JP4226332B2 - 高分子電解質型燃料電池 - Google Patents
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Description
技術分野
本発明は、高分子電解質型燃料電池に関するもので、特にその構成要素である導電性セパレータ板の改良に関する。
【0002】
背景技術
高分子電解質膜型燃料電池は、水素を含有する燃料ガスと、空気など酸素を含有する酸化剤ガスとを、電気化学的に反応させることにより、電力と熱とを同時に発生させ、この電力を取り出すことを基本原理としている。この燃料電池は、基本的には水素イオンを選択的に輸送する高分子電解質膜およびその両面に形成された一対の電極、すなわちアノードとカソードからなる。電極は、白金族金属触媒を担持したカーボン粉末を主成分とする触媒層、およびこの触媒層の外面に形成された、通気性と電子導電性を併せ持つガス拡散層で構成される。
【0003】
供給する燃料ガスおよび酸化剤ガスが外にリークしたり、2種類のガスが互いに混合したりしないように、電極の周囲には、高分子電解質膜を挟んでガスシール材やガスケットが配置される。このシール材やガスケットは、電極および高分子電解質膜と一体化してあらかじめ組み立てられる。これをMEA(電解質−電極接合体)と呼ぶ。MEAの外側には、これを機械的に固定するとともに、隣り合うMEAを互いに電気的に直列に接続するための導電性のセパレータ板が配置される。セパレータ板のMEAと接触する部分には、電極面に反応ガスを供給するとともに、生成ガスや余剰ガスを運び去るためのガス流路が形成される。ガス流路は、セパレータ板と別に設けることもできるが、セパレータ板の表裏両主面に複数の溝を設け、それをガス流通溝とする方式が一般的である。なお、同一主面上で隣り合う溝の間の土手の形状を有するものをリブという。このようなセパレータ板の一対とそれに挟まれたMEAとで一つの電池、すなわちセルが構成される。
【0004】
セパレータ板の表裏両主面の一方の主面のガス流通溝に燃料ガスを供給するとともに余剰ガス等を排出し、他方の主面のガス流通溝に酸化剤ガスを供給するとともに同じく余剰ガス等を排出するためには、セパレータ板に、貫通孔を2つ設け、ガス流通溝の出入り口をそれぞれこれらの貫通孔まで通し、一方の貫通孔から直接反応ガスを各ガス流通溝に分岐しながら供給し、他方の貫通孔から各ガスを排出するのが一般的な方法である。この各ガス流通溝へ反応ガスを供給し、また各ガス流通溝から余剰ガス等を排出するための貫通孔をマニホールド孔と呼ぶ。このような、ガス供給・排出方法を内部マニホールド方式という。
【0005】
この内部マニホールド方式以外に、外部マニホールド方式と呼ばれる方法がある。外部マニホールド方式とは、反応ガスを供給するための配管を使用するセパレータ板の枚数に分岐し、その分岐先を、マニホールドと呼ばれる配管治具を用いて、直接セパレータ板の溝につなぎ込むように構成する方式である。
【0006】
さらに、燃料電池は、運転中に発熱するので、通常は電池を冷却媒体で冷却する。通常、1〜3セル毎に、冷却媒体を流す冷却部が設けられる。その場合、一方の主面に反応ガス流通溝を有し、他方の主面に冷却媒体流路を有するセパレータ板2枚を、その他方の主面同士、すなわち冷却媒体流路を有する面同士が接するように組み合わせて、冷却部とする場合が多い。
【0007】
これらのMEAとセパレータ板および必要に応じて冷却部を交互に重ねていき、10〜200セルを積層する。その積層体を電池スタックという。この電池スタックを、集電板と絶縁板を介して端板で挟み、電池スタックに圧力をかけるように両端板を締結ボルトで締め付けて固定されたものが、一般的なセル積層方式の燃料電池の構造である。
【0008】
このような燃料電池において、従来技術では(例えば特開2000−133291)、各セパレータ板において、その表裏両主面のうちの一方の主面のガス流通溝と他方の主面のガス流路とを、すなわち一方の主面のリブと他方の主面のリブとを、互いに対応する位置に形成するのが常識となっていた。そして、電池スタックの一端から他端まで、すべてのセパレータ板のリブ部分が単純にアラインし、また従って、セパレータ板のすべてのガス流通溝部分が単純にアラインするようにセパレータ板を積層し、電池スタックを固定するための締結力をそのリブを通して伝達する構造とすることが常識となっていた。
【0009】
しかしながら、このような従来の燃料電池の場合は、各セパレータ板の表裏両主面上の両ガス流通溝で挟まれた流通溝底部がセパレータ板の最薄肉部となる。その結果、電池スタック製造時の締結ボルトによる圧力、あるいは製造後の燃料電池使用時に燃料電池に加わる圧力などにより、溝底部に亀裂や破損が発生し、その部分でガスリークが生じる可能性が高かった。また、逆にいえば、近年、燃料電池の薄型化の要請が強いが、従来の、溝底部に最薄肉部を有するセパレータ板の単純な積層という方法では、溝底部の強度の限界により、薄型化の限界があった。
【0010】
さらに、低コスト化のために、セパレータ板を型を用いた圧縮成形や射出成形で製造する場合、セパレータ用の材料が、型の中の上記薄肉部対応部分へは流れ込みにくい。そのため製造が困難であるという問題もあった。
【0011】
発明の開示
本発明は、導電性セパレータ板を改良して、その機械的強度を高めることにより、ガスリークの発生を抑制することを目的とする。
【0012】
本発明の高分子電解質型燃料電池は、複数の導電性セパレータ板および前記導電性セパレータ板の間に挿入されたMEAを含む電池スタックを具備し、そのMEAが水素イオン伝導性高分子電解質膜、並びに前記水素イオン伝導性高分子電解質膜を挟むアノードおよびカソードを具備し、前記各導電性セパレータ板が、一方の主面に前記アノードに燃料ガスを供給・排出する複数の並行するガス流通溝を有し、他方の主面に前記カソードに酸化剤ガスを供給・排出する複数の並行するガス流通溝を有する高分子電解質型燃料電池であって、前記各導電性セパレータ板の両ガス流通溝は、一方の主面のガス流通溝が他方の主面のガス流通溝間のリブに対応するように配されている。
