JP4332527B2 - 霊長類動物の胚性幹細胞から造血系細胞への分化方法 - Google Patents
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Description
しかしながら、前記造血幹細胞移植においては、移植対象の患者に適合する造血幹細胞の安定供給が困難であること、造血幹細胞の採取の際、ドナーに体力的又は肉体的にダメージを与える場合があること等の欠点がある。
そこで、造血幹細胞の安定供給を図るため、ブタ胎仔に経子宮的にヒト造血幹細胞に移植し、ブタ体内で造血前駆細胞を増幅させることが試みられている〔中内啓光、他1名、“3.ヒト血液キメラブタの樹立とその応用”、「第117回日本医学会シンポジウム記録集 幹細胞と細胞療法−[III]組織・器官幹細胞:臨床応用への基盤開発(2) 2000年8月4日〜6日開催、p99−106[online]、インターネット<URL:http://www.med.or.jp/jams/symposium/kiroku/117/pdf/117099.pdf>〕。
一方、機能障害を有する組織や臓器の機能回復、修復、再生等を目的とする再生医療への応用のため、胚性幹細胞(以下、ES細胞ともいう)の分化について、イン・ビトロでの研究が行なわれている。
胚性幹細胞から血液細胞へのイン・ビトロでの分化の試みの例として、造血幹細胞の自己再生に関連するホメオティックセレクター遺伝子であるHoxB4を導入したマウスES細胞から、最終造血幹細胞の表現型を示す細胞へ分化させること〔マイケル カイバ(Michael Kyba)ら、Cell、第109巻、2002年4月5日発行、p29−37〕、OP9ストロマ細胞を利用して、マウスES細胞から、造血前駆細胞と推定される細胞へ分化させること〔仲野徹著、“5.胚性幹細胞からの血液細胞への分化”、横田崇ら編、実験医学 増刊「幹細胞研究の最前線と再生医療への応用 発生・分化メカニズムの解明、そして臨床へ」2001年9月25日発行、第19巻、第15号、p1966−1971;仲野徹(Toru Nakano)ら、Science、第265巻、1994年8月19日、p1098−1101〕、アカゲザルES細胞を、マウスS17ストロマ細胞上で培養して、造血前駆細胞に分化させること〔フェイ リ(Fei Li)ら、Blood、第98巻、2001年7月15日発行、p335−342〕、マウスES細胞から造血前駆細胞へ分化させること〔ブリット エム.ヨハンソン(Britt M.Johansson)ら、Molecular and Cellular Biology、第15巻、第1号、1995年1月発行、p141−151〕が挙げられる。
また、前記フェイ リらの文献には、骨形成タンパク質−4(BMP−4)存在下で、アカゲザルES細胞を培養することにより、BMP−4非存在下の場合に比べ、造血前駆細胞の分化が15倍に増加することが開示されている。さらに、前記ブリット エム.ヨハンソンらの文献には、BMP−4存在下で、マウスES細胞を培養することにより、BMP−4非存在下の場合に比べ、造血前駆細胞の分化が増加することが開示されている。
しかしながら、一般的に、発生の初期に出現する細胞(神経細胞、心筋細胞、胎児造血細胞等)については、イン・ビトロでの分化に比べ、造血幹細胞、肝細胞、膵臓β細胞等の発生の後期に「場」誘導的に出現する細胞は、前記ES細胞からの分化が困難であるという欠点がある。
また、前記マイケル カイバらの文献に記載の分化方法では、HoxB4遺伝子を導入したES細胞が用いられるため、得られた造血幹細胞の適用範囲が限定される場合があるという欠点がある。
さらに、前記仲野徹著の文献〔5.胚性幹細胞からの血液細胞への分化〕及び前記仲野徹らの文献〔Science〕に記載の分化方法では、OP9ストロマ細胞が用いるのが特徴であるが、実際には、卵黄嚢造血(一次造血)が再現されるにとどまるものと考えられ、造血系を再構築しうる造血幹細胞の分化の誘導は困難であるという欠点がある。
即ち、本発明の要旨は、
〔1〕 霊長類動物の胚性幹細胞を、造血系細胞の分化誘導に適した条件で維持し、得られた細胞を妊娠ヒツジの子宮内の胎仔に移植し、該胎仔を生育させ、出生に至った仔ヒツジに、霊長類動物に特異的なサイトカインを投与し、さらに該仔ヒツジを生育させて得られたヒツジから霊長類動物の造血系細胞を得ることを特徴とする、霊長類動物の胚性幹細胞から造血系細胞への分化方法、
〔2〕 (I)マクロファージコロニー刺激因子を欠損したストロマ細胞株をフィーダー細胞とし、該フィーダー細胞上、霊長類動物の胚性幹細胞を維持するステップ、及び
(II)前記ステップ(I)で得られた霊長類動物由来の細胞を、妊娠ヒツジの子宮内の胎仔に移植し、該胎仔を出生にいたるまで生育させるステップ、
を含む、前記〔1〕記載の分化方法、
〔3〕 ステップ(I)において、骨形成タンパク質−4の存在下、フィーダー細胞上、霊長類動物の胚性幹細胞を維持する、前記〔2〕記載の分化方法、
〔4〕 (I)マクロファージコロニー刺激因子を欠損したストロマ細胞株をフィーダー細胞とし、該フィーダー細胞上、霊長類動物の胚性幹細胞を維持するステップ、
(II)前記ステップ(I)で得られた霊長類動物由来の細胞を、妊娠ヒツジの子宮内の胎仔に移植し、該胎仔を出生にいたるまで生育させるステップ、及び
(III)前記ステップ(II)で出生した仔ヒツジに、霊長類動物に特異的なサイトカインを投与し、さらに該仔ヒツジを生育させて得られたヒツジより、該霊長類動物の胚性幹細胞から分化した霊長類動物の造血系細胞を分離するステップを含む、霊長類動物の造血系細胞の製造方法、
〔5〕 前記〔4〕記載の製造方法により得られる造血系細胞、並びに
〔6〕 霊長類動物の胚性幹細胞を、造血系細胞の分化誘導に適した条件で維持し、得られた細胞を妊娠ヒツジの子宮内の胎仔に移植し、出生した仔ヒツジに、霊長類動物に特異的なサイトカインを投与し、さらに該仔ヒツジを生育させることを特徴とする、霊長類動物の造血系細胞を生産するキメラヒツジの作製方法、
に関する。
図2は、移植後に得られたヒツジ胎仔において、サルβ2−ミクログロブリンを検出した結果を示す図である。図中、パネル(A)は、胎仔肝臓、パネル(B)は、骨髄の結果を示す。
図3は、ヒツジに対してヒトSCFを投与した前後の末梢血又は骨髄におけるサルβ2−ミクログロブリンを検出した結果を示す図である。上段パネルは、PCRの結果、下段パネルは、サザンブロットハイブリダイゼーションの結果を示す。図中、Mは、分子量マーカー、レーン1〜3は、陰性対照(水)、レーン4は、ヒツジDNA単独、レーン5〜10は、それぞれ、0.0001%(細胞数)、0.001%(細胞数)、0.01%(細胞数)、0.1%(細胞数)、1%(細胞数)及び10%(細胞数) サルDNA、レーン11は、サルDNA単独、レーン12は、試料無し、レーン13〜レーン17は、それぞれ、ヒトSCF投与前、投与6日目、投与後1日、投与後3日及び投与後40日の末梢血由来試料、レーン18〜22は、それぞれ、ヒトSCF投与前、投与6日目、投与後1日、投与後3日及び投与後40日の骨髄由来試料を示す。サルには作用するがヒツジには作用しないヒトSCFの投与によって,該ヒツジの末梢血および骨髄血中にサルの細胞が出現したことを示す。
本発明は、1つの側面では、霊長類動物の胚性幹細胞から造血系細胞への分化方法に関する。
なお、以下、本明細書においては、ヒツジを用いる場合について、説明するが、本発明においては、他の非ヒト哺乳動物(例えば、ブタ、ウマ、サル等)でも同様に実施することができる。他の非ヒト哺乳動物を用いることによっても、少なくとも1%のキメラ率でキメラ非ヒト哺乳動物を製造することができ、造血系細胞を製造することができる。
本発明の霊長類動物の胚性幹細胞から造血系細胞への分化方法は、霊長類動物の胚性幹細胞を、造血系細胞の分化誘導に適した条件で維持し、得られた細胞を妊娠ヒツジの子宮内の胎仔に移植し、ついで、生まれたヒツジから霊長類動物の造血系細胞を得ることを特徴とする方法である。
本発明の霊長類動物の胚性幹細胞から造血系細胞への分化方法は、より好ましくは、霊長類動物の胚性幹細胞を、造血系細胞の分化誘導に適した条件で維持し、得られた細胞を妊娠ヒツジの子宮内の胎仔に移植し、該胎仔を生育させ、出生に至った仔ヒツジに、霊長類動物に特異的なサイトカインを投与し、さらに該仔ヒツジを生育させて得られたヒツジから霊長類動物の造血系細胞を得ることを特徴とする方法である。
