JP4315366B2 - チップ用フィルター及びチップ - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、液体吸引装置、例えばピペットの吸引ノズルとして、もしくは該ノズルの先端部分に装着して使用するチップに適用されるチップ用フィルター並びに該チップ用フィルターを装着適用したチップに関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より、試薬、体液(血液等)、尿等の試液を分注して検査する際には、液体吸引機器等の吸引ノズルの先端部分にチップを装着し、そこに所定量の吸引した試液を溜めて、液溜りから別の容器に分注する。この分注操作は手動と自動機のいずれの方法によっても行われる。特に、今日では検査医療の自動化、無人化が進むなかで、迅速かつ、確実な分注操作が要望されている。
【0003】
前記分注操作においては、吸引ノズルの先端部で異なる試液や試薬による汚染の発生を防止し、また吸引飛沫(蒸気)の通過で吸引機器そのものが汚染されたり、液に汚染された吸引機器から飛沫(蒸気)が逆入することを防止することを目的として、前記チップにはフィルターが装着されている。
【0004】
前記フィルターとしては、一般にポリプロピレン繊維束やポリエチレンテレフタレ−ト繊維束のフィルターや発泡ウレタンフィルターが用いられている。また、これらのフィルターを改良したものとして、多孔質焼結樹脂フィルター、多孔質樹脂焼結体と不織布とを積層した複合体フィルターが知られている(特許文献1)。
【0005】
円筒状に成形されたフィルターをチップに装着する場合、ホッパーからパーツフィーダーを通過させて整列させてチップに挿入し易いようにして挿入する装置を使用する場合が多い。この場合振動によりチップを整列させ、必要な場合には、補助的に空気の噴射によりフィルターの方向を決める操作や、チップに送り込んで装着する操作が行われている。
【0006】
【特許文献1】
特開2001−121005号公報
【発明が解決しようとする課題】
しかし、特許文献1等に開示された多孔質焼結樹脂フィルターをパーツフィーダーに入れる時やフィルターを整列させるために振動を与えた場合、また補助的に空気の噴射により整列させる際に、フィルター同士の動的な接触、フィルターとパーツフィーダー構成部材との動的な接触によってフィルターに静電気による帯電が起こり、フィルターないしチップ自ら出たばり、ひげ、異物等を静電気吸着するという問題が生じる。またこの帯電により、フィルターが整列できずに正常品とは異なる方向にて装着されたり、装着もれが生じ、製造装置の停止につながるトラブルが多く発生するという問題も起こっている。
【0007】
上述のチップ製造時におけるフイルター装着工程の環境のみならず、特に使用環境が必ずしもクリーンルーム内とは限らない。例えば極端な場合には、乾燥地帯の発展途上国での使用もありうる。このような使用条件においては、上記特許文献1に記載されたフィルターでは、空気中の砂塵や塵埃を静電気で吸着しやすく、係る塵埃の中には通常RNA、DNAの元になる生物的残渣が存在するために、測定に影響が生じるという問題を避けることが困難であった。
【0008】
とりわけ、上記特許文献1記載のフィルター材料であるUHMWPE,HDPE等の極性が低く、静電気を帯電しやすい素材で作製されたフィルターでは、一旦帯電すると帯電半減期が測定できない位長く、チップに装着されても帯電したままである場合がある。このような帯電が残ったままの場合には、使用時の塵埃の吸着による測定精度への影響が生じる場合がある。
【0009】
本発明の目的は、フィルターやチップの製造工程における、ばり、ゴミ、かす、ひげ等の異物の付着防止やフィルターの不整列等による製造装置の停止につながるトラブル、及び使用時における空気中の塵埃の吸着による測定精度への影響が生じることのないチップ用フィルター及びチップを提供することにある。
【0010】
また本発明の別の目的は、微量な液分注を行う場合における軽い過吸引オーバーフロー等による注入量の精度低下防止効果に優れたチップ用フィルター及びチップを提供することにもある。
【0011】
【課題を解決するための手段】
即ち、本発明のチップ用フィルターは、表面が帯電防止処理されたものである多孔質樹脂製のフィルターであることを特徴とする。
【0012】
帯電防止処理により、静電気発生によるフィルターやチップの製造工程におけるばり、ゴミ、かす、ひげ等の異物のフィルターへの付着やフィルターの不整列等による製造装置の停止につながるトラブル防止効果を有し、使用時における空気中の塵埃の吸着による測定精度への影響が生じることのないチップ用フィルターを得ることが可能になった。
【0013】
上記のチップ用フィルターにおいては、さらに表面が撥水処理されたものであることが好ましい。
【0014】
上述の発明における帯電防止処理は、通常は界面活性などを使用した親水性処理であるために、係る帯電処理だけではフィルター全体に親水性が付与されてしまう。その結果、フィルターの耐水圧が低下して分注液のオーバーフロー防止効果が低下する場合が生じる。帯電防止処理をしたフィルターにさらに撥水処理を行うことにより、撥水性と帯電防止性を共に有するフィルターが得られた。
