JP4243341B2 - インクジェットヘッド - Google Patents
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Description
【産業上の利用分野】
本発明はインクジェットヘッドに関する。
【0002】
【従来の技術】
一般に、プリンタ、ファクシミリ、複写装置、プロッタ等の画像記録装置(画像形成装置を含む。)に用いられるインクジェット記録装置に搭載されるインクジェットヘッドとして、インク滴を吐出するノズルと、ノズルが連通するインク液室(吐出室、インク流路、インク室、圧力室、加圧室、加圧液室などとも称される。)と、インク液室の壁面を形成する第一電極を兼ねる振動板と、これに対向する電極(第二電極)とを備え、振動板を静電力で変形させてノズルからインク滴を吐出させる静電型インクジェットヘッドが知られている。
【0003】
このような静電型インクジェットヘッドにおいては、低電圧駆動化を図るために振動板と電極間の距離(ギャップ)を0.05〜2.0μmの範囲に設定するようにしているが、このように振動板と電極間のギャップが小さい場合、振動板の変形時に振動板と電極で形成される振動室内の空気圧力が上昇し、振動板の変形が阻害され、所望の変位量が得られない、いわゆるエアーダンパー効果が発生する。
【0004】
そこで、従来の静電型インクジェットヘッドにおいては、例えば特開平7−299908号公報に記載されているように振動板と電極によってて形成される振動室を少なくとも含むアクチュエータを気密に構成し、このアクチュエータ容積Vと、振動板によって排除される容積ΔVの比が2≦V/ΔV≦8の範囲にすることが提案されている。
【0005】
また、特開平11−34319号公報に記載されているように振動板直下以外の振動板基板と電極基板間のギャップを振動板直下の間隔より大きくしたり、各振動室に連通し、大気開口する開口を設けてエアーダンパー効果を低減することが提案されている。
【0006】
一方、このような振動板と電極間の微小ギャップは、振動板の正常な動作を行うために外部よりの塵埃や湿気から遮断される必要がある。そこで、特開平6−71882号公報にはエポキシ系接着剤でギャップを封止する方法が、特開平10−264381号公報には低融点硝子を用いてギャップを封止する方法が、また特開平11−286109号公報には封止されたギャップの気圧変化を補償する方法が開示されている。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、実験を繰り返したところ、アクチュエータ容積Vとしては振動板直下の容積のみがエアーダンパー効果の低減に大きな効果を及ぼし、振動板直下以外の容積を増加してもエアーダンパー効果の低減効果が小さいことが判明した。
【0008】
そのため、上述した従来のインクジェットヘッドのように、アクチュエータ容積Vと振動板によって排除される容積ΔVの比を2≦V/ΔV≦8の範囲にするという数値限定をしたところで、実際のインクジェットヘッドにおけるエアーダンパ効果の低減効果が得られることにはならない。
【0009】
まして、振動板直下以外の振動板基板と電極基板間のギャップを振動板直下の間隔より大きくしたり、各振動室に連通して大気開口する開口を設けるだけでは、十分なエアーダンパ効果の低減ができない。
【0010】
さらに、振動室の開口部をエポキシ系接着剤や低融点硝子を用いて封止した場合、ギャップ内圧力が気圧変化や温度変化によって変化して振動板の変位特性が変動し、安定した振動板変位が得られないという課題がある。
【0011】
本発明は上記の課題に鑑みてなされたものであり、エアーダンパ効果を有効に低減することを目的とし、更に気圧変化や温度変化による振動板変位特性の変動を防止することを目的とする。
【0012】
【課題を解決するための手段】
上記の課題を解決するため、本発明に係るインクジェットヘッドは、振動板と電極によって形成される振動室に連通する第一の空気室を電極基板に設けるとともに、一方の端が複数の第一の空気室に共通に連通し、他方の端が大気に連通する第二の空気室を設けたものである。
