JP4334604B2 - 糖代謝及び/又は脂質代謝に関係する遺伝子 - Google Patents

糖代謝及び/又は脂質代謝に関係する遺伝子 Download PDF

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Description

本発明はインスリン抵抗性改善剤によって発現が変動するポリヌクレオチド及び蛋白質、該ポリヌクレオチド又は該蛋白質を利用した糖代謝異常及び/又は脂質代謝異常の検出方法、該ポリヌクレオチド又は該蛋白質を利用した糖代謝異常及び/又は脂質代謝異常に対する、治療効果及び/又は予防効果を有する物質のスクリーニング方法等に関する。
糖尿病は近年その患者数が増加しており、成人病のひとつとして注目されている。2型糖尿病(インスリン非依存性糖尿病、NIDDM)は日本人に多い糖尿病のタイプであり、早期発見、早期治療がその予後の点からも重要である。
しかし、2型糖尿病はその成因が多様であり、予想されうる原因についての知見は乏しい。2型糖尿病におけるインスリン作用不足の原因として、インスリン感受性機構の異常とインスリン分泌の低下が挙げられる。欧米では多くは前者、すなわちインスリン抵抗性が2型糖尿病の主な原因であるが、日本ではインスリン分泌不全を主な原因とする場合も少なくない。
近年、糖尿病治療薬として、インスリン抵抗性改善剤が開発されてきている。「インスリン抵抗性改善剤」とは、インスリン受容体のシグナル伝達を増強することにより、インスリン作用の感受性を上げ、不足を補う作用メカニズムによりインスリン抵抗性を改善する薬剤をいう。そのようなインスリン抵抗性改善剤としては、例えば、トログリタゾン(troglitazone)(例えば、特許文献1参照。)、ピオグリタゾン(pioglitazone)(例えば、特許文献2参照。)、又はロシグリタゾン(例えば、特許文献3参照。)、GI−262570(例えば、特許文献4参照。)、JTT−501(例えば、特許文献5参照。)、AZ−242(例えば、特許文献6参照。)、MCC−555(例えば、特許文献7参照。)、YM−440(例えば、特許文献8参照。)、KRP−297(例えば、特許文献9参照。)、T−174(例えば、特許文献10参照。)、NC−2100(例えば、特許文献11参照。)、NN−622(例えば、特許文献12参照。)、BMS−298585(例えば、特許文献13参照。)、5−[4−(6−メトキシ−1−メチルベンズイミダゾール−2−イルメトキシ)ベンジル]チアゾリジン−2,4−ジオン(例えば、特許文献14参照。)のようなオキサゾール化合物、オキサジアゾリジン化合物、チアゾリジン化合物又はフェノキサジン化合物等を挙げることができる。
これらのインスリン抵抗性改善剤のうち、トログリタゾン、ロジグリタゾン、及びピオグリタゾンのようなチアゾリジン誘導体は臨床の場で用いられている(例えば、非特許文献1、2及び3参照)。これらの薬剤は、基本構造としてチアゾリジン環骨格を有することを特徴としており、核内レセプターであるPPARγを標的分子とし、肝臓、筋肉、及び脂肪細胞における遺伝子発現を変化させることにより、2型糖尿病患者のインスリン抵抗性を改善すると考えられている。
PPARγの主要な発現臓器である脂肪組織では、インスリン抵抗性改善剤はPPARγに直接作用し脂肪組織のインスリン感受性を亢進する(例えば、非特許文献4参照)。一方、PPARγを標的分子とするインスリン抵抗性改善剤の生体内での作用として、筋肉における糖利用の促進及び肝臓における糖放出の抑制が挙げられるが、筋肉や肝臓におけるインスリン抵抗性改善が、筋肉や肝臓に発現しているPPARγに対する直接の作用であるかに関しては今なお不明な点が多い(例えば、非特許文献5参照。)。近年では、チアゾリジン誘導体に代表されるインスリン抵抗性改善剤により、脂肪組織から分泌される因子の産生量が調節されることが、生体のインスリン感受性を調節し2型糖尿病を改善する一因として考えられている。
脂肪組織は単なる脂肪の貯蔵器官ではなく、多数の因子を分泌する内分泌器官であり、これら分泌因子の中には、節食及びエネルギー代謝を調節するレプチン (leptin)(例えば、非特許文献6及び7参照)、インスリン感受性を低下させる作用を持つ腫瘍壊死因子(tumor necrosis factor: TNF−α)(例えば、非特許文献8参照)。)やレジスチン(resistin)(例えば、非特許文献9参照、)、インスリン感受性を亢進させるアディポネクチン(adiponectin)(例えば、非特許文献10及び11参照)等、肥満やインスリン抵抗性、2型糖尿病と関連する多数の因子が含まれる。
例えばTNF−αは、肥満・糖尿病を呈するマウスの脂肪組織では発現が上昇しており、TNF−αを中和することによりインスリン抵抗性が改善する(例えば、非特許文献12参照。)。またピオグリタゾン投与によりインスリン抵抗性が改善した状態では、肥満・糖尿病モデルマウスで認められたTNF−αの発現亢進が抑制される(例えば、非特許文献13参照。)。
逆にアディポネクチンは、肥満・糖尿病を呈するマウスやヒトでは発現が低下しており(例えば、非特許文献14及び15参照。)、インスリン抵抗性改善剤投与時には、アディポネクチンの発現が上昇する(例えば、非特許文献10及び11参照。)。
脂肪細胞においてインスリン抵抗性改善剤投与時に発現が変動し、分泌される因子は、以上述べてきた因子と同様に肥満やインスリン抵抗性、2型糖尿病と関連する可能性が考えられる。
NapsinAはアスパラギン酸プロテアーゼ(Aspartic protease)として知られ、腎症との関係や肺や腎臓での発現や肺腺癌での発現が報告されているが、その機能は不明であり、糖代謝や脂質代謝との関係も明らかとはなっていない(例えば、非特許文献16及び17参照。)。
インスリンによる重要な血糖値の維持機構として肝臓や骨格筋、脂肪組織におけるグリコーゲン合成の促進が考えられている。肝臓におけるグルコースの取り込みは主にインスリン非依存性のグルコース輸送担体GLUT2によって行われており、血中グルコースと肝細胞内のグルコース濃度は常に一定に保たれている。肝臓におけるグリコーゲン合成酵素活性は血中のグルコース濃度とインスリン刺激の両者によって活性化されうる(例えば、非特許文献18参照。)が、インスリンによるグリコーゲン合成酵素活性化メカニズムは骨格筋と違い明らかとなっていない。しかしグリコーゲン合成能と糖尿病との関連が示唆されている(例えば、非特許文献19及び20参照。)。
特開昭60−051189公報 特開昭61−267580号公報 国際公開第95/21608号パンフレット 国際公開第00/8002号パンフレット 国際公開第95/18125号パンフレット 国際公開第99/62872号パンフレット 欧州特許出願公開第604,983号明細書 国際公開第94/25448号パンフレット 米国特許第5,948,803号明細書 欧州特許第283035号明細書 欧州特許出願公開第787725号明細書 国際公開第99/19313号パンフレット 国際公開第01/21602号パンフレット 欧州特許出願公開0745600号明細書 「ライフ・サイエンス(Life Sciecce)」、2000年、第67巻、p.2405−2416 「日本臨床」、2000年、第58巻,p.389−404 「ファーマコセラピー(Pharmacotherapy)」、2001年、第21巻,p.1082−1099 「エンドクライノロジー(Endocrinology)」、1996年、第137巻,1984−1990 「エンドクライノロジー(Endocrinology)」、1998年、第139巻,p.5034−5041 「ネイチャー (Nature)」、1994年、第372巻、p.425−432 「ネイチャー (Nature)」、1998年、第395巻、p.763−770) 「ネイチャー(Nature)」、1997年、第389巻、p.610−614 「ネイチャー(Nature)」、2001年、第409巻、p.307−312 「ネイチャー・メディスン(Nature Medicine)」、2001年、 第7巻、p.941−946 「ネイチャー・メディスン(Nature Medicine)」、2001年、第7巻、p.947−953 「サイエンス (Science)」、1993年、第259巻、p.87−91 「エンドクライノロジー(Endocrinology)」、1994年、第134巻、p.264−70 「ジャーナル・オブ・バイオロジカル・ケミストリー(Journal of Biological Chemisitry)」、1996年、第271巻、p.10697−10703 「バイオケミストリー・アンド・バイオフィジックス・リサーチ・コミュニケーション(Biochemisitry and Biophysics Research Communication)」、1999年、第257巻、p.79−83 「フェブス・レターズ(FEBS Letters)」、1999年、第462巻、p.129−134 「バイオキミカ・バイオフィジカ・アクタ(Biochimica et Biophysica Acta)」、2000年、第1524巻、p.51−56 「バイオケミカル・ジャーナル(Biochemical Journal)」、1998年、第336巻、p.19−31 「バイオケミカル・ジャーナル(Biochemical Journal)」、2001年、第360巻、p.449‐59 「ジャーナル・オブ・バイオロジカル・ケミストリー(Journal of Biological Chemisitry)」、2002年、第277巻、p.1524−1530
PPARγを標的分子とするインスリン抵抗性改善剤により発現量が減少する物質は、糖代謝の調節に関与する可能性を有する因子であると考えられる。また、インスリン抵抗性改善剤を投与すると血糖値の低下の他に血中の中性脂質濃度の低下も確認されるので、脂質代謝の調節に関与する可能性を有する因子であるとも考えられる。本発明の目的はインスリン抵抗性改善剤によって発現が変動するポリヌクレオチド、該ポリヌクレオチドを利用した糖代謝異常及び/又は脂質代謝異常を改善する物質のスクリーニング方法等に関する。
本発明者はPPARγを標的分子とするインスリン抵抗性改善剤を投与することによって発現量が顕著に減少するポリヌクレオチドを見出し、該ポリヌクレオチド及び該ポリヌクレオチドによってコードされている蛋白質が被験者又は被験動物の糖代謝異常及び/又は脂質代謝異常の検出方法に使用できることを見出した。さらに、該ポリヌクレオチド及び該ポリヌクレオチドによってコードされている蛋白質が糖代謝異常及び/又は脂質代謝異常の改善剤、例えば、インスリン抵抗性改善剤及び/又は血中中性脂質濃度低下剤の新規スクリーニング方法に使用でき、また、該ポリヌクレオチド及び該ポリヌクレオチドによってコードされている蛋白質を用いることで、糖代謝異常改善剤及び/又は脂質代謝異常改善剤、例えば、インスリン抵抗性改善剤、高脂血症治療剤を提供できること等を見出し、本発明を完成させた。
本発明は、
(1) 下記の工程1)乃至4)を含む、糖代謝異常及び/又は脂質代謝異常の検出方法:
1)被験者又は被験動物より採取した検体より、全RNA画分を抽出する工程;
2)正常人又は正常動物より採取した検体より、全RNA画分を抽出する工程;
3)上記工程1)由来の全RNA画分と上記工程2)由来の全RNA画分における、下記のi)乃至iii)のいずれか一つに記載のポリヌクレオチドの発現量を測定する工程;
i)配列表の配列番号2のヌクレオチド番号172乃至1431に示されるヌクレオチド配列を含むことからなるポリヌクレオチド、
ii)配列表の配列番号6のヌクレオチド番号54乃至1316に示されるヌクレオチド配列を含むことからなるポリヌクレオチド、
iii)上記i)又はii)のいずれか一つに記載のポリヌクレオチドのヌクレオチド配列と相補的なヌクレオチド配列からなるポリヌクレオチドとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつ、グリコーゲン濃度低下作用を有する蛋白質をコードするポリヌクレオチド;
4)上記工程1)由来の全RNA画分と上記工程2)由来の全RNA画分との間における、上記工程3)によって測定されたポリヌクレオチドの発現量の差を解析することにより、上記工程1)に記載の被験者又は被験動物の、糖代謝異常及び/又は脂質代謝異常を判定する工程、
(2) 下記の工程1)乃至3)を含む、糖代謝異常及び/又は脂質代謝異常の検出方法:
1)被験者又は被験動物より採取した検体における、下記のi)乃至iii)のいずれか一つに記載の蛋白質の発現量を測定する工程:
i)配列表の配列番号3のアミノ酸番号1乃至419に示されるアミノ酸配列を含むことからなる蛋白質、
ii)配列表の配列番号7のアミノ酸番号1乃至420に示されるアミノ酸配列を含むことからなる蛋白質、
iii)上記i)又はii)に記載の蛋白質のアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列を含むことからなり、かつ、グリコーゲン濃度低下作用を有する蛋白質;
2)正常人又は正常動物より採取した検体における、上記工程1)のi)乃至iii)のいずれか一つに記載の蛋白質の発現量を測定する工程;
3)上記工程1)によって測定された蛋白質の発現量と上記工程2)によって測定された該蛋白質の発現量の差を解析することにより、上記工程1)に記載の被験者又は被験動物の糖代謝異常及び/又は脂質代謝異常の病態を判定する工程。
(3) 下記の工程1)乃至4)を含むことからなる、糖代謝異常及び/又は脂質代謝異常に対する、治療効果及び/又は予防効果を有する物質のスクリーニング方法:
1)被験物質を添加した培地で培養した哺乳動物由来培養細胞より、全RNA画分を抽出する工程;
2)被験物質を添加しない培地で培養した哺乳動物由来培養細胞より、全RNA画分を抽出する工程;
3)上記工程1)由来の全RNA画分と上記工程2)由来の全RNA画分における、下記のi)乃至iii)のいずれか一つに記載のポリヌクレオチドの発現量を測定する工程;
i)配列表の配列番号2のヌクレオチド番号172乃至1431に示されるヌクレオチド配列を含むことからなるポリヌクレオチド、
ii)配列表の配列番号6のヌクレオチド番号54乃至1316に示されるヌクレオチド配列を含むことからなるポリヌクレオチド、
iii)上記i)又はii)のいずれか一つに記載のポリヌクレオチドのヌクレオチド配列と相補的なヌクレオチド配列からなるポリヌクレオチドとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつ、グリコーゲン濃度低下作用を有する蛋白質をコードするポリヌクレオチド;
4)上記工程1)由来の全RNA画分と上記工程2)由来の全RNA画分との間における、上記工程3)によって測定されたポリヌクレオチドの発現量の差を解析することにより、被験物質の、糖代謝異常及び/又は脂質代謝異常に対する、治療効果及び/又は予防効果を判定する工程、
(4) 下記の工程1)乃至4)を含むことからなる、糖代謝異常及び/又は脂質代謝異常に対する、治療効果及び/又は予防効果を有する物質のスクリーニング方法:
1)被験物質を投与した哺乳動物個体より採取した検体より、全RNA画分を抽出する工程;
2)被験物質を投与しなかった哺乳動物個体より採取した検体より、全RNA画分を抽出する工程;
3)上記工程1)由来の全RNA画分と上記工程2)由来の全RNA画分における、下記のi)乃至iii)のいずれか一つに記載のポリヌクレオチドの発現量を測定する工程;
i)配列表の配列番号2のヌクレオチド番号172乃至1431に示されるヌクレオチド配列を含むことからなるポリヌクレオチド、
ii)配列表の配列番号6のヌクレオチド番号54乃至1316に示されるヌクレオチド配列を含むことからなるポリヌクレオチド、
iii)上記i)又はii)のいずれか一つに記載のポリヌクレオチドのヌクレオチド配列と相補的なヌクレオチド配列からなるポリヌクレオチドとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつ、グリコーゲン濃度低下作用を有する蛋白質をコードするポリヌクレオチド;
4)上記工程1)由来の全RNA画分と上記工程2)由来の全RNA画分との間における上記工程3)によって検出されたポリヌクレオチドの発現量の差を解析することにより、被験物質の、糖代謝異常及び/又は脂質代謝異常に対する、治療効果及び/又は予防効果を判定する工程、
(5) 下記の工程1)乃至3)を含むことからなる、糖代謝異常及び/又は脂質代謝異常に対する、治療効果及び/又は予防効果を有する物質のスクリーニング方法:
1)被験物質を添加した培地で培養した哺乳動物由来培養細胞における、下記のi)乃至iii)のいずれか一つに記載の蛋白質の発現量を測定する工程;
i)配列表の配列番号3のアミノ酸番号1乃至419に示されるアミノ酸配列を含むことからなる蛋白質、
ii)配列表の配列番号7のアミノ酸番号1乃至420に示されるアミノ酸配列を含むことからなる蛋白質、
iii)上記i)又はii)に記載の蛋白質のアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなり、かつ、グリコーゲン濃度低下作用を有する蛋白質;
2)被験物質を添加しない培地で培養した哺乳動物由来培養細胞における、上記工程1)のi)乃至iii)のいずれか一つに記載の蛋白質の発現量を測定する工程;
3)上記工程1)で検出された蛋白質の発現量と、上記工程2)で検出された該蛋白質の発現量の差を解析することにより、被験物質の、糖代謝異常及び/又は脂質代謝異常に対する、治療効果及び/又は予防効果を判定する工程、
(6) 下記の工程1)乃至3)を含むことからなる、糖代謝異常及び/又は脂質代謝異常に対する、治療効果及び/又は予防効果を有する物質のスクリーニング方法:
1)被験物質を投与した哺乳動物個体より採取した検体における、下記のi)乃至iii)のいずれか一つに記載の蛋白質の発現量を測定する工程;
i)配列表の配列番号3のアミノ酸番号1乃至419に示されるアミノ酸配列を含むことからなる蛋白質、
ii)配列表の配列番号7のアミノ酸番号1乃至420に示されるアミノ酸配列を含むことからなる蛋白質、
iii)上記i)又はii)に記載の蛋白質のアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなり、かつ、グリコーゲン濃度低下作用を有する蛋白質;
2)被験物質を投与しなかった哺乳動物個体より採取した検体における、上記工程1)のi)乃至iii)のいずれか一つに記載の蛋白質の発現量を測定する工程;
3)上記工程1)で測定された蛋白質の発現量と、上記工程2)で測定された該蛋白質の発現量の差を解析することにより、被験物質の糖代謝異常及び/又は脂質代謝異常に対する、治療効果及び/又は予防効果を判定する工程、
(7) 下記の工程1)乃至3)を含むことからなる、糖代謝異常及び/又は脂質代謝異常に対する、治療効果及び/又は予防効果を有する物質のスクリーニング方法:
1)下記のi)乃至iii)のいずれか一つに記載の蛋白質と被験物質とを添加して培養した哺乳動物由来培養細胞中のグリコーゲン濃度を測定する工程;
i)配列表の配列番号3のアミノ酸番号1乃至419に示されるアミノ酸配列を含むことからなる蛋白質、
ii)配列表の配列番号7のアミノ酸番号1乃至420に示されるアミノ酸配列を含むことからなる蛋白質、
iii)上記i)又はii)に記載の蛋白質のアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなり、かつ、グリコーゲン濃度低下作用を有する蛋白質;
2)上記工程1)のi)乃至iii)のいずれの蛋白質も添加しないで、被験物質を添加して培養した哺乳動物由来培養細胞中のグリコーゲン濃度を測定する工程;
3)上記工程1)で測定したグリコーゲン濃度と上記工程2)で測定したグリコーゲン濃度の差を解析することにより、被験物質の、糖代謝異常及び/又は脂質代謝異常に対する、治療効果及び/又は予防効果を判定する工程、
(8) 下記の工程1)乃至4)を含むことからなる、糖代謝異常及び/又は脂質代謝異常に対する、治療効果及び/又は予防効果を有する物質のスクリーニング方法:
1)下記のi)乃至iii)のいずれか一つに記載の蛋白質と被験物質とを添加して培養した哺乳動物由来培養細胞にインスリンを添加してインキュベートする工程;
i)配列表の配列番号3のアミノ酸番号1乃至419に示されるアミノ酸配列を含むことからなる蛋白質、
ii)配列表の配列番号7のアミノ酸番号1乃至420に示されるアミノ酸配列を含むことからなる蛋白質、
iii)上記i)又はii)に記載の蛋白質のアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなり、かつ、グリコーゲン濃度低下作用を有する蛋白質;
2)上記工程1)のi)乃至iii)のいずれの蛋白質も添加しないで、被験物質を添加して培養した哺乳動物由来培養細胞にインスリンを添加してインキュベートする工程;
3)上記工程1)由来の哺乳動物由来培養細胞中と上記工程2)由来の哺乳動物由来培養細胞中のグリコーゲン濃度を測定する工程;
4)上記工程1)由来の哺乳動物由来培養細胞と上記工程2)由来の哺乳動物由来培養細胞との間における、上記工程3)で測定したグリコーゲン濃度の差を解析することにより、被験物質の、糖代謝異常及び/又は脂質代謝異常に対する、治療効果及び/又は予防効果を判定する工程、
(9) 下記の工程1)乃至4)を含む、糖代謝異常及び/又は脂質代謝異常に対する、治療効果及び/又は予防効果を有する物質のスクリーニング方法:
1)哺乳動物個体に、以下のi)乃至iii)のいずれか一つに記載の蛋白質及び被験物質を投与する工程;
i)配列表の配列番号3のアミノ酸番号1乃至419に示されるアミノ酸配列を含むことからなる蛋白質、
ii)配列表の配列番号7のアミノ酸番号1乃至420に示されるアミノ酸配列を含むことからなる蛋白質、
iii)上記i)又はii)に記載の蛋白質のアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなり、かつ、グリコーゲン濃度低下作用を有する蛋白質;
2)哺乳動物個体に、上記工程1)のi)乃至iii)のいずれか一つに記載の蛋白質を投与する工程;
3)上記工程1)由来の哺乳動物個体及び上記工程2)由来の哺乳動物個体の血中のグリコーゲン濃度及び/又は中性脂質濃度を測定する工程;
4)上記工程1)由来の哺乳動物個体及び上記工程2)由来の哺乳動物個体との間における、上記工程3)で測定した、血中のグルコース濃度、グリコーゲン濃度及び/又は中性脂質濃度の差を解析することにより、被験物質の、糖代謝異常及び/又は脂質代謝異常に対する、治療効果及び/又は予防効果を判定する工程、
(10) 下記の工程1)乃至5)を含む、糖代謝異常及び/又は脂質代謝異常の、治療効果及び/又は予防効果を有する物質のスクリーニング方法:
1)哺乳動物個体に、以下のi)乃至iii)のいずれか一つに記載のポリヌクレオチドを発現させる工程;
i)配列表の配列番号3のアミノ酸番号1乃至419に示されるアミノ酸配列を含むことからなる蛋白質、
ii)配列表の配列番号7のアミノ酸番号1乃至420に示されるアミノ酸配列を含むことからなる蛋白質、
iii)上記i)又はii)に記載の蛋白質のアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなり、かつ、グリコーゲン濃度低下作用を有する蛋白質、
2)上記工程1)に記載の哺乳動物個体に被験物質を投与する工程;
3)上記工程1)のi)乃至iii)に記載のいずれのポリヌクレオチドも発現させない哺乳動物個体に被験物質を投与する工程;
4)上記工程2)由来の哺乳動物個体と上記工程3)由来の哺乳動物個体における血中のグルコース濃度、グリコーゲン濃度及び/又は中性脂質濃度を測定する工程;
5)上記工程2)由来の哺乳動物個体と上記工程3)由来の哺乳動物個体との間における、上記工程4)で測定された、血中のグルコース濃度、グリコーゲン濃度及び/又は中性脂質濃度の差を解析することにより、被験物質の、糖代謝異常及び/又は脂質代謝異常に対する、治療効果及び/又は予防効果を判定する工程、
(11) 下記の1)乃至3)のいずれか一つに記載の蛋白質に被験物質を含む試料を接触させ、次いで、該蛋白質に結合した物質を分離することを特徴とする糖代謝異常及び/又は脂質代謝異常に対する、治療効果及び/又は予防効果をは有する物質の単離方法:
1)配列表の配列番号3のアミノ酸番号1乃至419に示されるアミノ酸配列を含むことからなる蛋白質;
2)配列表の配列番号7のアミノ酸番号1乃至420に示されるアミノ酸配列を含むことからなる蛋白質;
3)上記1)又は2)に記載の蛋白質のアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなり、かつ、グリコーゲン濃度低下作用を有する蛋白質、
(12) 哺乳動物由来培養細胞が霊長類又はげっ歯類由来であることを特徴とする(3)、(5)、(7)及び(8)のいずれか一つに記載のスクリーニング方法、
(13) 哺乳動物由来培養細胞がヒト、サル、マウス又はラット由来培養細胞であることを特徴とする、(3)、(5)、(7)及び(8)のいずれか一つに記載のスクリーニング方法、
(14) 哺乳動物由来培養細胞がヒト又はマウス由来であることを特徴とする(3)、(5)、(7)及び(8)のいずれか一つに記載のスクリーニング方法、
(15) 哺乳動物由来培養細胞が、マウス由来の繊維芽細胞、マウス、ラットもしくはヒト由来の遊離脂肪細胞、マウス、ラットもしくはヒト由来の初代肝細胞であることを特徴とする(3)、(5)、(7)及び(8)のいずれか一つに記載のスクリーニング方法、
(16) 哺乳動物個体が、サル、イヌ、マウス及びラットのいずれかであることを特徴とする、(4)、(6)、(9)又は(10)に記載の方法、
(17) 下記の1)乃至3)からなる群から選択される少なくとも一つ以上を含む、糖代謝異常及び/又は脂質代謝異常に対する、治療効果及び/又は予防効果を有する物質のスクリーニング用、及び/又は、糖代謝異常及び/又は脂質代謝異常の検出用、キット:
1)少なくとも、配列表の配列番号2又は6に示されるヌクレオチド配列を含むことからなるポリヌクレオチドの一つを特異的に増幅するための15乃至30塩基長の連続したオリゴヌクレオチドプライマー;
2)少なくとも、配列表の配列番号2又は6に示されるヌクレオチド配列を含むことからなるポリヌクレオチドの一つにストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、該ポリヌクレオチドを検出するための15ヌクレオチド以上の連続したポリヌクレオチドプローブ;
3)少なくとも、配列表の配列番号2又は6に示されるヌクレオチド配列を含むことからなるポリヌクレオチドの一つが固定された固相化試料、
(18) 下記の1)及び2)の少なくとも一つを含む、糖代謝異常及び/又は脂質代謝異常に対する、治療効果及び/又は予防効果を有する物質のスクリーニング用、及び/又は、糖代謝異常及び/又は脂質代謝異常の検出用、キット:
1)少なくとも、配列表の配列番号3又は7に示されるアミノ酸配列を含むことからなる蛋白質の一つに特異的に結合し、該蛋白質を検出するための抗体;
2)上記1)に記載の抗体に結合し得る二次抗体、
(19) ポリヌクレオチドの発現量を測定する方法が、ノーザンブロット法、ドットブロット法、スロットブロット法、RT−PCR、リボヌクレアーゼ保護アッセイ又はランオン・アッセイであることを特徴とする、(1)、(3)、(4)及び(12)乃至(16)のいずれか一つに記載の方法、
(20) ポリヌクレオチドの発現量を測定する方法が動物組織又は動物細胞由来の相補的DNA群又は該DNA群の各DNAの部分配列を含むことからなるDNA群で作製された遺伝子チップ又はアレイを用いることを特徴とする(1)、(3)、(4)及び(12)乃至16のいずれか一つに記載の方法、
(21) 蛋白質の発現量の測定方法が、該蛋白質に特異的に結合する抗体又はリガンドを用いることを特徴とする、(2)、(5)、(6)及び(12)乃至(16)のいずれか一つに記載の方法、
(22) 蛋白質の発現量の測定方法が、ウエスタンブロット法、ドットブロット法、スロットブロット法又は固相酵素免疫定量法(ELISA法)であることを特徴とする、(2)、(5)、(6)及び(12)乃至(16)のいずれか一つに記載の方法、
(23) 下記の1)乃至3)からなる群から選択される少なくとも一つのヌクレオチド配列又は該配列の部分配列に相補的なヌクレオチド配列を有するオリゴヌクレオオチドを含む、糖代謝異常及び/又は脂質代謝異常に対する、治療用及び/又は予防用、医薬組成物:
1)配列表の配列番号2のヌクレオチド番号172乃至1431に示されるヌクレオチド配列;
2)配列表の配列番号6のヌクレオチド番号54乃至1316に示されるヌクレオチド配列;
3)上記1)又は2)に記載のポリヌクレオチドのヌクレオチド配列と相補的なヌクレオチド配列からなるポリヌクレオチドとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつ、グリコーゲン濃度低下作用を有する蛋白質をコードするポリヌクレオチド、