本発明の分化方法は、霊長類動物の胚性幹細胞を、造血系細胞の分化誘導に適した条件(以下、造血系分化誘導条件ともいう)で維持することに1つの大きな特徴がある。
本発明の分化方法においては、霊長類動物の胚性幹細胞を、前記造血系分化誘導条件に維持するため、未分化胚性幹細胞をそのまま移植した場合には、該未分化胚性幹細胞から造血系細胞への分化が実質的に起こらないにもかかわらず、本発明の分化方法によれば、驚くべく、該霊長類動物の胚性幹細胞を、造血系細胞に分化させることができるという優れた効果を発揮する。
また、本発明の分化方法においては、霊長類動物の胚性幹細胞が、前記造血系分化誘導条件に維持されるため、該霊長類動物の胚性幹細胞は、ヒツジ胎仔へ移植された際、該ヒツジ胎仔〔厳密には、出生後においては、出生した仔ヒツジ(以下、本明細書においては、「出生仔ヒツジ」とも表記する)〕の体内環境をより有効に利用して、分化することができるという優れた効果を発揮する。
さらに、本発明の分化方法は、霊長類動物の胚性幹細胞を造血系細胞に分化させるために、該霊長類動物の胚性幹細胞に、分化を惹起する外来遺伝子(例えば、ホメオティックセレクター遺伝子)の導入等の遺伝子工学的操作を施すことが実質的に要求されない点で有利である。したがって、本発明の分化方法は、高度な技術や高価な機械、試薬等を必要とせず、移植用の細胞、組織の供給等に有用である。
また、本発明の分化方法は、妊娠ヒツジの子宮内のヒツジ胎仔が用いられることにも1つの大きな特徴がある。
本発明の分化方法は、前記ヒツジ胎仔が用いられているため、霊長類動物の胚性幹細胞を前記造血系分化誘導条件に維持して得られた細胞を、驚くべく、本質的に霊長類動物に由来する造血系細胞に分化させることができるという優れた効果を発揮する。
また、本発明の分化方法によれば、前記ヒツジ胎仔が用いられているため、霊長類動物とのキメラ率が高くなるという優れた効果を得ることができる。したがって、本発明の分化方法によれば、より効率よく、ヒツジ体内で、本質的に霊長類動物に由来する造血系細胞を得ることができるという優れた効果が発揮される。
さらに、本発明の分化方法によれば、妊娠ヒツジの子宮内のヒツジ胎仔が用いられているため、移植した細胞に対する免疫寛容が得られ、出生後に、該霊長類動物の胚性幹細胞を、さらに追加移植することができるという優れた特徴を有する。したがって、本発明の分化方法によれば、本質的に霊長類動物に由来する造血系細胞を、より効率よく、安定して供給することができる。
本発明の分化方法は、霊長類動物の胚性幹細胞を、前記造血系分化誘導条件に維持して得られた細胞を、妊娠ヒツジの子宮内のヒツジ胎仔に移植することにも1つの大きな特徴がある。
本発明の分化方法は、霊長類動物の胚性幹細胞を、前記造血系分化誘導条件に維持して得られた細胞を、妊娠ヒツジの子宮内のヒツジ胎仔に移植するため、霊長類動物に由来する造血系細胞を、効率よく、安定して供給することができる。さらに、本発明の分化方法は、霊長類動物の胚性幹細胞を、前記造血系分化誘導条件に維持して得られた細胞を、妊娠ヒツジの子宮内のヒツジ胎仔に移植するため、ヒツジに対しては作用しない霊長類のサイトカインにより、移植された霊長類動物の胚性幹細胞又は本質的に霊長類動物に由来する造血系細胞を選択的に刺激することができるという優れた効果を発揮する。したがって、本発明によれば、霊長類動物に由来する造血系細胞を、より効率よく、安定して供給することができる。さらに、本発明の分化方法においては、造血系分化誘導条件下に、6日〜8日間、好ましくは、6日間維持した細胞を用いることにより、驚くべく、高効率でキメラ動物を得ることができ、驚くべく高いキメラ率を達成することができるという優れた効果を発揮する。
本明細書において、「霊長類動物」とは、ヒト、サル等をいう。前記サルとしては、例えば、カニクイザル、アカゲザル、ニホンザル、マーモセット等が挙げられる。
本明細書において、「胚性幹細胞(以下、ES細胞ともいう)」とは、多分化能と自己複製能とを有する未分化細胞をいう。
本発明の分化方法に用いられる霊長類動物の胚性幹細胞としては、具体的には、例えば、CMK6細胞等が挙げられる。
かかる胚性幹細胞は、例えば、フィーダー細胞として、マウス胚線維芽細胞等の細胞であって、分裂増殖を停止させた細胞を用い、ES細胞用培地で培養することにより維持及び供給されうる。
前記ES細胞用培地としては、胚性幹細胞の種類により、該胚性幹細胞に適した培地であればよい。具体的には、例えば、カニクイザル由来胚性幹細胞株CMK6の場合、200mlあたりの組成として、DMEM/F12 163mlと、ウシ胎仔血清 30ml(最終濃度15%)と、L−グルタミン 2ml(最終濃度2mM)と、ペニシリン(100U/ml)−ストレプトマイシン(100μg/ml) 2mlと、非必須アミノ酸溶液 2mlと、2−メルカプトエタノール 1ml(最終濃度0.1mM)とを含む培地が挙げられる。
前記胚性幹細胞の未分化状態の維持及び増殖は、胚性幹細胞の種類により異なるが、例えば、白血病阻害因子(LIF)の存在等の条件に培養することにより行なわれうる。
また、前記胚性幹細胞の未分化状態の維持及び増殖のための培養条件としては、胚性幹細胞の種類により異なるが、例えば、5体積% CO2の気相で、36〜38℃、好ましくは、37℃で維持すること等が挙げられる。
前記胚性幹細胞の未分化状態の維持及び増殖のために用いられる前記フィーダー細胞は、細胞の種類により異なるが、例えば、D10培地(10体積% ウシ胎仔血清を含むDMEM培地)等で維持、増殖等を行なうことができる。
前記フィーダー細胞の培養条件は、細胞の種類により異なるが、例えば、5体積% CO2の気相で、36〜38℃、好ましくは、37℃で維持すること等が挙げられる。
本明細書において、造血系細胞としては、例えば、造血幹細胞及び該造血幹細胞から分化してできる細胞群、すなわち、赤芽球、骨髄球、巨核球系、リンパ球等の性質を有する細胞が挙げられ、具体的には、赤芽球、骨髄球等が挙げられる。
本発明において、造血系細胞の分化誘導に適した条件、すなわち、造血系分化誘導条件とは、例えば、IV型コラーゲンの存在下に培養する条件、α−最小必須培地(α−MEM)等の存在下に培養する条件、造血系分化に適したフィーダー細胞上で培養する条件、胚葉体作成後、ディッシュに接着させる条件等の種々の条件及びこれらのいずれかの組み合わせの条件等が挙げられる。
本発明において、「霊長類動物の胚性幹細胞を、造血系細胞の分化誘導に適した条件で維持し、得られた細胞」は、造血コロニー形成能及び造血系の表面マーカーの発現を評価した場合、いずれも陰性あるいは弱陽性となる分化段階の細胞である。かかる細胞は、いわゆる中胚葉細胞若しくは該中胚葉細胞の状態、性質等に近い細胞であってもよい。具体的には、カニクイザル由来胚性幹細胞株CMK6を造血系細胞の分化誘導に適した条件で約6日間維持して得られた細胞等が挙げられる。
前記造血コロニー形成能は、例えば、後述のコロニーアッセイ等により評価されうる。
前記表面マーカーとしては、CD45、TER119、α4−インテグリン、VE−カドヘリン、Sca−1、CD34、CD13、CD14、GPIIb/IIIa、CD3、CD4、CD8、sIgM、CD19、c−Kit(CD117)、Thy−1(CD90)、CD31、HLA−ABC、β2−ミクログロブリン等が挙げられる。
造血系分化誘導条件に維持する際に用いられるフィーダー細胞としては、マクロファージ刺激因子を欠損したストロマ細胞株が挙げられ、例えば、マクロファージ刺激因子を欠損したマウス骨髄細胞株、マクロファージ刺激因子を欠損したマウス卵黄嚢細胞株等をマイトマイシンC処理又はX線処理して得られた細胞等が挙げられる。前記マクロファージ刺激因子を欠損したストロマ細胞株としては、OP9細胞株、前記マウス骨髄細胞株としては、S17細胞株〔コリンズ(Collins)ら、J.Immunol.、1987年発行、第138巻、p1082−1087〕、前記マウス卵黄嚢細胞株としては、C166細胞株〔ワン(Wang)ら、In Vitro Cell.Dev.Biol.Anim.、1996年発行、第32巻、p292−299〕等が挙げられる。
