JP4210141B2 - 硬質窒化炭素膜の形成方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、耐摩耗性、摺動性、装飾、耐凝着性、離型性などの目的でダイヤモンド状炭素(DLC)膜よりも硬質な窒化炭素膜を形成することが可能な方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来法による硬質窒化炭素膜の形成は、PVD(物理蒸着)法として、反応性DCスパッタリング、反応性RFスパッタリング、レーザーアブレーション、イオン注入、イオンアシストDCスパッタリング、イオンアシストダイナミックミキシング、アークイオンプレーティング、ホローカソード放電(HCD)イオンプレーティングなどが、また、CVD(化学蒸着)法としてRFプラズマCVDがある。
これらの手法における原料としては、PVD法では炭素源としては黒鉛が、また、窒素源としては窒素ガスが使用されている。CVD法では炭素源としてCH4などの炭化水素が窒素源としては窒素ガスが用いられている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、従来法では、窒素供給源としては窒素ガスが用いられているが、窒化炭素膜の硬質膜としての理論的化学量論組成β−C3N4の組成比N/C=1.33よりかなり小さな値で、ほとんどの場合0.5程度であり、また、大きくても1未満である。より良質の窒化炭素膜にするためには窒素をより多く含ませる必要があった。
【0004】
そこで、本発明では、窒化炭素膜の窒素含有量を多くして、より良質な窒化炭素膜を形成する方法を提供することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するために、本発明者等は鋭意検討の結果、PVD法で窒化炭素膜を形成する際の窒素の供給源として、窒素ガスよりも反応性の高いアンモニアガスを使用することにより、上記課題を解決すること見出した。
即ち、本発明の硬質窒化炭素膜の形成方法は、請求項1に記載の通り、被処理材の表面に硬質窒化炭素膜を形成するための方法であって、処理室内において、アンモニアガスを導入しながら、原料炭素類をホローカソード放電を利用して加熱、昇華させ、前記被処理材の表面に硬質窒化炭素膜を蒸着形成することを特徴とする。
また、請求項2に記載の硬質窒化炭素膜の形成方法は、請求項1に記載の硬質窒化炭素膜の形成方法において、前記ホローカソード放電のホローカソード電流を150〜300Aとしたことを特徴とする。
また、請求項3に記載の硬質窒化炭素膜の形成方法は、請求項1又は2に記載の硬質窒化炭素膜の形成方法において、前記アンモニアガスの導入量を30〜400sccmとし、その時の成膜中の圧力を0.05〜0.7Paとしたことを特徴とする。
また、請求項4に記載の硬質窒化炭素膜の形成方法は、請求項3に記載の硬質窒化炭素膜の形成方法において、前記アンモニアガスを導入するガス導入ノズルへの直流印加電圧を0〜200Vとしたことを特徴とする。
また、請求項5に記載の硬質窒化炭素膜の形成方法は、請求項1乃至4のいずれかに記載の硬質窒化炭素膜の形成方法において、前記ホローカソード放電時の生成プラズマをコイル磁場で収束することを特徴とする。
また、請求項6に記載の硬質窒化炭素膜の形成方法は、請求項5に記載の硬質窒化炭素膜の形成方法において、前記コイル磁場は、原料炭素膜を収容するハースの周囲に配置されるコイルによって生成されるものであることを特徴とする。また、請求項7に記載の硬質窒化炭素膜の形成方法は、請求項5又は6に記載の硬質窒化炭素膜の形成方法において、前記コイルに通電するコイル電流を120〜240Aとしたことを特徴とする。
【0006】
【発明の実施の形態】
