JP4337710B2 - 内燃機関の制御装置 - Google Patents

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Description

本発明は、筒内に向けて燃料を噴射する第1の燃料噴射手段(筒内噴射用インジェクタ)と吸気通路または吸気ポート内に向けて燃料を噴射する第2の燃料噴射手段(吸気通路噴射用インジェクタ)とを備えた、内燃機関の制御装置に関し、より特定的には、エンジン暖機過程における両インジェクタ間での燃料噴射分担比率制御に関する。
燃焼室内に直接燃料を噴射する筒内噴射用インジェクタと各気筒の吸気ポートに燃料を噴射する吸気ポート噴射用インジェクタとを有する構成の内燃機関では、吸気ポート噴射用インジェクタからの燃料噴射のみで均質燃焼を行なうと、筒内噴射用インジェクタが常に高温の燃焼ガスにさらされるため、筒内噴射用インジェクタの先端部が高温に維持されてその噴孔部にデポジットが堆積されやすくなってしまう。このため、均質燃焼運転時には、吸気ポート噴射用インジェクタを開弁駆動して吸気ポートに燃料を噴射することに加えて、筒内噴射用インジェクタを開弁駆動して燃焼室へ燃料噴射を併せて行なうことにより、筒内噴射用インジェクタの先端部が高温に維持されることを抑制する制御方式が提案されている(たとえば特許文献1)。
このような内燃機関では、筒内噴射用インジェクタの噴孔部にデポジットが堆積されにくくなるため、同燃料噴射用インジェクタによる噴霧形状が変化したり、燃料噴射量が減少するなどの燃焼悪化につながる不都合を回避して、内燃機関の出力特性を安定化することが可能となる。
特開2002−364409号公報
一方で、機関冷間時にあっては、気筒内における燃料の霧化が促進され難いために、噴射燃料が機関ピストンの頂面(ピストン頂面)や気筒内周面(シリンダ内周面(ボア))に多量に付着してしまう傾向がある。このため、機関冷間時において通常は、燃料噴射時期を吸気行程中に設定し(吸気行程噴射)、燃料噴射からその点火までの期間を極力長く確保して、噴射燃料の霧化を促進するようにしている。ただし、こうした吸気行程噴射を行なうようにしても、上記燃料付着を完全に解消することは困難であり、一部の燃料については燃焼に供されることなく、機関燃焼後も付着したまま気筒内に残留した状態になる。
この付着燃料のうち、特にピストン頂面への付着分は、その後の機関燃焼時に徐々に霧化され、不完全燃焼して気筒内から排出されるようになる。その結果、黒煙の発生や未燃成分の増大等、排気性状の悪化を招くこととなる。
一方、付着燃料のうち、気筒内周面への付着分は、機関ピストンの潤滑のために同気筒内周面に付着している潤滑油と混合されるようになる。その結果、燃料による潤滑油の希釈、いわゆる燃料希釈が発生する。そして、燃料により希釈された気筒内の潤滑油は、機関ピストンが上下動するのに伴ってかき落とされ、オイルパンに戻された後、内燃機関の潤滑に供されるようになる。したがって、こうした潤滑油の燃料希釈が頻繁に発生すると、潤滑油全体に混入する燃料の割合が徐々に増大し、やがて内燃機関の潤滑性能についてその低下を招くなどの悪影響を及ぼすこととなる。
したがって、排気性状の悪化や内燃機関の潤滑性能低下などの悪影響を考慮すれば、機関冷間時における均質燃焼運転では、なるべく吸気ポート噴射用インジェクタから燃料噴射を行ない、筒内噴射用インジェクタからの燃料噴射はできるだけ避けることが好ましい。
この点につき特許文献1では、筒内噴射用インジェクタが混合気の燃焼による火炎にさらされる回数をカウントする。さらに、このカウント値が、予め実験によって求められた、筒内噴射用インジェクタの温度が許容温度になるおそれがない所定回数に達するまでの間は、吸気ポート噴射用インジェクタのみから燃料噴射を行なうとともに、カウント値が所定回数に達した後は筒内噴射用インジェクタからの燃料噴射が併せて行なわれるように燃料噴射を制御している。
