図1は本発明による制御定数決定方法の一つの実施例が適用された電動式パワーステアリング装置及び制御定数決定装置を示す概略構成図である。
図1に於いて、10は運転者によるステアリングホイール11の転舵に応答して駆動されるラック・アンド・ピニオン式の電動式パワーステアリング装置を示している。図示の実施例に於いては、電動式パワーステアリング装置10はラック同軸型の電動式パワーステアリング装置であり、電動機12と、電動機12の回転トルクをラックバー14の往復動方向の力に変換する例えばボールねじ式の変換機構16とを有し、ハウジング18に対し相対的にラックバー14を駆動する転舵アシスト力を発生することにより、運転者の操舵負担を軽減する。
電動式パワーステアリング装置10の電動機12は電子制御装置20により制御される。電子制御装置20には、ステアリングシャフト22に設けられたトルクセンサ24より操舵トルクTsを示す信号が入力され、また制御定数決定装置26より後述の如く制御定数Aを示す信号が入力される。電子制御装置20は図2に示されたフローチャートを記憶しており、後に詳細に説明する如く操舵トルクTs及び制御定数Aに基づいて目標操舵アシストトルクTatを演算し、操舵アシストトルクが目標操舵アシストトルクTatになるよう電動機12を制御すると共に、目標操舵アシストトルクTatをラックバー14に於ける目標アシスト力Fatに変換する。
制御定数決定装置26はラックバー14の一端に着脱自在に連結されラックバー14を加振する加振機28と、加振機28による加振によりラックバー14に与えられる軸力Foを検出する力センサ30と、周波数・位相分析装置32と、電子制御装置34とを含んでいる。図示の如く、周波数・位相分析装置32には電子制御装置20より目標アシスト力Fatを示す信号が入力されると共に、力センサ30より軸力Foを示す信号が入力され、周波数・位相分析装置32は目標アシスト力Fat及び軸力Foの周波数及び位相を分析し、それらの分析結果を示す信号を電子制御装置34へ出力する。
電子制御装置34は図4に示された制御定数決定制御のフローチャートを記憶しており、後に詳細に説明する如く目標アシスト力Fat及び軸力Foの位相が逆相であるか否かを判定し、目標アシスト力Fat及び軸力Foの位相が逆相ではないときには制御定数Aを所定の手順に従って順次変更し、目標アシスト力Fat及び軸力Foの位相が逆相であるときにはその制御定数Aを制御用制御定数として確定し電子制御装置20へ出力する。電子制御装置20は電子制御装置34より制御用制御定数を受信すると、その制御定数を所定の記憶エリアに記憶する。
尚図には詳細に示されていないが、電子制御装置20及び34は例えばCPUとROMとRAMと入出力ポート装置とを有し、これらが双方向性のコモンバスにより互いに接続された一般的な構成のマイクロコンピュータを含んでいる。
特に電子制御装置20は、sをラプラス演算子とし、Tを時定数として上記式1に従って位相補償後の操舵トルクTspを演算し、位相補償後の操舵トルクTspに基づいて図3に示されたグラフに対応するマップより目標操舵アシストトルクTatを演算する。
また目標アシスト力Fatがラックバー14に与えられるので、図12に示されている如く、目標アシスト力Fat及び軸力Foの位相差をθ〔rad〕とすると、ラックバー14よりステアリングシャフト22の側へ伝達される力Fは下記の式2により表され、目標操舵アシストトルクTatの制御による振動力低減量ΔFは下記の式3により表される。
振動力低減量ΔFの大きさが大きいほど目標操舵アシストトルクTatの制御による振動力低減効果が高く、位相差θがπに近いほど目標操舵アシストトルクTatの制御による振動力低減効果が高い。よって電子制御装置34は、Kcを0.5以上1以下の正の一定の係数、例えば0.8として、下記の式4の不等式が成立するときに目標アシスト力Fat及び軸力Foの位相が逆相であると判定する。
|ΔF|≧Kc|Fat| ……(4)
また車輌の走行中にフラッタや制動時の車輪振動に起因して操舵輪側より電動式パワーステアリング装置10のラックバー14に入力される振動の周波数の範囲をf1〜f2とすると、加振機28はf1〜f2の周波数範囲にてラックバー14を加振する。
