JP4332982B2 - 鉄基合金磁石の製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、希土類元素Rおよび半金属元素Mを含む鉄基合金磁石であって、液体超急冷法によって製造される鉄基合金磁石、およびその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
Fe−R−B(Feは鉄、RはYを含む希土類元素、Bはボロン)系化合物の微結晶をハード磁性相として含有する鉄基合金磁石は、溶融した原料合金を液体超急冷法によって非晶質化した後、熱処理によって微結晶を析出させるという方法を用いて製造される。熱処理後、鉄基合金中に非晶質相が残っていても良い。
【0003】
熱処理前の非晶質合金は、片ロール法などのメルトスピニング技術やストリップキャスティング技術を用いて作製されるのが一般的である。これらの技術は、回転する冷却ロールの外周表面上に溶湯状原料合金を定常的に供給し、原料合金溶湯を冷却ロールと短時間だけ接触させることによって原料合金を急冷・凝固させるものである。この方法による場合、冷却速度の制御は、冷却ロールの回転周速度などを調節することによって行われる。凝固し、冷却ロールから離れた合金は、周速度方向に薄く且つ長く延びたリボン(薄帯)形状になる。この合金薄帯は破断機によって破砕され薄片化したのち、粉砕機によってより細かいサイズに粉砕されて粉末化される。その後または途中に、結晶化のための熱処理が行われる。この熱処理によって、R2Fe14B微結晶等のハード磁性相が生成される。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
従来の液体超急冷法による場合、周囲環境に存在する酸素や窒素などの不純物が高温の鉄基合金溶湯に吸収されていたため、鉄基合金中の不純物濃度は高くなる傾向があり、また、不安定に変動していた。本発明者は、液体超急冷法を用いて鉄基合金磁石を製造する場合、合金溶湯に含まれる酸素濃度の大きさが最終生産物である鉄基合金磁石の特性に強い影響を及ぼすことを見出し、本発明を想到するに至った。
【0005】
液体超急冷法における急冷速度は、回転する冷却ロールへの溶湯供給レートを調節することによって制御されている。通常、溶湯供給レートは、坩堝の傾転角度を調整するか、またはノズルオリフィスの流量制限によって行われている。
【0006】
しかし、鉄基合金磁石の原料合金を溶解する工程で原料合金溶湯の酸化が進行すると、合金の融点よりも充分に高い温度であっても、溶湯の粘性係数ηが特定温度以下で急激に高くなる現象を本発明者は観察した。このような粘性係数ηの急激な増加が生じると、これが原因となって原料合金溶湯の冷却ロール上への供給レートの定常性が損なわれてしまう。その結果、冷却速度の変動が生じ、急冷凝固合金の品質の安定性が損なわれてしまうことになる。
【0007】
本発明はかかる諸点に鑑みてなされたものであり、その主な目的は、原料合金溶湯の冷却ロール上への供給レートを安定化し、冷却速度の変動が抑制することができる鉄基合金磁石の製造方法を提供することにある。
【0008】
本発明の他の目的は、上記製造方法によって品質が安定化された鉄基合金磁石を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明による鉄基合金磁石の製造方法は、液体超急冷法によって作製した鉄基合金を用意する工程と、前記鉄基合金に対して結晶化熱処理を施す工程と、
を包含する鉄基合金磁石の製造方法であって、前記鉄基合金の酸素濃度を1000ppm以下に制御することを特徴とする。
【0010】
好ましい実施形態において、前記鉄基合金は、1原子%以上7原子%以下の希土類元素Rおよび15原子%以上20原子%以下の半金属元素Mを含有し、前記希土類元素RはPrおよびNdの少なくとも一方を50原子%以上含む。
【0011】
好ましい実施形態においては、前記液体超急冷法によって前記鉄基合金が作製される際、原料合金の溶湯の出湯経路出口における粘性係数ηが20mPa・sec以下に調整されている。
【0012】
好ましい実施形態においては、前記液体超急冷法によって前記鉄基合金が作製される際、原料合金の溶湯と接する雰囲気ガス中の酸素濃度が100ppm以下に調整されている。
【0013】
好ましい実施形態においては、前記液体超急冷法によって前記鉄基合金が作製される際、原料合金の溶湯と接する耐火酸化物構造物の表面がライニング材で覆われており、前記原料合金の溶湯温度における前記ライニング材の自由エネルギーは前記溶湯温度における希土類元素Rの酸化物の自由エネルギーよりも低い。
【0014】
好ましい実施形態において、前記液体超急冷法によって作製した前記鉄基合金は、90体積%以上の非晶質相を含んでいる。
【0015】
前記結晶化熱処理を実行するとき、加熱空間の温度を550℃以上750℃以下とし、加熱時間を1時間以下とする。
【0016】
