JP4249092B2 - 塗装後耐食性に優れたAl−Mg−Si系アルミニウム合金板の製造方法 - Google Patents

塗装後耐食性に優れたAl−Mg−Si系アルミニウム合金板の製造方法 Download PDF

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本発明は、塗装後耐食性に優れたAl−Mg−Si系アルミニウム合金板の製造方法、とくに、自動車外板用として好適に使用できる塗装後の耐食性に優れたAl−Mg−Si系アルミニウム合金板の製造方法に関する。
自動車軽量化の観点から年々使用が増加している自動車外板用アルミニウム合金材には、成形性、形状凍結性、耐デント性、耐食性、プレス成形で肌荒れやリジングマークが生じない製品面質などが要求され、このような特性を満たすために、従来、自動車外板用アルミニウム合金としては、Al−Mg系(5000系)合金、Al−Mg−Si系(6000系)合金が使用されている。
このうち、6000系合金は、熱処理型合金であるため、電着塗装時の焼付け硬化性を利用したゲージダウンでさらに軽量化が期待することができるが、5000系合金に比べてリン酸亜鉛処理性が劣るという問題がある。通常、自動車の車体組立て工程においては、アルミニウム合金板を鋼板部品と接合後、化成処理、リン酸亜鉛処理から電着塗装までを連続工程として行うため、アルミニウム合金板には鋼板と同様のリン酸亜鉛処理性が要求される。
自動車外板用アルミニウム合金材は、冷間圧延材を溶体化処理したのち使用に供されるが、5000系合金の場合、溶体化処理により表面に強固なマグネシウム系酸化皮膜が形成されてリン酸亜鉛処理性を低下させるため、リン酸亜鉛処理性を向上させ、その後の電着塗膜の密着性や塗装耐食性を改善するために、溶体化処理後、酸性洗浄剤による最終洗浄が不可欠であり、工程上専用の洗浄設備が必要であった。
一方、6000系合金においては、溶体化処理において、5000系合金のように強固な酸化皮膜は形成されないが、酸化皮膜や圧延油の焼付きによるリン酸亜鉛皮膜生成量の減少を考慮して、酸またはアルカリによる最終洗浄を施し、さらに酸やアルカリを落とすための水洗、乾燥を実施することによりリン酸亜鉛処理性を向上させ、5000系合金と同等の塗装後耐食性を維持している(例えば特許文献1参照)。
特開平9−195019号公報
発明者らは、前記のように、ゲージダウンにより軽量化が期待できる自動車外板用Al−Mg−Si系(6000系)合金において、従来と同等のリン酸亜鉛処理性を保持しながらさらに製造コストの低減を達成するために、溶体化処理において生成する酸化皮膜量、リン酸亜鉛処理を阻害する要因などについて検討を行った結果、溶体化処理前に合金板表面の炭素量を低減することにより、溶体化処理後に酸またはアルカリによる洗浄を行わなくても、従来のように、溶体化処理後に最終洗浄が施された場合と同様のリン酸亜鉛処理特性が得られることを見出した。
本発明は、上記の知見に基づいてさらに検討を加えた結果としてなされたものであり、その目的は、最終の洗浄工程を省略でき、溶体化処理後に酸洗浄を行ったAl−Mg系(5000系)合金と同様のリン酸亜鉛処理性および塗装後耐食性を得ることを可能とする塗装後耐食性に優れたAl−Mg−Si系アルミニウム合金板およびその製造方法を提供することにある。
上記の目的を達成するための請求項1による塗装後耐食性に優れたAl−Mg−Si系アルミニウム合金板の製造方法は、溶体化処理後に無洗浄で使用に供されるAl−Mg−Si系アルミニウム合金板の製造方法であって、冷間圧延された前記アルミニウム合金板を、該冷間圧延で使用されている冷間圧延油、または導電率50μS/cm以下の精製水を60℃以上の温度に加熱した加熱精製水で洗浄した後、溶体化処理し、燃焼−赤外線吸収法により定量された板表面の全炭素(C)量10mg/m以下、蛍光X線分析法により検出されるC検出量を0.9kcps以下としたことを特徴とする。
