JP4201923B2 - 複層電着塗膜およびこの塗膜を含む多層塗膜の形成方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、塗料産業、なかでも自動車塗装分野において有用な、電着塗膜上に直接上塗り塗料を塗装する中塗りレス(2コート塗装システム)に関するものであり、さらに詳細には、顔料配向により3コート膜に匹敵する優れた外観、耐溶剤性、耐候性および耐食性を有し、かつ、工程短縮、コスト削減および環境負荷低減を目指す新規塗装システムを構築する上で重要な役割を果たす複層電着塗膜の形成方法、およびこの電着塗膜を含む多層塗膜の形成方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、塗料分野とくに自動車塗装分野において、省資源、省コストおよび環境負荷(VOCおよびHAPs等)削減の課題を解決するため、塗装工程の短縮化が強く求められている。すなわち、従来の自動車の塗装仕上げ手順である電着プライマー塗装、中塗り塗装および上塗り塗装の3コート塗装に対して、電着プライマー塗装後に上塗り塗装を直接行う中塗りレス(2コートシステム)により塗装工程数を削減し、しかも3コート膜と同等の外観、上塗りとの密着性、耐候性および耐食性を保持することのできる塗膜形成方法が求められている。
【0003】
上記中塗りレスによる複層電着塗膜に関する技術としては、例えば特公平2−33069号公報に二層塗膜形成型厚膜電着塗料組成物が開示されている。この発明は、組成中に軟化点80℃以上のカチオン性アクリル樹脂と、軟化点75℃以下のカチオン性フェノール型エポキシ樹脂とを含み、それらの重量比を1〜30対1とするものである。この組成物から形成された塗膜は、耐食性良好なエポキシ系下層と、耐候性良好なアクリル系上層の二層構造を有するとしている。
【0004】
また、特公平6−99652号公報では、特定範囲の表面張力を有するエポキシ系カチオン電着性樹脂および非イオン性被膜形成樹脂から、複層電着塗膜を形成できることが開示されている。
【0005】
特開平8−333528号公報および特開平10−292131号公報には、アミン変性エポキシ系カチオン樹脂と、この樹脂の溶解性パラメーターより低い値を有する(自己架橋性)アクリル系カチオン樹脂およびブロックポリイソシアネート硬化剤から、複層電着塗膜を形成できることが開示されている。
【0006】
また、特開平2−229869号公報には、カチオン性エポキシ樹脂と相溶性があり、かつ親水部分、疎水部分が構造上分離された形態の櫛形アクリルポリマーを、顔料分散剤として使用して複層電着塗膜を形成することが記載されている。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
上記特公平2−33069号、特公平6−99652号、特開平8−333528号、および特開平10−292131号の各公報に記載の発明は、単に電着塗膜中の樹脂分離手段を示したものであり、この開示から3コート膜に匹敵する優れた塗膜外観、および上塗り層との優れた密着性を有する複層電着塗膜を形成することは困難であった。なお、特開平8−333528号公報および特開平10−292131号公報の発明には、4級化エポキシ樹脂を分散樹脂とする顔料ペーストの製造例が記載されているものの、顔料分散を制御して塗膜外観や密着性を向上させるという思想は見られない。
【0008】
また、上記特公平2−33069号公報の発明では、軟化点75℃以下のカチオン性フェノール型エポキシ樹脂を使用するため、形成される硬化塗膜の耐溶剤性、防食性等の物性を低下させる心配があった。一方、上記特公平6−99652号公報の発明では、使用する非イオン性皮膜形成樹脂は、カチオン性等のイオン性皮膜形成樹脂と比較して上塗り層との密着性に優れているとはいえず、この点に関しては別の視点による新たな解決方法を探す必要があった。
【0009】
また、上記特開平2−229869号公報の発明では、上記櫛形アクリルポリマーを顔料分散剤として使用した場合、エポキシ樹脂と良好に相溶することから、樹脂同士が分離することがなく、したがって顔料も膜の深さ方向に均一に分散してしまう欠点があった。この櫛形アクリルポリマーを使用した顔料ペーストを上記特開平8−333528あるいは特開平10−292131で開示された、互いに不相溶に設計されたカチオン変性エポキシ樹脂とカチオン性アクリル樹脂との混合系に適用した場合には、櫛形アクリルポリマーが両方の樹脂に溶解するため、顔料分散を制御することは困難であった。
【0010】
以上述べたように、従来の技術では3コートなみの各性能を維持しながら中塗りレスとすることは困難であった。とくに塗膜外観に関しては、加熱時において電着塗膜のフロー性を制御し、表面平滑性を飛躍的に向上させる必要があるが、従来技術では顔料濃度を10〜20重量%程低減して対応するなどしており、市場の要求に十分に対応できているとは言えなかった。
【0011】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するため、本発明の複層電着塗膜の形成方法は、互いに不相溶な少なくとも2種類の樹脂成分、硬化剤および顔料を含む水性塗料組成物を導電性基材上に電着塗装し、次いで加熱しながら層分離せしめ、その後硬化させて少なくとも2層から成る複層硬化膜を形成する過程で、空気に直接接する樹脂層中の顔料濃度(a)が上記導電性基材に直接接する樹脂層中の顔料濃度(b)と比較して相対的に低くなるように顔料の分配制御を行う。この方法は、導電性基材をカソード極端子に接続して行う、カチオン電着塗装に好適である。
【0012】
本発明の方法においては、上記空気に直接接する樹脂層を構成する樹脂成分の溶解性パラメーター(δa)と、導電性基材に直接接する樹脂層を構成する樹脂成分の溶解性パラメーター(δb)とが、(δb−δa)≧1.0の関係にある互いに不相溶な樹脂成分を選択する。すなわち、上記「不相溶」には、全く相溶性のないものから(δb−δa)=1.0までの難相溶のものまでが含まれている。上記溶解性パラメーターを有する2種類の樹脂成分を用いれば十分な不相溶性を確保することができ、その結果複層構造を持つ電着塗膜を形成することができる。
【0013】
また、上記導電性基材に直接接する樹脂層を構成する樹脂成分は、カチオン変性エポキシ樹脂であることが好ましい。一方、上記空気に直接接する樹脂層を構成する樹脂成分の少なくとも1つが、カチオン変性アクリル樹脂、カチオン変性ポリエーテルウレタン樹脂およびカチオン変性ポリエステルウレタン樹脂よりなる群より選ばれるカチオン変性樹脂であることが好ましい。上記カチオン変性エポキシ樹脂と、上記カチオン変性樹脂とは互いに不相溶な樹脂成分であって、上記水性塗料組成物中での好ましい配合比率は、重量比で70/30〜30/70の範囲である。
【0014】
また本発明の方法において、上記複層硬化膜中における全顔料の重量(P)に対する、複層硬化膜を形成する顔料以外の全ビヒクル成分の重量(V)の比率P/Vは、好ましくは1/10〜1/3の範囲である。そして上記顔料の少なくとも1つが二酸化チタン、リンモリブデン酸アルミまたはケイ酸アルミであることが好ましく、これら顔料の少なくとも1つを、導電性基材に直接接する樹脂層を構成する樹脂と相溶性を有し、かつ空気に直接接する樹脂層を構成する樹脂とは不相溶な分散樹脂によって、水性塗料組成物の調製時点においてあらかじめ、分散ペースト化しておくことが好ましい。
【0015】