好ましい実施形態においては、前記結晶化熱処理を実行するとき、酸素含有率5%以下の窒素ガスを用いて加熱空間内の酸素濃度を18%以上とし、雰囲気温度が200℃以上の区間を被処理原料が通過する時間を10分以内とする。
【0017】
本発明による磁石の製造方法は、上記の鉄基合金磁石の製造方法によって作製された鉄基合金磁石の粉末を用意する工程と、前記粉末を成形して永久磁石を作製する工程とを包含する。
【0018】
本発明による鉄基合金磁石は、1原子%以上7原子%以下の希土類元素Rおよび15原子%以上20原子%以下の半金属元素Mを含有し、前記希土類元素RはPrおよびNdの少なくとも一方を50原子%以上含み、前記半金属元素Mはボロンを80%以上含む鉄基合金磁石であって、鉄を主成分とする硼化鉄相、およびR2Fe14B化合物相を含有し、結晶粒径が5nm以上50nm以下、酸素濃度が1000ppm以下である。
【0019】
好ましい実施形態において、鉄基合金磁石中の窒素濃度は200ppm以下である。
【0020】
好ましい実施形態においては、Al、Si、Ti、V、Cr、Mn、Ni、Cu、Ga、Zr、Nb、Mo、Hf、Ta、W、Pt、Pb、AuおよびAgからなる群から選択された一種以上の元素が添加されている。
【0021】
好ましい実施形態において、前記鉄基合金磁石は液体超急冷法を用いて作製された合金を熱処理することによって作製されたものである。
【0022】
好ましい実施形態においては、ハード磁性相とソフト磁性相とが交換相互作用によって結合しているナノコンポジット組織を有している。
【0023】
本発明による鉄基合金磁石粉末は、上記鉄基合金磁石から形成されたものである。
【0024】
本発明による磁石は、上記鉄基合金磁石粉末から形成された磁石である。
【0025】
本発明による鉄基合金用急冷凝固合金は、1原子%以上7原子%以下の希土類元素Rおよび15原子%以上20原子%以下の半金属元素Mを含有し、前記希土類元素RはPrおよびNdの少なくとも一方を50原子%以上含み、前記半金属元素Mはボロンを80%以上含む鉄基合金磁石用急冷凝固合金であって、酸素濃度が1000ppm以下である。
【0026】
本発明による回転機は、上記磁石を備えていることを特徴とする。
【0027】
【発明の実施の形態】
鉄基合金磁石の原料合金溶湯を液体超急冷法によって急冷凝固させることを工業的かつ定常的に安定した状態で実行するには、回転している冷却ロールに対して、単位時間あたり一定量の溶湯を安定的に供給することが必要である。そのためには、合金溶湯の供給源とロール表面との間に溶湯の溜まりを安定的に形成させることが好ましい。このような溶湯の溜まりは、例えば融点以上に加熱したノズルオリフィスを通して一定範囲内の圧力で溶湯を整流化して噴射すれば形成できる(第1の急冷凝固方法)。こうして形成した溶湯の溜まりは、その形状が溶湯の表面張力によって維持され、通常、「パドル(paddle)」または「フット(foot)」と称される。
【0028】
半径R、長さLのノズルオリフィス内を単位時間当たりに流れる溶湯の流量Vは、ハーゲン・ポアズイュの法則に基づいて下記式1で表現される。
【0029】
V = (πR4ΔP)/8Lη 式1
ここで、πは円周率、ΔPはノズルオリフィス両端の圧力差、ηは溶湯の粘性係数である。
【0030】
式1から明らかなように、原料合金溶湯の粘性係数ηが変動すると溶湯の流量Vも変動する。溶湯の流量Vは、冷却ロールなどの冷却手段に対する溶湯の供給レートを規定するものであるため、その安定化を達成しなければ、優れた磁気特性を有する磁粉を工業的に安定して低コストで製造することはできない。
【0031】
溶湯の溜まりを形成する方法は上記の方法の他にもある。例えば、回転する冷却ロールの外周近傍に耐火物を配置し、耐火物とロール表面との間に上方(ロール表面の移動方向)に開放された空間を形成する。この空間内に溶湯を注いで湯だまりを生成することによってロール外周面に溶湯を接触させ、回転するロール外周面上に溶湯の急冷凝固物を生成せしめる。この凝固物をロール外周面と共に上方に移動させて、湯だまりから引き上げる方法によっても達成される(第2の急冷凝固方法)。
【0032】
次に、第3の急冷凝固方法を説明する。まず、一対のロールを外周面が対抗するようにして設置し、両ロール間に狭い隙間を設定する。この隙間をロール側面から挟み込むようにして耐火物壁を配置し、これらによって上方に解放された空間を形成する。この隙間空間内に定常的に溶湯を注ぎ、回転するロール表面に溶湯を接触させることによって急冷凝固物を生成する。このとき、ロール間の隙間部分でロール表面が下方に向かうようにロールを回転させ、ロール間の隙間から下方に向けて急冷凝固物を排出する。第3の急冷凝固方法では、数対の回転ロールを更に下方に設け、多段で抜熱することも可能である。
【0033】