【0013】
ここで、第二の空気室は、一方の端が千鳥状に配列された2列のノズル列に対応した複数の奇数列、偶数列の第一の空気室に共通に連通し、他方の端が大気に連通することが好ましい。また、第二の空気室は、その一方の端が、複数の第一の空気室に共通に連通し、他方の端が大気に複数の開口で連通していることが好ましい。
【0014】
また、複数の振動室の開口部を第一の封止材で封止するとともに、複数の第一の空気室に連通する、第二の空気室の大気開口部を第二の封止材で封止することが好ましい。
【0015】
さらに、複数の振動室の開口部を第一の封止材で封止するとともに、複数の第一の空気室に連通する、第二の空気室の大気開口部を弾性部材を介して封止することが好ましい。この場合、第二の空気室の大気開口部を封止する弾性部材は、その弾性率が振動板の弾性率より小さいことが好ましい。
【0018】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を添付図面を参照して説明する。先ず、本発明に係るインクジェットヘッドの第1実施形態の全体構成について図1乃至図4を参照して説明する。なお、図1は同ヘッドの分解斜視説明図、図2は同ヘッドの振動板長手方向に沿う断面説明図、図3は同ヘッドの振動板長手方向に沿う要部拡大断面説明図、図4は同ヘッドの振動板短手方向に沿う要部拡大断面図である。
【0019】
このインクジェットヘッドは、単結晶シリコン基板、SOI基板などのシリコン基板等を用いた第一基板である流路基板(振動板基板)1と、この流路基板1の下側に設けたシリコン基板又はパイレックスガラス基板或いはセラミックス基板等を用いた第二基板である電極基板2と、流路基板1の上側に設けた第三基板であるノズル板3とを備え、インク滴を吐出するノズル4が連通するインク液室である吐出室6、各吐出室6にインク供給路を兼ねた流体抵抗部7を介して連通する共通液室8などを形成している。
【0020】
流路基板1にはノズル4が連通する複数の吐出室6及びこの吐出室6の壁面である底部をなす振動板10(電極を兼ねている)を形成する凹部を形成し、ノズル板3にはノズル4となる孔及び流体抵抗部7を形成する溝を形成し、また流路基板1と電極基板2には共通液室8を形成する貫通部を形成している。
【0021】
ここで、流路基板1は、例えば単結晶シリコン基板を用いた場合、予め振動板厚さにボロンを注入してエッチングストップ層となる高濃度ボロン層を形成し、電極基板2と接合した後、吐出室6となる凹部をKOH水溶液などのエッチング液を用いて異方性エッチングすることにより、このとき高濃度ボロン層がエッチングストップ層となって振動板10が高精度に形成される。
【0022】
また、流路基板1としては、シリコン基板であるベース基板と活性層基板とを酸化膜を介して接合したSOI(Silicon On Insulator)基板を用いることもできる。この場合、厚さ1〜3μmほどのシリコン活性層を振動板10に用いる。
【0023】
なお、振動板10に別途第一電極となる電極膜を形成してもよいが、上述したようにシリコン基板を用いて振動板が電極を兼ねるようにしている。また、振動板10の電極基板2側の面に絶縁膜を形成することもできる。この絶縁膜としてはSiO2等の酸化膜系絶縁膜、Si3N4等の窒化膜系絶縁膜などを用いることができる。絶縁膜の成膜は、振動板表面を熱酸化して酸化膜を形成したり、成膜手法を用いたりすることができる。
【0024】
また、電極基板2にはp型或いはn型の単結晶シリコン基板を用いて、熱酸化法などで酸化膜2aを形成し、この酸化層2aに振動室16を形成するための凹部14を形成して、この凹部14底面に振動板10に所定のギャップを置いて対向する電極15を設け、これらの振動板10と電極15とによって静電型アクチュエータ部を構成している。この電極基板2には振動室16に連通する空気室等を形成しているが、その詳細については後述する。
【0025】