上記分散樹脂の溶解性パラメーター(δc)については、空気に直接接する樹脂層を構成する樹脂の溶解性パラメーター(δa)と0.5以上の差を持たせることによって、この樹脂との不相溶性を確保し、導電性基材に直接接する樹脂層を構成する樹脂の溶解性パラメーター(δb)との差を0.5未満とすることによって、この樹脂との相溶性を確保し、顔料を導電性基材に直接接する樹脂層へ多く取り込むことができる。
【0016】
本発明に係る電着塗料組成物を硬化させるための手法は、イソシアネート架橋、エステル架橋、メラミン架橋、アマイド架橋等の公知の方法が適用可能であるが、上記硬化剤についていえば好ましくはブロックドポリイソシアネートであって、かつこのブロックドポリイソシアネートの溶解性パラメーター(δi)は、上記溶解性パラメーターδaおよびδbの中間に設定するのが良い。この設定によって、複層構造をとる電着塗膜の硬化を平均して行うことできる。
【0017】
本発明の多層塗膜の形成方法は、上記各方法によって得られた複層電着塗膜上に、さらに上塗り塗料を塗装し、焼き付けるものであり、中でも、上記複層電着塗膜が未硬化の段階で硬化温度条件未満でプレヒートを行い、ウェットオンウェットでさらに上塗り塗料を塗装した後、電着塗膜と上塗り塗膜とを同時に焼き付ける、いわゆる2コート1ベーク方法が塗膜外観を一層向上させる点で好適である。
【0018】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を具体的に説明する。
【0019】
本発明の方法で使用する、上記空気に直接接する樹脂層を形成する樹脂成分(以下、樹脂成分Aという。)は、層分離を誘導する樹脂成分でもあり、上記導電性基材に直接接する樹脂層を形成する樹脂成分(以下、樹脂成分Bという。)よりも溶解性パラメーターδにおいて少なくとも1.0以上低い樹脂であることが必要であり、この関係は(δb−δa)≧1.0で表わすことができる。ここにおいて、δaは樹脂成分Aの溶解性パラメーターを表わし、δbは樹脂成分Bの溶解性パラメーターを表わす。一般に、樹脂間の溶解性パラメーターδの差が0.5以上あれば相溶性を失い、塗膜が分離構造を呈すると考えられている。しかし本発明のように、明瞭に層分離した塗膜構造を形成するためには、少なくとも1.0以上の溶解性パラメーター差が必要となる。
上記溶解性パラメーターδとは、当該業者等の間で一般にSP(ソルビリティ・パラメーター)とも呼ばれるものであって、樹脂の親水性または疎水性の度合いを示す尺度であり、また樹脂間の相溶性を判断する上でも重要な尺度である。例えば下記のような濁度測定法をもとに数値定量化されるものである(参考文献:K.W.Suh,D.H.Clarke J.Polymer.Sci.,A−1,5,1671(1967).)。
【0020】
このような溶解性パラメーターδに基づく関係を満足する樹脂成分Aの少なくとも1つは、カチオン変性アクリル樹脂、カチオン変性ポリエーテルウレタン樹脂およびカチオン変性ポリエステルウレタン樹脂よりなる群より選ばれるカチオン変性樹脂であることが好ましい。
【0021】
カチオン変性アクリル樹脂は、分子内に複数のオキシラン環および複数の水酸基を含んでいるアクリル共重合体とアミンとの開環付加反応によって合成することができる。このようなアクリル共重合体は、グリシジル(メタ)アクリレートと、ヒドロキシル基含有アクリルモノマー(例えば2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、あるいは2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートのような水酸基含有(メタ)アクリルエステルと、ε−カプロラクトンとの付加生成物)と、その他のアクリル系および/または非アクリルモノマーとを共重合することによって得られる。
【0022】
その他のアクリル系モノマーの例としては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレートが挙げられる。また、非アクリルモノマーの例としては、スチレン、ビニルトルエン、α−メチルスチレン、(メタ)アクリルニトリル、(メタ)アクリルアミドおよび酢酸ビニルを挙げることができる。
【0023】
上記のグリシジル(メタ)アクリレートに基づくオキシラン環を含有するアクリル樹脂は、エポキシ樹脂のオキシラン環の全部を1級アミン、2級アミンまたは3級アミン酸塩との反応によって開環し、カチオン性アクリル樹脂とすることができる。
【0024】
また、アミノ基を有するアクリルモノマーを他のモノマーと共重合することによって直接カチオン変性アクリル樹脂を合成する方法もある。この方法では、上記のグリシジル(メタ)アクリレートの代りにN,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジ−t−ブチルアミノエチル(メタ)アクリレート等のアミノ基含有アクリルモノマーを使用し、これをヒドロキシル基含有アクリルモノマーおよび他のアクリル系および/または非アクリル系モノマーと共重合することによってカチオン変性アクリル樹脂を得ることができる。
【0025】
かくして得られたカチオン変性アクリル樹脂は、上記の特開平8−333528号公報に挙げられるように、必要に応じてハーフブロックジイソシアネート化合物との付加反応によってブロックイソシアネート基を導入し、自己架橋型カチオン変性アクリル樹脂とすることもできる。
【0026】
つぎに、上記カチオン変性ポリエーテルウレタン樹脂およびカチオン変性ポリエステルウレタン樹脂について説明すると、これらの樹脂は、ポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシド、ポリテトラメチレンオキシド等のポリエーテル、あるいは分子鎖の両末端に水酸基を有するポリε−カプロラクトン等のポリエステルポリオールの両末端に、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネ−ト等のジイソシアネートをウレタン結合させ、鎖延長したものを出発原料樹脂としたものである。カチオン性基の導入は、例えば分子鎖の途中にN−メチルジエタノールアミンとジイソシアネートを結合させて3級アミノ基を導入する方法がある。また、ジエチレントリアミンメチルイソブチルケチミンの様なケチミンブロック1級アミノ基含有2級アミンを分子のイソシアネート末端に反応させた後、樹脂の水分散工程においてケチミンブロック部分を加水分解させることによって1級アミノ基を導入する方法もある。こうしてアミノ基を導入したカチオン変性ウレタン樹脂は、そのまま使用することもできるし、必要に応じて後工程で酸中和して使用することもできる。
【0027】
樹脂成分Aは、ヒドロキシル価が50〜150の範囲となるように分子設計することが好ましい。ヒドロキシル価が50未満では塗膜の硬化不良を招き、反対に150を超えると硬化後塗膜中に過剰の水酸基が残存する結果、耐水性が低下することがある。また、数平均分子量は1000〜20000の範囲であれば好適である。数平均分子が1000未満では硬化形成塗膜の耐溶剤性等の物性が劣る。反対に20000を超えると、樹脂溶液の粘度が高いために得られた樹脂の乳化分散等の操作上ハンドリングが困難なばかりか、得られた電着塗膜の膜外観が著しく低下してしまうことがある。なお、樹脂成分Aは1種のみ使用することもできるが、塗膜性能のバランス化を計るために、2種あるいはそれ以上の種類を使用することもできる。
【0028】
