JP4334855B2 - 潜像を有する光回折構造 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、通常の視認状態で判別が困難な潜像を有する光回折構造に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、カラーコピー機による高額紙幣や商品券の偽造事件が頻発している。
そのために、高額紙幣や商品券は、デザインの一部にカラーコピー機のセンサーでは読み取ることができない小さな網点や細線を、同じ反射濃度でデザインされた絵柄の中に組み込んでいる。
その結果、これらの高額紙幣や商品券をカラーコピー機によって複写しようとすると、コピー機のスキャナーが小さな網点や細線を読み落とし、その部分が白く抜けることでコピー品であると判別している。
また、印刷物のデザインの一部に光り輝く金属部分を設けることによりコピー品を判別する方法も実施されている。
このような金属部分は、入射光を100%正反射するためにコピー機はこの部分を黒に再現する。実施例として、例えば、紙の表層に金糸を縫い付け、コピー牽制を行っている。
【0003】
その他、透明な樹脂で複製した光回折構造の微細な凹凸面に金属蒸着処理をして、印刷エリアの一部に熱転写し、コピーによる不正を牽制する一方で、光回折構造そのものを偽造防止手段として利用している。
このように偽造防止効果が極めて高い光回折構造ではあるが、近年解析技術が進み、光回折構造に近い偽造品が出現している。
このような偽造に対し、複数の回折格子を形成し、万線状の判別パターンによりモアレパターンを生成することによって隠しパターンを判別する方法が提案されている(特許文献1参照)。
これらの技術には、隠しパターンが見る角度によって微かに判別されてしまうという課題があった。
【0004】
【特許文献1】
特開平6−40190号公報
【0005】
【発明が解決しょうとする課題】
本発明は、このような課題に鑑みてなされたもので、光回折構造の中に組み込まれた潜像の目視による判別が極めて困難で判別具により明確に判別できる潜像を有する光回折構造を提供する。
【0006】
【課題を解決するための手段】
前記課題の目的を達成するために、本発明の潜像を有する光回折構造の請求項1に記載の発明は、光回折構造を含む全体領域が、通常の視認状態で判別可能な部分領域と、通常の視認状態では判別不可能となるように組み込まれた潜像を含む部分領域に分割され、少なくとも前記潜像を含む部分領域は、平行に配列された微細な縞で構成され、前記微細な縞は、回折格子が形成された1対の帯で構成され、前記1対の帯の片方の帯には回折格子による画素が部分的に形成されていることを特徴とするものである。
【0007】
また、請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、回折格子による画素が部分的に形成された帯は、40〜60%の部分に規則的に回折格子による画素が形成されていることを特徴とするものである。
【0008】
また、請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載の発明において1対の帯の、一方の帯に形成された回折格子は、他方の帯に形成された回折格子と、ピッチ、回折角度の少なくとも1つが異なっていることを特徴とするものである。
【0009】
また、請求項4に記載の発明は、請求項3に記載の発明において、前記縞の密度は、5縞/mm以上であることを特徴とするものである。
【0011】
また、請求項5に記載の発明は、請求項1〜4何れか1項に記載の発明において、潜像を含む部分領域は、少なくとも潜像と背景パターンで構成され、前記背景パターンに前記潜像が組み込まれた状態で、潜像を構成する縞と背景パターンを構成する縞とが90度の角度を成すことを特徴とするものである。
【0012】
【発明の実施の形態】
以下図面を参照して本発明の潜像を有する光回折構造について説明する。
図1は、本発明の潜像を有する光回折構造を転写した印刷物の一例について説明するための図、図2は、潜像が組み込まれた部分領域の拡大図、図3は、対を成す2本の帯の集合体について説明するための図、図4は、縞を構成する帯の密度について説明するための図、図5は、帯に形成された回折格子の一例について説明するための図、図6は、判別具の一例についての説明図、図7は、潜像の判別方法についての説明図、図8は、判別パターン形成体の断面についての説明図、である。
【0013】
図1において、偽造又は、コピーを牽制するために、潜像1を有する光回折構造(5)の極めて薄い樹脂が熱によって所定の大きさに溶断されて熱再活性型の接着剤によって紙などの基体6上に形成されている。
ベースフィルムの上に光回折構造を形成した状態で所定の大きさに打ち抜かれ、ベースフィルムと一緒に粘着材または、接着剤によって印刷物上に形成されることもある。