上述の如く構成された制御定数決定装置26による制御定数Aの決定は、出荷前の車輌について車輌毎又は車種毎に実行される。また制御定数決定装置26による制御定数Aの決定に際しては、電動式パワーステアリング装置10のラックバー14の一端にタイロッド連結用のボールジョイントにより加振機28の出力軸28Aが連結され、電子制御装置20及び34が相互に通信可能に接続され、しかる後電子制御装置20及び34の図には示されていないスイッチが投入される。
次に図2に示されたフローチャートを参照して実施例に於ける制御定数決定用操舵アシストトルク制御について説明する。尚図2に示されたフローチャートによる制御は図には示されていないスイッチの閉成により開始され、該スイッチが開成されるまで所定の時間毎に繰返し実行される。
まずステップ10に於いては電子制御装置34より入力される制御定数Aを示す信号の読み込みが行われ、ステップ20に於いてはトルクセンサ24により検出された操舵トルクTsを示す信号の読み込みが行われ、ステップ30に於いては上記式1に従って位相補償後の操舵トルクTspが演算される。
ステップ40に於いては車速Vを0として位相補償後の操舵トルクTspに基づき図3に示されたグラフに対応するマップより目標アシストトルクTatが演算され、ステップ50に於いては目標アシストトルクTatに基づきラックバー14に於ける目標アシスト力Fatが演算されると共に、目標アシスト力Fatを示す信号が制御定数決定装置26へ出力される。
ステップ60に於いては目標アシストトルクTatに基づいて電動機12に対する目標制御電流が演算され、電動機12に対する制御電流が目標制御電流になるよう制御され、これにより操舵アシストトルクが目標操舵アシストトルクTatになるよう電動機12が制御される。
次に図4に示されたフローチャートを参照して実施例に於ける制御定数決定制御ルーチンについて説明する。尚図4に示されたフローチャートによる制御も図には示されていないスイッチの閉成により開始され、該スイッチが開成されるまで所定の時間毎に繰返し実行される。
まずステップ110に於いては制御定数Aが予め設定された初期値Aoに設定されると共に、該制御定数Aを示す信号が電子制御装置20へ出力され、ステップ120に於いては加振機28に対し加振開始の指令信号が出力され、これにより加振機28によるラックバー14の加振が開始される。
ステップ130に於いては力センサ30より制御定数決定装置26へラックバー14の軸力Foを示す信号が入力され、ステップ140に於いては周波数・位相分析装置32に対し軸力Foの位相分析を行う指令信号が出力されると共に、軸力Foの周波数及び位相を示す信号が電子制御装置34へ入力される。
ステップ150に於いては電子制御装置20より周波数・位相分析装置32へ目標アシスト力Fatを示す信号が入力され、ステップ160に於いては周波数・位相分析装置32に対し目標アシスト力Fatの位相分析を行う指令信号が出力されると共に、目標アシスト力Fatの周波数及び位相を示す信号が電子制御装置34へ入力される。
ステップ170に於いては上記式3に従って振動力低減量ΔFが演算され、上記式4の不等式が成立するか否かの判別により、軸力Fo及び目標アシスト力Fatの位相が互いに逆相であるか否かの判別が行われ、否定判別が行われたときにはステップ180に於いて制御定数Aが所定の手順に従って変更されると共に、変更後の制御定数Aを示す信号が電子制御装置20へ出力された後ステップ130へ戻り、肯定判別が行われたときにはステップ190へ進む。
ステップ190に於いては制御定数Aが現在の値に確定されると共に、その制御定数Aを示す信号が確定された値として電子制御装置20へ出力され、ステップ200に於いては加振機28が停止される。尚電子制御装置20は確定された制御定数Aを受信すると、その値をROMの如き記憶手段に記憶する。
かくして図示の実施例によれば、ステップ20及び30に於いて操舵トルクTs及び制御定数Aに基づき位相補償後の操舵トルクTspが演算され、ステップ40及び50に於いては位相補償後の操舵トルクTspに基づき目標アシストトルクTatが演算され、目標アシストトルクTatに基づきラックバー14に於ける目標アシスト力Fatが演算される。