【0015】
係るフィルターは、撥水効果により、耐水圧が増大してフィルターの分注液のオーバーフローを防止できる。またフィルターが濡れ性がないため例えオーバーフローした場合でも、ピペットをプッシュして排出して液回収をした場合でも液を汚染することが少ない。さらに、係る撥水効果によっても砂塵やRNA、DNAの元になる生物的残渣を含む塵埃の付着防止効果が得られた。
【0016】
本発明のチップは、請求項1又は2に記載のチップ用フィルターを装着したものであることを特徴とする。
【0017】
係るチップは、製造工程において、ばり、ゴミ、かす、ひげ等の異物の付着防止やフィルターの不整列等による製造装置の停止につながるトラブルが少なく、また使用時における空気中の塵埃の吸着による測定精度への影響が生じることのないものである。
【0018】
さらに、微量な液分注を行う場合における軽い過吸引オーバーフロー等による注入量の精度低下防止効果に優れたチップである。
【0019】
【発明の実施の形態】
本発明のフイルターは、圧縮弾性率100〜1000kg/cm2 、好ましくは200〜400kg/cm2 の多孔性樹脂からなり、該多孔性樹脂の平均孔径は10〜100μm、好ましくは20〜40μmであることが好ましい。また通気性(フラジール法)は0・5〜20cm3 /cm2 ・s、好ましくは1〜5cm3 /cm2 ・sであることが好ましい。
【0020】
フィルターを構成する樹脂は、特に限定されるものではないが、耐溶剤、耐酸、耐アルカリ、衛生性、無発塵性、耐放射線性、耐オートクレーブ性や剛性、通気性などが優れている点で、ポリオレフィン、フッ素系樹脂から選択される樹脂粉粒体の焼結多孔質体であることが好ましく、ポリオレフィンとしては、超高分子量PE、超高分子量PP等の超高分子量ポリオレフィンの使用が好ましく、フッ素系樹脂としては、ポリ四フッ化エチレン(PTFE)、ポリテトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)、ポリテトラフルオロエチレン・ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)などの使用が好ましい。これらの樹脂は、必要に応じて2種以上を併用してもよい。例えば超高分子量ポリエチレンは、粘度平均分子量が50万〜1000万、好ましくは100万〜700万のポリエチレンである。超高分子ポリエチレンとしては、市販品としてハイゼックスミリオン(三井化学)、ホスタレンGUR(タイコナ社)などが使用可能である。
【0021】
圧縮弾性率200〜400kg/cm2 、平均孔径20〜40μm通気性(フラジール法)1〜5cm3 /cm2 ・sからなる超高分子量多孔質焼結フイルターの製造においては、公知の多孔質樹脂の製造方法を限定なく使用することができる。かかる超高分子量多孔質焼結フイルターの製造方法としては、例えば特許第2020026号に記載された製造方法を例示することができる。焼結方式による場合、得られる多孔質シートにおける圧縮弾性率や平均孔径は粉末の平均粒径により制御できる。本発明においては、好ましくは平均粒径25〜170μm、より好ましくは平均粒径100〜170μmの粉末を用いる。
【0022】
上記多孔質樹脂フィルターを処理する帯電防止剤としては、公知の帯電防止剤が限定なく使用可能であり、カチオン系帯電防止剤、アニオン系帯電防止剤、ノニオン系帯電防止剤が例示される。これらの帯電防止剤は水系、溶剤系のいずれであってもよい。帯電防止剤は市販品を使用することができ、例えばカチオン系帯電防止剤としてはエレクノンOR−W(ニューファインケミカル)、アニオン系帯電防止剤としてはエレクトロストリッパーF(花王)、ノニオン系帯電防止剤としてはエマルゲン109P(花王)が例示される。
【0023】
本発明において多孔質の樹脂を処理する撥水処理剤としては、公知の撥水処理剤が限定なく使用可能であり、フッ素系撥水処理剤、シリコン系撥水処理剤などが例示される。撥水処理剤としては市販品を使用することができ、例えばフッ素系撥水処理剤としてはTG−500(ダイキン工業)、シリコン系撥水処理剤としてはKM740(信越化学工業)が例示される。
【0024】
本発明における多孔質樹脂製フィルターの形状は、断面円形のチップの内部に空隙なく装着される形状であればよく、金型を使用して焼結と同時に成形してもよく、シートやブロック状に焼結した後に、裁断加工、打抜き加工、切削加工等を行って成形してもよい。形状としては、球形、円錐台形、円柱形などが例示される。フィルターの形状は、厚さが0.5〜5mmの円柱状が好ましい。円柱の厚さは、一般には0.5〜5mm、特に2〜5mmであるが、5mmを超える厚さとすることもできる。焼結方式により製造した多孔質樹脂シートから打ち抜き等により形成したフィルターはチップの管内部にすき間なく圧入することができる圧縮弾性を有し、塵等を含有しない無塵性にも優れる利点を有している。
【0025】