また、電極15表面にはSiO2膜などの酸化膜系絶縁膜、Si3N4膜などの窒化膜系絶縁膜からなる誘電絶縁膜17を成膜している。なお、上述したように電極15表面に絶縁膜17を形成しないで、振動板10側に絶縁膜を形成することもできる。さらに、電極15としては、金、或いは、通常半導体素子の形成プロセスで一般的に用いられるAl、Cr、Ni等の金属材料や、Ti、TiN、W等の高融点金属などを用いることができる。
【0026】
これらの流路基板1と電極基板2とはシリコンの直接接合で接合している。
【0027】
ノズル板3には、多数のノズル4を形成するとともに、共通液室8と吐出室6を連通するための流体抵抗部7を形成する溝部を形成している。ここでは、インク吐出面(ノズル表面側)には撥水性皮膜を成膜している。このノズル板3にはステンレス基板を用いているが、この他、エレクトロフォーミング(電鋳)工法によるニッケルメッキ膜、ポリイミド等の樹脂にエキシマレーザー加工をしたもの、金属プレートにプレス加工で穴加工をしたもの等でも用いることができる。
【0028】
また、撥水性皮膜は、フッ素系樹脂微粒子であるポリテトラフルオロエチレン微粒子を分散させた電解又は無電解ニッケル共析メッキ(PTFE−Ni共析メッキ)によるメッキ皮膜で形成することができる。
【0029】
このインクジェットヘッドではノズル4を二列(ノズル列4Aと4B)配置し、この各ノズル列4A、4Bに対応して吐出室6、振動板10、電極15なども二列配置し、各ノズル列の中央部に共通液室8を配置して、左右の吐出室6にインクを供給する構成を採用している。これにより、簡単なヘッド構成で多数のノズルを有するマルチノズルヘッドを構成することができる。
【0030】
そして、電極15は外部に延設して接続部(電極パッド部)15aとし、これにヘッド駆動回路であるドライバIC20をワイヤボンドによって搭載したFPCケーブル21を異方性導電膜などを介して接続している。
【0031】
さらに、インクジェットヘッド全体をフレーム部材25上に接着剤で接合している。このフレーム部材25にはインクジェットヘッドの共通液室8に外部からインクを供給するためのインク供給穴26を形成しており、またFPCケーブル21等はフレーム部材25に形成した穴部27に収納される。
【0032】
このフレーム部材25とノズル板3との間はエポキシ樹脂等の接着剤を用いたギャップ封止剤28にて封止し、撥水性を有するノズル板3表面のインクが電極基板2やFPCケーブル21等に回り込むことを防止している。
【0033】
そして、このヘッドのフレーム部材25にはインクカートリッジとのジョイント部材30が連結されて、フレーム部材25に熱融着したフィルタ31を介してインクカートリッジからインク供給穴26を通じて共通液室8にインクが供給される。
【0034】
このように構成したインクジェットヘッドにおいては、振動板10を共通電極とし電極15を個別電極として、振動板10と電極15との間に駆動波形を印加することにより、振動板10と電極15との間に静電力(静電吸引力)が発生して、振動板10が電極15側に変形変位する。これにより、吐出室6の内容積が拡張されて内圧が下がるため、流体抵抗部7を介して共通液室8から吐出室6にインクが充填される。
【0035】
次いで、電極15への電圧印加を断つと、静電力が作用しなくなり、振動板10はそれ自身のもつ弾性によって復元する。この動作に伴い吐出室6の内圧が上昇し、ノズル5からインク滴が吐出される。再び電極に電圧を印加すると、再び静電吸引力によって振動板は電極側に引き込まれる。
【0036】
そこで、このインクジェットヘッドにおける本発明の構成について図4のほか図5及び図6をも参照して詳細に説明する。なお、図5は同ヘッドの電極基板の上面説明図、図6は同ヘッドの要部平面説明図である。
電極基板2には、図4及び図5に示すように、振動板10と電極15によって形成される振動室16にスリット40を介して連通する第一の空気室41を設けるとともに、一方の端が複数の第一の空気室41に共通に連通し、他方の端が大気に連通する第二の空気室42を設けている。このように電極基板2の電極15に下方側に空気室41を形成することで、大幅な工程増加を招くことがなく、また空気室41を設けることによるヘッドのチップサイズの増加及びこれに伴なうコストの増加を抑えることができる。