上記の各急冷方法に対し、溶湯溜まりの生成を必要としない方法もある。それは、回転するロールに向かって溶湯の噴霧流をぶつけ、急速に凝固させる方法(第4の急冷凝固方法)である。しかしながら、このような方法では、ロール表面にたたきつけられる溶湯液滴の体積及び速度に依存して急冷凝固速度が変化してしまう。しかも、溶湯液滴の体積及び速度は数倍〜数十倍の範囲で分布するため、前述した第1〜第3の急冷凝固方法に比べて急冷速度の分布範囲が広くなる傾向がある。その結果、操業条件の設定を経験的に決める必要がある。
【0034】
上記各液体超急冷法による合金溶湯の急冷を行う場合、ノズルオリフィスの使用の有無にかかわらず、合金溶湯の粘性係数ηが変動すると、安定した急冷凝固を実行できなくなる。
【0035】
本発明者は、鉄基合金磁石の原料合金溶湯中における酸素濃度が合金溶湯の粘性係数ηに強い影響を及ぼす現象を見出し、合金溶湯の酸素濃度を所定範囲に制御することによって溶湯の粘性係数ηを安定させることに成功した。
【0036】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態を説明する。
【0037】
[急冷凝固合金およびその粉末の製造方法]
本実施形態では、図1(a)および(b)に示す装置を用いて急冷凝固合金を製造する。酸化しやすい希土類元素を含む原料合金の酸化を防ぐため、不活性ガス雰囲気中で合金製造工程を実行する。不活性ガスとしては、ヘリウムまたはアルゴン等の希ガスを用いることが好ましい。本実施形態では、雰囲気中の酸素濃度を100ppm以下に設定している。
【0038】
図1(a)の装置は、真空または不活性ガス雰囲気を保持し、その圧力を調整することが可能な原料合金の溶解室1および急冷室2を備えている。
【0039】
溶解室1は、所望の磁石合金組成になるように配合された原料20を高温にて溶解する溶解炉3と、底部に出湯ノズル5を有する貯湯容器4と、大気の進入を抑制しつつ配合原料を溶解炉3内に供給するための配合原料供給装置8とを備えている。貯湯容器4は原料合金の溶湯21を貯え、その出湯温度を所定のレベルに維持できる加熱装置(不図示)を有している。
【0040】
急冷室2は、出湯ノズル5から出た溶湯21を急冷凝固するための回転冷却ロール7と、これによって急冷凝固された原料合金を急冷室2内で破砕する破断機10とを備えている。この装置によれば、溶解、出湯、急冷凝固、破断等を連続かつ平行して実行することができる。このような装置は、例えば特開平8−277403号公報に詳しく記載されている。
【0041】
この装置においては、溶解室1および急冷室2内の雰囲気およびその圧力が所定の範囲に制御される。そのために、雰囲気ガス供給口1b、2b、8b、および9bとガス排気口1a、2a、8a、および9aとが装置の適切な箇所に設けられている。
【0042】
溶解炉3は傾動可能であり、ロート6を介して溶湯21を貯湯容器4内に適宜注ぎ込む。溶湯21は貯湯容器4内において不図示の加熱装置によって加熱される。
【0043】
溶解炉3および貯湯容器4は、耐火酸化物から形成されており、これらの原料合金溶湯に接触する面はライニング材でコートされている。ライニング材としては、希土類を含有する1200℃以上の合金溶湯との反応性が小さい材料が選択される。耐火酸化物を用いる場合は、Nd2O3よりも低いギブスの生成自由エネルギーを示す材料を選択することが好ましい。このような材料を選択すれば、ライニング材中の酸素が溶湯中に取り込まれることを防止できるからである。ライニング材中の酸素が溶湯中のNdと反応してNd2O3を生成すると、溶湯中に酸素が取り込まれることになってしまう。
【0044】
ライニング材料として用いられ得る耐火酸化物の酸素ポテンシャルΔG0の値を下記の表1に示す。この表1に掲げられている酸化物の中では、ライニング材としてはイットリアが最良であり、マグネシアも使用可能である。耐火酸化物以外の材料としては、BNがライニング材料として好ましい。
【0045】
【表1】
【0046】
実験によれば、希土類合金溶湯の粘性係数ηは20mPa・sec以下であることが好ましい。溶湯合金の粘性係数ηが20mPa・secを超えると、冷却ロール周面上への溶湯供給が安定せず、体積比率で90%以上の非晶質相を含む合金を安定して製造することが難しくなるからである。本実施形態では、原料合金溶湯の酸素濃度を1000ppm以下に制御する。この酸素濃度が1000ppmを越えると、溶湯温度の低下と共に溶湯粘性ηが急激に上昇し、20mPa・secを超えため、溶湯の流動性が失われる現象が発生するからである。
【0047】
前述したように、本実施形態では溶解室2内における溶解雰囲気中の酸素濃度を100ppm以下に設定している。溶解雰囲気の酸素濃度が100ppmを越えると、合金溶湯中の酸素濃度を1000ppm以下に保つことが困難になるからである。
【0048】
貯湯容器4の出湯ノズル5は、溶解室1と急冷室2との隔壁に配置され、貯湯容器4内の溶湯21を下方に位置する冷却ロール7の表面に流下させる。出湯ノズル5のオリフィス径は、例えば0.5〜2.0mmである。溶湯21の粘性が大きい場合、溶湯21は出湯ノズル5内を流れにくくなるが、溶解室1と急冷室2との間に適当な大きさの圧力差を形成することによって、溶湯21の出湯をスムーズに実行するこができる。