【0014】
前記光回折構造が形成された印刷物は、偽造、または、複写されては困るものが多く、例えば、紙幣、商品券、入場券、ギフト券、手形、小切手などがその対象になる。
これらの印刷物には、特殊な印刷技術、材料が使用されており、偽造、複写による悪用に対して2重にプロテクトされている。
【0015】
図1において、上記商品券、入場券、ギフト券、手形、小切手等の基体6の右下に光回折構造によるパターンの全体領域5が形成されている。
光回折構造による全体領域5は、部分領域4とその他のパターン3で構成されており、潜像が形成された部分領域4は、潜像1と、背景パターン2で構成されている。
部分領域4は、潜像1、背景パターン2共に回折角度やピッチが異なる画素で構成された微細な縞の集合によって構成されている。
また、その他のパターン3のデザイン領域は、ホログラムや、回折格子などのパターンや、印刷による図柄で構成されている。
光回折構造には、切り返しによって複数の図柄を表示する回折格子や、図柄を3次元状態に表示するホログラムなどがある。印刷物に使用される光回折構造には、微細な凹凸によって光を反射し図柄を虹色に表示するレインボウホログラムや、回折格子によるものが多い。
【0016】
その他のパターン3がホログラムや、回折格子による図柄の場合は、部分領域4に形成されている回折格子による潜像1と同質のもので構成されているために潜像の存在が気付かれ難く、目視状態での判別度が低いという効果がある。
逆にその他のパターン3が印刷による図柄の場合は、部分領域4に形成された潜像1と、背景パターン2のデザインを複雑な構成にしてカムフラージュしないと、部分領域4にコピー牽制、偽造防止手段が設けられていることが発見されやすい。
【0017】
図1に示す実施形態では、潜像1として回折格子による星のパターンが組み込まれている。
回折格子による潜像1は、通常の視認状態では判別不可能に組み込まれており、特殊な判別具によらないと判別することはできない。
このような回折格子による潜像が実用状態で使用される場合、印刷物などに回折格子による潜像と、背景パターンだけを形成すると、全体領域の中の部分領域が偽造牽制手段であることが悟られ易い。
そのために、潜像を構成する回折格子に近い性質のホログラム等で周辺をデザインし、その中に調和させる状態で潜像1を背景パターン2に組み込む。
【0018】
図2を参照して、図1における部分領域4について説明する。
潜像を生成する部分領域4を形成する潜像1、及び背景パターン2は、回折格子による画素の集合である複数の微細な縞によって構成されている。
図1において、印刷物の基体6の下端を水平状態に置いた場合に潜像1を生成する部分領域4は、図2のような状態で視認される。
即ち、判別手段の左右の目を結ぶ線と平行な線(以下水平線という。)に対して、潜像1を構成する縞の成す角度が、45度になるように、また、背景パターン2の縞が成す角度が、135度になるように組み込まれる。
上記では、水平線に対して、潜像1を構成する縞の成す角度を45度、背景パターン2が成す角度を135度としたが、潜像1と、背景パターン2の角度を入れ替えて、潜像1を構成する縞の成す角度を135度、背景パターン2が成す角度を45度としてもよい。
また、45度、135度の角度は、潜像効果が変らない範囲で多少増減させることができる。
【0019】
前述の説明で潜像1と、背景パターン2は、それぞれを構成する縞が90度になるように組み込まれていることがわかるが、許容角度を含めた場合、90度プラスマイナス10度の範囲内で潜像と背景パターンを組み合わせればよい。
2つのパターンを組み合わせる際に、45度と135度にした理由は、多くの場合の観察環境が室内で、光源の位置が印刷物に対して前方、上方にある場合が多く、前述の角度が潜像効果、観察効果上でも好ましいからである。
【0020】
次に、図3を参照して縞の構成について説明する。
縞100は、回折格子が形成された2つの帯(帯110と、帯111)で構成されている。帯110は、帯111に対し、回折角度、ピッチの少なくとも1つが異なった回折格子による画素で構成されている。
例えば、図3では、帯110は、回折格子の回折角度が右下がりで形成され、帯111は回折格子の回折角度が右上がりで形成されている。
このように、異なった回折角度、または、ピッチで形成された回折格子の2本の帯が対を成して縞を形成し、潜像、または、背景パターンを形成し、部分領域を形成している。
更に、帯111は、図5で説明するように回折格子の画素数が帯110の40%〜60%となっていて、潜像の判別効果を高めている。
【0021】
図4に示すように、潜像効果を高めるために縞の密度を1mmの中に5本以上とすることが好ましいことが発明者の実験で判明した。