【0013】
さらに、前記リブの表面から前記一方の主面の前記ガス流通溝の底面までの距離で定められるリブ厚と、前記一方の主面の前記ガス流通溝の深さとの合計長さが前記導電性セパレータ板のセパレータ板厚であり、前記リブの前記リブ厚は前記リブに隣り合う前記他方の主面のガス流通溝の深さよりも大きく、前記電解質膜−電極接合体のアノードに燃料ガスを供給・排出するガス流通溝と、同じ電解質膜−電極接合体のカソードに酸化剤ガスを供給・排出するガス流通溝間のリブとが対応する位置にあり、前記各導電性セパレータ板の一方の主面のリブの幅W r1 およびガス流通溝の幅W g1 、並びに他方の主面のリブの幅W r2 およびガス流通溝の幅W g2 がそれぞれ下記の式
1<W r1 /W g1 ≦1.4
1<W r2 /W g2 ≦1.4
を満たす。
【0015】
さらに、前記導電性セパレータ板のうち、前記電池スタックの両端部に配した導電性セパレータ板の機械的強度を、他の導電性セパレータ板の機械的強度よりも高くすることが好ましい。この場合、前記両端部に配した導電性セパレータ板の厚みを、他の導電性セパレータ板の厚みより大きくするか、または両端部に配した導電性セパレータ板に、カーボン材料または金属材料を構成要素とする補強部材を付加することが、機械的強度を簡便に高めるという観点から好ましい。
本発明の高分子電解質型燃料電池においては、導電性セパレータ板の厚さと比較した場合の導電性セパレータ板内の最肉薄部の比較厚さを、従来の導電性セパレータ板の場合の同比較厚さよりも厚くすることにより、従来問題となっていた最薄肉部での亀裂や破損を抑制させるとともに、最薄肉部を製造しやくする。その結果、燃料電池の機械的強度を維持あるいはさらに高めつつ、低コストで小型化を可能にするものである。
【0016】
発明を実施するための最良の形態
本発明の特徴は、上記のように各導電性セパレータ板の表裏両主面のうち、一方の主面のガス流通溝が、他方の主面のガス流通溝間のリブに対応するように配されていることである。これにより、従来の導電性セパレータ板の厚さが、従来の導電性セパレータ板の厚さと同じであっても、導電性セパレータ板の中の最肉薄部を極端に薄くすることなく、ガス流通溝の必要な深さを確保することができる。その結果、最肉薄部の亀裂や破損によるガスリークを抑制することができる。
【0017】
さらに、最肉薄部をある程度の厚さにすることができるため、上述の圧縮成形や射出成形などの際の、セパレータ板用の原材料の薄肉部分への流れ込みの悪化を防ぐことができる。すなわち、本発明によれば、導電性セパレータ板の最肉薄部の必要な厚さを確保しつつ、導電性セパレータ板の厚さを薄くすることができ、小型でかつ製造しやすい燃料電池を提供することができる。
【0018】
このような導電性セパレータ板を複数用意し、隣り合う導電性セパレータ板の間にMEAを挟んで電池スタックを作る場合、MEAのアノードに燃料ガスを供給・排出するガス流通溝と、同じMEAのカソードに酸化剤ガスを供給・排出するガス流通溝とが対応する位置、すなわち溝−MEA−溝対応になるようにすれば、MEAを挟んでリブ同士をも対応させることができるので、電池スタックに加わる締結圧力に対して対抗しやすい。また、両ガスの反応効率も高く維持できる。
【0019】
このような電池スタック構成を実現するためには、隣り合う導電性セパレータ板用として、2種類の形状の導電性セパレータ板を作り、それを複数用意して、順次積層すれば良い。さらに、電池スタックの製造のしやすさ、あるいは低コスト化の観点からは、電池スタックの両端部用や冷却部用を除き、実質的にすべての導電性セパレータ板用として、1種類だけの形状の導電性セパレータ板を複数用意して、隣り合う導電性セパレータ板を、交互に、導電性セパレータ板の主面上で180度回転させて配置していくことにより、溝−MEA−溝対応を実現するのが、より好ましい方法である。そのためには、各導電性セパレータ板の表裏両主面の両ガス流通溝のパターンを適切に設計する必要がある。そのような設計の一例を後述の実施の形態1に示す。また、このような溝−MEA−溝対応の構成において、各導電性セパレータ板の、両ガス流通溝の底面の幅が、それぞれ両ガス流通溝の表面の幅より小さいことが好ましい。それは溝壁すなわちリブ壁がセパレータ板の内部へ向かって狭くなる構造であることにより、圧縮成形あるいは射出成形などによるセパレータ板の製造上、型抜けが良くなるためである。
【0020】
また、同様に、導電性セパレータ板を複数用意し、隣り合う導電性セパレータ板の間にMEAを挟んで電池スタックを作る場合、MEAのアノードに燃料ガスを供給・排出するガス流通溝と、同じMEAのカソードに酸化剤ガスを供給・排出するガス流通溝間のリブとが対応する位置、すなわち溝−MEA−リブ対応になるようにすれば、実質的にすべての導電性セパレータ板用として、1種類だけの形状の導電性セパレータ板を複数用意して、隣り合う導電性セパレータ板を、導電性セパレータ板の主面上で同一方向に配置していくことができ、電池スタックの製造のしやすさを高く維持できる。
【0021】
この溝−MEA−リブ対応の場合、MEAを挟む2枚の導電性セパレータ板の、一方のセパレータ板の各リブの両幅端部が、他方のセパレータ板の対応する2つのリブの幅端部と一部オーバーラップする関係になるようにすることが好ましい。それは、電池スタックの両端を締結して燃料電池を作る際の締結圧力を、そのリブ群が機械的に伝達することにより、そのリブ群によって締結圧力に対抗することができるためである。このような理由から、各導電性セパレータ板の表裏両主面の一方の主面のガス流通溝間のリブの幅、および他方の主面のリブの幅が、それぞれ、一方の主面のガス流通溝の幅、および他方の主面のガス流通溝の幅より大きいことが好ましい。ただし、このリブの幅/溝の幅の比が1.4より大きくなると、同リブによるMEA部分の押さえつけにより、MEAへの反応ガス拡散が悪化し、得られる電池電圧が低下するため、1.4倍以下であることが好ましい。
