上記6.5MGTC溶解液40μlに添加して100℃で加熱した。
(C−3)重亜硫酸塩による処理
上記の(1)〜(5)の濾紙に吸着した細胞検体については、上記の予備実験で行われた、水酸化ナトリウムによるDNA変性段階を行わず、重亜硫酸塩による反応段階および修飾DNA回収段階のみにより修飾DNA溶液を調製した。
(C−4)PCR増幅
上記重亜硫酸塩による処理で得られた検体について、上記実施例Bと同様の条件でPCRを行った。
(C−5)結果
図6は、濾紙吸着細胞検体(1)〜(5)のPCR産物の電気泳動図を示している。レーン1〜5はそれぞれ、上記濾紙吸着細胞検体(1)〜(5)についてのPCRによる検出結果である。レーン(6)は、精製骨髄細胞DNAを重亜硫酸塩による処理した後PCR増幅を行ったポジティブコントロールであり、レーン(7)は、精製骨髄細胞DNAを重亜硫酸塩による未処理でPCR増幅を行ったネガティブコントロールである。
図6に示すように、レーン(1)、(2)では、バンドが検出されSHP1遺伝子のメチル化DNAを検出することができた。また、レーン(5)でも、弱いながらPCR産物のバンドが検出され、SHP1遺伝子のメチル化DNAを検出することができた。これらの結果から、骨髄液を(1)、(2)、(5)の濾紙に吸着させ乾燥させた細胞検体であっても、当該細胞検体中におけるDNAのメチル化の有無を検出することができることがわかった。
〔実施例D〕
次に細胞溶解工程におけるGTC溶解液の細胞溶解に適した濃度の検討を行った。
(D−1)細胞溶解前工程
上述の実施例Cで用いた濾紙(1)クロマトグラフィー用濾紙 (Wattmann社 3MM)を用いて、実施例Cと同様に濾紙吸着細胞検体(1)を調製した。
(D−2)細胞溶解工程
上記細胞希釈液25μlを、GTCの最終濃度が(1)4M、(2)3.25M、(3)2M、および(4)0.8Mになるように加えて細胞検体溶解液を調製した。また、上記(1)の濾紙に吸着した細胞検体については、GTCの最終濃度が(5)6.5Mおよび(6)4Mになるように加えて細胞検体溶解液を調製した。上記の最終濃度(1)〜(6)の細胞検体溶解液を100℃で10分間加熱した。
以下、GTCの最終濃度(1)〜(6)の細胞検体溶解液の組成、および後述する図7の電気泳動図のレーン番号を表1に示す。
なお、上記細胞希釈液は実施例Bで作成した細胞希釈液を用いた。
(D−3)重亜硫酸塩による処理
上記細胞溶解工程で得られた、GTCの最終濃度が(1)〜(6)の細胞検体溶解液について、上記実施例B、Cと同様の操作を行った。
(D−4)PCR増幅
上記重亜硫酸塩による処理で得られた検体について、上記実施例Bと同様の操作を行った。
(D−5)結果
図7は、上記(1)〜(6)の細胞検体溶解液のPCR産物の電気泳動図を示している。レーン1〜6はそれぞれ、上記(1)〜(6)の細胞検体溶解液を用いたときの検出結果(表1 レーン番号参照)である。レーン7は、精製骨髄細胞DNAを重亜硫酸塩による処理してPCR増幅を行ったポジティブコントロールであり、レーン8は、精製骨髄細胞DNAを重亜硫酸塩による未処理でPCR増幅を行ったネガティブコントロールである。Mは分子量マーカーを示す。
その結果、図7のレーン1から4に示すように、GTCの最終濃度が(1)〜(4)の細胞検体溶解液については、最終濃度が(1)4Mの場合のみ、PCR産物のバントが見られた。また、図7のレーン5、6に示すように、GTCの最終濃度が(5)、(6)の細胞検体溶解液については、バンドが確認された。以上のことから、上記細胞希釈液を直接用いてSHP1遺伝子のメチル化DNAを検出する場合は、GTCの最終濃度が少なくとも4M必要であることがわかった。一方、濾紙に吸着させ乾燥させた吸着細胞検体を用いる場合は、GTCの最終濃度が6.5M、4Mであれば、SHP1遺伝子のメチル化DNAを検出することができることがわかった。