造血系分化誘導条件に維持する際に用いられる前記フィーダー細胞は、マクロファージ刺激因子を欠損したストロマ細胞株を、例えば、α−MEM培地(Minimum Essential medium Eagle)等が入った、ゼラチンコートした培養容器に播種すること等により作製されうる。フィーダー細胞は、培養容器を隙間無く覆う程度まで播種すればよい。
前記フィーダー細胞の培養条件は、用いられる細胞の種類により異なるが、ストロマ細胞株OP9細胞の場合、例えば、5% CO2の気相で、好ましくは、36〜38℃、特に好ましくは、37℃で維持すること等が挙げられる。
造血系分化誘導条件に維持する際に用いられるフィーダー細胞は、具体的には、OP9細胞をフィーダー細胞として用いる場合、
− OP9細胞用培地{例えば、1250mlあたりの組成:α−MEM〔ギブコ(Gibco)社製、カタログ番号:12000−022〕 980ml、ウシ胎仔血清 250ml(最終濃度20%)、ペニシリン(100U/ml)−ストレプトマイシン(100μg/ml) 10ml、200mM L−グルタミン溶液 10ml}で、37℃、5% CO2条件下で培養し、
− 培養液内で接着してコンフルエント又はその直前まで生育した細胞を、リン酸緩衝化生理食塩水で2回洗浄し、
− 洗浄後のディッシュ上の細胞をトリプシンにて処理し、
− 前記OP9細胞用培地を添加して、細胞を含む培地を回収し、
− 得られた細胞を、前記OP細胞用培地に、1:4〜1:5で継代し、
− 37℃、5% CO2条件下に、コンフルエントになるまで培養し、
− 得られた細胞を、マイトマイシンCで不活化させ、
− 得られた細胞(例えば、1×105細胞/ml)を、ゼラチンコートした培養ディッシュ上、前記OP9細胞用培地に播種し、培養すること
により得られうる。
本発明に用いられる妊娠ヒツジは、安全性、例えば、流産を予防する観点から、妊娠後40日以上、好ましくは、50日以上、より好ましくは、60日以上であり、免疫拒絶を減少させ、移植細胞の生着率を十分に得る観点から、妊娠後85日以下、好ましくは、75日以下、より好ましくは、60日以下であることが望ましい。したがって、子宮内の胎仔は、妊娠50〜70日であることが望ましい。
本発明の分化方法としては、より具体的には、
(I)マクロファージコロニー刺激因子を欠損したストロマ細胞株をフィーダー細胞とし、該フィーダー細胞上、霊長類動物の胚性幹細胞を維持するステップ、及び
(II)前記ステップ(I)で得られた霊長類動物由来の細胞を、妊娠ヒツジの子宮内の胎仔に移植し、該胎仔を出生にいたるまで生育させるステップ、
を含む方法が挙げられる。
前記ステップ(I)において、霊長類動物の胚性幹細胞は、より分化させる観点から、密度が高くなるように播種することが望ましい。
前記ステップ(I)において、フィーダー細胞上、霊長類動物の胚性幹細胞に応じた培地で培養されることが望ましい。
なお、培養中、培地は、適宜交換すればよい。
また、前記ステップ(I)において、フィーダー細胞上、霊長類動物の胚性幹細胞は、5% CO2の気相で、好ましくは、36〜38℃、特に好ましくは、37℃で維持することが望ましい。
具体的には、例えば、カニクイザル胚性幹細胞株CMK6の場合、分化用培地〔100mlあたりの組成:IMDM(Iscove’s Modified Dulbecco’s Medium) 84ml、8% ウマ血清 8ml、8% ウシ胎仔血清 8ml、5×10−6M ヒドロコルチゾン 0.18μg、BMP−4 2μg(最終濃度20ng/ml)、SCF 2μg(最終濃度20ng/ml)、IL−3 2μg(最終濃度20ng/ml)、IL−6 1μg(最終濃度10ng/ml)、VEGF 2μg(最終濃度20ng/ml)、G−CSF 2μg(最終濃度20ng/ml)、Flt−3リガンド2μg(最終濃度10ng/ml)、EPO 200U(2U/ml)〕 5mlに懸濁し、得られた細胞懸濁液を、フィーダー細胞上に 5×105細胞に対し、適切量の細胞播種し、その後、37℃、5% CO2条件下で6日間培養する条件が挙げられる。
なお、前記ステップ(I)を行なうことにより得られた細胞は、前記「霊長類動物の胚性幹細胞を、造血系細胞の分化誘導に適した条件で維持し、得られた細胞」に該当する。
なお、より高効率でキメラヒツジを得る観点、より高いキメラ率を得る観点等から、前記ステップ(I)においては、胚性幹細胞、例えば、カニクイザル胚性幹細胞株CMK6等は、6日〜8日、好ましくは6日間、造血系細胞の分化誘導に適した条件で維持することが望ましい。また、これにより、胚性幹細胞から造血系細胞への分化を驚くべく高効率で、より迅速に行なうことが可能になる。
ステップ(I)において、より効率よく造血系細胞を得る観点から、好ましくは、前記造血系分化誘導条件に加え、骨形成タンパク質−4の存在下、フィーダー細胞上、白血病阻害因子非存在下に霊長類動物の胚性幹細胞を維持することが望ましい。
前記ステップ(I)を行なうことにより得られた細胞を、ついで、妊娠ヒツジの子宮内の胎仔に移植し、該胎仔を出生にいたるまで生育させる〔ステップ(II)〕。
移植に用いられる細胞は、トリプシンで処理し、例えば、0.1% BSA(ウシ血清アルブミン)/HBSS(ハンクス平衡塩水溶液)に、生着率、キメラ率等を向上させる観点から、例えば、1×106細胞以上、好ましくは、1×106細胞〜1×109細胞、好ましくは、1×107細胞〜1×109細胞となるように懸濁することにより調製されうる。
ステップ(II)において、胎仔への細胞の移植は、例えば、肝臓内(または、より厳密には肝実質内)、腹腔内、心臓内、臍帯内等に移植用細胞を穿刺注入すること等により行なわれうる。
移植手術は、例えば、
− 妊娠約60日目の妊娠ヒツジを、予め移植の1週間〜10日前に、移植時における飼育環境に慣れさせ、
− ヒツジ母体を麻酔し、
− ヒツジを施術するに適切な体位に固定し、
− 清潔操作で、移植箇所への移植用細胞の移植を容易にするように、種々の手術、例えば、腹腔内又は肝実質内に細胞を移植する場合、下腹部正中切開で開腹後、子宮母体腹腔外に翻転させること
等により行なわれうる。
細胞を子宮内胎仔へ移植する方法には、例えば、ヒツジの子宮筋層を切開し、温存したまま露出させた卵膜内にヒツジ胎仔を追い込み、透明な卵膜を通して直視下に胎仔移植部位に移植用細胞を穿刺注入し、子宮筋層、腹膜筋層、皮膚を層々に縫合閉腹すればよい。または、子宮を切開せずに,子宮壁上から超音波ガイド下、ヒツジ胎仔の移植部位に、移植用細胞を穿刺注入し、腹膜筋層、皮膚を層々に縫合閉腹すればよい。
ステップ(II)において、移植手術の施術後、妊娠ヒツジは、出生までの間、例えば、通常の飼育と同様の条件下、飼育される。
ステップ(II)で得られたヒツジ胎仔、すなわち、厳密には、出生仔ヒツジが、本質的に霊長類に由来する造血系細胞を産生していることは、ヒツジ胎仔(すなわち、厳密には、出生後には、出生仔ヒツジ)より、適切な組織、例えば、肝臓、骨髄等の組織を採取し、初代培養用の細胞を得、得られた細胞について、(1) 造血コロニーアッセイを行なうこと、(2) 前記(1)で形成された造血コロニーについて、霊長類動物に特異的なマーカー遺伝子の発現を調べることにより、評価されうる。
前記(1)の造血コロニーアッセイは、例えば、
i) ヒツジ胎仔(すなわち、厳密には、出生後には、出生仔ヒツジ)より、肝臓の組織生検、骨髄等の組織を得、
ii) 得られた組織について、トリプシン処理、DNaseI処理、溶解処理等の組織に応じた適切な処理を行ない、細胞を得、
iii) 得られた細胞を、2重量% FBS(ウシ胎仔血清)−IMDMに懸濁して、細胞浮遊液を得、
iv) 得られた細胞浮遊液と、メチルセルロース培地{例えば、商品名:MethoCult GF+〔ステムセルテクノロジーズ(StemCell Technologies)社製、カタログ番号:ST−04435〕等}とを混合して、攪拌し、
v) ついで、得られた細胞を含む培地を、ディッシュに注入し、37℃、5体積% CO2の条件下で14日間培養する
ことにより行なわれる。