(24) 下記の1)乃至3)からなる群から選択される少なくとも一つの蛋白質を特異的に認識する抗体を含有する糖代謝異常及び/又は脂質代謝異常に対する、治療用及び/又は予防用、医薬組成物:
1)配列表の配列番号3のアミノ酸番号1乃至419に示されるアミノ酸配列を含むことからなる蛋白質;
2)配列表の配列番号7のアミノ酸番号1乃至420に示されるアミノ酸配列を含むことからなる蛋白質;
3)上記1)又は2)に記載の蛋白質のアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなり、かつ、グリコーゲン濃度低下作用を有する蛋白質、
(25) 下記の1)乃至3)からなる群から選択される蛋白質のうち少なくとも一つを含有する、糖代謝異常及び/又は脂質代謝異常の、予防及び/又は治療用医薬組成物:
1)配列表の配列番号3のアミノ酸番号1乃至419に示されるアミノ酸配列を含むことからなる蛋白質;
2)配列表の配列番号7のアミノ酸番号1乃至420に示されるアミノ酸配列を含むことからなる蛋白質;
3)上記1)又は2)に記載の蛋白質のアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなり、かつ、グリコーゲン濃度低下作用を有する蛋白質、
(26) 被験者の血糖値を低下する機能を有することを特徴とする(24)又は(25)に記載の医薬組成物、
(27) 下記の1)乃至3)からなる群から選択される少なくとも1以上を含む糖代謝異常及び/又は脂質代謝異常の検出用キット:
1)配列表の配列番号2のヌクレオチド番号1乃至1479に示されるヌクレオチド配列を含むことからなるポリヌクレオチド又は配列表の配列番号6のヌクレオチド番号1乃至1438に示されるヌクレオチド配列を含むことからなるポリヌクレオチドの一部乃至全部を特異的に増幅するための15乃至30塩基長の連続したオリゴヌクレオチドプライマー;
2)配列表の配列番号2のヌクレオチド番号1乃至1479に示されるヌクレオチド配列を含むことからなるポリヌクレオチド又は配列表の配列番号6のヌクレオチド番号1乃至1438に示されるヌクレオチド配列からなるポリヌクレオチドにストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、該ポリヌクレオチドを検出するための15ヌクレオチド以上の連続したポリヌクレオチドプローブ;
3)上記1)に記載のオリゴヌクレオチドプライマー又は上記2)に記載のポリヌクレオチドプローブのいずれか一つのポリヌクレオチドが固定された固相化試料;
(28) 下記の1)及び2)の少なくとも1つを含む糖代謝異常及び/又は脂質代謝異常の検出用キット:
1)配列表の配列番号3のアミノ酸番号1乃至419に示されるアミノ酸配列を含むことからなる蛋白質又は配列表の配列番号7のアミノ酸番号1乃至420に示されるアミノ酸配列を含むことからなる蛋白質に特異的に結合し、該蛋白質を検出するための抗体;
2)上記1)に記載の抗体に結合し得る二次抗体、
に関する。
本発明により、インスリン抵抗性改善剤によって発現が変動するポリヌクレオチド及び/又は蛋白質が取得され、被験者及び/又は被験動物の糖代謝異常及び/又は脂質代謝異常の検出方法、糖代謝異常及び/又は脂質代謝異常の改善剤の新規スクリーニング方法、更に、糖代謝異常改善剤及び/又は血中中性脂質濃度低下剤等が提供された。
本明細書中において、「ストリンジェントな条件下でハイブリダイズする」とは、市販のハイブリダイゼーション溶液ExpressHyb Hybridization Solution(クロンテック(Clontech)社製)中、68℃でハイブリダイズすること、又は、DNAを固定したフィルターを用いて0.7−1.0MのNaCl存在下68℃でハイブリダイゼーションを行なった後、0.1−2倍濃度のSSC溶液(1倍濃度SSCとは150mM NaCl、15mM クエン酸ナトリウムからなる)を用い、68℃で洗浄することにより同定することができる条件又はそれと同等の条件でハイブリダイズすることをいう。
本明細書中におけるにおける、糖代謝異常には、糖尿病を初めとする糖代謝の異常によって引き起こされる各種疾患が含まれ、インスリン感受性の異常によって引き起こされる2型糖尿病も糖代謝異常に含まれる。本明細書中における脂質代謝異常とは、体内での脂質の代謝に異常を来している状態をいい、脂質代謝異常によって引き起こされる疾患としては例えば、高コレステロール血症、高脂血症を挙げることができる。本明細書中における、「RNA画分」とは、RNAを含んでいる画分をいう。なお、本明細書中において「蛋白質」という言葉には、ポリペプチド、蛋白質、これに糖鎖が付加されたものも全て含むものとする。
なお、本発明における「ポリヌクレオチド」という用語には、DNAのみならずそのmRNAやcDNAも含むものとする。また、全長遺伝子やESTも含むものとする。
本発明におけるインスリン抵抗性改善剤とは、糖尿病の治療に使用される薬剤をいい、有効成分としてインスリン抵抗性改善剤を有する医薬組成物を挙げることができる。「インスリン抵抗性改善剤」は、インスリン受容体のシグナル伝達を増強することにより、インスリン作用の感受性を上げ、不足を補う作用メカニズムによりインスリン抵抗性を改善する薬剤であり、糖尿病用剤として使用される。そのようなインスリン抵抗性改善剤としては、例えば、
特開昭60−051189公報に記載されたトログリタゾン(5−[4−(6−ヒドロキシ−2,5,7,8−テトラメチルクロマン−2−イルメトキシ)ベンジル]−2,4−チアゾリジンジオン)及び、その薬理上許容される塩(塩酸塩等)、
特開昭61−267580号公報(EP特許第193,256号公報又は米国特許第4,687,777号公報)に記載されたピオグリタゾン(5−[4−[2−(5−エチル−ピリジン−2−イル)エトキシ]ベンジル]−2,4−チアゾリジンジオン)及び、その薬理上許容される塩(塩酸塩等)、
特表平9−512249号公報(WO95/21608号公報又は米国特許第5,002,953号公報)に記載されたロシグリタゾン(5−[4−[2−(N−メチル−N−2−ピリジルアミノ)エトキシ]ベンジル]−2,4−チアゾリジンジオン)及び、その薬理上許容される塩(マレイン酸塩等)、
WO00/8002号公報に記載されたGI−262570(化学名は、2(S)−(2−ベンゾイルフェニルアミノ)−3−[4−[2−(5−メチル−2−フェニルオキサゾール−4−イル)エトキシ]フェニル]プロピオン酸)及び、その薬理上許容される塩(塩酸塩等)、
WO95/18125号公報(EP公開第684,242号公報又は米国特許第5,728,720号公報)に記載されたJTT−501(4−[4−[2−(5−メチル−2−フェニル−オキサゾール−4−イル)エトキシ]ベンジル−3,5−イソオキサゾリジンジオン)及び、その薬理上許容される塩(塩酸塩等)、
WO99/62872号公報(EP公開第1,084,103号公報又は米国特許第6,258,850号公報)に記載されたAZ−242(2−エトキシ−3−[4−[2−(4−メチルスルホニルオキシフェニル)エトキシ]フェニル]プロパン酸)及び、その薬理上許容される塩(ナトリウム塩等)、
特開平6−247945号公報(EP公開第604,983号公報又は米国特許第5,594,016号公報)に記載されたMCC−555(5−[6−(2−フルオロベンジルオキシ)ナフタレン−2−イルメチル]チアソリジン−2,4−ジオン)及び、その薬理上許容される塩、
WO94/25448号公報(EP特許第696,585号公報又は米国特許第5,643,931号公報)に記載されたYM−440((Z)−1,4−ビス[4−(3,5−ジオキソ−1,2,4−オキサジアゾリジン−2−イルメチル]フェノキシ]−2−ブテンで)及び、その薬理上許容される塩、
特開平10−87641号公報(米国特許5,948,803号公報)に記載されたKRP−297(5−(2,4−ジオキソチアゾリジン−5−イルメチル)−2−メトキシ−N−(4−トリフルオロメチルベンジル)ベンズアミド)及び及びその薬理上許容される塩、
特開昭64−56675号公報(EP特許第283035号公報又は米国特許第4,897,393号公報)に記載されたT−174(5−[2−(2−ナフチルメチル)−5−ベンズオキサゾリルメチル]−2,4−チアゾリジンジオン)及び薬理上許容される塩(塩酸塩等)、
特開平9−100280号公報(EP公開第787725号公報又は米国特許第5,693,651号公報)に記載されたNC−2100(5−(7−ベンジルオキシ−3−キノイルメチル)−2,4−チアゾリジンジオン)及び、その薬理上許容される塩(塩酸塩等)、
WO99/19313号公報(米国特許6,054,453号公報)に記載されたNN−622((S)−3−[4−[2−(フェノキサジン−10−イル)エトキシ]フェニル]−2−エトキシプロパン酸)及び、その薬理上許容される塩(ナトリウム塩等)、
WO01/21602号公報に記載されたBMS−298585(N−(4−メトキシフェノキシカルボニル)−N−[4−[2−(5−メチル−2−フェニル−4−オキサゾリル)エトキシ]ベンジル]グリシン)であり、及びその薬理上許容される塩(塩酸塩等)、
EP公開第745600号公報に記載された5−[4−(6−メトキシ−1−メチルベンズイミダゾール−2−イルメトキシ)ベンジル]チアゾリジン−2,4−ジオン及びその薬理上許容される塩(塩酸塩等)(ここで、5−[4−(6−メトキシ−1−メチルベンズイミダゾール−2−イルメトキシ)ベンジル]チアゾリジン−2,4−ジオンの塩酸塩を、以下、「化合物A」という。)、
のようなオキサゾール化合物、オキサジアゾリジン化合物、チアゾリジン化合物又はフェノキサジン化合物を挙げることができ、好適には、トログリタゾン、ピオグリタゾン、MCC−555、KRP−297、T−174、NC−2100、化合物Aであり、更に好適には、ピオグリタゾン、ロシグリダゾン又は化合物Aであり、最も好適には、化合物Aである。
1.インスリン抵抗性改善剤によって発現が変動するポリヌクレオチド
本発明における「インスリン抵抗性改善剤によって発現が変動するポリヌクレオチド」とは、ヒト及び/又はヒト以外の哺乳動物の、インスリン抵抗性改善剤添加によって発現が変動するポリヌクレオチドを意味する。本発明における「インスリン抵抗性改善剤添加によって発現が変動するポリヌクレオチド」は具体的には、配列表の配列番号2のヌクレオチド番号1乃至1479に示されるヌクレオチド配列を含むことからなるポリヌクレオチド、配列表の配列番号2のヌクレオチド番号172乃至1431に示されるヌクレオチド配列を含むことからなるポリヌクレオチド、配列表の配列番号6のヌクレオチド番号1乃至1438に示されるヌクレオチド配列を含むことからなるポリヌクレオチド及び配列表の配列番号6のヌクレオチド番号54乃至1316に示されるヌクレオチド配列を含むことからなるポリヌクレオチドからなる群から選択される少なくとも一つのポリヌクレオチドである。また、本発明の「インスリン抵抗性改善剤によって変動するポリヌクレオチド」はGenBankにMus musculus kidney−derived aspartic protease−like protein (Kdap)(アクセッション番号:NM_008437.1)として登録されている。
なお、本発明の属する技術分野における通常の知識を有する者であれば、インスリン抵抗性改善剤添加によって発現が変動する、天然型のポリヌクレオチドのヌクレオチド配列の一部を他のヌクレオチドへの置換やヌクレオチドの欠失、付加などの改変により、インスリン抵抗性改善剤添加によって発現が変動する、天然型のポリヌクレオチドと同等にインスリン抵抗性改善剤添加によって発現が変動するポリヌクレオチドを調製することが可能である。このように天然型のヌクレオチド配列においてヌクレオチドが置換、欠失、もしくは付加したヌクレオチド配列を有し、天然型の「インスリン抵抗性改善剤添加によって発現が変動するポリヌクレオチド」と同等のインスリン抵抗性改善剤添加による発現の変動を示すポリヌクレオチドもまた本発明の「インスリン抵抗性改善剤添加によって発現が変動するポリヌクレオチド」に含まれる。ヌクレオチド配列の改変は、例えば、制限酵素あるいはDNAエキソヌクレアーゼによる欠失導入、部位特異的変異誘発法による変異導入、変異プライマーを用いたPCR法によるヌクレオチド配列の改変、合成変異DNAの直接導入などの方法により行うことができる。
以下、マウス由来の本発明における「インスリン抵抗性改善剤によって発現が変動するポリヌクレオチド」を「マウスKdapポリヌクレオチド」と呼び、該ポリヌクレオチドによってコードされているマウス由来の蛋白質及び該蛋白質と同一の生物活性を有する蛋白質を「マウスKdap蛋白質」と呼ぶ。
1.1 マウスKdapポリヌクレオチドの検出
本発明のマウスKdapポリヌクレオチドは、インスリン抵抗性改善剤投与によって発現量が変動するポリヌクレオチドであり、哺乳動物にインスリン抵抗性改善剤を投与することによって、発現の低下を確認することができる。具体的には糖尿病モデルマウスを用いて、化合物Aを投与する場合について、以下の工程1)乃至2)を順次行なうことによって、特定することができる。
1)化合物Aを投与したKKマウス及び化合物Aを投与しなかったKKマウスの皮下白色脂肪組織から全RNA画分を調製する工程;
2)上記1)に記載の各全RNA画分よりcRNA又はcDNAを調製し、これを利用して化合物A投与と非投与で発現量が著しく異なるポリヌクレオチドを特定する工程。
以下、各工程を順次説明する。
工程1)全RNA画分を調製する工程
本工程で用いられるKKマウスは肥満、高血糖及び/又は高インスリン血症を示す2型糖尿病のモデル動物であり、網膜の肥厚、細動脈瘤、腎糸球体の硬化、脂肪肝、心筋症、石灰沈着、膵島の肥大、膵β細胞の脱顆粒、グリコーゲン沈着、肝と末梢組織でのインスリン感受性の低下などの特長を有し、例えば日本クレアより購入することができる。
KKマウスの白色脂肪組織から全RNA画分を抽出するに際しては、屠殺、採血後に他の組織が混入しないように注意しながら白色脂肪組織を切り出し、該組織をRNA抽出用の溶媒(例えばフェノール等、リボヌクレアーゼを不活性化する作用を有する成分を含むもの)で直接溶解するのが好ましい。又は、該組織の細胞を破壊しないように、スクレーパーで慎重に掻きとるか、もしくはトリプシン等のタンパク質分解酵素を用いて穏やかに組織から細胞を抽出するなどの方法により、細胞を回収した後、速やかにRNA抽出工程に移行する。
RNAの抽出方法としては、チオシアン酸グアニジン・塩化セシウム超遠心法、チオシアン酸グアニジン・ホットフェノール法、グアニジン塩酸法、酸性チオシアン酸グアニジン・フェノール・クロロホルム法(Chomczynski,P. and Sacchi,N., Anal.Biochem. (1987),162,156−159)などを採用しうるが、酸性チオシアン酸グアニジン・フェノール・クロロホルム法が好適である。また、市販のRNA抽出用試薬(例えば、ISOGEN(ニッポンジーン(株)製)、TRIZOL試薬(ギブコ・ビーアールエル社製))等を試薬に添付のプロトコールに従って用いることもできる。
得られた全RNA画分は、必要に応じてさらにmRNAのみに精製して用いるのが好ましい。精製方法は特に限定されないが、真核細胞の細胞質に存在するmRNAの多くは、その3’末端にポリ(A)配列を持つことが知られているので、この特徴を利用して例えばビオチン化したオリゴ(dT)プローブにmRNAを吸着させ、さらにストレプトアビジンを固定化した常磁性粒子に、ビオチン/ストレプトアビジン間の結合を利用してmRNAを捕捉し洗浄操作の後、mRNAを溶出することにより、mRNAを精製することができる。また、オリゴ(dT)セルロースカラムにmRNAを吸着させて、次にこれを溶出して精製する方法も採用し得る。さらにショ糖密度勾配遠心法などにより、mRNAをさらに分画することもできる。ただし、本発明の方法のためには、これらmRNAの精製工程は必須ではなく、検出対象のポリヌクレオチドの発現の検出が可能である限りにおいて、全RNA画分をその後の工程に用いることもできる。
対照として用いられる、化合物Aを投与しなかったマウス白色脂肪細胞由来の全RNA画分は上記と同様に抽出、精製することができる。
工程2) インスリン抵抗性改善剤投与と非投与で発現量が著しく異なるポリヌクレオチドを特定する工程
ポリヌクレオチドの発現量は、上記工程1)で得られた全RNA画分よりcRNA又はcDNAを調製し、これを適当な標識でラベルすることにより、そのシグナル強度として検出することができる。
以下に、ポリヌクレオチド発現量の解析方法として、固相化試料を用いた解析方法と、その他のいくつかの解析方法について説明する。
(1) 固相化試料を用いた解析方法
i)固相化試料
前記固相化試料としては、例えば以下のものが挙げられる。
a)遺伝子チップ:
データベース上のEST(expressed sequence tag)配列又はmRNA配列をもとに合成したアンチセンスオリゴヌクレオチドが固相化された遺伝子チップを用いることができる。このような遺伝子チップとしてはアフィメトリックス(Affymetrix)社製の遺伝子チップ(Lipshutz,R.J. et al., Nature Genet. (1999)21,suppliment,20−24)を用いることができるが、これに限定されず、公知の方法に基づき作製してもよい。遺伝子チップ上に固相化するアンチセンスオリゴヌクレオチドの基となるEST配列又はmRNA配列は、解析対象の動物あるいは動物細胞と、同種の動物由来のものであることが最も好ましい。マウスやマウス由来培養細胞を用いるときはマウス由来のものが望ましく、ヒト検体やヒト由来培養細胞を用いるときはヒト由来のものが望ましい。KKマウス由来のmRNAを解析する場合はマウス由来のものが最も好ましく、例えば、アフィメトリックス社製マウス19Kセット(Murine 19K SET:19KA、19KB、19KC)やマウス11Kセット(Murine 11K SET:11KA、11KB)を用いることができる。ヒト白色脂肪細胞由来のmRNAを解析する場合には、ヒト由来のものが好ましく、例えば、アフィメトリックス社製ヒトU95セット又はU133セットを用いることができる。しかしながら、それらに限定されず、例えば近縁種の動物由来のものも使用可能である。近縁種としては、例えば哺乳類同士を挙げることができ、ヒトとマウス、ヒトとサル等組み合わせを挙げることができるがこれらに限定されない。
b)マウス又はヒト、全RNAあるいは特定の組織から得た全RNAより作製されたcDNA又はRT−PCR産物が固相化された、アレイ又はメンブレンフィルター:
上記cDNA又はRT−PCR産物は、マウス又はヒトのESTデータベース等の配列情報を基に作製されたプライマーで逆転写酵素反応やPCRを実施することによりクローン化されたものである。このcDNAやRT−PCR産物は、あらかじめインスリン抵抗性改善剤を投与したマウスとインスリン抵抗性改善剤を投与しなかったマウスとの間で発現量の異なる全RNAを、サブトラクション法(Diatchenki,L,et al, Proc.Natl.Acad.Sci.USA, (1996)93,6025−6030)、ディファレンシャルディスプレイ法(Liang,P.,et alNucleic Acids Res. ,(1992) 23,3685−3690)などを利用して選択されたものであってもよい。また、アレイやフィルターは市販のもの(例えば、インテリジーン:タカラバイオ社製等)を使用してもよいし、上記cDNAやRT−PCR産物を市販のスポッターで(例えば、GMS417アレイヤー:タカラバイオ社製等)を用いて固相化することにより作製してもよい。
ii)プローブの作製と解析
標識プローブは、特定のmRNAクローンではなく、発現している全てのmRNAを標識したものを用いる。プローブ作製のための出発材料としては精製していないmRNAを用いてもよいが、前述の方法で精製したポリ(A)+RNAを用いることが望ましい。以下に、各種固相化試料を用いた場合の、標識プローブの調製方法と検出、解析方法について説明する。
a)アフィメトリックス社製遺伝子チップ:
アフィメトリクス社製遺伝子チップに添付されたプロトコール(アフィメトリックス社発現解析技術マニュアル)に従ってビオチン標識したcRNAプローブを作製する。次いでアフィメトリックス社製遺伝子チップに添付のプロトコール(発現解析技術マニュアル)に従って、アフィメトリックス社製の解析装置(GeneChip Fluidics Station 400)を用いてハイブリダイゼーション及び解析を行い、アビジンによる発光を検出、解析を行なう。
b)アレイ:
逆転写酵素反応でポリ(A)RNAからcDNAを作製する際に、cDNAの検出ができるようにcDNAを標識しておくことが必要であり、蛍光色素で標識する場合には、蛍光色素(例えばCy3、Cy5など)で標識されたd−UTPなどを加えておくことによりcDNAを蛍光標識する。このとき、被験物質添加細胞由来のポリ(A)RNAと対照細胞由来のポリ(A)RNAをそれぞれ異なる色素で標識しておけば、後のハイブリダイゼーション時には両者を混合して用いることができる。アレイとして例えば、タカラバイオ(株)社の市販アレイを用いる場合、同社のプロトコールに従いハイブリダイゼーション及び洗浄を行って、蛍光シグナル検出機(例えばGMS418アレイスキャナー(タカラバイオ(株)社製)等)で蛍光シグナルを検出後、解析を行う。ただし、使用するアレイとしては市販のものに限定されず、自家製のもの、特別に作製したものでもよい。
c)メンブレンフィルター:
逆転写酵素でポリ(A)RNAからcDNAを作製する際に、放射性同位元素(例えば、d−CTP等を加えることにより標識プローブを調製し、常法によりハイブリダイゼーションを行ない、例えば、市販のフィルター製マイクロアレーである、アトラスシステム(クロンテック社製)を用いてハイブリダイゼーション及び洗浄を行なった後、解析装置(例えば、アトラスイメージ:クロンテック社製等)を用いて検出、解析を行なう。
前記a)乃至c)のいずれに記載の方法も、同一ロットの固相化試料にインスリン抵抗性改善剤を投与したKKマウス白色脂肪細胞由来のプローブ又はヒトの白色脂肪細胞由来のプローブとインスリン抵抗性改善剤を投与しないKKマウス白色脂肪細胞由来のプローブ又はヒトの白色脂肪細胞由来のプローブをそれぞれハイブリダイズさせる。このとき、使用するプローブ以外のハイブリダイゼーション以外の条件は同じとする。蛍光標識プローブを用いる場合には、それぞれのプローブを異なる蛍光色素で標識しておけば一つの固相化試料に両プローブの混合物を一度にハイブリダイズさせて蛍光強度を読み取ることができる(Brown、P.O. et al. Nature Genet., (1999)21, supplement, p.33−37)。
(2)その他の解析方法
上記以外の解析方法として以下の方法等を挙げることができる。
a)サブトラクションクローニング法:
目的の細胞で特異的に発現する遺伝子のcDNAを取得する方法である。目的の細胞からmRNAを精製し、対照の細胞からもRNAを抽出する。目的の細胞より精製したmRNAを鋳型とし、逆転写酵素でcDNAを合成する。合成時に[α−32P]dNTPを加えることでcDNAを標識することができる。標識されたcDNAと鋳型となったmRNAのハイブリッドをアルカリ処理し、mRNAのみを分解し、一本鎖cDNAを精製する。この一本鎖cDNAと対照細胞から抽出したRNAを混合し、DNA−RNAハイブリッドを形成させる。目的とした細胞にのみ発現しているmRNAを鋳型としたcDNAは一本鎖のままである。ハイドロキシアパタイトカラムで二本鎖DNA−RNAハイブリッドと一本鎖cDNAのみを精製する。精製された一本鎖cDNAをプローブとしてライブラリーをスクリーニングし、目的とする細胞で特異的に発現している遺伝子のクローンを取得することができる(実験医学別冊 新 遺伝子工学ハンドブック、羊土社刊(1996) p.32−35参照)。
具体的にはインスリン抵抗性改善剤を投与したマウス又はヒト白色脂肪細胞とインスリン抵抗性改善剤を投与しないマウス又はヒト白色脂肪細胞のそれぞれからmRNA(又は全RNA)を精製し、インスリン抵抗性改善剤を添加した培地で培養した細胞から精製したmRNAを鋳型とし、逆転写酵素でcDNAを合成する。合成時に[α−32P]dNTPを加えることでcDNAを標識する。標識したcDNAと鋳型となったmRNAのDNA−RNAハイブリッドをアルカリ高温処理しmRNAのみを分解し、一本鎖cDNAを精製する。この一本鎖cDNAとインスリン抵抗性改善剤を添加しないで培養した細胞から抽出したRNAを混合し、二本鎖DNA−RNAハイブリッドを形成させる。このときインスリン抵抗性改善剤を投与したマウス又はヒト由来の細胞で特異的に発現するmRNAを鋳型としたcDNAは一本鎖のままである。ハイドロキシアパタイトカラムで二本鎖DNA−RNAハイブリッドと一本鎖cDNAとを分離し、一本鎖cDNAのみを精製する。このステップを繰り返すことでインスリン抵抗性改善剤を投与したマウス又はヒト由来の細胞で特異的なcDNAを濃縮することができる。濃縮された特異的cDNAは放射性同位元素で標識されているので、ライブラリーをスクリーニングするプローブとして使用できる。
b)ディファレンシャルディスプレー法:
複数の細胞間あるいは同一細胞でも特定の誘導処理をしたものとしないものとの間で、特異的に発現している遺伝子を比較して同定する実験法である。例えば、以下のように実施できる。インスリン抵抗性改善剤を投与したKKマウスと投与しなかったKKマウスのそれぞれの白色脂肪細胞から全RNAを精製する。オリゴ(dT12)の3’末端に更に2ヌクレオチド付加したプライマー(dT12MN:M=A、GあるいはC、N=A、G、CあるいはT)で逆転写し、新たに合成されたcDNAを基に、任意の配列を持ったプライマー(10量体程度)を使用してPCRを行なう。得られたPCR産物をゲル電気泳動し、ゲル上に展開(ディスプレー)される全RNAの発現パターン(フィンガープリント)を比較解析し、インスリン抵抗性改善剤添加細胞で特異的に発現している遺伝子を選択し、そのcDNA断片を単離することができる(基礎生化学実験法4 核酸・遺伝子実験 II.応用編、東京化学同人(2001), p125−128)。
c)レポーター遺伝子を使用した方法:
インスリン抵抗性改善剤によって発現が変動するポリヌクレオチドのプロモーター支配下に、該プロモーター活性の検出を可能にする遺伝子(以下「レポーター遺伝子」という。)を利用して、間接的にインスリン抵抗性改善剤によって発現が変動するポリヌクレオチドやインスリン抵抗性改善剤によって発現が変動する蛋白質の発現を検出することもできる。以下、レポーター遺伝子を利用した検出方法について説明する。
c−1)レポーター遺伝子

レポーター遺伝子は、宿主細胞が本試験方法の一連の過程において産生し得る他のいかなる蛋白質とも特異的に区別可能な、レポーター蛋白質をコードするものであればよい。好ましくは、形質転換前の細胞が該レポーター蛋白質と同一又は類似の蛋白質をコードする遺伝子を持たないようなものがよい。例えば、レポーター蛋白質が該細胞に対して毒性を有するようなものや、該細胞が感受性を有する抗生物質の耐性を付与するものであるような場合でも、レポーター遺伝子の発現の有無は細胞の生存率で判定することが可能である。しかしながら、本発明で用いられるレポーター遺伝子としてより好ましいものは、発現量を特異的かつ定量的に検出することができる(例えば、該レポーター遺伝子にコードされる蛋白質に対する特異的抗体が取得されているような)構造遺伝子である。より好ましくは、外来の基質と特異的に反応することにより定量的測定が容易な代謝産物を生じるような酵素等をコードする遺伝子である。そのようなレポーター遺伝子としては、例えば、以下の蛋白質をコードする遺伝子を例示することができるが、本発明はそれらに限定されない。
c−1−1)クロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ:
クロラムフェニコールにアセチル基を付加する酵素で、いわゆるCATアッセイ等で検出することができる。プロモーターを組み込むだけでレポーターアッセイ用のベクターを調製できるベクターとして、pCAT3−Basicベクター(プロメガ社製)が市販されている。
c−1−2)ホタルルシフェラーゼ:
ルシフェリンを代謝した際に生じる生物発光を測定することにより定量できる。レポーターアッセイ用のベクターとしては、pGL3−Basicベクター(プロメガ社製)が市販されている。
c−1−3)β−ガラクトシダーゼ:
呈色反応、蛍光又は化学発光でそれぞれ測定可能な基質がある。レポーターアッセイ用のベクターとしては、pβgal−Basic(プロメガ社製)が市販されている。
c−1−4)分泌型アルカリホスファターゼ:
呈色反応、生物発光又は化学発光でそれぞれ測定可能な基質がある。レポーターアッセイ用のベクターとしては、pSEAP2−Basic(クロンテック社製)が市販されている。
c−1−6)緑色蛍光蛋白質(green−fluorescent protein):
酵素ではないが、自らが蛍光を発するので直接定量できる。同じくレポーターアッセイ用のベクターとしてpEGFP−1(クロンテック社製)が市販されている。