そして加振機28によりラックバー14が加振される状態でステップ130及び140に於いてラックバー14の加振による軸力Foの周波数及び位相を示す信号が周波数・位相分析装置32より電子制御装置34へ入力され、またステップ150及び160に於いて電子制御装置20より入力される目標アシスト力Fatの周波数及び位相を示す信号が電子制御装置34へ入力される。
更にステップ170に於いて上記式3に従って振動力低減量ΔFが演算され、上記式4の不等式が成立するか否かの判別により、軸力Fo及び目標アシスト力Fatの位相が互いに逆相であるか否かの判別が行われ、軸力Fo及び目標アシスト力Fatの位相が互いに逆相であると判別されるまでステップ180に於いて制御定数Aが所定の手順に従って変更され、軸力Fo及び目標アシスト力Fatの位相が互いに逆相であると判別されると、ステップ190に於いてそのときの制御定数Aを示す信号が電子制御装置20へ出力され、その値が電子制御装置20のROMの如き記憶手段に確定された制御定数Aとして記憶される。
従って図示の制御定数決定装置26及び制御定数決定装置26による制御定数決定方法によれば、操舵輪の側より電動式パワーステアリング装置10へ入力される振動力の位相と操舵アシスト力の位相とを逆相にする所定の制御定数Aを容易に且つ正確に且つ確実に求めることができる。
また図示の実施例によれば、所定の制御定数Aは操舵トルクTsに対する操舵アシスト力の位相及びゲインを決定する制御定数であるので、操舵輪の側より電動式パワーステアリング装置10へ入力される振動力の位相と操舵アシスト力の位相とを逆相にすると共に振動力に効果的に対抗する操舵アシスト力を発生させる所定の制御定数Aを容易に且つ正確に且つ確実に求めることができる。
図5は本発明による電動式パワーステアリング装置が搭載された車輌を示す概略構成図である。尚図5に於いて、図1に示された部材と同一の部材には図1に於いて付された符号と同一の符号が付されている。
図5に示されている如く、電動式パワーステアリング装置10のラックバー14の両端にはボールジョイント40FL及び40FRによりタイロッド42L及び42Rの内端が連結され、タイロッド42L及び42Rの外端は図には示されていないボールジョイントにより左右の前輪44FL及び44FRのナックルアームに連結されている。従って操舵輪である左右の前輪44FL及び44FRは運転者によるステアリングホイール11の操作に応答して駆動されるラック・アンド・ピニオン型の電動式パワーステアリング装置10によりラックバー14及びタイロッド42L及び42Rを介して転舵される。
制御定数決定の場合と同様、電動式パワーステアリング装置10の電動機12は電子制御装置20により制御される。電子制御装置20にはトルクセンサ24より操舵トルクTsを示す信号、車速センサ46より車速Vを示す信号、操舵角センサ48より操舵角θを示す信号が入力される。
電子制御装置20は図6に示されたフローチャート及び上述の如く決定された制御定数Aを記憶しており、操舵トルクTs及び制御定数Aに基づいて上記式1に従って位相補償後の操舵トルクTspを演算し、位相補償後の操舵トルクTsp、車速V、操舵角θに基づいて目標アシストトルクTatを演算し、操舵アシストトルクが目標アシストトルクTatになるよう電動機12を制御し、これにより運転者の操舵負担を軽減すると共に、左右の前輪44FL及び44FRの側より電動式パワーステアリング装置10を介してステアリングホイール11へ伝達される振動を低減する。
次に図6に示されたフローチャートを参照して実施例に於ける操舵アシストトルク制御について説明する。尚図6に示されたフローチャートによる制御は図には示されていないイグニッションスイッチの閉成により開始され、イグニッションスイッチが開成されるまで所定の時間毎に繰返し実行される。
まずステップ310に於いては操舵トルクTsを示す信号等の読み込みが行われ、ステップ320に於いては上記ステップ30の場合と同様の要領にて操舵トルクTs及び制御定数Aに基づき上記式1に従って位相補償後の操舵トルクTspが演算され、ステップ330に於いては位相補償後の操舵トルクTspに基づき図7に示されたグラフに対応するマップより目標基本アシストトルクTabtが演算される。
