JP4202000B2 - リングローリング用マンドレル - Google Patents

リングローリング用マンドレル

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、表面処理により寿命を向上させたリングローリング用マンドレルに関する。本発明のマンドレルは、成形用ロールとともにリング状粗材を冷間、温間又は熱間で回転鍛造して、直径の大きなリングを成形するリングローリングに適用することができる。
【0002】
【従来の技術】
リング状粗材の半径方向の厚み又は横断面積を減らして大きな直径のリングを鍛造成形する場合、回転鍛造の一種たるリングローリングが利用される。
【0003】
このリングローリングは、リング状粗材の孔内にマンドレルを挿入するとともに、リング状粗材の外面に成形ロールを配設し、マンドレルと成形ロールとの間でリング状粗材を挟圧しつつ、マンドレル及び成形ロールを互いに逆方向に回転させることにより、リング状粗材を周方向に引き伸ばすように成形する。これにより、リング状粗材の半径方向厚み又は横断面積が減らされ、大きな直径のリングに成形される。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、上記リングローリングにおいては、リング状粗材の孔内にマンドレルが挿入されることから、マンドレルの外径を大きくしてマンドレル自身の剛性や強度を向上させることには限界がある。
【0005】
このため、特に径の小さなリング状粗材を成形しようとする場合に、剛性や強度の不足によるマンドレルの早期破損が問題となる。特に、冷間鍛造では成形荷重が比較的大きく、また鍛造型と材料間に生じる摩擦力が大きいことから、マンドレルの早期破損の問題が顕著となる。
【0006】
かかるマンドレルの早期破損の原因は、素材との接触による傷や摩耗の発生と、繰り返し応力の増大による疲労強度不足とが考えられる。
【0007】
そこで、マンドレルの疲労強度及び硬度を向上させるべく、粉末ハイスよりなるマンドレルとすることも考えられるが、粉末ハイスは疲労強度及び硬度の向上には寄与するが、その一方で靭性不足となり、一旦小さな傷が発生すると割れやすくなるため、効果的な対策とは言えない。
【0008】
本発明は上記実情に鑑みてなされたものであり、安価で簡便な表面処理を利用することにより、リングローリング用マンドレルの早期折損を抑えてマンドレル寿命を向上させることを解決すべき技術課題とするものである。
【0009】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決する本発明のリングローリング用マンドレルは、リング状粗材の孔内に挿入され、該粗材の外面に配設される成形ロールとで該粗材を回転鍛造するリングローリング用マンドレルにおいて、上記粗材に接触する成形部位の表面に窒化処理層が形成されるとともに、該窒化処理層の表面に、少なくとも該窒化処理層よりも硬度の高い硬質コーティング皮膜が形成されており、前記窒化処理層の最表面から200μm深さまでの範囲において、白層部の占める面積率が5.0%以下であり、前記窒化処理層の深さが該窒化処理層の最表面から75μm以下であることを特徴とするものである。
【0011】
本発明のリングローリング用マンドレルは、好適な態様において、前記窒化処理層の深さが該窒化処理層の最表面から50μm未満である。
【0012】
本発明のリングローリング用マンドレルは、好適な態様において、光学顕微鏡レベル(400倍)の目視にて前記窒化処理層中に前記白層部が認められない
【0013】
【発明の実施の形態】
本発明のリングローリング用マンドレルは、粗材に接触する成形部位の表面に、安価で簡便な表面処理たる窒化処理により窒化処理層が形成されており、表面硬度が向上している。また、この窒化処理層には、窒化処理層形成時の歪みに基づく圧縮残留応力が存在しており、その分だけ引張強度が向上している。このため、疲労強度及び耐摩耗性が向上し、ひいてはマンドレル寿命が向上する。
【0014】
