JP4333822B2 - 大型車両用タイヤ - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、トレッドにショルダー部からセンター側に延長するラグ溝を設けた大型車両用タイヤに関し、さらに詳しくは、ラグ溝先端部におけるクラックの発生及び成長を抑制することを可能にし、特に高内圧・高負荷荷重条件で使用されるストラドルキャリアー等の大型産業車両用タイヤのようにスムーストレッドにトレッドゴム残量測定用のラグ溝を設けた場合に好適な大型車両用タイヤに関する。
【0002】
【従来の技術】
ストラドルキャリアー等の大型産業車両用タイヤでは、スムーストレッドにトレッドゴム残量測定用のラグ溝又はディンプル溝を設け、これら溝にゲージを差し込んでトレッドゴム残量を測定するようにしている。
【0003】
図4は従来のトレッドゴム残量測定用のラグ溝を設けた大型産業車両用タイヤを例示するものである。図4において、スムース面からなるトレッド11にはトレッドゴム残量測定用のラグ溝12がショルダー部からセンター側に延長するように設けられている。図5に示すように、ラグ溝12はタイヤ幅方向に略均等な深さを有し、センター側の先端部ではトレッド表面に対して略垂直な壁面を形成している。また、ラグ溝12の先端部はレッドゴム残量を適切に測定するために1/4トレッドポイントに到達するように設定されている。
【0004】
しかしながら、トレッド11に対して図5のような形状のラグ溝12を設けた場合、2つ割りモールドを使用してタイヤを加硫成形してもモールド抜けに問題を生じることはないが、特に耐熱性が要求されるトレッドゴムを用いた場合に、ゴムの耐クラック性が劣るためラグ溝12の先端部からクラックが発生し易く、そのクラックが成長し易いという問題があった。
【0005】
そこで、図6に示すように、ラグ溝12の先端部にテーパー角度を付けることが考えられるが、この場合、クラックの発生を抑制するためにテーパー角度をトレッド法線方向に対して大きくしてテーパー部分をタイヤ幅方向に長く取る必要がある。ところが、テーパー部分がタイヤ赤道に近い位置にまで配置されると、その分だけ接地圧も高く更に据え切りや急旋回の多い産業用車両では逆にクラックを生じ易くなってしまう。従って、ラグ溝12の先端部にテーパー角度を付ける手法では、ラグ溝12の先端部の溝底部を1/4トレッドポイントの近傍に配置しながらクラック抑制効果を得ることは極めて困難であった。
【0006】
一方、図7は従来のトレッドゴム残量測定用のディンプル溝を設けた大型産業車両用タイヤを例示するものである。図7において、スムース面からなるトレッド11にはトレッドゴム残量測定用のディンプル溝13が1/4トレッドポイント付近に点在するように設けられている。このディンプル溝13は上述したラグ溝12に比べてクラックが発生し難いことが知られている。
【0007】
しかしながら、ディンプル溝13は耐クラック性が優れているものの、トレッドショルダー側に開口端を持たないため、2つ割りモールドを使用した場合に溝深さが大きいとタイヤ加硫後にモールドからタイヤを抜くことが困難である。そのため、タイヤを2つ割りモールドで加硫成形するに際し、例えばタイヤサイズ16.00−25では米国TRAコードのレギュラートレッド(溝深さ約38.5mm)の場合はディンプル溝で対応可能であるものの、ディープトレッド(溝深さ約58.7mm)及びエクストラディープトレッド(溝深さ約83.4mm)の場合はディンプル溝では対応することが出来なかった。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、ラグ溝先端部におけるクラックの発生及び成長を抑制することを可能にし、特に大型産業車両用タイヤのようにスムーストレッドにトレッドゴム残量測定用のラグ溝を設けた場合に好適な大型車両用タイヤを提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するための本発明の大型車両用タイヤは、トレッドにショルダー部からセンター側に延長するラグ溝を設け、該ラグ溝のセンター側の先端部の接地点から溝底にかけてのタイヤ断面方向における形状を、少なくともトレッド表面から溝深さの2分の1までは、前記ラグ溝のセンター側の先端部のトレッド表面位置を接点とする放物線から形成すると共に、前記ラグ溝の溝深さの50%の深さをhとし、前記接点からトレッド表面の法線方向に下ろした直線上の深さhとなる位置と前記曲線上の深さhとなる位置との直線距離をdとしたとき、前記深さhに対する前記直線距離dの比d/hからなる形状係数mを0.6〜1.0の範囲にしたことを特徴とするものである。