ステップ340に於いては操舵トルクTsの微分値Tsdが演算され、操舵トルクの微分値Tsdに基づき図8に示されたグラフに対応するマップより操舵トルク微分値補償基本トルクTadが演算され、車速Vに基づき図9に示されたグラフに対応するマップより車速係数Kadが演算され、操舵トルク微分値補償基本トルクTadと車速係数Kadとの積として操舵トルク微分値補償トルクTadtが演算される。
ステップ350に於いては操舵角θの微分値として操舵速度θdが演算され、操舵速度θdに基づき図10に示されたグラフに対応するマップより操舵速度補償基本トルクTasが演算され、車速Vに基づき図11に示されたグラフに対応するマップより車速係数Kasが演算され、操舵速度補償基本トルクTasと車速係数Kasとの積として操舵速度補償トルクTastが演算される。
ステップ360に於いては目標基本アシストトルクTabtと操舵トルク微分値補償トルクTadtと操舵速度補償トルクTastとの和として目標アシストトルクTatが演算され、ステップ370に於いては目標アシストトルクTatに基づいて電動機12に対する目標制御電流が演算され、電動機12に対する制御電流が目標制御電流になるよう制御され、これにより操舵アシストトルクが目標操舵アシストトルクTatになるよう電動機12が制御される。
かくして図示の実施例によれば、ステップ320に於いて操舵トルクTs及び制御定数Aに基づき上記式1に従って位相補償後の操舵トルクTspが演算され、ステップ330に於いて位相補償後の操舵トルクTspに基づき目標基本アシストトルクTabtが演算され、ステップ340に於いて操舵トルクの微分値Tsd及び車速Vに基づき操舵トルク微分値補償トルクTadtが演算され、ステップ350に於いて操舵速度θd及び車速Vに基づき操舵速度補償トルクTastが演算される。
そしてステップ360に於いて目標基本アシストトルクTabtと操舵トルク微分値補償トルクTadtと操舵速度補償トルクTastとの和として目標アシストトルクTatが演算され、ステップ370に於いて操舵アシストトルクが目標操舵アシストトルクTatになるよう電動機12が制御される。
従って図示の実施例によれば、上述の制御定数決定装置26及び制御定数決定装置26による制御定数決定方法により決定された制御定数A及び操舵トルクTsに基づいて位相補償後の操舵トルクTspが演算され、位相補償後の操舵トルクTspに基づき目標基本アシストトルクTabtが演算されるので、フラッタや制動時の車輪振動に起因する高周波振動が操舵輪側より電動式パワーステアリング装置10へ入力されても、その振動力を目標基本アシストトルクTabtにより効果的に打ち消し、これにより振動が電動式パワーステアリング装置10を経てステアリングホイール11へ伝達されることを効果的に低減することができる。
また図示の実施例によれば、ステアリングシャフト22の如き電動式パワーステアリング装置10の構成部材の振動を検出する必要がなく、振動を検出するセンサは不要であるので、前述の従来の電動式パワーステアリング装置に比して電動式パワーステアリング装置の構造を簡単にしコストを低減することができる。
次に図2に示されたフローチャートを参照して実施例に於ける制御定数決定用操舵アシストトルク制御について説明する。尚図2に示されたフローチャートによる制御は図には示されていないスイッチの閉成により開始され、該スイッチが開成されるまで所定の時間毎に繰返し実行される。
まずステップ10に於いては電子制御装置34より入力される制御定数Aを示す信号の読み込みが行われ、ステップ20に於いてはトルクセンサ24により検出された操舵トルクTsを示す信号の読み込みが行われ、ステップ30に於いては上記式1に従って位相補償後の操舵トルクTspが演算される。
ステップ40に於いては車速Vを0として位相補償後の操舵トルクTspに基づき図3に示されたグラフに対応するマップより目標アシストトルクTatが演算され、ステップ50に於いては目標アシストトルクTatに基づきラックバー14に於ける目標アシスト力Fatが演算されると共に、目標アシスト力Fatを示す信号が制御定数決定装置26へ出力される。