【0049】
冷却ロール7の表面は例えばクロムめっき層で覆われており、冷却ロール7の直径は例えば300〜500mmである。冷却ロール7内に設けた水冷装置の水冷能力は、単位時間あたりの凝固潜熱と出湯量とに応じて算出し、調節される。
【0050】
本装置によれば、例えば合計20kgの原料合金を10〜40分間で急冷凝固させることができる。こうして形成した合金は、破断前においては、厚さ:70〜150μm、幅:1.5〜6mmの合金薄帯(合金リボン)22であるが、破断装置10によって長さ2〜150mm程度の合金薄片23に破砕されたのち、回収機構部9によって回収される。図示している装置例では、回収機構部9に圧縮機11を備え付けており、それによって薄片23を圧縮することができる。
【0051】
次に、図1の装置を用いた急冷凝固合金の製造方法を説明する。
【0052】
まず、図1の溶解室1において、1原子%以上7原子%以下の希土類元素Rおよび15原子%以上20原子%以下の半金属元素Mを含有する原料合金の溶湯21を作製する。ここで、希土類元素RはPrおよびNdの少なくとも一方を50原子%以上含む。また、半金属元素Mはボロンを80%以上含むものである。
【0053】
磁気特性を向上させるため、上記原料合金には、Al、Si、Ti、V、Cr、Mn、Ni、Cu、Ga、Zr、Nb、Mo、Hf、Ta、W、Pt、Pb、AuおよびAgからなる群から選択された一種以上の元素が添加されていることが好ましい。
【0054】
次に、溶湯21は出湯ノズル5から水冷ロール7上に出湯され、水冷ロール7との接触によって急冷され、凝固する。急冷凝固方法としては、冷却速度の高精度の制御が可能な方法を用いる必要があり、本実施形態では液体超急冷法の一つである片ロール法を用いている。
【0055】
本実施形態では、溶湯21の冷却凝固に際して、冷却速度を5×104〜5×106K/秒とする。この冷却速度で合金の温度を△T1だけ低い温度に低下させる。急冷前の合金溶湯21の温度は融点Tmに近い温度(例えば1200〜1300℃)にあるため、合金の温度は冷却ロール7上でTmから(Tm−△T1)にまで低下する。本願発明者の実験によれば、最終的な磁石特性を向上させるという観点から△T1は400〜800℃の範囲内にあることが好ましい。
【0056】
合金の溶湯21が冷却ロール7によって冷却される時間は、回転する冷却ロール7の外周表面に合金が接触してから離れるまでの時間に相当し、本実施形態の場合は0.5〜2ミリ秒である。その間に、合金の温度は更に△T2だけ低下し、凝固する。その後、凝固した合金は冷却ロール7から離れ、不活性雰囲気中を飛行する。合金は薄帯状で飛行している間に雰囲気ガスに熱を奪われる結果、その温度は(Tm−△T1−△T2)に低下する。△T2は、装置のサイズや雰囲気ガスの圧力によって変化するが、約100℃またはそれ以上である。
【0057】
本実施形態では、合金薄帯22の温度が(Tm−△T1−△T2)になった段階で装置内で速やかに破砕工程を実行し、その場で合金薄片23を作製する。そのため、(Tm−△T1−△T2)が合金のガラス化温度Tgよりも低くなるように(△T1+△T2)の大きさを調整することが好ましい。もし、(Tm−△T1−△T2)≧Tgであれば、合金が軟化した状態にあり、その破断が困難になるからである。凝固合金の破断・粉砕工程を他の装置で別途実行する場合は、合金温度が室温程度に低下するため、(△T1+△T2)の大きさを考慮する必要はない。
【0058】
なお、急冷室2内の絶対圧力は、50kPa以下に設定することが好ましく、2〜30kPaの範囲内に設定することがより好ましく、3〜10kPaの範囲内に設定することが更に好ましい。このような減圧状態で溶湯21を冷却ローラ7上に流下すれば、溶湯21とローラ7の表面との間に雰囲気ガスがまき込まれるおそれがなくなり、溶湯21の冷却速度を従来より低くしても、冷却状態が均一化され、表面形状の優れた合金薄帯22が得られるからである。これに対して、常圧雰囲気中において、本実施形態のように遅い周速度で回転する冷却ローラ上に溶湯21を流下すると、合金薄帯22の表面形状が劣化してしまうおそれがある。
【0059】
急冷室の絶対圧は50kPa以下にすることが好ましく、30kPa以下にすることがより好ましい。絶対圧力の好ましい範囲の下限は1kPa程度である。雰囲気ガスの巻き込み防止のためには、これ以上に低い圧力にセットする意義はほとんどないからである。
【0060】
また、本実施形態のように、急冷凝固工程に引き続いて破砕装置による凝固合金の破砕工程を速やかに実行すれば、長い合金リボンとして冷却ロールから吐き出された急冷合金を比較的に狭い空間内でコンパクトに回収することができる。急冷凝固装置と破砕装置とを別構成にすると、いったん急冷合金を長い薄帯として、かさばった状態で収納する必要が生じる。
【0061】