【0010】
このようにラグ溝の先端部における溝壁面の形状をラグ溝先端部のトレッド表面位置を接点とする放物線から形成し、トレッド表面に近い部分ほどトレッド法線方向に対する溝壁面の傾斜角度を大きくし、溝が深くなるに従い溝壁面の傾斜角度を小さくすることにより、荷重負荷時の接地圧反力でラグ溝先端部が潰れ難くなり、かつ溝空隙側に張り出し難くなるので、ラグ溝の先端部におけるクラックの発生及び成長を抑制することができる。
【0011】
即ち、本発明は表面荷重による地盤内の応力分布に関するブシネスキ(Boussinesq)の式(土質工学ハンドブック第2版,土質工学会著,技報堂)を応用したものである。このブシネスキの式によれば、表面の鉛直荷重Qによる内部の応力分布として、荷重直下で深さZとなる点での垂直応力σz0(接地圧反力で潰れる方向にかかる成分)と、荷重負荷点から鉛直方向に対して角度ψで傾斜し、かつ深さZとなる点での半径方向の水平垂直応力σr,h (溝空隙側に張り出す方向にかかる成分)とは、ポアソン比0.5の場合、それぞれ下式(1)及び(2)で表される。
【0012】
σz0=0.4775( Q/Z2 ) ・・・(1)
σr,h =3cos3ψsin2ψ( Q/2πZ2 ) ・・・(2)
これら式(1)及び(2)から明らかなように、接地圧反力で潰れる方向にかかる成分と溝空隙側に張り出す方向にかかる成分とは深さの2乗に反比例し、表面側ほど応力が高い。従って、ラグ溝の先端部における溝壁面の形状をトレッド表面のラグ溝先端部を接点とする放物線から形成することにより、最も効果的な応力吸収構造を形成することができる。
【0013】
本発明において、前記ラグ溝の溝深さの50%の深さをhとし、前記接点からトレッド表面の法線方向に下ろした直線上の深さhとなる位置と前記曲線上の深さhとなる位置との直線距離をdとしたとき、前記深さhに対する前記直線距離dの比d/hからなる形状係数mを0.6〜1.0の範囲にする。この形状係数mを0.6〜1.0の範囲にすることにより、ラグ溝の先端部をタイヤ赤道側に拡張し過ぎることなくクラック抑制効果を得ることができる。
【0014】
本発明は、高内圧・高負荷荷重条件で使用されるストラドルキャリアー等の大型産業車両用タイヤのようにスムーストレッドにトレッドゴム残量測定用のラグ溝を設けた場合に好適である。即ち、ストラドルキャリアー等の大型産業車両用タイヤはその使用条件としてトレッドに耐熱性が要求されることが多く、トレッドゴムに耐熱性重視のNR系ゴムを用いた場合に耐クラック性が低下してしまうが、本発明の構成を用いればラグ溝先端部におけるクラックの発生及び成長を効果的に抑制することが可能になる。
【0015】
なお、本発明はラジアル構造及びバイアス構造のいずれのタイプのタイヤにも適用可能であるが、特にベルト剛性が高く接地時にトレッドゴムに圧縮応力が強く働くラジアル構造において有効である。また、本発明はクッションタイヤ等の空気入りタイヤに限定されることはなく、ソリッドタイプのタイヤにも適用可能である。
【0016】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の構成について添付の図面を参照して詳細に説明する。
図1は本発明の実施形態からなる大型産業車両用タイヤを例示するものである。上記大型産業車両用タイヤはトレッドにトレッドゴム残量測定用のラグ溝を設けたものである。図において、1はビード部、2はサイド部、3はトレッド部である。左右一対のビード部1,1間には複数本のカーカスコードからなるカーカス層4が装架されている。このカーカス層2のタイヤ幅方向両端部がビードコア5の廻りにタイヤ内側から外側に折り返されている。