しかしながら、筒内噴射用インジェクタの先端温度は、内燃機関全体の温度および混合気燃焼時の火炎からの影響によって上昇する。特に、火炎からの伝熱量は、内燃機関の運転条件に応じて大きく変化するので、単純に燃焼室内での混合気燃焼回数のみに基づいて筒内噴射用インジェクタからの燃料噴射開始時期を制御する構成では、筒内噴射用インジェクタの先端温度が許容温度以上に上昇しても筒内噴射用インジェクタからの燃料噴射が開始されない不具合や、筒内噴射用インジェクタの先端温度が許容温度に達していない状態で筒内噴射用インジェクタからの燃料噴射が実行されて排気性状の悪化や内燃機関の潤滑性能低下などの悪影響を発生させる可能性がある。
この発明は、このような問題点を解決するためになされたものであって、この発明の目的は、筒内に向けて燃料を噴射する第1の燃料噴射手段(筒内噴射用インジェクタ)と吸気通路および/または吸気ポート内に向けて燃料を噴射する第2の燃料噴射手段(吸気通路噴射用インジェクタ)とを備えた内燃機関において、機関冷間時における筒内噴射用インジェクタからの燃料噴射による不具合を抑制した上で、筒内噴射用インジェクタの先端へのデポジット堆積を抑制するように、筒内噴射用インジェクタからの燃料噴射開始時期を適切に制御する制御装置を提供することである。
本発明による内燃機関の制御装置は、筒内に燃料を噴射するための第1の燃料噴射手段(筒内噴射用インジェクタ)と、吸気通路内に燃料を噴射するための第2の燃料噴射手段(吸気通路噴射用インジェクタ)とを備えた内燃機関の制御装置であって、温度推定手段と、第1の温度判定手段と、制御手段とを備える。温度推定手段は、内燃機関の運転状態および温度を含む情報に基づいて、第1の燃料噴射手段の温度を推定する。第1の温度判定手段は、温度推定手段による推定温度と第1の基準温度との比較により、第1の燃料噴射手段が高温状態および低温状態のいずれであるかを判定する。制御手段は、内燃機関に要求される条件に基づいて、全燃料噴射量に対する第1の燃料噴射手段および第2燃料噴射手段の間での燃料噴射量の分担比率を制御する。制御手段は、第1の燃料制御噴射手段および第2の燃料噴射制御手段とを有し、第1の温度判定手段により第1の燃料噴射手段が高温状態であると判定された場合に、第2の燃料噴射制御手段を用いて分担比率を設定する。第1の燃料制御噴射手段は、全燃料噴射量が第2の燃料噴射手段から噴射されるように分担比率を制御する。第2の燃料噴射制御手段は、全燃料噴射量のうちの少なくとも一部が第1の燃料噴射手段から噴射されるように分担比率を制御する。
上記内燃機関の制御装置では、第1の燃料噴射手段の推定温度に基づいて、推定温度の上昇時に第1の燃料噴射手段からの燃料噴射を開始する。これにより、第1の燃料噴射手段からの燃料噴射開始タイミングを適切に設定できるので、筒内噴射用インジェクタの先端へのデポジット堆積をより確実に抑制することができる。すなわち、筒内噴射用インジェクタの先端温度が許容温度以上に上昇しても筒内噴射用インジェクタからの燃料噴射が開始されない不具合の発生を防止できる。
好ましくは、本発明の内燃機関の制御装置では、制御手段は、第1の温度判定手段が第1の燃料噴射手段を低温状態と判定した場合に、第1の燃料噴射制御手段を用いて分担比率を設定する。
上記内燃機関の制御装置では、第1の燃料噴射手段の推定温度に基づいて、第1の燃料噴射手段からの燃料噴射開始タイミングを適切に設定するとともに、第1の燃料噴射手段の低温状態時には、全燃料噴射量が第2の燃料噴射手段から噴射される。したがって、筒内噴射用インジェクタの先端温度が許容温度に達していない状態で第1の燃料噴射手段からの燃料が噴射されることを防止して、機関冷間時の筒内燃料噴射による、排気性状の悪化や内燃機関の潤滑性能低下などの悪影響を抑制できる。