破断装置によって破砕された合金薄片を公知の機械的粉砕装置によって更に粉砕すれば、熱処理工程やその後の成形工程に適した大きさの合金粉末を作製することができる。本実施形態では、パワーミル装置で約850μm以下となるまで合金の粗粉砕を行った後、ピンディスクミル装置によって粒度が約150μm以下となるまで粉砕する。
【0062】
本実施形態の液体超急冷法によれば、非晶質相が90体積%以上を占める合金薄帯または合金フレークが得られる。このような非晶質相が大半を占める合金(非晶質合金)は、このままでは充分な磁石特性を発揮しないため、熱処理によってハード磁性相を生成する必要がある。本実施形態では、以下に説明する熱処理によって、結晶粒径が5nm以上50nm以下の微細なR2Fe14B系化合物相を形成する。
【0063】
[結晶化熱処理]
以下に、図2を参照しながら、上記急冷凝固合金の粉末に対して行う熱処理方法を説明する。
【0064】
図2は、フープベルトを用いた粉末焼成炉装置を示している。この装置は、本体28によって回転可能に支持された回転ロール24および25と、それらの回転ロール24および25の回転によって一方向に所定速度で駆動されるフープベルト26とを備えている。原料合金の粉末はフープベルト26上の原料フィード位置Aに供給され、図中左方に運搬される。フープベルト26上に供給された粉末は、摺切板27によって均され、それによって粉末の高さが一定レベル以下(例えば高さ2〜4mm)に調整される。その後、粉末は金属チューブに囲まれた加熱ゾーンに入り、そこで微結晶化のための熱処理を受ける。加熱ゾーン(例えば長さ1100mm)内には、例えば3ゾーンにわけて不図示のヒータが配置されている(1ゾーンの長さは例えば300mm)。粉末は加熱ゾーン内を移動しながら、熱処理を受けることになる。加熱ゾーンの後段には、例えば長さ800mmの冷却ゾーンCが存在し、粉末は水冷された金属筒内を通過することによって冷却される。冷却された粉末は、回転ローラ25の左下方で不図示の回収装置によって回収される。
【0065】
この熱処理装置によれば、与えられた加熱ゾーンの長さに対して、フープベルト26の移動速度を調整することによって熱処理工程を制御することができる。
【0066】
熱処理工程としては、例えば、昇温レート100〜150℃/分にて熱処理温度550℃以上750℃以下の範囲に上昇させ、その状態を5〜15分程度のあいだ保持すればよい。その後、合金温度を降温レート100〜150℃/分にて室温レベルまで低下させる。
【0067】
結晶化熱処理を長時間実行すると、雰囲気に含まれる僅かの酸素によって鉄基合金の酸化が進行する。鉄基合金の酸素濃度が1000ppmを越えると、最終製品である磁石の磁気特性(特に磁気エネルギー積)が低下してしまう。実験によると、熱処理雰囲気ガス中の酸素濃度が5%を越えた場合に鉄基合金の磁気特性が低下してしまう。この場合、特に減磁曲線の第2象限のBr点近傍において、印加磁界の増加とともに磁化が階段状に減少する現象が認められ、(BH)maxが低くなる。そこで、本実施形態では、酸素含有率5%以下の窒素ガスを用い、加熱空間内の酸素濃度が18%以上で雰囲気温度が200℃以上の区間を被処理原料が通過する時間を10分以内とする。
【0068】
窒素ガス雰囲気中で長時間の熱処理を実行する場合、金属組織粗大化による磁気特性の低下と窒素濃度の上昇とが付随して発生し、窒素濃度が200ppmを越える場合に磁気特性の劣化が顕著になる。このため、最終的な鉄基合金の窒素濃度が200ppm以下となるように工程管理を実行することが好ましい。本実施形態では、熱処理時間を1時間以下に制限している。熱処理時間が1時間を越えると、金属組織の粗大化に伴い磁気特性が低下し、また、鉄基合金の窒素濃度は200ppmを越えるからである。
【0069】
このような結晶化熱処理によって、鉄を主成分とする硼化鉄相、およびR2Fe14B化合物相を含有し、結晶粒径が5nm以上50nm以下、酸素濃度が1000ppm以下である鉄基合金磁石が作製される。
【0070】
熱処理の処理粉末量を増大させるには、フープベルト26の幅を広くし、フープベルト26の単位長さ当たりの粉末供給量を大きくする一方、加熱ゾーンの長さを長くし、回転ローラ24および25の回転周速度を早くすればよい。本発明による合金粉末によれば、熱処理に際して急激に大きな結晶化反応熱が生成されないため、熱処理工程における合金粉末の温度制御が容易である。その結果、粉末供給量を増加しても、安定した磁気特性を持つ磁石粉末を作製できる。
【0071】
上記熱処理装置による熱処理を受けた原料粉末は、前述したように微結晶組織を持った磁石としての特性を発揮できるようになる。こうして、熱処理前においては非晶質相が多く、硬質磁性材料としての特性を示さなかった原料合金が、熱処理によって磁気特性に優れた鉄基合金磁石に変化する。
【0072】
本実施形態では、熱処理工程で窒素雰囲気を使用し、かつ磁粉中の窒素濃度を200ppm以下とすることにより、アルゴン雰囲気を使用して熱処理した場合と同等の磁石特性を有する磁粉を従来よりも廉価に製造できる。
【0073】