【0022】
また同じく、この溝−MEA−リブ対応の場合、各導電性セパレータ板の、両ガス流通溝の底面の幅が、それぞれ両ガス流通溝の表面の幅より小さいことが好ましい。それは、電池スタックへ締結圧力が加わった場合、導電性セパレータ板の中のクラック発生がより抑制されるためである。ただし、この溝における底面の幅/表面の幅の比が0.6より小さくなると、クラック発生の抑制がそれ以上向上しないとともに、ガス流通溝の断面積が減少し、ガスの圧力損失が増加する、すなわちガスの有効活用が損なわれるようになるため、溝の底面幅/溝の表面幅の比は0.6倍以上であることが好ましい。
【0023】
なお、上記の記載および以下の実施の形態や実施例では、溝−MEA−溝対応の例と、溝−MEA−リブ対応の例とを、本発明を具現化させるための代表例として記載している。しかしながら、各セパレータ板の中で、表裏両主面の一方の主面上の溝と、他方の主面上のリブとが対応するという本発明の特徴が発揮されておりさえすれば、MEAを挟んで隣り合う導電性セパレータ板の関係は、それらの代表例の場合に限定する必要はない。たとえば、本発明では、MEAの一方の電極側に面した導電性セパレータ板の溝の位置と、同じMEAの他方の電極側に面した導電性セパレータ板の溝側面すなわちリブ側面とが対応するように配しても良い。つまり、溝−MEA−溝・リブ中間のような対応関係でも良い。さらに換言すると、MEAを介して隣り合う2枚の導電性セパレータ板の相向かい合う溝・リブの相対的位置は、必要に応じて、ずらせた位置にしても良い。
【0024】
前記導電性セパレータ板のうち、電池スタックの両端部に配した導電性セパレータ板の機械的強度を、他の導電性セパレータ板、すなわち電池スタックの中間部分の導電性セパレータ板の強度よりも高くすることが、電池スタックの強度をさらに高めるという観点から好ましい。これにより次のような問題を解決する。すなわち、電池スタックを締結ロッド等で締結するときに、導電性セパレータ板の面内で均一な圧力分布にならないとき、電池スタックの両端部の導電性セパレータ板では、集中荷重を受けてしまう部分の強度が不足し、その両端部のセパレータ板自体が破損していまい、ガス等の漏れが発生するという問題である。この場合、両端部の導電性セパレータ板の厚みを、他の導電性セパレータ板の厚みより大きくするか、または両端部の導電性セパレータ板に、カーボン材料または金属材料を構成要素とする補強部材を付加することが、両端部の導電性セパレータ板の機械的強度を高めるための簡便な方法として好ましい。
【0025】
実施の形態1
本実施の形態1で作製した高分子電解質型燃料電池の主要積層構成を図1に示す。図1では積層構成の一部中間部分を省略しているが、省略している部分も図示されている部分と同様である。図1の中で、番号を付与した構成要素を中心にして以下説明する。番号を付与していない構成要素も、図示が同様のものは、番号を付与したものと同様な構成要素である。また、図1は概略図であり、各構成要素の寸法関係は必ずしも正確ではない。これは他の概略図についても同様である。
【0026】
まず、この燃料電池の主要部分は、複数の導電性セパレータ板と、隣り合う導電性セパレータ板の間に挟まれたMEA(電解質膜−電極接合体)を主構成要素とする電池スタックであり、図1では、両端部の導電性セパレータ板5aeから5beまでの部分である。部分拡大図に番号を付与しているが、1は水素イオンを選択的に輸送する高分子電解質膜である。この高分子電解質膜1の両面に、一対の電極2a、2bが形成されている。この一対の電極は、片方がアノードで他方がカソードである。各電極は、白金族金属触媒を担持したカーボン粉末を主成分とする触媒層、およびこの触媒層の外面に形成された、通気性と電子導電性を併せ持つガス拡散層で構成される。
【0027】
後述する方法で供給される燃料ガスおよび酸化剤ガスが外にリークしたり、その2種類のガスが互いに混合したりしないように、電極2a、2bの周囲には、高分子電解質膜1を挟んでガスシール材やガスケットが配置される。図1では、これらを代表させてガスケット3として図示している。このガスシール材やガスケット3は、電極2a、2bおよび高分子電解質膜1と一体化してあらかじめ組み立てられる。このようにして一体的に組み立てられたものが一つのMEA4である。MEA4の表裏両主面には、これを機械的に固定するとともに、隣り合うMEAを互いに電気的に直列に接続するための導電性セパレータ板5a、5bが配置されている。導電性セパレータ板5a、5bとMEA4とで一つの電池、すなわちセルが構成される。
【0028】
導電性セパレータ板5a、5bのMEA4と接触する主面には、対応する電極2a、2bの電極面に反応ガス、すなわち燃料ガスおよび酸化剤ガス、を供給するとともに、生成ガスや余剰ガスを排出するための複数の並行するガス流通溝6ar、6bfが相向かい合うように形成されている。また、それらの導電性セパレータ板5a、5bの反対側の主面には、それぞれ次に隣り合うMEAへの反応ガスを供給・排出するガス流通溝6af、6brが形成されている。ここで、並行する、というのは、図1における断面部分で紙面に垂直に伸びるという意味であるが、単純に直線的に並行して伸びる場合だけでなく、例えば後述の図2のように、いわゆるサーペンタイン状に蛇行しつつ並行して伸びてもよい。隣り合うガス流通溝6afの間は同ガス流通溝を規定するリブ7afである。同様に、隣り合うガス流通溝6ar、6bf、6brの間は、それぞれ、それらのガス流通溝を規定するリブ7ar、7bf、7brである。したがって、リブ7af、7ar、7bf、7brもガス流通溝6af、6ar、6bf、6brと同様に並行して伸びている。なお、燃料ガスは電極2a、2bのうちのアノードに、また、酸化剤ガスはカソードに供給されるように配置されている。