【0037】
この場合、第二の空気室42は、一方の端がノズル4が千鳥状に配列された2列のノズル列4A、4Bに対応した複数の奇数列、偶数列の第一の空気室41に共通に連通し、他方の端が大気に連通している。この場合、各ノズル列4A、4B毎に第一の空気室41に一方の端が連通し、他方の端が大気に開口する大気開口部42aを有する第二の空気室42を独立して設けることもできる。また、図7に示すように、第二の空気室42の大気開口部42aを電極基板2の同じ端部側に複数形成することもできる。
【0038】
そして、各振動室16の開口部16aを第一の封止材46で封止している。この封止材46としてはガスバリヤー性に優れた材料、例えばエポキシ系接着剤(例えば、エイブルボンド社製342−3:商品名)などを用いている。なお、この第一の封止材46による封止を行う際に、封止材46より微少なガスが発生する場合もあるが、第一の封止を行うときには、スリット40及び第一の空気室41を通じて振動室16に連通している大気開口側(第二の空気室42)が封止されていないので、ガス発生に伴う振動板10の変形をさけることができる。
【0039】
また、第二の空気室42の大気開口部42aは第二の封止材47で封止している。このとき、大気開口部42aは振動板10より弾性率が小さい弾性部材48を介して封止している。これにより、第二の封止材47で封止された場合のガス発生、気密封止された後の気圧変化、温度変化に伴う圧力変化等を弾性率の小さい弾性部材48で吸収することができて、圧力変化等による振動板10の変形を防止して、振動特性がばらつくことを防止できる。
【0040】
また、この弾性部材48はガスバリヤー性に優れる材料が好ましく、エチレンビニルアルコール共重合樹脂を、弾性率の小さい高密度ポリエチレン樹脂ではさみこんだ積層部材が特に好ましい。なお、第二の空気室42の大気開口部42aを複数設けることで、気圧変化、温度変化に伴う圧力変化を弾性部材48で吸収際に、弾性部材48の面積が大きくなり、吸収効果が増加する。
【0041】
そこで、このインクジェットヘッドにおけるエアーダンパ効果の低減作用について図4をも参照して説明する。
先ず、振動板10と電極15間で構成されるギャップ空間である振動室16の容積Vは、振動板10の短手方向長さをa、長手方向長さをb、ギャップ長をδとすると、ほぼV=a×b×δとなる。一方、振動板10の変形時の排除容積ΔVは、ΔV=8×a×b×δ/15となる。なお、ここでは、振動板10の変位量としてδを採用しているが、これは振動板10を電極15に当接させて駆動するいわゆる当接駆動方式の方が低電圧化、インク滴吐出量の均一化の点で優れるからである。
【0042】
ところで、このような当接駆動方式の場合、第一の空気室41を設けないで凹部14底面を平坦面としたとき(図8の例)、振動室16の容積(アクチュエータ容積)Vと排除容積ΔVの比V/ΔVは、約V/ΔV=15/8で、2以下の値となる。ここで、実験を繰り返した結果、エアーダンパー効果は、アクチュエータ容積Vとしては、振動板直下の振動室容積の増加のみが大きな効果を及ぼし、振動板直下以外の容積増加にエアーダンパ効果の低減効果は小さいことが判明した。
【0043】
そこで、この実施形態のように、電極基板2の振動板10に略対向する部分、すなわち、ここでは凹部14底面の電極15を形成しない部分に振動室16に臨むスリット40を介して振動室16に連通する第一の空気室41を設けることによって、実効的な振動室容積Vを大きくし、V/ΔVの値を大きくすることができて、エアーダンパー効果を低減でき、低電圧駆動で安定した振動板変位を得ることができる。
【0044】
この場合、第一の空気室41を電極基板2内部に設けてスリット40を介して振動室16に連通させることで、電極形成面(凹部14底面)の面積の減少が少なく、電極形成面積が減少して静電力が低下することを回避できる。そして、第一の空気室41の幅をスリット40の幅よりも広くすることで、大きな容積の第一の空気室41を確保することができる。
【0045】