また、前記(2)の霊長類動物に特異的なマーカー遺伝子の発現は、造血コロニーアッセイで形成されたコロニーから、慣用の方法でDNAを抽出し、得られたDNAについて、例えば、霊長類動物に特異的なマーカー遺伝子に特異的なプローブを用いたハイブリダイゼーション、特異的なプライマー対を用いたPCR等により、該遺伝子を検出することにより、評価されうる。または、造血コロニーを、霊長類動物に特異的な抗原に対する抗体で免疫染色することによって評価してもよい。
なお、本発明の分化方法においては、前記ステップ(II)で得られたヒツジ胎仔、すなわち、より厳密には、出生仔ヒツジに、ステップ(I)で得られた細胞をさらに移植してもよい。出生仔ヒツジに、ステップ(I)で得られた細胞をさらに移植することにより、霊長類の造血系細胞を、効率よく、安定に供給することができる。
また、本発明の分化方法においては、前記ステップ(II)で得られた出生仔ヒツジに、霊長類動物に特異的なサイトカイン等を投与してもよい。前記サイトカインを仔ヒツジに投与することにより、当該出生仔ヒツジの体内において、本質的に霊長類動物に由来する造血系細胞の増殖を選択的に刺激することが可能になる。
前記サイトカインとしては、幹細胞因子(SCF)、塩基性線維芽細胞増殖因子(bFGF)、オンコステインM(OSM)、flk2/flk3リガンド、インターロイキン−1、インターロイキン−3、顆粒球コロニー刺激因子(G−CSF)、ケモカイン、エリスロポエチン、トロンボポエチン等及びこれらのいずれかの組み合わせが挙げられる。
本発明の分化方法においては、造血系細胞の分化誘導に適した条件下に、6日〜8日間、好ましくは、6日間維持し、得られた細胞を妊娠ヒツジの子宮内の胎仔に移植し、生育させ、出生にいたった仔ヒツジに、霊長類動物に特異的なサイトカインを投与することにより、驚くべく、高いキメラ率を達成するという優れた効果を発揮する。
本発明の分化方法により得られる霊長類動物の造血系細胞の評価は、例えば、CD45、TER119、α4−インテグリン、VE−カドヘリン、c−Kit、Sca−1、CD34(幹細胞マーカー)、CD13(骨髄球マーカー)、CD14(骨髄球マーカー)、GpIIb/IIIa(巨核球系マーカー)、CD3(T細胞マーカー)、CD4(T細胞マーカー)、CD8(T細胞マーカー)、sIgM(B細胞マーカー)、CD19(B細胞マーカー)等の発現の有無を指標とすることにより行なわれうる。
本発明の分化方法は、霊長類動物の造血系細胞の製造に用いられうる。
本発明は、他の側面では、霊長類動物の造血系細胞の製造方法に関する。
本発明の霊長類動物の造血系細胞の製造方法は、
(I)マクロファージコロニー刺激因子を欠損したストロマ細胞株をフィーダー細胞とし、該フィーダー細胞上、霊長類動物の胚性幹細胞を維持するステップ、
(II)前記ステップ(I)で得られた霊長類動物由来の細胞を、妊娠ヒツジの子宮内の胎仔に移植し、該胎仔を出生にいたるまで生育させるステップ、及び
(III)前記ステップ(II)で出生した胎仔、すなわち、より厳密には、仔ヒツジに、霊長類動物に特異的なサイトカインを投与し、さらに該仔ヒツジを生育させて得られたヒツジより、該霊長類動物の胚性幹細胞から分化した霊長類動物の造血系細胞を分離するステップ
を含む方法である。
本発明の製造方法は、霊長類動物の胚性幹細胞を、造血系分化誘導条件で維持することに1つの大きな特徴がある。したがって、本発明の製造方法によれば、霊長類動物の胚性幹細胞を、前記造血系分化誘導条件に維持するため、未分化胚性幹細胞をそのまま移植した場合には、該未分化胚性幹細胞から造血系細胞への分化が実質的に起こらないにもかかわらず、驚くべく、該霊長類動物の胚性幹細胞から造血系細胞を製造することができるという優れた効果を発揮する。
また、本発明の分化方法においては、霊長類動物の胚性幹細胞が、ヒツジ胎仔へ移植された際、該胚性幹細胞に、該ヒツジ胎仔(すなわち、厳密には、出生後においては、出生仔ヒツジ)の体内環境をより有効に利用させることができるため、霊長類動物の造血系細胞を安定に供給することができるという優れた効果を発揮する。
また、本発明の製造方法は、妊娠ヒツジの子宮内のヒツジ胎仔が用いられることにも1つの大きな特徴がある。
本発明の製造方法は、前記ヒツジ胎仔が用いられているため、霊長類とのキメラ率が高くなり、それにより、霊長類動物の胚性幹細胞から、霊長類動物の造血系細胞を霊長類の造血系細胞を大量に供給することができるという優れた効果を発揮する。
また、本発明の製造方法によれば、前記ステップ(I)において、胚性幹細胞、例えば、カニクイザル胚性幹細胞株CMK6等を、6日〜8日、好ましくは6日間、造血系細胞の分化誘導に適した条件で維持することにより、胚性幹細胞から造血系細胞への分化を驚くべく高効率で、より迅速に行なうことが可能になる。
さらに、本発明の製造方法によれば、霊長類胚性幹細胞を、出生仔ヒツジに、追加的に移植することができ、また、ヒツジに対しては作用しない霊長類のサイトカインにより、移植された霊長類胚性幹細胞又は本質的に霊長類動物に由来する造血系細胞を選択的に刺激することができるため、本質的に霊長類動物に由来する造血系細胞を、より効率よく、安定して供給することができる。
また、本発明の製造方法によれば、輸血用血小板、移植用CD34+細胞を、安定して供給することができる。
本発明の製造方法における前記ステップ(I)及びステップ(II)は、本発明の分化方法におけるステップ(I)及びステップ(II)と同様である。
前記ステップ(III)においては、前記ステップ(II)で出生した胎仔、すなわち、仔ヒツジより、該霊長類動物の胚性幹細胞から分化した霊長類動物の造血系細胞を分離する。
ステップ(III)においては、ヒツジ胎仔、すなわち、仔ヒツジは、キメラ率の観点から、出生後、1年以内の個体であることが望ましい。
また、前記ステップ(III)においては、出生した仔ヒツジに、霊長類動物に特異的な前記サイトカイン等を投与し、さらに該仔ヒツジを生育させることが好ましい。
さらに、前記分化方法の場合と同様に、霊長類の造血系細胞を、効率よく、安定に供給する観点から、前記ステップ(II)で出生したヒツジ胎仔、すなわち、出生仔ヒツジに、ステップ(I)で得られた細胞をさらに移植してもよい。
ステップ(III)において、霊長類動物の造血系細胞の分離は、例えば、
1) 上記のようにして得られたヒツジから、肝臓、骨髄、血液(末梢血、臍帯血)、胸腺、脾臓等を採取し、
2) 得られた器官から、適切な手法により、細胞群を得、
3) 得られた細胞群から、霊長類動物に由来する造血系細胞を分離すること
等により得られうる。
前記ステップ3)においては、例えば、霊長類動物に特異的なマーカー又は該マーカーに対する抗体等を用いたフローサイトメトリー、免疫ビーズを用いる方法等が行なわれる。
前記「霊長類動物に特異的なマーカー」としては、例えば、霊長類に交叉し、ヒツジに交叉しないマーカーであればよく、HLA−ABC、β2−ミクログロブリン、CD45等が挙げられる。
本発明の製造方法により得られる霊長類動物の造血系細胞の評価は、前記分化方法と同様に、例えば、CD45、TER119、α4−インテグリン、VE−カドヘリン、c−kit、Sca−1、CD34、CD13、CD14、GPIIb/IIIa、CD3、CD4、CD8、sIgM、CD19等の発現の有無を指標とすることにより行なわれうる。
また、本発明は、別の側面では、本発明の製造方法により得られた霊長類動物の造血系細胞に関する。
かかる造血系細胞は、特に限定されないが、例えば、血管新生療法用の移植材料等の用途が期待され、心筋梗塞等の虚血性疾患への応用が可能となる。
本発明の造血系細胞は、具体的には、前記したように、造血幹細胞及び該造血幹細胞から分化してできる細胞群、すなわち、赤芽球、骨髄球、巨核球系、リンパ球等の性質を有する細胞等であり、具体的には、赤芽球、骨髄球等である。
本発明の造血系細胞は、本質的に霊長類動物に由来する細胞であり、製造時に外来遺伝子が導入されていない細胞であるため、霊長類動物への移植等に好適である。
本発明の造血系細胞を、造血系の構築若しくは造血細胞の作用を必要とする疾患又は状態の部位に移植することにより、治療効果を発揮させることができる。したがって、本発明は、別の側面では、造血系の構築若しくは造血細胞の作用を必要とする疾患又は状態の部位に、本発明の造血経細胞を治療上有効量供給することを特徴とする、造血系の構築あるいは造血細胞の作用を必要とする疾患の治療方法に関する。さらに別の側面では、本発明は、造血系の構築若しくは造血細胞の作用を必要とする疾患の治療のための本発明の造血系細胞の使用に関する。