【0029】
本発明の特徴は、各導電性セパレータ板の表裏両主面におけるガス流通溝の位置、例えばガス流通溝6afの位置とガス流通溝6arの位置とがお互いには対応せず、それぞれリブ7ar、7afと対応するようになっていることにある。より詳しくいうと、図1の紙面上で、例えば導電性セパレータ板5aを見たとき、ガス流通溝6arとリブ7afとが、さらにガス流通溝6afと7arとが、それぞれ上下にアラインしていることにある。なお、図1に示されているように、上端部の導電性セパレータ板5aeでは、ガス流通溝が下側主面にのみ形成され、下端部の導電性セパレータ板5beでは、ガス流通溝が上側主面にのみ形成されている。
【0030】
本実施の形態1では、さらに、MEA4を挟む導電性セパレータ板5aと5bのMEA4に面する主面上の流通溝6ar、6bf同士、またリブ7ar、7bf同士が対応するように配置されていることも特徴である。この特徴により、MEA4を挟んでリブ同士が対応するので、それらリブ群で最終的な電池スタックに対する締め付け圧力を受けとめやすい。また、MEA4を介した反応ガスの反応も高く維持しやすい。
【0031】
図2を用いて詳述するが、図1の電池スタック内のすべての導電性セパレータ板の表裏両主面のガス流通溝を通して、燃料ガスと酸化剤ガスを供給・排出するためのマニホールド孔などが各導電性セパレータ板に形成されている。また、1〜3セル毎に、導電性セパレータ板の背面に冷却媒体用流路を有する冷却部が設けられている。これらのMEAと導電性セパレータ板および必要に応じて冷却部が交互に積層されて図1の電池スタックが構成されている。この電池スタックを集電板8a、8bと絶縁板9a、9bを介して端板10a、10bで挟み、電池スタックに圧力をかけるように両端板を締結ロッド11a、11bおよび締結ボルト12a、12b、12c、12dで締め付けて固定される。このようにして作製されたのが本実施の形態1の燃料電池である。
【0032】
図2Aは本実施の形態1の燃料電池に用いた導電性セパレータ板、たとえば5a、のカソード側主面の平面図であり、図2Bは同じ導電性セパレータ板のアノード側主面の平面図であり、図2Aの裏面図である。図2Aの6afと7afはそれぞれ酸化剤ガス流通溝とその溝間のリブであり、図2Bの6arと7arはそれぞれ燃料ガス流通溝とその溝間のリブである。また、図2Aと図2Bで共通して、13aは酸化剤ガスを供給するためのマニホールド孔、13bはそれを排出するためのマニホールド孔である。14aは燃料ガスを供給するためのマニホールド孔、14bはそれを排出するためのマニホールド孔である。15aは冷却媒体を供給するためのマニホールド孔、15bはそれを排出するためのマニホールド孔である。ここに示す溝・リブのパターンは、いわゆるサーペンタイン状のものであるが、本発明の特徴を発揮するものであれば、このようなサーペンタイン状のものでなくても良い。
【0033】
また、ここでは、内部マニホールド方式の冷却部を一例として記載しているが、外部マニホールド方式の冷却部を採用しても、本発明の特徴は発揮させることができる。
【0034】
図1で説明したように、図2A、2Bにおける導電性セパレータ板の表裏のガス流通溝6afと6arは紙面に垂直に位置関係をみると、大部分の箇所で1ピッチ分、すなわち一つの流通溝の幅の分だけ、シフトしており、その結果、基本的にカソード側の溝6afとアノード側のリブ7arが対応した対置にある。このような導電性セパレータ板を隣り合う導電性セパレータ板が、それぞれの主面上にとどまりつつ、交互に180度回転した配置になるように積層されると、図1のように、MEAを挟んで向かい合うガス流通溝同士が対応する。導電性セパレータ板は一枚おきに同じ方向に配されることになる。この180度回転配置を、図2Aの導電性セパレータ板5a矩形の平面図に基づき説明すると、この矩形の中心点を通り、紙面に垂直な線を回転軸として、その矩形を180度回転させる配置のことである。つまり、この構成は、1種類の同一形状の導電性セパレータ板を用意するだけで良いという点で好ましい。なお、図1の断面図は、図2A、図2Bの導電性セパレータ板を上記のように積層し、X−Yの面で切った断面に相当する。
【0035】
このような、溝−MEA−溝対応の構成を実現しようとする場合に、図2A、図2Bに示したような溝・リブのパターンを設計して、上述のような交互180度回転配置という手法を採用しても良いが、それ以外でも、溝−MEA−溝対応になるような2種類の導電性セパレータ板を用意し、それを順次積層するようにしても良い。
【0036】
本発明の第一の特徴は、上記のように、各導電性セパレータ板の表裏両主面のうち、一方の主面のガス流通溝が、他方の主面のガス流通溝間のリブに対応するように配されていることである。その点について、図3、図4および図5に基づき説明する。
図3、図4および図5の1、2a、2bはそれぞれ高分子電解質膜および一対の電極であり、MEAの主要構成要素である。
【0037】
図3は、従来の導電性セパレータ板2枚でMEAを挟んだ積層構成の一部を示す概略断面図であり、参考図である。35aと35bはそれぞれ従来の導電性セパレータ板であり、各導電性セパレータ板35a、35bにおいて、すべてのリブ37af、37ar、37bf、37brは上下に対応、すなわちアラインしている。しかし、同様にガス流通溝36af、36ar同士、およびガス流通溝36bf、36br同士が対応する位置にあり、その結果、最肉薄部である溝底部38a、38bの厚さtが薄くなっている。この部分が、その薄さのため、上述したように電池スタックへの締結圧力などにより、破損や亀裂を発生しやすく、そのためガスリークを発生させやすかった。また、そのため導電性セパレータ板35a、35bを薄くすることが困難であった。
【0038】