本発明のAl−Mg−Si系アルミニウム合金板によれば、最終の洗浄工程を省略することができ、溶体化処理後に酸洗浄を行ったAl−Mg系(5000系)合金と同様のリン酸亜鉛処理性および塗装後耐食性を得ることができ、製造コストの低減を達成することができる。一方、本発明のAl−Mg−Si系アルミニウム合金板の製造方法によれば、溶体化処理後に酸洗浄を行ったAl−Mg系(5000系)合金と同様のリン酸亜鉛処理性および塗装後耐食性を得ることができる。本発明による塗装後耐食性に優れたAl−Mg−Si系アルミニウム合金板は、とくに自動車用のフード、フェンダー、トランクリッド、ルーフ、ドアなどの部材として好適に使用されることができる。
本発明は、Al−Mg−Si系合金、例えば、必須成分として、Si:0.2〜2.0%(質量%、以下同じ)、Mg:0.2〜1.3%を含有し、選択成分として、Cu、Znのうちの1種または2種を合計で2.0%以下含有し、さらに必要に応じて、Ti、B、V、Mn、Cr、Zr、Feのうちの1種または2種以上を合計で1.5%以下含有し、残部Alおよび不純物からなるアルミニウム合金を対象とする。
本発明によるAl−Mg−Si系アルミニウム合金板は、溶体化処理後に無洗浄で使用に供されるもので、燃焼−赤外線吸収法により定量されたアルミニウム合金板表面の全炭素(C)量が10mg/m2 以下であることを特徴とする。この場合、定量の対象となる炭素(C)とは、以下のものをいう。
すなわち、本発明によるAl−Mg−Si系アルミニウム合金板は、通常のDC鋳造により造塊し、得られた鋳塊を常法に従って均質化処理、熱間圧延、冷間圧延した後、溶体化処理する工程を経て製造されるが、冷間圧延されたアルミニウム合金板の表面には圧延油が残存しており、この圧延油が残存しているアルミニウム合金板を、溶体化処理のために、焼鈍炉、例えば続焼鈍炉に装入して加熱処理した場合、圧延油の一部は揮発せず板表面に焼き付いた状態で残存する。本発明において定量の対象となるのは、この板表面に焼き付いた状態で残存するCである。
この板表面に焼き付いた状態で残存するCは、ヘキサンによる脱脂など、溶剤による脱脂や、リン酸亜鉛処理の前工程において脱脂液による脱脂処理を行った場合にも残存し続ける。板表面のCは、溶体化処理後の防錆油やプレス油の塗布により増加するが、本発明において定量の対象となるCの量は、溶体化処理後の塗油による影響をほとんど受けない。
上記板表面に焼き付いた状態で残存するCは、リン酸亜鉛処理時にアルミニウムの溶解を遅らせ、リン酸亜鉛処理時の反応開始までの臨界時間を長くするとともに、Cは板表面において不均一に残存するから、部分的な反応が随時起こる原因となり、従って、電気的にも不安定となるとともに、リン酸亜鉛の核生成よりも成長が促進し易く、リン酸亜鉛皮膜の均一な成長を阻害する結果、塗装後耐食性(耐糸錆性)が低下する。
本発明によるアルミニウム板は、上記のCを燃焼−赤外線吸収法により定量し、板表面の全炭素(C)量を10mg/m2 以下、より好ましくは7mg/m2 以下、さらに好ましくは6mg/m2 以下とすることを特徴とするものであり、全炭素量をこの範囲に制御することにより、リン酸亜鉛皮膜の生成が阻害されることなく、十分な量のリン酸亜鉛皮膜が均一に形成され、塗装後優れた耐食性が得られる。