前記造血系の構築若しくは造血細胞の作用を必要とする疾患としては、特に限定されないが、例えば、再生不良性貧血、白血病、免疫不全症、心筋梗塞等の虚血性心疾患、閉塞性動脈硬化症、バージャー病等が挙げられる。
前記「治療上有効量」とは、造血系の構築を行なう、あるいは造血細胞の効果を認めるに十分な量であればよく、造血系の構築若しくは造血細胞の作用を必要とする疾患又は状態の程度;個体の体重、年齢、体力;造血系の構築の進行度等に応じ、適宜設定されうる。
本発明の造血系細胞は、例えば、穿刺注入等により、造血系の構築若しくは造血細胞の作用を必要とする疾患又は状態の部位に供給してもよく、必要に応じて、外科的手術等を施してもよい。
前記治療効果は、適切な手段(例えば、ファイバースコープ、超音波、CT、MRIによる観察、血管造影法、血清中の疾患特異的マーカー測定等)により、前記疾患の症状の改善又は前記状態の改善が言い出されることを指標として評価されうる。
また、本発明は、別の側面では、造血系の構築若しくは造血細胞の作用を必要とする疾患の治療用の医薬の製造のための本発明の造血系細胞の使用に関する。
本発明の分化方法と同様の操作により、霊長類動物の造血系細胞を生産するキメラヒツジを作製することができる。したがって、本発明は、さらに別の側面では、霊長類動物の造血系細胞を生産するキメラヒツジの作製方法に関する。
本発明の霊長類動物の造血系細胞を生産するキメラヒツジの作製方法は、霊長類動物の胚性幹細胞を、造血系細胞の分化誘導に適した条件で維持し、得られた細胞を妊娠ヒツジの子宮内の胎仔に移植し、出生した仔ヒツジに、霊長類動物に特異的なサイトカインを投与し、さらに該仔ヒツジを生育させることを1つの大きな特徴とする。造血系細胞の分化誘導に適した条件下に、6日〜8日間、好ましくは、6日間維持し、得られた細胞を妊娠ヒツジの子宮内の胎仔に移植し、生育させ、出生に至った仔ヒツジに、霊長類動物に特異的なサイトカインを投与することにより、驚くべく、高効率でキメラヒツジを得ることができるという優れた効果を発揮する。
本発明のキメラヒツジの作製方法によれば、霊長類の造血系細胞をより安定に供給することができるキメラヒツジを得ることができる。
本発明のキメラヒツジの作製方法により得られたキメラヒツジは、免疫学的に寛容な状態で、本質的に霊長類動物に由来する細胞を有しているため、該キメラヒツジには、造血系細胞の分化誘導に適した条件で維持し、得られた細胞をさらに移植することができる。また、本発明のキメラヒツジの作製方法により得られたキメラヒツジは、霊長類動物に特異的なサイトカインを投与することにより、体内において、本質的に霊長類に由来する造血系細胞への分化を選択的に刺激することができる。
以下、実施例により、本発明をさらに詳しく説明するが、本発明は、かかる実施例によりなんら限定されるものではない。なお、以下の実施例において、「%」は、特に明記がない場合は、重量%を示すものとする。また、CO2、O2及びN2における「%」表記は、体積%を示すものとする。
(1)フィーダー細胞の作製
継代5回までのマウス胚線維芽細胞BALB/cAJc1(日本クレア社供給)を、最終濃度 10μg/mlのマイトマイシンCを含むD10培地〔組成:10% FCS、DMEM〕で2〜4時間培養することにより、細胞の分裂増殖を停止させて、不活化させた。ついで、マイトマイシンCを含む培地を除去した。処理後の細胞をリン酸緩衝化生理食塩水で洗浄した。洗浄後の細胞をトリプシン・EDTA処理(0.05% トリプシン、1mM EDTA)して、細胞浮遊液を得、ついで、細胞浮遊液を遠心分離して細胞を得た。
ついで、得られた細胞をD10培地に懸濁し、ゼラチンコートした6cm培養ディッシュ〔ファルコン(FALCON)社製、商品名:Tissue culture dish〕に1×106個となるように播種した。ディッシュに接着するまで培養して得られた細胞を、フィーダー細胞として用いた。
(2)カニクイザル由来ES細胞株CMK6の培養
前記実施例1(1)のフィーダー細胞の培養物より、D10培地を除去し、リン酸緩衝化生理食塩水で、該フィーダー細胞を洗浄した。
ついで、凍結保存されていたカニクイザル由来ES細胞CMK6を、ES細胞用培地〔200mlあたりの組成:DMEM−F12〔ギブコ(GIBCO)社製〕 163ml、ウシ胎仔血清 30ml(最終濃度15%)、L−グルタミン 2ml(最終濃度2mM)、ペニシリン(100U/ml)−ストレプトマイシン(100μg/ml) 2ml、非必須アミノ酸溶液〔ギブコ(GIBCO)社製〕 2ml、2−メルカプトエタノール 1ml(最終濃度0.1mM)〕 5mlに懸濁した。得られた細胞懸濁液を、前記フィーダー細胞上に、播種した。なお、培養は、37℃、5% CO2条件のインキュベーター内で行なった。また、ES細胞用培地は、2日に1回交換した。
7日間培養後、古い培地を吸引して、除去し、細胞を、リン酸緩衝化生理食塩水で洗浄した。ついで、ディッシュ上の細胞に、0.25% トリプシン/HBSS(ハンクス平衡塩水溶液) 1mlを添加し、該細胞を37℃で3〜4分間培養した。その後、常温下でディッシュの底を軽く叩き、細胞のコロニーを剥離させた。
ついで、前記細胞のコロニーから、前記ES細胞用培地を用いて、5mlピペットによるピペッティングで未分化な細胞のコロニーを回収した。回収された細胞を前記ES細胞用培地に懸濁し、得られた細胞懸濁液 5mlを、6cmディッシュ上のフィーダー細胞に播種した。その後、コロニーの大きさに応じ、2〜4日毎に継代した。
得られた未分化ES細胞を、ヒツジ胎仔への移植に用いた。また、かかる未分化ES細胞を、以下の造血系分化誘導に用いた。
(1)フィーダー細胞の作製
マクロファージコロニー刺激因子の機能不全マウスである(C57BL/6×C3H)F2−op/opマウスの新生仔頭蓋冠より作製されたストロマ細胞株で、前脂肪細胞株であるOP9細胞を、OP9細胞用培地{1250mlあたりの組成:α−MEM〔ギブコ(Gibco)社製、カタログ番号:12000−022〕 980ml、ウシ胎仔血清 250ml(最終濃度20%)、ペニシリン(100U/ml)−ストレプトマイシン(100μg/ml) 10ml、200mM L−グルタミン溶液 10ml}で、37℃、5% CO2条件下で培養した。その後、培養液内で接着してコンフルエント又はその直前まで生育した細胞を、リン酸緩衝化生理食塩水で2回洗浄した。ついで、洗浄後のディッシュ上の細胞に、0.1% トリプシン−EDTA(2ml/10cmディッシュ)を添加し、インキュベーターで5分間保温した。
前記ディッシュに、前記OP9細胞用培地を添加し、細胞を含む培地を50mlコニカルチューブに回収した。回収された細胞を含む培地を1500rpmで5分間遠心分離した。得られた細胞を、前記OP9細胞用培地に、1:4〜1:5(約2.5×105細胞〜4×105細胞で播種し、37℃、5% CO2条件下に、コンフルエントになるまで培養した。
得られた細胞を、10cmディッシュ〔ファルコン(FALCON)社製)上、最終濃度10μg/mlのマイトマイシンCを含む前記OP9細胞用培地 10mlで2〜4時間培養することにより、細胞の分裂増殖を停止させて、不活化させた。ついで、マイトマイシンCを含む培地を除去した。処理後の細胞をリン酸緩衝化生理食塩水で洗浄した。洗浄後の細胞をトリプシン・EDTA処理(0.05% トリプシン、1mM EDTA)して、細胞浮遊液を得、ついで、細胞浮遊液を遠心分離して細胞を得た。
得られた細胞を、ゼラチンコートした6cm培養ディッシュ〔ファルコン(FALCON)社製、商品名:Tissue Culture Dish〕上、前記OP9細胞用培地 に、1:2(培地あたり約1×105細胞/ml)で播種した。以上のように準備した細胞を、以下の造血系分化誘導培養におけるフィーダー細胞として用いた。
(2)造血系分化誘導培養
