JP4205403B2 - ポリ乳酸系樹脂組成物、成形品及びポリエステル樹脂用可塑剤 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、ポリ乳酸系樹脂組成物及びその成形品、並びにポリエステル樹脂用可塑剤に関する。さらに詳しくは柔軟性、安全性に優れ、さらには使用後、分解性の優れたポリ乳酸系樹脂組成物及びその成形品、並びにポリエステル樹脂用可塑剤に関する。
【0002】
【従来の技術】
一般的に、柔軟性、耐熱性、耐水性に優れている樹脂としてポリエチレン、ポリプロピレン、軟質ポリ塩化ビニル、ポリエチレンテレフタレートなどの樹脂が挙げられ、ゴミ袋、包装袋などに使用されている。しかしながら、これらの樹脂は使用後廃棄する際、ゴミの量を増すうえに、自然環境下で殆ど分解されないために、埋設処理しても、半永久的に地中に残留する。また投棄されたプラスチック類により、景観が損なわれ、海洋生物の生活環境が破壊されるなどの問題が起こっている。
【0003】
これに対し、熱可塑性樹脂で生分解性を有するポリマーとして、ポリ乳酸、乳酸と他の脂肪族ヒドロキシカルボン酸とのコポリマー、脂肪族多価アルコールと脂肪族多価カルボン酸から誘導されるポリエステルなどが開発されている。
【0004】
これらの生分解性を有するポリマーは、土壌や海水中に置かれた場合、湿った環境下では数週間で分解を始め、約1年から数年で消滅する。さらに、分解生成物は、二酸化炭素と水になるという特性を有している。特にポリ乳酸は、近年、原料のL−乳酸が発酵法により大量且つ安価に製造されるようになってきたことや、堆肥中での分解速度が速く、カビに対する抵抗性、食品に対する耐着臭性や耐着色性など、優れた特徴を有することより、その利用分野の拡大が期待されている。
【0005】
しかしながら、ポリ乳酸は剛性が高く、フィルムや包装材などの柔軟性が要求される用途には適切な樹脂とは言い難い。
【0006】
一般に、樹脂を軟質化する技術として、▲1▼可塑剤の添加、▲2▼コポリマー化、▲3▼軟質ポリマーのブレンドなどの方法が知られている。しかしながら、▲1▼や▲2▼の方法では、十分な柔軟性を付与できたとしても、樹脂組成物のガラス転移温度が低下し、その結果、通常の環境温度によって結晶化、硬質化するなどの物性変化を生じたり、可塑剤を添加する方法の場合は、さらに可塑剤がブリードアウトするなどの問題が生じる為、実用化するには実質上幾つもの問題がある。さらに、可塑剤によっては、安全性が十分でないものもあり、特に食品包装材としての使用には制限がある場合が多い。
【0007】
ポリ乳酸は、塩化ビニル樹脂と比べて、相溶する良好な可塑剤が限定されており、例えば、アセチルクエン酸トリブチルが挙げらる。(例えば、特許文献1参照)。しかし添加量に対する可塑化効果が十分とは言えず、また、安全性においても用途によっては限定される場合がある。
【0008】
一方、▲3▼の方法では、本課題の一つである生分解性を考慮すると、ブレンドする樹脂としては柔軟性を有する生分解性樹脂に限定される。この様な樹脂としては、例えばポリブチレンサクシネート、ポリエチレンサクシネート、ポリカプロラクトン等が挙げられる。(例えば特許文献2、3参照)
【0009】
しかしながら、この方法ではポリ乳酸系樹脂組成物に十分な柔軟性(弾性率が1000MPa以下)を付与するには多量(例えば、ポリブチレンサクシネートの場合は、60重量部以上)に添加する必要があり、その結果、ポリ乳酸の前記したような特徴を損なってしまう。
【0010】
このように、ポリ乳酸の特徴を損なうことなく、柔軟性を向上させることは、従来の技術では困難なのが実情であった。
【0011】
【特許文献1】
特開平8−34913号公報
【特許文献2】
特開平8−245866号公報
【特許文献3】
特開平9−111107号公報
【0012】
【発明が解決しようとする課題】
そこで、本発明の目的は、上記従来技術の問題点を解決し、ポリ乳酸系樹脂との相溶性及び可塑化効率に優れ、成形品の透明性の低下、ブリードアウトなどの問題のない化合物を含み、柔軟で強靭な成形品が得られるポリ乳酸系樹脂組成物、該組成物を含む成形品、並びにポリエステル樹脂用可塑剤を提供することにある。