本発明のリングローリング用マンドレルは、形状及び大きさは特に限定されず、例えば、リング状粗材に接触する成形部位に環状の係合凹部(インプレッション部)又は係合凸部をもつものとすることができる。この係合凹部や係合凸部は、該係合凹部又は係合凸部に係合可能な粗材の被係合部と係合することにより、鍛造成形時にマンドレルと粗材との軸方向の相対移動を規制するためのものである。また、係合凹部とした場合は、この係合凹部内に粗材を納めることにより、該粗材の軸方向長さを規制しつつ成形することができる。この係合凹部や係合凸部の形状及び大きさは特に限定されない。
【0015】
本発明のリングローリング用マンドレルのマンドレル母材の材質としては、特に限定されず、従来と同様、冷間ダイス鋼等とすることができるが、特に靭性の高いSKD11改良鋼やマトリックスハイス等を用いることが好ましい。マンドレル母材の靭性が高ければ、それだけ損傷を抑えるのに有利となるからである。なお、本発明では窒化処理層の形成により表面硬化させることから、窒化処理により硬化させうるべく、Al、Cr、Mo、TiやV等から選ばれる少なくとも一種の窒化促進元素が添加されたマンドレル部材を用いる必要がある。
【0016】
また、マンドレル母材の硬度は、50〜67HRC(ロックウエル Cスケール硬さ)とすることが好ましく、55〜62HRCとすることが特に好ましい。マンドレル母材の硬度が低すぎると耐摩耗性が低下し、粗材との接触による傷が発生し易くなり、一方高すぎると靭性不足により脆くなる。
【0017】
本発明のリングローリング用マンドレルには、粗材と接触するマンドレル母材の成形部位の表面に窒化処理層が形成されるとともに、この窒化処理層が形成された成形部位の表面に、少なくとも窒化処理層よりも硬度の高い硬質コーティング皮膜が形成されている。
【0018】
この窒化処理層中には一般に白層部の存在が認められる。この白層部は、他の部分よりも硬くて脆い窒素化合物(ε−Fe2 - 3 (CN)、γ−Fe4 N)である。このため、窒化処理層中に白層部が存在すると、この白層部分から亀裂が発生し易く、また亀裂伝播を抑制するのに不利となる。したがって、窒化処理層中に存在する白層部の量は少ないほど好ましく、ほとんど又は全く無いことがより好ましい。具体的には、光学顕微鏡レベル(400倍)の目視にて窒化処理層中に白層部が認められないことが好ましい。より具体的には、本発明のリングローリング用マンドレルは、窒化処理層の最表面から200μm深さまでの範囲において、白層部の占める面積率が5.0%以下である3.0%以下であることがより好ましい。
【0019】
また、窒化処理層が形成された成形部位の表面に硬質コーティング皮膜を形成する場合の窒化処理層の深さは、マンドレル母材の最表面から10〜100μmとすることが好ましく、25〜75μmとすることがより好ましい。窒化処理層の深さが浅すぎると、処理時のバラツキにより略均一な窒化処理層の製造が困難となる。一方、窒化処理層はマンドレル母材と比較してき裂伝播速度が速いことから、窒化処理層に一旦き裂が発生すると窒化処理層の深さ方向の全体にき裂が伝播し易い。このため、窒化処理層が深すぎると、窒化処理層に一旦き裂が発生すれば、き裂伝播により大きな(より深い)き裂に発展してしまう。したがって、き裂伝播を抑制する観点から、本発明のリングローリング用マンドレルの窒化処理層の深さを窒化処理層の最表面から75μm以下とする。50μm未満とすることがより好ましい。
【0020】
さらに、窒化処理層の硬さは、特に限定はされないが、600〜1300HV(ビッカース硬さ)程度とすることができる。窒化処理層の硬さが低すぎると、窒化処理層を形成することによる疲労強度及び耐摩耗性向上の効果が期待できなくなり、一方窒化処理層の硬さを必要以上に高くしても、上記効果の向上は期待できず、亀裂の発生、伝播が助長される。したがって、窒化処理層の硬さは700〜1200HVすることが好ましく、800〜1100HVとすることがより好ましい。
【0021】
マンドレル母材の表面部に上記窒化処理層を形成するための窒化処理方法としては特に限定されず、NH3 ガスを用いる通常の窒化処理の他、N2 及びH2 を用いるイオン窒化処理、NH3 ガス及びH2 ガスを用いるラジカル窒化処理やシアン基浴を用いる塩浴窒化処理等を利用することができる。
【0022】