本発明の硬質窒化炭素膜の形成方法は、緻密なダイヤモンド状炭素(DLC)膜より硬い硬質窒化炭素膜の形成に際し、そのN/C組成比を高くできるようにしたものであり、ガラス、金属、セラミックス、半導体等からなる任意の被処理材の表面に良質なアモルファス構造の硬質窒化炭素膜を形成できるようにしたものである。
【0007】
本発明では、成膜速度を上げるため、大電流の電子ビームで原料の固体黒鉛などの炭素類を加熱、昇華させ、導入アンモニアガスとともに被処理材の表面に蒸着させるために、ホローカソード放電を利用するようにしたものである。
このホローカソード放電では、真空排気系に連通させて所定の圧力に設定した処理室内において、例えば、処理室内にアンモニアガスを導入しながら、ホローカソード放電ガンより、銅製水冷ハース内の原料固体黒鉛に対してアルゴンガスを流し込み、このアルゴンガスを前記ホローカソード放電ガンと前記水冷ハース間にかけた直流電圧によりイオン化することで大電流を得、原料固体黒鉛を加熱、昇華させるようにしたものである。このホローカソード放電の大電流により導入アンモニアガスや炭素のイオン化が促進され、硬質窒化炭素膜の高い成膜速度が実現できる。
前記ホローカソード放電では、30〜40Vの低電圧で、100〜1000Aの大電流の電子ビームが得られるが、原子のイオン化が最大値をとる電離電圧(100V近傍)の電圧に近く、また、大電流であるため、原子と電子の衝突確率が極めて大きく、そのため、蒸発材料のイオン化が極めて大きい。従って、ホローカソード電流が大きいほど、成膜速度は大きくなるが、あまり大きすぎると、得られる硬質窒化炭素膜の表面が粗くなるため、ホローカソード放電を利用した蒸着で硬質窒化炭素膜を成膜するには、ホローカソード電流は150〜300Aが適切である。
尚、イオン化されたアルゴンガスを被処理材に印加した電場で加速衝突させることで、被処理材表面のクリーニング効果を高めることができる。
【0008】
前記アンモニアガスはホローカソード放電ガンに併設されたガス導入ノズルから、或いは、前記ホローカソード放電ガンから導入され、ガス導入ノズルから導入する場合は、ガス導入ノズルに直流電位を印加して窒化ガスのイオン化を促進することが好ましい。この場合、前記アンモニアガスを導入するガス導入ノズルへの直流印加電圧を0〜200Vとするのが好ましい。
また、良好な膜質とするためには、前記アンモニアガスの導入量は、30〜400sccm程度が好ましい。また、その時の処理室内の圧力は、0.05〜0.7Pa程度とすることが好ましい。
【0009】
また、ホローカソード放電に際してのコイル磁場の形成により、このコイル磁場によって、生成プラズマが収束され、窒素、炭素、アルゴンのイオン化が促進され、形成された硬質炭素膜は密着性に優れ、硬度も増大することとなり、膜の硬度を向上させた上に、成膜速度を速くすることができる。
【0010】
前記コイル磁場は、原料炭素類を収容するハースの周囲に配置されるコイルによって生成されるようにすることが好ましく、この場合、前記コイルに通電するコイル電流を120〜240Aとすることにより、HV3100〜3600の硬さの膜が形成される。
このコイル電流の増加に略直線的に比例して硬質窒化炭素膜の硬度が増加することとなる。
尚、硬質炭素膜の場合と異なり、硬質窒化炭素膜の場合は、被処理物にバイアス電圧をかけなくとも、コイル電流の増加に略直線的に比例して硬質窒化炭素膜の硬度が増加することとなる。
【0011】
尚、被処理物は、浮遊電位、接地電位、或いは、外部からの電位を印加した状態においてもよい。
また、前記外部印加電位は直流、高周波、或いは、低周波の任意の電位を用いることができる。
この場合、直流では、−200V、1〜2A、商用周波数の交流では200V、2〜3A、高周波電位の場合の電力は100〜500Wである。
【0012】