c−2)レポーター遺伝子の導入
公知の方法に従い、レポーター遺伝子発現プラスミドと、インスリン抵抗性改善剤によって発現が変動するポリヌクレオチドを哺乳類細胞で発現可能にした組換えベクターを作製し、これらを細胞に同時トランスフェクションする。ベクターとしては、pCR3.1(インビトロジェン(Invitrogen)社製)、pCMV−Script(ストラタジーン(Stratagene)社製)等を好適に用いることができるが、これらに限定されない。
細胞に発現プラスミドを導入する方法としては、DEAE−デキストラン法(Luthman,H. and Magnusson,G. Nucleic Acids Res., (1983) 11, p.1295−1308)、リン酸カルシウム−DNA共沈殿法(Graham,F.L. and van der Eb,A.J., Virology (1973)52,456−457)、電気パルス穿孔法(Neumann,E.et al., EMBO J. (1982) 1, p.841−845)、リポフェクション法(Lopata et al. Nucl.Acids Res. (1984)12, p.5707−5717、Sussman and Milman, Mol.Cell.Biol. (1984)4, p.1641−1643)等を挙げることができるが、これらに限定されず、本発明の属する技術分野において汎用される任意の方法を採用することができる。ただし、細胞がいわゆる浮遊細胞である場合は、リン酸カルシウム−DNA共沈殿法以外の方法を用いることが好ましい。いずれの方法においても、用いる細胞に応じて、至適化されたトランスフェクション条件を用いることが必要である。
c−3)評価
かくして、インスリン抵抗性改善剤によって発現が変動するポリヌクレオチドの発現ベクターと、レポーター発現ベクターを同時トランスフェクションした細胞を培養すると、インスリン抵抗性改善剤感受性ポリヌクレオチドの発現依存的にレポーター遺伝子の転写が促進される。したがって、レポーター遺伝子の発現が可能な条件下において、培地中に任意の被検物質を添加した場合と添加しない場合でのレポーター遺伝子の発現量変化をみれば、インスリン抵抗性改善剤感受性ポリヌクレオチドの発現量が評価できる。ここで、「レポーター遺伝子の発現が可能な条件」とは、レポーター発現ベクターによってトランスフェクトされた細胞が生存して、レポーター遺伝子の転写産物(レポーター蛋白質)の生産が可能な条件であればよい。好ましくは、使用される細胞株に適合した培地(ウシ胎児血清等の血清成分を添加してもよい)で、4乃至6%(最も好適には5%)の炭酸ガスを含む空気存在下、36乃至38℃(最も好適には37℃)で2乃至3日間(最も好適には2日間)培養する。 (3)評価・判定
上記解析の結果、インスリン抵抗性改善剤を投与したKKマウス由来白色脂肪細胞とインスリン抵抗性改善剤を投与しないKKマウス由来白色脂肪細胞又は、インスリン抵抗性改善剤を投与したヒト白色脂肪細胞とインスリン抵抗性改善剤を投与しなかったヒト白色脂肪細胞で、発現量が著しく異なるポリヌクレオチドを、インスリン抵抗性改善剤感受性ポリヌクレオチドとして特定することができる。そしてこの特定されたポリヌクレオチドを以下、「インスリン抵抗性改善剤感受性ポリヌクレオチド」とする。ここで、発現量が「著しく異なる」とは、例えば、アフィメトリックス社の遺伝子チップを用いて、アフィメトリックス社のmicroarray Suite Ver.3.0を用いて解析した場合、インスリン抵抗性改善剤を添加して培養した細胞由来のポリヌクレオチドのAverage difference値がインスリン抵抗性改善剤無添加の場合に比べて2倍以上増加又は減少している場合をいう。
こうして発現量が著しく異なる遺伝子として特定されたポリヌクレオチドとしては具体的には配列表の配列番号2のヌクレオチド番号1乃至1479に示されるヌクレオチド配列を含むことからなるポリヌクレオチド、配列表の配列番号2のヌクレオチド番号172乃至1431からなるヌクレオチド配列を含むことからなるポリヌクレオチドを挙げることができる。配列表の配列番号2のヌクレオチド番号1乃至1479からなるヌクレオチド配列は上記方法によって特定されたポリヌクレオチドのcDNAの配列を示し、このうち、配列表の配列番号2のヌクレオチド番号172乃至1431からなるヌクレオチド配列はオープンリーディングフレーム(ORF)を示す。またこうして特定されたポリヌクレオチドはGenBankにMus musculus kidney−derived aspartic protease−like protein (Kdap)(アクセッション番号:NM_008437.1)として登録されている。そして、このように特定されたマウス由来の「インスリン抵抗性改善剤感受性ポリヌクレオチド」を前述のように、「マウスKdapポリヌクレオチド」という。
1.2 相同性ポリヌクレオチドの検索
1.1の方法によって見出された「マウスKdapポリヌクレオチド」を、公開の、及び/又は未公開の核酸及び/又は蛋白質のデータベースとの間で相同性検索を行うことにより、同様の機能を有すると推定できるポリヌクレオチドを同定することができる。相同性検索によって同定されたポリヌクレオチドについても上記方法により、インスリン抵抗性改善剤投与による特異的発現を調べることでポリヌクレオチドの機能を解明することができる。相同性ポリヌクレオチドは同種生物間に限らず、他種生物間でも検索することができる。相同性ポリヌクレオチドの検索はGenBankなどのデータベースに登録されているデータに対してBLAST等の検索プログラムを用いて行なうことができるが、その他、市販の検索ソフトを用いても検索することができる。このようにしてGenBankに対して相同性検索を行なうと、GenBankアミノ酸データベース上のヒト由来のpronapsin A(アクセッション番号:NP_004842.1)が、71%の相同性を有する蛋白質として選択される。また、このようなポリヌクレオチドとして、例えば、配列表の配列番号6のヌクレオチド番号54乃至1316に示されるヌクレオチド配列を含むことからなるポリヌクレオチド又は配列表の配列番号6のヌクレオチド番号1乃至1438に示されるヌクレオチド配列を含むことからなるポリヌクレオチドを挙げることができる。配列表の配列番号6のヌクレオチド番号1乃至1438からなるヌクレオチド配列はcDNAの配列を示し、このうち、配列番号54乃至1316からなるヌクレオチド配列はオープンリーディングフレームの領域を示す。この配列を有するポリヌクレオチドはヒト全長cDNAライブラリーを用いて適当なPCRプライマーを用いたPCR反応を行なうことにより取得することができる。以下、ヒト由来のpronapsin Aポリヌクレオチドを「ヒトpronapsin Aポリヌクレオチド」という。
1.3 「インスリン抵抗性改善剤感受性ポリヌクレオチド」
上記1.1及び上記1.2において特定されたポリヌクレオチドの他に、それぞれのポリヌクレオチドのヌクレオチド配列と相補的なヌクレオチド配列からなるポリヌクレオチドとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、インスリン抵抗性改善剤によって発現量が著しく変化するポリヌクレオチドも本発明のポリヌクレオチドに含めることができる。このようにして特定されたポリヌクレオチドも「インスリン抵抗性改善剤感受性ポリヌクレオチド」に含まれる。すなわち、本発明の「インスリン抵抗性改善剤感受性ポリヌクレオチド」は、以下の1)乃至5)のいずれか一つに記載のポリヌクレオチドである。
1)配列表の配列番号2のヌクレオチド番号1乃至1479に示されるヌクレオチド配列を含むことからなるポリヌクレオチド;
2)配列表の配列番号2のヌクレオチド番号172乃至1431に示されるヌクレオチド配列を含むことからなるポリヌクレオチド;
3)配列表の配列番号6のヌクレオチド番号1乃至1438に示されるヌクレオチド配列を含むことからなるポリヌクレオチド;
4)配列表の配列番号6のヌクレオチド番号54乃至1316に示されるヌクレオチド配列を含むことからなるポリヌクレオチド;
5)上記1)乃至4)からなる群から選択される少なくとも一つに記載のポリヌクレオチドのヌクレオチド配列と相補的なヌクレオチド配列からなるポリヌクレオチドとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、グリコーゲン濃度低下作用を有する蛋白質をコードするポリヌクレオチド。
なお、本発明における「グリコーゲン濃度低下作用を有する蛋白質」とは、インスリン存在下及び/又は非存在下において、初代肝細胞と接触させると、該細胞中のグリコーゲン濃度をコントロールに比べて低くする作用を有する蛋白質をいう。
1.4 「インスリン抵抗性改善剤感受性ポリヌクレオチド」の検定
上記のようにして特定された「インスリン抵抗性改善剤感受性ポリヌクレオチド」は、KKマウス由来白色脂肪細胞においてインスリン抵抗性改善剤投与によって、インスリン抵抗性改善剤を投与投与しない場合に比べ発現量が著しく変化しており、インスリン抵抗性改善剤によって引き起こされる糖代謝及び/又は脂質代謝の変化に影響を与えるポリヌクレオチドであり、インスリン抵抗性改善剤をはじめとした糖代謝及び/又は脂質代謝に影響を及ぼす物質のスクリーニングに有効である。
まず、特定されたポリヌクレオチド断片をプローブとして、KKマウス又はヒトcDNAライブラリーから、コロニーハイブリダイゼーション法等、公知の方法に従い、完全長cDNAを取得する。この完全長cDNAをマウス又はヒト細胞に導入して高発現させ、糖代謝及び/又は脂質代謝に影響が生じるか否かを検討する。
cDNAを動物個体内で発現させるためには、得られた完全長cDNAをウイルスベクターに組み込み、動物に投与する方法が挙げられる。ウイルスベクターによる遺伝子導入方法としては例えば、レトロウイルス、アデノウイルス、アデノ関連ウイルス、ヘルペスウイルス、ワクシニアウイルス、ポックスウイルス、ポリオウイルス等のDNAウイルス、又はRNAウイルスにcDNAを組み込んで導入する方法が挙げられる。なかでも、レトロウイルス、アデノウイルス、アデノ関連ウイルス、ワクシニアウイルスを用いた方法が好ましい。
非ウイルス性の遺伝子導入方法としては、発現プラスミドを直接筋肉内に投与する方法(DNAワクチン法)、リポソーム法、リポフェクション法、マイクロインジェクション法、リン酸カルシウム法、エレクトロポレーション法等が挙げられ、なかでも、DNAワクチン法、リポソーム法が好ましい。
また、培養細胞に対して、完全長cDNAをヒト、マウス、ラット等由来の筋肉細胞、肝細胞、脂肪細胞、あるいは筋肉細胞、肝細胞、脂肪細胞に分化する細胞等のインスリン感受性を有する細胞へ導入し、高発現させ、各標的細胞の有する機能、具体的には、糖や脂質の産生や取り込み、あるいはグリコーゲンの蓄積等の糖脂質代謝を調節する機能にどの様な影響が現れるかを検討することができる。逆に、試験する遺伝子の全RNAに対するアンチセンス核酸を、細胞に導入し、各標的細胞の機能にどの様な影響が出るかを調べることもできる。
完全長cDNAを動物又は細胞に導入するにあたっては、適当なプロモーター及び形質発現に関わる配列を含むベクターに該cDNAを組み込み、該ベクターで宿主細胞を形質転換させる。脊椎動物細胞の発現プロモーターとしては、通常発現しようとする遺伝子の上流に位置するプロモーター、RNAのスプライス部位、ポリアデニル化部位、及び転写終結配列等を有するものを使用でき、さらにこれは必要により複製起点を有してもよい。該発現ベクターの例としては、SV40の初期プロモーターを有するpSV2dhfr(Subramani,S. et al., Mol.Cell.Biol.,(1981)1, p.854−864)、レトロウイルスベクターpLNCX、pLNSX、pLXIN、pSIR(クロンテック(Clontech)社製)、コスミドベクターpAxCw(タカラバイオ社製)等が挙げられるが、これに限定されない。該発現ベクターは、ジエチルアミノエチル(DEAE)−デキストラン法(Luthman,H.and Magnusson,G., Nucleic Acids Res. (1983) 11,p.1295−1308)、リン酸カルシウム−DNA共沈殿法(Graham,F.L.and van der Eb,A.J. Virology,(1973) 52, p.456−457)、及び電気パルス穿孔法(Neumann, E.et al., EMBO J.(1982) 1, p.841−845)などによりサルの細胞であるCOS細胞(Gluzman,Y. Cell(1981) 23,p.175−182,ATCC:CRL−1650)やチャイニーズ・ハムスター卵巣細胞(CHO細胞、ATCC:CCL−61)のジヒドロ葉酸還元酵素欠損株(Urlaub,G. and Chasin, L.A. Proc. Natl. Acad. Sci. USA(1980) 77, p.4126−4220)、ヒト胎児腎臓由来293細胞(ATCC:CRL−1573)等に取り込ませることができるが、これらに限定されない。かくして所望の形質転換体を得ることができる。
また、遺伝子操作により、正常動物において、目的とする遺伝子が高発現するようにトランスジェニック動物を作製し、糖代謝及び/又は脂質代謝を調節する機能にどの様な影響が現れるかを検討することも可能である。逆に、肥満や糖尿病といった症状を呈する動物において、対象とする遺伝子を破壊したノックアウト動物を作製し、その病態が改善・治療されるか否かを検討することも可能である。前記トランスジェニック動物は、動物から受精卵を取得し、遺伝子導入の後、偽妊娠動物に移植し、発生させることにより得ることができ、その手順は公知の方法(発生工学実験マニュアル(野村達次 監修、勝木元也 編、1987年刊)、特開平5−48093号等参照)に従えばよい。具体的には、例えば、マウスの場合にはまずメスマウスに排卵誘起剤を投与後、同系統のオスと交配し、翌日メスマウスの卵管より前核受精卵を採取する。次いで、導入するDNA断片溶液を微小ガラス管を用いて受精卵の前核に注入する。なお、導入する遺伝子を動物細胞内で発現させるためのプロモーターやエンハンサー等の調節遺伝子は、導入された動物の細胞内で機能するものであれば特に限定されない。DNAを注入した受精卵は、偽妊娠仮親メスマウス(Slc:ICR等)の卵管に移植し、約20日後に自然分娩又は帝王切開により出生させる。
こうして得られた動物が、導入遺伝子を保持していることを確認する方法としては、例えば、前記動物の尾等からDNAを抽出し、該DNAをこれに特異的なセンス及びアンチセンスプライマーを用いてPCR増幅する方法、該DNAを制限酵素で消化後、ゲル電気泳動し、ゲル中のDNAをナイロン膜等にブロッティングした後、標識した導入遺伝子の全部又は一部をプローブとしてサザンブロット解析を行なう方法等を挙げることができる。
1.5 「インスリン抵抗性改善剤感受性蛋白質」によるグリコーゲン生合成能低下作用
本発明の「インスリン抵抗性改善剤感受性蛋白質」とグルタチオンS−トランスフェラーゼ(GST)との融合タンパク質で処理したラット初代肝細胞では、コントロールとしたGSTで処理した細胞に比べ、インスリンを添加した場合もインスリンを添加しない場合もともに、グリコーゲン濃度の低下が観察され、「インスリン抵抗性改善剤感受性蛋白質」はグリコーゲン蓄積反応の抑制及び/又はインスリン刺激によるグリコーゲン合成の抑制活性を示す蛋白質であると考えられる。特に、コントロールで観察されるインスリン依存的なグリコーゲン合成が「インスリン抵抗性改善剤感受性蛋白質」とグルタチオンS−トランスフェラーゼ(GST)との融合タンパク質ではほとんどみられなくなることから、本発明における、「インスリン抵抗性改善剤感受性蛋白質」は肝細胞のインスリン感受性を低下させ、インスリン受容体活性化よりグリコーゲン合成に至る反応のうち一つ以上の段階を抑制及び/又は一つ以上の段階の活性を低下させることにより、インスリン依存的なグリコーゲン合成酵素系の働きを低下させていると考えられる。なお、本発明における、グリコーゲン濃度の低下とはコントロールに比べグリコーゲン濃度が10%以上、好ましくは30%以上より好ましくは50以上低下していることをいう。
本発明の「インスリン抵抗性改善剤感受性蛋白質」をコードする配列表の配列番号2のヌクレオチド番号172乃至1431に示されるヌクレオチド配列を含むことからなるポリヌクレオチドをアデノウイルスベクターpAxCw(タカラバイオ社製のアデノウイルス・エクスプレッション・ベクター・キットに付属。)に組み込んで、アデノウイルスを作製し、野生型マウス(例えば、C57BL/6Jマウス(日本クレア社より購入))に接種し、該cDNAをマウスで発現させる。該cDNAを発現させたマウスと該cDNAを発現させなかったマウスについて血中のグルコース濃度、インスリン濃度、肝臓中のグリコーゲン濃度を測定し、両者の差を解析することによって、「インスリン抵抗性改善剤感受性ポリヌクレオチド」の発現産物である、「インスリン抵抗性改善剤感受性蛋白質」の作用を調べることができる。本発明の「インスリン抵抗性改善剤感受性蛋白質」を発現したマウスでは、肝臓内グリコーゲン量、血糖値やインスリン値の変化が観察され、特に肝臓内グリコーゲン量の減少、血糖値やインスリン値の上昇が観察される可能性が考えられる。
2.「インスリン抵抗性改善剤感受性蛋白質」
本発明における「インスリン抵抗性改善剤感受性蛋白質」は、糖代謝及び/又は脂質代謝に影響する、本発明によって得られた蛋白質を意味する。「インスリン抵抗性改善剤感受性蛋白質を含有する組成物」とは上記蛋白質を含んでいる物質を意味する。本発明における「インスリン抵抗性改善剤感受性蛋白質」はKKマウス由来白色脂肪細胞において、「インスリン抵抗性改善剤」を投与すると投与しない場合に比べ発現量が著しく低下しており、糖代謝及び/又は脂質代謝に影響を与える遺伝子を検出するために有効であり、本発明の「インスリン抵抗性改善剤感受性ポリヌクレオチド」によってコードされる蛋白質である。「インスリン抵抗性改善剤感受性蛋白質」は具体的には以下の1)乃至4)のいずれか一つに記載の蛋白質である。
1)配列表の配列番号3のアミノ酸番号1乃至419に示されるアミノ酸配列を含むことからなる蛋白質;
2)配列表の配列番号7のアミノ酸番号1乃至420に示されるアミノ酸配列を含むことからなる蛋白質;
3)上記1)又は2)に記載の蛋白質のアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなり、かつ、グリコーゲン濃度低下作用を有する蛋白質。
3.「インスリン抵抗性改善剤感受性蛋白質」の生産
本発明の「インスリン抵抗性改善剤感受性蛋白質」はin vitroにて合成する、あるいは遺伝子操作により宿主細胞に産生させることによって生産することができる。具体的には、本発明の「インスリン抵抗性改善剤感受性ポリヌクレオチド」を発現可能なベクターに組み込んだ後、転写と翻訳に必要な酵素、基質及びエネルギー物質を含む溶液中で合成する、あるいは他の原核生物、又は真核生物の宿主細胞を形質転換させることによって該ポリヌクレオチドを発現させることにより、「インスリン抵抗性改善剤感受性蛋白質」を得ることが出来る。
蛋白質のin vitro合成としては、例えばロシュ・ダイアグノスティックス(Roche diagnostics)社製のラピッドトランスレーションシステム(RTS)が挙げられるが、これに限定されない。RTSを用いる場合を例に挙げると、目的の遺伝子をT7プロモーターにより制御される発現ベクターにクローニングし、これをin vitroの反応系に添加すると、最初に鋳型DNAよりT7RNAポリメラーゼによりmRNAが転写され、その後大腸菌溶解液中のリボソーム等により翻訳が行われ、目的のポリペプチドが反応液中に合成される(Biochemica(2001) 1, p.20−23、Biochemica (2001), 2, p.28−29)。
原核細胞の宿主としては、例えば、大腸菌(Escherichia coli)や枯草菌(Bacillus subtilis)などが挙げられる。目的の遺伝子をこれらの宿主細胞内で形質転換させるには、宿主と適合し得る種由来のレプリコンすなわち複製起点と、調節配列を含んでいるプラスミドベクターで宿主細胞を形質転換させる。また、ベクターとしては、形質転換細胞に表現形質(表現型)の選択性を付与することができる配列を有するものが好ましい。
例えば、大腸菌としてはK12株などがよく用いられ、ベクターとしては、一般にpBR322やpUC系のプラスミドが用いられるが、これらに限定されず、公知の各種菌株、及びベクターがいずれも使用できる。
プロモーターとしては、大腸菌においては、トリプトファン(trp)プロモーター、ラクトース(lac)プロモーター、トリプトファン・ラクトース(tac)プロモーター、リポプロテイン(lpp)プロモーター、ポリペプチド鎖伸張因子Tu(tufB)プロモーター等が挙げられ、どのプロモーターも目的のポリペプチドの産生に使用することができる。
枯草菌としては、例えば207−25株が好ましく、ベクターとしてはpTUB228(Ohmura,K.et al., J.Biochem. (1984) 95, p.87−93)などが用いられるが、これに限定されるものではない。枯草菌のα−アミラーゼのシグナルペプチド配列をコードするDNA配列を連結することにより、菌体外での分泌発現も可能となる。
真核細胞の宿主細胞には、脊椎動物、昆虫、酵母などの細胞が含まれ、脊椎動物細胞としては、例えば、サルの細胞であるCOS細胞(Gluzman,Y.(1981)Cell 23,175−182、ATCC:CRL−1650)やチャイニーズ・ハムスター卵巣細胞(CHO細胞、ATCC:CCL−61)のジヒドロ葉酸還元酵素欠損株(Urlaub,G. and Chasin,L.A., Proc. Natl.Acad.Sci.USA (1980) 77, p.4126−4220)等がよく用いられているが、これらに限定されない。
脊椎動物細胞の発現プロモーターとしては、通常発現しようとする遺伝子の上流に位置するプロモーター、RNAのスプライス部位、ポリアデニル化部位、及び転写終結配列等を有するものを使用でき、さらにこれは必要により複製起点を有してもよい。該発現ベクターの例としては、サイトメガロウイルス初期プロモーターを有するpCR3.1(インビトロジェン社製)、SV40の初期プロモーターを有するpSV2dhfr(Subramani,S.et al., Mol.Cell.Biol.(1981) 1, p.854−864)等が挙げられるが、これに限定されない。
宿主細胞として、COS細胞を用いる場合を例に挙げると、発現ベクターとしては、SV40複製起点を有し、COS細胞において自立増殖が可能であり、さらに、転写プロモーター、転写終結シグナル、及びRNAスプライス部位を備えたものを用いることができる。該発現ベクターは、ジエチルアミノエチル(DEAE)−デキストラン法(Luthman,H. and Magnusson,G., Nucleic Acids Res. (1983) 11, p.1295−1308)、リン酸カルシウム−DNA共沈殿法(Graham, F.L. and van der Eb, A. J., Virology (1973) 52, p.456−457)、及び電気パルス穿孔法(Neumann, E.et al., EMBO J.(1982) 1, 841−845)などによりCOS細胞に取り込ませることができ、かくして所望の形質転換細胞を得ることができる。また、宿主細胞としてCHO細胞を用いる場合には、発現ベクターと共に、抗生物質G418耐性マーカーとして機能するneo遺伝子を発現し得るベクター、例えばpRSVneo(Sambrook,J.et al: “Molecular Cloning A Laboratory Manual” Cold Spring Harbor Laboratory, NY.(1989))やpSV2neo(Southern,P.J. and Berg,P., J.Mol.Appl.Genet. (1982) 1, p.327−341)などをコ・トランスフェクトし、G418耐性のコロニーを選択することにより、目的のポリペプチドを安定に産生する形質転換細胞を得ることができる。
昆虫細胞を宿主細胞として用いる場合には、鱗翅類ヤガ科のSpodoptera frugiperdaの卵巣細胞由来株化細胞(Sf−9又はSf−21)やTrichoplusia niの卵細胞由来High Five細胞(Wickham,T.J.et al, Biotechnol.Prog. (1992) I: 391−396)などが宿主細胞としてよく用いられ、バキュロウイルストランスファーベクターとしてはオートグラファ核多角体ウイルス(AcNPV)のポリヘドリンタンパク質のプロモーターを利用したpVL1392/1393がよく用いられる(Kidd,I.M.and V.C.Emery,“The use of baculoviruses as expression vectors.”, Applied Biochemistry and Biotechnology (1993) 42, p.137−159)。この他にも、バキュロウイルスのP10や同塩基性タンパク質のプロモーターを利用したベクターも使用できる。さらに、AcNPVのエンベロープ表面タンパク質GP67の分泌シグナル配列を目的タンパク質のN末端側に繋げることにより、組換えタンパク質を分泌タンパク質として発現させることも可能である(Zhe−mei Wang,et al., Biol.Chem., (1998)379, p.167−174)。
真核微生物を宿主細胞とした発現系としては、酵母が一般によく知られており、その中でもサッカロミセス属酵母、例えばパン酵母Saccharomyces cerevisiaeや石油酵母Pichia pastorisが好ましい。該酵母などの真核微生物の発現ベクターとしては、例えば、アルコール脱水素酵素遺伝子のプロモーター(Bennetzen,J.L.and Hall,B.D., J.Biol.Chem. (1982) 257, p.3018−3025)や酸性フォスファターゼ遺伝子のプロモーター(Miyanohara,A. et al. Proc.Natl.Acad.Sci.USA (1983) 80, p.1−5)などを好ましく利用できる。また、分泌型タンパク質として発現させる場合には、分泌シグナル配列と宿主細胞の持つ内在性プロテアーゼあるいは既知のプロテアーゼの切断部位をN末端側に持つ組換え体として発現することも可能である。例えば、トリプシン型セリンプロテアーゼのヒトマスト細胞トリプターゼを石油酵母で発現させた系では、N末端側に酵母のαファクターの分泌シグナル配列と石油酵母の持つKEX2プロテアーゼの切断部位をつなぎ発現させることにより、活性型トリプターゼが培地中に分泌されることが知られている(Andrew,L.Niles,et al., Biotechnol.Appl.Biochem. (1998) 28, p.125−131)。
上記のようにして得られる形質転換体は、常法に従い培養することができ、該培養により細胞内、又は細胞外に目的のポリペプチドが産生される。該培養に用いられる培地としては、採用した宿主細胞に応じて慣用される各種のものを適宜選択でき、例えば、上記COS細胞であれば、RPMI1640培地やダルベッコ変法イーグル培地(以下「DMEM」という)などの培地に、必要に応じウシ胎児血清などの血清成分を添加したものを使用できる。
上記培養により、形質転換体の細胞内又は細胞外に産生される組換えタンパク質は、該タンパク質の物理的性質や化学的性質などを利用した各種の公知の分離操作法により分離・精製することができる。該方法としては、具体的には例えば、通常のタンパク沈殿剤による処理、限外濾過、分子ふるいクロマトグラフィー(ゲル濾過)、吸着クロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー、アフィニティークロマトグラフィー、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)などの各種液体クロマトグラフィー、透析法、これらの組合せなどを例示できる。また、発現させる組換えタンパク質に6残基からなるヒスチジンを繋げることにより、ニッケルアフィニティーカラムで効率的に精製することができる。上記方法を組み合わせることにより容易に高収率、高純度で本発明の蛋白質を大量に製造できる。また、精製した蛋白質の分子量は質量分析器、SDS−PAGE等通常の方法で決定することができる。本発明の「インスリン抵抗性改善剤感受性蛋白質」には、スプライシングバリアントが存在する可能性もあるが、本発明の「インスリン抵抗性改善剤感受性蛋白質」と同一の生物活性(血中グルコース濃度の低下作用)を有する限りにおいて本発明の「インスリン抵抗性改善剤感受性蛋白質」に含まれる。
このようにして得られた本発明の「インスリン抵抗性改善剤感受性蛋白質」は、インスリン抵抗性改善剤を投与すると発現量が減少する蛋白質であり、また、「インスリン抵抗性改善剤感受性蛋白質」を添加した培地で培養したラット初代肝細胞では、細胞中のグリコーゲン濃度がコントロールに比べて低下し、インスリン刺激による、グリコーゲンの合成もコントロールに比べて抑制される。したがって、本発明の「インスリン抵抗性改善剤感受性蛋白質」は糖代謝異常及び/又は脂質代謝異常にに関与する蛋白質であると考えられる。