【0013】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、ポリ乳酸系樹脂について鋭意検討した結果、特定の化合物が、ポリ乳酸系樹脂に対し相溶性が良好で、少量でも十分な可塑化効果があることを見いだし、また該化合物を添加することで、透明性を損なうことなく、しかも安全性にも優れた上記課題を満足するポリ乳酸系樹脂組成物が得られることを見い出し本発明を完成するに至った。
【0014】
すなわち、本発明は、ポリ乳酸系樹脂と、下記一般式(1)、(2)又は(3)で示される化合物のうちの少なくとも一種を、ポリ乳酸系樹脂100重量部に対し1〜100重量部含むことを特徴とするポリ乳酸系樹脂組成物を提供する。
【0015】
【化7】
【0016】
(式中、k及びlはそれぞれに1〜20の数であり、R1は炭素数2〜30の2価の基であり、R2及びR3はそれぞれに炭素数2〜10のアシル基である。)
【0017】
【化8】
【0018】
(式中、m、n及びpはそれぞれに1〜20の数であり、R4は炭素数3〜10の3価の基であり、R5、R6及びR7はそれぞれに炭素数2〜10のアシル基である。)
【0019】
【化9】
【0020】
(式中、q、r、s及びtはそれぞれに1〜20の数であり、R8は炭素数4〜10の4価の基であり、R9、R1 0、R11及びR12はそれぞれに炭素数2〜10のアシル基である。)
【0021】
また、本発明は上記ポリ乳酸系樹脂組成物を含む成形品、並びに上記一般式(1)、(2)又は(3)で示される化合物のうちの少なくとも一種を含むことを特徴とするポリエステル樹脂用可塑剤を提供する。
【0022】
【発明の実施の形態】
以下に本発明の内容を詳細に説明する。
【0023】
本発明のポリ乳酸系樹脂組成物において、ポリ乳酸系樹脂は、乳酸ホモポリマーの他、乳酸コポリマー、又はこれらと他のポリマーとのブレンドポリマーを含むものである。
【0024】
上記ポリ乳酸系樹脂におけるL−乳酸単位、D−乳酸単位の構成モル比L/Dは100/0〜0/100のいずれであってもよいが、高い融点を得るにはL−乳酸あるいはD−乳酸のいずれかの単位を90モル%以上、さらに高い融点を得るにはL−乳酸あるいはD−乳酸のいずれかの単位を95モル%以上含むことが好ましい。特に、高結晶性という点で、L−乳酸が多い方が好ましい。
【0025】
上記ポリ乳酸系樹脂における相対粘度(ηrel)は2.5〜4.2であることが成形性の面から好ましく、特に2.7〜4.0であることが好ましい。
【0026】
乳酸コポリマーは、乳酸モノマー又はラクチドと共重合可能な他の成分とが共重合されたものである。このような他の成分としては、2個以上のエステル結合形成性の官能基を持つジカルボン酸、多価アルコール、ヒドロキシカルボン酸、ラクトン等、及びこれらの種々の構成成分より成る各種ポリエステル、各種ポリエーテル、各種ポリカーボネート等が挙げられる。
【0027】
上記ジカルボン酸としては、コハク酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、テレフタル酸、イソフタル酸等が挙げられる。
【0028】
上記多価アルコールとしては、ビスフェノールにエチレンオキサイドを付加反応させたものなどの芳香族多価アルコール、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、ヘキサンジオール、オクタンジオール、グリセリン、ソルビタン、トリメチロールプロパン、ネオペンチルグリコールなどの脂肪族多価アルコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールなどのエーテルグリコールなどが挙げられる。
【0029】
上記ヒドロキシカルボン酸としては、グリコール酸、ヒドロキシブチルカルボン酸などが挙げられる。
【0030】
上記ラクトンとしては、グリコリド、ε−カプロラクトングリコリド、ε−カプロラクトン、β−プロピオラクトン、δ−ブチロラクトン、β−又はγ−ブチロラクトン、ピバロラクトン、δ−バレロラクトンなど挙げられる。
【0031】