フィルターは、耐熱性等向上等を目的として、電子線照射により架橋密度を増大させることも好適な態様である。
【0026】
帯電防止処理、撥水処理は、液の毛細管現象による浸透性を利用して行う。これらの処理は、多孔質樹脂を構成する樹脂の表面全体に行われる。フィルターを多孔質樹脂シートから打ち抜き等により形成する場合、シート状態で行ってもよく、所定のフィルター形状に加工後に行ってもよい。
【0027】
本発明のフィルターを装着したチップの例を図1に示した。チップ3は、吸引装置のノズルの口管部2に装着する直管部と開口部に向かって細くなるテーパ状部とから構成されており、チップ用フィルター6は、チップ3のテーパ部の太径部に装着されている。チップ3は、テーパ状(スポイド状)又はテーパ状部と直管部からなる形状が一般的である。チップ3は、耐溶剤性、耐酸性、耐アルカリ性、衛生性、無発塵性、耐放射線性、耐オートクレーブ性、機械的強度等に優れた樹脂、例えばポリカーボネートの射出成形により製造できる。また、汎用のチップとして、ポリプロピレン等のポリオレフィン樹脂なども使用できる。
【0028】
本発明のチップ用フィルター6を装着したチップを用いて、試液や試薬を分注するには、図1に示すように、吸引装置のノズルの口管部2に対し、チップ本体3を装着し、吸引装置のピストン1の作動により試液5等をチップ内に吸引していく。この場合、フィルター6が試液5の飛沫であるエアロゾル4の通過を阻止し、また、過吸引時に試液5のオーバーフローを防止する効果を発揮する。
【0029】
チップ用フィルターの形状は、図1に示すように、チップ本体3の内周面の形状に応じた形状が採用されるが、上述のように円柱状が一般的であり、円柱状のチップ用フィルター6は、チップ本体3への装着(嵌入)により、多少変形して、その際の弾性復元力によって、チップ本体3の内周面に固定される。
【0030】
【実施例】
以下、本発明の構成と効果を具体的に示す実施例について説明する。
(実施例1)
粘度平均分子量が約400万の超高分子量ポリエチレンを使用し、焼結法にて形成された厚さ3.5mm、圧縮弾性率250kg/cm2 、通気度(フラジール法)1. 5cm3 /cm2 ・s、気孔率30%、平均孔径35μmの多孔質シートを、カチオン系帯電防止剤エレクノンOR−W(ニューファインケミカル)の固形分濃度0.5%の純水溶液に含浸させ乾燥させた後、4. 7mmφの円筒状に打ち抜いてフィルターaとした。このフィルターaを5000個使用してホッパー型投入機と振動型整列機にて図1に示した形状を有するPP製チップに連続的に装着実験した。
【0031】
(実施例2)
実施例1にて使用した超高分子量ポリエチレン製多孔質シ−トを、カチオン系帯電防止剤エレクノンOR−W(ニューファインケミカル)の固形分濃度0.5%の純水溶液に含浸させ乾燥させた後、4.7mmφの円筒状に打ち抜いてフィルターとした。このフィルターを、さらにフッ素系撥水剤TG−500(ダイキン工業)の固形分濃度0.5%濃度の液に含浸させ乾燥させて、フィルターbとした。このフィルターbを5000個使用してホッパー型投入機と振動型整列機にてPP製チップに連続的に装着実験した。
【0032】
(比較例1)
実施例1にて使用した超高分子量ポリエチレン製多孔質シ−トを帯電防止処理することなく、静電ブロワーのみで除電し、フイルターcとした。このフィルターcを5000個使用してホッパー型投入機と振動型整列機にてPP製チップに連続的に装着実験した。
【0033】
<評価試験>
1)フィルターa〜cがミスなくチップに装着されているかを目視にて確認した。(静電気による装着不良の評価)
またフィルターの送りや装着の不良に基づく機械停止があるかどうかを確認した。
【0034】
2)ミスなく装着されたフィルターチップを目視にてゴミ、異物が付着していないか確認した。(静電気による異物付着不良評価)
<評価結果>
(静電気による装着不良の評価)
実施例1,2は、フィルターa,bそれぞれ5000個の装着において、組み込み装置の停止が1度しか発生しなかった。これに対して比較例は組み込み機械停止が幾度となく発生し評価不能に陥った。
【0035】
フィルターの装着は、実施例のフィルターa,bについては装着ミスが無かったが、比較例のフィルターcは機械停止が幾度となく発生したために評価不能であった。
【0036】
(静電気による異物付着不良評価)
ゴミ、異物の付着は、実施例1,2のチップにおいては、特に目視確認されたものは無かった。比較例のフィルターc装着後のチップは、バリの出ているものが多数みうけられた。
【図面の簡単な説明】
【図1】チップ用フィルターを装着したチップを、吸引装置のノズルの口管部に装着した状態を示した断面図
Claims (3)
- 表面が帯電防止処理されたものである多孔質焼結樹脂製のチップ用フィルター。
- さらに表面が撥水処理されたものである請求項1に記載のチップ用フィルター。
- 請求項1又は2に記載のチップ用フィルターを装着したチップ。
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