〔実施例E〕
健常人ボランティア(以下、健常人A・Bとする)の末梢血を細胞検体として利用する場合であって、(a)新鮮血液を直接使用する場合、(b)濾紙に吸着・乾燥させた血液を使用する場合、および(c)凝固させた血液を使用する場合に、抹消血のDNAを検出できるか否かを検討した。
(E−1)細胞検体の調製
健常人ボランティアA・Bの末梢血を上腕静脈および耳朶より採取した。(b)の場合の細胞検体としては、実施例Cと同様の方法で、上記末梢血5μlを(1)クロマトグラフィー用濾紙(Whatman社 3MM)に吸着・乾燥し濾紙吸着細胞検体を用いた。また、(c)の場合の細胞検体としては、上記末梢血20μlを1ヶ月間放置し凝固させて凝固血液塊を用いた。
(E−2)細胞溶解工程
健常人A・Bの末梢血、および上記(E−1)で調製した濾紙吸着細胞検体および凝固血液塊にGTC溶解液をそれぞれ添加し、100℃で10分間加熱し細胞検体溶解液を調製した。各種細胞検体溶解液の組成を表2に示す。
なお、表中「直接」とは健常人末梢血そのまま用いた場合のことである。また、「濾紙吸着検体」、「凝固血液塊」とは、それぞれ上述の(E−1)で調製した濾紙吸着細胞検体、凝固血液塊を示す。
(E−3)重亜硫酸塩による処理
上記細胞溶解工程で得られた細胞検体溶解液について、上記実施例Cと同様の操作を行った。
(E−4)PCR増幅
重亜硫酸塩による処理で得られたDNA溶液に対し、上記重亜硫酸塩処理DNA特異的プライマーBSP2を用いて、予備実験(実施例A)と同様にPCR増幅を行った。このPCR産物を電気泳動し、PCR産物の分子量に相当するバンドの有無を検出した。
(E−5)結果
上記PCR増幅の結果、得られたPCR産物の電気泳動図を図8に示す。また、図8の電気泳動図において、細胞検体溶解液の種類とそれに対応するレーン番号を表3に示す。
なお、表中の「精製DNA(a)」とは、健常人Bの末梢血から従来のProteinase K/SDS法により精製したDNAのことである。
図8に示すように、健常人の末梢血を(1)直接使用する場合、5μl量でPCR産物のバンドが見られ(レーン2,8,12)、1μl量で薄いながらもPCR産物のバンドが見られた(レーン1,7,11)。また、健常人の末梢血を(2)濾紙に吸着した場合、PCR産物のバンドが見られた(レーン5,6,9,13)。また、このときGTCの最終濃度が6.5Mまたは4Mであっても、PCR産物のバンドが見られた(レーン5,6)。さらに、健常人末梢血を(3)凝固した場合もPCR産物のバンドが見られた(レーン10)。
以上のことから、(1)直接末梢血を使用する場合、少なくとも5μlの末梢血を使用すると、重亜硫酸塩による処理された末梢血DNAを検出可能であったが、最低1μlでも検出可能であった。また、(2)濾紙に吸着・乾燥させたものを使用した場合、および(3)凝固させたものを使用した場合、どちらも末梢血DNAを検出可能であった。
〔実施例F〕
造血器腫瘍の患者2名(以下、患者A・Bとする)および健常人2名(以下、健常人C・Dとする)から採血した末梢血を直接用いて、SHP1遺伝子のメチル化を検出した。
(F−1)細胞溶解工程
患者A・Bおよび健常人C・Dから採血した末梢血5μlに6.5M GTC溶解液40μlを添加し100℃で10分間加熱した。このとき、GTCの最終濃度は、5.8Mである。