上記ポリ乳酸系樹脂においてブレンドできる他のポリマーとしては、2個以上のエステル結合形成性の官能基を持つジカルボン酸、多価アルコール、ヒドロキシカルボン酸、ラクトンなど、及びこれらの種々の構成成分より成る各種ポリエステル、各種ポリエーテル、各種ポリカーボネートなどが挙げられる。
【0032】
上記ジカルボン酸としては、コハク酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、テレフタル酸、イソフタル酸などが挙げられる。
【0033】
上記多価アルコールとしては、ビスフェノールにエチレンオキサイドを付加反応させたものなどの芳香族多価アルコール、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、ヘキサンジオール、オクタンジオール、グリセリン、ソルビタン、トリメチロールプロパン、ネオペンチルグリコールなどの脂肪族多価アルコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールなどのエーテルグリコールなどが挙げられる。
【0034】
上記ヒドロキシカルボン酸としては、グリコール酸、ヒドロキシブチルカルボン酸などが挙げられる。
【0035】
上記ラクトンとしては、グリコリド、ε−カプロラクトングリコリド、ε−カプロラクトン、β−プロピオラクトン、δ−ブチロラクトン、β−又はγ−ブチロラクトン、ピバロラクトン、δ−バレロラクトンなど挙げられる。
【0036】
ポリ乳酸は従来公知の方法で合成することができる。すなわち、特開平7−33861号公報、特開昭59−96123号公報、高分子討論会予稿集44巻3198−3199頁に記載のような乳酸からの直接脱水縮合、又は乳酸環状二量体ラクチドの開環重合によって合成することができる。開環重合では、より高分子量のものを得ることができる。
【0037】
直接脱水縮合を行なう場合、L−乳酸、D−乳酸、DL−乳酸、又はこれらの混合物のいずれの乳酸を用いても良い。また、開環重合を行なう場合においても、L−ラクチド、D−ラクチド、DL−ラクチド、メソ−ラクチド又はこれらの混合物のいずれのラクチドを用いても良い。
【0038】
ラクチドの合成、精製及び重合操作は、例えば米国特許4057537号明細書、Polymer Bulletin, 14, 491-495(1985)、及びMakromol Chem., 187, 1611-1628(1986)などの文献に様々に記載されている。
【0039】
この重合反応に用いる触媒は特に限定されるものではないが、公知の乳酸重合用触媒を用いることができる。例えば、乳酸スズ、酒石酸スズ、ジカプリル酸スズ、ジラウリン酸スズ、ジパルミチン酸スズ、ジステアリン酸スズ、ジオレイン酸スズ、α−ナフトエ酸スズ、β−ナフトエ酸スズ、オクチル酸スズなどの有機スズ系化合物、粉末スズ、酸化スズ;亜鉛末、ハロゲン化亜鉛、酸化亜鉛、有機亜鉛系化合物;テトラプロピルチタネートなどのチタン系化合物;ジルコニウムイソプロポキシドなどのジルコニウム系化合物;三酸化アンチモンなどのアンチモン系化合物;酸化ビスマス(III)などのビスマス系化合物;酸化アルミニウム、アルミニウムイソプロポキシドなどのアルミニウム化合物などを挙げることができる。これらの中でも、スズ又はスズ化合物からなる触媒が活性の点から特に好ましい。これら触媒の使用量は、一般にラクチド100重量部に対して0.001〜5重量部程度である。
【0040】
重合反応は、上記触媒の存在下、触媒種によっても異なるが通常100〜200℃の温度で行うことができる。また、特開平7−247345号公報に記載のような2段階重合を行うことも好ましい。
【0041】
本発明においては、ポリ乳酸中の残存モノマー(ラクチド)含有量は1重量%以下であることが望ましい。モノマー(ラクチド)含有量が1重量%以下の場合に、得られる熱可塑性樹脂本来の物性が充分発揮されるからである。
【0042】
本発明のポリ乳酸系樹脂組成物は、下記一般式(1)、(2)又は(3)で示される化合物のうちの少なくとも一種を含むものである。
【0043】
【化10】
【0044】
一般式(1)において、k及びlはそれぞれに1〜20の数であるが、特に好ましくは1〜10である。これらが20より大きいと可塑化効率が低くなり、樹脂に対して必要な可塑剤量が多くなりポリ乳酸のもつ特性が損なわれるおそれがある。