4.糖代謝異常及び/又は脂質代謝異常の検出方法
本発明の「インスリン抵抗性改善剤感受性ポリヌクレオチド」及び「インスリン抵抗性改善剤感受性蛋白質」は、血中グルコース濃度が正常動物に比べて高くなる糖代謝異常及び/又は脂質代謝異常を有する動物では、糖代謝異常及び/又は脂質代謝異常を有さない動物に比較して発現量が有意に増加している。例えば、糖尿病モデル動物であるKKマウスにインスリン抵抗性改善剤である化合物Aを投与すると、投与8日後では、血中グルコース濃度とともに血中中性脂質濃度も低下し、本発明の「インスリン抵抗性改善剤感受性ポリヌクレオチド」及び「インスリン抵抗性改善剤感受性蛋白質」の発現量はインスリン抵抗性改善剤を投与しない場合に比べ有意に低下する。したがって、検体中の該「インスリン抵抗性改善剤感受性ポリヌクレオチド」又は「インスリン抵抗性改善剤感受性蛋白質」の発現量を定量することにより、糖代謝異常を判定し、インスリン抵抗性異常で引き起こされる2型糖尿病等の疾患の診断に利用することが可能である。
また、糖尿病モデル動物にインスリン抵抗性改善剤を投与すると、血中の中性脂質濃度も低下するので、脂質代謝異常の診断にも利用することができる。
なお、「検体」とは、被験者や臨床検体、被験動物等から得られた、血液、体液、肝臓、筋肉、脂肪組織等の組織又は排泄物等の試料を意味するが、本発明においては血液、肝臓又は脂肪組織が好ましい。
例えば、被験者から採取した検体中での「インスリン抵抗性改善剤感受性ポリヌクレオチド」又は「インスリン抵抗性改善剤感受性蛋白質」の発現量が正常人から採取した検体に比べ高い場合、糖代謝異常及び/又は脂質代謝異常の病態を有するか、糖代謝異常及び/又は脂質代謝異常になる可能性が高いと判定される。また、個々の患者について、該「インスリン抵抗性改善剤感受性ポリヌクレオチド」や「インスリン抵抗性改善剤感受性蛋白質」の発現変動を経時的に観察すれば、該患者の予後を予測することもできる。
本発明において、正常人及び正常動物とは、糖代謝異常及び脂質代謝異常を有さない人及び動物を意味する。正常人あるいは正常動物であるか否かは、血糖値及び血中中性脂質(トリグリセライド)濃度を測定し、あらかじめ正常人の値として決められている数値範囲に入るか否かで判定することができる。血糖値及び血中中性脂質濃度は通常の方法によって測定できるが、例えば、血糖値はグルコローダーGXT(A&T社製)、トリグリセライド濃度はトリグリセライドE−テストワコー(和光純薬社製)を用いて測定することができる。本発明の「インスリン抵抗性改善剤感受性ポリヌクレオチド」又は「インスリン抵抗性改善剤感受性蛋白質の発現量」と、正常人又は正常動物の血糖値及び血中中性脂質濃度の相関をあらかじめ調べておくことによって、被験者又は被験動物から採取した検体における本発明の「インスリン抵抗性改善剤感受性ポリヌクレオチド」又は「インスリン抵抗性改善剤感受性蛋白質」の発現量を測定することによって被験者又は被験動物が、正常人又は正常動物であるか否かを判定することができる。
4.1 「インスリン抵抗性改善剤感受性ポリヌクレオチド」を利用した糖代謝異常及び/又は脂質代謝異常の検出方法
本発明の「インスリン抵抗性改善剤感受性ポリヌクレオチド」を利用した糖代謝異常及び/又は脂質代謝異常の検出方法は、具体的には、4.1.1又は4.1.2に記載したとおりである。
4.1.1 以下の工程1)乃至3)を含む:
1)被験者又は被験動物より採取した血液、肝臓又は脂肪組織を含む検体より、全RNA画分を抽出する工程;
2)上記工程1)に記載の検体由来の全RNAと正常人又は正常動物より採取した血液、肝臓又は脂肪組織を含む検体より抽出した全RNA画分の間における、本発明の「インスリン抵抗性改善剤感受性ポリヌクレオチド」のいずれか一つの発現量の差を検出する工程;
3)上記工程2)に記載のポリヌクレオチドの発現量の差を解析することにより、上記工程1)に記載の被験者又は被験動物の糖代謝異常及び/又は脂質代謝異常の病態を判定する工程。
4.1.2 以下の工程1)乃至4)を含む:
1)被験者又は被験動物より採取した血液、肝臓又は脂肪組織を含む検体より、全RNA画分を抽出する工程;
2)正常人又は正常動物より採取した血液、肝臓又は脂肪組織を含む検体より、全RNA画分を抽出する工程;
3)上記工程1)由来の全RNA画分と上記工程2)由来の全RNA画分における、本発明の「インスリン抵抗性改善剤感受性ポリヌクレオチド」の発現量を測定する工程;
4)上記工程1)由来の全RNA画分と上記工程2)由来の全RNA画分との間における、上記工程3)によって測定されたポリヌクレオチドの発現量の差を解析することにより、上記工程1)に記載の被験者又は被験動物の、糖代謝異常及び/又は脂質代謝異常を検出する工程。
4.1.3 ここで、4.1.1の工程1)及び4.1.2の工程1)及び工程2)における全RNAの抽出は上記、「1.1 マウスKdapポリヌクレオチドの検出」の項中「工程1」全RNA画分を調製する工程」の項に示した方法にしたがって実施することができ、抽出された全RNA画分はさらに精製してmRNAとして使用することが望ましい。また、4.1.1の工程2)及び4.1.2の工程3)における「インスリン抵抗性改善剤感受性ポリヌクレオチド」の発現量の測定も上記、「1.1 マウスKdapポリヌクレオチドの検出」の項中「工程2) インスリン抵抗性改善剤投与と非投与で発現量が著しく異なるポリヌクレオチドを特定する工程」の項に記載の方法や、下記の4.1.4に示すRT−PCR法、リボヌクレアーゼ保護アッセイ、ランオン・アッセイに従って実施することができるが、特に遺伝子チップ、cDNAアレイ等の固相化試料を用いた核酸ハイブリダイゼーションやRT−PCRを用いて実施することが望ましい。
4.1.4 「インスリン抵抗性改善剤感受性ポリヌクレオチド」の発現量を測定するためのその他の方法
4.1.4.1 RT−PCR
まず本発明の「インスリン抵抗性改善剤感受性蛋白質」のmRNAを鋳型とする逆転写酵素反応を行ってから、PCRを実施して特異的にDNA断片を増幅する。この方法において、目的のヌクレオチド配列を特異的に増幅するためには、目的のmRNAの特定の部分配列に相補的なアンチセンスプライマーと、該アンチセンスプライマーから逆転写酵素により生成されるcDNAの配列中の特定の部分配列に相補的なセンスプライマーが用いられる。RT−PCRは市販のキット(例えば、RNA PCRキット AMV ver2.1:タカラバイオ社製等)を用いて、キットに添付のマニュアルに従って行なうことができるが、以下の方法でもできる。
逆転写酵素反応及びPCRの両方に用いられるアンチセンスプライマーは、実質的に本発明の「インスリン抵抗性改善剤感受性ポリヌクレオチド」のヌクレオチド配列のアンチセンス配列中の、連続した15ヌクレオチド乃至40ヌクレオチド、好ましくは少なくとも18ヌクレオチド乃至30ヌクレオチド、更に好ましくは23ヌクレオチド乃至30ヌクレオチドのヌクレオチド配列からなる。
一方、PCRにおいて用いられるセンスプライマーの配列は、本発明の「インスリン抵抗性改善剤感受性ポリヌクレオチド」のヌクレオチド配列において、上記アンチセンスプライマーの相補鎖にあたる配列中の最も5’末端側の位置よりもさらに5’末端側領域に存在する配列中の連続した15乃至40ヌクレオチド、好ましくは18乃至35ヌクレオチド、更に好ましくは21乃至30ヌクレオチドの任意の部分配列からなる。ただし、センスプライマーとアンチセンスプライマーに互いに相補的な配列が存在すると、プライマー同士がアニーリングすることにより非特異的な配列が増幅され、特異的なポリヌクレオチド検出の妨げとなるおそれがあるので、そのような組み合わせを避けたプライマーの設計を行うことが好ましい。
これらアンチセンスプライマー及びセンスプライマーには、いずれも上記で規定したそれらヌクレオチド配列の5’末端に、本発明の「インスリン抵抗性改善剤感受性ポリヌクレオチド」のヌクレオチド配列とは無関係のヌクレオチド配列がリンカーとして付加されていてもよい。ただし、特異的なポリヌクレオチド検出の妨げとならないよう、該リンカーは反応中に反応液内の核酸と非特異的アニーリングを起こさないようなものであることが好ましい。
RT−PCRの反応は常法により行なうことができる。なお、RT−PCRによる検出のための試料は、通常ポリ(A)RNAにまで精製されている必要はない。
PCR終了後、反応液を電気泳動し、目的の大きさのバンドが増幅されているか否かを検出する。定量的検出を行うためには、予め段階希釈したcDNAクローンを標準の鋳型DNAとして同条件でPCRを実施し、定量的検出が可能な温度サイクル数を定めておくか、又は、例えば5サイクル毎に一部反応液をサンプリングしてそれぞれ電気泳動を行う。また例えばPCR反応時に放射標識dCTPを用いることにより、バンド中に取り込まれた放射能の量を指標に定量を行うこともできる。ポリヌクレオチド定量の信頼性を高めた方法として、上記RT−PCR法を改良した競合RT−PCR法(Souaze et al., BioTechniques (1996) 21, p.280−285)や、TaqMan PCR法(Heid et al. Genom.Res. (1996) 6, p.986−994)なども利用可能である。
4.1.4.2 リボヌクレアーゼ保護アッセイ(RNase protection assay): RNA試料中の、上記1)乃至5)のいずれか一つに記載のヌクレオチド配列を有するmRNA(ただし配列中のtはuに読み替える)のみに標識プローブをハイブリダイズさせ、二本鎖ポリヌクレオチドを形成させておいてから、試料にリボヌクレアーゼを添加してインキュベーションすると、プローブがハイブリダイズしたmRNAは二本鎖を形成していることによってリボヌクレアーゼによる消化を免れ、それ以外のRNAは消化されるので、該二本鎖ポリヌクレオチドのみが残る(検出されるmRNAよりプローブが短ければ、プローブの鎖長に相当する二本鎖ポリヌクレオチドが残る)。この二本鎖ポリヌクレオチドを定量することにより、目的のポリヌクレオチドの発現量を測定する。具体的には、例えば以下に記載する方法に従う。
二本鎖を形成せずに余った標識プローブを二本鎖ポリヌクレオチドと確実に分離して定量を容易にするために、余った標識プローブはリボヌクレアーゼに消化されることが好ましいが、リボヌクレアーゼとして一本鎖DNAも消化できるようなものを使用すれば、標識プローブはDNAでもRNAでもよい。標識プローブの調製方法は上記常法に従って行なうことができるが、リボヌクレアーゼアッセイにおいて用いられるプローブの長さは50乃至500ヌクレオチド程度が好ましい。また、二本鎖DNAを直接標識して熱変性したのみのプローブ等、相補鎖が混在するようなプローブは本法には好適ではない。
RNAプローブは、例えば下記の方法に従って調製される。まず鋳型DNAをバクテリオファージのプロモーター(T7、SP6、T3プロモーター等)を有するプラスミドベクター(例えばpGEM−T(プロメガ社製)など)に挿入する。次にこの組換えプラスミドベクターを、制限酵素で、挿入断片のすぐ下流で一ヶ所だけ切断されるように消化する。得られた直鎖DNAを鋳型として、放射能標識されたリボヌクレオチド存在下で、インビトロ転写反応を行う。この反応には、ベクター中のプロモーターに合わせてT7、SP6又はT3ポリメラーゼ等の酵素を用いる。以上の操作は例えばリボプローブシステム−T7、同−SP6又は同−T3(いずれもプロメガ社製)を用いて行うことができる。
RNA試料を調製するまでの工程は「1.1 1.1 マウスKdapポリヌクレオチドの検出」の項中「工程1)全RNAを調製する工程」の項に示した方法にしたがって実施することができ、抽出された全RNAはさらに精製してmRNAとして使用することが望ましい。調製された全RNA試料10乃至20μg相当分と、5×10cpm相当の過剰量の標識プローブとを用いてリボヌクレアーゼ保護アッセイを行う。この操作は市販のキット(HybSpeed RPA Kit、アンビオン社製)を用いて行うことができる。得られたリボヌクレアーゼ消化後の試料を、8M 尿素を含む4乃至12%ポリアクリルアミドゲルで電気泳動した後、ゲルを乾燥させ、X線フィルムでオートラジオグラフィーを行う。以上の操作により、リボヌクレアーゼ消化を免れた二本鎖ポリヌクレオチドのバンドを検出することができ、またその定量は常法に従って実施することができる。さらに、各試料間のRNA量の差等に起因するばらつきを補正する目的で、β−アクチン遺伝子の発現量を同時に測定しておけば、より精密な評価を行うことができる。
4.1.4.3 ランオン・アッセイ(Run−on assay、Greenberg,M.E. and Ziff,E.B.B., Nature (1984) 311, p.433−438, Groudine, M.et al. Mol.Cell Biol. (1981) 1, p.281−288参照): 本方法は、細胞から核を単離して目的の遺伝子の転写活性を測定する方法であり、細胞内のmRNAを検出する方法ではないが、本発明においては「ポリヌクレオチドの発現量を測定する方法」に包含される。単離された細胞核を用いて、試験管内で転写反応を行わせると、核を単離する前に既に転写が開始されmRNA鎖が生成されている途中のものが伸長していく反応のみが進行する。この反応時に放射標識したリボヌクレオチドを添加して、伸長していくmRNAを標識しておき、その中に含まれる、非標識プローブにハイブリダイズするmRNAを検出することにより、核を単離した時点における目的のポリヌクレオチドの転写活性を測定することができる。なお具体的操作方法は、標識しないプローブを調製する他は、上記参照文献の記載に準ずる。被験者又は被験動物から採取した検体由来の試料と、正常人又は正常動物由来の試料との間で測定結果を比較し、本発明の「インスリン抵抗性改善剤感受性ポリヌクレオチド」の転写活性が正常人又は正常動物より高い場合、糖代謝異常及び/又は脂質代謝異常を有すると判断することができる。
4.1.5 判定
4.1.1の工程3)及び4.1.2の工程4)におけるインスリン感受性異常の病態の判定は、「インスリン抵抗性改善剤感受性ポリヌクレオチド」が複数ある場合は、その発現量の差を総合的に評価して行なうことが望ましい。なお、「発現量の差」は、被験者又は被験動物由来の検体と、正常人又は正常動物由来の検体における「インスリン抵抗性改善剤感受性ポリヌクレオチド」の発現量を定量的に比較できる限り、発現量差であっても発現量比であってもよい。
上記分析の結果、被験者又は被験動物から採取した検体由来の試料と、正常人又は正常動物由来の試料との間で測定結果を比較し、本発明の「インスリン抵抗性改善剤感受性ポリヌクレオチド」の発現量が正常人又は正常動物より高い場合、糖代謝異常及び/又は脂質代謝異常を有すると判断することができる。
4.2 「インスリン抵抗性改善剤感受性蛋白質」を利用した糖代謝異常及び/又は脂質代謝異常の検出方法
本発明の「インスリン抵抗性改善剤感受性蛋白質」を利用した糖代謝異常及び/又は脂質代謝異常の検出方法は、具体的には以下の4.2.1、4.2.2、4.2.3又は4.2.4からなる。
4.2.1 以下の工程1)乃至2)を含む:
1)被験者又は被験動物から採取した血液、肝臓又は脂肪組織を含む検体における、本発明の「インスリン抵抗性改善剤感受性蛋白質」のいずれか一つの発現量を測定する工程:
2)上記工程1)で検出された蛋白質の発現量と正常人又は正常動物から採取した血液、肝臓又は脂肪組織を含む検体における該蛋白質の発現量の差を解析することにより、上記工程1)における被験者又は被験動物の糖代謝異常及び/又は脂質代謝異常の病態を判定する工程。
4.2.2 以下の工程1)乃至3)を含む:
1)被験者又は被験動物より採取した血液、肝臓又は脂肪組織を含む検体における、本発明の「インスリン抵抗性改善剤感受性蛋白質」のいずれか一つの発現量を測定する工程:
2)正常人又は正常動物より採取した血液、肝臓又は脂肪組織を含む検体における、上記工程1)に記載の蛋白質の発現量を測定する工程:
3)上記工程1)に記載の蛋白質の発現量と上記工程2)に記載の蛋白質の発現量の差を解析することにより、上記工程1)に記載の被験者又は被験動物の糖代謝異常及び/又は脂質代謝異常の病態を判定する工程。
4.2.3 以下の工程1)乃至3)を含む:
1)被験者又は被験動物より採取した血液、肝臓又は脂肪組織を含む検体より得た全蛋白質を固相化する工程;
2)上記工程1)に記載の固相化蛋白質における、本発明の「インスリン抵抗性改善剤感受性蛋白質」のいずれか一つの発現量を測定する工程;
3)上記工程2)で検出された蛋白質の発現量と正常人又は正常動物より採取した血液、肝臓又は脂肪組織を含む検体より得た全ポリペプチにおける該蛋白質の発現量の差を解析することにより、上記1)における被験者又は被験動物の糖代謝異常及び/又は脂質代謝異常の病態を判定する工程。
4.2.4 以下の工程1)乃至5)を含む、糖代謝異常及び/又は脂質代謝異常の検出方法:
1)被験者又は被験動物より採取した血液、肝臓又は脂肪組織を含む検体より得た全蛋白質を固相化する工程;
2)正常人又は正常動物より採取した血液、肝臓又は脂肪組織を含む検体より得た全蛋白質を固相化する工程;
3)上記工程1)由来の固相化蛋白質と上記工程2)由来の固相化蛋白質における、本発明の「インスリン抵抗性改善剤感受性蛋白質」のうちのいずれか一つの発現量を測定する工程:
4)上記工程1)由来の固相化蛋白質と上記工程2)由来の固相化蛋白質との間における上記工程3)で測定した該蛋白質の発現量の差を該蛋白質に特異的に結合する抗体又はリガンドを用いて測定する工程;
5)上記工程4)で測定した該蛋白質の発現量の差を解析することにより、上記工程1)に記載の被験者又は被験動物の糖代謝異常及び/又は脂質代謝異常の病態を判定する工程。
以下、上記4.2.1乃至4.2.4に記載の検出方法について説明する。
糖代謝異常及び/又は脂質代謝異常の病態の検出方法の好適な態様として、抗体を利用した方法について説明する。まず、試料中の蛋白質を96穴プレートや384穴プレート等のマルチウエルプレートのウエル内底面やメンブレン等に固相化しておいてから、本発明の「インスリン抵抗性改善剤感受性蛋白質」を特異的に認識する抗体を用いた検出が行われる。このうち、96穴プレートや384穴プレート等のマルチウエルプレートを用いるのは一般に固相酵素免疫定量法(ELISA法)や放射性同位元素免疫定量法(RIA法)と呼ばれる方法である。一方、メンブレンに固相化する方法としては、試料のポリアクリルアミド電気泳動を経てメンブレンに蛋白質を転写する方法(ウエスタンブロット法)か、又は直接メンブレンに試料又はその希釈液を染み込ませる、いわゆるドットブロット法やスロットブロット法が挙げられる。
(1)試料の調製
試料としては、ヒト全血、血清、肝臓又は脂肪組織抽出液が好ましい。該全血、肝臓又は脂肪組織抽出液は、必要に応じて高速遠心を行うことにより、不溶性の物質を除去した後、以下のようにELISA/RIA用試料やウエスタンブロット用試料として調製する。
ELISA/RIA用試料としては、例えば回収した血清、肝臓や脂肪組織抽出液をそのまま使用するか、緩衝液で適宜希釈したものを用いる。ウエスタンブロット用(電気泳動用)試料は、例えば血清、肝臓や脂肪組織抽出液をそのまま使用するか、緩衝液で適宜希釈して、SDS−ポリアクリルアミド電気泳動用の2−メルカトルエタノールを含むサンプル緩衝液(シグマ社製等)と混合する。ドット/スロットブロットの場合は、例えば回収した血清、肝臓や脂肪組織抽出液そのもの、又は緩衝液で適宜希釈したものを、ブロッティング装置を使用するなどして、直接メンブレンへ吸着させる。
(2)試料の固相化
上記のようにして得られた試料中の蛋白質を特異的に検出するためには、試料を免疫沈降法、リガントの結合を利用した方法等によって、沈殿させ、固相化せずに検出することもできるし、そのまま検出する該試料を固相化することもできる。蛋白質を固相化する場合において、ウエスタンブロット法、ドットブロット法又はスロットブロット法に用いられるメンブレンとしては、ニトロセルロースメンブレン(例えば、バイオラッド社製等)、ナイロンメンブレン(例えば、ハイボンド−ECL(アマシャム・ファルマシア社製)等)、コットンメンブレン(例えば、ブロットアブソーベントフィルター(バイオラッド社製)等)又はポリビニリデン・ジフルオリド(PVDF)メンブレン(例えば、バイオラッド社製等)等が挙げられる。
電気泳動後のゲルからメンブレンに蛋白質を移す、いわゆるブロッティング方法としては、ウエット式ブロッティング法(CURRENT PROTOCOLS IN IMMUNOLOGY volume 2 ed by J. E. Coligan, A. M. Kruisbeek, D. H. Margulies, E. M. Shevach, W. Strober)、セミドライ式ブロッティング法(上記CURRENT PROTOCOLS IN IMMUNOLOGY volume 2 参照)等を挙げることができる。ドットブロット法やスロットブロット法のための器材も市販されている(例えば、バイオ・ドット(バイオラッド)等)。
一方、ELISA法/RIA法で検出・定量を行うためには、専用の96穴プレート(例えば、イムノプレート・マキシソープ(ヌンク社製)等)に試料又はその希釈液(例えば0.05% アジ化ナトリウムを含むリン酸緩衝生理食塩水(以下「PBS」という)で希釈したもの)を入れて4℃乃至室温で一晩、又は37℃で1乃至3時間静置することにより、ウエル内底面に蛋白質を吸着させて固相化する。
(3)抗体
用いられる抗体は、本発明の「インスリン抵抗性改善剤感受性蛋白質」又はその一部を特異的に認識するものである。このような抗体としては、例えば、本発明の「インスリン抵抗性改善剤感受性蛋白質」のいずれにも結合するが、他のいかなるマウス又はヒト由来のタンパク質とも結合しないような抗体を挙げることができる。
前記抗体は、常法を用いて(例えば、新生化学実験講座1、タンパク質1,p.389−397, 1992)、抗原となる蛋白質、あるいはそのアミノ酸配列から選択される任意のポリペプチドを動物に免疫し、生体内に産生される抗体を採取、精製することによって得ることができる。また、公知の方法(例えば、Kohler and Milstein, Nature (1975) 256, p.495−497、Kennet,R.ed., Monoclonal Antibody, 1980 p.365−367, Prenum Press, N.Y.)に従って、本発明の「インスリン抵抗性改善剤感受性蛋白質」に対する抗体を産生する抗体産生細胞とミエローマ細胞とを融合させることによりハイブリドーマを樹立し、モノクローナル抗体を得ることもできる。
抗体を作製するための抗原としては、本発明の「インスリン抵抗性改善剤感受性蛋白質」又はその少なくとも6個の連続した部分アミノ酸配列からなるポリペプチド、あるいはこれらに任意のアミノ酸配列や担体が付加された誘導体を挙げることができる。
前記抗原ポリペプチドは具体的には、上記、「3.「インスリン抵抗性改善剤感受性蛋白質」の生産」の項に記載した方法によって、得ることができる。
本発明の「インスリン抵抗性改善剤感受性蛋白質」に対する抗体は、RIA法、ELISA法、蛍光抗体法、受身血球凝集反応法などの各種免疫学的測定法や免疫組織染色などに用いることができる。
「インスリン抵抗性改善剤感受性蛋白質」と特異的に結合する抗体の例として、本発明の「インスリン抵抗性改善剤感受性蛋白質」と特異的に結合するモノクローナル抗体を挙げることができるが、その取得方法は、以下に記載する通りである。

モノクローナル抗体の製造にあたっては、一般に下記のような作業工程が必要である。すなわち、
(a)抗原として使用する生体高分子の精製、
(b)抗原を動物に注射することにより免疫した後、血液を採取しその抗体価を検定して脾臓摘出の時期を決定してから、抗体産生細胞を調製する工程、
(c)骨髄腫細胞(以下「ミエローマ」という)の調製、
(d)抗体産生細胞とミエローマとの細胞融合、
(e)目的とする抗体を産生するハイブリドーマ群の選別、
(f)単一細胞クローンへの分割(クローニング)、
(g)場合によっては、モノクローナル抗体を大量に製造するためのハイブリドーマの培養、又はハイブリドーマを移植した動物の飼育、
(h)このようにして製造されたモノクローナル抗体の生理活性、及びその認識特異性の検討、あるいは標識試薬としての特性の検定、等である。
以下、モノクローナル抗体の作製法を上記工程に沿って詳述するが、該抗体の作製法はこれに制限されず、例えば脾細胞以外の抗体産生細胞及びミエローマを使用することもできる。
(a)抗原の精製
抗原としては、前記したような方法で調製した本発明の蛋白質又はその一部を使用することができる。さらに、本発明により本発明の蛋白質の一次構造が明らかにされたので、当業者に周知の方法を用いて、本発明の蛋白質の部分ペプチドを化学合成し、これを抗原として使用することもできる。
(b)抗体産生細胞の調製
工程(a)で得られた抗原と、フロインドの完全又は不完全アジュバント、又はカリミョウバンのような助剤とを混合し、免疫原として実験動物に免疫する。実験動物としては、マウスが最も好適に用いられるが、これに限定されない。
マウス免疫の際の免疫原投与法は、皮下注射、腹腔内注射、静脈内注射、皮内注射、筋肉内注射いずれでもよいが、皮下注射又は腹腔内注射が好ましい。
免疫は、一回、又は、適当な間隔で(好ましくは1週間から5週間間隔で)複数回繰返し行なうことができる。その後、免疫した動物の血清中の抗原に対する抗体価を測定し、抗体価が十分高くなった動物を抗体産生細胞の供給原として用いれば、以後の操作の効果を高めることができる。一般的には、最終免疫後3〜5日後の動物由来の抗体産生細胞を後の細胞融合に用いることが好ましい。
ここで用いられる抗体価の測定法としては、放射性同位元素免疫定量法(以下「RIA法」という)、固相酵素免疫定量法(以下「ELISA法」という)、蛍光抗体法、受身血球凝集反応法など種々の公知技術があげられるが、検出感度、迅速性、正確性、及び操作の自動化の可能性などの観点から、RIA法又はELISA法がより好適である。
本発明における抗体価の測定は、例えばELISA法によれば、以下に記載するような手順により行うことができる。まず、精製又は部分精製した抗原をELISA用96穴プレート等の固相表面に吸着させ、さらに抗原が吸着していない固相表面を抗原と無関係なタンパク質、例えばウシ血清アルブミン(以下「BSA」という)により覆い、該表面を洗浄後、第一抗体として段階希釈した試料(例えばマウス血清)に接触させ、上記抗原に試料中のモノクローナル抗体を結合させる。さらに第二抗体として酵素標識されたマウス抗体に対する抗体を加えてマウス抗体に結合させ、洗浄後該酵素の基質を加え、基質分解に基づく発色による吸光度の変化等を測定することにより、抗体価を算出する。
(c)ミエローマの調製工程
ミエローマとしては、一般的にはマウスから得られた株化細胞、例えば8−アザグアニン耐性マウス(BALB/c由来)ミエローマ株P3X63Ag8U.1(P3−U1)[Yelton, D.E. et al. Current Topics in Microbiology and Immunology, 81, 1−7(1978)]、P3/NSI /1−Ag4−1(NS−1) [Kohler, G. et al. European J. Immunology, 6, 511−519 (1976) ]、Sp2 /O−Ag14 (SP−2) [Shulman, M. et al. Nature, 276, 269−270 (1978)]、P3X63Ag8.653 (653) [Kearney, J. F. et al. J. Immunology, 123, 1548−1550 (1979)]、P3X63Ag8(X63) [Horibata, K. and Harris, A. W. Nature, 256, 495−497 (1975)]などを用いることが好ましい。これらの細胞株は、適当な培地、例えば8−アザグアニン培地[RPMI−1640培地にグルタミン、2−メルカプトエタノール、ゲンタマイシン、及びウシ胎児血清(以下「FCS」という)を加えた培地に8−アザグアニンを加えた培地] 、イスコフ改変ダルベッコ培地(Iscove’s Modified Dulbecco’s Medium ;以下「IMDM」という)、又はダルベッコ改変イーグル培地(Dulbecco’s Modified Eagle Medium;以下「DMEM」という)で継代培養するが、細胞融合の3乃至4日前に正常培地[例えば、10% FCSを含むASF104培地(味の素(株)社製)]で継代培養し、融合当日に2×10以上の細胞数を確保しておく。
(d)細胞融合
抗体産生細胞は、形質細胞、及びその前駆細胞であるリンパ球であり、これは個体のいずれの部位から得てもよく、一般には脾、リンパ節、末梢血、又はこれらを適宜組み合わせたもの等から得ることができるが、脾細胞が最も一般的に用いられる。