(F−2)重亜硫酸塩による処理
上記細胞溶解工程で得られた細胞検体溶解液について、上記実施例Bと同様の操作を行った。
(F−3)PCR増幅
重亜硫酸塩による処理で得られた修飾DNA溶液に対し、上記の重亜硫酸塩処理DNA特異的プライマーSHP1BSP2、およびメチル化特異的プライマーSHP1MSPを用いて、予備実験と同様の条件でPCR増幅を行った。このPCR産物を電気泳動し、PCR産物の分子量に相当するバンドの有無を検出した。
(F−4)結果
上記PCR増幅の結果、得られたPCR産物の電気泳動図を図9に示す。また、図9の電気泳動図において、末梢血検体の種類とそれに対応するレーン番号を表4に示す。
図9に示すように、重亜硫酸塩処理DNA特異的プライマーSHP1BSP2を用いてPCR増幅を行った場合、患者A・Bおよび健常人C・Dの末梢血でPCR産物のバンドが見られた(レーン1〜4)。一方、メチル化特異的プライマーSHP1MSPを用いてPCR増幅を行った場合、患者Bの末梢血でPCR産物のバンドが見られ(レーン6)、患者Aの末梢血で薄いながらもPCR産物のバンドが見られた(レーン5)。また、健常人C・Dの末梢血では、PCR産物のバンドが見られなかった(レーン7,8)。
以上のことから、造血器腫瘍患者の血液からSHP1遺伝子のメチル化の有無を検出することが可能であることがわかった。
〔実施例G〕
上記の患者A・Bおよび健常人C・Dから採血した末梢血を直接用いて、SHP1遺伝子とは異なる癌抑制遺伝子であるp16Ink4a遺伝子のメチル化DNAを検出した。
(G−1)細胞溶解工程
患者A・Bおよび健常人C・Dから採血した末梢血5μlに6.5M GTC溶解液40μlを添加し、100℃で10分間加熱した。このとき、GTCの最終濃度は、5.8Mである。
(G−2)重亜硫酸塩による処理
上記細胞溶解工程で得られた細胞検体溶解液について、上記実施例B、Cと同様の操作を行った。
(G−3)PCR増幅
上記修飾DNA溶液のそれぞれに対し、メチル化特異的プライマーp16Ink4aMSPおよび非メチル化特異的プライマーp16Ink4aUMSPそれぞれを用いてPCR増幅を行った。
PCR増幅のプライマーの塩基配列を以下に示す。なお、PCR反応条件は、いずれも「94℃30秒、63℃1分、72℃1分 45サイクル」で行った。
・メチル化特異的プライマーp16Ink4aMSP
Ink4a-MS1: 5’-TTA TTA GAG GGTGGG GCG GAT CGC(配列番号7)
Ink4a-MAS1: 5’-GAC CCC GAA CCG CGA CCG TAA(配列番号8)
・非メチル化特異的プライマーp16Ink4aUMSP
US1: 5’-TTA TTA GAG GGT GGG GTG GAT TGT(配列番号9)
UAS1: 5’-CAA CCC CAA ACC ACA ACC ATA A(配列番号10)
(G−4)結果
上記PCR増幅の結果、得られたPCR産物の電気泳動図を図10に示す。また、図10の電気泳動図において、末梢血検体の種類とそれに対応するレーン番号を表5に示す。
図10に示すように、非メチル化特異的プライマーp16Ink4aUMSPを用いて、p16Ink4a遺伝子を鋳型としてPCR増幅を行った場合、患者A・Bおよび健常人C・Dの末梢血でPCR産物のバンドが見られた(レーン5〜8)。一方、メチル化特異的プライマーp16Ink4aMSPを用いて、p16Ink4a遺伝子を鋳型としてPCR増幅を行った場合、患者A・Bの末梢血でPCR産物のバンドが見られた(レーン1,2)が、健常人C・Dの末梢血ではPCR産物のバンドが見られなかった(レーン3,4)。