ここで、この実施形態に係るインクジェットヘッドの具体例について製造工程を含めて説明する。電極基板2としては結晶面方位(100)のシリコン基板を用いて、熱酸化法で厚さ2μmの酸化膜2aを形成した。そして、熱酸化膜2aにドライエッチング法により振動室16となる凹部14を深さ0.6μmで形成した。この凹部14の底面には厚さ0.15μmのTiNからなる電極15をスパッタリングにより成膜し、ドライエッチングによりパターニングした。電極保護膜17としてSiO2を厚さ0.15μmになるようにP−CVD法で成膜し、ドライエッチングによりパターニングした。
【0046】
次いで、凹部14底面の電極15周辺に幅4μm、振動板長さ1mmに対して長さ1.1mmの切り欠き(スリット40)をドライエッチングによりシリコン基板(電極基板2)の熱酸化膜2aがない領域に到達する深さまで形成した。その後、レジストパターンを形成して切り欠き部のみを露出させ、ドライエッチングを行うことにより、電極基板2の内部に等方性エッチングで得られる形状とほぼ同じ形状の第一の空気室41を形成した。
【0047】
このとき、第一の空気室41の大きさはエッチング時間で変化させることができ、第一の空気室41の形状を台形で近似したとき、上辺長さ16μm、下辺長さ6μm、深さ12μmの第一の空気室41とした。熱酸化膜2aの切り欠き部(スリット40)容積を除いても、第一の空気室41全体の容積Wと排除容積ΔVの比W/ΔVは「12」を越える値となった。
【0048】
一方、流路基板1としてはシリコン基板が熱酸化膜を介して接合されたSOI基板を使用し、このSOI基板と電極基板2を温度900℃の条件で直接接合した後、SOI基板の面方位(110)のSiをウエットエッチングによりエッチングして、吐出室6等となる凹部を形成すると同時に板厚3μmの振動板10を形成した。
【0049】
そして、振動室16の開口部を第一の封止材46としてのエポキシ系接着剤を用いて封止した。その後、第二の空気室42の大気開口部42aを第二の封止材47で弾性部材48を介して封止した。
【0050】
また、比較例として、図8に示すように第一の空気室41及びスリット40を形成しないインクジェットヘッドを製作した。
【0051】
そして、これらの各インクジェットヘッドのアクチュエータの振動変位量をレーザードップラー計で測定した。この結果、振動板10が電極15表面の保護膜17に当接を開始する電圧は、第一の空気室41を設けた場合の方が約6V低く、第一の空気室41が実質的にも振動室16として機能し、その効果の大きいことを確認した。
【0052】
また、第一の空気室41のないアクチュエータの場合、駆動周波数を20KHz以上にすると振動板10の変位が不安定になる現象が確認されたが、第一の空気室21を設けた場合にはこのような周波数変化に対する振動変位の不安定現象がないことが確認された。
【0053】
さらに、ノズル板3を透明のガラス板で構成し、第一の封止材46及び第二の封止材47による封止を行った後に、高温槽内で温度変化をさせながら、振動板10の変形をレーザードップラー計で測定した。この結果、振動板10の変位量は、温度変化に対してほぼ一定で、弾性部材48が圧力を吸収することが確認された。
【0054】
次に、本発明に係るインクジェットヘッドの第2実施形態について図9乃至図11を参照して説明する。なお、図9は同ヘッドの振動板短手方向に沿う断面説明図、図10は同ヘッドの電極基板の上面説明図、図11は同ヘッドの平面説明図である。
このインクジェットヘッドでは、電極基板2に、電極15の中央部に形成したスリット50を介して振動室16に連通する空気室51を形成するとともに、電極基板2の裏面側には空気室51を大気に連通する大気開口部52を形成したものである。
【0055】
ここで、電極基板2の大気開口部52は、図11に示すように千鳥状に配列された2列のノズル列4A、4Bに対応して複数の奇数列、偶数列の空気室51に図10に示すように連通している。また、振動室16の開口部は前述した第一の封止材46で封止すると共に、電極基板2の大気開口部52は弾性部材53を介して図示しない第二の封止材(前述した第二の封止材47と同じもの)で封止している。