燃焼−赤外線吸収法により定量される板表面の全炭素量は、蛍光X線分析法により検出される板表面のC検出量ときわめて良好な相関を有するから、蛍光X線分析法により検出される板表面のC検出量を、板表面の全炭素量を所定範囲に管理するための簡易的な指標として用いることができ、蛍光X線分析法により検出される板表面のC検出量が0.9kcps以下、より好ましくは0.75kcps以下であれば、燃焼−赤外線吸収法により定量した板表面の全炭素(C)量が10mg/m2 以下に規制される。
板表面の全炭素量を上記の範囲に規制するため、本発明においては、冷間圧延されたアルミニウム合金板を溶体化処理前に、該冷間圧延で使用されている冷間圧延油で洗浄し、溶体化処理炉に装入する。
溶体化処理前に、導電率50μS/cm以下、より好ましくは30μS/cm以下の精製水を、60℃以上、より好ましくは70〜75℃の温度に加熱し、この加熱精製水により冷間圧延板を洗浄し、溶体化処理してもよい。
前記のように、冷間圧延で使用されている冷間圧延油、または導電率50μS/cm以下の精製水を60℃以上の温度に加熱した加熱精製水で洗浄した後、溶体化処理することにより、従来のように、溶体化処理後、最終洗浄を行わなくても板表面の全炭素量を10mg/m以下とすることができ、リン酸亜鉛処理性、塗装後耐食性について、最終洗浄を行う従来のものと同等の特性を得ることができる。
以下、本発明の実施例を比較例と対比して説明する。これらの実施例は、本発明の一実施態様を示すものであり、本発明はこれらに限定されるものではない。
実施例1
DC鋳造により表1に示す組成を有するアルミニウム合金を造塊し、得られた鋳塊を面削した後、540℃で5時間の均質化処理を行った。ついで、開始温度を400℃とする熱間圧延を行い、さらに冷間圧延により厚さ1mmの板材とした。
溶体化処理後のアルミニウム合金板表面の全炭素量を変化させるために、冷間圧延板を、冷間圧延油(鉱油)、導電率50μS/cm以下の精製水を60℃以上の温度に加熱した加熱精製水で条件を変えて洗浄した後、炉中に装入して、550℃の温度で溶体化処理を行い、平均冷却速度10℃/sで30℃まで冷却し、その後30分以内に100℃で24時間熱処理を施した。
得られたアルミニウム合金板について、板表面の全炭素量を燃焼−赤外線吸収法により定量するとともに、蛍光X線分析法により板表面のC検出量を検出した。その相関関係を表2に示す。表2および表2の相関をグラフで示す図1にみられるように、蛍光X線分析法により検出されるC検出量と、燃焼−赤外線吸収法により定量される全炭素量の間には一次関数で示されるきわめて良好な相関があり、蛍光X線分析法により板表面のC検出量を検出することにより、板表面の全炭素量を簡易的に検知できることが確認された。
前記100℃で24時間熱処理されたアルミニウム合金板を、市販のリン酸亜鉛処理剤に浸漬した後、市販の自動車外板用塗料を用いてカチオン電着塗装を行い、170℃で20分焼き付け処理し、約20μm厚さの塗膜を形成して試験材とし、以下の方法によって、リン酸亜鉛処理性および塗装後耐食性を評価した。試験材の詳細および評価結果を、それぞれ表3および表4に示す
リン酸亜鉛処理性の評価:試験材の作製中、リン酸亜鉛処理時に電位測定を行うとともに、処理板表面の電子顕微鏡(SEM)観察を行い、処理皮膜の溶解による重量法での皮膜量測定により、皮膜の均一性(皮膜の被覆面積率)、皮膜重量を評価した。皮膜均一性については、皮膜の被覆面積率が90%以上のものを(◎)、85%以上90%未満のものを(○)、80%以上85%未満のものを(△)、80%未満のものを(×)とし、皮膜重量については、皮膜重量が1.3g/m2 以上のものを(◎)、1.0g/m2 以上1.3g/m2 未満のものを(○)、0.8g/m2 以上1.0g/m2 未満のものを(△)、0.8g/m2 未満のものを(×)とした。