図1は本発明の硬質窒化炭素膜の形成方法を実施するための装置の一例を示すもので、図中1はステンレス製の処理室を示し、この処理室1は図略の真空排気系に連通され、処理室1内を所望の圧力(真空度)に調整自在とされている。
処理室1内の底部には、銅製水冷ハース2が設けられ、該ハース2内に原料の固体黒鉛Cなどを収容できるようになっている。
この水冷ハース2の直上にはアルゴン供給管3に連通されるタンタル製のホローカソード放電ガン(以下、「HCDガン」という。)4が配置されている。これら水冷ハース2とHCDガン4とはHCDガン電源5に連通されている。
【0013】
図中6はガス供給通路7に連通されるアンモニアガス導入ノズルを示し、前記水冷ハース2の側方に隣接配置され、処理室1内にアンモニアガスを導入できるようになっている。このガス導入ノズル6はノズルバイアス電源8に連通され、バイアス電圧を印加できるようになっている。
【0014】
かくして、HCDガン4より、水冷ハース2内の原料固体黒鉛Cに対してアルゴンガスを流し込み、ガス導入ノズル6から処理室1内にアンモニアガスを導入しながらHCDガン電源5からの通電により、このアルゴンガスとアンモニアガスを、前記HCDガン4と前記水冷ハース2間にかけた直流電圧によりイオン化することで大電流を得、原料固体黒鉛を加熱、昇華させ、窒化炭素膜を形成させることができるようになっている。
【0015】
また、前記水冷ハース2の周囲にコイル用電源9に連通されるコイル10が配置され、前記イオン化せれたアルゴンガスのプラズマを収束できるようになっている。
【0016】
また、処理室1内の天井部には被処理材ホルダー11が設けられ、被処理材Aを支持自在とされ、この被処理材ホルダー11の背面に設けられたヒータ12で被処理材Aを所定温度に加熱自在とされている。
前記基板は加熱しても、或いは、加熱せずに室温状態でも硬質窒化炭素膜が得られるが、硬質窒化炭素膜と被処理物の密着性を向上させるためには、加熱することが好ましく、この場、400℃以下に加熱するのが好ましい。
【0017】
また、被処理材ホルダー11には被処理材バイアス電源13が連通され、必要に応じ、直流、高周波、低周波などの任意のバイアスをかけることができるようになっている。
【0018】
【実施例】
次に本発明硬質窒化炭素膜の形成方法の具体的実施例について説明する。
(実施例1)
被処理材としてSiを設置し、図1の処理室を10-3Pa程度に排気した後、タンタル製HCDガンからアルゴンガスを導入し、20Paの圧力に調整した。
その後、HCDガン−ハース間に50Vの電圧と、それに重畳し、高周波電圧を印加し、アルゴンガスのグロー放電を起こさせた。アルゴンガスのプラズマを収束させるためにコイルに約100Aの電流を流し、ガンとハース間の放電を促進するためにガンに併設した補助電極とガンの間に最大350Vの電圧をかけた。ガン−ハース間のアーク放電が点火した後、アルゴンガスの流量を変えずに、処理室を油拡散ポンプで排気し、0.1Pa程度の圧力にした。
第一段階として、被処理材のクリーニングを以下の条件で行った。即ち、HCDガン電流100A、アンモニアガス流量0sccm、コイル電流180A、被処理材−接地間電圧−800V、クリーニング時間5分間とした。
次に、第二段階で、窒化炭素膜の蒸着を行った。即ち、クリーニングの条件から1分間で以下のように装置の条件を変えていった。
HCDガン電流150A、HCDガンからのアルゴンガス流量10sccm、ガス導入ノズルからのアンモニアガス流量200sccm、コイル電流200A、被処理材への電位印加なし、ノズル−接地間電圧50Vとして、15分間で厚さ約1.5μmの窒化炭素膜が得られた。この時の成膜中の圧力は、0.37Paであった。
成膜速度は100nm/minで、得られた膜の化学組成比N/Cは、EPMA(電子プローブマイクロアナライザー)によれば0.98であった。
【0019】
(比較例1)