【0045】
R1は炭素数2〜30の2価の基である。R1は基中に窒素、酸素、硫黄原子などを含んでいてもよく、その場合、基中の総炭素数が2〜30であれば特に制限はない。R1は、好ましくは窒素、酸素及び硫黄原子から選択されるヘテロ原子を含んでいてもよい、飽和又は不飽和の脂肪族、脂環式、又は芳香族の、炭素数2〜30の2価の炭化水素基である。このような2価の基としては、例えば下記式
【0046】
【化11】
【0047】
の基などが挙げられる。なかでも、下記式
【0048】
【化12】
【0049】
の基が挙げられる。
【0050】
また、R2及びR3はそれぞれに炭素数2〜10のアシル基である。本発明において、炭素数2〜10のアシル基としては、炭素数2〜10の、−O−又は−(C=O)−を含んでいてもよいアシル基、特に−O−又は−(C=O)−を含んでいてもよい、炭素数2〜10の、アルキルカルボニル(アセチル、プロピオニル、ブチリル、イソブチリル、2−メチルブチリル、2−エチルブチリル、3,3−ジメチルブチリル、ペンタノイル、4−メチルペンタノイル、ヘキサノイル、2−メチルヘキサノイル、2−エチルヘキサノイル、ヘプタノイル、オクタノイル、ノナノイル、デカノイル、イソバレリル、ピバロイルなどの、飽和カルボン酸から誘導されるアシル基;メトキシアセチル、メトキシプロピオニル、エトキシアセチルなどの、−O−を含むアシル基;レブリノイル、ピルビノイル、4−アセチルブチリノイル、2−オキソペンタノイル、7−オキソノナノイルなどの、−CO−を含むアシル基など);シクロアルキルカルボニル(シクロプロピルカルボニル、シクロブチルカルボニルなど);アリールカルボニル(ベンゾイルなど);ヘテロアリールカルボニル(ピリジルカルボニル、フロイルなど)、特に好ましくはレブリノイル基を挙げることができる。R2及びR3のうち、少なくとも一つがレブリノイル基であるとさらに好ましい。レブリノイル基の数が多いほど、ポリ乳酸系樹脂との相溶性が向上し、ブリードアウトが防止される傾向にある。R2、R3が共に水素であるとポリ乳酸系樹脂との相溶性が著しく悪化し、ポリ乳酸のもつ透明性が損なわれ、かつ、ブリードアウトが生じる。
【0051】
【化13】
【0052】
一般式(2)において、m、n及びpはそれぞれに1〜20の数であるが、特に好ましくは1〜10である。これらが20より大きいと可塑化効率が低くなり、ポリ乳酸系樹脂に対して必要な可塑剤量が多くなりポリ乳酸のもつ特性が損なわれるおそれがある。
【0053】
また、R4は炭素数3〜10の3価の基を表す。またR4は基中に窒素、酸素、硫黄原子などを含んでいてもよく、その場合、基中の総炭素数が3〜30であれば特に制限はない。R4は、好ましくは、窒素、酸素及び硫黄原子から選択されるヘテロ原子を含んでいてもよい、飽和又は不飽和の脂肪族、脂環式、又は芳香族の、炭素数3〜10の3価の炭化水素基である。このような3価の基としては、例えば下記式
【0054】
【化14】
【0055】
の基などが挙げられる。
【0056】
R5、R6、R7はそれぞれに炭素数2〜10のアシル基である。本発明において、炭素数2〜10のアシル基としては、炭素数2〜10の、−O−又は−(C=O)−を含んでいてもよいアシル基、特に−O−又は−(C=O)−を含んでいてもよい、炭素数2〜10の、アルキルカルボニル(アセチル、プロピオニル、ブチリル、イソブチリル、2−メチルブチリル、2−エチルブチリル、3,3−ジメチルブチリル、ペンタノイル、4−メチルペンタノイル、ヘキサノイル、2−メチルヘキサノイル、2−エチルヘキサノイル、ヘプタノイル、オクタノイル、ノナノイル、デカノイル、イソバレリル、ピバロイルなどの、飽和カルボン酸から誘導されるアシル基;メトキシアセチル、メトキシプロピオニル、エトキシアセチルなどの、−O−を含むアシル基;レブリノイル、ピルビノイル、4−アセチルブチリノイル、2−オキソペンタノイル、7−オキソノナノイルなどの、−CO−を含むアシル基など);シクロアルキルカルボニル(シクロプロピルカルボニル、シクロブチルカルボニルなど);アリールカルボニル(ベンゾイルなど);ヘテロアリールカルボニル(ピリジルカルボニル、フロイルなど)、特に好ましくはレブリノイル基を挙げることができる。R5、R6、R7のうち、少なくとも一つがレブリノイル基であるとさらに好ましい。レブリノイル基の数が多いほど、ポリ乳酸系樹脂との相溶性が向上し、ブリードアウトが防止される傾向にある。R5、R6、R7が全て水素である化合物は、ポリ乳酸系樹脂との相溶性が著しく悪化し、ポリ乳酸のもつ透明性が損なわれ、かつ、ブリードアウトが生じる。