塗装後耐食性の評価:試験材の電着塗装面に、素地に達するクロスカットを施し、JIS Z2371に準拠して塩水噴霧を24時間実施した後、恒温(50℃)、恒湿(90%)の環境下で1か月放置し、クロスカットからの最大糸錆長さを測定し、最大糸錆長さが1mm未満のものを(◎)、1mm以上2mm未満のものを(○)、2mm以上3mm未満のものを(△)、3mm以上のものを(×)とした。
Figure 0004249092
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表4にみられるように、本発明に従う試験材No.1、No.3〜4、No.6はいずれも、リン酸亜鉛処理において、皮膜の被覆面積率が85%以上、皮膜重量1.0g/m以上の優れたリン酸亜鉛処理性を示し、最大糸錆長さが1mm未満の優れた塗装後耐食性をそなえている。とくに、試験材No.1、No.3〜4は、試験材の板表面の全炭素量が7mg/m以下であり、リン酸亜鉛処理皮膜の被覆面積率90%以上、皮膜重量1.3g/m以上、最大糸錆長さ1mm未満であり、きわめて優れたリン酸亜鉛処理性および塗装後耐食性を有している。
比較例1
実施例1で造塊した表1に示す組成のアルミニウム合金鋳塊を面削した後、540℃で5時間の均質化処理を行った。ついで、開始温度を400℃とする熱間圧延を行い、さらに冷間圧延により厚さ1mmの板材とした。
冷間圧延後のアルミニウム合金板を、洗浄することなく炉中に装入して、550℃の温度で溶体化処理を行い、平均冷却速度10℃/sで30℃まで冷却し、その後30分以内に100℃で24時間の熱処理を施した。
前記100℃で24時間熱処理されたアルミニウム合金板を、実施例1と同様、市販のリン酸亜鉛処理剤に浸漬した後、市販の自動車外板用塗料を用いてカチオン電着塗装を行い、170℃で20分焼き付け処理し、約20μm厚さの塗膜を形成して試験材とし、実施例1と同じ方法によって、リン酸亜鉛処理性および塗装後耐食性を評価した。試験材の詳細および評価結果を、それぞれ表5および表6に示す。
Figure 0004249092
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表6に示すように、試験材No.7は、リン酸亜鉛処理皮膜の被覆面積率が85%未満で皮膜形成がやや不均一となり、皮膜重量が1.0g/m2 未満と減少したため、最大糸錆長さが2mm以上となり、塗装後耐食性がやや劣るものとなった。試験材No.8〜9は、試験材の板表面の全炭素量が多いため、リン酸亜鉛処理皮膜が不均一で、皮膜重量も十分でないため、塗装後耐食性が顕著に劣化している。
燃焼−赤外線吸収法により定量した板表面の全炭素量と、蛍光X線分析法により検出した板表面のC検出量の相関を、表2に示される値をプロットして示すグラフである。

Claims (1)

  1. 溶体化処理後に無洗浄で使用に供されるAl−Mg−Si系アルミニウム合金板の製造方法であって、冷間圧延された前記アルミニウム合金板を、該冷間圧延で使用されている冷間圧延油、または導電率50μS/cm以下の精製水を60℃以上の温度に加熱した加熱精製水で洗浄した後、溶体化処理し、燃焼−赤外線吸収法により定量された板表面の全炭素(C)量を10mg/m 以下、蛍光X線分析法により検出されるC検出量を0.9kcps以下としたことを特徴とする塗装後耐食性に優れたAl−Mg−Si系アルミニウム合金板の製造方法。
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