前記実施例1で、0.25% トリプシン/HBSS 1mlに回収されたカニクイザル由来ES細胞株CMK6株を、分化用培地〔100mlあたりの組成:IMDM 84ml、8% ウマ血清 8ml、8% ウシ胎仔血清 8ml、5×10−6M ヒドロコルチゾン 0.18μg、BMP−4 2μg(最終濃度20ng/ml)、SCF 2μg(最終濃度20ng/ml)、IL−3 2μg(最終濃度20ng/ml)、IL−6 1μg(最終濃度10ng/ml)、VEGF 2μg(最終濃度20ng/ml)、G−CSF 2μg(最終濃度20ng/ml)、Flt.3リガンド 2μg(最終濃度10ng/ml)、EPO 200U(最終濃度2U/ml)〕 5mlに懸濁し、得られた細胞懸濁液を、前記実施例2(1)で得られた造血系分化誘導培養におけるフィーダー細胞上に1:3で播種した。
その後、37℃、5% CO2条件下で6日間培養した。なお、培養中、培地を適宜交換した。得られた細胞を(図1)、造血系分化誘導処理細胞として、以下の移植等に用いた。
(3)移植細胞の準備
前記実施例2(2)で得られた造血系分化誘導処理細胞のディッシュから、培地を吸引除去し、ディッシュに、0.25% トリプシン/HBSS 1mlを添加し、37℃、5% CO2の条件下、4分間培養した。
ついで、スクレーパー〔商品名:cell scraper−M、スミロン(SUMILON)社製〕で、フィーダー細胞上の細胞を、フィーダー細胞ごと、前記分化用培地 20mlの入った50ml容コニカルチューブに回収し、800rpm、4分間遠心分離した。
上清を吸引除去し、細胞を、前記分化用培地 20mlの入った50ml容コニカルチューブに懸濁し、細胞浮遊液を得た。
移植直前に、前記細胞浮遊液を、800rpmで4分間遠心分離した。上清を吸引除去し、ついで、得られた細胞に、0.1%BSA/HBSS 20mlを添加し、懸濁して、800rpmで4分間遠心分離することにより、洗浄した。
その後、上清を吸引除去し、細胞(1×107〜1×108個)を、0.1%BSA/HBSS 0.4mlに懸濁した。得られた懸濁液を、1.5ml アシストチューブに入れ、移植するまで氷上で保存した。
実験用ヒツジ取り扱い業者ジャパンラムから購入した妊娠ヒツジを使用した。妊娠約60日目に移植を予定し、移植の1週間〜10日前に、移植時における飼育環境に慣れさせた。また、腹部超音波検査による胎仔の確認を行なった。
ヒツジ母体を、ケタミン筋注(15mg/kg体重)で麻酔した。ヒツジを、手術台上に仰向けに寝かせ、四肢を固定後、経口気管内挿管し、自発呼吸のもとO2/空気/ハロセンで全身麻酔下に手術を行なった。
手術は、清潔操作で行なった。下腹部正中切開で開腹後、子宮を腹腔内に翻転させた。
移植用細胞の注入場所は、胎仔のI)腹腔内及びII)肝実質内の二通りとした。
細胞移植法は、I)子宮切開法、II)超音波ガイド法の二通りとした。子宮切開法の場合、ヒツジの子宮筋層を切開し、温存したまま露出させた卵膜内にヒツジ胎仔を追い込み、透明な卵膜を通して直視下に胎仔腹腔内に23G針で、移植用細胞(1×106〜1×108細胞)を穿刺注入し、子宮筋層、腹膜筋層、皮膚を層々に縫合閉腹した。また、超音波ガイド法の場合、子宮を切開せず、子宮壁上から超音波ガイド下、ヒツジ胎仔肝実質内に25Gカテラン針で、移植用細胞(1×107〜1×108細胞)を穿刺注入し、腹膜筋層、皮膚を層々に縫合閉腹した。
手術終了後、抗生物質(マイシリン・ゾル)を筋肉内注射した。ついで、抜管し、ヒツジの麻酔覚醒を確認した。
子宮切開法および超音波ガイド法による妊娠継続率は、それぞれ40%(4/10)および80%(8/10)であり、超音波ガイド法で高い妊娠継続率が得られた。
移植後1ヶ月目の胎仔について、母体全身麻酔下に帝王切開で取り出して解剖し、造血組織を含む全身組織を試料として採取した。
具体的には、左右の子宮に2頭〔移植胎仔(尾切)、対照胎仔〕ずつ、計4頭の胎仔を妊娠している母体より、以下のような手順で、組織の採取及び処理を同時に行なった。
ヒツジ母体に、経口挿管により、自発呼吸、O2/空気/ハロセンで麻酔導入を開始した。15分後、母体を帝王切開し、片側子宮の胎仔2頭を取り出し、組織を採取し、処理した。なお、細胞を移植した胎仔(移植胎仔)の体重は、950gであり、対照胎仔の体重は、1040gであった。
ついで、臍帯が母体とつながった状態で、臍帯静脈血(臍帯血試料)と臍帯動脈血(末梢血試料)とを採血した。ここで、採血量は、移植胎仔の臍帯血試料について10ml、移植胎仔の末梢血試料について20ml、対照胎仔の臍帯血試料について20ml、対照胎仔の末梢血試料について20mlとした。
臍帯を切離し、ついで、臍帯静脈に、6Gアトムチューブでカニューレ挿入した。臍帯動脈について、カニューレ挿入ができなかったため、切離断端を開放とした。
臍帯静脈側のカニューレに還流液(冷ラクテック500ml)をつなぎ、点滴にて還流を開始した。臍帯動脈側を脱血路として血液の流出が無くなるまで(全1000ml程度)還流を行なった。
移植胎仔及び対照胎仔それぞれについて、開腹し、部分肝、大腿骨を初代培養用試料として清潔操作で採取した。また、臓器を摘出した。摘出された臓器を、氷上のシャーレに分けて置いた。
採取した組織を以下に示す。
内胚葉系組織
1.肝(胆管、肝実質、肝動脈、門脈領域を含む)
2.膵頭部(膵管、膵実質)
3.胸腺
4.甲状腺
5.肺(気管支、肺胞)
6.小腸
7.大網(臓側腹膜)
外胚葉系組織
8.大脳
9.脊髄
10.皮膚(付属器;毛、汗腺、脂腺)
11.尾部切断創(皮膚)
中胚葉系組織
12.脂肪(結合組織)
13.軟骨(骨端軟骨)
14.骨髄
15.リンパ節
16.骨格筋
17.心筋
18.大動脈
19.脾臓
20.腎臓
21.生殖腺
なお、初代培養用に下記試料を採取した。
22.末梢血(臍帯動脈血)
23.臍帯血(臍帯静脈血)
24.骨髄(還流後)
25.肝(還流後)
採取した組織から5mm×5mm×3mmの組織標本を、各3検体ずつ切り出した。そのうち2検体は、4% 緩衝パラホルムアルデヒド(PFA)/8%スクロースの入った15mlサンプル瓶へ入れ、一晩固定を行なった。かかる試料を、4% PFA固定試料とした。
なお、骨髄試料については、脱灰を行なった。
また、前記4% PFA固定試料の1検体を、順に、50% エタノール、60% エタノール、70% エタノール、80% エタノール、90% エタノールで1〜2時間維持し、100% エタノールで1〜2時間維持し、さらに、100% エタノールで1〜2時間維持し、さらに100% エタノールで1晩維持することにより脱水し、ベンゼンに浸漬(30分間×2回)させ、ついで、パラフィンに浸漬(45分間×2回)させることにより、4% PFA固定後パラフィン包埋切片試料を得た。
前記4% PFA固定試料のもう1検体は、クリオモルド1号(Tissuetek,Miles,Elkhart,IN,USA)に設置し包埋凍結させた。前記包埋凍結は、OCTコンパウンド(Tissuetek)で包埋し、液体窒素で凍結させることにより行なった。かかる試料を、固定後凍結切片用の標本とした。
残部の1検体は、同じくクリオモルド1号に設置し包埋凍結させた。前記包埋凍結は、OCTコンパウンドで包埋し、液体窒素で凍結させることにより行なった。かかる試料を、新鮮凍結切片用の標本とした。
残った採取組織から小片をいくつか切り出し、クライオチューブ3本に1つずつ入れ、チューブごと液体窒素で凍結させた。これらの臓器の小片を、DNA抽出用又はRNA抽出用の標本とした。
また、流産、死産若しくは出生後死亡した場合、胎仔を取り出し、末梢血(ヘパリン採血) 約20ml、骨髄〔ヘパリン生食(10単位/ml)に採取〕適量、臍帯血(ヘパリン採血) 約20ml、肝臓(ヘパリン生食中に採取)約10gを採取した。体表、腹腔内、胸腔内及び脳を剖検し、テラトーマ等の腫瘍形成がないか確認したが、腫瘍形成は認められなかった。なお,出生例においても腫瘍形成は認められていない。
また、出生後に解析を行なった症例では、出生後からおよそ月に1回のペースで末梢血と骨髄を採取した。具体的には、出生後には、末梢血(ヘパリン採血)約20mlを、最初の数ヶ月間において、2週間毎に採取し、骨髄(ヘパリン生食中に採取)を1ヶ月毎に適量採取した。採取した試料を、無菌コニカルチューブに入れて、室温で振とう保管し、一日以内に有核細胞を分離し、凍結保存した。
肝臓、臍帯血、骨髄、末梢血等の造血系組織や細胞は、溶血法により白血球分画を分離し、DNA抽出用又はRNA抽出用試料、初代培養用試料、FACS解析用試料として−80℃または液体窒素中で凍結保存した。