【0057】
【化15】
【0058】
一般式(3)において、q、r、s及びtはそれぞれに1〜20の数であるが、特に好ましくは1〜10である。これらが20より大きいと可塑化効率が低くなり、ポリ乳酸系樹脂に対して必要な可塑剤量が多くなり、ポリ乳酸のもつ特性が損なわれるおそれがある。
【0059】
R8は炭素数4〜10の4価の基を表す。R8は、好ましくは、炭素数4〜10の4価の、飽和又は不飽和の脂肪族炭化水素基である。このような4価の基としては、例えば下記式
【0060】
【化16】
【0061】
の炭素数4〜8の4価の、直鎖又は分岐鎖状のアルカンテトライル基などが挙げられる。
【0062】
R9、R1 0、R11、R12はそれぞれに、炭素数2〜10のアシル基である。本発明において、炭素数2〜10のアシル基としては、炭素数2〜10の、−O−又は−(C=O)−を含んでいてもよいアシル基、特に−O−又は−(C=O)−を含んでいてもよい、炭素数2〜10の、アルキルカルボニル(アセチル、プロピオニル、ブチリル、イソブチリル、2−メチルブチリル、2−エチルブチリル、3,3−ジメチルブチリル、ペンタノイル、4−メチルペンタノイル、ヘキサノイル、2−メチルヘキサノイル、2−エチルヘキサノイル、ヘプタノイル、オクタノイル、ノナノイル、デカノイル、イソバレリル、ピバロイルなどの、飽和カルボン酸から誘導されるアシル基;メトキシアセチル、メトキシプロピオニル、エトキシアセチルなどの、−O−を含むアシル基;レブリノイル、ピルビノイル、4−アセチルブチリノイル、2−オキソペンタノイル、7−オキソノナノイルなどの、−CO−を含むアシル基など);シクロアルキルカルボニル(シクロプロピルカルボニル、シクロブチルカルボニルなど);アリールカルボニル(ベンゾイルなど);ヘテロアリールカルボニル(ピリジルカルボニル、フロイルなど)、特に好ましくはレブリノイル基を挙げることができる。R9、R1 0、R11、R12のうち、少なくとも一つがレブリノイル基であるとさらに好ましい。レブリノイル基の数が多いほど、ポリ乳酸系樹脂との相溶性が向上し、ブリードアウトが防止される傾向にある。R9、R1 0、R11、R12が全て水素である化合物はポリ乳酸系樹脂との相溶性が著しく悪化し、ポリ乳酸のもつ透明性が損なわれ、かつ、ブリードアウトが生じる。
【0063】
前記一般式(1)、(2)又は(3)で示される化合物は、ポリカプロラクトンジオール、ポリカプロラクトントリオール、ポリカプロラクトンテトラオール又はこれらの混合物と、脂肪酸とを脱水縮合するなどして容易に合成することができる。ここで未反応のカルボキシル基やヒドロキシル基が残留しても差し支えないが、過剰に含まれるとエステル交換反応などを起こし成形物の物性を著しく損なったり、樹脂との相溶性が著しく悪くなることがある。そのために未反応物は少ない方が好ましい。具体的には酸価とヒドロキシル価の合計が30mgKOH/g以下であることが望ましい。好ましくは、20mgKOH/g以下、さらに好ましくは、10mgKOH/g以下である。
【0064】
ポリカプロラクトンジオール又はポリカプロラクトントリオールの代表的な市販品としては、プラクセル205、210、220、303、305、308、312〔商品名、ダイセル化学工業(株)製〕などが挙げられる。
【0065】
ポリカプロラクトンテトラオールは、ペンタエリスリトールなどのテトラオールにε−カプロラクトンを開環重合させて合成することができる。
【0066】
前記一般式(1)、(2)又は(3)で示される化合物は、1種を単独で又は2種以上を併用して用いることができるが、その合計量は、ポリ乳酸系樹脂の合計量100重量部に対し1〜100重量部である。好ましくは5〜70重量部、より好ましくは10〜50重量部である。
【0067】