【0056】
この場合、第一の封止材46による封止を行う際に、封止材46より微少なガスが発生する場合もあるが、第一の封止を行うときには、スリット50及び空気室51を通じて振動室16に連通している大気開口部52が封止されていないので、ガス発生に伴う振動板10の変形をさけることができる。
【0057】
また、電極基板2の大気開口部52を封止している弾性部材53は、その弾性率が振動板10の弾性率より小さく、ガスバリヤー性の高い樹脂材料を、弾性率の小さい樹脂材料で積層した樹脂材料である。例えば、前述したように、エチレンビニルアルコール共重合樹脂を、弾性率の小さい高密度ポリエチレン樹脂ではさみこんだ積層部材が特に好ましい。
【0058】
ここで、この実施形態に係るインクジェットヘッドの具体例について製造工程を含めて説明する。前記第1実施形態と同様に、電極基板2としては結晶面方位(100)のシリコン基板を用いて、熱酸化法で厚さ2μmの酸化膜2aを形成した。そして、熱酸化膜2aにドライエッチング法により振動室16となる凹部14を深さ0.6μmで形成した。この凹部14の底面には厚さ0.15μmのTiNからなる電極15をスパッタリングにより成膜し、ドライエッチングによりパターニングした。電極保護膜17としてSiO2を厚さ0.15μmになるようにP−CVD法で成膜し、ドライエッチングによりパターニングした。
【0059】
次いで、凹部14底面の電極15中央部に周辺に幅4μm、振動板長さ1mmに対して長さ1.1mmの切り欠き(スリット50)をドライエッチングによりシリコン基板(電極基板2)の熱酸化膜2aがない領域に到達する深さまで形成した。その後、レジストパターンを形成して切り欠き部のみを露出させ、ドライエッチングを行うことにより、電極15の直下に等方性エッチングで得られる形状とほぼ同じ形状の空気室51を形成した。
【0060】
このとき、空気室51の大きさはエッチング時間で変化させることができ、空気室51の形状を台形で近似したとき、上辺長さ16μm、下辺長さ6μm、深さ12μmの空気室51とした。
【0061】
さらに、電極基板2の裏面からKOHによる等方性エッチングを行い、各空気室51に連通する電極基板裏面側の大気開口部52を形成した。
【0062】
なお、ここでも、流路基板1としてはシリコン基板が熱酸化膜を介して接合されたSOI基板を使用し、このSOI基板と電極基板2を温度900℃の条件で直接接合した後、SOI基板の面方位(110)のSiをウエットエッチングによりエッチングして、吐出室6等となる凹部を形成すると同時に板厚3μmの振動板10を形成した。
【0063】
そして、振動室16の開口部を第一の封止材46としてのエポキシ系接着剤を用いて封止した。その後、電極基板裏面の大気開口部52を前記第二の封止材47を用いて弾性部材53を介して封止した。
【0064】
次に、本発明に係るインクジェットヘッドの第3実施形態について図12及び図13を参照して説明する。
このインクジェットヘッドにおいても、電極基板2に電極15の中央部及び酸化膜2aに形成したスリット50を介して振動室16に連通する空気室51を形成している。これらのスリット50及び空気室51は、その一方の端は各振動室16に共通に、更に千鳥状に配置された各振動室16の列に共通に連通している。また、そして、スリット50及び空気室51を共通に引き出した引き出し部55の底部は電極基板2の裏面側に形成した大気開口部56を介して大気開口している。
【0065】
ここで、振動室16の開口部は前述した第一の封止材46で封止すると共に、電極基板2の大気開口部56は前述した弾性部材(前述した弾性部材53と同じもの)を介して第二の封止材(前述した第二の封止材47と同じもの)で封止している。
【0066】
そこで、これらの第2、第3実施形態のアクチュエータの振動変位量をレーザードップラー計で測定した。この結果、振動板10が電極基板2に当接を開始する電圧は、空気室51を設けた場合の方が約6Volt低く、空気室51が振動室として機能し、その効果の大きいことが確認された。また、空気室51のないアクチュエータの場合、駆動周波数を20KHz以上にすると振動変位が不安定になる現象が確認されたが、空気室51を設けた場合にはこのような周波数変化に対する振動変位の不安定現象がないことが確認された。