なお、初代培養用試料として、肝臓については、以下のように細胞の単離を行なった。試料を無菌操作下で採取し、該試料を適当に細切し、50ml コニカルチューブに回収し、1% トリプシン/EDTA/リン酸緩衝化生理食塩水20mlを添加し、よく懸濁し、37℃で10分間振盪させながら培養した。得られた産物に、DNase I溶液〔10mg DNase Iを1ml 0.15M NaClに溶解させた溶液〕 200μlを添加し、さらに、1M MgCl2を100μl添加し、37℃で10分間培養した。その後、産物を、70mm径 ナイロンメッシュ〔ファルコン(FALCON)社製、商品名:cell strainer)でろ過し、産物と同量のD10培地を添加した。その後、1500rpmで5分間遠心分離し、上清を吸引除去した。なお、赤血球が混入によりペレットが赤色である場合、該ペレットに、約10倍量以上のACK溶血培地を添加し、15〜0分間氷上で維持し、ついで、1500rpmで5分間4℃で遠心分離した。約40mlのリン酸緩衝化生理食塩水で、ペレットを2回洗浄した。上清を吸引除去し、得られたペレットを、106〜107細胞/バイアルでセルバンカーに懸濁し、−80℃又は液体窒素内で凍結保存した。
また、初代培養用試料として、臍帯血、末梢血及び骨髄については、以下のように細胞の単離を行なった。試料を、無菌操作でヘパリン採血と同様な方法で採取し、血液 35mlを50ml コニカルチューブに入れ、1500rpm、10分間遠心分離した。血漿を吸引除去し、ペレットを、50ml コニカルチューブ5本に分注した。ついで、各コニカルチューブに、40ml(ペレットの約10倍量)のACK溶血培地を添加し、混和させ、氷上で、15分間培養した。1500rpmで5分間、4℃での遠心分離後、上清を吸引除去した。なお、ペレットが赤色である場合、1500rpm、10分間遠心分離を繰り返した。ついで、ペレットに、リン酸緩衝化生理食塩水 40mlを添加し、懸濁し、5本のチューブを1本のチューブにまとめ、1500rpmで5分間、4℃で遠心分離することにより洗浄を行なった。かかる洗浄を、2回行なった。上清を吸引除去し、ペレットを5×106細胞/バイアル/mlとなるようにセルバンカーで懸濁し、−80℃または液体窒素中で凍結保存した。
前記実施例4で得られた試料から商品名:QIAamp DNA Mini Kitまたは商品名:QIAamp DNA Blood Mini Kitを用いて、キットに添付の製造者のプロトコールに従い、DNAを抽出した。
サル由来の細胞を移植したヒツジ胎仔の解析のために、サルβ2−ミクログロブリンに対するプライマー対として、外部プライマー対:
CB2MG−2F:5’−GTCTGGATTTCATCCATCTG−3’ (配列番号:1)と
hB2MG−5R:5’−GGCTGTGACAAAGTCACATGG−3’ (配列番号:2)と
からなるプライマー対、及び
内部プライマー対:
CB2MG−2Fと
hB2MG−3R:5’−GGTGAATTCAGTGTAGTACAAG−3’ (配列番号:3)
とからなるプライマー対
を用い、前記DNAを鋳型として、nested PCR(外部プライマー対を用いたPCR後に,内部プライマー対を用いたPCRを行なう二段構えのPCR法)を行なった。なお、PCR条件は、反応液〔組成:H2O 30.75μl、10×PCR緩衝液 5μl、dNTP(各2.5mM) 4μl、Ex Taq(5U/μl) 0.25μl、プライマー(各10pM) 各2.5μl、試料由来DNA(250ng相当量) 5μl〕を用い、95℃で5分間の反応の後、95℃で1分間と58℃で1分間と72℃で1分間とを1サイクルとして、外部プライマー対を用いた増幅時には、25サイクル、内部プライマー対を用いた増幅時には、30サイクルを行ない、72℃で5分間反応させた後、4℃で維持する条件とした。
また、β−アクチンに対するプライマー対:
Cβ1:5’−CATTGTCATGGACTCTGGCGACGG−3’ (配列番号:4)と
Cβ2:5’−CATCTCCTGCTCGAAGTCTAGGGC−3’ (配列番号:5)と
からなるプライマー対を用い、同様の反応液でPCR(95℃で1分間と54℃1分間と72℃2分間とを1サイクルとして30サイクル)を行なった。
なお、定量のために、表1に示す希釈系列の試料を作製し、用いた。
PCRにより生成した産物を、2% アガロースゲル(0.01%エチジウムブロマイド含有)による電気泳動に供した。
なお、移植1ヶ月後のヒツジ胎仔の各組織においては、サル由来の細胞を検出できず、下記実施例6で述べる通り、サル胚性幹細胞に対して造血系分化誘導を行った細胞を移植したヒツジの造血前駆細胞においてのみ、サル由来の細胞が検出された。したがって、本法によれば、霊長類胚性幹細胞から造血系細胞への分化に特に適し、他の系統の細胞分化はおこらないと考えられ、造血分化への特異性がすぐれた方法であることが示唆される。
初代培養用に分離した細胞で造血コロニーアッセイを行なった。
凍結保存されていた細胞のクライオチューブを37℃の恒温槽で溶解し、9mlの2% FBS−IMDMを入れた15ml コニカルチューブ中に懸濁し、得られた懸濁液の一部を用いて細胞数を計数した。ついで、懸濁液を、1300rpmで4分間遠心分離し、得られたペレットを、2% FBS−IMDMで1×106細胞/mlとなるように懸濁し、細胞浮遊液を得た。さらに、2% FBS−IMDMで10倍希釈して、1×105細胞/mlの細胞浮遊液を調製した。
14mlのポリスチレン丸底チューブに、メチルセルロース培地(商品名:Methocult GF+〔ステムセルテクノロジーズ(StemCell Technologies)社製、カタログ番号:ST−04435〕)を4ml入れ、細胞浮遊液を400μl添加し、キャップを閉めてよく振って攪拌した。その後、泡が消えるまで約5分間静置した。
ついで、得られた細胞を含む培地 1.1mlを、18G針を付けた2.5ml 注射器で、3.5mm ディッシュの中央に注入し、ディッシュの底に均一に広げた。
培養は、37℃、5% CO2の条件下で行った。コロニーの計数は、培養開始から、14日目に行なった。
かかる方法では、サル由来の造血前駆細胞とヒツジ由来の造血前駆細胞が同等のコロニー形成能を有しているので,サル由来のコロニー数のコロニー総数に対する比が造血キメラ率を示すことになる。
サル由来のコロニーの同定のために、コロニーを形成している培地からコロニーを取り、各コロニーからDNAを抽出し、得られたDNAを鋳型とし、サルβ2−ミクログロブリンに対するプライマー対を用いて、PCRを行ない、サル由来のコロニーを確認した。
サルβ2−ミクログロブリンに対するプライマー対として、外部プライマー対:前記CB2MG−2FとhB2MG−5Rとからなるプライマー対、及び内部プライマー対:前記CB2MG−2FとhB2MG−3Rとからなるプライマー対を用い、前記DNAを鋳型として、nested PCRを行なった。なお、PCR条件は、反応液〔組成:H2O 30.75μl、10×PCR緩衝液 5μl、dNTP(各2.5mM) 4μl、商品名:Ex Taq(5U/μl) 0.25μl、プライマー(各10pM) 各2.5μl、試料由来DNA(250ng相当量) 5μl〕を用い、95℃で5分間の反応の後、94℃で30秒間と57℃で1分間と72℃で1分間とを1サイクルとして、外部プライマー対を用いた増幅時及び内部プライマー対を用いた増幅時ともに、25サイクルを行ない、72℃で5分間反応させた後、4℃で維持する条件とした。得られた産物について、2% アガロースゲルによる電気泳動により解析した。
その結果、造血系分化誘導サルES細胞を用いた場合、図2に示されるように、造血系分化誘導処理をしたES細胞を腹腔内に移植後1ヶ月の個体の胎仔肝臓で約30%(n=1)であり、造血系分化誘導処理をしたES細胞を肝実質内に移植した出生後(移植後3〜6ヶ月)の個体の骨髄で約1%(n=3)の頻度でサル由来の造血コロニーが検出された。すなわち、ES細胞を、造血系分化誘導処理し、ヒツジ胎仔に導入することにより、生まれたヒツジは、サル由来の造血系細胞を産生する。一方、未分化のままのサル胚性幹細胞を移植したヒツジでは、移植1ヶ月後の肝臓にサル由来の造血コロニー形成細胞を検出できなかった(n=2)。したがって、実施例2で述べた胚性幹細胞の造血系分化誘導培養が、サル/ヒツジ造血キメラ作製のために必須であることがわかった。