以上のことから、造血器腫瘍患者の血液ではp16Ink4a遺伝子がメチル化されており、当該メチル化検出方法により、p16Ink4a遺伝子のメチル化の有無を検出することが可能であることがわかった。
〔実施例H〕
各種造血器腫瘍培養細胞について、悪性リンパ腫・白血病で高頻度に不活化されている一連の遺伝子群(SHP1遺伝子・p16Ink4a遺伝子・p15Ink4b遺伝子・CDH1遺伝子・CDH13遺伝子)のプロモーター領域に存在するCpG含有DNAのメチル化の有無を検出した。
(H−1)造血器腫瘍培養細胞
メチル化の検討には、造血器腫瘍培養細胞:NK−YS、KCA、K562、BALL1、RPMI8226、MT1、Daudi、HDLM2を用いた。
NK−YSは、NK細胞リンパ腫由来の培養細胞である。
KCAは、慢性骨髄性白血病(CML)由来の培養細胞である。
K562は、慢性骨髄性白血病(CML)由来の培養細胞である。
BALL1は、B細胞急性リンパ性白血病(ALL)由来の培養細胞である。
RPMI8226は、多発性骨髄腫由来の培養細胞である。
MT1は、成人T細胞白血病リンパ腫由来の培養細胞である。
Daudiは、Burkittリンパ腫由来の培養細胞である。
HDLM2は、Hodgikin病由来の培養細胞である。
(H−2)方法
上記各種造血器腫瘍培養細胞からのDNA試料の調製、重亜硫酸塩による処理、PCR増幅等の方法は、〔実施例A〕に記載の方法に準じて行った。なお検出は、各種標的遺伝子についてのメチル化特異的プライマーを用いてメチル化の検出を行った。以下に、各種メチル化特異的プライマーを示す。
(1)SHP1遺伝子用メチル化特異的プライマー
配列番号11、12に記載のメチル化特異的プライマーを用いた。
PTP1C-MF2-2:TGTGAACGTTATTATAGTATAGCG(配列番号11)
PTP1C-MR2-2:CCAAATAATACTTCACGCATACG(配列番号12)
(2)p16Ink4a遺伝子用メチル化特異的プライマー
配列番号7、8に記載のメチル化特異的プライマーp16Ink4aMSPを用いた。
Ink4a-MS1: 5’-TTA TTA GAG GGTGGG GCG GAT CGC(配列番号7)
Ink4a-MAS1: 5’-GAC CCC GAA CCG CGA CCG TAA(配列番号8)
(3)p15Ink4b遺伝子用メチル化特異的プライマー
配列番号13、14に記載のメチル化特異的プライマーを用いた。
Ink4b-MF1: 5’-GCGTTCGTATTTTGCGGTT(配列番号13)
Ink4b-MR1: 5’-CGTACAATAACCGAACGACCGA(配列番号14)
(4)CDH1遺伝子用メチル化特異的プライマー
配列番号15、16に記載のメチル化特異的プライマーを用いた。
ECADMF:TTAGGTTAGAGGGTTATCGCGT(配列番号15)
ECADMR:TAACTAAAAATTCACCTACCGAC(配列番号16)
(5)CDH13遺伝子用メチル化特異的プライマー
配列番号17、18に記載のメチル化特異的プライマーを用いた。
HCADMF:TCGCGGGGTTCGTTTTTCGC(配列番号17)
HCADMR:GACGTTTTCATTCATACACGCG(配列番号18)
(H−3)結果
上記各種造血器腫瘍培養細胞について、各種遺伝子のメチル化を検出するために行ったPCR産物の電気泳動図を図12に示す。