また、窒化処理層における白層部を減らす又は無くすには、例えばガス混合比や加熱温度・時間を適宜調整することにより行うことができる。例えば、NH3 ガスを用いる通常の窒化処理の場合は処理温度:400〜500℃程度、処理時間:1〜5時間程度とすることができ、またイオン窒化処理の場合は処理温度:400〜500℃程度、処理時間:1〜5時間程度とすることができ、またラジカル窒化処理の場合は処理温度:400〜500℃程度、処理時間:2〜10時間程度とすることができる。
【0023】
上述のとおり、窒化処理層は、圧縮残留応力が存在する分だけ引張強度が向上しているが、マンドレル母材と比較してき裂伝播速度が速いことから、窒化処理層に一旦き裂が発生すると窒化処理層の深さ方向の全体にき裂が伝播し易い。このため、窒化処理層が表面に形成されたリングローリング用マンドレルは、粗材との接触により窒化処理層に一旦亀裂が発生すると、疲労強度が低下し易い傾向にある。
【0024】
そこで、窒化処理層が形成されたマンドレル母材の成形部位の表面に、少なくとも該窒化処理層よりも硬度の高い硬質コーティング皮膜を形成する。
【0025】
この硬質コーティング皮膜は、窒化処理層の保護膜として機能することにより、窒化処理層に亀裂が発生することを効果的に抑制することができる。また、硬質コーティング皮膜の形成時に歪みに基づく圧縮残留応力が窒化処理層に付与されることから、窒化処理層の引張強度がさらに向上している。さらに、硬質コーティング皮膜自体が高硬度であることから、粗材との接触により硬質コーティング皮膜自身に亀裂が発生することも効果的に抑制される。したがって、窒化処理層が形成された成形部位の表面にさらに硬質コーティング皮膜が形成されたリングローリング用マンドレルは、粗材との接触により硬質コーティング皮膜又は窒化処理層のいずれかに亀裂が発生することが効果的に抑制されるので、かかる亀裂の発生に起因する疲労強度の低下を効果的に抑制することが可能となる。
【0026】
上記硬質コーティング皮膜は、少なくとも窒化処理層よりも高硬度であればよいが、窒化処理層の保護膜として効果的に機能しうるとともに、硬質コーティング皮膜自身に亀裂が発生することを効果的に抑制しうるように、窒化処理層よりも高硬度としつつ、1000〜2500HV程度の硬さとすることが好ましく、1300〜2200HVとすることがより好ましい。なお、硬質コーティング皮膜の硬さと窒化処理層の硬さとの差が大きすぎると、両者の界面で亀裂が発生し易くなり、疲労強度の低下につながることから、両者の硬さの差は200〜1200HV程度とすることが好ましい。
【0027】
また、上記硬質コーティング皮膜の厚さが薄すぎると、窒化処理層の保護膜としての機能を効果的に発揮することができない。一方、硬質コーティング皮膜の厚さが厚すぎると、剥離し易くなるとともに、硬質コーティング皮膜と窒化処理層との界面で亀裂が発生し易くなり、疲労強度の低下につながる。したがって、硬質コーティング皮膜の厚さは、2〜8μmとすることが好ましく、3〜5μmとすることがより好ましい。
【0028】
上記硬質コーティング皮膜の種類は、窒化処理層よりも硬いものであれば特に限定されない。例えば、TiN(硬さ:1700〜2400HV)、CrN(硬さ:1700〜2200HV)、TiAlN(硬さ:2100〜2900HV)やTiCrN(硬さ:1800〜2100HV)を採用することができる。
【0029】
この硬質コーティング皮膜は、PVD(物理蒸着)法により形成することができる。なお、高温処理を伴うCVD法では、窒化処理層が高温下で軟化するため、硬質コーティング皮膜の形成方法としてCVD法を採用することはできない。
【0031】
ここに、マンドレル母材の成形部位の表面部に窒化処理層を形成することなく、そのまま硬質コーティング皮膜を形成する場合と、窒化処理層が形成された成形部位の表面にさらに硬質コーティング皮膜を形成した場合とにおける作用効果の違いについて、以下説明する。
【0032】
まず、窒化処理層が形成されたマンドレル母材の成形部位の表面に硬質コーティング皮膜を形成した場合は、膜の外部応力に対する変形量が小さく、無処理の成形部位の表面に硬質コーティング皮膜を形成した場合と比較して、硬質コーティング皮膜の耐剥離性が向上する。すなわち、窒化処理層は、硬質コーティング皮膜とマンドレル母材との接合性を高めるという下地層的な役割を果たす。