また好ましくは、本発明の内燃機関の制御装置では、内燃機関は、燃料を所定圧力まで昇圧して第1の燃料噴射手段へ供給するための高圧燃料ポンプと、高圧燃料ポンプからの供給燃料の圧力を測定する圧力測定部とをさらに備え、制御装置は、圧力測定部での測定値に基づき供給燃料が所定圧力範囲内であるかどうかを判定する圧力判定手段をさらに備える。制御手段は、第1の燃料噴射手段が高温状態であると判定された場合には、圧力判定手段での判定結果に基づき、供給燃料が所定圧力範囲内であるときには第2の燃料噴射制御手段を用いて分担比率を設定する一方で、供給燃料が所定圧力範囲内にないときには第1の燃料噴射制御手段を用いて分担比率を設定する。
上記内燃機関の制御装置では、第1の燃料噴射手段からの正常な燃料噴射が可能な所定圧力範囲内に燃料圧が入ったことを条件に、第1の燃料噴射手段からの燃料噴射が開始される。したがって、筒内燃料噴射開始時に内燃機関での全燃料噴射量が変動して出力トルクの不連続が発生することを防止できる。
さらに好ましくは、本発明の内燃機関の制御装置は、第2の温度判定手段と、ポンプ運転制御手段とをさらに備える。第2の温度判定手段は、温度推定手段による推定温度が、第1の基準温度よりも低く設定される第2の基準温度以上かどうかを判定する。ポンプ運転制御手段は、第2の温度判定手段の判定結果に基づいて、推定温度が第2の基準温度以上であるときに高圧燃料ポンプを運転させる一方で、推定温度が第2の基準温度より低いときに高圧燃料ポンプを停止させる。
上記内燃機関の制御装置では、第1の燃料噴射手段の推定温度に基づいて、第1の燃料噴射手段からの燃料噴射開始に先立って高圧燃料ポンプを予め運転できるので、推定温度の上昇時に第1の燃料噴射手段からの燃料噴射をスムーズに開始できる。また、一旦上昇した第1の燃料噴射手段の温度が、筒内燃料噴射を行なわない範囲まで低下した場合には、高圧燃料ポンプを適宜停止できるので、燃費を向上することができる。
また、さらに好ましくは、本発明の内燃機関の制御装置では、第1の基準温度は、第1の燃料噴射手段が現在高温状態および低温状態のいずれであるかに従って、それぞれ異なる値に設定される。
上記内燃機関の制御装置では、第1の燃料噴射手段の推定温度が第1の基準温度付近で微小に変動するのに伴って、第1の燃料噴射手段による筒内燃料噴射の実行および停止が頻繁に切り換わることを防止できる。この結果、ハンチングの発生を防止して、燃料噴射分担制御を安定化できる。
あるいは、さらに好ましくは、本発明の内燃機関の制御装置では、第2の基準温度は、高圧燃料ポンプが現在運転中および停止中のいずれであるかに従って、それぞれ異なる値に設定される。
上記内燃機関の制御装置では、第1の燃料噴射手段の推定温度が第2の基準温度付近で微小に変動するのに伴って、高圧燃料ポンプが頻繁に運転および停止を繰り返すことを防止できる。この結果、ハンチングの発生を防止して、燃料噴射分担制御に連動した高圧ポンプ駆動制御を安定化できる。
また、さらに好ましくは、本発明の内燃機関の制御装置では、第2の燃料噴射制御手段は、内燃機関の温度、回転数および負荷率を含む情報に基づいて、分担比率を制御する。
上記内燃機関の制御装置では、内燃機関の運転状態(温度、転数および負荷率)に応じて、第1の燃料噴射手段および第2の燃料噴射手段の間での燃料噴射量分担比率を適切に設定できる。したがって、全運転域において、安定的な内燃機関出力を得ることができる。
好ましくは、本発明の内燃機関の制御装置では、温度推定手段は、内燃機関の冷却水温度と、外気温から計算された配管温度と、内燃機関の運転状態から推定される筒内温度とに基づいて、第1の燃料噴射手段の温度を推定する。
さらに好ましくは、本発明の内燃機関の制御装置では、温度推定手段は、内燃機関の負荷率および回転数、ならびに空燃比に基づいて、筒内温度を推定する手段を有する。
上記内燃機関の制御装置では、第1の燃料噴射手段の受熱状況をより正確に反映した、第1の燃料噴射手段の温度推定が可能となる。したがって、第1の燃料噴射手段からの燃料噴射開始タイミングをさらに正確に設定できるので、本発明による、第1の燃料噴射手段(筒内噴射用インジェクタ)の先端でのデポジット堆積防止効果、および機関冷間時での筒内燃料噴射による不具合回避効果を、より顕著に得ることができる。