図12(a)はSHP1遺伝子のメチル化を検討した図であり、同図(b)はp16Ink4a遺伝子のメチル化を検討した図であり、同図(c)はp15Ink4b遺伝子のメチル化を検討した図であり、同図(d)はCDH1遺伝子のメチル化を検討した図であり、同図(e)はCDH13遺伝子のメチル化を検討した図である。また、レーン1はマーカーを示し、レーン2はNK−YS、レーン3はKCA、レーン4はK562、レーン5はBALL1、レーン6はRPMI8226、レーン7はMT1、レーン8はDaudi、レーン9はHDLM2、レーン10はPBMCの結果を示す。
レーン2のNK−YSは、SHP1遺伝子・p16Ink4a遺伝子・p15Ink4b遺伝子・CDH1遺伝子・CDH13遺伝子全てにおいてメチル化が検出された。SHP1よりもp16Ink4a遺伝子のバンドが濃いことより、p16Ink4a遺伝子を使用することで腫瘍細胞検出効率が上がる可能性を示しているということが言える。
レーン3のKCAは、SHP1遺伝子・p16Ink4a遺伝子・p15Ink4b遺伝子・CDH13遺伝子においてメチル化が検出された。SHP1遺伝子よりもp16Ink4a遺伝子・p15Ink4b遺伝子・CDH13遺伝子のバンドが濃いことより、p16Ink4a遺伝子・p15Ink4b遺伝子・CDH13遺伝子を使用することで腫瘍細胞検出効率が上がる可能性を示しているということが言える。
レーン4のK562は、SHP1遺伝子・CDH1遺伝子・CDH13遺伝子においてメチル化が検出された。SHP1遺伝子のバンドが一番濃いことより、SHP1遺伝子を使用することで腫瘍細胞検出効率が上がる可能性を示しているということが言える。
レーン5のBALL1は、SHP1遺伝子・CDH1遺伝子・CDH13遺伝子においてメチル化が検出された。SHP1遺伝子よりもCDH1遺伝子・CDH13遺伝子のバンドが濃いことより、CDH1遺伝子・CDH13遺伝子を使用することで腫瘍細胞検出効率が上がる可能性を示しているということが言える。
レーン6のRPMI8226は、SHP1遺伝子・p16Ink4a遺伝子・CDH1遺伝子においてメチル化が検出された。SHP1遺伝子よりもp16Ink4a遺伝子のバンドが濃いことより、p16Ink4a遺伝子を使用することで腫瘍細胞検出効率が上がる可能性を示しているということが言える。
レーン7のMT1は、SHP1遺伝子・p16Ink4a遺伝子・CDH1遺伝子においてメチル化が検出された。SHP1遺伝子よりもp16Ink4a遺伝子のバンドが濃いことより、p16Ink4a遺伝子を使用することで腫瘍細胞検出効率が上がる可能性を示しているということが言える。
レーン8のDaudiは、SHP1遺伝子・p16Ink4a遺伝子・CDH1遺伝子・HCAD遺伝子においてメチル化が検出された。SHP1遺伝子・p16Ink4a遺伝子のバンドが濃いことより、SHP1遺伝子・p16Ink4a遺伝子を使用することで腫瘍細胞検出効率が上がる可能性を示しているということが言える。
レーン9のHDLM2は、SHP1遺伝子・p16Ink4a遺伝子・CDH1遺伝子・CDH13遺伝子においてメチル化が検出された。SHP1遺伝子・p16Ink4a遺伝子のバンドが濃いことより、SHP1遺伝子・p16Ink4a遺伝子を使用することで腫瘍細胞検出効率が上がる可能性を示しているということが言える。
レーン10のPBMC(正常末梢血単核球)は、全ての遺伝子についてメチル化が検出されなかった。
上記結果に示すように、PBMC(正常末梢血単核球)においては、いずれもメチル化特異バンドが検出されないのに対し、造血器腫瘍培養細胞においてはいずれかの遺伝子においてメチル化が検出される。これら各種造血器腫瘍遺伝子のメチル化パネルを作成することにより、造血器腫瘍細胞検出精度と感度を上げることが可能である。さらに予後との関連についてもこれらの遺伝子を解析することにより推定することが可能になると考えられる。