組換え型ヒト幹細胞因子〔recombinant human stem cell factor (rhSCF)、1.5mg/ml、アムジェン社製ロット番号15701F4〕 1000μgを希釈溶媒〔組成:HBSS中、10% ヒツジ自己血清及び0.1U ヘパリンナトリウム〕 5mlで希釈し、得られた希釈物を、0.22μmフィルターで濾過し、出生後の骨髄コロニーPCRでサル/ヒツジキメラを認めた個体(n=2)に対し、60μg/kg/日となるように、23G針付注射器を用いて、1日1回、18日間腹腔内注射した。
投与対象のヒツジNo:141は、生後81日(移植後156日)であり、投与開始時点で体重約14kgであった。また、投与対象のヒツジNo:182は、生後12日(移植後94日)であり、投与開始時点で体重約10kgであった。
投与6日目、最終投与から1日後及び最終投与から3日後のそれぞれにおいて、末梢血及び骨髄を採取した。
各細胞に、FACS緩衝液〔組成:5% ウシ胎仔血清、と0.05% NaN3とを含むリン酸緩衝化生理食塩水〕 3mlを添加して、懸濁し、得られた懸濁物を70μm メッシュを通した。得られた産物を1500rpm(490×g)で、4分間遠心分離し、上清を吸引除去した。その後、得られたペレットに前記FACS緩衝液 450μl添加した。
96ウェルプレートに、得られた溶液 150μlずつを分注した。なお、前記溶液のうち150μlに前記FACS緩衝液 350μlを添加し得られた試料を抗体陰性対照として用いた。
ついで、96ウェルプレートのウェル中の溶液を1800rpm(710×g)で、2分間遠心分離し、上清を除去した。
その後、商品名:PE−Anti−human CD45(ベクトン ディッキンソン社製、BDカタログ番号:557059) 20μlと前記FACS緩衝液 80μlとを、ウェルに添加した。なお、前記PE−Anti−human CD45の代わりに、アイソタイプ対照として、商品名PE−Anti−mouse IgG1κ(ベクトン ディッキンソン社製、カタログ番号:33815X)を用いた。得られた混合物を、30分間氷上でインキュベーションした後、1800rpm(710×g)で、2分間遠心分離し、上清を除去した。その後、得られたペレットを、前記FACS緩衝液 150μlで2回洗浄した。
得られたペレットを前記FACS緩衝液 350μlで懸濁し、得られた試料をフローサイトメトリーに供した。
その結果、CD45+細胞は見出されなかった。
ついで、末梢血及び骨髄から実施例4の記載と同様に、溶血法により、白血球分画を分離した。得られた試料から、商品名:QIAamp DNA Mini Kit及び商品名:QIAamp DNA Blood Mini Kitを用いて、キットに添付の製造者のプロトコールに従い、DNAを抽出した。ついで、前記DNAを鋳型とし、サルβ2−ミクログロブリンに対するプライマー対として、前記CB2MG−2FとhB2MG−5Rとを外部プライマー対とし、前記CB2MG−2FとhB2MG−3Rとを内部プライマー対として用いて、nested PCRを行なった。なお、PCR条件は、反応液〔組成:H2O 30.75μl、10×PCR緩衝液 5μl、dNTP(各2.5mM) 4μl、商品名:Ex Taq(5U/μl) 0.25μl、プライマー(各10pM) 各2.5μl、試料由来DNA(250ng相当量) 5μl〕を用い、95℃で5分間の反応の後、95℃で1分間と58℃で1分間と72℃で1分間とを1サイクルとして、外部プライマー対を用いた増幅時には、25サイクル、内部プライマー対を用いた増幅時には、25サイクルを行ない、72℃で5分間反応させた後、4℃で維持する条件とした。PCRにより生成した産物を、2%アガロースゲル(0.01% エチジウムブロマイド含有)による電気泳動に供し観察した。結果を図3の上段パネルに示す。ついで、ゲル上のDNAをPVDF膜(アマシャムファルマシア社製)に転写した。得られた膜に対して、配列番号:3に示される塩基配列又は配列番号:4に示される塩基配列を有するプライマーを用いたPCRによって作製されたサルβ2ミクログロブリンのプローブとを用いて、サザンブロットハイブリダイゼーションを行なった。結果を図3の下段パネルに示す。
なお、対照として、下記DNA:
ヒツジDNAのみ(図3中、レーン4)、
0.0001% サルDNAと99.9999% ヒツジDNAとの混合物(図3中、レーン5)
0.001% サルDNAと99.999% ヒツジDNAとの混合物(図3中、レーン6)
0.01% サルDNAと99.99% ヒツジDNAとの混合物(図3中、レーン7)
0.1% サルDNAと99.9% ヒツジDNAとの混合物(図3中、レーン8)
1% サルDNAと99.9% ヒツジDNAとの混合物(図3中、レーン9)
10% サルDNAと90% ヒツジDNAと混合物(図3中、レーン10)及び
サルDNA単独(図3中、レーン11)
のそれぞれ 250ng相当量について、検体試料と同様の条件で同時にPCRを行ない、その産物の電気泳動に用いた。
その結果、図3より、SCF投与6日目の末梢血、投与後1日、3日、40日の骨髄において、サル細胞が約0.01%の割合で出現したことが示された。
さらに、末梢血及び骨髄のそれぞれから、前記実施例4と同様の手法により、初代培養用試料を調製した。得られた初代培養用試料を、メチルセルロース培地〔MethoCult GF+(Stem Cell Technologies社製)〕 14日間培養した。
得られたコロニーを取り、各コロニーからDNAを抽出した。得られたDNAを鋳型とし、前記と同様のサルβ2−ミクログロブリンに対するプライマー対を用いて、PCRを行なった。結果を表2に示す。
その結果、表2に示されるように、ヒト幹細胞因子投与前の場合と比べて、キメラ率が、少なくとも3〜4倍に上昇することがわかった。
配列番号:2は、プライマーhB2MG−5Rの配列である。
配列番号:3は、プライマーhB2MG−3Rの配列である。
配列番号:4は、プライマーCβ1の配列である。
配列番号:5は、プライマーCβ2の配列である。
Claims (5)
- 霊長類動物の胚性幹細胞を、造血系細胞の分化誘導に適した条件で6〜8日間維持し、得られた細胞を妊娠ヒツジの子宮内の胎仔に移植し、該胎仔を生育させ、出生に至った仔ヒツジに、霊長類動物に特異的なサイトカインを投与し、さらに該仔ヒツジを生育させて得られたヒツジから霊長類動物の造血系細胞を得ることを特徴とする、霊長類動物の胚性幹細胞から造血系細胞への分化方法。
- (I)マクロファージコロニー刺激因子を欠損したストロマ細胞株をフィーダー細胞とし、該フィーダー細胞上、霊長類動物の胚性幹細胞を維持するステップ、及び
(II)前記ステップ(I)で得られた霊長類動物由来の細胞を、妊娠ヒツジの子宮内の胎仔に移植し、該胎仔を出生にいたるまで生育させるステップ、
を含む、請求項1記載の分化方法。 - ステップ(I)において、骨形成タンパク質−4の存在下、フィーダー細胞上、霊長類動物の胚性幹細胞を維持する、請求項2記載の分化方法。
- (I)マクロファージコロニー刺激因子を欠損したストロマ細胞株をフィーダー細胞とし、該フィーダー細胞上、霊長類動物の胚性幹細胞を造血系細胞の分化誘導に適した条件で6〜8日間維持するステップ、
(II)前記ステップ(I)で得られた霊長類動物由来の細胞を、妊娠ヒツジの子宮内の胎仔に移植し、該胎仔を出生にいたるまで生育させるステップ、及び
(III)前記ステップ(II)で出生した仔ヒツジに、霊長類動物に特異的なサイトカインを投与し、さらに該仔ヒツジを生育させて得られたヒツジより、該霊長類動物の胚性幹細胞から分化した霊長類動物の造血系細胞を分離するステップを含む、霊長類動物の造血系細胞の製造方法。 - 霊長類動物の胚性幹細胞を、造血系細胞の分化誘導に適した条件で6〜8日間維持し、得られた細胞を妊娠ヒツジの子宮内の胎仔に移植し、出生した仔ヒツジに、霊長類動物に特異的なサイトカインを投与し、さらに該仔ヒツジを生育させることを特徴とする、霊長類動物の造血系細胞を生産するキメラヒツジの作製方法。
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