一方、本発明の方法で使用する、導電性基材に直接接する樹脂層を構成する樹脂(樹脂成分B)は、導電性基材に対して防錆性を発現するような樹脂であることが必要である。このような樹脂の例として、カチオン電着塗料の分野ではカチオン変性エポキシ樹脂が良く知られており、本発明においても好適に用いることができる。一般にカチオン変性エポキシ樹脂は、出発原料樹脂分子内のエポキシ環を1級アミン、2級アミンあるいは3級アミン酸塩等のアミン類との反応によって開環して製造される。出発原料樹脂の典型例は、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、フェノールノボラック、クレゾールノボラック等の多環式フェノール化合物とエピクロルヒドリンとの反応生成物であるポリフェノールポリグリシジルエーテル型エポキシ樹脂である。また他の出発原料樹脂の例として、特開平5−306327号公報に記載されたオキサゾリドン環含有エポキシ樹脂を挙げることができる。このエポキシ樹脂は、ジイソシアネート化合物、またはジイソシアネート化合物のNCO基をメタノール、エタノール等の低級アルコールでブロックして得られたビスウレタン化合物と、エピクロルヒドリンとの反応によって得られるものである。
【0029】
上記出発原料樹脂は、アミン類によるエポキシ環の開環反応の前に、2官能のポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、ビスフェノール類、2塩基性カルボン酸等により鎖延長して用いることができる。また同じくアミン類によるエポキシ環の開環反応の前に、分子量またはアミン当量の調節、熱フロー性の改良等を目的として、一部のエポキシ環に対して2−エチルヘキサノール、ノニルフェノール、エチレングリコールモノ−2−エチルヘキシルエーテル、プロピレングリコールモノ−2−エチルヘキシルエーテルのようなモノヒドロキシ化合物を付加して用いることもできる。
【0030】
エポキシ環を開環し、アミノ基を導入する際に使用し得るアミン類の例としては、ブチルアミン、オクチルアミン、ジエチルアミン、ジブチルアミン、メチルブチルアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、N−メチルエタノールアミン、トリエチルアミン酸塩、N,N−ジメチルエタノールアミン酸塩などの1級、2級または3級アミン酸塩でを挙げることができる。また、アミノエチルエタノールアミンメチルイソブチルケチミンの様なケチミンブロック1級アミノ基含有2級アミンも使用することができる。これらのアミン類は、全てのエポキシ環を開環させるために、エポキシ環に対して少なくとも当量で反応させる必要がある。
【0031】
上記カチオン変性エポキシ樹脂の数平均分子量は1500〜5000の範囲が好ましい。数平均分子量が1500未満の場合は、硬化形成塗膜の耐溶剤性および耐食性等の物性が劣ることがある。反対に5000を超える場合は、樹脂溶液の粘度制御が難しく合成が困難なばかりか、得られた樹脂の乳化分散等の操作上ハンドリングが困難となることがある。さらに高粘度であるがゆえに加熱・硬化時のフロー性が悪く塗膜外観を著しく損ねる場合がある。
【0032】
樹脂成分Bは、ヒドロキシル価が50〜250の範囲となるように分子設計することが好ましい。ヒドロキシル価が50未満では塗膜の硬化不良を招き、反対に250を超えると硬化後塗膜中に過剰の水酸基が残存する結果、耐水性が低下することがある。さらに樹脂成分Bの軟化点は、80℃以上、さらに好ましくは100℃以上のものを用いることが、本発明の目的である硬化形成塗膜の耐溶剤性、耐候性、耐食性あるいは塗膜外観の高次元における両立化を達成する上で望ましい。
【0033】
樹脂成分Aの溶解性パラメーターδaと、樹脂成分Bの溶解性パラメーターδbとは上記のように(δb−δa)≧1.0の関係にある。溶解性パラメーターδは樹脂の親水・疎水性の度合いを示す尺度であるから、その数値δbが1.0以上も樹脂成分Aより高い樹脂成分B(カチオン変性エポキシ樹脂等)は空気層側よりもむしろ金属等の表面極性の高い導電性基材表面に対する親和性が高いと言える。したがって、電着塗装後の加熱時には、金属材料等からなる導電性基材側に接する側に樹脂層を形成する。また樹脂成分AはBとは逆に空気層側に移動して樹脂層を形成することになる。この様に双方の樹脂の溶解性パラメーターの差異が樹脂層の分離を引き起こす推進力になると考えられる。
【0034】
上記樹脂層の分離状況を確認するには、電着塗膜の断面をビデオマイクロスコープによって目視観察するか、走査型電子顕微鏡(SEM)によって観察する方法がある。また、各樹脂層を構成する樹脂成分を同定するには、例えば全反射型フーリエ変換赤外分光光度計(FTIR−ATR)を使用することができる。
【0035】
また、樹脂成分A(例えばカチオン変性アクリル樹脂)と、それと不相溶な樹脂成分B(例えばカチオン変性エポキシ樹脂)の水性塗料組成物中での配合比率は、重量比で好ましくは70/30〜30/70、さらに好ましくは60/40〜40/60である。配合比率が70/30〜30/70の範囲を外れた場合は、電着塗装、焼き付け後の硬化塗膜が複層構造とならず、配合比率の高い方の樹脂が連続相を形成し、低い方の樹脂が分散相を形成する海島構造(またはミクロドメイン構造)になってしまうことがある。
【0036】
樹脂成分AおよびBは、そのままエマルションとして水中に乳化分散させるか、あるいは各樹脂中のアミノ基を中和できる量の酢酸、蟻酸、乳酸等の有機酸で中和処理し、カチオン化エマルションとして水中に乳化分散させる。乳化分散は樹脂成分AおよびB別々に行うことが好ましいが、両方の樹脂を混合して乳化分散させてもよい。この乳化分散の工程では、少なくともいずれかの樹脂エマルションに硬化剤を内包させることが望ましい。硬化剤としては、加熱時に各樹脂成分を硬化させることが可能であれば、どのような種類のものでも良いが、その中でも電着樹脂の硬化剤として好適なブロックドポリイソシアネートが推奨される。
【0037】
上記ブロックドポリイソシアネートの原料であるポリイソシアネートの例としては、ヘキサメチレンジイソシアネート(3量体を含む)、テトラメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイシシアネート等の脂肪族ジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、4,4’−メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)等の脂環族ポリイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート等の芳香族ジイソシアネートが挙げられる。これらを適当な封止剤でブロック化することにより、上記ブロックドポリイソシアネートを得ることができる。
【0038】
上記封止剤の例としては、n−ブタノール、n−ヘキシルアルコール、2−エチルヘキサノール、ラウリルアルコール、フェノールカルビノール、メチルフェニルカルビノール等の一価のアルキル(または芳香族)アルコール類、エチレングリコールモノヘキシルエーテル、エチレングリコールモノ2−エチルヘキシルエーテル等のセロソルブ類、フェノール、パラーt−ブチルフェノール、クレゾール等のフェノール類、ジメチルケトオキシム、メチルエチルケトオキシム、メチルイソブチルケトオキシム、メチルアミルケトオキシム、シクロヘキサノンオキシム等のオキシム類、およびε−カプロラクタム、γ−ブチロラクタムに代表されるラクタム類が好ましく用いられる。とくにオキシム類およびラクタム類の封止剤は低温で解離するため、樹脂硬化性の観点から好適である。