【0067】
また、振動板10の変形の観察を容易にするため、ノズル板をガラス板で構成し、振動変位を測定した。第一、第二の封止を行った後に、高温槽内で温度変化をさせながら、振動板10の変形をレーザードップラー計で測定した。この結果、振動板10の変位量は温度変化に対してほぼ一定で、弾性部材が圧力を効果的に吸収することが確認された。
【0068】
なお、上記実施形態においては、本発明を振動板変位方向とインク滴吐出方向が同じになるサイドシュータ方式のインクジェットヘッドに適用したが、振動板変位方向とインク滴吐出方向と直交するエッジシュータ方式のインクジェットヘッドにも同様に適用することができる。さらに、インクジェットヘッドだけでなく液体レジスト等を吐出させる液滴吐出ヘッドなどにも適用できる。また、振動板と液室基板とを同一基板から形成したが、振動板と液室基板とを別体にして接合することもできる。
【0069】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明に係るインクジェットヘッドによれば、振動板と電極によって形成される振動室に連通する第一の空気室と、一方の端が複数の第一の空気室に共通に連通し、他方の端が大気に連通する第二の空気室を設けたので、実効的な振動室容積が増加し、振動板変形時に排除される容積との比が大きくなり、エア−ダンパー効果を著しく低減でき、低電圧駆動で安定した振動板変位を得ることができる。
【0070】
ここで、第二の空気室は、一方の端が千鳥状に配列された2列のノズル列に対応した複数の奇数列、偶数列の第一の空気室に共通に連通し、他方の端が大気に連通することで、ノズル密度を増加しつつエア−ダンパー効果を著しく低減できる。また、第二の空気室は、その一方の端が、複数の第一の空気室に共通に連通し、他方の端が大気に複数の開口で連通していることで、開口を弾性部材を介して封止するときに弾性部材の開口に接する面積が大きくなって圧力変動の吸収効果が上がる。
【0071】
また、複数の振動室の開口部を第一の封止材で封止するとともに、複数の第一の空気室に連通する、第二の空気室の大気開口部を第二の封止材で封止することで、振動室内への塵、湿気の侵入を防止して振動板変位特性の変動を防止することができる。
【0072】
さらに、複数の振動室の開口部を第一の封止材で封止するとともに、複数の第一の空気室に連通する、第二の空気室の大気開口部を弾性部材を介して封止することで、封止後の温度、気圧などの環境変化によって振動板が変形することを防止できる。
【0073】
この場合、第二の空気室の大気開口部を封止する弾性部材は、その弾性率が振動板の弾性率より小さいことで、封止後の温度、気圧などの環境変化に対して弾性部材が先に変形し、より確実に振動板の変形を防止できる。また、第二の空気室の大気開口部を封止する弾性部材は、ガスバリヤー性の高い樹脂材料を、弾性率の小さい樹脂材料で積層した樹脂材料とすることで、第二の空気室への外気等の侵入を確実に防止できる。
【0074】
本発明に係るインクジェットヘッドによれば、振動板と電極によって形成される振動室に連通する空気室を電極基板に設けるとともに、この電極基板の裏面側には空気室を大気に連通する大気開口部を形成したので、実効的な振動室容積が増加し、振動板変形時に排除される容積との比が大きくなり、エア−ダンパー効果を著しく低減でき、低電圧駆動で安定した振動板変位を得ることができる。
【0075】
ここで、電極基板の大気開口部は、千鳥状に配列された2列のノズル列に対応した複数の奇数列、偶数列の空気室に共通に連通していることで、ノズル密度を高くしつつエアーダンパ効果を著しく低減できる。
【0076】