本発明の成形品は、成形体、フィルム、シート、繊維を含む成形品を表し、これら成形品を製造するに際して通常必要とされる、酸化防止剤、熱安定剤、光安定剤、着色剤、帯電防止剤、滑剤、難燃剤、発泡剤、充填剤、抗菌・抗カビ剤などの各種添加剤を、必要に応じて配合することもできる。
【0068】
本発明の可塑剤や上記添加剤を混合する方法には、特に制限はなく、従来公知の方法によって行うことができる。例えば、ミルロール、バンバリーミキサー、スーパーミキサー、単軸あるいは二軸押出機などを用いて混合混練すればよい。
【0069】
成形品の機械的強度は成形品の使用目的によっても異なるが、一般に引張強度15〜40MPa、破断伸び10〜300%が好ましい。前記一般式(1)、(2)又は(3)で示される化合物を加えることにより、弾性率の低下と破断伸びの増加が起こるが、それに伴う強度低下により成形品が破損しやすくなるため、ある程度の強度が必要である。
【0070】
本発明のポリ乳酸系樹脂に配合される前記一般式(1)、(2)又は(3)で示される化合物は、ポリ乳酸系樹脂組成物に十分な柔軟性を与えると共に、十分な柔軟性を与え得る量を配合しても樹脂の透明性を損ねることがない。従って、この樹脂組成物から得られる成形品は、柔軟で強靭なものであり、かつ成形品の透明性の低下、ブリードアウトなどの問題がない。
【0071】
本発明の成形品(成形体、フィルム、シート、フィルムや繊維)は、それぞれ、本発明のポリ乳酸系樹脂組成物を用いて、通常の方法により製造することができる。
【0072】
また本発明に用いられる前記一般式(1)、(2)又は(3)の化合物は、ポリエステル樹脂用の可塑剤として有用である。
【0073】
【実施例】
以下に実施例を挙げて、本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例により何ら限定されるものではない。
【0074】
(分析方法)
<酸価及びヒドロキシル価>
合成例で得られた化合物の酸価及びヒドロキシル価は、JIS K 0070(1992)に従って測定した。
【0075】
<ポリ乳酸中の残存モノマー含有量>
試料を濃度10mg/mLとなるようにクロロホルムに溶解させ、クロロホルムを溶媒としてGPC分析を行い、ポリスチレン換算で分子量1000以下の成分割合からモノマー含有量(重量%)を算出した。
【0076】
<樹脂の相対粘度:ηrel>
フェノール/テトラクロロエタン=60/40(質量比)の混合溶媒に試料を1g/dLの濃度になるように溶解し、20℃でウベローデ粘度管を用いて相対粘度を測定した。
【0077】
<L−体の測定>
ポリマーを加水分解させ、1.0N(0.04g/ml)メタノール性水酸化ナトリウム溶液を溶媒として高速液体クロマトグラフィー(HPLC:島津製 LC10AD型)を使ってL−体の比率を求めた。
【0078】
(樹脂組成物の評価方法)
引張破断強度と引張破断伸度はJIS K 7113(1995)に、曲げ弾性率はJIS K 7171(1994)に従って測定した。ガラス転移点(Tg)はDSC(島津製作所製 DSC−50)により測定した。また、試験片を室温で放置した5日後の状態を目視で判断し、下記の4段階で評価した。
◎:透明
○:若干濁っているがほとんど透明
△:白濁しているが透けている
×:白濁し、不透明
【0079】
(使用した樹脂)
L−体比率95.5モル%、相対粘度(ηrel)3.95、モノマー含有量0.3重量%のポリ乳酸を使用した。
【0080】
合成例(a)
窒素雰囲気下、還流冷却器、分水管、撹拌機、温度計を備えたフラスコに、ジエチレングリコールにε−カプロラクトンを付加させたポリカプロラクトンジオール(プラクセル205、ダイセル化学工業)53g(0.1mol)、レブリン酸23.2g(0.2mol)、トルエン200g、p−トルエンスルホン酸0.2g(0.001mol)を加え、常圧下115℃に保ち、生成水を系外に除去しながら8時間反応を行った。反応終了後冷却し、水100gを加え水洗を行った。静置分相し、水相を取り除いた後、エバポレータにてトルエンを減圧留去し、ポリカプロラクトンレブリン酸ジエステル68.8gを得た。酸価とヒドロキシル価を表1に示す。
【0081】
合成例(b)