図4は、図3と比較しやすくするため、図1の本実施の形態1の導電性セパレータ2枚でMEAを挟んだ積層構成に対応したものの一部を示した概略断面図である。導電性セパレータ板45a、45bにおいて、ガス流通溝46afはリブ47arと対応している。同様に、47afと46ar、47bfと46br、46bfと47brが対応している。このため、図3の38aや38bのような厚さtのような肉薄部が存在しない。肉薄部が従来のものよりも厚くなっている。したがって、導電性セパレータ板の厚さをさらに薄くできるとともに、さらに製造上も圧縮成形や射出成形で作りやすい。
【0039】
図5は、図4の導電性セパレータ板の各ガス流通溝の断面形状を変えて、各溝の表面の幅Wfに比べて各溝の底面の幅Wbを小さくしたものである。導電性セパレータ板55a、55bにおいて、ガス流通溝56afはリブ57arと対応している。同様に、57afと56ar、57bfと56br、56bfと57brが対応している。このため、図3の38aや38bのような厚さtのような肉薄部が存在しない。肉薄部が、従来のものよりも厚くなっている。さらに、図5の構成の場合、溝底部の幅が小さくなるため、導電性セパレータ板を圧縮成形や射出成形で製造する場合、一層の型抜け向上により、更なる製造のしやすさが実現する。さらに、電池スタックの製造時の締結圧力や燃料電池使用時に燃料電池に加わる圧力により強い構造であり、したがって、導電性セパレータ板の厚さを一層薄くしやすいという特徴もある。
【0040】
このように、本発明の特徴を有している範囲において、導電性セパレータ板の並行するガス流通溝、リブの形状は任意に設計することができる。図4のように、対応する溝、リブの幅や深さ・高さを実質的に等しくしても良いし、図5のように変えても良い。またそれ以外でもリブの幅を広くして機械的強度を高めることもできる。
【0041】
本実施の形態1の、導電性セパレータ板を強化するという目的の中で、もう一つの特徴は、電池スタックの両端部の導電性セパレータ板の強化にある。すなわち、上述のように、電池スタックを締結ロッド等で締結するときの不均一な圧力分布の発生に起因する両端部の導電性セパレータ板の破損である。そのため、図1に図示しているように、両端部の導電性セパレータ板4ea、4ebの厚さを、他の導電性セパレータ板の厚さよりも大きくしている。この厚さを大きくする方法として導電性セパレータ板を2枚以上重ねても良い。
【0042】
図6は、電池スタックの両端部に用いる導電性セパレータ板の電池スタック側の一主面の一例の平面図であり、両端部の導電性セパレータ板の上記問題を解決する他の対策の一例を示す。図6は、一端部の導電性セパレータ板、例えば5aが、その一主面上に図2Bに示すアノード側ガス流通溝を有している場合の対策を示す。13a、14a、15aはそれぞれ酸化剤ガス、燃料ガス、冷却媒体を供給するためのマニホールド孔であり、13b、14b、15bはそれぞれ酸化剤ガス、燃料ガス、冷却媒体を排出するためのマニホールド孔である。16a、16bはカーボン材料あるいは金属材料などを構成要素とする補強部材である。この補強部材16a、16bは、図に示されているように、マニホールド孔14a、15b、13b、13a、15a、14bの周辺に貼り付けられており、かつそれら6つのマニホールドに対応した貫通孔を有している。この構成により、電池性能を維持しつつ、導電性セパレータ板5aを亀裂などの損傷を抑制できる。
【0043】
実施の形態2
本発明の特徴は、図4の46afと47arの関係のように、基本的に、各導電性セパレータ板の表裏両主面のうちの、一方の主面上のガス流通溝と他方の主面上のリブとが位置的に対応することを基本としている。実施の形態1では、さらにMEAを挟んで、隣り合う導電性セパレータ板のガス流通溝同士、例えば図4では、46arと46bfとが対応することを基本としている。しかしながら、MEAを挟んで隣り合う導電性セパレータ板の溝・リブ位置の対応関係は、本発明の特徴を有する範囲において変化させることができる。それを本実施の形態2として、以下説明する。
【0044】
図7は本発明の実施の形態2の燃料電池に用いた導電性セパレータ板2枚でMEAを挟んでなる積層構成の一部を示す概略断面図である。一対の導電性セパレータ板75a、75bでMEAを挟んだ構造であり、導電性セパレータ板75aは、ガス流通溝76af、76ar、リブ77af、77arを有し、導電性セパレータ板75bは、ガス流通溝76bf、76br、リブ77bf、77brを有する。図7においては、MEAを挟んで、例えば76arと77bfが対応している。すなわち、MEAを挟んで、隣り合う導電性セパレータ板の、一方のガス流通溝と他方のリブとが対応するようになっている。この構成においても、2種類の反応ガスはMEAを介して充分反応する。
【0045】
この構成は、図5の場合と同様、各導電性セパレータ板の従来のような肉薄部を避けることができるとともに、製造もしやすいという特徴がある。また、1種類だけの同一形状の導電性セパレータ板を複数用意して、すべてを単純に同一方向に積層していくことができ、製造がしやすいことも特徴である。なお、図7では各溝の幅Wgよりも各リブの幅Wrの方を大きくしている。WgとWrは同じでも良いが、WrがWgより大きい方が好ましい。それは、MEAを挟む2枚の導電性セパレータ板の、リブの両端部を位置的にオーバーラップさせることができ、そのオーバーラップ部分を通して、電池スタックを締結する際の締結圧力をリブ群に伝達させることができ、締結圧力に対抗しやすいためである。ただし、WrがWgの1.4倍よりも大きくなると、MEAへの反応ガス拡散が抑制されてしまうので、1.4倍以下である方が好ましい。
【0046】