【0017】
ビード部1にはビードコア5をカーカス層2の外側から包み込むように補強層6が挿入されている。サイド部2にはカーカス層2よりタイヤ内側に該カーカス層2に沿うように補強層7が挿入されている。また、トレッド部3におけるカーカス層2の外周側には複数層のベルト層8がタイヤ1周にわたって配置されている。これらベルト層8はその補強コードがタイヤ周方向に対して傾斜し、かつ層間でコードが互いに交差するようになっている。
【0018】
上記タイヤにおいて、スムース面からなるトレッド11にはトレッドゴム残量測定用のラグ溝12がショルダー部からセンター側に延長するように設けられている。トレッドゴム残量測定用として、ラグ溝12はタイヤ周方向に均等に1本又は複数本設けるようにする。ラグ溝12の先端部はレッドゴム残量を適切に測定するために1/4トレッドポイントに到達するように設定されている。
【0019】
図2に示すように、ラグ溝12の先端部の接地点から溝底にかけてのタイヤ断面方向における形状は、少なくともトレッド表面から溝深さGDの2分の1までは、ラグ溝先端部のトレッド表面位置を接点とする放物線から形成されている。より具体的には、ラグ溝12は溝底側では垂直な溝壁面を有し、溝深さGDの2分の1に位置する点bからトレッド表面側に向けてトレッド法線方向に対する溝壁面の傾斜角度を徐々に大きくし、トレッド表面の接点aで該トレッド表面に対して滑らかに繋がっている。
【0020】
このようにラグ溝12の先端部における溝壁面の形状をトレッド表面のラグ溝先端部を接点とする放物線から形成し、トレッド深さ方向の応力分布に対応した形状にすることにより、荷重負荷時の接地点直下でのトレッド11の沈み込みと溝空隙側への張り出し変形(剪断変形)を抑えるので、ラグ溝12の先端部におけるクラックの発生及び成長を抑制することができる。
【0021】
また、ラグ溝12の先端部における溝壁面の形状を上記放物線から形成した場合、テーパー角度を付ける場合とは異なってラグ溝12の先端部がタイヤ赤道側へ必要以上に延長することはない。従って、ラグ溝12の先端部の溝底部を1/4トレッドポイントの近傍に配置しながらクラック抑制効果を得ることができる。なお、応力レベルは深さの2乗に反比例するから、放物線からなる溝壁面は少なくともトレッド表面から溝深さGDの2分の1まで設ければよい。
【0022】
図2に示すように、ラグ溝12の溝深さの50%の深さをhとし、接点aからトレッド表面の法線方向に下ろした直線上の深さhとなる位置と前記曲線上の深さhとなる位置(点b)との直線距離をdとしたとき、深さhに対する直線距離dの比d/hからなる形状係数mは0.6〜1.0の範囲にする。この形状係数mが0.6未満であるとクラック抑制効果が不十分になり、逆に1.0を超えてもそれ以上の効果が得られず、トレッドゴム残量測定に必要な位置(1/4トレッドポイント)に溝底部が配置されるようにラグ溝の位置を設計すると、その先端部がタイヤ赤道側へ広がり過ぎてしまうので好ましくない。
【0023】
【実施例】
以下の構成のタイヤについて、耐クラック性を評価した。
【0024】
評価タイヤ共通項
タイヤサイズ:1600R25 産業車両用タイヤ
トレッド仕様:米国TRAコードがディープトレッドに属するスムーストレッドパターン
溝配置:トレッドゴム残量測定用のラグ溝をトレッド両側にそれぞれタイヤ周方向に均等に4箇所(計8箇所)配置した。なお、ラグ溝の成形骨はモールド本体に交換可能な脱着式になっているため、各評価タイヤのラグ溝形状に対応させた成形骨を適宜はめ込む一方で同一構造のグリーンタイヤを加硫成形した。
【0025】
本発明タイヤ
図1に示すように、ラグ溝の先端部における溝壁面の形状をラグ溝先端部のトレッド表面位置を接点とする放物線(h=0.625d2 cm)から形成し、ラグ溝の溝深さGDを5.0cmとし、深さhを2.5cmとし、距離dを2.0cmとし、形状係数mを0.8とした(図3参照)。
【0026】
比較タイヤ