【0033】
また、無処理のマンドレル母材に硬質コーティング皮膜を形成した場合は、硬質コーティング皮膜とマンドレル母材との硬度差が大きく、両者間の界面で亀裂が発生し易くなる。このため、後述する実施例で示すように、粗材との接触がない場合における曲げ疲労強度が、硬質コーティング皮膜も窒化処理層も形成されていない無処理のマンドレルよりも低くなる。これに対し、窒化処理層が形成されたマンドレル母材の表面に硬質コーティング皮膜を形成した場合は、窒化処理層による硬度のアップ分だけ、硬質コーティング皮膜とマンドレル母材との硬度差が小さくなり、その分上記界面における亀裂の発生を抑えることができる。このため、硬質コーティング皮膜の形成に伴う上記曲げ疲労強度の低下を、無処理のマンドレル母材に硬質コーティング皮膜を形成する場合よりも抑えることが可能となる。
【0034】
また、粗材との接触がある場合における曲げ疲労強度についても、無処理のマンドレル母材に硬質コーティング皮膜を形成した場合は、粗材との接触がない場合と比較して曲げ疲労強度が若干下がるのに対して、窒化処理層が形成されたマンドレル母材に硬質コーティング皮膜を形成した場合は、粗材との接触がない場合における曲げ疲労強度とほぼ同等の値を維持する。このような違いが発生するのは、無処理のマンドレル母材に硬質コーティング皮膜を形成した場合は、粗材との接触の影響により硬質コーティング皮膜の分断や剥離が起こるのに対し、窒化処理層が形成されたマンドレル母材に硬質コーティング皮膜を形成した場合は、膜の破壊が抑制されるためと考えられる。
【0035】
本発明のリングローリング用マンドレルは、冷間、温間又は熱間鍛造のいずれにも適用可能であるが、成形荷重が比較的大きく、マンドレルの破損が問題となり易い冷間鍛造に特に効果的に適用することができる。
【0036】
参考例および実施例】
以下、本発明のリングローリング用マンドレルの参考例および実施例について、図面を参照しつつ具体的に説明する。
【0037】
参考例
参考例は、図1に示すように、マンドレル1、成形ロール2及び一対の受けロール3、3を用いて、リング状粗材4をリングローリングするものである。
【0038】
このマンドレル1は、軸部11と、外径が60mmの円筒部12とからなり、円筒部12を構成するマンドレル母材が冷間ダイス鋼よりなる。なお、この冷間ダイス鋼は8%Cr系SKD11改良鋼(硬さ:60HRC)である。
【0039】
そして、円筒部12の軸方向略中央部には、深さ7mm、軸方向長さ30mmのインプレッション部(環状の係合凹部)13が凹設されている。
【0040】
また、円筒部12の外表面全体における表面部には窒化処理層14が形成されている(図2参照)。この窒化処理層14は、最表面からの深さが50μmであり、また、窒化処理層14の最表面から200μm深さまでの範囲において、白層部(図示せず)の占める面積率が0%である。
【0041】
なお、窒化処理層14の深さは、マイクロビッカース硬度測定機を用いて、窒化処理層14の最表面からの硬さを測定し、マンドレル母材の硬さと同一硬さになる箇所を窒化処理層14の深さとして求めたものである。
【0042】
また、面積率の測定は、最表面を含む200μm×200μmの測定範囲において、光学顕微鏡の400倍で観察し(観察の際にビクラールでエッチングして白層部を判別できるようにする)、画像処理装置を用いて白層部の占める面積率を求めることにより行った。
【0043】
上記窒化処理層14は、NH3 ガス及びH2 ガスを用いるラジカル窒化装置により形成した。このときの処理条件は、温度:400〜500℃(本参考例では440℃)及び時間:2〜10時間(本参考例では4時間)とした。
【0044】
成形ロール2は、外径200mmの円筒状のもので冷間ダイス鋼よりなる。また、この成形ロール2の軸方向略中央部にも、マンドレル1の上記インプレッション部13と同様のインプレッション部21が凹設されている。
【0045】
各受けロール3、3は、成形時にマンドレル1に作用する荷重を受けるためのもので、成形ロール2とは反対側でマンドレル1の両端側にそれぞれ配設されている。