最終免疫後、所定の抗体価が得られたマウスから抗体産生細胞が存在する部位、例えば脾臓を摘出し、抗体産生細胞である脾細胞を調製する。この脾細胞と工程(c)で得られたミエローマを融合させる手段として現在最も一般的に行われているのは、細胞毒性が比較的少なく融合操作も簡単なポリエチレングリコールを用いる方法である。この方法は、例えば以下の手順よりなる。
脾細胞とミエローマとを無血清培地(例えばRPMI1640)、又はリン酸緩衝生理食塩液(以下「PBS」という)でよく洗浄し、脾細胞とミエローマの細胞数の比が5:1〜10:1程度になるように混合し、遠心分離する。上清を除去し、沈澱した細胞群をよくほぐした後、撹拌しながら1mlの50%(w/v)ポリエチレングリコール(分子量1000〜4000)を含む無血清培地を滴下する。その後、10mlの無血清培地をゆっくりと加えた後遠心分離する。再び上清を捨て、沈澱した細胞を適量のヒポキサンチン・アミノプテリン・チミジン(以下「HAT」という)液及びマウスインターロイキン−2(以下「IL−2」という)を含む正常培地(以下「HAT培地」という)中に懸濁して培養用プレート(以下「プレート」という)の各ウェルに分注し、5% 炭酸ガス存在下、37℃で2週間程度培養する。途中適宜HAT培地を補う。
(e)ハイブリドーマ群の選択
上記ミエローマ細胞が、8−アザグアニン耐性株である場合、すなわち、ヒポキサンチン・グアニン・ホスホリボシルトランスフェラーゼ(HGPRT)欠損株である場合、融合しなかった該ミエローマ細胞、及びミエローマ細胞どうしの融合細胞は、HAT含有培地中では生存できない。一方、抗体産生細胞どうしの融合細胞、あるいは、抗体産生細胞とミエローマ細胞とのハイブリドーマは生存することができるが、抗体産生細胞どうしの融合細胞には寿命がある。従って、HAT含有培地中での培養を続けることによって、抗体産生細胞とミエローマ細胞とのハイブリドーマのみが生き残り、結果的にハイブリドーマを選択することができる。
コロニー状に生育してきたハイブリドーマについて、HAT培地からアミノプテリンを除いた培地(以下「HT培地」という)への培地交換を行う。以後、培養上清の一部を採取し、例えば、ELISA法により抗体価を測定する。
以上、8−アザグアニン耐性の細胞株を用いる方法を例示したが、その他の細胞株もハイブリドーマの選択方法に応じて使用することができ、その場合使用する培地組成も変化する。
(f)クローニング
工程(b)の記載と同様の方法で抗体価を測定することにより、特異的抗体を産生することが判明したハイブリドーマを、別のプレートに移しクローニングを行う。このクローニング法としては、プレートの1ウェルに1個のハイブリドーマが含まれるように希釈して培養する限界希釈法、軟寒天培地中で培養しコロニーを回収する軟寒天法、マイクロマニュピレーターによって1個づつの細胞を取り出し培養する方法、セルソーターによって1個の細胞を分離する「ソータクローン」などが挙げられるが、限界希釈法が簡便でありよく用いられる。
抗体価の認められたウェルについて、例えば限界希釈法によるクローニングを2〜4回繰返し、安定して抗体価の認められたものを本発明のモノクローナル抗体産生ハイブリドーマ株として選択する。
(g)ハイブリドーマ培養によるモノクローナル抗体の調製
クローニングを完了したハイブリドーマは、培地をHT培地から正常培地に換えて培養される。大量培養は、大型培養瓶を用いた回転培養、あるいはスピナー培養で行われる。この大量培養における上清を、ゲル濾過等、当業者に周知の方法を用いて精製することにより、本発明の蛋白質に特異的に結合するモノクローナル抗体を得ることができる。また、同系統のマウス(例えば、上記のBALB/c)、あるいはNu/Nuマウスの腹腔内で該ハイブリド−マを増殖させることにより、本発明のモノクローナル抗体を大量に含む腹水を得ることができる。精製の簡便な方法としては、市販のモノクローナル抗体精製キット(例えば、MAbTrap GIIキット;ファルマシア社製)等を利用することもできる。
かくして得られるモノクローナル抗体は、本発明の「インスリン抵抗性改善剤感受性蛋白質」に対して高い抗原特異性を有する。
(h)モノクローナル抗体の検定
かくして得られたモノクローナル抗体のアイソタイプ及びサブクラスの決定は以下のように行うことができる。まず、同定法としてはオクテルロニー(Ouchterlony)法、ELISA法、又はRIA法が挙げられる。オクテルロニー法は簡便ではあるが、モノクローナル抗体の濃度が低い場合には濃縮操作が必要である。一方、ELISA法又はRIA法を用いた場合は、培養上清をそのまま抗原吸着固相と反応させ、さらに第二次抗体として各種イムノグロブリンアイソタイプ、サブクラスに対応する抗体を用いることにより、モノクローナル抗体のアイソタイプ、サブクラスを同定することが可能である。また、さらに簡便な方法として、市販の同定用のキット(例えば、マウスタイパーキット;バイオラッド社製)等を利用することもできる。
さらに、タンパク質の定量は、フォーリンロウリー法、及び280nmにおける吸光度[1.4(OD280)=イムノグロブリン1mg/ml]より算出する方法により行うことができる。
このようにして得られる本発明のモノクローナル抗体は、その特異性を利用した本発明の「インスリン抵抗性改善剤感受性蛋白質」の検出や分離精製に用いることができる。 (4)検出
上記(3)記載の方法で得られる抗体は、それを直接標識するか、又は該抗体を一次抗体とし、該抗体を特異的に認識する(抗体を作製した動物由来の抗体を認識する)標識二次抗体と協同で検出に用いられる。
標識の種類として好ましいものは酵素(アルカリホスファターゼ又は西洋ワサビペルオキシダーゼ)又はビオチン(ただし二次抗体のビオチンにさらに酵素標識ストレプトアビジンを結合させる操作が加わる)であるが、これらに限定されない。標識二次抗体(又は標識ストレプトアビジン)を使用する方法のための、予め標識された抗体(又はストレプトアビジン)は種々のものが市販されている。RIAの場合はI125等の放射性同位元素で標識された抗体を用い、測定は液体シンチレーションカウンター等を用いて行う。
これら標識された酵素の活性を検出することにより、抗原であるポリペプチドの量が測定される。アルカリホスファターゼ又は西洋ワサビペルオキシダーゼの場合、それら酵素の触媒により発色する基質や発光する基質が市販されている。
発色する基質を用いた場合、ウエスタンブロット法やドット/スロットブロット法においては目視で検出できる。ELISA法においては、好ましくは市販のマイクロプレートリーダーを用いて各ウエルの吸光度(測定波長は基質により異なる)を測定することにより定量する。また好ましくは上記(3)において抗体作製のために使用した抗原の希釈系列を調製し、これを標準抗原試料として他の試料と同時に検出操作を行って、標準抗原濃度と測定値をプロットした標準曲線を作成することにより、他の試料中の抗原濃度を定量することが可能である。
一方、発光する基質を使用した場合は、ウエスタンブロット法やドット/スロットブロット法においてはX線フィルム又はイメージングプレートを用いたオートラジオグラフィーや、インスタントカメラを用いた写真撮影により検出することができ、デンシトメトリーやモレキュラー・イメージャーFxシステム(バイオラッド社製)等を利用した定量も可能である。また、ELISA法で発光基質を用いる場合は、発光マイクロプレートリーダー(例えば、バイオラッド社製等)を用いて酵素活性を測定する。
(5)測定操作
i)ウエスタンブロット、ドットブロット又はスロットブロットの場合
まず、抗体の非特異的吸着を阻止するため、予めメンブレンをそのような非特異的吸着を阻害する物質(スキムミルク、カゼイン、ウシ血清アルブミン、ゼラチン、ポリビニルピロリドン等)を含む緩衝液中に一定時間浸しておく操作(ブロッキング)を行う。ブロッキング溶液の組成は、例えば5% スキムミルク、0.05乃至0.1% ツイーン20を含むリン酸緩衝生理食塩水(PBS)又はトリス緩衝生理食塩水(TBS)が用いられる。スキムミルクの代わりに、ブロックエース(大日本製薬)、1乃至10%のウシ血清アルブミン、0.5乃至3%のゼラチン又は1%のポリビニルピロリドン等を用いてもよい。ブロッキングの時間は、4℃で16乃至24時間、又は室温で1乃至3時間である。
次に、メンブレンを0.05乃至0.1% ツイーン20を含むPBS又はTBS(以下「洗浄液」という)で洗浄して余分なブロッキング溶液を除去した後、上記(3)記載の方法で作製された抗体をブロッキング溶液で適宜希釈した溶液中に一定時間浸して、抗体をメンブレン上の抗原に結合させる。このときの抗体の希釈倍率は、例えば上記3)記載の組換え抗原を段階希釈したものを試料とした予備のウエスタンブロッティング実験を行って決定することができる。この抗体反応操作は、好ましくは室温で2時間行う。抗体反応操作終了後、メンブレンを洗浄液で洗浄する。ここで、用いた抗体が標識されたものである場合は、ただちに検出操作を行うことができる。未標識の抗体を用いた場合には、引き続いて二次抗体反応を行う。標識二次抗体は、例えば市販のものを使用する場合はブロッキング溶液で2000乃至20000倍に希釈して用いる(添付の指示書に好適な希釈倍率が記載されている場合は、その記載に従う)。一次抗体を洗浄除去した後のメンブレンを二次抗体溶液に室温で45分乃至1時間浸し、洗浄液で洗浄してから、標識方法に合わせた検出操作を行う。洗浄操作は、例えばまずメンブレンを洗浄液中で15分間振盪してから、洗浄液を新しいものに交換して5分間振盪した後、再度洗浄液を交換して5分間振盪することにより行う。必要に応じてさらに洗浄液を交換して洗浄してもよい。
ii)ELISA/RIA
まず、上記(2)の方法で試料を固相化させたプレートのウェル内底面への抗体の非特異的吸着を阻止するため、ウエスタンブロットの場合と同様、予めブロッキングを行っておく。ブロッキングの条件については、ウエスタンブロットの項に記載した通りである。
次に、ウェル内を0.05乃至0.1% ツイーン20を含むPBS又はTBS(以下「洗浄液」という)で洗浄して余分なブロッキング溶液を除去した後、上記(3)記載の方法で作製された抗体を洗浄液で適宜希釈した溶液を分注して一定時間インキュベーションし、抗体を抗原に結合させる。このときの抗体の希釈倍率は、例えば上記(3)記載の組換え抗原を段階希釈したものを試料とした予備のELISA実験を行って決定することができる。この抗体反応操作は、好ましくは室温で1時間程度行う。抗体反応操作終了後、ウェル内を洗浄液で洗浄する。ここで、用いた抗体が標識されたものである場合は、ただちに検出操作を行うことができる。未標識の抗体を用いた場合には、引き続いて二次抗体反応を行う。標識二次抗体は、例えば市販のものを使用する場合は洗浄液で2000乃至20000倍に希釈して用いる(添付の指示書に好適な希釈倍率が記載されている場合は、その記載に従う)。一次抗体を洗浄除去した後のウェルに二次抗体溶液を分注して室温で1乃至3時間インキュベーションし、洗浄液で洗浄してから、標識方法に合わせた検出操作を行う。洗浄操作は、例えばまずウェル内に洗浄液を分注して5分間振盪してから、洗浄液を新しいものに交換して5分間振盪した後、再度洗浄液を交換して5分間振盪することにより行う。必要に応じてさらに洗浄液を交換して洗浄してもよい。
また本発明において、いわゆるサンドイッチ法のELISAは例えば以下に記載する方法により実施することができる。まず、本発明の「インスリン抵抗性改善剤感受性蛋白質」のアミノ酸配列のいずれか一つにおいて、親水性に富む領域を2箇所選んで、それぞれの領域中のアミノ酸6残基以上からなる部分ペプチドを合成し、該部分ペプチドを抗原とした2種類の抗体を取得する。このうち一方の抗体を上記(4)記載のように標識しておく。標識しなかった方の抗体は、上記(2)記載の方法に準じて96穴ELISA用プレートのウェル内底面に固相化する。ブロッキングの後、試料液をウェル内に入れて常温で1時間インキュベーションする。ウェル内を洗浄後、標識した方の抗体希釈液を各ウェルに分注してインキュベーションする。再びウェル内を洗浄後、標識方法に合わせた検出操作を行う。
(6)リガンド
抗体の他に、「インスリン抵抗性改善剤感受性蛋白質」に特異的に結合する基質、補酵素、調節因子等のリガンドを用いることによっても「インスリン抵抗性改善剤感受性蛋白質」を定量することができる。
(7)判定
以上に記載した方法で、被験者又は被験動物から採取した検体と、正常人又は正常動物から採取した検体との間で検出結果を比較し、その結果上記(3)記載の方法で作製された抗体又はリガンドが特異的に結合するポリペプチドの量を各「インスリン抵抗性改善剤感受性蛋白質」の発現量として、正常個体に比べ「インスリン抵抗性改善剤感受性蛋白質」の発現量が上昇している場合に糖代謝異常及び/又は脂質代謝異常があるか、糖代謝異常及び/又は脂質代謝異常になる可能性が高いと判定することができる。
5.糖代謝異常及び/又は脂質代謝異常に対する、治療効果及び/又は予防効果を有する物質のスクリーニング用、及び/又は、糖代謝異常及び/又は脂質代謝異常の検出用キット
本発明の「インスリン抵抗性改善剤感受性ポリヌクレオチド」及び/又は「インスリン抵抗性改善剤感受性蛋白質」を検出することができるキットば、糖代謝異常及び/又は脂質代謝異常に対する、治療効果及び/又は予防効果を有する物質のスクリーニング用、及び/又は、糖代謝異常及び/又は脂質代謝異常の検出用に用いることができる。そのようなキットとしては以下のは、以下の1)乃至5)からなる群から選択される少なくとも一つ以上を含むキットを挙げることができる。
1)少なくとも、配列表の配列番号2又は6に示されるヌクレオチド配列を含むことからなるポリヌクレオチドの一つを特異的に増幅するための15乃至30塩基長の連続したオリゴヌクレオチドプライマー;
2)少なくとも、配列表の配列番号2又は6に示されるヌクレオチド配列を含むことからなるポリヌクレオチドの一つにストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、該ポリヌクレオチドを検出するための15ヌクレオチド以上の連続したポリヌクレオチドプローブ;
3)少なくとも、配列表の配列番号2又は6に示されるヌクレオチド配列を含むことからなるポリヌクレオチドの一つが固定された固相化試料。
4)少なくとも、配列表の配列番号3又は7に示されるアミノ酸配列を含むことからなる蛋白質の一つに特異的に結合し、該蛋白質を検出するための抗体;
5)上記4)に記載の抗体に結合し得る二次抗体。
前記1)記載のプライマーは、本発明の「インスリン抵抗性改善剤感受性ポリヌクレオチド」のヌクレオチド配列(配列表の配列番号2又は6に示されるヌクレオチド配列)に基づき市販のプライマー設計ソフト(たとえば、Wisconsin GCG package Version 10.2)を用いる等、常法により容易に設計し、増幅することができる。このようなプライマーとしては例えば、配列表の配列番号6に示されるヌクレオチド配列からなるオリゴヌクレオチドと配列表の配列番号7に示されるヌクレオチド配列からなるオリゴヌクレオチドの組み合わせを使用することができる。また、前記2)に記載のプローブは、本発明の「インスリン抵抗性改善剤感受性ポリヌクレオチド」に特異的にハイブリダイズするポリペプチドであって、100乃至1500塩基長、好ましくは300乃至600塩基長である。これらのプライマーやプローブは、適当な標識によりラベル(例えば、酵素標識、放射性標識、蛍光標識等)されていてもよく、また、リンカーを付加していてもよい。
上記3)に記載の固相化試料は、上記2)に記載のプローブをガラス板、ナイロンメンブレン等の固相に固定することにより作製される。このような固相化試料の作成方法については、既に「1.1 インスリン抵抗性改善剤投与によって発現が変動するポリヌクレオチドの特定方法」の項中、「工程2)インスリン抵抗性改善剤投与と非投与で発現量が著しく異なるポリヌクレオチドを特定する工程」の項中、「(1)固相化試料」の項で説明した通りであり、例えば、遺伝子チップ、cDNAアレイ、オリゴアレイ、メンブレンフィルター等を挙げることができる。
本発明のキットには、更に耐熱性DNAポリメラーゼ、dNTP(dATP、dCTP、dGTP、dTTPの混合物)及び緩衝液を含めることもできる。耐熱性DNAポリメラーゼとしてはTaq DNAポリメラーゼ、LA Taq DAN polymerase(タカラバイオ社)、Tth DNAポリメラーゼ、PfuDNAポリメラーゼなどが例示できる。緩衝液は使用するDNAポリメラーゼに応じて選ばれ、必要に応じてMg2+等が添加されている。
前記、4)及び5)に記載の抗体は3.2に記載した方法により作製することができる。該抗体は、適当な標識によりラベル(例えば、酵素標識、放射性標識、蛍光標識等)されていてもよい。
本発明のキットは「インスリン抵抗性改善剤感受性ポリヌクレオチド」及び/又は「インスリン抵抗性改善剤感受性蛋白質」の検出に用いることができ、糖代謝異常及び/又は脂質代謝異常の病態の判定や、糖代謝異常及び/又は脂質代謝異常を改善する物質のスクリーニングにも用いることができる。
6.糖代謝異常及び/又は脂質代謝異常を改善する物質のスクリーニング方法
本発明の「インスリン抵抗性改善剤感受性ポリヌクレオチド」又は「インスリン抵抗性改善間感受性蛋白質」の少なくとも一つの発現量を測定することによって糖代謝異常及び/又は脂質代謝異常を改善する物質のスクリーニングをすることができる。
なお、「被験物質」とは、本発明のスクリーニング方法でインスリン抵抗性の治療効果及び/又は予防効果を調べる対象となる物質をいう。被験物質としては、化合物、微生物の代謝産物、植物や動物組織の抽出物、それらの誘導体又はそれらの混合物等が挙げられる。また、本発明の「インスリン抵抗性改善剤感受性ポリヌクレオチド」の発現量を低下するように設計された核酸又はその誘導体(アンチセンスオリゴヌクレオチド、リボザイム、RNAi等を含む)を、被験物質として使用することも可能である。被験物質の投与量や濃度は適宜設定するか、又は例えば希釈系列を作成するなどして複数種の投与量を設定してもよく、個体、液体等適当な状態で投与することができ、適当なバッファーに溶解したり、安定化剤等を加えてもよい。培養細胞を用いるスクリーニング方法の場合には、培地に添加して培養することができる。培地に添加する場合には培養開始時から添加してもよいし、培養途中で添加しても良く、また、添加の回数も1回に限らない。被験物質存在下で培養する期間も適宜設定してよいが、好ましくは30分乃至48時間である。哺乳動物個体に被験物質を投与する場合は、被験物質の物性等により経口投与、静脈注射、腹腔内注射、経皮投与、皮下注射等の投与形態を使い分ける。また、投与から、検体を得るまでの時間は適当に選択することができる。
本発明における「糖代謝異常及び/又は脂質代謝異常を改善する物質」とは、インスリン抵抗性を改善する効果を有する物質及び/又は脂質代謝異常を改善する物質を意味する。
本発明のスクリーニング方法において用いられる培養細胞は、本発明の「インスリン抵抗性改善剤感受性ポリヌクレオチド」のいずれか一つ又はその一部のヌクレオチド配列を有するポリヌクレオチドを発現する哺乳動物細胞であればよく、肝臓又は脂肪組織由来の培養細胞あるいは肝臓や脂肪組織に分化する培養細胞であるが、例えば本発明の「インスリン抵抗性改善剤感受性ポリヌクレオチド」のいずれか一つをそのプロモーター領域とともに導入した細胞など、人為的に形質転換された細胞も使用することが可能である。このような培養細胞としては、例えば、マウス繊維芽細胞由来細胞株3T3−L1細胞、マウス、ラット及びヒト遊離脂肪細胞、マウス、ラット及びヒト初代肝細胞等を挙げることができる。哺乳動物種としては、ヒト、ラット、マウス又はハムスターが好ましく、ヒト又はマウスがより好ましいが、これらに限定されない。
本発明のスクリーニング方法には、培養細胞を用いず、哺乳動物個体に被験物質を投与して、その後該動物個体から摘出されたその臓器又は組織細胞における本発明の「インスリン抵抗性改善剤感受性ポリヌクレオチド」のいずれか一つの発現を検出する方法も含まれる。ポリヌクレオチド発現の検出対象となる臓器又は組織は、本発明の「インスリン抵抗性改善剤感受性ポリヌクレオチド」のいずれかを発現するものであればよいが、好ましくは白色脂肪細胞、肝臓、筋肉である。哺乳動物種としてはヒト、マウス又はハムスターが好ましく、ヒト又はマウスがより好ましい。なお、糖尿病のモデル動物であるKKマウスを用いることもできる。
本発明の方法において用いられる培養細胞は、被験物質を添加しない場合には本発明の「インスリン抵抗性改善剤感受性ポリヌクレオチド」のいずれか一つを発現可能な条件であれば、いかなる条件で培養してもよい。例えば、該培養細胞について確立された培養条件が知られており、該条件下において該細胞が本発明の「インスリン抵抗性改善剤感受性ポリヌクレオチド」を発現する場合は、該条件で培養してよい。また、哺乳動物個体から摘出した臓器又は組織における本ポリヌクレオチド発現を検出する場合における、該動物の飼育条件も、被験物質を添加しない場合に「インスリン抵抗性改善剤感受性ポリヌクレオチド」を発現可能な条件であればよい。
「インスリン抵抗性改善剤感受性蛋白質」を検出する実施態様において用いられる培養細胞の種類に関する条件は、上記した「インスリン抵抗性改善剤感受性ポリヌクレオチド」の発現を検出する実施態様の場合と同様である。また、何らかの事情により培養細胞を用いるよりも好適と判断される場合には、哺乳動物個体に被験物質を投与して、その後該動物個体から採取された臓器又は組織等を試料として用いる方法も採用し得る。ヒトの場合は生体より採取された脂肪組織や肝臓を用いることもできる。
哺乳動物種としてはヒト、マウス又はハムスターが好ましく、ヒト又はマウスがより好ましい。培養細胞の培養条件、動物の飼育条件、被験物質の投与方法についても、ポリヌクレオチド発現を検出する実施態様の場合と同様である。被験物質としては、化合物、微生物の代謝産物、植物や動物組織の抽出物、それらの誘導体又はそれらの混合物等が挙げられる。
本実施態様のための試料を調製するための材料としては、被験物質存在下又は非存在下で培養した培養細胞の全細胞抽出液又は核抽出画分が用いられ得るが、全細胞抽出液が好適である。全細胞抽出液は、必要により高速遠心することにより不溶性の物質を除去した後、ELISA/RIA用試料やウエスタンブロット用試料の調製工程に供される。
なお、被験物質の、本発明の「インスリン抵抗性改善剤感受性ポリヌクレオチド」の発現に対する影響を調べるためには、「インスリン抵抗性改善剤感受性ポリヌクレオチド」の発現量を測定する方法と、「インスリン抵抗性改善剤感受性ポリヌクレオチド」の転写産物である、「インスリン抵抗性改善剤感受性蛋白質」の発現量を測定する方法がある。
培養細胞からの、全RNAの抽出、「インスリン抵抗性改善剤感受性ポリヌクレオチド」の発現量の測定、「インスリン抵抗性改善剤感受性蛋白質」の発現量の測定については、上記「1.1マウスKdapポリヌクレオチドの検出」、「4.1.4「インスリン抵抗性改善剤感受性ポリヌクレオチド」の発現量を測定するためのその他の方法」及び「4.2「インスリン抵抗性改善剤感受性蛋白質」を利用した糖代謝異常及び/又は脂質代謝異常の検出方法」の項に既に記載した方法に従って行うことができる。
6.1 「インスリン抵抗性改善剤感受性ポリヌクレオチド」を用いる方法
本発明のスクリーニング方法としては例えば、哺乳動物由来培養細胞を用いる場合、哺乳動物個体を用いる場合についてそれぞれ以下のようになる。
A)哺乳動物由来培養細胞を用いる場合
A−1)以下の工程1)乃至3)を含む。
1)被験物質を添加した培地で培養した哺乳動物由来培養細胞より、全RNAを抽出する工程;
2)1)由来の全RNAと被験物質を添加しないで培養した哺乳動物培養細胞由来全RNAの間における、本発明の「インスリン抵抗性改善剤感受性ポリヌクレオチド」のいずれか一つの発現量の差を検出する工程;
3)ポリヌクレオチドの発現量の差を解析することにより、被験物質の、糖代謝異常及び/又は脂質代謝異常の治療効果及び/又は予防効果を判定する工程。
A−2)以下の工程1)乃至4)を含む。
1)被験物質を添加した培地で培養した哺乳動物由来培養細胞より、全RNA画分を抽出する工程;
2)被験物質を添加しない培地で培養した哺乳動物由来培養細胞より、全RNA画分を抽出する工程;
3)上記工程1)由来の全RNA画分と上記工程2)由来の全RNA画分における、本発明の「インスリン抵抗性改善剤感受性ポリヌクレオチド」のいずれか一つの発現量を測定する工程;
4)上記工程1)由来の全RNA画分と上記工程2)由来の全RNA画分との間における、上記工程3)によって測定されたポリヌクレオチドの発現量の差を解析することにより、被験物質の糖代謝異常及び/又は脂質代謝異常の治療効果及び/又は予防効果を判定する工程。
B)哺乳動物個体を用いる場合
B−1)以下の工程1)乃至3)を含む。
1)被験物質を投与した動物より採取した血液、肝臓及び/又は脂肪組織を含む検体より、全RNA画分を抽出する工程;
2)1)由来の全RNA画分と被験物質を投与しなかった動物より採取した血液、肝臓及び/又は脂肪組織を含む検体より得た全RNA画分との間における、本発明の「インスリン抵抗性改善剤感受性ポリヌクレオチド」のいずれか一つ発現量の差を検出する工程;
3)上記工程2)に記載のポリヌクレオチドの発現量の差を解析することにより、被験物質の糖代謝異常及び/又は脂質代謝異常の治療効果及び/又は予防効果を判定する工程。
B−2)以下の工程1)乃至4)を含む。
1)被験物質を投与した動物より採取した血液、肝臓及び/又は脂肪組織を含む検体より、全RNA画分を抽出する工程;
2)被験物質を投与しなかった動物より採取した血液、肝臓及び/又は脂肪組織を含む検体より、全RNA画分を抽出する工程;
3)上記工程1)由来の全RNA画分と上記工程2)由来の全RNA画分における、本発明の「インスリン抵抗性改善剤感受性ポリヌクレオチド」のいずれか一つの発現量を測定する工程;
4)上記工程3)によって測定された、上記工程1)由来の全RNA画分と上記工程2)由来の全RNA画分との間における、ポリヌクレオチドの発現量の差を解析することにより、被験物質の糖代謝異常及び/又は脂質代謝異常の治療効果及び/又は予防効果を判定する工程。
6.2 「インスリン抵抗性改善剤感受性蛋白質」を用いる場合
本発明の「インスリン抵抗性改善剤感受性ポリヌクレオチド」の発現量を測定することを利用したスクリーニング方法については哺乳動物培養細胞を用いた場合と動物固体を用いた場合についてそれぞれ以下の工程を含む。
A)哺乳動物由来培養細胞を用いる場合
A−1)以下の工程1)及び2)を含む:
1)被験物質を添加した培地で培養した哺乳動物由来培養細胞における、本発明の「インスリン抵抗性改善剤感受性蛋白質」のいずれか一つの発現量を測定する工程;
2)1)で測定された蛋白質の発現量と、被験物質を添加しない培地で培養した哺乳動物由来培養細胞における該蛋白質の発現量の差を解析することにより、被験物質の糖代謝異常及び/又は脂質代謝異常の治療効果及び/又は予防効果を判定する工程。
A−2)以下の工程1)乃至3)を含む:
1)被験物質を添加した培地で培養した哺乳動物由来培養細胞における、本発明の「インスリン抵抗性改善剤感受性蛋白質」のいずれか一つの発現量を測定する工程;
2)被験物質を添加しない培地で培養した哺乳動物由来培養細胞における、上記工程1)に記載の蛋白質の発現量を測定する工程;
3)上記工程1)で測定された蛋白質の発現量と、上記工程2)で測定された該蛋白質の発現量の差を検出し、被験物質の糖代謝異常及び/又は脂質代謝異常の治療効果及び/又は予防効果を判定する工程。
A−3)以下の工程1)乃至3)を含む:
1)被験物質を添加した培地で培養した哺乳動物由来培養細胞から得た全蛋白質を固相化する工程;
2)上記固相化蛋白質における、本発明の「インスリン抵抗性改善剤感受性蛋白質」のいずれか一つの発現量を測定する工程;
3)上記工程2)で検出された蛋白質の発現量と、被験物質を添加しない培地で培養した哺乳動物由来培養細胞から得た全蛋白質における該蛋白質の発現量の差を解析することにより、被験物質の糖代謝異常及び/又は脂質代謝異常の治療効果及び/又は予防効果を判定する工程。
A−4)以下の工程1)乃至5)を含む:
1)被験物質を添加した培地で培養した哺乳動物由来培養細胞から得た全蛋白質を固相化する工程;
2)被験物質を添加しない培地で培養した哺乳動物由来培養細胞から得た全蛋白質を固相化する工程;
3)上記工程1)由来の固相化蛋白質と上記工程2)由来の固相化蛋白質における本発明の「インスリン抵抗性改善剤感受性蛋白質」のいずれか一つの発現量を測定する工程;
4)上記工程2)に記載の固相化蛋白質における上記3)で測定した蛋白質と同じ蛋白質の発現量を該蛋白質に特異的に結合する抗体又はリガンドを用いて測定する工程;
5)上記工程1)由来の固相化蛋白質と上記工程2)由来の固相化蛋白質との間における、上記工程3)で測定された蛋白質の発現量の差を解析することにより、被験物質の、糖代謝異常及び/又は脂質代謝異常の治療効果及び/又は予防効果を判定する工程。
B)哺乳動物個体を用いる場合
B−1)以下の工程1)及び2)を含む:
1)被験物質を投与された哺乳動物個体より採取した検体における、本発明の「インスリン抵抗性改善剤感受性蛋白質」のいずれか一つの発現量を測定する工程;