【0039】
上記封止剤は単独あるいは複数種を使用することができる。ブロック化率については、樹脂成分AあるいはBと反応させる目的がなければ、塗料の貯蔵安定性確保のためにも100%にしておくことが好ましい。
【0040】
上記ブロックドポリイソシアネートの、樹脂成分AおよびBの合計量に対する配合比は、硬化塗膜の利用目的などで必要とされる架橋度に応じて異なるが、塗膜物性や上塗り塗装適合性を考慮すると15〜40重量%の範囲が好ましい。この配合比が15重量%未満では塗膜硬化不良を招く結果、機械的強度などの塗膜物性が低くなることがあり、また、上塗り塗装時に塗料シンナーによって塗膜が侵されるなど外観不良を招く場合がある。一方、40重量%を超えると、逆に硬化過剰となって、耐衝撃性等の塗膜物性不良などを招くことがある。なお、ブロックドポリイソシアネートは、塗膜物性や硬化度の調節等の都合により、複数種を組み合わせて使用しても良い。
【0041】
さらに、ブロックドポリイソシアネートの溶解性パラメーター(δi)は、樹脂成分Aの溶解性パラメーターδaおよび樹脂成分Bの溶解性パラメーターδbの中間値、すなわちδa<δi<δbに設定することが、二層分離後のそれぞれの層へのブロックドポリイソシアネートの分配溶解を可能とし、樹脂成分Aを含む層の硬化性の確保と樹脂成分Bを含む層の同時硬化を両立化せしめる上で重要である。この関係は、複層膜中の層間密着性の向上とさらに上塗り塗装後の多層外観の向上をもたらすなど本発明を成立させる上で重要な設計指針である。
【0042】
本発明の方法で使用する顔料は、通常塗料に使用されるものならばとくに制限なく使用することができる。その例としては、カーボンブラック、二酸化チタン、グラファイト等の着色顔料、カオリン、ケイ酸アルミ(クレー)、タルク等の体質顔料、リンモリブデン酸アルミ、ケイ酸鉛、硫酸鉛、ジンククロメート、ストロンチウムクロメート等の防錆顔料が挙げられる。これらの中でも、電着塗装後の複層硬化膜中で分散濃度勾配を担う顔料としてとくに重要なものは、二酸化チタン、ケイ酸アルミ(クレー)およびリンモリブデン酸アルミである。とくに二酸化チタンは着色顔料として隠蔽性が高く、しかも安価であることから、電着塗膜用に最適である。なお、上記顔料は単独で使用することもできるが、目的に合わせて複数使用するのが一般的である。
【0043】
上記顔料は複層硬化膜中において、全顔料重量(P)に対する、複層硬化膜を形成する顔料以外の全ビヒクル成分の重量(V)の比率P/Vで表わすと1/10〜1/3の範囲であることが好ましい。ここで顔料以外の全ビヒクル成分とは、顔料以外の塗料を構成する全固形成分(互いに不相溶な主樹脂成分、それぞれの硬化剤および顔料分散樹脂等)を意味する。上記P/Vが1/10未満では、顔料不足により塗膜に対する光線および水分などの腐食要因の遮断性が過度に低下し、実用レベルでの耐候性や耐食性を発現できないことがある。また、P/Vが1/3を超えると、顔料過多により硬化時の粘性増大を招き、フロー性が低下して塗膜外観が著しく悪くなることがある。なお、この比率は、本発明で用いられる水性塗料組成物中における、全顔料重量に対する全ビヒクル成分の重量と実質的に同じである。
【0044】
上記空気に直接接する樹脂層中の顔料濃度(a)が、上記導電性基材に直接接する樹脂層中の顔料濃度(b)に比較して相対的に低くなるように顔料の分配を制御するには、上記顔料の少なくとも1つについて、樹脂成分Bと相溶性を有し、かつ樹脂成分Aとは不相溶な分散樹脂を使用して顔料分散ペーストを製造し、これを含有した水性塗料組成物を調製することが好ましい。特に顔料分散樹脂の溶解性パラメーターδcが、樹脂成分Bの溶解性パラメーターδbとは0.5未満、さらには0.3未満の差があり、かつ樹脂成分Aの溶解性パラメーターδaとは0.5以上、さらには0.7以上の差があれば上記のように顔料分配を制御することが可能である。溶解性パラメーターδcとδbとの差が0.5以上ある場合には、顔料分散樹脂と樹脂成分Bとの間で相溶性が確保されず、電着塗膜を加熱しても顔料が樹脂成分Bを含む樹脂層へ配向しにくくなり、その結果、耐食性が低下することがある。また、溶解性パラメーターδcとδaとの差が0.5未満のときは、顔料分散樹脂と樹脂成分Aとの間で相溶してしまうことがあり、樹脂成分Aを含む樹脂層にも顔料が配向し易くなる。その結果、硬化塗膜の外観を損ねてしまう心配がある。
【0045】
顔料の相対的な配向の様子は、たとえば電着塗膜断面を走査型電子顕微鏡による蛍光X線分析(SEM−EDX法)による観察によって確認できる。
【0046】
顔料分散樹脂の種類および組成に関しては、樹脂成分Bと同一のものか、あるいはそれと近似組成で、かつ上記溶解性パラメーターの条件を満足するものが好適である。また、顔料に対する分散樹脂の適性配合量は、5〜40固形分重量%(対顔料重量)である。分散樹脂の配合量が5未満の場合は、顔料分散安定性を確保することが困難となり、また40を超える場合は塗膜の硬化性の制御が困難になる場合がある。
【0047】
本発明の方法で形成する複層電着膜は、もし深さ方向に少なくとも3層以上の複層構造を有する場合は、中間に位置する樹脂層(以下、中間層という。)中の顔料濃度(c)が、空気に直接接する樹脂層中の顔料濃度(a)と導電性基材に直接接する樹脂層中の顔料濃度(b)との間に位置し、空気/塗膜界面から塗膜/導電性基材界面へ向かう深さ方向において傾斜勾配を有する。つまり、複層塗膜各層の顔料濃度がa<b<cの関係式を満足させるような濃度勾配を持つ。
【0048】
また上記中間層を構成する樹脂の種類と組成は、導電性基材に直接接する樹脂層を構成する樹脂成分Bと、空気に直接接する樹脂層を構成する樹脂成分Aの中間的な溶解性パラメーターδm(δa<δm<δb)を有し、かつ中間的な樹脂組成を持つものが好ましい。
【0049】
このような樹脂の例としては、カチオン変性エポキシ樹脂とポリエステル樹脂、カチオン変性エポキシ樹脂とアクリル樹脂および/またはカチオン変性エポキシ樹脂とポリエーテル樹脂とのグラフト樹脂等が挙げられ、これらは上記の顔料濃度条件を満足させる上においても中間層を構成する樹脂として好適に用いられる。
【0050】
カチオン変性エポキシ樹脂とポリエステル樹脂のグラフト樹脂は、例えば分子鎖片末端に水酸基を有するアルコキシ変性ポリε−カプロラクトンあるいはアルコキシ変性ポリδ−バレロラクトン等で4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート等のジイソシアネートをウレタン結合を介してハーフブロック化した後、さらにカチオン変性エポキシ樹脂中の水酸基と反応せしめることで合成できる。
【0051】
またカチオン変性エポキシ樹脂とアクリル樹脂とのグラフト樹脂は、例えばベンゾイルパーオキシド、クメンパーオキシド等の過酸化物重合触媒によるエポキシ樹脂上の水素引き抜き反応によってアクリルモノマーがエポキシ樹脂に対してグラフト化すること等により合成される。エポキシ樹脂のカチオン化はアクリルグラフト反応後に行っても良い。
【0052】
さらにカチオン変性エポキシ樹脂とポリエーテル樹脂とのグラフト樹脂は、例えば分子鎖片末端に水酸基を有するアルコキシ変性ポリプロピレン等で4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート等のジイソシアネートをウレタン結合を介してハーフブロック化した後、さらにカチオン変性エポキシ樹脂中の水酸基と反応せしめることで合成できる。
【0053】