ポリカプロラクトンジオール(プラクセル205、ダイセル化学工業)53g(0.1mol)に替えて、エチレングリコールにε−カプロラクトンを付加させたポリカプロラクトンジオール(プラクセル210、ダイセル化学工業)97.9g(0.1mol)を用いた以外は合成例(a)と同様にして、ポリカプロラクトンレブリン酸ジエステル115gを得た。酸価とヒドロキシル価を表1に示す。
【0082】
合成例(c)
窒素雰囲気下、還流冷却器、分水管、撹拌機、温度計を備えたフラスコに、トリメチロールプロパンにε−カプロラクトンを付加させたポリカプロラクトントリオール(プラクセル305、ダイセル化学工業)55.3g(0.1mol)、レブリン酸34.8g(0.3mol)、トルエン200g、p−トルエンスルホン酸0.2g(0.001mol)を加え、常圧下115℃に保ち、生成水を系外に除去しながら8時間反応を行った。反応終了後冷却し、水100gを加え水洗を行った。静置分相し、水相を取り除いた後、エバポレータにてトルエンを減圧留去し、ポリカプロラクトンレブリン酸トリエステル80.5gを得た。酸価とヒドロキシル価を表1に示す。
【0083】
合成例(d)
ポリカプロラクトントリオール(プラクセル305、ダイセル化学工業)55.3g(0.1mol)に替えて、トリメチロールプロパンにε−カプロラクトンを付加させたポリカプロラクトントリオール(プラクセル308、ダイセル化学工業)85g(0.1mol)を用いた以外は合成例(c)と同様にして、ポリカプロラクトンレブリン酸トリエステル111gを得た。酸価とヒドロキシル価を表1に示す。
【0084】
合成例(e)
窒素雰囲気下、還流冷却器、撹拌機、温度計を備えたフラスコにペンタエリスリトール13.6g(0.1mol)、ε−カプロラクトン57.1g(0.5mol)、オクチル酸スズ0.1g、トルエン200gを加え、常圧下115℃に保ち4時間反応した。その後フラスコに分水管を設置し、レブリン酸46.4g(0.4molを加える。常圧下115℃に保ち、生成水を系外に除去しながら8時間反応を行った。反応終了後冷却し、水100gを加え水洗を行った。静置分相し、水相を取り除いた後、エバポレータにてトルエンを減圧留去し、ポリカプロラクトンレブリン酸テトラエステル111gを得た。酸価とヒドロキシル価を表1に示す。
【0085】
合成例(f)
窒素雰囲気下、還流冷却器、撹拌機、温度計を備えたフラスコにネオペンチルグリコール20.8g(0.2mol)、ε−カプロラクトン45.7g(0.4mol)、オクチル酸スズ0.1g、トルエン200gを加え、常圧下115℃に保ち4時間反応した。その後フラスコに分水管を設置し、レブリン酸46.4g(0.4mol)を加える。常圧下115℃に保ち、生成水を系外に除去しながら8時間反応を行った。反応終了後冷却し、水100gを加え水洗を行った。静置分相し、水相を取り除いた後、エバポレータにてトルエンを減圧留去し、ポリカプロラクトンレブリン酸ジエステル99.8gを得た。酸価とヒドロキシル価を表1に示す。
【0086】
合成例(g)
窒素雰囲気下、還流冷却器、撹拌機、温度計を備えたフラスコにグリセリン18.4g(0.2mol)、ε−カプロラクトン68.6g(0.6mol)、オクチル酸スズ0.1g、トルエン200gを加え、常圧下115℃に保ち4時間反応した。その後フラスコに分水管を設置し、レブリン酸69.7g(0.6mol)を加える。常圧下115℃に保ち、生成水を系外に除去しながら8時間反応を行った。反応終了後冷却し、水100gを加え水洗を行った。静置分相し、水相を取り除いた後、エバポレータにてトルエンを減圧留去し、ポリカプロラクトンレブリン酸トリエステル142.5gを得た。酸価とヒドロキシル価を表1に示す。
【0087】
合成例(h)
窒素雰囲気下、還流冷却器、分水管、撹拌機、温度計を備えたフラスコに、エチレングリコールにε−カプロラクトンを付加させたポリカプロラクトンジオール(プラクセル210、ダイセル化学工業)97.9g(0.1mol)、無水酢酸20.4g(0.2mol)、トルエン200g、p−トルエンスルホン酸0.2g(0.001mol)を加え、常圧下115℃に保ち、6時間反応を行った。反応終了後冷却し、水100gを加え水洗を行った。静置分相し、水相を取り除いた後、エバポレータにてトルエンを減圧留去し、ポリカプロラクトンジアセテート102gを得た。酸価とヒドロキシル価を表1に示す。