【0046】
なお、成形ロール2は図示しない回転駆動手段により回転駆動可能とされており、またマンドレル1は図示しない駆動手段により成形ロール2に対して近接・離反する方向に往復動可能とされている。
【0047】
以下、リングローリングする様子について説明する。
【0048】
まず、鋼材(S45)から外径115mm、内径70mm、軸方向長さ30mmのリング形状に鍛造成形し、その後焼きならし処理を施してリング状粗材4とした。
【0049】
そして、このリング状粗材4の孔内にマンドレル1を挿入するとともに、リング状粗材4の外側に成形ロール2を配設した。このとき、マンドレル1及び成形ロール2の各インプレッション部13及び21にリング状粗材4を係合させて、リング状粗材4とマンドレル1及び成形ロール2との軸方向の相対移動が規制されるようにした。また、成形ロール2とは反対側の位置で、マンドレル1の円筒部12両端に受けロール3、3をそれぞれ配設した。
【0050】
この状態で、図示しない回転駆動手段により、マンドレル1と成形ロール2とを互いに逆方向に回転させながら、図示しない駆動手段によりマンドレル1を成形ロール2に対して近接する方向に移動させた。これにより、リング状粗材4を周方向に引き伸ばすように成形しながら、リング状粗材4の半径方向厚み又は横断面積を減らして大きな直径のリングに成形した。
【0051】
なお、鍛造条件は、成形ロール回転数:150〜200rpm、圧延量:0.1〜0.3mm/rev、外径拡管率:約1.4とした。
【0052】
(評価)
上記リングローリング用マンドレル1の寿命を評価した。これは、マンドレル1が折損に至るまでのリングの生産個数(マンドレル命数)を調べることにより、行った。
【0053】
また、比較のため、窒化処理層14を形成しないこと以外は、上記参考例と同様の比較例についても同様の評価をした。
【0054】
その結果、マンドレル表面に窒化処理層14が形成されていない比較例ではマンドレル命数が12000個程度であったのに対し、深さ及び白層部面積率が所定の窒化処理層14が形成された本参考例ではマンドレル命数が60000個程度に向上した。
【0055】
(白層部の面積率とマンドレル命数との関係)
上記参考例において、ラジカル窒化装置の代わりにイオン窒化処理装置を用い、N2 :H2 比を1:1〜1:4、処理温度を400〜550℃、処理時間を1〜30時間のそれぞれの範囲で種々変更することにより、窒化処理層14の最表面から200μm深さまでにおいて、白層部の占める面積率を種々変更し、この面積率とマンドレル命数との関係を調べた。なお、このときの窒化処理層14の最表面からの深さは50μmである。
【0056】
その結果を図3に示すように、最表面から200μm深さまでにおける白層部の面積率を5%以下とすることにより、窒化処理層14が形成されていない上記比較例におけるマンドレル命数(12000個程度)を超え、また面積率が3%以下となれば寿命が格段と向上することがわかる。
【0057】
なお、白層部の面積率が5%を超えると、窒化処理層14を形成したにもかかわらず、窒化処理層が形成されていない比較例よりも寿命が低下するのは、硬くて脆い白層部からき裂が発生するとともに、き裂伝播が白層部で促進されたためと考えられる。
【0058】
(窒化処理層の深さとマンドレル命数との関係)
上記参考例において、ラジカル窒化処理の処理条件を温度:400〜550℃、時間:2〜20時間のそれぞれの範囲で種々変更することにより、窒化処理層14の最表面からの深さを種々変更し、この窒化処理層14の深さとマンドレル命数との関係を調べた。
【0059】
その結果を図4に示すように、窒化処理層14の深さを170μm以下とすることにより、窒化処理層14が形成されていない上記比較例におけるマンドレル命数(12000個程度)を超え、また深さが20〜120μmの範囲でマンドレル命数が格段と向上し、さらに深さが50〜100μmの範囲でマンドレル命数がほぼ最高値を示すことがわかる。
【0060】
なお、窒化処理層14の深さが160μm程度を超えると、窒化処理層14を形成したにもかかわらず、窒化処理層が形成されていない比較例よりも寿命が低下するのは、マンドレル母材よりも硬くて脆い窒化処理層14におけるき裂伝播の促進効果に因るものと考えられる。