図8は本発明の実施の形態2の燃料電池に用いることができる他の形態の導電性セパレータ板2枚を用いた積層構成の一部を示す概略断面図である。一対の導電性セパレータ板85a、85bでMEAを挟んだ構造であり、導電性セパレータ板85aは、ガス流通溝86af、86ar、リブ87af、87arを有し、導電性セパレータ板85bは、ガス流通溝86bf、86br、リブ87bf、87brを有する。図8においては、MEAを挟んで、例えば86arと87bfが対応している。すなわち、図7の場合と同様に、MEAを挟んで、隣り合う導電性セパレータ板の、一方のガス流通溝と他方のリブとが対応するようになっている。この構成においても、2種類の反応ガスはMEAを介して充分反応する。また、耐リーク性や強度を維持しつつ、圧力損失の小さい導電性セパレータ板を構成することが可能となる。
【0047】
この構成も、図7の場合と同様に、1種類だけの同一形状の導電性セパレータ板を複数用意して、すべてを単純に同一方向に積層していくことができ、製造がしやすいという特徴を有する。なお、図8でも、各溝の幅Wfよりも各リブの幅Wrの方を大きくしている。WfとWrは同じでも良いが、WrがWfより大きい方が、図7に基づいて上述した、WgとWrとの関係と同様な理由で好ましい。すなわち、MEAを挟む2枚の導電性セパレータ板の、リブの両端部を位置的にオーバーラップさせることができるためである。また、WgとWrとの関係と同様な理由で、WrがWfの1.4倍以下である方が好ましい。
【0048】
また、ガス流通溝の底面の幅Wbが、ガス流通溝の表面の幅Wfよりも小さいことが好ましい。それは、電池スタックへ締結圧力が加わった場合、導電性セパレータ板の中のクラック発生がより抑制されるためである。ただし、WbがWfの0.6倍より小さくなると、クラック発生の抑制がそれ以上向上しないとともに、ガス流通溝の断面積が減少し、ガスの圧力損失が増加する、すなわちガスの有効活用が損なわれるようになるため0.6倍以上であることが好ましい。
【0049】
なお、本実施の形態2においては、上記の通りの導電性セパレータ板の溝・リブの関係以外の電池スタックの構成、および燃料電池の構成は、図1を用いて実施形態1で記載したものと同じである。たとえば、図6で示した電池スタック端部の導電性セパレータ板の補強方法をそのまま用いることができる。したがって、それらの実施の形態1で記載した部分に対応した記載は省略する。
【0050】
実施例1
実施形態1に記載し、図1に示す高分子電解質型燃料電池を以下の方法で作製した。
【0051】
まず、30nmの平均一次粒子径を持つ導電性カーボン粒子であるケッチェンブラックEC(オランダ国、AKZO Chemie社製)を用いて、平均粒径約30Åの白金粒子を50重量%担持させたものを、カソード側の触媒とした。また、前記と同じケッチェンブラックECに、平均粒径約30Åの白金粒子とルテニウム粒子とを、それぞれ25%担持させたものを、アノード側の触媒とした。これらの触媒粉末をイソプロパノールに分散させた。一方、パーフルオロカーボンスルホン酸の粉末をエチルアルコールに分散させた。各々の触媒分散液をパーフルオロカーボンスルホン酸の分散液と混合し、ペースト状にした。これらの各ペーストを、スクリーン印刷法を用いて、厚み250μmのカーボン不織布の一方の面に塗工して、それぞれカソード触媒層とアノード触媒層を形成した。形成後の反応電極中に含まれる触媒金属の量は0.5mg/cm2 、パーフルオロカーボンスルホン酸の量は1.2mg/cm2 となるようにした。
【0052】
これらのアノード側およびカソード側電極は、電極より一回り大きい面積を有するプロトン伝導性高分子電解質膜の中心部の両面に、印刷した触媒層が電解質膜側に接するようにホットプレスにより接合した。ここでは、プロトン伝導性高分子電解質として、パーフルオロカーボンスルホン酸を薄膜化したもの(米国 デュポン社製:ナフィオン112)を用いた。さらに、電極の外周には、電解質膜を挟んで両側に、導電性セパレータ板と同一の形状に打ち抜いて作られたガスケットをホットプレスによって接合し、MEAを作製した。ここで、導電性セパレータ板は、等方性黒鉛材を機械加工して作ったものであり、ガスケットは、ブチルゴムのシートから作られたものである。
【0053】
このMEAを、図1のMEA4として用い、図1と図2で示す、導電性セパレータ板5a、5b、5ae、5be、ならびに集電板8a、8b、絶縁板9a、9b、端板10a、10b、締結ロッド11a、11b、締結ボルト12a、12b、12c、12dを用いて本実施例1の燃料電池を作製した。
【0054】
比較のため、導電性セパレータ板5a、5bを、図3に示す構成を有する従来例の導電性セパレータ板35a、35bに替え、その他は本実施例1と同じ構成の燃料電池を作製した。
これら2つの燃料電池に荷重を加え、その荷重を変化させた。そのとき導電性セパレータ板にクラックが発生し始めた最小荷重をクラック発生荷重として、表1に示す。
【0055】
【表1】
【0056】
表1からわかるように、本実施例1の導電性セパレータ板の耐クラック強度が大幅に向上していることがわかる。
【0057】
実施例2
本実施例2では、実施例1と同じ方法で、ただし導電性セパレータ板の形状だけを変えて燃料電池を作製した。本実施例2では、図7に示す断面構造の導電性セパレータ板を用いた。
【0058】
この際、6つの異なったリブ幅の導電性セパレータ板を用意した。まず、ある一つのリブ幅Wr1のものを用いて燃料電池を作製した。次に、リブ幅Wr2のものを用いて燃料電池を作製した。以下同じように、リブ幅Wr3−Wr6のものをそれぞれ用いて、合計で6種類の燃料電池を作製した。
【0059】
これらの燃料電池を運転させ、電池電圧を測定した結果を図9に示す。
なお、この運転のためには次のように条件設定した。すなわち、燃料電池を85℃に保持し、一方の電極側に83℃の露点となるように加湿・加温した水素ガスを、他方の電極側に78℃の露点となるように加湿・加温した空気を供給するとともに、燃料電池の燃料利用率80%、酸素利用率40%、電流密度0.3A/cm2とした。
【0060】