〔実施例I〕
各種造血器腫瘍患者検体について、悪性リンパ腫・白血病で高頻度に不活化されている一連の遺伝子群(SHP1遺伝子・p16Ink4a遺伝子・p15Ink4b遺伝子・CDH1遺伝子・CDH13遺伝子)のプロモーター領域に存在するCpG含有DNAのメチル化の有無を検出した。
(I−1)造血器腫瘍患者検体
メチル化の検討には、造血器腫瘍患者検体#1〜14を用いた。
PBMCは正常末梢血単核球を用いた。
(I−2)方法
上記各種造血器腫瘍患者検体からのDNA試料の調製、重亜硫酸塩による処理、PCR増幅等の方法は、〔実施例A〕に記載の方法に準じて行った。なお検出は、各種標的遺伝子についてのメチル化特異的プライマーを用いてメチル化の検出を行った。以下に、各種メチル化特異的プライマーを示す。
(1)SHP1遺伝子用メチル化特異的プライマー
配列番号11、12に記載のメチル化特異的プライマーを用いた。
PTP1C-MF2-2:TGTGAACGTTATTATAGTATAGCG(配列番号11)
PTP1C-MR2-2:CCAAATAATACTTCACGCATACG(配列番号12)
(2)p16Ink4a遺伝子用メチル化特異的プライマー
配列番号7、8に記載のメチル化特異的プライマーp16Ink4aMSPを用いた。
Ink4a-MS1: 5’-TTA TTA GAG GGTGGG GCG GAT CGC(配列番号7)
Ink4a-MAS1: 5’-GAC CCC GAA CCG CGA CCG TAA(配列番号8)
(3)p15Ink4b遺伝子用メチル化特異的プライマー
配列番号13、14に記載のメチル化特異的プライマーを用いた。
Ink4b-MF1: 5’-GCGTTCGTATTTTGCGGTT(配列番号13)
Ink4b-MR1: 5’-CGTACAATAACCGAACGACCGA(配列番号14)
(4)CDH1遺伝子用メチル化特異的プライマー
配列番号15、16に記載のメチル化特異的プライマーを用いた。
ECADMF:TTAGGTTAGAGGGTTATCGCGT(配列番号15)
ECADMR:TAACTAAAAATTCACCTACCGAC(配列番号16)
(5)CDH13遺伝子用メチル化特異的プライマー
配列番号17、18に記載のメチル化特異的プライマーを用いた。
HCADMF:TCGCGGGGTTCGTTTTTCGC(配列番号17)
HCADMR:GACGTTTTCATTCATACACGCG(配列番号18)
(I−3)結果
上記各種造血器腫瘍患者検体について、各種遺伝子のメチル化を検出するために行ったPCR産物の電気泳動図を図13に示す。
図13aはSHP1遺伝子のメチル化を検討した図であり、同図bはCDH1遺伝子のメチル化を検討した図であり、同図cはCDH13遺伝子のメチル化を検討した図であり、同図dは15Ink4b遺伝子のメチル化を検討した図であり、同図eはp16Ink4a遺伝子のメチル化を検討した図である。また、レーン1から14は患者検体、15は正常ヒト末梢血単核球検体(PBMC)を用いた解析の結果である。
レーン1の患者検体は、SHP1遺伝子・p16Ink4a遺伝子においてメチル化が検出された。SHP1遺伝子単独よりもp16Ink4a遺伝子を組み合わせて使用することで腫瘍細胞検出効率が上がる可能性を示しているということが言える。