【0088】
合成例(i)
窒素雰囲気下、還流冷却器、分水管、撹拌機、温度計を備えたフラスコに、トリメチロールプロパンにε−カプロラクトンを付加させたポリカプロラクトントリオール(プラクセル308、ダイセル化学工業)85g(0.1mol)、無水酢酸30.6g(0.3mol)、トルエン200g、p−トルエンスルホン酸0.2g(0.001mol)を加え、常圧下115℃に保ち、6時間反応を行った。反応終了後冷却し、水100gを加え水洗を行った。静置分相し、水相を取り除いた後、エバポレータにてトルエンを減圧留去し、ポリカプロラクトントリアセテート95gを得た。酸価とヒドロキシル価を表1に示す。
【0089】
【表1】
【0090】
実施例1〜18
ポリ乳酸と合成例(a)〜(i)の化合物を、表2に示す割合で混合し、押出機(KCK製 KCK80×2−50VEX)で、シリンダー設定温度160〜210℃の条件にて混合混練し、本発明のポリ乳酸樹脂組成物を製造し、ペレット化した。このペレットを40℃で10時間減圧乾燥した後、射出成形機(日精樹脂工業製 PS60E9ASE)を用いて180℃で、JIS K 7113の1号試験片(厚さ3mm)及びJIS K 7171の標準試験片を作製し、引張試験及び曲げ試験を行い、柔軟性を測定した。
【0091】
比較例1
ポリ乳酸を60℃で10時間減圧乾燥した後、射出成形機を用いて190℃でJIS K 7113の1号試験片(厚さ3mm)及びJIS K 7171の標準試験片を作製し、引張試験及び曲げ試験を行い、柔軟性を測定した。
【0092】
比較例2〜5
ポリ乳酸と表3に示す可塑剤とを各割合で混合し、押出機で、シリンダー設定温度160〜210℃の条件にてペレット化した。このペレットを40℃で10時間減圧乾燥した後、射出成形機を用いて180℃でJIS K 7113の1号試験片(厚さ3mm)及びJIS K 7171の標準試験片を作製し、引張試験及び曲げ試験を行い、柔軟性を測定した。
【0093】
【表2】
【0094】
【表3】
【0095】
比較例1、2、6は引張破断伸度が小さく柔軟性がなかった。比較例3では柔軟性はあるが経時で可塑剤がブリードアウトし外観が悪かった。比較例4、5は柔軟性はあるものの相溶性が悪く透明性が低下した。
【0096】
実施例では引張破断伸度が大幅に向上し、曲げ弾性率が低下したことにより柔軟性が向上していることが分かった。また、実施例の中でも特に、合成例(c)及び(d)を添加した樹脂が引張破断伸度、曲げ弾性率から柔軟性が大幅に向上している。また経時でブリードアウトすることもなく外観も透明で良好であった。
【0097】
【発明の効果】
本発明に係るポリ乳酸系樹脂組成物を用いることで柔軟性及び透明性、安全性、生分解性に優れた成形品が得られる。
Claims (6)
- 下記一般式(1)、(2)又は(3)で示される化合物のうちの少なくとも一種を、ポリ乳酸系樹脂100重量部に対し1〜100重量部含むことを特徴とするポリ乳酸系樹脂組成物。
(式中、k及びlはそれぞれに1〜20の数であり、R1は炭素数2〜30の2価の基であり、R2及びR3はそれぞれに炭素数2〜10のアシル基である。)
(式中、m、n及びpはそれぞれに1〜20の数であり、R4は炭素数3〜10の3価の基であり、R5、R6及びR7はそれぞれに炭素数2〜10のアシル基である。)
(式中、q、r、s及びtはそれぞれに1〜20の数であり、R8は炭素数4〜10の4価の基であり、R9、R10、R11及びR12はそれぞれに炭素数2〜10のアシル基である。) - 前記一般式(1)において、R2、R3のうち少なくとも一つがレブリノイル基である、請求項1に記載のポリ乳酸系樹脂組成物。
- 前記一般式(2)において、R5、R6、R7のうち少なくとも一つがレブリノイル基である、請求項1に記載のポリ乳酸系樹脂組成物。
- 前記一般式(3)において、R9、R10、R11、R12のうち少なくとも一つがレブリノイル基である、請求項1に記載のポリ乳酸系樹脂組成物。
- 請求項1〜4のいずれかに記載のポリ乳酸系樹脂組成物を含む成形品。
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