上記各種グラフト樹脂の製造方法は、以上の合成例に限定されるものではなく、経済的(反応収率と製造コストの点)で、かつ安全性が確保されならば、全ての公知の方法を採用することができる。
【0054】
本発明の複層構造を有する電着塗膜にさらに上記中間層を持たせることにより、例えば、耐候試験における塗膜剥離性で評価される、導電性基材に直接接する樹脂層と空気に直接接する樹脂層との密着性が向上させることができる。
【0055】
上記中間層を構成する樹脂の数平均分子量は1000〜20000の範囲が好ましく、1000未満では塗膜硬化後の複層間密着性が劣る。反対に20000を超える場合は、樹脂溶液の粘度が高いために得られた樹脂の乳化分散等の操作上ハンドリングが困難なばかりか、得られた電着塗膜の膜外観に対しても悪影響を与えてしまう。さらに塗膜の硬化設計上、必要に応じて中間層にも上記硬化剤の適量(通常樹脂に対して15〜40重量%)を配合しても良い。 本発明の方法に使用する水性塗料組成物は、互いに不相溶な少なくとも2種類の樹脂成分(樹脂成分Aおよび樹脂成分B)、硬化剤および顔料を含むものであり、その調製は、樹脂成分A、B、顔料(顔料分散樹脂ペースト)および硬化剤を一括して混合した後、中和剤を含む水性媒体中で水性エマルション化する方法がある。また、各樹脂を別々にそれぞれに適合した硬化剤とともに中和剤を含む水性媒体中でエマルション化した後、上記配合比率を満足するようにエマルションをブレンドする方法もある。このうち好ましいのは後者の別々にエマルション化する方法であり、これにより塗料の安定性を確保することが容易となる。なお、上記中和剤の例としては、塩酸、硝酸、リン酸等の無機酸および蟻酸、酢酸、乳酸、スルファミン酸、アセチルグリシン酸等の有機酸を挙げることができる。
【0056】
上記水性塗料組成物は、固形分濃度が15〜25重量%の範囲となるように調整することが好ましい。固形分濃度の調節には水性媒体(水単独かまたは水と親水性有機溶剤との混合物)を使用して行う。また、塗料組成物中には少量の添加剤を導入しても良い。添加剤の例としては紫外線吸収剤、酸化防止剤、界面活性剤、塗膜表面平滑剤、硬化促進剤(有機スズ化合物など)などを挙げることができる。
【0057】
本発明の複層電着塗膜を形成するためには、被塗物である導電性基材に陰極(カソード極)端子を接続し、上記水性塗料組成物の浴温15〜35℃、負荷電圧100〜400Vの条件で、乾燥膜厚10〜50μm、好ましくは20〜40μmとなる量の塗膜を電着塗装する。その後140〜200℃、好ましくは160〜180℃で10〜30分間焼き付ける。この焼き付けを目的とした加熱によって、電着塗装された水性塗料組成物に含有される樹脂成分Aおよび樹脂成分B、顔料分散樹脂は、各樹脂固有の溶解性パラメーターに応じて配向する。そして焼き付けを終了する塗膜硬化時には、樹脂成分Aが空気に直接接する側に、樹脂成分Bが導電性基材に直接接する側にあり、しかも顔料が樹脂成分Bを含む層内に主として存在する複層構造の電着硬化膜となる。なお、上記焼き付けの加熱方法は、当初から目的温度に調節した加熱設備に塗装物を入れる方法と、塗装物を入れた後に昇温する方法がある。
【0058】
上記方法によって形成された複層電着硬化膜上に、さらに上塗り塗料を塗装して焼き付けることによって、密着性および外観に優れた2コート仕様の多層塗膜を形成することができる。この多層塗膜形成は2コート2ベーク塗装方法である。なお、上記上塗り塗料は、溶剤型、水性、粉体のいずれのタイプであっても構わない。
【0059】
また自動車塗装分野では近年の省エネルギー化の要求から、焼き付け工程を短縮する方法が一般的である。すなわち、上記方法によって電着塗装を行った後、未硬化の塗膜上にウェットオンウェットで上塗り塗料を塗装し、電着塗膜と上塗り塗膜を同時に焼き付ける2コート1ベーク塗装方法が採用されている。本発明の複層電着膜の形成には、この2コート1ベーク塗装方法を適用するのも好ましい。ただし、その場合は電着膜内部の層分離が起こる温度を塗膜硬化に必要な温度条件以下に設定しプレヒートした上で、上塗り塗装を施すことが、塗膜外観を損なわずに目的の多層塗膜を得るためには望ましい。上記プレヒート温度は通常60〜130℃の範囲が好適である。
【0060】
【実施例】
以下に製造例、実施例および比較例を挙げて本発明を更に詳しく説明する。各例中の「部」は「重量部」を表し、「%」は「重量%」を表す。
製造例1(ブロックドポリイソシアネート硬化剤の製造)
攪拌機、窒素導入管、冷却管および温度計を備え付けた反応容器にイソホロンジイソシアネート222部を入れ、メチルイソブチルケトン56部で希釈した後ブチル錫ラウレート0.2部を加え、50℃まで昇温の後、メチルエチルケトオキシム17部を内容物温度が70℃を超えないように加えた。そして赤外吸収スペクトルによりイソシアネート残基の吸収が実質上消滅するまで70℃で1時間保温し、その後n−ブタノール43部で希釈することによって固形分70%の目的のブロックドポリイソシアネート(溶解性パラメーターδi=11.8)を得た。
【0061】
製造例2(ブロックドポリイソシアネート硬化剤の製造)
攪拌機、窒素導入管、冷却管および温度計を備え付けた反応容器にヘキサメチレンジイソシアネートの3量体199部を入れ、メチルイソブチルケトン39部で希釈した後ブチル錫ラウレート0.2部を加え、50℃まで昇温の後、メチルエチルケトオキシム44部、エチレングリコールモノ2−エチルへキシルエーテル87部を内容物温度が70℃を超えないように加えた。そして赤外吸収スペクトルによりイソシアネート残基の吸収が実質上消滅するまで70℃で1時間保温し、その後n−ブタノール43部で希釈することによって固形分80%の目的のブロックドポリイソシアネート(溶解性パラメーターδi=10.7)を得た。
【0062】
製造例3(カチオン変性エポキシ樹脂エマルション[樹脂成分B]の製造)
攪拌機、デカンター、窒素導入管、温度計および滴下ロートを備え付けた反応容器に、エポキシ当量188のビスフェノールA型エポキシ樹脂(商品名DER−331J、ダウケミカル社製)2400部とメタノール141部、メチルイソブチルケトン168部、ジラウリン酸ジブチル錫0.5部を仕込み、40℃で攪拌し均一に溶解させた後、2,4−/2,6−トリレンジイソシアネート(80/20重量比混合物)320部を30分間かけて滴下したところ発熱し、70℃まで上昇した。これにN,N−ジメチルベンジルアミン5部を加え、系内の温度を120℃まで昇温し、メタノールを留去しながらエポキシ当量が500になるまで120℃で3時間反応を続けた。さらに、メチルイソブチルケトン644部、ビスフェノールA341部、2−エチルヘキサン酸413部を加え、系内の温度を120℃に保持し、エポキシ当量が1070になるまで反応させた後、系内の温度が110℃になるまで冷却した。ついでジエチレントリアミンジケチミン(固形分73%のメチルイソブチルケトン溶液)241部とN−メチルエタノールアミン192部の混合物を添加し110℃で1時間反応させることによりカチオン変性エポキシ樹脂を得た。この樹脂の数平均分子量は2100、水酸基価は160であり、樹脂軟化点はJIS−K−5665に基づいて測定したところ130℃であった。赤外吸収スペクトル等の測定から、樹脂中にオキサゾリドン環(吸収波数;1750cm-1)を有していることが確認された。また溶解性パラメーターδb=11.4であった。
【0063】
こうして得られたカチオン変性エポキシ樹脂中へ、上記製造例1で製造したブロックドポリイソシアネート硬化剤1834部、酢酸90部を加えた後、イオン交換水で不揮発分32%まで希釈した後、減圧下で不揮発分36%まで濃縮し、カチオン変性エポキシ樹脂を主体とする水性エマルション(以下、E-1と記す)を得た。