アンモニアガスの代わりに窒素ガスを200sccmで導入した以外は実施例1と同様にして窒化炭素膜を形成した。尚、成膜中の圧力は、0.34Paであった。
成膜速度は100nm/minで、得られた膜の化学組成比N/Cは、0.75であった。
【0020】
(実施例2)
実施例1と同様に被処理材としてSiを使用し、実施例と同様の第一段階のクリーニングを行い、第二段階での硬質窒化炭素膜の蒸着を、HCDガン電流150A、HCDガンからのアルゴンガス流量0sccm、HCDガンからのアンモニアガス流量100sccm、ガス導入ノズルからのアンモニアガス流量0sccm、コイル電流200A、被処理材への電位印加なしとして、15分間で厚さ約1μmの窒化窒化炭素膜が得られた。この時の成膜中の圧力は、0.19Paであった。
成膜速度は66nm/minで、得られた膜の得られた膜の化学組成比N/Cは、1.07であった。
【0021】
(比較例2)
アンモニアガスの代わりに窒素ガスを100sccmで導入した以外は、実施例2と同様にして窒化炭素膜を形成した。尚、成膜中の圧力は、0.17Paであった。
成膜速度は66nm/minで、得られた膜の化学組成比N/Cは、0.78であった。
【0022】
以上の結果を表1にまとめた。
【0023】
【表1】
Figure 0004210141
【0024】
上記表1から、実施例1及び2では、比較例1及び2に比べて、N/C組成比の高い硬質窒化炭素膜が得られることが判った。
【0025】
【発明の効果】
このように、本発明によれば、処理室内において、反応性の高いアンモニアガスを導入しながら、原料炭素類をホローカソード放電を利用して加熱、昇華させ、前記被処理材の表面に硬質窒化炭素膜を蒸着形成することにより、窒素ガスを用いた場合よりもN/C化学組成比の大きな膜を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明硬質炭素膜の形成装置の一実施の形態の説明線図
【符号の説明】
1 処理室
2 銅製水冷ハース
3 アルゴン(アンモニア)供給管
4 ホローカソード放電ガン
5 HCDガン電源
6 アンモニアガス導入ノズル
7 ガス供給経路
8 ノズルバイアス電源
9 コイル用電源
10 コイル
11 被処理材ホルダー
12 ヒータ
13 バイアス電源
A 被処理材
C 黒鉛

Claims (7)

  1. 被処理材の表面に硬質窒化炭素膜を形成するための方法であって、処理室内において、アンモニアガスを導入しながら、原料炭素類をホローカソード放電を利用して加熱、昇華させ、前記被処理材の表面に硬質窒化炭素膜を蒸着形成することを特徴とする硬質窒化炭素膜の形成方法。
  2. 前記ホローカソード放電のホローカソード電流を150〜300Aとしたことを特徴とする請求項1に記載の硬質窒化炭素膜の形成方法。
  3. 前記アンモニアガスの導入量を30〜400sccmとし、その時の成膜中の圧力を0.05〜0.7Paとしたことを特徴とする請求項1又は2に記載の硬質窒化炭素膜の形成方法。
  4. 前記アンモニアガスを導入するガス導入ノズルへの直流印加電圧を0〜200Vとしたことを特徴とする請求項3に記載の硬質窒化炭素膜の形成方法。
  5. 前記ホローカソード放電時の生成プラズマをコイル磁場で収束することを特徴とする請求項1乃至4の何れかに記載の硬質窒化炭素膜の形成方法。
  6. 前記コイル磁場は、原料炭素膜を収容するハースの周囲に配置されるコイルによって生成されるものであることを特徴とする請求項5に記載の硬質窒化炭素膜の形成方法。
  7. 前記コイルに通電するコイル電流を120〜240Aとしたことを特徴とする請求項5又は6に記載の硬質窒化炭素膜の形成方法。
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