なお、熱処理方法および熱処理装置は上記したものに限定されない。例えば、回転する炉芯管を傾斜させて設置し、炉芯管内で原料粉末を攪拌しながら定常的に熱処理する方法を用いても良い。この方法も量産に適している。
【0074】
[磁石体の製造方法]
以下、上記磁石粉末から種々の形状を持った磁石を製造する方法を説明する。
【0075】
まず、前述のようにして得られた磁石合金粉末にエポキシ樹脂からなるバインダーと添加剤とを加え、混練することによってコンパウンドを作製する。次に、コンパウドの所望形状の成形空間を持つ成形装置によってプレス成形した後、加熱硬化工程、洗浄工程、コーティング工程、検査工程、着磁工程を経て、最終的なボンド磁石を得ることができる。
【0076】
成形加工は、上述の圧縮成形に限定されるわけではなく、公知の押出成形、射出成形、または圧延成形によってもよい。磁石粉末は、採用する成形法の種類に応じてブラスチック樹脂やゴムと混練されることになる。
【0077】
なお、射出成形による場合、樹脂として広く使用されているポリイミド(ナイロン)の他、PPSのように高軟化点樹脂を使用することができる。これは、本発明の磁石粉末が低希土類合金から形成されているため、酸化されにくく、比較的に高い温度で射出成形を行っても磁石特性が劣化しないからである。
【0078】
また、本発明の磁石は酸化されにくいため、最終的な磁石体の表面を樹脂膜でコートする必要もない。従って、例えば、複雑な形状のスロットを持つ部品のスロット内に射出成形によって本発明の磁石粉末および溶融樹脂を圧入し、それによって複雑な形状の磁石を一体的に備えた部品を製造することも可能である。
【0079】
[モータ]
本実施形態では、前述の製造方法によって作製したボンド磁石を、IPM(Inner Permanent Magnet)型モータの一体型ロータ用磁石として用いる。
【0080】
このモータは、本発明の磁石を内蔵したロータコアと、このロータコアを囲むステータとを備えている。ロータコアには複数のスロットが形成されており、そのスロット内に本発明のボンド磁石が位置している。このボンド磁石は、前述した方法によって作製された鉄基合金磁石粉末のコンパウンドを溶融し、ロータコアのスロット内へ直接に充填し、モールドしたものである。
【0081】
なお、本発明の磁石は、この種のモータ以外にも、他の種類のモータやアクチュエータにも好適に用いられることは言うまでもない。
【0082】
【実施例】
以下に、本発明の実施例および比較例を説明する。
【0083】
本実施例では、Nd4.5%、Fe73%、B18.5%、Co2%、およびCr2%の合金Aと、Nd4%、Fe73.8%、B18.5%、Co3%、およびCr0.7%の合金B(濃度はいずれも原子パーセント)をBN粉末で内壁をコーティングしたアルミナ坩堝内で溶解し、合金溶湯を形成した。
【0084】
合金溶湯の粘性係数ηを坩堝回転振動法によって測定したところ、1200℃における粘性係数ηは20mPa・sec(ミリパスカル・秒)、1500℃における粘性係数ηは5mPa・secであった。合金Aの酸素濃度および合金Bの酸素濃度は、それぞれ、800ppmおよび700ppmであった。これらの酸素濃度は、合金Aおよび合金Bを凝固させた後に、ICP法によって測定したものである。
【0085】
本実施例では、図1のメルトスピニング装置を用いて20kgの合金に対して超急冷処理を施し、ほぼ非晶質となった合金を作製した。メルトスピニング装置のタンディッシュ(貯湯容器)内に注がれた溶湯の出湯経路出口またはタンディッシュ底部における温度は傾注直後で1350℃であったが、その後、徐々に低下した。全ての溶湯がロール上に供給された時点での溶湯の温度は1200℃であった。
【0086】
急冷によって凝固した非晶質合金はフレーク形状を有していた。合金フレークの厚さを無作為に取り出した試料について測定すると、ほぼ正規分布を示した。厚さの平均値は120μm、標準偏差は30μmであった。
【0087】
これらの非晶質合金フレークを粉砕し、粉末X線回折法で検査した。得られた回折パターンは、Fe23B6相に帰着できる回折ピークと、非晶質相に帰着できるブロードなハローパターンとが重なり合ったものであった。両者の強度比から、非晶質相が少なくとも体積比で95%存在していることがわかった。また、この合金の酸素濃度をICP法によって測定したところ、A合金の酸素濃度は700ppm、B合金の酸素濃度は500ppmであった。この後、非晶質合金を850μm以下のサイズに粗粉砕し、非晶質合金粉末を作製した。
【0088】
この粉末に対して結晶化のための熱処理を施した。熱処理は、図2の装置と同様の装置を用いて行った。
【0089】
まず、熱処理装置のステンレスフォイル製ベルト(厚さ:53μm)上に、不図示のスクリューフィーダを用いて合金粉末を定速供給した。ステンレスフォイル製ベルトは、分速10cmで移動している。その後、合金粉末は、その積み高さが3mmになるようにベルト上で拡げられ。その状態で、窒素流気した熱処理炉に入り、結晶化熱処理を受けた。この時の炉内の酸素濃度は、以下の通りであった。