【0064】
製造例4(カチオン変性アクリル樹脂エマルション[樹脂成分A]の製造)
攪拌機、冷却器、窒素導入管、温度計および滴下ロートを備え付けた反応容器に、メチルイソブチルケトン50部を仕込み、窒素雰囲気下115℃に加熱保持した。さらに2−ヒドロキシエチルメタクリレート22.7部、2−エチルヘキシルメタクリレート57.3部、N,N−ジメチルアミノエチルメタクリレート20部、ラウリルメタクリレート24.9部およびt−ブチルパーオクトエート4部の混合物を滴下ロートから3時間かけて滴下し、その後さらにt−ブチルパーオクトエート0.5部を滴下して115℃で1.5時間保持した。得られたカチオン変性アクリル樹脂は、固形分65%、数平均分子量6400、ヒドロキシル価=98であり、溶解性パラメーターδa=10.4であった。
【0065】
さらに、この樹脂溶液に対して製造例2で製造したブロックドポリイソシアネート硬化剤40部を加えて30分間攪拌し、つぎにエチレングリコールモノn−ブチルエーテル10部、酢酸3部を加え、イオン交換水で不揮発分32%まで希釈した後、減圧下で不揮発分36%まで濃縮し、カチオン変性アクリル樹脂を主体とする水性エマルション(以下、E-2と記す)を得た。
【0066】
製造例5(カチオン変性アクリル樹脂エマルション[樹脂成分A]の製造)
攪拌機、冷却器、窒素導入管、温度計および滴下ロートを備え付けた反応容器に、メチルイソブチルケトン50部を仕込み、窒素雰囲気下115℃に加熱保持した。そこへ2−ヒドロキシエチルメタクリレート20部、2−ヒドロキシプロピルメタクリレート21.3部、2−エチルヘキシルメタクリレート19.1部、N,N−ジメチルアミノエチルメタクリレート15部、ラウリルメタクリレート24.9部およびt−ブチルパーオクトエート4部の混合物を滴下ロートから3時間かけて滴下し、その後t−ブチルパーオクトエート0.5部をさらに滴下して115℃で1.5時間保持した。得られたカチオン変性アクリル樹脂は固形分65%、数平均分子量6500、ヒドロキシル価=169であり、溶解性パラメーターδa=10.9であった。
【0067】
この樹脂溶液に対して製造例2で製造したブロックドポリイソシアネート硬化剤40部を加えて30分間攪拌した後、エチレングリコールモノn−ブチルエーテル10部、酢酸3部を加え、イオン交換水で不揮発分32%まで希釈した後、減圧下で不揮発分36%まで濃縮し、カチオン変性アクリル樹脂を主体とする水性エマルション(以下、E-3と記す)を得た。
【0068】
製造例6(カチオン変性アクリル樹脂エマルション[樹脂成分A]の製造)
攪拌機、冷却器、窒素導入管、温度計および滴下ロートを備え付けた反応容器に、メチルイソブチルケトン50部を仕込み、窒素雰囲気下115℃に加熱保持した。そこへ2−ヒドロキシエチルメタクリレート22.7部、2−エチルヘキシルメタクリレート57.3部、N,N−ジメチルアミノエチルメタクリレート20部、ラウリルメタクリレート24.9部およびt−ブチルパーオクトエート4部の混合物を滴下ロートから3時間かけて滴下し、その後t−ブチルパーオクトエート0.5部を滴下して115℃で1.5時間保持した。得られたカチオン変性アクリル樹脂は固形分65%、数平均分子量6400、ヒドロキシル価=98であり、溶解性パラメーターδa=10.4であった。
【0069】
この樹脂溶液に対して製造例1で製造したブロックドポリイソシアネート硬化剤46部を加えて30分間攪拌した後、エチレングリコールモノn−ブチルエーテル10部、酢酸3部を加え、イオン交換水で不揮発分32%まで希釈した後、減圧下で不揮発分36%まで濃縮し、カチオン変性アクリル樹脂を主体とする水性エマルション(以下、E-4と記す)を得た。
【0070】
製造例7(カチオン変性ポリエーテルウレタン樹脂エマルション[樹脂成分A]の製造)
攪拌機、冷却管、窒素導入管、温度計を備えた反応容器にメチルイソブチルケトン150部を仕込んで80℃まで昇温後、ヘキサメチレンジイソシアネート51部、ジラウリン酸ジブチル錫0.02部を溶解した。温度を50〜60℃に保持しつつ、ポリプロピレングリコール(商品名ニューポールPP−3000、三洋化成製、数平均分子量=3000)600部を20分間かけて滴下し、滴下終了後90℃で30分間さらに攪拌を続けた。つぎに内容物を攪拌しながら、N−メチルジエタノールアミン89部、ジエチレントリアミンジケチミンのメチルイソブチルケトン溶液(不揮発分73%)18部を加え、80℃で30分間反応させて、内容物の赤外吸収スペクトル分析からイソシアネート基(吸収波数;2220cm-1)の吸収が実質的に消失したのを確認し、カチオン化ポリエーテルウレタン樹脂(数平均分子量=6500、ヒドロキシル価=105、溶解性パラメーターδa=9.8)を得た。
【0071】
得られたカチオン化ポリエーテルウレタン樹脂に対して、製造例2で製造したブロックドイソシアネート硬化剤285部を加えて30分間攪拌した後、エチレングリコールモノn−ブチルエーテル40部、酢酸10部を加え、イオン交換水で不揮発分32%まで希釈した後、減圧下で不揮発分36%まで濃縮し、カチオン変性ポリエーテルウレタン樹脂を主体とする水性エマルション(以下、E-5と記す)を得た。
【0072】
製造例8(カチオン変性ポリエステルウレタン樹脂エマルション[樹脂成分A]の製造)
攪拌機、冷却管、窒素導入管、温度計を備えた反応容器にメチルイソブチルケトン150部を仕込んで80℃まで昇温後、ヘキサメチレンジイソシアネート51部、ジラウリン酸ジブチル錫0.02部を溶解した。温度を50〜60℃に保持しつつ、ポリε−カプロラクトンジオール(商品名プラクセル220、ダイセル化学製、数平均分子量2000)400部を20分間かけて滴下し、滴下終了後90℃で30分間さらに攪拌を続けた。つぎに内容物を攪拌しながら、N−メチルジエタノールアミン89部、ジエチレントリアミンジケチミンのメチルイソブチルケトン溶液(不揮発分73%)18部を加え、80℃で30分間反応させて、内容物の赤外吸収スペクトル分析からイソシアネート基(吸収波数;2220cm-1)の吸収が実質的に消失したのを確認し、カチオン化ポリエステルウレタン樹脂(数平均分子量=4100、ヒドロキシル価=60、溶解性パラメーターδa=10.2)を得た。
【0073】
得られたカチオン化ポリエステルウレタン樹脂に対して、製造例2で製造したブロックドイソシアネート硬化剤285部を加えて30分間攪拌した後、エチレングリコールモノn−ブチルエーテル30部、酢酸9部を加え、イオン交換水で不揮発分32%まで希釈した後、減圧下で不揮発分36%まで濃縮し、カチオン変性ポリエステルウレタン樹脂を主体とする水性エマルション(以下、E-6と記す)を得た。
【0074】
製造例9(顔料分散樹脂の製造)
攪拌機、冷却管、窒素導入管、温度計を備えた反応容器にエポキシ当量198のビスフェノールA型エポキシ樹脂(商品名エポン829、シェル化学社製)710部、ビスフェノールA289.6部を仕込んで、窒素雰囲気下150〜160℃で1時間反応させ、ついで120℃まで冷却後、2−エチルヘキサノール化ハーフブロック化トリレンジイソシアネートのメチルイソブチルケトン溶液(固形分95%)406.4部を加えた。反応混合物を110〜120℃で1時間保持した後、エチレングリコールモノn−ブチルエーテル1584.1部を加えた。そして85〜95℃に冷却して均一化させた。
【0075】