図9において、横軸はリブの幅Wrと溝の幅Wgとの比であり、値が大きくなるほどリブ幅が広くなることを示している。図9からわかるように、リブ幅が広くなるにつれて電池電圧、すなわち電池性能が低下する傾向がある。これは、リブに押さえられたMEA部分への反応ガスの拡散が低下するためであると考えられる。とくに、Wr対Wgの比が1.4をこえたところから顕著な落ち込みを示すことがわかる。したがって、Wr対Wgの比は1.4倍以下に設定することが望ましいことがわかる。
【0061】
実施例3
本実施例3では、実施例1と同じ方法で、ただし導電性セパレータ板の形状だけを変えて燃料電池を作製した。本実施例3では、図8に示す断面構造の導電性セパレータ板を用いた。
【0062】
この際、4つの異なった溝底面幅/溝表面幅の比(Wb/Wf)の導電性セパレータ板を用意した。まず、ある一つの幅比Wb1/Wf1のものを用いて燃料電池を作製した。次に、幅比Wb2/Wf2のものを用いて燃料電池を作製した。以下同じように、幅比Wb3/Wf3およびWb4/Wf4のものをそれぞれ用いて、合計で4種類の燃料電池を作製した。
【0063】
これら4種類の燃料電池に締結荷重を加え、その荷重を変化させた。そのとき導電性セパレータ板にクラックが発生し始めた最小荷重をクラック発生荷重として、表2に示す。
【0064】
【表2】
【0065】
表2からわかるように、溝底面幅/溝表面幅の比が0.6より小さくなる範囲では、クラック発生荷重は飽和している。すなわち溝底面幅/溝表面幅の比は、0.6より小さくしても、ガス流通溝の断面積が減少し、圧力損失が増加するだけで、強度的な効果は得られないことがわかる。したがって、溝底面の幅/溝表面の比は0.6以上であることが望ましい。
【0066】
実施例4
本実施例4では、実施例1と基本的には同じ方法で、ただし以下の点で部分的に構成を異ならせて燃料電池を作製した。
【0067】
すなわち、MEA1を2セル毎に、冷却媒体を流す冷却部を設けた。各冷却部は、2枚の導電性セパレータ板を組み合わせた複合セパレータ板により構成した。すなわち、一方の面に空気を流通させる溝を設け、他方の面に冷却水を流通させる溝を設けたカソード側セパレータ板を、まず1枚作った。さらに、一方の面に燃料ガスを流通させる溝を設け、他方の面に冷却水を流通させる溝を設けたアノード側セパレータ板を1枚作った。これらの2枚のセパレータ板を、それらの冷却媒体用溝を有する面同士が接するように、シール材を介して貼り合わせることにより、冷却部を構成した。
【0068】
そしてMEAを50セル分積層し、電池スタックの両端部に位置する導電性セパレータ板5ae、5beの厚さを5mmとして、集電板8a、8bと絶縁板9a、9bを介し、ステンレス製の端板10a、10bと締結ロッド11a、11bおよび締結ボルト等で20kgf/cm2の圧力で締結して本実施例4の燃料電池を作製した。
【0069】
比較のため、このように作製した本実施例4の燃料電池の両端部の導電性セパレータ板の厚さを、その他の中間部の導電性セパレータ板の厚さと同じ3mm厚のものに替えて比較例としての燃料電池を作製した。
締結後の各燃料電池を再び分解し、両端部の導電性セパレータ板を観察したところ、比較例の燃料電池では僅かな亀裂が発生していたが、ガス漏れを引き起こすほどの重大な亀裂ではなかった。この亀裂はマニホールド周辺に集中荷重を受けやすくなっていたためである。一方、本実施例4の燃料電池では、亀裂は見受けられなかった。
【0070】
このようにして作製した本実施例4と比較例の燃料電池2種類を、85℃に保持し、一方の電極側に83℃の露点となるように加湿・加温した水素ガスを、他方の電極側に78℃の露点となるように加湿・加温した空気を供給した。これらの燃料電池を燃料利用率80%、酸素利用率40%、電流密度0.3A/cm2の条件下で耐久試験を行った。この試験結果を図10に示す。
【0071】
図10からわかるように、試験開始から1000時間を経過した頃から、比較例の燃料電池の平均セル電圧、すなわち電池性能が低下し始める。この2種類の燃料電池について耐久試験が終了した後、締結圧力を取り除き、両端にあった導電性セパレータ板の状態を観察した。その結果、比較例では、マニホールド孔の周辺でガスあるいは冷却媒体がリークするほどの亀裂に成長しているのが観察された。この成長の原因は、初期の締結時に生じた亀裂が熱などのひずみによって、経時的に進行してしまったためである。これに対して、本実施例4の燃料電池では、両端部の導電性セパレータ板の厚さを大きくして強度を高めたことにより、亀裂などの損傷は全くなく、燃料電池の耐久性と安全性向上が確認できた。
【0072】
本実施例4では、両端部の導電性セパレータ板の厚さを3mmから5mmに厚くすることを試みたが、別の方法として、導電性セパレータ板を複数枚重ねて強度を高めることも可能である。そこで、両端部の導電性セパレータ板の厚さと枚数を変化させて、上記と同様な亀裂の発生の有無を調べた。ただし、電池スタックの中間部の導電性セパレータ板の厚さは3mmとした。その結果を、表3にまとめる。
【0073】
【表3】
【0074】
この表3から明らかなように、導電性セパレータ板を厚くしたり、複数枚数重ねたりすることによって、亀裂抑制効果が得られる。
【0075】
実施例5
本実施例5では、図6に一例を示すように、両端部の導電性セパレータ板の酸化剤ガス用マニホールド孔13a、13b、燃料電池用マニホールド孔14a、14b、および冷却媒体用マニホールド孔15a、15bの周辺にステンレス鋼を材料とした補強材16a、16bをシール材によって貼り付け、それ以外の燃料電池構成、および燃料電池の特性評価条件については、すべて実施例4と同一とした。
【0076】