本発明に係る内燃機関の制御装置によれば、筒内に向けて燃料を噴射する第1の燃料噴射手段(筒内噴射用インジェクタ)と吸気通路および/または吸気ポート内に向けて燃料を噴射する第2の燃料噴射手段(吸気通路噴射用インジェクタ)とを備えた内燃機関において、機関冷間時での筒内燃料噴射による不具合を抑制した上で、筒内噴射用インジェクタ先端へのデポジット堆積をより確実に抑制することができる。
以下において、この発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。なお以下では図中における同一または相当部分には同一符号を付してその詳細な説明は原則的に繰返さないものとする。
図1に、本発明の実施の形態に係る内燃機関の制御装置であるエンジンECU(Electronic Control Unit)で制御されるエンジンシステムの概略構成図を示す。なお、図1には、エンジンとして直列4気筒ガソリンエンジンを示すが、本発明はこのようなエンジンに限定されるものではない。
図1に示すように、エンジン(内燃機関)10は、4つの気筒112を備え、各気筒112はそれぞれ対応するインテークマニホールド20を介して共通のサージタンク30に接続されている。サージタンク30は、吸気ダクト40を介してエアクリーナ50に接続され、吸気ダクト40内にはエアフローメータ42が配置されるとともに、電動モータ60によって駆動されるスロットルバルブ70が配置されている。このスロットルバルブ70は、アクセルペダル100とは独立してエンジンECU300の出力信号に基づいてその開度が制御される。一方、各気筒112は共通のエキゾーストマニホールド80に連結され、このエキゾーストマニホールド80は三元触媒コンバータ90に連結されている。
各気筒112に対しては、筒内に向けて燃料を噴射するための筒内噴射用インジェクタ110と、吸気ポートまたは/および吸気通路内に向けて燃料を噴射するための吸気通路噴射用インジェクタ120とがそれぞれ設けられている。これらインジェクタ110、120はエンジンECU300の出力信号に基づいてそれぞれ制御される。
なお、本実施の形態においては、2つのインジェクタが別個に設けられた内燃機関について説明するが、本発明はこのような内燃機関に限定されない。たとえば、筒内噴射機能と吸気通路噴射機能とを併せ持つような1個のインジェクタを有する内燃機関であってもよい。
図1に示すように、各筒内噴射用インジェクタ110は共通の燃料分配管130に接続されている。この燃料分配管130は、燃料分配管130に向けて流通可能な逆止弁140を介して、機関駆動式の高圧燃料ポンプ150に接続されている。高圧燃料ポンプ150の吐出側は電磁スピル弁152を介して高圧燃料ポンプ150の吸入側に連結されており、この電磁スピル弁152の開度が小さいときほど、高圧燃料ポンプ150から燃料分配管130内に供給される燃料量が増大され、電磁スピル弁152が全開にされると、高圧燃料ポンプ150から燃料分配管130への燃料供給が停止されるように構成されている。なお、電磁スピル弁152はエンジンECU300の出力信号に基づいて制御される。
一方、各吸気通路噴射用インジェクタ120は、共通する低圧側の燃料分配管160に接続されており、燃料分配管160および高圧燃料ポンプ150は共通の燃料圧レギュレータ170を介して、電動モータ駆動式の低圧燃料ポンプ180に接続されている。さらに、低圧燃料ポンプ180は燃料フィルタ190を介して燃料タンク200に接続されている。燃料圧レギュレータ170は低圧燃料ポンプ180から吐出された燃料の燃料圧が予め定められた設定燃料圧よりも高くなると、低圧燃料ポンプ180から吐出された燃料の一部を燃料タンク200に戻すように構成されている。したがって吸気通路噴射用インジェクタ120に供給されている燃料圧および高圧燃料ポンプ150に供給されている燃料圧が上記設定燃料圧よりも高くなるのを阻止している。