上記反応物の製造と平行して、別の反応容器に2−エチルヘキサノール化ハーフブロック化トリレンジイソシアネートのメチルイソブチルケトン溶液(固形分95%)384部にジメチルエタノールアミン104.6部を加えたものを80℃で1時間攪拌し、ついで75%乳酸水141.1部を仕込み、さらにエチレングリコールモノn−ブチルエーテル47.0部を混合、30分攪拌し、4級化剤(固形分85%)を製造しておいた。そしてこの4級化剤620.46部を先の反応物に加え酸価1になるまで混合物を85から95℃に保持し、顔料分散樹脂ワニス(樹脂固形分56%、平均分子量2200、溶解性パラメーターδc=11.3)を得た。
【0076】
製造例10(顔料分散樹脂の製造)
攪拌機、冷却器、窒素導入管、温度計および滴下ロートを取り付けた反応容器に、エポキシ当量188のビスフェノールA型エポキシ樹脂(商品名DER−331J、ダウケミカル社製)382.2部と、ビスフェノールA150.0部を仕込み、80℃まで昇温して均一に溶解した後、2−エチル−4−メチルイミダゾール1%溶液1.53部を加え、170℃で2時間反応させた。そしてこれを140℃まで冷却した後、2−エチルヘキサノールハーフブロック化イソホロンジイソシアネート(固形分90%メチルイソブチルケトン溶液)187.5部を加え、赤外吸収スペクトルでイソシアネート基が実質的に消失するまで反応させた。つぎにジプロピオングリコールモノブチルエーテル195.0部を加え、さらに1−(2−ヒドロキシルエチルチオ)−2−プロパノール408.0部、ジメチルプロピオン酸144.0部、イオン交換水144.0部を添加して70℃で反応させた。反応は酸価が5以下になるまで継続した。得られた樹脂は平均分子量2300、溶解性パラメーターδc=11.1であった。さらにこの樹脂を、イオン交換水1150.5部によって不揮発分35%にまで希釈した。
【0077】
製造例11(顔料分散樹脂の製造)
攪拌機、冷却管、窒素導入管、温度計を備えた反応容器にエポキシ当量198のビスフェノールA型エポキシ樹脂(商品名エポン829、シェル化学社製)710部、ビスフェノールA289.6部を仕込んで、窒素雰囲気下150〜160℃で1時間反応させ、ついで120℃まで冷却後、2−エチルヘキサノール化ハーフブロック化トリレンジイソシアネートのメチルイソブチルケトン溶液(固形分95%)406.4部を加えた。そしてこの反応混合物を110〜120℃に1時間保持し、つぎにエチレングリコールモノn−ブチルエーテル1584.1部を加えた。ついで85〜95℃に冷却して均一化して反応物を得た。
【0078】
上記反応物の製造と平行して、別の反応容器に2−エチルヘキサノール化ハーフブロック化トリレンジイソシアネートのメチルイソブチルケトン溶液(固形分95%)320部にジメチルエタノールアミン87.2部を加えた混合物を80℃で1時間攪拌した。ついで75%乳酸水117.6部を仕込み、さらにエチレングリコールモノn−ブチルエーテル39.2部を混合、30分攪拌し、4級化剤を製造しておいた。そして、この4級化剤496.3部を先の反応物に加え酸価1になるまで混合物を85から95℃に保持することによって顔料分散樹脂ワニス(樹脂固形分50%、平均分子量2000、溶解性パラメーターδc=10.7)を得た。
【0079】
製造例12(顔料分散ペーストの製造)
サンドミルを用いて、製造例9で得られた顔料分散樹脂を含む下記配合の顔料ペースト(以下、P-1と記す)を調製した。
【0080】
製造例13(顔料分散ペーストの製造)
サンドミルを用いて、製造例10で得られた分散樹脂を含む下記配合の顔料ペースト(以下、P-2と記す)を調製した。
【0081】
製造例14(顔料分散ペーストの製造)
サンドミルを用いて、製造例11で得られた分散樹脂を含む下記配合の顔料ペースト(以下、P-3と記す)を調製した。
【0082】
製造例15(カチオン変性エポキシ樹脂とアクリル樹脂とのグラフト樹脂エマルション[中間層用樹脂成分]の製造)
製造例3記載のエマルション化前のカチオン変性エポキシ樹脂500部と、メチルイソブチルケトン200部を反応容器に仕込み、窒素雰囲気下115℃に加熱保持した。そこへさらに2−ヒドロキシエチルメタクリレート22.7部、2−エチルヘキシルメタクリレート57.3部、N,N−ジメチルアミノエチルメタクリレート20部、ラウリルメタクリレート24.9部およびベンゾイルパーオキシド4部の混合物を滴下ロートから3時間かけて滴下した後、さらにベンゾイルパーオキシド0.5部を滴下し、115℃で2時間保持した。
【0083】
上記反応物に、さらに製造例2で製造したブロックドポリイソシアネート硬化剤180部、酢酸10部を加えた後、イオン交換水で不揮発分32%まで希釈した後、減圧下で不揮発分36%まで濃縮し、アミン化エポキシ樹脂を含むエマルション(以下、E-7と記す)を得た。この樹脂の数平均分子量は2500、溶解性パラメーターδm=10.8であった。
【0084】
実施例1〜6および比較例1〜6
製造例3〜8および製造例15で得られた各種カチオン変性樹脂エマルション(E1〜E7)、製造例12〜14で得られた顔料分散ペースト(P1〜P3)、および脱イオン水を使用して水性塗料組成物(固形分濃度は全て20%)を調製した。各塗料中には硬化促進剤としてジブチル錫オキシドの乳化エマルションペーストを錫量にして塗料固形分量の1.5%になるように配合した。各種材料の組み合わせ、配合比(樹脂固形分比、ただし硬化剤重量は含めずに計算した)および顔料/樹脂ビヒクル(全ビヒクル重量。硬化剤重量も含む)の比率P/Vを実施例1〜6については表1に、比較例1〜6については表2に示した。なお、各表中において、δaは上記樹脂成分Aの溶解性パラメーター、δbは上記樹脂成分Bの溶解性パラメーター、δcは顔料分散樹脂の溶解性パラメーター、δiはポリイソシアネートの溶解性パラメーター、δmは中間層を形成する樹脂の溶解性パラメーターを表わす。
【0085】
【表1】
【0086】
【表2】
【0087】
上記実施例および比較例の配合による水性塗料組成物を用いて、リン酸亜鉛処理鋼板に対して焼き付け後の電着塗膜厚が20μmになるような電圧で電着塗装し、160℃で15分間焼付けを行った。得られた電着塗膜に対する各種性能評価結果を実施例1〜6については表3に、比較例1〜6については表4に示す。
【0088】
表3および表4中の各項目について以下に説明する。
電着塗膜の層分離状態
ビデオマイクロスコープで断面の目視観察を行った。また複層分離膜の場合、各層を構成する主樹脂はFTIR−ATR分析により同定した。
【0089】
顔料濃度
SEM−EDXによって測定した。二酸化チタン、リンモリブデン酸アルミおよびクレー(ケイ酸アルミ)の各層における相対的な顔料濃度の関係は、それぞれチタン、アルミおよびシリカ原子の分布状態から目視で判断した。
【0090】
SWH1000H
塗板をサンシャインウエザオメーターへ取り付け、1000時間照射後60度グロスを測定し、初期値に対する保持率を求めた。
【0091】
SDT
塗板にナイフで素地に達するクロスカットを入れ、塩水噴霧試験(5%食塩水、55℃)を480時間行い、粘着テープによってカット部両側から剥離した剥離部の最大幅で示した。
【0092】
上塗りゴバン目密着
塗膜約20μmの硬化電着塗膜上にアルキッド系上塗り塗料(日本ペイント製オルガセレクトシルバー)を乾燥膜厚25〜30μmにスプレー塗装し、140℃で20分間焼き付けて得られた塗膜に、1mm×1mmのゴバン目100個を作り、その表面に粘着テープを粘着し、急激に剥離した後の塗面に残ったゴバン目の数を記録した。