図6に示すように、ラグ溝の先端部の溝壁面にテーパー角度を付け、ラグ溝の溝深さGDを5.0cmとし、深さhを2.5cmとし、距離dを2.0cmとし、形状係数mを0.8とした(図3参照)。
【0027】
従来タイヤ
図5に示すように、ラグ溝の先端部の溝壁面をトレッド表面の法線方向に対して4.5°の角度で傾斜させ、ラグ溝の溝深さGDを5.0cmとした(図3参照)。
【0028】
これら評価タイヤを従来からトレッドゴム残量測定用のラグ溝の先端部にクラックを生じて問題となっていた車両(ストラドルキャリアー)に装着し、ラグ溝先端部におけるクラック発生状況を調べた。
【0029】
その結果、本発明タイヤはクラックの発生がないまま全摩耗した。これに対して、比較タイヤは走行初期段階(400時間:約20%摩耗レベル)ではクラック発生率が40%であり、それ以降は更なるクラックの発生はなかった。また、従来タイヤは走行初期段階(400時間:約20%摩耗レベル)でクラック発生率が100%になっていた。
【0030】
【発明の効果】
以上説明したように本発明によれば、トレッドにショルダー部からセンター側に延長するラグ溝を設け、該ラグ溝のセンター側の先端部の接地点から溝底にかけてのタイヤ断面方向における形状を、少なくともトレッド表面から溝深さの2分の1までは、前記ラグ溝のセンター側の先端部のトレッド表面位置を接点とする放物線から形成すると共に、前記ラグ溝の溝深さの50%の深さをhとし、前記接点からトレッド表面の法線方向に下ろした直線上の深さhとなる位置と前記曲線上の深さhとなる位置との直線距離をdとしたとき、前記深さhに対する前記直線距離dの比d/hからなる形状係数mを0.6〜1.0の範囲にしたことにより、ラグ溝先端部におけるクラックの発生及び成長を抑制することができる。
【0031】
従って、スムーストレッドにトレッドゴム残量測定用のラグ溝を設けた大型産業車両用タイヤにおいて、耐熱性重視のNR系ゴムを用いた場合であっても耐クラック性を確保することが可能になる。また、この種のタイヤに対して従来ではディンプル溝で対応していたため、2つ割りモールドの場合に離型性が悪いという問題からレギュラートレッドまでが限界であったが、本発明は離型性が良いラグ溝で対応可能であるので、ディープトレッドやエクストラディープトレッドにも適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施形態からなる大型産業車両用タイヤを示す断面図である。
【図2】図1のトレッド部を示す拡大断面図である。
【図3】実施例における各タイヤのラグ溝先端部における溝壁面の形状を示す拡大断面図である。
【図4】従来のトレッドゴム残量測定用のラグ溝を設けた大型産業車両用タイヤを示す斜視図である。
【図5】従来例からなる大型産業車両用タイヤを示す断面図である。
【図6】比較例からなる大型産業車両用タイヤを示す断面図である。
【図7】従来のトレッドゴム残量測定用のディンプル溝を設けた大型産業車両用タイヤを示す斜視図である。
【符号の説明】
1 ビード部
2 サイド部
3 トレッド部
4 カーカス層
5 ビードコア
8 ベルト層
11 トレッド
12 ラグ溝
Claims (2)
- トレッドにショルダー部からセンター側に延長するラグ溝を設け、該ラグ溝のセンター側の先端部の接地点から溝底にかけてのタイヤ断面方向における形状を、少なくともトレッド表面から溝深さの2分の1までは、前記ラグ溝のセンター側の先端部のトレッド表面位置を接点とする放物線から形成すると共に、前記ラグ溝の溝深さの50%の深さをhとし、前記接点からトレッド表面の法線方向に下ろした直線上の深さhとなる位置と前記曲線上の深さhとなる位置との直線距離をdとしたとき、前記深さhに対する前記直線距離dの比d/hからなる形状係数mを0.6〜1.0の範囲にした大型車両用タイヤ。
- 前記トレッドがスムーストレッドであり、前記ラグ溝がトレッドゴム残量測定用のラグ溝である請求項1に記載の大型車両用タイヤ。
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