ステップ60に於いては目標アシストトルクTatに基づいて電動機12に対する目標制御電流が演算され、電動機12に対する制御電流が目標制御電流になるよう制御され、これにより操舵アシストトルクが目標操舵アシストトルクTatになるよう電動機12が制御される。
次に図4に示されたフローチャートを参照して実施例に於ける制御定数決定制御ルーチンについて説明する。尚図4に示されたフローチャートによる制御も図には示されていないスイッチの閉成により開始され、該スイッチが開成されるまで所定の時間毎に繰返し実行される。
まずステップ110に於いては制御定数Aが予め設定された初期値Aoに設定されると共に、該制御定数Aを示す信号が電子制御装置20へ出力され、ステップ120に於いては加振機28に対し加振開始の指令信号が出力され、これにより加振機28によるラックバー14の加振が開始される。
ステップ130に於いては力センサ30より制御定数決定装置26へラックバー14の軸力Foを示す信号が入力され、ステップ140に於いては周波数・位相分析装置32に対し軸力Foの位相分析を行う指令信号が出力されると共に、軸力Foの周波数及び位相を示す信号が電子制御装置34へ入力される。
ステップ150に於いては電子制御装置20より周波数・位相分析装置32へ目標アシスト力Fatを示す信号が入力され、ステップ160に於いては周波数・位相分析装置32に対し目標アシスト力Fatの位相分析を行う指令信号が出力されると共に、目標アシスト力Fatの周波数及び位相を示す信号が電子制御装置34へ入力される。
ステップ170に於いては上記式3に従って振動力低減量ΔFが演算され、上記式4の不等式が成立するか否かの判別により、軸力Fo及び目標アシスト力Fatの位相が互いに逆相であるか否かの判別が行われ、否定判別が行われたときにはステップ180に於いて制御定数Aが所定の手順に従って変更されると共に、変更後の制御定数Aを示す信号が電子制御装置20へ出力された後ステップ130へ戻り、肯定判別が行われたときにはステップ190へ進む。
ステップ190に於いては制御定数Aが現在の値に確定されると共に、その制御定数Aを示す信号が確定された値として電子制御装置20へ出力され、ステップ200に於いては加振機28が停止される。尚電子制御装置20は確定された制御定数Aを受信すると、その値をROMの如き記憶手段に記憶する。
かくして図示の実施例によれば、ステップ20及び30に於いて操舵トルクTs及び制御定数Aに基づき位相補償後の操舵トルクTspが演算され、ステップ40及び50に於いては位相補償後の操舵トルクTspに基づき目標アシストトルクTatが演算され、目標アシストトルクTatに基づきラックバー14に於ける目標アシスト力Fatが演算される。
そして加振機28によりラックバー14が加振される状態でステップ130及び140に於いてラックバー14の加振による軸力Foの周波数及び位相を示す信号が周波数・位相分析装置32より電子制御装置34へ入力され、またステップ150及び160に於いて電子制御装置20より入力される目標アシスト力Fatの周波数及び位相を示す信号が電子制御装置34へ入力される。
更にステップ170に於いて上記式3に従って振動力低減量ΔFが演算され、上記式4の不等式が成立するか否かの判別により、軸力Fo及び目標アシスト力Fatの位相が互いに逆相であるか否かの判別が行われ、軸力Fo及び目標アシスト力Fatの位相が互いに逆相であると判別されるまでステップ180に於いて制御定数Aが所定の手順に従って変更され、軸力Fo及び目標アシスト力Fatの位相が互いに逆相であると判別されると、ステップ190に於いてそのときの制御定数Aを示す信号が電子制御装置20へ出力され、その値が電子制御装置20のROMの如き記憶手段に確定された制御定数Aとして記憶される。
従って図示の制御定数決定装置26及び制御定数決定装置26による制御定数決定方法によれば、操舵輪の側より電動式パワーステアリング装置10へ入力される振動力の位相と操舵アシスト力の位相とを逆相にする所定の制御定数Aを容易に且つ正確に且つ確実に求めることができる。