縞の本数を5本/mm以上とする理由の1つは、縞の幅を狭くして潜像を判別し難くするためである。理由の2つ目は、縞の帯を構成する回折格子による画素の大きさと、後述する帯111の画素とスペースのバランスのためである。
【0022】
図5を参照して、回折格子で構成された帯、及び縞について説明する。
縞100を拡大すると、図5のようになっていて、1対の帯110、111が連接して1本の縞100を構成している。
更に、各帯は、複数の回折格子による画素1100、1110、及びスペース1111で構成されている。これらの画素は、1つに帯に対しては同じ回折角度、同じピッチで規則的に配置され、各帯はこの実施形態ではαの角度で形成されている。角度αは、45度であったり、135度であったりする。
【0023】
前述のように、帯110と、帯111に対し、画素の回折角度を変える方法と、ピッチを変える方法がある。
例えば、帯110を構成する画素が、135度の回折角度で形成された場合、帯111を構成する画素は45度の回折角度で形成されている。
帯110は、同一ピッチの前述の回折角度による画素1100で埋め尽くされている。
また、帯111は、前述の回折角度による画素1110と回折格子が形成されない画素(スペース)1111が規則的に配置され、画素1110と画素1111の数、または、面積比が、例えば、50:50になるように形成されている。
【0024】
このように回折格子による画素の集合である帯によって縞を形成し、縞の集合による潜像と、背景パターンを縞が直角に交差するように組み合わせ、各縞から反射される色彩に差異を付けることによって、回折格子で構成した潜像を通常の目視手段では判別困難な潜像とし、判別パターンによって潜像を判別する際に、より明確な判別が可能になる。
【0025】
図6を参照して判別具の一実施形態について説明する。
判別具7は、判別パターンが形成された透明なフィルムを所定の大きさに切断して強靭な枠体で補強したものである。
判別し易いように、また、判別パターンが形成されているフィルムの表面に指紋などが付着しないように取っ手が設けられている。
【0026】
図7において、光回折構造5が接着剤9を介して媒体基体(以下印刷物という。)6の表面に形成されている。
光回折構造に潜像が組み込まれている場合に、光回折構造による潜像を判別する判別具7を印刷物6に対して所定の角度で近づけると、光回折構造に組み込まれている潜像がモアレの状態で判別具7に表示される。
印刷物に形成された潜像部に照射された光が、判別具7を透過して観察者の判別手段(目)8に到達しなければならないために、判別具の判別パターンには透明なベース基材が使用されている。
【0027】
潜像の判別に際し、判別具7を印刷物6に密着させる程度に近づけて判別する。
上記、判別具と印刷物との距離が密着の状態から一定の距離までは潜像の判別が可能であるが、モアレ現象を利用しているために、潜像が形成された光回折構造5と判別具7の距離が空き過ぎると判別が困難になる。また、判別具7に潜像のモアレを発生させる光は、判別手段8の方向から入射した光となるために透明度が高い基材であることが好ましい。
【0028】
図8を参照して、判別具7の判別パターンが形成されている判別パターン形成体の断面の一例について説明する。
判別具は、前述のように判別パターンが形成された判別パターン形成体70を合成樹脂などによる枠体で固定している。
透明基材71の片面には、透明な接着剤層72を介して有色材料層73が形成されている。有色材料層23の表面には、図示ないが必要に応じて保護層が設けられる。
【0029】
判別パターンは、写真製版、エッチング、印刷、転写等の方法によって形成される。有色の直線部分と透明な直線部分の線幅の形成精度を高めたい場合は、写真製版法、エッチング法、比較的要求精度が甘い場合は、印刷、転写法が選択される。エッチングは、透明基体の表面全面に形成した金属の薄膜上に、感光性樹脂をコーティングした後、判別パターンを焼き付けた製版用フィルムによって密着露光し、未露光部を洗い流して露出している金属部を腐食によって溶かして透明な直線部を形成する。
【0030】
(実施例)
薄く金属を蒸着したガラス板に直径4ミクロンの電子ビームを照射してガラスの1カット面に対して45度の角度に、18μ×18μの大きさの回折格子による画素を形成した。
画素の形成密度は、水平方向に4列/帯とし、帯の縦方向に1画素ピッチで形成した。
連接する帯に形成する画素は、回折角度を替えて形成した。
また、縞の密度を、7縞/mmに設定した。
マスキングパターンによって潜像と背景パターンを作製し、デザイン化された回折格子によるデザイン図柄の中に一部として組み込み、原版を作製した。
この原版から複版を作製し、ベースフィルム上に塗布された透明なアクリル製の樹脂の表面に凹凸を再生し、光回折構造を作製した。光回折構造が複製されたベースフィルム上の透明樹脂に、黄色の着色剤を塗布し、その上に、真空蒸着法によりアルミニウムの薄幕を形成、その上に感熱接着剤を塗布した。