エンジンECU300は、デジタルコンピュータから構成され、双方向性バス310を介して相互に接続されたROM(Read Only Memory)320、RAM(Random Access Memory)330、CPU(Central Processing Unit)340、入力ポート350および出力ポート360を備えている。
エアフローメータ42は吸入空気量に比例した出力電圧を発生し、このエアフローメータ42の出力電圧はA/D変換器370を介して入力ポート350に入力される。エンジン10には機関冷却水温に比例した出力電圧を発生する水温センサ380が取付けられ、この水温センサ380の出力電圧は、A/D変換器390を介して入力ポート350に入力される。
燃料分配管130には燃料分配管130内の燃料圧に比例した出力電圧を発生する燃料圧センサ400が取付けられ、この燃料圧センサ400の出力電圧は、A/D変換器410を介して入力ポート350に入力される。三元触媒コンバータ90上流のエキゾーストマニホールド80には、排気ガス中の酸素濃度に比例した出力電圧を発生する空燃比センサ420が取付けられ、この空燃比センサ420の出力電圧は、A/D変換器430を介して入力ポート350に入力される。
本実施の形態に係るエンジンシステムにおける空燃比センサ420は、エンジン10で燃焼された混合気の空燃比に比例した出力電圧を発生する全域空燃比センサ(リニア空燃比センサ)である。なお、空燃比センサ420としては、エンジン10で燃焼された混合気の空燃比が理論空燃比に対してリッチであるかリーンであるかをオン−オフ的に検出するO2センサを用いてもよい。
アクセルペダル100は、アクセルペダル100の踏込み量に比例した出力電圧を発生するアクセル開度センサ440に接続され、アクセル開度センサ440の出力電圧は、A/D変換器450を介して入力ポート350に入力される。また、入力ポート350には、機関回転数を表わす出力パルスを発生する回転数センサ460が接続されている。エンジンECU300のROM320には、上述のアクセル開度センサ440および回転数センサ460により得られる機関負荷率および機関回転数に基づき、運転状態に対応させて設定されている燃料噴射量の値や機関冷却水温に基づく補正値などが予めマップ化されて記憶されている。
エンジンECU300は、所定プログラムの実行により各センサからの信号に基づいて、エンジンシステム10の全体動作を制御するための各種制御信号を生成する。これらの制御信号は、出力ポート360および駆動回路470を介して、エンジンシステム10を構成する機器・回路群へ送出される。
本発明の実施の形態に係るエンジン10では、各気筒112に筒内噴射用インジェクタ110および吸気通路噴射用インジェクタ120の両方が設けられているため、上記のように算出された必要な全燃料噴射量について、筒内噴射用インジェクタ110および吸気通路噴射用インジェクタ120の間での燃料噴射分担制御を行なう必要がある。
以下では、両インジェクタ間での燃料噴射分担比率を、全燃料噴射量に対する筒内噴射用インジェクタ110からの燃料噴射量の比率である、DI比率rで示すこととする。すなわち、「DI比率r=100%」とは、筒内噴射用インジェクタ110からのみ燃料噴射が行なわれることを意味し、「DI比率r=0%」とは、吸気通路噴射用インジェクタ120からのみ燃料噴射が行なわれることを意味する。「DI比率r≠0%」、「DI比率r≠100%」および「0%<DI比率r<100%」とは、筒内噴射用インジェクタ110と吸気通路噴射用インジェクタ120とで燃料噴射が分担して行なわれることを意味する。なお、概略的には、筒内噴射用インジェクタ110は、出力性能の上昇に寄与し、吸気通路噴射用インジェクタ120は、混合気の均一性に寄与する。
図2は、この発明の実施の形態に係る制御装置による燃料噴射分担制御の基本概念を説明する図である。
図2を参照して、本発明の実施の形態に係る燃料噴射分担制御では、筒内噴射用インジェクタ110の先端部の温度推定値Tinj(以下、単に「先端推定温度Tinj」と称する)に応じて、第1の燃料噴射制御モード500および第2の燃料噴射制御モード510のいずれかが選択される。