2)上記工程1)で測定された蛋白質の発現量と、被験物質を投与されなかった哺乳動物個体から採取した検体における該蛋白質の発現量の差を解析することにより、被験物質の糖代謝異常及び/又は脂質代謝異常の治療効果及び/又は予防効果を判定する工程。
B−2)以下の工程1)乃至3)を含む:
1)被験物質を投与された哺乳動物個体より採取した検体における、本発明の「インスリン抵抗性改善剤感受性蛋白質」のいずれか一つの発現量を測定する工程;
2)被験物質を投与されなかった哺乳動物個体より採取した検体における、該蛋白質の発現量を測定する工程;
3)上記工程1)で測定された蛋白質の発現量と、上記工程2)で測定された該蛋白質の発現量の差を解析することにより、被験物質の糖代謝異常及び/又は脂質代謝異常の治療効果及び/又は予防効果を判定する工程。
B−3)以下の工程1)乃至3)を含む:
1)被験物質を投与された哺乳動物個体より採取した検体中の全蛋白質を固相化する工程;
2)上記固相化蛋白質における、本発明の「インスリン抵抗性改善剤感受性蛋白質」のいずれか一つの発現量を測定する工程;
3)上記工程2)で検出された蛋白質の発現量と、被験物質を投与されなかった哺乳動物個体より採取した検体中における該蛋白質の発現量の差を解析することにより、被験物質の糖代謝異常及び/又は脂質代謝異常の治療効果及び/又は予防効果を判定する工程。
B−4)以下の工程1)乃至5)を含む:
1)被験物質を投与された哺乳動物個体より採取した検体中の全蛋白質を固相化する工程;
2)被験物質を投与されなかった哺乳動物個体より採取した検体中の全蛋白質を固相化する工程;
3)上記1)由来の固相化蛋白質と上記工程2)由来の固相化蛋白質における、本発明の「インスリン抵抗性改善剤感受性蛋白質」のいずれか一つの発現量を測定する工程;
4)上記工程1)由来の固相化蛋白質と上記工程2)由来の固相化蛋白質との間における、上記工程3)で測定された蛋白質の発現量の差を解析することにより、被験物質の、糖代謝異常及び/又は脂質代謝異常の治療効果及び/又は予防効果を判定する工程。
6.3 グリコーゲン濃度等を測定する場合
本発明の「インスリン抵抗性改善剤感受性蛋白質」とグルタチオンS−トランスフェラーゼ(GST)との融合タンパク質で処理したラット初代肝細胞では、コントロールとしたGSTで処理した細胞に比べ、インスリンを添加した場合もインスリンを添加しない場合もともに、グリコーゲンの合成の低下が観察される。特に、コントロールで観察されるインスリン依存的なグリコーゲン合成が「インスリン抵抗性改善剤感受性蛋白質」とグルタチオンS−トランスフェラーゼ(GST)との融合タンパク質ではほとんどみられなくなることから、本発明における、「インスリン抵抗性改善剤感受性蛋白質」は肝細胞のインスリン感受性を低下させ、インスリン受容体活性化よりグリコーゲン合成に至る反応のうち一つ以上の段階を抑制及び/又は一つ以上の段階の活性を低下させることにより、インスリン依存的なグリコーゲン合成酵素系の働きを低下させていると考えられる。なお、グリコーゲン濃度は通常の方法によって測定することができる。
したがって、「インスリン抵抗性改善剤感受性蛋白質」存在下で、グリコーゲン濃度を指標として糖代謝異常及び/又は脂質代謝異常の治療効果及び/又は予防効果を有する物質のスクリーニングを行うことができ、このようなスクリーニング系は以下の工程を含む。
A)以下の工程1)乃至3)を含む。
1)下記のi)乃至iii)のいずれか一つに記載の蛋白質と被験物質とを添加して培養した哺乳動物由来培養細胞中のグリコーゲン濃度を測定する工程;
i)配列表の配列番号3のアミノ酸番号1乃至419に示されるアミノ酸配列を含むことからなる蛋白質、
ii)配列表の配列番号7のアミノ酸番号1乃至420に示されるアミノ酸配列を含むことからなる蛋白質、
iii)上記i)又はii)に記載の蛋白質のアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなり、かつ、グリコーゲン濃度低下作用を有する蛋白質;
2)上記工程1)のi)乃至iii)のいずれの蛋白質も添加しないで、被験物質を添加して培養した哺乳動物由来培養細胞中のグリコーゲン濃度を測定する工程;
3)上記工程1)で測定したグリコーゲン濃度と上記工程2)で測定したグリコーゲン濃度の差を解析することにより、被験物質の、糖代謝異常及び/又は脂質代謝異常に対する、治療効果及び/又は予防効果を判定する工程。
B)以下の工程1)乃至4)を含む。
1)下記のi)乃至iii)のいずれか一つに記載の蛋白質と被験物質とを添加して培養した哺乳動物由来培養細胞にインスリンを添加してインキュベートする工程;
i)配列表の配列番号3のアミノ酸番号1乃至419に示されるアミノ酸配列を含むことからなる蛋白質、
ii)配列表の配列番号7のアミノ酸番号1乃至420に示されるアミノ酸配列を含むことからなる蛋白質、
iii)上記i)又はii)に記載の蛋白質のアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなり、かつ、グリコーゲン濃度低下作用を有する蛋白質;
2)上記工程1)のi)乃至iii)のいずれの蛋白質も添加しないで、被験物質を添加して培養した哺乳動物由来培養細胞にインスリンを添加してインキュベートする工程;
3)上記工程1)由来の哺乳動物由来培養細胞中と上記工程2)由来の哺乳動物由来培養細胞中のグリコーゲン濃度を測定する工程;
4)上記工程1)由来の哺乳動物由来培養細胞と上記工程2)由来の哺乳動物由来培養細胞との間における、上記工程3)で測定したグリコーゲン濃度の差を解析することにより、被験物質の、糖代謝異常及び/又は脂質代謝異常に対する、治療効果及び/又は予防効果を判定する工程。
C) 下記の工程1)乃至4)を含む:
1)哺乳動物個体に、以下のi)乃至iii)のいずれか一つに記載の蛋白質及び被験物質を投与する工程;
i)配列表の配列番号3のアミノ酸番号1乃至419に示されるアミノ酸配列を含むことからなる蛋白質、
ii)配列表の配列番号7のアミノ酸番号1乃至420に示されるアミノ酸配列を含むことからなる蛋白質、
iii)上記i)又はii)に記載の蛋白質のアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなり、かつ、グリコーゲン濃度低下作用を有する蛋白質;
2)哺乳動物個体に、上記工程1)のi)乃至iii)のいずれか一つに記載の蛋白質を投与する工程;
3)上記工程1)由来の哺乳動物個体及び上記工程2)由来の哺乳動物個体の血中のグリコーゲン濃度及び/又は中性脂質濃度を測定する工程;
4)上記工程1)由来の哺乳度物個体及び上記工程2)由来の哺乳動物個体との間における、上記工程3)で測定した、血中のグルコース濃度、グリコーゲン濃度及び/又は中性脂質濃度の差を解析することにより、被験物質の、糖代謝異常及び/又は脂質代謝異常に対する、治療効果及び/又は予防効果を判定する工程。
D) 下記の工程1)乃至5)を含む:
1)哺乳動物個体に、以下のi)乃至iii)のいずれか一つに記載のポリヌクレオチドを発現させる工程;
i)配列表の配列番号3のアミノ酸番号1乃至419に示されるアミノ酸配列を含むことからなる蛋白質、
ii)配列表の配列番号7のアミノ酸番号1乃至420に示されるアミノ酸配列を含むことからなる蛋白質、
iii)上記i)又はii)に記載の蛋白質のアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなり、かつ、グリコーゲン濃度低下作用を有する蛋白質、
2)上記工程1)に記載の哺乳動物個体に被験物質を投与する工程;
3)上記工程1)のi)乃至iii)に記載のいずれのポリヌクレオチドも発現させない哺乳動物個体に被験物質を投与する工程;
4)上記工程2)由来の哺乳動物個体と上記工程3)由来の哺乳動物個体における血中のグルコース濃度、グリコーゲン濃度及び/又は中性脂質濃度を測定する工程;
5)上記工程2)由来の哺乳動物個体と上記工程3)由来の哺乳動物個体との間における、上記工程4)で測定された、血中のグルコース濃度、グリコーゲン濃度及び/又は中性脂質濃度の差を解析することにより、被験物質の、糖代謝異常及び/又は脂質代謝異常に対する、治療効果及び/又は予防効果を判定する工程。
6.4 判定
以上に記載した方法で、被験物質を添加した哺乳動物由来培養細胞及び/又は、被験物質を投与した哺乳動物個体で、本発明の「インスリン抵抗性改善剤感受性ポリヌクレオチド」及び/又は「インスリン抵抗性改善剤感受性蛋白質」の発現量が被験物質を添加しないコントロールに比べ有意に低下していた場合、被験物質は糖代謝異常及び/又は脂質代謝異常の治療効果及び/又は予防効果があると判定することができる。
また、「インスリン抵抗性改善剤感受性蛋白質」存在下で、グリコーゲン濃度を指標としてコントロールに比べ、グリコーゲン濃度を上昇させる物質は糖代謝異常及び/又は脂質代謝異常の治療効果及び/又は予防効果があると判定することができる。
7.直接相互作用する物質の探索
本発明の他の一つの態様としては、本発明の「インスリン抵抗性改善剤感受性蛋白質」の活動を抑制するような物質を得ることを目的とした、該蛋白質の立体構造をベースとしたドラッグデザインの手法を含む。このような手法は、ラショナルドラッグデザイン法として知られており、酵素活性などの機能や、リガンド、コファクター、又はDNAへの結合などを効率よく阻害もしくは活性化させるような化合物の探索に利用されている。この例として、すでに上市されている抗HIV剤であるプロテアーゼの阻害剤がよく知られている。本発明の「インスリン抵抗性改善剤感受性蛋白質」の三次元構造解析においても、X―線結晶解析や核磁気共鳴法といった一般的によく知られている手法が利用できると考えられる。さらに、本発明の「インスリン抵抗性改善剤感受性蛋白質」の機能を抑制する物質の探索には、コンピュータードラッグデザイン(CADD)を活用した設計も可能である。この例としては、慢性関節リウマチ治療の新たなゲノム新薬として期待されているAP−1の働きを阻害する低分子化合物(国際特許出願公開WO99/58515号)などが知られている。このような方法により、本発明の「インスリン抵抗性改善剤感受性蛋白質」に直接結合したり、あるいは本発明の「インスリン抵抗性改善剤感受性蛋白質」と他の因子との相互作用を阻害することにより、本発明の「インスリン抵抗性改善剤感受性蛋白質」の機能を抑制するような物質を得ることができる。
さらに、他の一つの態様は、本発明の「インスリン抵抗性改善剤感受性蛋白質」が会合するポリペプチド、すなわち本発明の「インスリン抵抗性改善剤感受性蛋白質」のパートナータンパク質に関する。すなわち、本発明は、本発明の「インスリン抵抗性改善剤感受性蛋白質」の活性を調節するパートナータンパク質のスクリーニング方法に関する。
このスクリーニング方法の一つの態様は、「インスリン抵抗性改善剤感受性蛋白質」に被験タンパク質試料を接触させ、「インスリン抵抗性改善剤感受性蛋白質」に結合するタンパク質を選択する工程を含む。このような方法としては、例えば、精製した「インスリン抵抗性改善剤感受性蛋白質」を用いて、これに結合するタンパク質のアフィニティー精製を行う方法が挙げられる。具体的な方法の一例を示せば、「インスリン抵抗性改善剤感受性蛋白質」にヒスチジン6個よりなる配列をアフィニティータグとして融合したものを作製して、これを細胞の抽出液(予めニッケル−アガロースカラムにチャージして、このカラムを素通りした画分)と4℃で12時間インキュベートし、次いで、この混合物に別途ニッケル−アガロース担体を加えて4℃で1時間インキュベートする。ニッケル−アガロース担体を洗浄バッファーで十分洗浄した後、100mMイミダゾールを加えることにより、「インスリン抵抗性改善剤感受性蛋白質」と特異的に結合する細胞抽出液中のタンパク質を溶出させて精製し、この構造を決定する。このようにして、「インスリン抵抗性改善剤感受性蛋白質」と直接結合するタンパク質、及び「インスリン抵抗性改善剤感受性蛋白質」との結合活性は持たないが、サブユニットとして「インスリン抵抗性改善剤感受性蛋白質」に直接結合するタンパク質と複合体を形成することにより間接的に「インスリン抵抗性改善剤感受性蛋白質」に結合するタンパク質が精製できる[実験医学別冊、バイオマニュアルシリーズ5「転写因子研究法」pp215−219(羊土社刊)]。
別の方法としては、ファーウエスタンブロット法[実験医学別冊、「新遺伝子工学ハンドブック」pp76−81(羊土社刊)]や、酵母や哺乳類動物細胞を用いたツーハイブリッドシステム法[実験医学別冊、「新遺伝子工学ハンドブック」pp66−75(羊土社刊)、「チェックメイト・マンマリアン・ツーハイブリッドシステム」(プロメガ社製)]によるクローニングも可能であるが、これらの方法に限定されない。
このようにして、本発明の「インスリン抵抗性改善剤感受性蛋白質」と直接もしくは間接的に相互作用するパートナータンパク質のcDNAが得られれば、「インスリン抵抗性改善剤感受性蛋白質」と該パートナータンパク質との相互作用を阻害する物質の機能的スクリーニングに利用することができる。具体的には、例えば、「インスリン抵抗性改善剤感受性蛋白質」とグルタチオンS−トランスフェラーゼとの融合タンパク質を調製して、抗グルタチオンS−トランスフェラーゼ抗体で覆ったマイクロプレートに結合させた後、ビオチン化した該パートナータンパク質をこの融合タンパク質と接触させ、該融合タンパク質との結合をストレプトアビジン化アルカリフォスファターゼで検出する。ビオチン化した該パートナータンパク質添加の際、被験物質も添加し、融合タンパク質と該パートナータンパク質との結合を促進あるいは阻害する物質を選択する。この方法では、融合タンパク質に直接作用する物質又は該パートナータンパク質に直接作用する物質が得られる。
融合タンパク質と該パートナータンパク質との結合が間接的であり、何らかの別の因子を介しているような場合には、例えば該因子を含むような細胞抽出液存在下で、同様に上記アッセイを行う。この場合には、該因子に対して作用するような物質も選択される可能性がある。
また、得られたパートナータンパク質が、「インスリン抵抗性改善剤感受性蛋白質」の機能を促進する活性を有している場合には、既に記載した「インスリン抵抗性改善剤感受性蛋白質」の遺伝子の発現ベクターを応用した試験方法に従って、糖代謝異常及び/又は脂質代謝異常の改善剤又は予防剤、例えば、インスリン抵抗性の治療効果及び/又は予防効果を有する2型糖尿病や高脂血症の治療又は予防剤として有用な候補物質のスクリーニングを行うことができる。また、得られたパートナー蛋白質が、「インスリン抵抗性改善剤感受性蛋白質」の機能を促進する活性を有している場合には、このような促進因子をコードするヌクレオチド配列を有するポリヌクレオチドは、糖代謝異常や脂質代謝異常、例えば、2型糖尿病や高脂血症の遺伝子治療に用いることができる。
そのようなポリヌクレオチドは、例えば同定された阻害因子のアミノ酸配列を解析し、該アミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列からなるオリゴヌクレオチドプローブを合成してcDNAライブラリーやゲノムライブラリーのスクリーニングを行うことにより取得できる。また、「インスリン抵抗性改善剤感受性蛋白質」の機能の阻害活性を有するぺプチドが、ランダムに合成された人工ペプチドライブラリー由来である場合は、該ペプチドのアミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列からなるDNAを化学合成する。
遺伝子治療においては、そのようにして得られた阻害因子をコードする遺伝子を、例えばウイルスベクターに組み込んで、該組換えウイルスベクターを有するウイルス(無毒化されたもの)を患者に感染させる。患者体内ではインスリン抵抗性改善因子が産生され、インスリン抵抗性が改善する機能を有するので、糖代謝異常や脂質代謝異常、例えば、2型糖尿病や高脂血症のの治療が可能となる。
遺伝子治療剤を細胞内に導入する方法としては、ウイルスベクターを利用した遺伝子導入方法、あるいは非ウイルス性の遺伝子導入方法(日経サイエンス,1994年4月号,20−45頁、実験医学増刊,12(15)(1994)、実験医学別冊「遺伝子治療の基礎技術」,羊土社(1996))のいずれの方法も適用することができる。
ウイルスベクターによる遺伝子導入方法としては、例えばレトロウイルス、アデノウイルス、アデノ関連ウイルス、ヘルペスウイルス、ワクシニアウイルス、ポックスウイルス、ポリオウイルス、シンビスウイルス等のDNAウイルス又はRNAウイルスに、TR4あるいは変異TR4をコードするDNAを組み込んで導入する方法が挙げられる。このうち、レトロウイルス、アデノウイルス、アデノ関連ウイルス、ワクシニアウイルスを用いた方法が、特に好ましい。非ウイルス性の遺伝子導入方法としては、発現プラスミドを直接筋肉内に投与する方法(DNAワクチン法)、リポソーム法、リポフェクチン法、マイクロインジェクション法、リン酸カルシウム法、エレクトロポレーション法等が挙げられ、特にDNAワクチン法、リポソーム法が好ましい。
また遺伝子治療剤を実際に医薬として作用させるには、DNAを直接体内に導入するインビボ(in vivo)法及びヒトからある種の細胞を取り出し体外でDNAを該細胞に導入し、その細胞を体内に戻すエクスビボ(ex vivo)法がある(日経サイエンス,1994年4月号,20−45頁、月刊薬事,36(1),23−48(1994)、実験医学増刊, 12 (15)(1994))。
例えば、該遺伝子治療剤がインビボ法により投与される場合は、疾患、症状等に応じ、静脈、動脈、皮下、皮内、筋肉内等、適当な投与経路により投与される。またインビボ法により投与する場合は、該遺伝子治療剤は一般的には注射剤等とされるが、必要に応じて慣用の担体を加えてもよい。また、リポソーム又は膜融合リポソーム(センダイウイルス−リポソーム等)の形態にした場合は、懸濁剤、凍結剤、遠心分離濃縮凍結剤等のリポソーム製剤とすることができる。
配列表の配列番号2のヌクレオチド番号1乃至1479に示されるヌクレオチド配列又は配列番号6のヌクレオチド番号1乃至1438に示されるヌクレオチド配列又は部分配列に相補的なヌクレオチド配列は、いわゆるアンチセンス治療に用いることができる。アンチセンス分子は、配列表の配列番号2のヌクレオチド番号1乃至1479に示されるヌクレオチド配列又は配列番号6のヌクレオチド番号1乃至1438に示されるヌクレオチド配列の一部に相補的な、通常15乃至30merからなるDNA、もしくはそのホスホロチオエート、メチルホスホネート又はモルフォリノ誘導体などの安定なDNA誘導体、2’−O−アルキルRNAなどの安定なRNA誘導体として用いられ得る。そのようなアンチセンス分子を、微量注入、リポソームカプセル化により、あるいはアンチセンス配列を有するベクターを利用して発現させるなど、本発明の技術分野において周知の方法で、細胞に導入することができる。このようなアンチセンス療法は、配列表の配列番号2のヌクレオチド番号1乃至1479に示されるヌクレオチド配列又は配列番号6のヌクレオチド番号1乃至1438に示されるヌクレオチド配列がコードするタンパク質の活性が増加しすぎることによって引き起こされる病気の治療又は予防に有用である。
上記アンチセンスオリゴヌクレオチドを含む医薬として有用な組成物は、医薬として許容できる担体の混合などの公知の方法によって製造され得る。このような担体と製造方法の例は、Applied Antisense Oligonucleotide Technology(1998 Wiley−Liss、Inc.)に記載されている。そして、配列番号2のヌクレオチド番号1乃至1479に示されるヌクレオチド配列又は配列番号6のヌクレオチド番号1乃至1438に示されるヌクレオチド配列を含む遺伝子の発現やその遺伝子産物の活性に異常の認められる患者の治療に十分な量を各人に投与される。その有効量は、各人の状態、体重、性別、及び年齢などの種々の因子や、皮下、局所、経口、及び筋肉内といった投与方法の違いによって変化し得る。例えば、静脈注射する場合には、0.02乃至0.2mg/kg/時間で2時間、また、皮下投与の場合には、1乃至200mg/m/日のように変化し得る。
8.本発明の蛋白質を含有する医薬
1)配列表の配列番号3のアミノ酸番号1乃至419に示されるアミノ酸配列を含むことからなる蛋白質、又は配列表の配列番号3のアミノ酸番号1乃至419のアミノ酸配列を含むことからなる蛋白質において1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなり、かつインスリン抵抗性改善剤によって発現が変動し、初代肝細胞と接触させると細胞中のグリコーゲン蓄積反応の抑制及び/又はインスリン刺激によるグリコーゲン合成の抑制活性示す蛋白質;
又は、
2)配列表の配列番号7のアミノ酸番号1乃至419に示されるアミノ酸配列を含むことからなるポリペプチド、又は配列表の配列番号7のアミノ酸番号1乃至420に示されるアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなり、かつインスリン抵抗性改善剤によって発現が変動し、初代肝細胞と接触させると細胞中のグリコーゲン蓄積反応の抑制及び/又はインスリン刺激によるグリコーゲン合成の抑制活性を示す蛋白質、
は糖尿病、高脂血症等の糖代謝異常の治療剤として用いることができ、それ自体あるいは適宜の薬理学的に許容される、賦形剤、希釈剤等と混合し、錠剤、カプセル剤、顆粒剤、散剤若しくはシロップ剤等により経口的に、又は、注射剤、坐剤、貼付剤、若しくは、外用剤等により非経口的に投与することができる。
これらの製剤は、賦形剤(例えば、乳糖、白糖、葡萄糖、マンニトール、ソルビトールのような糖誘導体;トウモロコシデンプン、バレイショデンプン、α澱粉、デキストリンのような澱粉誘導体;結晶セルロースのようなセルロース誘導体;アラビアゴム;デキストラン;プルランのような有機系賦形剤;及び、軽質無水珪酸、合成珪酸アルミニウム、珪酸カルシウム、メタ珪酸アルミン酸マグネシウムのような珪酸塩誘導体;燐酸水素カルシウムのような燐酸塩;炭酸カルシウムのような炭酸塩;硫酸カルシウムのような硫酸塩等の無機系賦形剤を挙げることができる。)、滑沢剤(例えば、ステアリン酸、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウムのようなステアリン酸金属塩;タルク;コロイドシリカ;ビーズワックス、ゲイ蝋のようなワックス類;硼酸;アジピン酸;硫酸ナトリウムのような硫酸塩;グリコール;フマル酸;安息香酸ナトリウム;DLロイシン;ラウリル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸マグネシウムのようなラウリル硫酸塩;無水珪酸、珪酸水和物のような珪酸類;及び、上記澱粉誘導体を挙げることができる。)、結合剤(例えば、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリビニルピロリドン、マクロゴール、及び、前記賦形剤と同様の化合物を挙げることができる。)、崩壊剤(例えば、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースカルシウム、内部架橋カルボキシメチルセルロースナトリウムのようなセルロース誘導体;カルボキシメチルスターチ、カルボキシメチルスターチナトリウム、架橋ポリビニルピロリドンのような化学修飾されたデンプン・セルロース類を挙げることができる。)、乳化剤(例えば、ベントナイト、ビーガムのようなコロイド性粘土;水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウムのような金属水酸化物;ラウリル硫酸ナトリウム、ステアリン酸カルシウムのような陰イオン界面活性剤;塩化ベンザルコニウムのような陽イオン界面活性剤;及び、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステルのような非イオン界面活性剤を挙げることができる。)、安定剤(メチルパラベン、プロピルパラベンのようなパラオキシ安息香酸エステル類;クロロブタノール、ベンジルアルコール、フェニルエチルアルコールのようなアルコール類;塩化ベンザルコニウム;フェノール、クレゾールのようなフェノール類;チメロサール;デヒドロ酢酸;及び、ソルビン酸を挙げることができる。)、矯味矯臭剤(例えば、通常使用される、甘味料、酸味料、香料等を挙げることができる。)、希釈剤等の添加剤を用いて周知の方法で製造される。
本発明の化合物を患者へ導入する方法については、上記に加えてコロイド分散系を用いることができる。コロイド分散系は化合物の生体内の安定性を高める効果や、特定の臓器、組織又は細胞へ化合物を効率的に輸送する効果が期待される。コロイド分散系は、通常用いられるものであれば限定しないが、高分子複合体、ナノカプセル、ミクロスフェア、ビーズ、及び水中油系の乳化剤、ミセル、混合ミセル及びリポソームを包含する脂質をベースとする分散系を挙げる事ができ、好ましくは、特定の臓器、組織又は細胞へ化合物を効率的に輸送する効果のある、複数のリポソーム、人工膜の小胞である(Mannino et al.,Biotechniques,1988,6,682;Blume and Cevc,Biochem.et Biophys.Acta,1990,1029,91;Lappalainen et al.,Antiviral Res.,1994,23,119;Chonn and Cullis,Current Op.Biotech.,1995,6,698 )。
0 .2−0 .4 μm のサイズ範囲をとる単膜リポソームは、巨大分子を含有する水性緩衝液のかなりの割合を被包化し得、化合物はこの水性内膜に被胞化され、生物学的に活性な形態で脳細胞へ輸送される(Fraley et al.,Trends Biochem.Sci.,1981,6,77 )。リポソームの組成は、通常、脂質、特にリン脂質、とりわけ相転移温度の高いリン脂質を1種又はそれ以上のステロイド、特にコレステロールと通常複合したものである。リポソーム生産に有用な脂質の例は、ホスファチジルグリセロール、ホスファチジルコリン、ホスファチジルセリン、スフィンゴ脂質、ホスファチジルエタノールアミン、セレブロシド及びガングリオシドのようなホスファチジル化合物を包含する。特に有用なのはジアシルホスファチジルグリセロールであり、ここでは脂質部分が14−18 の炭素原子、特に16 −18 の炭素原子を含有し、飽和している(14 −18 の炭素原子鎖の内部に二重結合を欠いている)。代表的なリン脂質は、ホスファチジルコリン、ジパルミトイルホスファチジルコリン及びジステアロイルホスファチジルコリンを包含する。
リポソームを包含するコロイド分散系の標的化は、受動的又は能動的のいずれかであってもよい。受動的な標的化は、洞様毛細血管を含有する臓器の網内系細胞へ分布しようとするリポソーム本来の傾向を利用することによって達成される。一方、能動的な標的化は、例えば、ウイルスのタンパク質コート(Morishita et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.(U.S.A.),1993,90,8474 )、モノクローナル抗体(又はその適切な結合部分)、糖、糖脂質又はタンパク質(又はその適切なオリゴペプチドフラグメント)のような特定のリガンドをリポソームへ結合させること、又は天然に存在する局在部位以外の臓器及び細胞型への分布を達成するためにリポソームの組成を変えることによってリポソームを修飾する手法等を挙げる事ができる。標的化されたコロイド分散系の表面は様々なやり方で修飾され得る。リポソームで標的したデリバリーシステムでは、脂質二重層との緊密な会合において標的リガンドを維持するために、リポソームの脂質二重層へ脂質基が取込まれ得る。脂質鎖を標的リガンドと結びつけるために様々な連結基が使用され得る。本発明のオリゴヌクレオチドのデリバリーが所望される細胞の上に支配的に見出される特定の細胞表面分子に結合する標的リガンドは、例えば、(1 )デリバリーが所望される細胞によって支配的に発現される特定の細胞受容体と結合している、ホルモン、成長因子又はその適切なオリゴペプチドフラグメント、又は(2 )標的細胞上で支配的に見出される抗原性エピトープと特異的に結合する、ポリクローナル又はモノクローナル抗体、又はその適切なフラグメント(例えば、Fab ;F (ab’)2 )、であり得る。2種又はそれ以上の生物活性剤(例えば、「インスリン抵抗性改善剤感受性蛋白質」とその他の薬剤)は、単一のリポソーム内部で複合し、投与することもできる。内容物の細胞内安定性及び/又は標的化を高める薬剤をコロイド分散系へ追加することも可能である。
その使用量は症状、年齢等により異なるが、経口投与の場合には、1回当り下限1mg(好適には、30mg)、上限2000mg(好適には、1500mg)を、注射の場合には、1回当り下限0.1mg(好適には、5mg)、上限1000mg(好適には、500mg)を皮下注射、筋肉注射又は静脈注射によって投与することができる。
9.本発明のポリペプチドに対する抗体を含有する医薬