表面に線画が印刷された上質紙に、前記ベースフィルム上に形成された光回折構造を摂氏160度に加熱した金属板によって熱転写した。
印刷されたデザインが正しく見える位置で、潜像部分を観察した結果、目視手段では潜像を判別することができなかった。
【0031】
【発明の効果】
本発明の潜像を有する光回折構造により、以下に記載の効果を奏することができる。
1)請求項1に記載の発明のごとく、光回折構造を含む全体領域が、判別可能な部分領域と潜像を含む部分領域に分割され、少なくとも前記潜像を含む部分領域は、平行に配列された微細な縞で構成され、前記微細な縞は、回折格子が形成された1対の帯で構成され、前記1対の帯の片方の帯には回折格子による画素が部分的に形成されていることで、潜像の存在をより判別困難にすることが可能となる。また、潜像を形成する部分領域を回折格子でデザインすることによってホログラムなどにより形成された偽造牽制手段との合成が容易となり、纏まった図柄とすることでさらにセキュリティ性を高めることが出きる。
2)請求項2に記載の発明のごとく、請求項1に記載の発明において、回折格子による画素が部分的に形成された帯は、40〜60%の部分に規則的に回折格子による画素が形成されることによって判別の際のモアレ生成パターンを鮮明化することが可能になる。
3)請求項3に記載の発明のごとく、請求項1又は2に記載の発明において1対の帯の、一方の帯に形成された回折格子は、他方の帯に形成された回折格子と、ピッチ、回折角度の少なくとも1つが異なっていることによって2本の帯の色彩に差異をつけ、通常の視認状態では潜像の判別を困難にする効果を発揮する。
4)請求項4に記載の発明のごとく、請求項3に記載の発明において、2本の帯が連接された縞の本数を5本/mm以上とすれば、縞を構成する回折格子による帯の太さは100μm以下となり、1本あたりの帯、縞の太さが微細であるため、潜像の存在をより判別困難にすることができる。
5)請求項5に記載の発明のごとく、請求項1〜4何れか1項に記載の発明において、潜像を含む部分領域は、少なくとも潜像と背景パターンで構成され、前記背景パターンに前記潜像が組み込まれた状態で、潜像を構成する縞と背景パターンを構成する縞とが90度の角度を成すことによって潜像効果を高めると共に、判別パターンによる判別が容易となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の潜像を有する光回折構造を転写した印刷物の一例について説明するための図
【図2】潜像が組み込まれた部分領域の拡大図
【図3】対を成す2本の帯の集合体について説明するための図
【図4】縞を構成する帯の密度について説明するための図
【図5】帯に形成された回折格子の一例について説明するための図
【図6】判別具の一例についての説明図
【図7】潜像の判別方法についての説明図
【図8】判別パターン形成体の断面についての説明図
【符号の説明】
1 潜像
2 背景パターン
3 その他のパターン
4 部分領域
5 全体領域
6 基体
7 判別具
8 観察者の判別手段
9 接着剤
70 判別パターン形成体
71 透明基材
72 接着剤
73 判別パターン
100 縞
110、111 帯
1100、1110 画素
1111 スペース
Claims (5)
- 光回折構造を含む全体領域が、通常の視認状態で判別可能な部分領域と、通常の視認状態では判別不可能となるように組み込まれた潜像を含む部分領域に分割され、少なくとも前記潜像を含む部分領域は、平行に配列された微細な縞で構成され、前記微細な縞は、回折格子が形成された1対の帯で構成され、前記1対の帯の片方の帯には回折格子による画素が部分的に形成されていることを特徴とする潜像を有する光回折構造。
- 前記回折格子による画素が部分的に形成された帯は、40〜60%の部分に規則的に回折格子による画素が形成されていることを特徴とする請求項1に記載の潜像を有する光回折構造。
- 前記1対の帯の、一方の帯に形成された回折格子は、他方の帯に形成された回折格子と、ピッチ、回折角度の少なくとも1つが異なっていることを特徴とする請求項1又は2に記載の潜像を有する光回折構造。
- 前記縞の密度は、5縞/mm以上であることを特徴とする請求項3に記載の潜像を有する光回折構造。
- 前記潜像を含む部分領域は、少なくとも潜像と背景パターンで構成され、前記背景パターンに前記潜像が組み込まれた状態で、潜像を構成する縞と背景パターンを構成する縞とが90度の角度を成すことを特徴とする請求項1〜4何れか1項に記載の潜像を有する光回折構造。
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