【0061】
実施例
本実施例は、図5に示すように、前記参考例のマンドレル1に対して、硬質コーティング皮膜15をさらに形成したものである。
【0062】
すなわち、このマンドレル1は、表面部に窒化処理層14が形成された円筒部12の外表面全体に、硬質コーティング皮膜15がさらに形成されている。
【0063】
この硬質コーティング皮膜15は、TiN(硬度:2000HV)よりなる膜厚3μmの皮膜で、PVD法により形成した。なお、PVD法による処理条件は、真空槽内で460℃、2時間保持とした。
【0064】
その他の構成は、前記参考例と同様である。
【0065】
したがって、本実施例のマンドレル1は、窒化処理層14の上にさらに硬質コーティング皮膜15が形成されていることから、マンドレル1の寿命が大幅に向上する。また、硬質コーティング皮膜15の存在により、マンドレル1の摩耗が軽減するとともに、マンドレル1及びリング状粗材4間の摩擦が軽減することから、リング成形品の品質を向上させることも可能となる。
【0066】
(ワーク接触がない場合における疲労強度の評価)
粉末ハイス鋼を平行部φ6mmの試験片形状に加工後、熱処理を施して、母材硬さ61〜63HRCとした。そして、仕上げ加工を施して、表面処理無しの試料No.1の試験片とした。
【0067】
上記試料No.1の試験片の表面に、TiNよりなる厚さ3μmの硬質コーティング皮膜をPVD法(処理条件460℃、2時間保持)により形成して、硬質コーティング皮膜のみが形成された試料No.2の試験片とした。
【0068】
上記試料No.1の試験片の表面部に、NH3 ガス及びH2 ガスを用いるラジカル窒化装置を用いて(処理温度:480℃、処理時間:6時間)、深さ65μmの白層を含まない窒化処理層を形成して、窒化処理層のみが形成された試料No.3の試験片とした。
【0069】
上記試料No.3の試験片の表面に、TiNよりなる厚さ3μmの硬質コーティング皮膜をPVD法により形成して、窒化処理層及び硬質コーティングが形成された試料No.4の試験片とした。
【0070】
そして、上記試料No.1〜4の各試験片について、ワーク接触がない場合における曲げ疲労強度を評価した。これは、回転速度1500rpmの回転曲げ疲労試験機を用いて、106 時間後の疲労強度を測定することにより行った。その結果を図6に示す。
【0071】
図6から明らかなように、表面処理無しの試料No.1の試験片に硬質コーティング皮膜を形成することにより、疲労強度が低下することがわかる。
【0072】
また、表面処理無しの試料No.1の試験片に窒化処理層を形成することにより、疲労強度が向上する一方で、窒化処理層が形成された試料No.3の試験片に硬質コーティング皮膜を形成しても、疲労強度が少ししか低下しないことがわかる。
【0073】
(ワーク接触がある場合における疲労強度の評価)
前記試料No.1〜4の各試験片について、ワーク接触がある場合における曲げ疲労強度を評価した。これは、回転速度1500rpmの回転曲げ疲労試験機を用いて、S30Cの板を試験片に押し付けながら試験を行い、106 時間後の疲労強度を測定することにより行った。その結果を図7に示す。
【0074】
図7から明らかなように、表面処理無しの試料No.1の試験片は、ワーク接触の影響が大きく、ワーク接触がない場合における疲労強度よりも大幅に低下した。
【0075】
また、硬質コーティング皮膜のみを形成した試料No.2の試験片は、無処理の試料No.1ほどではないがワーク接触による影響があり、ワーク接触がない場合における疲労強度よりも低下した。
【0076】
これに対し、窒化処理層及び硬質コーティング皮膜を形成した試料No.4の試験片は、ワーク接触による影響がほとんどなく、ワーク接触がない場合における疲労強度とほぼ同等の疲労強度だった。
【0077】
(硬質コーティング皮膜を形成した場合における窒化処理層の深さと疲労強度との関係)
前記試料No.4、すなわち窒化処理層及び硬質コーティング皮膜が形成された試験片を作成する際、窒化処理層形成時におけるラジカル窒化処理の処理条件を温度400〜550℃、時間:2〜20時間のそれぞれの範囲で種々変更することにより、窒化処理層の最表面からの深さを種々変更し、硬質コーティング皮膜を形成した場合における窒化処理層の深さと疲労強度との関係を調べた。