本発明の「インスリン抵抗性改善剤感受性蛋白質」に対する抗体は、糖代謝異常により血糖値及び血中インスリン濃度が正常値より上昇している動物及び/又はヒトにおいて、血糖値及び/又は血中インスリン濃度を低下させ、糖尿病の治療薬となり得る。本発明の「インスリン抵抗性改善剤感受性蛋白質」に対する抗体をヒトに対する医薬として用いる場合、抗原性の問題からヒト型抗ヒト「インスリン抵抗性改善剤感受性蛋白質」抗体を作製することが望ましい。ヒト型抗ヒト「インスリン抵抗性改善剤感受性蛋白質」抗体の作製は、次に述べるような手法により得ることができる。即ち、i)ヒト末梢血あるいは脾臓から採取したヒトリンパ球をin vitroでIL−4存在下、抗原であるヒト「インスリン抵抗性改善剤感受性蛋白質」で感作し、感作したヒトリンパ球をマウスとヒトとのヘテロハイブリドーマであるK/B(ATCC CRL1823)と細胞融合させることにより目的の抗体産生ハイブリドーマをスクリーニングする。得られた抗体産生ハイブリドーマが生産する抗体は、ヒト型抗ヒト「インスリン抵抗性改善剤感受性蛋白質」モノクローナル抗体である。これらの抗体の中からヒト「インスリン抵抗性改善剤感受性蛋白質」の活性を中和する抗体を選別する。しかしながら、このようにヒトリンパ球をin vitroで感作する方法では、一般的に抗原に対して高親和性の抗体を得るのは困難である。従って、ヒト「インスリン抵抗性改善剤感受性蛋白質」に高親和性のモノクローナル抗体を得るには、上記のようにして得られた低親和性のヒト型抗ヒト「インスリン抵抗性改善剤感受性蛋白質」モノクローナル抗体を抗親和化する必要がある。それには、上記のようにして得られ、中和抗体であるものの低親和性であるヒト型抗ヒト「インスリン抵抗性改善剤感受性蛋白質」モノクローナル抗体のCDR領域(特にCDR−3)にランダム変異を導入し、これをファージで発現させてヒト「インスリン抵抗性改善剤感受性蛋白質」を固相化したプレートを用いてファージディスプレー法により、抗原であるヒト「インスリン抵抗性改善剤感受性蛋白質」に強力に結合するファージを選択し、そのファージを大腸菌で増やし、その塩基配列から高親和性を有するCDRのアミノ酸配列を決定すればよい。このようにして得られたヒト型抗ヒト「インスリン抵抗性改善剤感受性蛋白質」モノクローナル抗体をコードする遺伝子を一般的に使用されている哺乳動物細胞用発現ベクターに組み込んで、発現させることによりヒト型抗ヒト「インスリン抵抗性改善剤感受性蛋白質」モノクローナル抗体が得られる。これらの中から、ヒト「インスリン抵抗性改善剤感受性蛋白質」の生物活性を中和し、かつ高親和性である目的のヒト型抗「インスリン抵抗性改善剤感受性蛋白質」モノクローナル抗体を選別することができる。また、ii)Balb/cマウスを用いて、本発明と同じように常法(Kohler et al.: Nature 256, p.495−497, 1975)によりマウス型抗ヒト「インスリン抵抗性改善剤感受性蛋白質」モノクローナル抗体を作製し、ヒト「インスリン抵抗性改善剤感受性蛋白質」の生物活性を中和し、かつ高親和性を有するモノクローナル抗体を選択する。この高親和性マウス型抗ヒト「インスリン抵抗性改善剤感受性蛋白質」モノクローナル抗体のCDR−領域(CDR−1、2及び3)をヒトIgGのCDR領域に移植するCDR−grafting(Winter and Milstein: Nature 349, p293−299, 1991)の手法を駆使することによりヒト型化が可能である。上記に加え、さらにiii)ヒト抹消血リンパ球をSevere combined immune deficiency(SCID)マウスに移植し、この移植されたSCIDマウスはヒト型抗体を生産する(Mosier D. E. et al.: Nature 335, p256−259, 1988; Duchosal M. A. et al.: Nature 355, p258−262, 1992)ので、抗原としてヒト「インスリン抵抗性改善剤感受性蛋白質」を抗原として感作し、スクリーニングすることにより、ヒト「インスリン抵抗性改善剤感受性蛋白質」に特異的なヒト型モノクローナル抗体を生産するリンパ球をそのマウスから採取することができる。得られたリンパ球を前述のヒト型抗体の作製法i)と同様に、マウスとヒトとのヘテロハイブリドーマであるK/B(ATCC CRL1823)と細胞融合させ、得られたハイブリドーマをスクリーニングすることにより、目的のヒト型モノクローナル抗体を産生するハイブリドーマを得ることができる。このようにして得られたハイブリドーマを培養することにより、目的のヒト型モノクローナル抗体を大量に製造でき、該タンパク質の物理的性質や化学的性質などを利用した各種の公知の分離操作法により分離・精製することができる。該方法としては、具体的には例えば、通常のタンパク沈殿剤による処理、限外濾過、分子ふるいクロマトグラフィー(ゲル濾過)、吸着クロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー、アフィニティークロマトグラフィー、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)などの各種液体クロマトグラフィー、透析法、これらの組合せなどを例示できる。また、目的のヒト型モノクローナル抗体をコードする遺伝子(cDNA)をクローニングし、この遺伝子を遺伝子工学的手法により適当なベクターに組み込み、各種動物細胞、混注細胞、あるいは大腸菌などを宿主として発現させることにより、遺伝子組換えヒト型モノクローナル抗体を大量に製造することができる。得られた培養液から上述と同様の方法により精製することにより、精製されたヒト型モノクローナル抗体を大量に得ることができる。更に、上述の方法で得られた抗「インスリン抵抗性改善剤感受性蛋白質」モノクローナル抗体の中から、「インスリン抵抗性改善剤感受性蛋白質」の生物活性を中和する抗体を得ることができる。これら「インスリン抵抗性改善剤感受性蛋白質」の生物活性を中和する抗体は、生体内での「インスリン抵抗性改善剤感受性蛋白質」の生物活性、即ち、インスリンのシグナル伝達をの減弱を抑制することから、医薬として、特に糖尿病に対する治療及び/又は予防剤として期待される。in vivoでの実験動物を利用した抗「インスリン抵抗性改善剤感受性蛋白質」抗体の糖尿病及び/又は高インスリン血症に対する治療及び/又は予防効果は、例えば、「インスリン抵抗性改善剤感受性蛋白質」を過剰に発現しているトランスジェニック動物に同「インスリン抵抗性改善剤感受性蛋白質」抗体を投与し、血糖値の変化を測定することで確認することができる。 このようにして得られた「インスリン抵抗性改善剤感受性蛋白質」の生物活性を中和する抗体は、医薬として特に糖尿病及び/又は高インスリン血症の治療及び/又は予防を目的とした医薬組成物として、あるいはこのような疾患の免疫学的診断のための抗体として有用である。本発明の抗体は製剤化して経口的あるいは非経口的に投与することができる。本発明抗体を含む製剤は、「インスリン抵抗性改善剤感受性蛋白質」を認識する抗体を有効成分として含有する医薬組成物として、ヒトあるいは動物に対し安全に投与されるものである。医薬組成物の形態としては、点滴を含む注射剤、坐剤、経鼻剤、舌下剤、経皮吸収剤などが挙げられる。モノクローナル抗体は高分子蛋白質であることから、バイアル瓶などのガラス容器や注射筒などへの吸着が著しい上に不安定であり、種々の物理化学的因子、例えば、熱、pH及び湿度とうにより容易に失活する。従って、安定な形で製剤化するために、安定化剤、pH調整剤、緩衝剤、可溶化剤、界面活性剤などを添加する。安定化剤としてはグリシン、アラニン等のアミノ酸類、デキストラン40及びマンノース等の糖類、ソルビトール、マンニトール、キシリトール等の糖アルコール等が挙げられ、またこれらの二種以上を併用してもよい。これらの安定化剤の添加量は、抗体の重量にたいして0.01〜100倍、特に0.1〜10倍添加するのが好ましい。これら安定化剤を加えることにより、液状製剤あるいは凍結乾燥製剤の保存安定性を向上することができる。緩衝剤としては、例えばリン酸バッファー、クエン酸バッファー等が挙げられる。緩衝剤は、液状製剤あるいは凍結乾燥製剤の再溶解後の水溶液のpHを調製し、抗体の安定性、溶解性に寄与する。緩衝剤の添加量としては、例えば液状製剤あるいは凍結乾燥製剤を採用解した後の水量に対し、1〜10mMとするのが好ましい。界面活性剤としては、好ましくはポリソルベート20、プルロニックF−68、ポリエチレングリコール等、特に好ましくはポリソルベート80が挙げられ、またこれらの2種以上を併用してもよい。抗体のような高分子蛋白質は容器の材質であるガラスや樹脂などに吸着しやすい。従って、界面活性剤を添加することによって、液状製剤あるいは凍結乾燥製剤の再溶解後の抗体の、容器への吸着を防止することができる。界面活性剤の添加量としては、液状製剤あるいは凍結乾燥製剤の再溶解後の水重量に対して0.001〜1.0%添加することが好ましい。以上のような安定化剤、緩衝剤、あるいは吸着防止剤を加えて本発明抗体の製剤を調製することができるが、特に医療用又は動物用注射剤として用いる場合は、浸透圧として許容される浸透圧比は1〜2が好ましい。浸透圧比は、製剤化に際して塩化ナトリウムの増減により調製することができる。製剤中の抗体含量は、適用疾患、適用投与経路などに応じて適宜調整することができ、ヒトに対するヒト型抗体の投与量は、抗体のヒト「インスリン抵抗性改善剤感受性蛋白質」に対する親和性、即ち、ヒト「インスリン抵抗性改善剤感受性蛋白質」に対する解離定数(Kd値)に対し、親和性が高い(Kd値が低い)ほど、ヒトへの投与量を少なく薬効を発揮することができる。ヒト型抗「インスリン抵抗性改善剤感受性蛋白質」抗体をヒトに対して投与する際には、約0.1〜100mg/kgを1〜30日間に1回投与すればよい。
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。なお、下記実施例において、遺伝子操作に関する各操作は特に明示がない限り、「モレキュラークローニング(Molecular Cloning)」(Sambrook, J.,Fritsch, E.F.及びManiatis、T.著、Cold Spring Harbor Laboratory Pressより1989年に発刊)に記載の方法により行うか、又は、市販の試薬やキットを用いる場合には市販品の指示書に従って使用した。
(参考例)5−[4−(6−メトキシ−1−メチルベンズイミダゾール−2−イルメトキシ)ベンジル]チアゾリジン−2,4−ジオン塩酸塩(化合物A)の製造
欧州特許出願公開第745600号に記載の方法によって合成した、5−[4−(6−メトキシ−1−メチルベンズイミダゾール−2−イルメトキシ)ベンジル]チアゾリジン−2,4−ジオン10.6g及び4規定塩酸−1,4−ジオキサン100mlの混合物を室温で1時間撹拌した。反応混合物を濃縮後、酢酸エチルを加え、析出した成績体を濾取し、酢酸エチルで洗浄して、融点275−277℃を有する目的化合物11.0gを得た。
H−核磁気共鳴スペクトル:δ(ppm):重ジメチルスルホキシド中、内部標準にTMS(テトラメチルシラン)を使用して測定したH−核磁気共鳴スペクトル(400MHz):δ(ppm)は次の通りである。
3.11 (1H, dd, J=14Hz及び9Hz), 3.34 (1H, dd, J=14Hz及び4Hz),3.89 (3H, s), 3.98 (3H, s), 4.91 (1H, dd, J=9Hz及び4Hz),5.64 (2H, s), 7.14 (2H, d, J=9Hz), 7.15 (1H, d, J=9Hz)7.25 (2H, d, J=9Hz), 7.50 (1H, s), 7.70 (1H, d, 9Hz),12.04 (1H, s, DO添加により消失)。
(実施例1)KKマウスへの薬剤投与及び血液生化学値測定
a)KKマウスの準備
通常の食餌(F2:船橋農場製)で飼育した18週齢の雄性KKマウス(高脂血症マウス:日本クレアより購入)の体重を測定し、次いで尾静脈から採血し、遠心分離により血漿を分離し、血糖値を測定した。血糖値が3.5g/L以上の個体を選抜し、体重及び血糖値が群毎にほぼ等しくなるように3匹ずつ群分けし、実験に供した(表1)。本実験に用いた化合物Aは粉末の餌(F2:船橋農場製)に0.003%(薬剤重量/餌重量)の濃度で添加することによって食餌と一緒に投与した(混餌投与)。なお、コントロール群では化合物Aを添加しない食餌を与えた。
b)薬剤投与及び皮下白色脂肪組織の採取
群分けの日を0日とし、化合物Aの投与を開始した。化合物Aの投与開始日を0日とし、1日後、3日後、8日後の午前中に体重を測定し、尾静脈よりヘパリン処理済みヘマトクリット管2本分及びEDTA処理したヘマトクリット管1本分を採血し、遠心により血漿を分離し、血漿中の血糖値、インスリン濃度、トリグリセライド濃度及び遊離脂肪酸濃度を測定した。血糖値はグルコローダーGXT(A&T社製)、インスリン濃度はRat Insulin RIA キット(Linco Research Inc.社製(米国))、トリグリセライド濃度はトリグリセライドE−テストワコー(和光純薬(株)社製)そして遊離脂肪酸濃度はNEFA C−テストワコー(和光純薬(株)社製)を用いて測定を行なった。同じ日の午後に断頭によってと殺し、皮下白色脂肪組織(subcutanious white adipose tissue)を採取し、液体窒素により凍結した。なお、採血日の前日から当日にかけて体重と摂餌量を測定し、各個体における薬物投与量を計算した。化合物Aを投与しなかった群についても同様に行なった(表2)。
表中、“0日”で示す値は、群分けの日(0日)における血漿中の血糖値、インスリン濃度及びトリグリセライド濃度を表し、“1日”、“3日”、“8日”で示す値は、それぞれ実験開始から1日、3日、8日後の血漿中の血糖値、インスリン濃度、トリグリセライド濃度及び遊離脂肪酸濃度を表す。
表2に示すように、化合物A非投与群では、実験開始1日後、3日後、8日後を通じて血漿中の血糖値、インスリン濃度、トリグリセライド濃度及び遊離脂肪酸濃度の変動はほとんど無く、いずれも高い値を示していた。これに対し化合物A投与群では、血糖値及び血漿中トリグリセライド濃度は非投与群と比較して投与1日後では有意な差は認められなかったが、投与3日後、8日後ではいずれも有意に低下していた。また血漿中インスリン濃度及び遊離脂肪酸濃度は、非投与群と比較して投与1日後から低下傾向が認められ、投与3日後、8日後ではいずれも非投与群と比較して有意に低下していた。
(実施例2)マウス脂肪組織からの全RNAの抽出
実施例1で得たマウス皮下白色脂肪組織を、速やかに液体窒素内に入れ急速冷凍した後、使用時まで−80℃に保存した。皮下白色脂肪組織0.2gに対し約2mLのTRIzol試薬(インビトロジェン(INVITROGEN)社製)を加え、超高速ホモジナイザー(ポリトロン:キネマティカ社製)を用いて氷上でホモジナイズを行った(目盛6で1分間)。ホモジナイズした皮下白色脂肪組織を12000xg、4℃で10分間遠心した後、水層を新たなチューブに移し、0.2容量のクロロホルムを加え、15秒間激しく転倒混和した。室温で3分間静置してから、12000xg、4℃で15分間遠心した。遠心後、上層を回収し、0.8容量のリボヌクレアーゼを含まないイソプロピルアルコールを加えて混和した。室温で10分間静置後、12000xg、4℃で15分間遠心分離した後、上清を除去してリボヌクレアーゼを含まない70%エタノールを加え、12000xg、4℃で10分間遠心分離した。上清を除去して、沈殿を乾燥させることにより、全RNAを得た。この全RNA試料は、使用時まで−80℃に保存した。
(実施例3)遺伝子チップ解析
遺伝子チップ解析は、アフィメトリクス社の発現解析技術マニュアル(Expression Analysis Technical Manual)に従って、以下に記載した方法により行った。
a)cDNAの合成
上記実施例2記載の方法で得られた全RNA各5μgを出発材料として、上記アフィメトリクス社の発現解析技術マニュアルの記載に従ってcDNAの合成及び精製を行った(ファーストストランド合成の反応条件は、42℃、1時間とした)。
b)cRNAの合成
a)で得られたcDNAを鋳型として、アフィメトリクス社の発現解析技術マニュアルの記載に従ってcRNAの合成を行った(反応条件は37℃、4.5時間とした)。合成されたcRNAは各群i)〜vi)ごと(3匹分)に等量ずつ混合した。この操作で得られた10μgのcRNAを40mM Tris−Acetate(pH8.1)、100mM 酢酸カリウム、30mM 酢酸マグネシウム存在下94℃で35分間断片化し、プローブ溶液に加えた。
c)プローブ溶液の作製
プローブ溶液に加える各種コントロールcRNA(GeneChip Eukaryotic Hybridization Control Kit)はアマシャム・ファルマシア社から購入した。
d)ハイブリダイゼーション
上記のようにして得られたプローブとハイブリダイズさせる遺伝子チップとして、アフィメトリクス社製マウスゲノムU74セット(Murine Genome U74 ver.2 Set:MG−U74Av2、MG−U74Bv2、MG−U74Cv2)を用いた。ハイブリダイゼーションとその後の洗浄操作は上記マニュアル記載に従って行った(ハイブリダイゼーション条件は、45℃、16−20時間とした)。
e)解析
上記d)でハイブリダイゼーション操作を行った遺伝子チップのデータ解析は、上記マニュアル記載に従って、Gene Chip Microarray Suite 4.0(アフィメトリックス(Affymetrix)社)にて行った。化合物A非投与マウスのデータを基準にして、化合物A投与マウスより得られたデータと比較検討した。その結果、MG−U74Bv2遺伝子チップにおいて下記の表3に示すように、101972_atが示す配列(配列表の配列番号1のヌクレオチド番号1乃至454に示されるヌクレオチド配列)を有する遺伝子のFold Changeは、化合物A投与マウスでは化合物A非投与マウスと比較して投与後1日及び3日で上昇、8日で低下していた。ここで示す“Fold Change”値は、化合物A非投与マウスを基準とした化合物A投与マウスの相対的発現量を表す。例えば遺伝子I及び遺伝子IIのFold Change値が3及び3のとき、化合物A投与マウスにおける遺伝子Iの発現は化合物A非投与マウスの3倍亢進していることを、また遺伝子IIの発現は化合物A非投与マウスの3分の1に低下していることを示す。表3では、投与後1日、3日、8日後のFold Change値を示す。
101972_atの配列を配列表の配列番号1に示す。

(実施例4)マウスcDNA配列の探索
MG−U74Aの101972_atで示されるESTを含む全長cDNA配列を探索するため、配列表の配列番号1に示されるヌクレオチド配列について、GenBank核酸データベース及びGeneSeq核酸データベースを検索したところ、GenBank核酸データベース上のMus musculus kidney−derived aspartic protease−like protein (Kdap)(アクセッション番号:NM_008437.1)及びGeneSeq核酸データベース上のHaematopoietic stem cell specific nucleic acid(アクセッション番号:AAZ94118)と99%のホモロジーを有していることが判明した。これら2つのヌクレオチド配列のORFが完全に一致したので、以後、GenBank核酸データベース上のMus musculus kidney−derived aspartic protease−like protein(Kdap)(アクセッション番号:NM_008437.1:配列表の配列番号2)を元に、マウスcDNAのクローニングを行った。
(実施例5)マウスcDNAのクローニング
「実施例2.マウス脂肪組織からの全RNAの抽出」の項に記載の方法で得られた全RNAを出発材料として、下記の方法に従って配列表の配列番号2に示されるヌクレオチド配列のORFを有するcDNAを取得した。
a) ファーストストランドcDNA合成
ファーストストランドcDNAは、先に示したようにして調製した全RNA6μgをもとにして、First−strand cDNA Synthesis Kit(アマシャム・ファルマシア社)をその添付プロトコールに従って用いることにより合成した。反応は40μlの容量で行なった。反応後、CHROMA SPIN 100 Columns(クロンテック社製)をその添付プロトコールに従って用いることにより精製した。
b) PCR反応
以下のヌクレオチド配列:
5’− ctctagtccccagagatgtc −3’(プライマー1:配列表の配列番号4)、
5’− tgagcttgtaccctaaccag −3’(プライマー2:配列表の配列番号5)
を有するオリゴヌクレオチドを合成した。合成したヌクレオチド配列は、実施例4で得られたGenBank核酸データベース上のMus musculus kidney−derived aspartic protease−like protein(Kdap)(アクセッション番号:NM_008437.1)のヌクレオチド配列をもとにして決定した。
PCR反応はPLATINUM Pfx DNA Polymerase(インビトロジェン社製)をその添付プロトコールに従って用いることにより行った。具体的に以下に示す。
得られたファーストストランドcDNA 1μlに、上記の合成プライマー(配列表の配列番号3及び4)をそれぞれ0.3μM、10X Pfx Amplification Buffer 5μl、dATP 0.3mM、dGTP 0.3mM、dCTP 0.3mM、dTTP 0.3mM、MgSO4 1mM、PLATINUM Pfx DNA Polymerase 2.5Units(全てキットに添付)を添加し、50μlのPCR溶液を作製した。PCR反応は、Peltier Thermal Cycler、PTC−200 DNA Engine(エムジェイジャパン社製)により行った。まず94℃で5分加熱した後、引き続き94℃で15秒、55℃で30秒、68℃で1分30秒の温度サイクルを40回繰り返し、最後に72℃で10分間保温してから、4℃に保存した。反応物を1%のアガロースゲルで電気泳動し、目的cDNA(1287bp)の増幅を確認後、QIAquick PCR Purification Kit(キアゲン(QIAGEN)社製)をその添付プロトコールに従って用いることにより精製した。目的cDNAの濃度は、吸光光度計(Gene Spec I:日立計測器サービス社製)により測定した。
c) TAクローニング
PLATINUM Pfx DNA Polymeraseにより増幅したcDNA断片は平滑末端であるので、TAクローニングするために、上記b)にて精製したcDNAの3’末端にdATPの付加を行なった。精製したcDNA 180ngに、10XPCR Buffer 1μl、MgCl 1.5mM、recombinant Taq DNA Polymerase 2.5Units(全てインビトロジェン社製、recombinant Taq DNA Polymeraseに添付)、dATP 0.2Mを添加し、10μlの反応液を作製した。反応液をPeltier Thermal Cycler、PTC−200 DNA Engine(エムジェイジャパン社製)にて、70℃で30分反応させた後、CHROMA SPIN 100 Columns(クロンテック社製)をその添付プロトコールに従って用いることによりcDNAを精製した。精製したcDNAを、pTARGET Mammalian Expression Vector System(プロメガ(Promega)社製)をその添付プロトコールに従って用いることによりクローニングした。この組換えプラスミドベクターで大腸菌(JM109:宝酒造社製)を形質転換し、50μg/mlのアンピシリンを含むLB寒天培地上で培養した。その結果アンピシリン耐性を示して生育してきた大腸菌コロニーを選択して、2mlの50μg/mlのアンピシリンを含む液体LB培地中で37℃で一晩培養し、常法に準じてプラスミドDNAを回収した。得られたプラスミドDNAについてABI PRISM 3700 DNA Analyzer(アプライド・バイオシステムズ(Applied Biosystems)社製)によりヌクレオチド配列解析を行ない、上記実施例4で示された配列表の配列番号2に示されるヌクレオチド配列のORFを有するcDNAがpTARGET Mammalian Expression Vectorに組み込まれていることを確認し、pID2−TARGETと命名した。予測されたアミノ酸配列を配列表の配列番号5に示す。
実施例6. ヒトホモログの探索
配列表の配列番号5に示されるアミノ酸配列に対応するヒトcDNAを取得するため、GenBankアミノ酸データベース及びGeneSeqアミノ酸データベースを検索したところ、GenBankアミノ酸データベース上のpronapsin A(アクセッション番号:NP_004842.1)及びGeneSeqアミノ酸データベース上のHuman napsin B プロテイン(登録番号AAW54878)と71%のホモロジーを有していることが判明した。
(実施例7)大腸菌におけるマウスポリペプチドの発現及び精製
大腸菌におけるマウスポリペプチドの発現は、グルタチオンSトランスフェラーゼ(GST)と融合させた形で行った。具体的に以下に示す。
a)発現プラスミドの構築
大腸菌において、配列表の配列番号5に示されるポリペプチドよりシグナルペプチドに相当する部分(N末より16アミノ酸:MSPLLLLLLCLLLGNLPCR)を除く配列をGSTと融合させた形で発現させるため、まずPCRにてシグナルペプチドに相当する配列を含まないスクレオチド断片を増幅した。反応はPLATINUM Pfx DNA Polymerase(インビトロジェン社製)をその添付プロトコールに従って用いることにより行った。具体的に以下に示す。
実施例5にて得られたプラスミドpID2−TARGET 10ngに、制限酵素部位EcoRIを付加した合成プライマー2種類
5’−cccgaattctggagcctgaggaggccaaactgatc−3’(プライマー3:配列表の配列番号8)及び、
5’−cccgaattcctaaccagggcgtcttttgaagaa−3’(プライマー4:配列表の配列番号9)
をそれぞれ0.3μM、10X Pfx Amplification Buffer 5μl、dATP 0.3mM、dGTP 0.3mM、dCTP 0.3mM、dTTP 0.3mM、MgSO 1mM、PLATINUM Pfx DNA Polymerase 2.5Units(全てキットに添付)を添加し、50μlのPCR溶液を作製した。PCR反応は、Peltier Thermal Cycler, PTC−200 DNA Engine(エムジェイジャパン製)により行った。まず94℃で5分加熱した後、引き続き94℃で15秒、55℃で30秒、68℃で1分30秒の温度サイクルを40回繰り返し、最後に72℃で10分間保温してから、4℃に保存した。反応物を1%のアガロースゲルで電気泳動し、目的cDNAの増幅を確認後、QIAquick PCR Purification Kit(キアゲン社製)をその添付プロトコールに従って用いることにより精製した。目的cDNAの濃度は、吸光光度計(Gene Spec I:日立計測器サービス社製)により測定した。
上記PCRにて得られたDNA断片を制限酵素EcoRIで消化した後、アガロースゲルにて電気泳動後に目的のバンドを切り出し、QIAquick Gel Extraction Kit(キアゲン社製)をその添付プロトコールに従って用いることにより精製した。これに、同じく制限酵素EcoRIで消化し脱リン酸化した発現ベクター(pGEX−6p2、アマシャム・バイオサイエンス社製)を混ぜあわせ、DNAライゲーションキットver.2(宝酒造社製)をその添付プロトコールに従って用いることにより15℃で15時間ライゲーション反応を行った。次いで、コンピテント大腸菌JM109(宝酒造社製)50μlに上記ライゲーション反応液5μlを添加し氷上で30分間放置した後に、42℃で30秒、氷上で2分間静置した。ついでSOC培地(2% トリプトン、0.5% イーストエキストラクト、0.05% 塩化ナトリウム、2.5mM 塩化カリウム、1mM 塩化マグネシウム、20mM グルコース)500μlを加え、1時間振とう培養した。この培養液を100μg/mlのアンピシリンを含有するL−ブロス寒天培地(1%トリプトン、0.5%イーストエキストラクト、0.5%塩化ナトリウム、0.1%グルコース、0.6%バクト・アガー(ディフコ社製))プレート上に塗り広げ、37Cにて一晩静置培養した。プレート上に現れた単一のアンピシリン耐性コロニーを選択し、このコロニーを白金耳で掻きとって、50μg/mlのアンピシリンを含有するL−ブロス培地にて培養した後に、遠心分離して回収した菌体からアルカリ法によりプラスミドDNAを調製した。このようにして得られたプラスミドを、プラスミドpGEX6P−ID2と命名した。得られたプラスミドDNAについてABI PRISM 3700 DNA Analyzer(Applied Biosystems社製)によりヌクレオチド配列解析を行い、目的DNA断片がその5’上流側のベクター配列中に存在するGST配列と同じ読み枠でpGEX−6P2に組み込まれていることを確認した。得られた形質転換体を大量培養した後、Wizard Purefection Plasmid Purification System(Promega社製)を用いてプラスミドを大量調製した。