【0093】
多層塗膜鮮映性(NSIC*)
膜厚20μmの硬化電着塗膜上にメタリックベース塗料(日本ペイント社製スーパーラックM−155シルバー)およびクリア塗料(日本ペイント社製スーパーラックO−150)を塗装して焼き付けた後、携帯式写像鮮明度測定器(スガ試験機株式会社製HA−NSIC)により鮮映性を測定した。
【0094】
【表3】
【0095】
【表4】
【0096】
上記実施例および比較例から、本実施例で製造した水性塗料組成物を使用すれば、耐食性、密着性、表面平滑性の優秀な複層電着塗膜を形成することができ、この電着塗膜に直接上塗りして形成した多層塗膜は、中塗りレスにもかかわらず優れた鮮映性を有することが明らかである。
【0097】
実施例7
実施例1、3および5で形成した複層電着未硬化塗膜(硬化時に電着膜として20μmの膜厚となるように電着塗装済)を、あらかじめ110℃で10分間プレヒートした後、メタリックベース塗料(日本ペイント社製スーパーラックM−155シルバー)およびクリア塗料(日本ペイント社製スーパーラックO−150)を塗装して電着と上塗り塗膜の同時焼き付け(155℃、20分間)を行った。それぞれの多層塗膜鮮映性(NSIC*)は実施例1のものが45、実施例3が48および実施例5が41と優秀であった。また、上記110℃、10分間のプレヒートによって、電着塗膜は未硬化ながらも層分離を完了していることが塗膜断面の観察によって確認された。
【0098】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明の複層電着塗膜の形成方法は、互いに不相溶な少なくとも2種類の樹脂成分のうち、空気に直接接する樹脂層中の顔料濃度(a)が導電性基材に直接接する樹脂層中の顔料濃度(b)よりも相対的に低くなるように分配制御を施して調製している。そのため硬化時の膜表面は顔料濃度が低くなってフロー性が増し、従来にない塗膜平滑性を有する電着塗膜を得ることが可能である。
【0099】
また、空気に直接接する樹脂層を構成する樹脂成分Aの溶解性パラメーターδaと、導電性基材に直接接する樹脂層を構成する樹脂成分Bの溶解性パラメーターδbとを、(δb−δa)≧1.0としたため、電着塗装後加熱時に、上記互いに不相溶な少なくとも2種類の樹脂成分は層分離し、複層電着塗膜が形成される。そして、上記導電性基材に直接接する樹脂層を構成する樹脂成分を、カチオン変性エポキシ樹脂とすれば、この樹脂は水酸基等の親水基と親和性を有するため、上記の層分離時に、導電性基材側に配向し、耐候性、耐食性、耐溶剤性を発現する。さらに、上記カチオン変性エポキシ樹脂成分と不相溶な樹脂成分の少なくとも1つを、カチオン変性アクリル樹脂、カチオン変性ポリエーテルウレタン樹脂およびカチオン変性ポリエステルウレタン樹脂よりなる群より選ばれるカチオン変性樹脂とすれば、非イオン性樹脂を使用した場合に比較して、十分な電着塗膜厚を得ることができる。
【0100】
また、上記顔料の少なくとも1つを、水性塗料組成物調製時点においてあらかじめ、導電性基材に直接接する樹脂層を構成する樹脂と相溶性を有し、かつ空気に直接接する樹脂層を構成する樹脂とは不相溶な分散樹脂によって、分散ペースト化しておくことにより、上記の層分離時に顔料は導電性基材に直接接する樹脂層へ主に含まれることになり、耐候性、耐食性、耐溶剤性を発現する。
【0101】
さらに、上記硬化剤としてブロックドポリイソシアネートを使用し、かつこのブロックドポリイソシアネートの溶解性パラメーター(δi)を、上記溶解性パラメーターδaおよびδbの中間に設定すれば、形成された複層電着塗膜の各層を均一に硬化させることができる。
【0102】
以上の形成方法によって得られた複層電着塗膜上に、さらに上塗り塗料を塗装し、焼き付けることにより、従来の2コート塗装系と比較して焼き付け後の塗膜の外観、上塗り層との密着性、耐候性および耐食性の高度な両立化を達成した多層塗膜を形成することができる。したがって本発明の方法は、塗料産業上とりわけ自動車塗装分野において、中塗りレスの工程短縮、コスト削減および環境負荷(VOCおよびHAPs)低減を目指す新規塗装システムを構築する上で重要な役割を果たすものである。
Claims (11)
- 互いに不相溶な少なくとも2種類の樹脂成分、硬化剤および顔料を含む水性塗料組成物を導電性基材上に電着塗装し、次いで加熱しながら層分離せしめ、その後硬化させて少なくとも2層から成る複層硬化膜を形成する過程で、空気に直接接する樹脂層中の顔料濃度(a)が前記導電性基材に直接接する樹脂層中の顔料濃度(b)に比較して相対的に低くなるように顔料の分配を制御することを特徴とする複層電着塗膜の形成方法であって、
前記顔料の少なくとも1つを、導電性基材に直接接する樹脂層を構成する樹脂と相溶性を有し、かつ空気に直接接する樹脂層を構成する樹脂とは不相溶な分散樹脂によって、水性塗料組成物調製時点においてあらかじめ、分散ペースト化しておき、および前記分散樹脂の溶解性パラメーター(δ c )が、空気に直接接する樹脂層を構成する樹脂の溶解性パラメーター(δ a )との差が0.5以上であり、導電性基材に直接接する樹脂層を構成する樹脂の溶解性パラメーター(δ b )との差は0.5未満であること、を特徴とする、
複層電着塗膜の形成方法。 - 前記電着塗装が導電性基材をカソード極端子に接続して行うカチオン電着塗装である請求項1記載の複層電着塗膜の形成方法。
- 前記空気に直接接する樹脂層を構成する樹脂成分の溶解性パラメーターδaと、導電性基材に直接接する樹脂層を構成する樹脂成分の溶解性パラメーターδbとが、(δb−δa)≧1.0の関係にあることを特徴とする請求項1記載の複層電着塗膜の形成方法。
- 前記導電性基材に直接接する樹脂層を構成する樹脂成分が、カチオン変性エポキシ樹脂であることを特徴とする請求項1記載の複層電着塗膜の形成方法。
- 前記空気に直接接する樹脂層を構成する樹脂成分の少なくとも1つが、カチオン変性アクリル樹脂、カチオン変性ポリエーテルウレタン樹脂およびカチオン変性ポリエステルウレタン樹脂よりなる群より選ばれるカチオン変性樹脂であることを特徴とする請求項1に記載の複層電着塗膜の形成方法。
- 前記カチオン変性エポキシ樹脂と、前記カチオン変性樹脂との前記水性塗料組成物中での比率が、重量比において70/30〜30/70の範囲であることを特徴とする請求項5記載の複層電着塗膜の形成方法。
- 前記複層硬化膜中における全顔料の重量(P)に対する、複層硬化膜を形成する顔料以外の全ビヒクル成分の重量(V)の比率P/Vが1/10〜1/3の範囲であることを特徴とする請求項1記載の複層電着塗膜の形成方法。
- 前記顔料の少なくとも1つが二酸化チタン、リンモリブデン酸アルミまたはケイ酸アルミであることを特徴とする請求項1記載の複層電着塗膜の形成方法。
- 前記硬化剤がブロックドポリイソシアネートであって、かつこのブロックドポリイソシアネートの溶解性パラメーター(δi)が、前記溶解性パラメーターδaおよびδbの中間にあることを特徴とする請求項3記載の複層電着塗膜の形成方法。
- 請求項1〜9のいずれか1項記載の形成方法によって得られた複層電着塗膜上に、さらに上塗り塗料を塗装し、焼き付けることを特徴とする多層塗膜の形成方法。
- 前記複層電着塗膜が未硬化の段階で、硬化温度条件未満でプレヒートを行い、ウェットオンウェットでさらに上塗り塗料を塗装した後、電着塗膜と上塗り塗膜とを同時に焼き付けることを特徴とする請求項10記載の多層塗膜の形成方法。
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