その結果、2000時間の耐久試験において、電池性能の低下は見受けられず、燃料電池分解後に両端部の導電性セパレータ板を観察しても、亀裂などの損傷を受けている様子はなく、燃料電池の耐久性の改善と安全性の向上が確認できた。ここで、補強部材16a、16bの材料としてステンレス鋼を使用したが、補強することができる材料であれは種類は問わない。本実施例では、ステンレス鋼の他に、アルミニウム、ガラスファイバー、カーボンファイバー、PPS樹脂、フェノール樹脂などの材料を使用しても燃料電池の耐久性の改善と安全性の向上が確認できた。
【0077】
本実施例では、各マニホールド孔の周辺に補強部材を貼り付けることを試みたが、導電性の補強材をセパレータ板の全面に貼り付けることも可能である。
【0078】
実施例6
本実施例6では、両端部の導電性セパレータ板の材料として、厚さ3mmのステンレス鋼を使用した。導電性セパレータ板の形状は、実施例1で、等方性黒鉛材を機械加工して作った形状と同じように機械加工して作った。それ以外の燃料電池構成、および燃料電池の特性評価条件については、すべて実施例4と同一とした。ここでは、両端部の導電性セパレータ板の材料とてステンレス鋼を使用したが、導電性のある高強度の材料であれば種類は問わない。
【0079】
この結果、2000時間の耐久試験において、電池性能の低下は見受けられず、燃料電池分解後に両端部の導電性セパレータ板を観察しても、亀裂などの損傷を受けている様子はなく、燃料電池の耐久性の改善と安全性の向上が確認できた。
【0080】
産業上の利用の可能性
以上から明らかなように、本発明によれば、高分子電解質型燃料電池の導電性セパレータ板の機械的強度の問題を簡便に解決することができ、燃料電池の品質向上、小型化および低コスト化を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の実施の形態1の燃料電池の主要積層構成を示す概略断面図であり、部分拡大図を含む。
【図2A】 本発明の実施の形態1の燃料電池に用いた導電性セパレータ板のカソード側主面の平面図である。
【図2B】 同導電性セパレータ板のアノード側主面の平面図である。
【図3】 従来の導電性セパレータ板2枚でMEAを挟んでなる積層構成の一部を示す概略断面図である。
【図4】 本発明の実施の形態1の燃料電池に用いた導電性セパレータ板2枚でMEAを挟んでなる積層構成の一部を示す概略断面図である。
【図5】 本発明の実施の形態1の燃料電池に用いることができる他の形態の導電性セパレータ板2枚を用いた積層構成の一部を示す概略断面図である。
【図6】 本発明の実施の形態1および2の燃料電池に用いることができる電池スタック両端部用の導電性セパレータ板の電池スタック側一主面の平面図である。
【図7】 本発明の実施の形態2の燃料電池に用いた導電性セパレータ板2枚でMEAを挟んでなる積層構成の一部を示す概略断面図である。
【図8】 本発明の実施の形態2の燃料電池に用いることができる他の形態の導電性セパレータ板2枚を用いた積層構成の一部を示す概略断面図である。
【図9】 実施例2で作製された6個の燃料電池のリブ幅/溝幅の比と平均電圧の関係を示すグラフである。
【図10】 実施例4およびその比較例の燃料電池の耐久試験における平均セル電圧の経時変化を示すグラフである。
Claims (7)
- 複数の導電性セパレータ板および前記導電性セパレータ板の間に挿入された電解質膜−電極接合体を含む電池スタックを具備し、前記電解質膜−電極接合体が水素イオン伝導性高分子電解質膜、並びに前記水素イオン伝導性高分子電解質膜を挟むアノードおよびカソードを具備し、前記各導電性セパレータ板が、一方の主面に前記アノードに燃料ガスを供給・排出する複数の並行するガス流通溝を有し、他方の主面に前記カソードに酸化剤ガスを供給・排出する複数の並行するガス流通溝を有する高分子電解質型燃料電池であって、
前記導電性セパレータ板の両ガス流通溝は、一方の主面のガス流通溝が他方の主面のガス流通溝間のリブに対応するように配されており、
前記リブの表面から前記一方の主面の前記ガス流通溝の底面までの距離で定められるリブ厚と、前記一方の主面の前記ガス流通溝の深さとの合計長さが前記導電性セパレータ板のセパレータ板厚であり、前記リブの前記リブ厚は前記リブに隣り合う前記他方の主面のガス流通溝の深さよりも大きく、
前記電解質膜−電極接合体のアノードに燃料ガスを供給・排出するガス流通溝と、同じ電解質膜−電極接合体のカソードに酸化剤ガスを供給・排出するガス流通溝間のリブとが対応する位置にあり、
前記各導電性セパレータ板の一方の主面のリブの幅Wr1およびガス流通溝の幅Wg1、並びに他方の主面のリブの幅Wr2およびガス流通溝の幅Wg2がそれぞれ下記の式
1<Wr1/Wg1≦1.4
1<Wr2/Wg2≦1.4
を満たす、ことを特徴とする高分子電解質型燃料電池。 - 前記各導電性セパレータ板の、前記両ガス流通溝の底面の幅が、それぞれ前記両ガス流通溝の表面の幅より小さい請求項1記載の高分子電解質型燃料電池。
- 実質的にすべての前記複数の導電性セパレータ板が同一形状を有し、隣り合う導電性セパレータ板が、前記各導電性セパレータ板の主面上で同一方向に配されている請求項1記載の高分子電解質型燃料電池。
- 前記各導電性セパレータ板の、前記両ガス流通溝の底面の幅が、それぞれ前記両ガス流通溝の表面の幅より小さく、かつ0.6倍以上である請求項1記載の高分子電解質型燃料電池。
- 前記複数の導電性セパレータ板のうち、前記電池スタックの両端部に配した導電性セパレータ板の機械的強度を、他の導電性セパレータ板の機械的強度よりも高くした請求項1記載の高分子電解質型燃料電池。
- 前記複数の導電性セパレータ板のうち、前記両端部に配した導電性セパレータ板の厚みを、他の導電性セパレータ板の厚みより大きくした請求項5記載の高分子電解質型燃料電池。
- 前記両端部に配した前記導電性セパレータ板に、カーボン材料または金属材料を構成要素とする補強部材を付加した請求項6記載の高分子電解質型燃料電池。
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