レーン2,3,7においてはSHP1遺伝子においてメチル化が検出されなかったが、ほかのp16Ink4a遺伝子・p15Ink4b遺伝子・CDH1遺伝子・CDH13遺伝子においてメチル化が検出された。このことよりSHP1遺伝子のメチル化で検出されなかった腫瘍細胞もこれらの遺伝子と組み合わせることにより高精度・高感度に腫瘍細胞が検出できることを示している。
レーン4,5,6,8,9,10,11,12,13,14の検体においては明瞭なSHP1遺伝子のメチル化が検出されており、他の遺伝子の解析とあわせることで腫瘍細胞の再確認ができることを示している。
レーン15のPBMC(正常末梢血単核球)は、全ての遺伝子についてメチル化が検出されなかった。
上記結果に示すように、PBMC(正常末梢血単核球)においては、いずれもメチル化特異バンドが検出されないのに対し、造血器腫瘍培養細胞においてはいずれかの遺伝子においてメチル化が検出される。これら各種造血器腫瘍遺伝子のメチル化パネルを作成することにより、造血器腫瘍細胞検出精度と感度を上げることが可能である。さらに予後との関連についてもこれらの遺伝子を解析することにより推定することが可能になると考えられる。
以上のように、本発明に係るメチル化DNA検出方法によれば、タンパク質精製などのDNA抽出工程を経ることなく、極微量の細胞検体を直接用いて、簡便かつ高精度でDNAのメチル化を検出することができるという効果を奏する。
また、本発明に係るメチル化DNA検出キットによれば、簡便かつ容易に上記メチル化DNA検出方法を実施することができるという効果を奏する。
さらに、上記のメチル化DNA検出方法またはメチル化DNA検出キットを利用して、DNAのメチル化による遺伝子の発現異常が原因となって引き起こされる種々の疾患または疾患可能性を、効率的かつ高確率で判定(診断)することができるという効果を奏する。
したがって本発明は、医療産業において利用が可能である。また本発明にかかるメチル化検出キットをスクリーニング手段とすれば癌抑制剤等の医薬品の開発を行なうことができ製薬業において利用が可能である。また癌等の疾患の基礎的研究にも寄与するものである。このため、本発明は、非常に社会的インパクトの強い重要な発明であるといえる。
重亜硫酸塩処理によってDNAが変換する反応を模式的に示す反応図である。
メチル化されたシトシンは重亜硫酸塩処理によって変化しないが、メチル化されていないシトシンは重亜硫酸塩処理によってウラシルに変換される様子を模式的に示す図である。
(a)は非メチル化特異的プライマーの塩基配列について説明する図であり、(b)はメチル化DNA特異的プライマーの塩基配列について説明する図である。
(a)〜(c)はそれぞれ、メチル化特異的プライマーSHP1MSP、非メチル化特異的プライマーSHP1UMSP、および重亜硫酸塩処理DNA特異的プライマーBSP2を用いたPCRにより得られたPCR産物の電気泳動図を示す図であり、(d)は、メチル化特異的プライマーSHP1MSPを用いたPCR産物のDNA塩基配列を決定した結果を示す図である。
本実施例BにおけるPCR産物の電気泳動の結果を示す図である。
本実施例CにおけるPCR産物の電気泳動の結果を示す図である。
本実施例DにおけるPCR産物の電気泳動の結果を示す図である。
本実施例EにおけるPCR産物の電気泳動の結果を示す図である。
本実施例FにおけるPCR産物の電気泳動の結果を示す図である。
本実施例GにおけるPCR産物の電気泳動の結果を示す図である。
本実施の形態におけるメチル化DNA検出システムおよび疾患判定システムについて模式的に説明するブロック図である。
本実施例HにおけるPCR産物の電気泳動の結果を示す図である。
本実施例IにおけるPCR産物の電気泳動の結果を示す図である。