【0090】
炉の入口から20cm以内の部分: 18%以上
粉末温度が200℃以上の部分: 18%以下
粉末温度が500℃以上の部分: 0.8%以下
炉の出口から20cm以内の部分: 18%以上
熱処理後、合金Aの粉末(磁粉)の窒素濃度は70ppm、合金Bの磁粉の窒素濃度は65ppmであった。磁粉の磁気特性を下記表1に示す。表1に示す磁気特性は、試料振動型磁力計を用いて測定したものである。
【0091】
【表2】
【0092】
(比較例)
上記の実施例で用いた原料合金と同一組成の原料合金をアルミナ坩堝に入れて溶解した。ただし、本比較例では、表面がBNコートされていない坩堝を用いた。回転振動法を用いて測定した合金溶湯の粘性係数ηは、溶湯温度が1250℃以上で10mPa・sec以下であったが、1250℃未満では非常に大きい値となり、測定不能であった。坩堝内で凝固した合金の酸素濃度をICP法によって測定したところ、酸素濃度は1200ppmであった。
【0093】
上記実施例で用いたメルトスピニング装置と同一の装置を用いて、酸素濃度が300ppmの雰囲気中で合金を溶解し、超急冷合金を製造した。タンディッシュ内の溶湯温度が1250℃になった時点で、ノズルオリフィスが閉塞し、工程が中断された。その結果、タンディッシュ内に8kgの溶湯が残留した。得られた非晶質合金の酸素濃度は約1100ppmであった。
【0094】
さらに、BNコートを施さないアルミナ坩堝を用い、合金溶湯の粘性係数ηを坩堝回転振動方により測定したところ、1250℃未満で粘性係数ηの値が温度の低下と共の急激に上昇し、100mPa・sec(ミリパスカル・秒)を超えてしまうことがわかった。
【0095】
このように、合金溶湯の酸素濃度が約1000ppmを超える場合は、溶湯温度が或る特定の温度(例えば1250℃)を下回ると、溶湯が急激に流動性を失い、安定した超急冷工程の操業ができないことが確認された。したがって、比較例の場合、溶湯温度を実施例の場合の溶湯温度よりも遥かに高いレベル(例えば1400℃)に保持しなければならないことがわかった。
【0096】
次に、実施例と同様にして、比較例の非晶質合金を粗粉砕し、結晶化熱処理を行った。用いた熱処理装置および熱処理条件は、実施例のものと同一であった。
【0097】
熱処理後における磁石粉末の酸素濃度は1200ppmであった。また、その磁気特性を表2に示す。比較例については、その減磁曲線の第2象限において、Br点近傍に印加磁界の増加と共に磁化が階段状に減少する現象が認められ、(BH)maxが低いことがわかった。
【0098】
【表3】
【0099】
[組成限定理由]
最後に、合金組成の限定理由を説明する。
【0100】
希土類元素Rは、ハード磁性相であるR2Fe14B型化合物に必須の元素である。本発明における希土類元素Rは、PrおよびNdの一方または両方の元素を50原子%以上含有し、残部が他のランタン系列元素またはYの一種以上の元素を0%以上50%未満含有する。PrおよびNdの何れか一方の元素は、一軸結晶磁気異方性を持つR2Fe14Bを生成するために不可欠である。PrおよびNd以外の希土類元素は、適宜任意に選択される。希土類元素Rの組成比は、1原子%を下回ると保磁力発生の効果が少なすぎるので好ましくない。一方、Rの組成比が7原子%を超えると、Fe3B相およびR2Fe14B相が生成されず、α−Fe相が主相となってしまうため、保磁力が著しく低下してしまうおそれがある。以上のことから、希土類元素Rの組成比xについては、1≦x≦7であることが好ましい。
【0101】
半金属元素Mは、非晶質生成能を高める機能と硼化物R2Fe14Bを生成させる機能とを果たす元素である。非晶質生成能を高めるには、原子半径の比が30%以上異なる3元素を組み合わせることが有効である。Feの原子半径1.26オングストロームよりも小さな1オングストローム以下の半径を有するB(ボロン)やC(カーボン)等が非晶質生成能を高める元素として有効である。また、半金属元素であるSiもこの機能を有する。R2Fe14B型化合物のBの一部または全部はCで置換されていてもよい。しかし、R2Fe14B型化合物と共存する化合物が硼化鉄化合物である場合に良好な磁気特性が得られるため、Mの主体はBであることが好ましい。したがって、M中のB含有量は80%以上であることが好ましい。
【0102】
なお、半金属元素Mの組成比yが15〜20原子%の範囲から外れると所要の保磁力が発揮されないため、Mの組成比yについては15≦y≦20であることが好ましい。更に、Bがこの組成範囲を外れると、融点が上昇し、溶解温度および貯湯容器の保温温度を高める必要が生じ、また、非晶質生成能も低下するので所望の急冷合金組織が得られにくくなる。
【0103】
鉄は、残余を占める。なお、鉄の一部がCoによって置換されていても良い。Coは、キュリー温度を向上させることによって磁気特性の温度変化依存性を減少させ、その結果、磁気特性を安定化させるという機能を持つ。また、合金溶湯の粘性を改善するという機能もあり、溶湯流下レートの安定化にも寄与する。Coの添加割合が0.02原子%を下回ると上記機能が充分に発揮されず、7原子%を超えると磁化特性が低下し始める。Coの添加は、これらの機能を発揮させたい場合に行えば良く、本発明の効果を得る上でCoの添加が不可欠であるわけではない。