また図示の実施例によれば、所定の制御定数Aは操舵トルクTsに対する操舵アシスト力の位相及びゲインを決定する制御定数であるので、操舵輪の側より電動式パワーステアリング装置10へ入力される振動力の位相と操舵アシスト力の位相とを逆相にすると共に振動力に効果的に対抗する操舵アシスト力を発生させる所定の制御定数Aを容易に且つ正確に且つ確実に求めることができる。
図5は本発明による電動式パワーステアリング装置が搭載された車輌を示す概略構成図である。尚図5に於いて、図1に示された部材と同一の部材には図1に於いて付された符号と同一の符号が付されている。
図5に示されている如く、電動式パワーステアリング装置10のラックバー14の両端にはボールジョイント40FL及び40FRによりタイロッド42L及び42Rの内端が連結され、タイロッド42L及び42Rの外端は図には示されていないボールジョイントにより左右の前輪44FL及び44FRのナックルアームに連結されている。従って操舵輪である左右の前輪44FL及び44FRは運転者によるステアリングホイール11の操作に応答して駆動されるラック・アンド・ピニオン型の電動式パワーステアリング装置10によりラックバー14及びタイロッド42L及び42Rを介して転舵される。
制御定数決定の場合と同様、電動式パワーステアリング装置10の電動機12は電子制御装置20により制御される。電子制御装置20にはトルクセンサ24より操舵トルクTsを示す信号、車速センサ46より車速Vを示す信号、操舵角センサ48より操舵角θを示す信号が入力される。
電子制御装置20は図6に示されたフローチャート及び上述の如く決定された制御定数Aを記憶しており、操舵トルクTs及び制御定数Aに基づいて上記式1に従って位相補償後の操舵トルクTspを演算し、位相補償後の操舵トルクTsp、車速V、操舵角θに基づいて目標アシストトルクTatを演算し、操舵アシストトルクが目標アシストトルクTatになるよう電動機12を制御し、これにより運転者の操舵負担を軽減すると共に、左右の前輪44FL及び44FRの側より電動式パワーステアリング装置10を介してステアリングホイール11へ伝達される振動を低減する。
次に図6に示されたフローチャートを参照して実施例に於ける操舵アシストトルク制御について説明する。尚図6に示されたフローチャートによる制御は図には示されていないイグニッションスイッチの閉成により開始され、イグニッションスイッチが開成されるまで所定の時間毎に繰返し実行される。
まずステップ310に於いては操舵トルクTsを示す信号等の読み込みが行われ、ステップ320に於いては上記ステップ30の場合と同様の要領にて操舵トルクTs及び制御定数Aに基づき上記式1に従って位相補償後の操舵トルクTspが演算され、ステップ330に於いては位相補償後の操舵トルクTspに基づき図7に示されたグラフに対応するマップより目標基本アシストトルクTabtが演算される。
ステップ340に於いては操舵トルクTsの微分値Tsdが演算され、操舵トルクの微分値Tsdに基づき図8に示されたグラフに対応するマップより操舵トルク微分値補償基本トルクTadが演算され、車速Vに基づき図9に示されたグラフに対応するマップより車速係数Kadが演算され、操舵トルク微分値補償基本トルクTadと車速係数Kadとの積として操舵トルク微分値補償トルクTadtが演算される。
ステップ350に於いては操舵角θの微分値として操舵速度θdが演算され、操舵速度θdに基づき図10に示されたグラフに対応するマップより操舵速度補償基本トルクTasが演算され、車速Vに基づき図11に示されたグラフに対応するマップより車速係数Kasが演算され、操舵速度補償基本トルクTasと車速係数Kasとの積として操舵速度補償トルクTastが演算される。
ステップ360に於いては目標基本アシストトルクTabtと操舵トルク微分値補償トルクTadtと操舵速度補償トルクTastとの和として目標アシストトルクTatが演算され、ステップ370に於いては目標アシストトルクTatに基づいて電動機12に対する目標制御電流が演算され、電動機12に対する制御電流が目標制御電流になるよう制御され、これにより操舵アシストトルクが目標操舵アシストトルクTatになるよう電動機12が制御される。