【0078】
なお、試験方法は、前述のワーク接触がある場合における疲労強度の試験方法と同様である。
【0079】
結果を図8に示すように、窒化処理層及び硬質コーティング皮膜を形成した場合も、窒化処理層の深さが深すぎると、疲労強度が低下することがわかる。これは、窒化処理層が深くなると、窒化処理層と硬質コーティング皮膜との界面に一旦亀裂が発生すれことにより、より大きな亀裂に発展してしまうためと考えられる。
【0080】
また、図8から、窒化処理層の深さは、100μmとすることが好ましく、75μmとすることがより好ましいことがわかる。
【0081】
(マンドレル命数の評価)
前記参考例の窒化処理層14のみを形成したマンドレル1と、前記実施例の窒化処理層14及び硬質コーティング皮膜15を形成したマンドレル1とにおいて、寿命を比較評価した。これは、マンドレル1が折損に至るまでのリングの生産個数(マンドレル命数)を調べることにより、行った。
【0082】
その結果、窒化処理層14のみを形成した参考例のマンドレル1ではマンドレル命数が60,000個であったのに対し、窒化処理層14及び硬質コーティング皮膜15を形成した実施例のマンドレル1ではマンドレル命数が400,000個程度に向上した。
【0083】
【発明の効果】
以上詳述したように本発明のリングローリング用マンドレルは、安価で簡便な表面処理たる窒化処理により窒化処理層が形成されているので、コストの高騰を抑えつつ、マンドレル寿命を向上させることができる。
【0084】
特に、窒化処理層における白層部の面積率や深さを特定の範囲としているので、マンドレル寿命を格段と向上させることができる。
【0085】
また、窒化処理層の上にさらに硬質コーティング皮膜が形成されているので、マンドレル寿命を格段と向上させることができるとともに、リング成形品の品質性の向上にも貢献できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 参考例のマンドレルを用いてリングローリングする様子を模式的に示す断面図である。
【図2】 参考例のマンドレルの要部を模式的に示す部分断面図である。
【図3】 窒化処理層の最表面から200μm深さまでにおいて、白層部が占める面積率とマンドレル寿命との関係を示すグラフである。
【図4】 窒化処理層の深さとマンドレル寿命との関係を示すグラフである。
【図5】 本実施例のマンドレルの要部を模式的に示す部分断面図である。
【図6】 ワーク接触がない場合における疲労強度の評価結果を示す図である。
【図7】 ワーク接触がある場合における疲労強度の評価結果を示す図である。
【図8】 硬質コーティング皮膜を形成した場合における窒化処理層の深さと疲労強度との関係を示すグラフである。
【符号の説明】
1…マンドレル
2…成形ロール
3…受けロール
4…リング状粗材
13…インプレッション部(係合凹部)
14…窒化処理層
15…硬質コーティング皮膜

Claims (3)

  1. リング状粗材の孔内に挿入され、該粗材の外面に配設される成形ロールとで該粗材を回転鍛造するリングローリング用マンドレルにおいて、
    上記粗材に接触する成形部位の表面に窒化処理層が形成されるとともに、該窒化処理層の表面に、少なくとも該窒化処理層よりも硬度の高い硬質コーティング皮膜が形成されており、
    前記窒化処理層の最表面から200μm深さまでの範囲において、白層部の占める面積率が5.0%以下であり、
    前記窒化処理層の深さが該窒化処理層の最表面から75μm以下であることを特徴とするリングローリング用マンドレル。
  2. 前記窒化処理層の深さは該窒化処理層の最表面から50μm未満であることを特徴とする請求項1記載のリングローリング用マンドレル。
  3. 光学顕微鏡レベル(400倍)の目視にて前記窒化処理層中に前記白層部が認められないことを特徴とする請求項1又は2記載のリングローリング用マンドレル。
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