また、振動室の開口部を第一の封止材で封止すると共に、電極基板の大気開口部を第二の封止材で、弾性部材を介して封止することで、振動室内への塵、外気の侵入などによって振動板の振動特性が変動することを防止できるとともに、気圧、温度などの環境変化による圧力変動を弾性部材で吸収することできて、より確実に振動板の振動特性の変動を抑えることができる。
【0077】
この場合、電極基板の大気開口部を封止する弾性部材は、その弾性率が振動板の弾性率より小さいことで、封止後の温度、気圧などの環境変化に対して弾性部材が先に変形し、より確実に振動板の変形を防止できる。また、電極基板の大気開口部を封止する弾性部材は、ガスバリヤー性の高い樹脂材料を、弾性率の小さい樹脂材料で積層した樹脂材料とすることで、第二の空気室への外気等の侵入を確実に防止できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係るインクジェットヘッドの第1実施形態を示す分解斜視説明図
【図2】同ヘッドの振動板長手方向に沿う断面説明図
【図3】同ヘッドの振動板長手方向に沿う要部拡大断面説明図
【図4】同ヘッドの振動板短手方向に沿う断面説明図
【図5】同ヘッドの電極基板の上面説明図
【図6】同ヘッドの平面説明図
【図7】同ヘッドの第二の空気室の他の例を説明する電極基板の上面説明図
【図8】同ヘッドの作用説明に供する比較例のヘッドの振動板短手方向に沿う断面説明図
【図9】本発明に係るインクジェットヘッドの第2実施形態を示す振動板短手方向に沿う断面説明図
【図10】同ヘッドの電極基板の上面説明図
【図11】同ヘッドの平面説明図
【図12】本発明に係るインクジェットヘッドの第3実施形態を示す振動板短手方向に沿う断面説明図
【図13】同ヘッドの電極基板の上面説明図
【符号の説明】
1…流路基板、2…電極基板、3…ノズル板、4…ノズル、6…吐出室、7…流体抵抗部、8…共通液室、10…振動板、14…凹部、15…電極、16…振動室、40…スリット、41…第一の空気室、42…第二の空気室、46…第一の封止材、47…第二の封止材、48…弾性部材、50…スリット、51…空気室、52…大気開口部、53…弾性部材。
Claims (6)
- ノズルと、このノズルに連通するインク液室と、このインク液室の壁面の一部を形成する振動板と、この振動板に対向して配置され、電極基板上に形成された電極を有し、前記振動板と前記電極との間に発生させる静電力で前記振動板を変形させることにより前記ノズルからインク滴を吐出するインクジェットヘッドにおいて、
振動板と電極によって形成される振動室に連通する第一の空気室を前記電極基板に設けるとともに、
一方の端が複数の前記第一の空気室に共通に連通し、他方の端が大気に連通する第二の空気室を設けた
ことを特徴とするインクジェットヘッド。 - 請求項1に記載のインクジェットヘッドにおいて、前記第二の空気室は、一方の端が千鳥状に配列された2列のノズル列に対応した複数の奇数列、偶数列の第一の空気室に共通に連通し、他方の端が大気に連通することを特徴とするインクジェットヘッド。
- 請求項1又は2に記載のインクジェットヘッドにおいて、前記第二の空気室は、その一方の端が、複数の第一の空気室に共通に連通し、他方の端が大気に複数の開口で連通していることを特徴とするインクジェットヘッド。
- 請求項1乃至3のいずれかに記載のインクジェットヘッドにおいて、前記複数の振動室は前記振動板と前記電極基板との間で形成される開口部を通じて開口し、前記複数の振動室の開口部を第一の封止材で封止するとともに、複数の第一の空気室に連通する、第二の空気室の大気開口部を第二の封止材で封止したことを特徴とするインクジェットヘッド。
- 請求項1乃至3のいずれかに記載のインクジェットヘッドにおいて、複数の振動室の開口部を第一の封止材で封止するとともに、複数の第一の空気室に連通する、第二の空気室の大気開口部を弾性部材を介して封止したことを特徴とするインクジェットヘッド。
- 請求項5に記載のインクジェットヘッドにおいて、前記第二の空気室の大気開口部を封止する弾性部材は、その弾性率が前記振動板の弾性率より小さいことを特徴とするインクジェットヘッド。
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