b)大腸菌での発現
上記a)にてプラスミド大量調整に用いた大腸菌形質転換体の−80℃グリセロールストック菌体を、50μg/mlのアンピシリンを含有するLB培地2ml中で37℃、6時間前培養後、その培養液をアンピシリン入りLB培地100mlに1/1000量接種して20℃で16時間本培養を行った。本培養中吸光度測定を経時的に実施し、分光光度計を用いて波長600nmにおける培養液の吸光度(OD600)をモニターした。OD600が約1.0になった時点で100mM IPTGを0.2ml添加(終濃度0.2mM)し、更に20℃で約20時間(O/N)培養した。培養液を遠沈管に移し、4℃で5000rpm、20分間遠心することにより集菌した。沈殿を5mlの氷冷しておいたソニケーションバッファー(50mM Tris−HCl(pH8.0)、150mM NaCl、)に懸濁し、Protease Inhibitor Cocktail (シグマ(SIGMA)社製)を1/100量添加後15mlコニカルチューブに分注し、1分ずつ5回超音波処理を行い、大腸菌を破壊した。その後氷冷しておいた10% Triton X−100を終濃度0.25%になるように添加・混合し、4℃で8000rpm、20分間遠心した。可溶性画分を回収し、0.45μmのフィルターにかけ、グルタチオンカラムによるアフィニティー精製に用いた。
ソニケーションバッファーで平衡化したグルタチオンカラム(アマシャム・ファルマシア社製)に上記可溶性画分を重層し樹脂を通過させた後、樹脂体積の5倍量のPBS(−)にて洗浄を2回行った。樹脂体積の5倍量の10mMグルタチオンを用いて溶出し、滴下してくる溶液を1mlずつマイクロチューブに回収した。各溶出画分から5μlを分取し、SDSポリアクリルアミドゲル電気泳動により目的タンパク質の存在を確認した。
(実施例8)ラット初代肝細胞を用いたGST融合型マウスポリペプチドの機能解析
a)ラット初代肝細胞の採取
ラット初代肝細胞は、雄性Wistar−Imamichiラット(動物繁殖研究所)よりコラゲナーゼ灌流法及び低速遠心法により採取した。
ラットにネンブタール(40mg/kg:大日本製薬社製)を腹腔内投与することで麻酔した後、ヘパリン(アベンティス・ファーマ社製)200μlを尾静脈内投与した。開腹後、門脈に18Gの留置針(テルモ社製)を挿入し縫合糸で固定し、灌流ポンプのチューブを接続して前灌流用緩衝液(Hank’s液よりCa2+を除去・0.6mM エチレングリコール ビス(2−アミノエチル エーテル)テトラアセティック・アシッド(Ethyleneglycol bis(2−aminoethyl ether)tetraacetic acid(EGTA))を添加したものを流速30ml/minで流した。灌流開始と同時に下大静脈を切断し放血をおこない、肝臓の脱血が十分になったらコラゲナーゼ溶液(Hank’s液に0.5mg/ml コラゲナーゼ(シグマ社製)と0.05mg/ml Trypsin inhibitor(シグマ社製)を添加)に交換し、肝臓全体が粥状となるまで消化した。コラゲナーゼ処理後肝臓を摘出し、冷えたHank’s溶液中でゆっくりとほぐし、先太ピペットでピペッティングすることで細胞を分散した後、2重に重ねた滅菌ガーゼでろ過した。ろ過液は、さらに冷Hank’s液に懸濁して、低速遠心分離(50Xg、1min)を繰り返し行なうことで肝細胞を単離した。
10% FCS(PAA Laboratories社製)、10nM インスリン(シグマ社製)、10nM デキサメサゾン(シグマ社製)を加えたWilliams’E培地(インビトロジェン社製)に懸濁後、トリパンブルーにて生細胞数の計測を行い、5.0 x 10細胞/mlになるように調整し、コラーゲンタイプIコートの24穴プレート(スミロン社製)に1ウエル当たり0.5ml(2.5x10細胞)ずつプレーティングした。
b)肝細胞の培養
10%FCSを含むWiliam E培地中で37℃、4時間培養した後、FCSを含まないWiliam E培地(10nM インスリン、10nM デキサメサゾンを含む)に交換し、18時間培養した。その後、実施例7で得られたGST融合型マウスポリペプチド(GST−ID2)又はコントロールとしてGSTをそれぞれ10nMの濃度で含むWiliam E培地(10nM インスリン、10nM デキサメサゾン含)に交換し、インスリン刺激前に24時間前刺激した。それから各濃度(0、10、100nM)のインスリンを含むWiliam E培地に交換し、6時間インスリン刺激し、ラット初代肝細胞のインスリン依存的なグリコーゲン合成を誘導した。培養終了後、各ウエルを1mlのPBSで2回洗浄し、プレートごと−80℃のディープフリーザーで凍結した。
c)肝細胞中のグリコーゲン量測定
−80℃のディープフリーザーで凍結したおいたプレートを取り出し、150μlの8M KOHを添加後、100℃の温浴にプレートごと浮かべ15分間細胞を溶解した。氷上で冷やした後、各ウエル中の溶解液を1.5mlチューブに移し、そこに50μlの1M NaSO及び400μlのエタノールを加え混和後、卓上遠心機にて15000rpm、5分遠心した。上清を捨て沈殿を200μlの蒸留水に懸濁後、400μlのエタノールを加え遠心し、再度上清を捨て沈殿を200μlの蒸留水に懸濁した。この溶液50μlに対し、0.2%アントロン(ナカライテスク社製)/硫酸溶液を100μl加え、よくボルテックスした後、94℃で10分間反応させた。冷却後、96ウエルプレートに120μlずつ分取し、分光光度計にて、波長620nmでの吸光度を測定した。検量線より各溶液中のグルコース濃度を算出し、その値を1.1で除することによりグリコーゲン濃度を算出した。結果を図1に示した。
図1に示すように、ID2−GST処理群では、インスリン無添加(0nM)で6時間培養した後の細胞中のグリコーゲン含有量が、コントロールであるGST処理群と比較して有意に低下していた。またGST刺激群で示されるように、ラット初代肝細胞中のグリコーゲン量は10nM及び100nMのインスリン刺激により2倍弱増加したが、ID2−GST処理群ではこのインスリン刺激による細胞内グリコーゲン量の増加は殆んど認められなかった。従って、ラット初代肝細胞を10nMのID2−GSTで24時間前処理すると、インスリン依存的なグリコーゲンの蓄積が減弱することがわかった。
(製剤例)
本発明の医薬組成物は、
1)配列表の配列番号3のアミノ酸番号1乃至419に示されるアミノ酸配列を含むことからなる蛋白質、又は該蛋白質のアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなり、かつ、グリコーゲン濃度低下作用を有する蛋白質。
又は、
2)配列表の配列番号7のアミノ酸番号1乃至420に示されるアミノ酸配列を含むことからなる蛋白質、又は該蛋白質のアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなり、グリコーゲン濃度低下作用を有する蛋白質、
を有する化合物とを水又はそれ以外の薬理学的に許容し得る溶液に溶解した無菌性溶液又は懸濁液のアンプルとして使用に供される。
具体的には例えば、配列表の配列番号3のアミノ酸番号1乃至419に示されるアミノ酸配列を含むことからなる蛋白質、又は配列表の配列番号7のアミノ酸番号1乃至420に示されるアミノ酸配列を含むことからなる蛋白質0.5mgを1リットルの注射用水に溶解し、無菌的にアンプルに分注、封入する。
また、無菌粉末製剤((1)配列表の配列番号3のアミノ酸番号1乃至419に示されるアミノ酸配列を含むことからなる蛋白質、配列表の配列番号7のアミノ酸番号1乃至420に示されるアミノ酸配列を含むことからなる蛋白質を凍結乾燥するのが好ましい)をアンプルに充填しておき、使用時に薬理学的に許容し得る溶液で希釈してもよい。
配列番号4:PCRセンスプライマー
配列番号5:PCRアンチセンスプライマー
配列番号8:PCRセンスプライマー
配列番号9:PCRアンチセンスプライマー
ID2及びID2−GST処理群におけるインスリン濃度とグリコーゲン濃度の関係を示す図。

Claims (28)

  1. 下記の工程1)乃至4)を含む、脂質代謝異常の検出方法:
    1)被験者又は被験動物より採取した検体より、全RNA画分を抽出する工程;
    2)正常人又は正常動物より採取した検体より、全RNA画分を抽出する工程;
    3)上記工程1)由来の全RNA画分と上記工程2)由来の全RNA画分における、下記のi)乃至iii)のいずれか一つに記載のポリヌクレオチドの発現量を測定する工程;
    i)配列表の配列番号2のヌクレオチド番号172乃至1431に示されるヌクレオチド配列を含むことからなるポリヌクレオチド、
    ii)配列表の配列番号6のヌクレオチド番号54乃至1316に示されるヌクレオチド配列を含むことからなるポリヌクレオチド、
    iii)上記i)又はii)のいずれか一つに記載のポリヌクレオチドのヌクレオチド配列と相補的なヌクレオチド配列からなるポリヌクレオチドとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつ、グリコーゲン濃度低下作用を有する蛋白質をコードするポリヌクレオチド;
    4)上記工程1)由来の全RNA画分と上記工程2)由来の全RNA画分との間における、上記工程3)によって測定されたポリヌクレオチドの発現量の差を解析することにより、上記工程1)に記載の被験者又は被験動物の脂質代謝異常を判定する工程。
  2. 下記の工程1)乃至3)を含む、脂質代謝異常の検出方法:
    1)被験者又は被験動物より採取した検体における、下記のi)乃至iii)のいずれか一つに記載の蛋白質の発現量を測定する工程:
    i)配列表の配列番号3のアミノ酸番号1乃至419に示されるアミノ酸配列を含むことからなる蛋白質、
    ii)配列表の配列番号7のアミノ酸番号1乃至420に示されるアミノ酸配列を含むことからなる蛋白質、
    iii)上記i)又はii)に記載の蛋白質のアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列を含むことからなり、かつ、グリコーゲン濃度低下作用を有する蛋白質;
    2)正常人又は正常動物より採取した検体における、上記工程1)のi)乃至iii)のいずれか一つに記載の蛋白質の発現量を測定する工程;
    3)上記工程1)によって測定された蛋白質の発現量と上記工程2)によって測定された該蛋白質の発現量の差を解析することにより、上記工程1)に記載の被験者又は被験動物の脂質代謝異常を判定する工程。
  3. 下記の工程1)乃至4)を含むことからなる、脂質代謝異常に対する治療効果を有する物質のスクリーニング方法:
    1)被験物質を添加した培地で培養した哺乳動物由来培養細胞より、全RNA画分を抽出する工程;
    2)被験物質を添加しない培地で培養した哺乳動物由来培養細胞より、全RNA画分を抽出する工程;
    3)上記工程1)由来の全RNA画分と上記工程2)由来の全RNA画分における、下記のi)乃至iii)のいずれか一つに記載のポリヌクレオチドの発現量を測定する工程;
    i)配列表の配列番号2のヌクレオチド番号172乃至1431に示されるヌクレオチド配列を含むことからなるポリヌクレオチド、
    ii)配列表の配列番号6のヌクレオチド番号54乃至1316に示されるヌクレオチド配列を含むことからなるポリヌクレオチド、
    iii)上記i)又はii)のいずれか一つに記載のポリヌクレオチドのヌクレオチド配列と相補的なヌクレオチド配列からなるポリヌクレオチドとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつ、グリコーゲン濃度低下作用を有する蛋白質をコードするポリヌクレオチド;
    4)上記工程1)由来の全RNA画分と上記工程2)由来の全RNA画分との間における、上記工程3)によって測定されたポリヌクレオチドの発現量の差を解析することにより、被験物質の、脂質代謝異常に対する治療効果を判定する工程。
  4. 下記の工程1)乃至4)を含むことからなる、脂質代謝異常に対する治療効果を有する物質のスクリーニング方法:
    1)被験物質を投与した非ヒト哺乳動物個体より採取した検体より、全RNA画分を抽出する工程;
    2)被験物質を投与しなかった非ヒト哺乳動物個体より採取した検体より、全RNA画分を抽出する工程;
    3)上記工程1)由来の全RNA画分と上記工程2)由来の全RNA画分における、下記のi)乃至iii)のいずれか一つに記載のポリヌクレオチドの発現量を測定する工程;
    i)配列表の配列番号2のヌクレオチド番号172乃至1431に示されるヌクレオチド配列を含むことからなるポリヌクレオチド、
    ii)配列表の配列番号6のヌクレオチド番号54乃至1316に示されるヌクレオチド配列を含むことからなるポリヌクレオチド、
    iii)上記i)又はii)のいずれか一つに記載のポリヌクレオチドのヌクレオチド配列と相補的なヌクレオチド配列からなるポリヌクレオチドとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつ、グリコーゲン濃度低下作用を有する蛋白質をコードするポリヌクレオチド;
    4)上記工程1)由来の全RNA画分と上記工程2)由来の全RNA画分との間における上記工程3)によって検出されたポリヌクレオチドの発現量の差を解析することにより、被験物質の脂質代謝異常に対する治療効果を判定する工程。
  5. 下記の工程1)乃至3)を含むことからなる、脂質代謝異常に対する治療効果を有する物質のスクリーニング方法:
    1)被験物質を添加した培地で培養した哺乳動物由来培養細胞における、下記のi)乃至iii)のいずれか一つに記載の蛋白質の発現量を測定する工程;
    i)配列表の配列番号3のアミノ酸番号1乃至419に示されるアミノ酸配列を含むことからなる蛋白質、
    ii)配列表の配列番号7のアミノ酸番号1乃至420に示されるアミノ酸配列を含むことからなる蛋白質、
    iii)上記i)又はii)に記載の蛋白質のアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなり、かつ、グリコーゲン濃度低下作用を有する蛋白質;
    2)被験物質を添加しない培地で培養した哺乳動物由来培養細胞における、上記工程1)のi)乃至iii)のいずれか一つに記載の蛋白質の発現量を測定する工程;
    3)上記工程1)で検出された蛋白質の発現量と、上記工程2)で検出された該蛋白質の発現量の差を解析することにより、被験物質の脂質代謝異常に対する治療効果を判定する工程。
  6. 下記の工程1)乃至3)を含むことからなる、脂質代謝異常に対する治療効果を有する物質のスクリーニング方法:
    1)被験物質を投与した非ヒト哺乳動物個体より採取した検体における、下記のi)乃至iii)のいずれか一つに記載の蛋白質の発現量を測定する工程;
    i)配列表の配列番号3のアミノ酸番号1乃至419に示されるアミノ酸配列を含むことからなる蛋白質、
    ii)配列表の配列番号7のアミノ酸番号1乃至420に示されるアミノ酸配列を含むことからなる蛋白質、
    iii)上記i)又はii)に記載の蛋白質のアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなり、かつ、グリコーゲン濃度低下作用を有する蛋白質;
    2)被験物質を投与しなかった非ヒト哺乳動物個体より採取した検体における、上記工程1)のi)乃至iii)のいずれか一つに記載の蛋白質の発現量を測定する工程;
    3)上記工程1)で測定された蛋白質の発現量と、上記工程2)で測定された該蛋白質の発現量の差を解析することにより、被験物質の脂質代謝異常に対する治療効果を判定する工程。
  7. 下記の工程1)乃至3)を含むことからなる、脂質代謝異常に対する治療効果を有する物質のスクリーニング方法:
    1)下記のi)乃至iii)のいずれか一つに記載の蛋白質と被験物質とを添加して培養した哺乳動物由来培養細胞中のグリコーゲン濃度を測定する工程;
    i)配列表の配列番号3のアミノ酸番号1乃至419に示されるアミノ酸配列を含むことからなる蛋白質、
    ii)配列表の配列番号7のアミノ酸番号1乃至420に示されるアミノ酸配列を含むことからなる蛋白質、
    iii)上記i)又はii)に記載の蛋白質のアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなり、かつ、グリコーゲン濃度低下作用を有する蛋白質;
    2)上記工程1)のi)乃至iii)のいずれの蛋白質も添加しないで、被験物質を添加して培養した哺乳動物由来培養細胞中のグリコーゲン濃度を測定する工程;
    3)上記工程1)で測定したグリコーゲン濃度と上記工程2)で測定したグリコーゲン濃度の差を解析することにより、被験物質の脂質代謝異常に対する治療効果を判定する工程。
  8. 下記の工程1)乃至4)を含むことからなる、脂質代謝異常に対する治療効果を有する物質のスクリーニング方法:
    1)下記のi)乃至iii)のいずれか一つに記載の蛋白質と被験物質とを添加して培養した哺乳動物由来培養細胞にインスリンを添加してインキュベートする工程;
    i)配列表の配列番号3のアミノ酸番号1乃至419に示されるアミノ酸配列を含むことからなる蛋白質、
    ii)配列表の配列番号7のアミノ酸番号1乃至420に示されるアミノ酸配列を含むことからなる蛋白質、
    iii)上記i)又はii)に記載の蛋白質のアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなり、かつ、グリコーゲン濃度低下作用を有する蛋白質;
    2)上記工程1)のi)乃至iii)のいずれの蛋白質も添加しないで、被験物質を添加して培養した哺乳動物由来培養細胞にインスリンを添加してインキュベートする工程;
    3)上記工程1)由来の哺乳動物由来培養細胞中と上記工程2)由来の哺乳動物由来培養細胞中のグリコーゲン濃度を測定する工程;
    4)上記工程1)由来の哺乳動物由来培養細胞と上記工程2)由来の哺乳動物由来培養細胞との間における、上記工程3)で測定したグリコーゲン濃度の差を解析することにより、被験物質の脂質代謝異常に対する治療効果を判定する工程。
  9. 下記の工程1)乃至4)を含む、脂質代謝異常に対する治療効果を有する物質のスクリーニング方法:
    1)非ヒト哺乳動物個体に、以下のi)乃至iii)のいずれか一つに記載の蛋白質及び被験物質を投与する工程;
    i)配列表の配列番号3のアミノ酸番号1乃至419に示されるアミノ酸配列を含むことからなる蛋白質、
    ii)配列表の配列番号7のアミノ酸番号1乃至420に示されるアミノ酸配列を含むことからなる蛋白質、
    iii)上記i)又はii)に記載の蛋白質のアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなり、かつ、グリコーゲン濃度低下作用を有する蛋白質;
    2)非ヒト哺乳動物個体に、上記工程1)のi)乃至iii)のいずれか一つに記載の蛋白質を投与する工程;
    3)上記工程1)由来の非ヒト哺乳動物個体及び上記工程2)由来の非ヒト哺乳動物個体の血中のグリコーゲン濃度及び/又は中性脂質濃度を測定する工程;
    4)上記工程1)由来の非ヒト哺乳動物個体及び上記工程2)由来の非ヒト哺乳動物個体との間における、上記工程3)で測定した、血中のグルコース濃度、グリコーゲン濃度及び/又は中性脂質濃度の差を解析することにより、被験物質の脂質代謝異常に対する治療効果を判定する工程。
  10. 下記の工程1)乃至5)を含む、脂質代謝異常の治療効果を有する物質のスクリーニング方法:
    1)非ヒト哺乳動物個体に、以下のi)乃至iii)のいずれか一つに記載のポリヌクレオチドを発現させる工程;
    i)配列表の配列番号3のアミノ酸番号1乃至419に示されるアミノ酸配列を含むことからなる蛋白質、
    ii)配列表の配列番号7のアミノ酸番号1乃至420に示されるアミノ酸配列を含むことからなる蛋白質、
    iii)上記i)又はii)に記載の蛋白質のアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなり、かつ、グリコーゲン濃度低下作用を有する蛋白質、
    2)上記工程1)に記載の非ヒト哺乳動物個体に被験物質を投与する工程;
    3)上記工程1)のi)乃至iii)に記載のいずれのポリヌクレオチドも発現させない非ヒト哺乳動物個体に被験物質を投与する工程;
    4)上記工程2)由来の非ヒト哺乳動物個体と上記工程3)由来の非ヒト哺乳動物個体における血中のグルコース濃度、グリコーゲン濃度及び/又は中性脂質濃度を測定する工程;
    5)上記工程2)由来の非ヒト哺乳動物個体と上記工程3)由来の非ヒト哺乳動物個体との間における、上記工程4)で測定された、血中のグルコース濃度、グリコーゲン濃度及び/又は中性脂質濃度の差を解析することにより、被験物質の脂質代謝異常に対する治療効果を判定する工程。
  11. 下記の1)乃至3)のいずれか一つに記載の蛋白質に被験物質を含む試料を接触させ、次いで、該蛋白質に結合した物質を分離することを特徴とする脂質代謝異常に対する治療効果を有する物質の単離方法:
    1)配列表の配列番号3のアミノ酸番号1乃至419に示されるアミノ酸配列を含むことからなる蛋白質;
    2)配列表の配列番号7のアミノ酸番号1乃至420に示されるアミノ酸配列を含むことからなる蛋白質;
    3)上記1)又は2)に記載の蛋白質のアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなり、かつ、グリコーゲン濃度低下作用を有する蛋白質。
  12. 哺乳動物由来培養細胞が霊長類又はげっ歯類由来であることを特徴とする請求項3、5、7及び8のいずれか一つに記載のスクリーニング方法。
  13. 哺乳動物由来培養細胞がヒト、サル、マウス又はラット由来培養細胞であることを特徴とする、請求項3、5、7及び8のいずれか一つに記載のスクリーニング方法。
  14. 哺乳動物由来培養細胞がヒト又はマウス由来であることを特徴とする請求項3、5、7及び8のいずれか一つに記載のスクリーニング方法。
  15. 哺乳動物由来培養細胞が、マウス由来の繊維芽細胞、マウス、ラットもしくはヒト由来の遊離脂肪細胞、マウス、ラットもしくはヒト由来の初代肝細胞であることを特徴とする請求項3、5、7及び8のいずれか一つに記載のスクリーニング方法。
  16. 哺乳動物個体が、サル、イヌ、マウス及びラットのいずれかであることを特徴とする、請求項4、6、9又は10に記載の方法。
  17. 下記の1)乃至3)からなる群から選択される少なくとも一つ以上を含む、脂質代謝異常に対する治療効果を有する物質のスクリーニング用、及び/又は、脂質代謝異常の検出用キット:
    1)少なくとも、配列表の配列番号2又は6に示されるヌクレオチド配列を含むことからなるポリヌクレオチドの一つを特異的に増幅するための15乃至30塩基長の連続したオリゴヌクレオチドプライマー;
    2)少なくとも、配列表の配列番号2又は6に示されるヌクレオチド配列を含むことからなるポリヌクレオチドの一つにストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、該ポリヌクレオチドを検出するための15ヌクレオチド以上の連続したポリヌクレオチドプローブ;
    3)少なくとも、配列表の配列番号2又は6に示されるヌクレオチド配列を含むことからなるポリヌクレオチドの一つが固定された固相化試料。
  18. 下記の1)及び2)の少なくとも一つを含む、脂質代謝異常に対する治療効果を有する物質のスクリーニング用、及び/又は、脂質代謝異常の検出用キット:
    1)少なくとも、配列表の配列番号3又は7に示されるアミノ酸配列を含むことからなる蛋白質の一つに特異的に結合し、該蛋白質を検出するための抗体;
    2)上記1)に記載の抗体に結合し得る二次抗体。
  19. ポリヌクレオチドの発現量を測定する方法が、ノーザンブロット法、ドットブロット法、スロットブロット法、RT−PCR、リボヌクレアーゼ保護アッセイ又はランオン・アッセイであることを特徴とする、請求項1、3、4及び12乃至16のいずれか一つに記載の方法。
  20. ポリヌクレオチドの発現量を測定する方法が動物組織又は動物細胞由来の相補的DNA群又は該DNA群の各DNAの部分配列を含むことからなるDNA群で作製された遺伝子チップ又はアレイを用いることを特徴とする請求項1、3、4及び12乃至16のいずれか一つに記載の方法。
  21. 蛋白質の発現量の測定方法が、該蛋白質に特異的に結合する抗体又はリガンドを用いることを特徴とする、請求項2、5、6及び12乃至16のいずれか一つに記載の方法。
  22. 蛋白質の発現量の測定方法が、ウエスタンブロット法、ドットブロット法、スロットブロット法又は固相酵素免疫定量法(ELISA法)であることを特徴とする、請求項2、5、6及び12乃至16のいずれか一つに記載の方法。
  23. 下記の1)乃至3)からなる群から選択される少なくとも一つのヌクレオチド配列又は該配列の部分配列に相補的なヌクレオチド配列を有するオリゴヌクレオチドを含む、脂質代謝異常に対する治療用医薬組成物:
    1)配列表の配列番号2のヌクレオチド番号172乃至1431に示されるヌクレオチド配列;
    2)配列表の配列番号6のヌクレオチド番号54乃至1316に示されるヌクレオチド配列;
    3)上記1)又は2)に記載のポリヌクレオチドのヌクレオチド配列と相補的なヌクレオチド配列からなるポリヌクレオチドとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつ、グリコーゲン濃度低下作用を有する蛋白質をコードするポリヌクレオチド。
  24. 下記の1)乃至3)からなる群から選択される少なくとも一つの蛋白質を特異的に認識する抗体を含有する脂質代謝異常に対する治療用医薬組成物:
    1)配列表の配列番号3のアミノ酸番号1乃至419に示されるアミノ酸配列を含むことからなる蛋白質;
    2)配列表の配列番号7のアミノ酸番号1乃至420に示されるアミノ酸配列を含むことからなる蛋白質;
    3)上記1)又は2)に記載の蛋白質のアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなり、かつ、グリコーゲン濃度低下作用を有する蛋白質。
  25. 下記の1)乃至3)からなる群から選択される蛋白質のうち少なくとも一つを含有する、脂質代謝異常の治療用医薬組成物。
    1)配列表の配列番号3のアミノ酸番号1乃至419に示されるアミノ酸配列を含むことからなる蛋白質;
    2)配列表の配列番号7のアミノ酸番号1乃至420に示されるアミノ酸配列を含むことからなる蛋白質;
    3)上記1)又は2)に記載の蛋白質のアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなり、かつ、グリコーゲン濃度低下作用を有する蛋白質。
  26. 被験者の血糖値を低下する機能を有することを特徴とする請求項25又は26に記載の医薬組成物。
  27. 下記の1)乃至3)からなる群から選択される少なくとも1以上を含む脂質代謝異常の検出用キット:
    1)配列表の配列番号2のヌクレオチド番号1乃至1479に示されるヌクレオチド配列を含むことからなるポリヌクレオチド又は配列表の配列番号6のヌクレオチド番号1乃至1438に示されるヌクレオチド配列を含むことからなるポリヌクレオチドの一部乃至全部を特異的に増幅するための15乃至30塩基長の連続したオリゴヌクレオチドプライマー;
    2)配列表の配列番号2のヌクレオチド番号1乃至1479に示されるヌクレオチド配列を含むことからなるポリヌクレオチド又は配列表の配列番号6のヌクレオチド番号1乃至1438に示されるヌクレオチド配列からなるポリヌクレオチドにストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、該ポリヌクレオチドを検出するための15ヌクレオチド以上の連続したポリヌクレオチドプローブ;
    3)上記1)に記載のオリゴヌクレオチドプライマー又は上記2)に記載のポリヌクレオチドプローブのいずれか一つのポリヌクレオチドが固定された固相化試料。
  28. 下記の1)及び2)の少なくとも1つを含む脂質代謝異常の検出用キット:
    1)配列表の配列番号3のアミノ酸番号1乃至419に示されるアミノ酸配列を含むことからなる蛋白質又は配列表の配列番号7のアミノ酸番号1乃至420に示されるアミノ酸配列を含むことからなる蛋白質に特異的に結合し、該蛋白質を検出するための抗体;
    2)上記1)に記載の抗体に結合し得る二次抗体。
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