【0104】
以上、オリフィスノズルを用いて液体超急冷を行う例について本発明の実施形態を説明してきたが、本発明はこれに限定されない。原料合金溶湯の粘性を安定化させれば、ノズルを用いずに合金溶湯を急冷凝固させる場合においても、冷却速度の安定化という効果が得られるからである。
【0105】
本発明による合金溶湯の粘性制御は、ハード磁性相とソフト磁性相とが交換相互作用で結合したナノコンポジット組織を持つ磁石(スプリング磁石)を製造する場合に特に顕著な効果を発揮する。スプリング磁石に高い特性を発揮させるには、結晶化熱処理前の急冷凝固合金の組織を再現性良く安定的に形成すること必要であり、そのためには、急冷速度の安定化が重要になってくるからである。
【0106】
【発明の効果】
本発明によれば、不純物ガスの鉄基合金磁石中における濃度の上限値を規定することによって、鉄基合金磁石の製造における工程管理能力を向上させることが可能である。
【0107】
また、液体超急冷のために合金を溶解する際の雰囲気中の酸素濃度の上限を規定することによって、合金溶湯に解け込む酸素の量を制限し、それによって、ノズルオリフィスによる溶湯の定常供給を可能にする。
【0108】
さらに、合金溶解工程で溶湯が接触する酸化物構造体をライニング層で覆うことにより、酸化物構造体から溶湯への酸素の溶け混みを低減することができる。
【0109】
熱処理の雰囲気として窒素ガスを用いた場合においても、酸素濃度上限値を規定し、さらに、酸素濃度が18%以上の区間の温度上限値と通過する時間とを制限することにより、窒素ガス下での熱処理を可能にする。その結果、アルゴン雰囲気中にて熱処理を行った場合に得られる磁石特性と同様の特性を有する磁粉を従来よりも廉価に製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】(a)は、本発明による鉄基合金磁石を製造する場合に好適に用いられる液体超急冷装置の全体構成を示す断面図であり、(b)は急冷凝固が行われる部分の拡大図である。
【図2】本発明による鉄基合金磁石を製造する場合に好適に用いられる熱処理装置を示す断面図である。
【符号の説明】
1b、2b、8b、および9b 雰囲気ガス供給口
1a、2a、8a、および9a ガス排気口
1 溶解室
2 急冷室
3 溶解炉
4 貯湯容器
5 出湯ノズル
6 ロート
7 回転冷却ロール
10 破断機10
11 圧縮機
21 溶湯
22 合金薄帯
23 合金薄片
28 本体
24 回転ロール
25 回転ロール
26 フープベルト
27 摺切板
Claims (4)
- 液体超急冷法によって作製した鉄基合金を用意する工程と、
前記鉄基合金に対して結晶化熱処理を施すことにより、ハード磁性相とソフト磁性相とが交換相互作用によって結合しているナノコンポジット組織を有する鉄基合金磁石を形成する工程と、
を包含する鉄基合金磁石の製造方法であって、
前記鉄基合金は、1原子%以上7原子%以下の希土類元素Rおよび15原子%以上20原子%以下の半金属元素Mを含有し、前記希土類元素RはPrおよびNdの少なくとも一方を50原子%以上含み、前記半金属元素Mの80原子%以上はボロン(B)であり、
前記液体超急冷法によって前記鉄基合金が作製される際、原料合金の溶湯の出湯経路出口における粘性係数ηが20mPa・sec以下に調整され、かつ、原料合金の溶湯と接する雰囲気ガス中の酸素濃度が100ppm以下に調整され、
前記結晶化熱処理を実行するとき、加熱空間の温度を550℃以上750℃以下とし、加熱時間を1時間以下とし、酸素含有率5体積%以下の窒素ガスを用いて、加熱空間内の酸素濃度が18体積%以上かつ雰囲気温度が200℃以上の区間を被処理原料が通過する時間を10分以内とすることにより、
前記鉄基合金の酸素濃度を1000ppm以下、窒素濃度が200ppm以下に制御することを特徴とする鉄基合金磁石の製造方法。 - 前記液体超急冷法によって前記鉄基合金が作製される際、原料合金の溶湯と接する耐火酸化物構造物の表面がライニング材で覆われており、
前記原料合金の溶湯温度における前記ライニング材の自由エネルギーが前記溶湯温度における希土類元素Rの酸化物の自由エネルギーよりも低いことを特徴とする請求項1に記載の鉄基合金磁石の製造方法。 - 前記液体超急冷法によって作製した前記鉄基合金は、90体積%以上の非晶質相を含んでいることを特徴とする請求項1または2に記載の鉄基合金磁石の製造方法。
- 請求項1から3の何れかに記載の鉄基合金磁石の製造方法によって作製された鉄基合金磁石の粉末を用意する工程と、
前記粉末を成形して永久磁石を作製する工程と、
を包含する磁石の製造方法。
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