かくして図示の実施例によれば、ステップ320に於いて操舵トルクTs及び制御定数Aに基づき上記式1に従って位相補償後の操舵トルクTspが演算され、ステップ330に於いて位相補償後の操舵トルクTspに基づき目標基本アシストトルクTabtが演算され、ステップ340に於いて操舵トルクの微分値Tsd及び車速Vに基づき操舵トルク微分値補償トルクTadtが演算され、ステップ350に於いて操舵速度θd及び車速Vに基づき操舵速度補償トルクTastが演算される。
そしてステップ360に於いて目標基本アシストトルクTabtと操舵トルク微分値補償トルクTadtと操舵速度補償トルクTastとの和として目標アシストトルクTatが演算され、ステップ370に於いて操舵アシストトルクが目標操舵アシストトルクTatになるよう電動機12が制御される。
従って図示の実施例によれば、上述の制御定数決定装置26及び制御定数決定装置26による制御定数決定方法により決定された制御定数A及び操舵トルクTsに基づいて位相補償後の操舵トルクTspが演算され、位相補償後の操舵トルクTspに基づき目標基本アシストトルクTabtが演算されるので、フラッタや制動時の車輪振動に起因する高周波振動が操舵輪側より電動式パワーステアリング装置10へ入力されても、その振動力を目標基本アシストトルクTabtにより効果的に打ち消し、これにより振動が電動式パワーステアリング装置10を経てステアリングホイール11へ伝達されることを効果的に低減することができる。
また図示の実施例によれば、ステアリングシャフト22の如き電動式パワーステアリング装置10の構成部材の振動を検出する必要がなく、振動を検出するセンサは不要であるので、前述の従来の電動式パワーステアリング装置に比して電動式パワーステアリング装置の構造を簡単にしコストを低減することができる。
以上に於いては本発明を特定の実施例について詳細に説明したが、本発明は上述の実施例に限定されるものではなく、本発明の範囲内にて他の種々の実施例が可能であることは当業者にとって明らかであろう。
例えば上述の実施例に於いては、ステップ170に於いて上記式3に従って振動力低減量ΔFが演算され、上記式4の不等式が成立するか否かの判別により、軸力Fo及び目標アシスト力Fatの位相が互いに逆相であるか否かの判別が行われるようになっているが、軸力Fo及び目標アシスト力Fatの位相が互いに逆相であるか否かの判別は、αを例えばπ/2以下の正の定数として、目標アシスト力Fat及び軸力Foの位相差θがπ−α以上でπ+α以下であるか否かの判別により行われるよう修正されてもよい。
また上述の実施例に於いては、ステップ50に於いて目標アシストトルクTatに基づきラックバー14に於ける目標アシスト力Fatが演算され、ステップ170に於いて軸力Fo及び目標アシスト力Fatの位相が互いに逆相であるか否かの判別が行われるようになっているが、電動機12に対し供給される制御電流に基づき目標アシストトルクTatに基づく実際のアシスト力が推定され、ステップ170に於いて軸力Fo及び実際のアシスト力の位相が互いに逆相であるか否かの判別が行われるよう修正されてもよい。
また上述の実施例に於いては、ステップ320に於いて操舵トルクTs及び制御定数Aに基づく位相補償後の操舵トルクTspに基づき目標基本アシストトルクTabtが演算され、ステップ340に於いて操舵トルクの微分値Tsd及び車速Vに基づき操舵トルク微分値補償トルクTadtが演算され、ステップ350に於いて操舵速度θd及び車速Vに基づき操舵速度補償トルクTastが演算され、ステップ360に於いて目標基本アシストトルクTabtと操舵トルク微分値補償トルクTadtと操舵速度補償トルクTastとの和として目標アシストトルクTatが演算されるようになっているが、本発明の決定方法及び決定装置に従って決定された制御定数A及び操舵トルクTsに基づく位相補償後の操舵トルクTspに基づき目標基本アシストトルクTabtが演算される限り、目標基本アシストトルクTabtに加算される制御量は当技術分野に於いて公知の任意の制御量であってよい。
また上述の実施例に於いては、電動式パワーステアリング装置10はラック同軸型の電動式パワーステアリング装置であるが、本発明が適用される電動式パワーステアリング装置10はステアリングシャフト又はピニオンシャフトにアシストトルクが付与される形式の電動式パワーステアリング装置であってもよい。