既に説明したように、機関冷間時には、吸気通路噴射用インジェクタ120のみによって燃料噴射を行なうことが、排気性状および潤滑性能の維持の面から好ましい。したがって、先端推定温度Tinjから筒内噴射用インジェクタ110(特に先端部)が低温状態であると推定される場合には、第1の燃料噴射制御モード500に従って、全燃料噴射量が吸気通路噴射用インジェクタ120から噴射される。すなわちDI比率r=0%に設定される。
これに対して、筒内噴射用インジェクタ110の高温時には、先端の噴孔部でのデポジット堆積が懸念されるため、筒内噴射用インジェクタから全燃料噴射量の少なくとも一部を噴射することが好ましい。したがって、先端推定温度Tinjから筒内噴射用インジェクタ110(特に先端部)が高温状態であると推定される場合には、第2の燃料噴射制御モード510に従って、DI比率r>0%に設定される。
なお、第2の燃料噴射制御モード510では、エンジン温度やエンジンの運転状態(回転率および負荷率)に応じて、予め作成されたマップの参照によってDI比率が設定され、設定されたDI比率に従って、筒内噴射用インジェクタ110および吸気通路噴射用インジェクタ120の両方による燃料噴射あるいは、筒内噴射用インジェクタ110のみによる燃料噴射が行なわれる。第2の燃料噴射制御モード510におけるDI比率に設定については、後ほど詳細に説明する。
以下に詳細に説明するように、第1の燃料噴射制御モード500から第2の燃料噴射制御モード510へのモード遷移520、および第2の燃料噴射制御モード510から第1の燃料噴射制御モード500へのモード遷移530は、先端推定温度Tinjと所定の基準温度との比較に基づき実行される。このように、本発明の実施の形態では、筒内噴射用インジェクタ110の先端温度を推定することが必要となるので、先端推定温度Tinjの算出手法についてまず説明する。
筒内噴射用インジェクタ110の先端温度は、インジェクタが連結されたエンジン全体からの伝熱および筒内(燃焼室内)温度からの伝熱によって変化する。エンジン全体からの伝熱については、機関冷却水温および外気温から計算される配管温度によって推定することが可能である。また、筒内温度については、燃焼室内での燃焼状況、すなわちエンジンの運転条件(回転数および負荷率)ならびに空燃比(A/f)から推定することができる。したがって、先端推定温度Tinjは、下記(1)式に示すように、Ta,Tw,Tcylを変数とする所定関数によって算出される。
Tinj=f(Ta,Tw,Tcyl)… (1)
ここで、Taは外気温センサ(図示せず)によって検出された外気温を示し、Twは水温センサ380により検出された冷却水温示す。Tcylは、下記(2)式に示されるように、エンジン回転数Erpm、エンジン負荷率Eldおよび設定空燃比A/fを変数とす所定関数によって算出される。
Tcyl=f(Erpm,Eld,A/F)… (2)
なお、式(1),(2)の関数については、筒内噴射用インジェクタ110(特に先端部分)に温度センサを取り付けた上で、種々の条件でエンジンシステム10を運転させる実験を行なうことにより、この実験結果を反映して決定することができる。また、筒内噴射用インジェクタ110への伝熱現象をさらに正確に反映するために、他の変数を用いて上記(1),(2)式に代わる温度推定を行なってもよい。
次に図3を用いて、この発明の実施の形態に係る制御装置による燃料噴射分担制御の動作例を説明する。
図3を参照して、噴分け禁止フラグxihdは、図2に示した第1の燃料噴射制御モード500および第2の燃料噴射制御モード510の選択を示すフラグである。xihd=“オン”である場合には、図2に示した第1の燃料噴射制御モード500が選択されて、DI比率r=0%に設定される。すなわち、必要な全燃料噴射量は吸気通路噴射用インジェクタ120から噴射される。一方、xihd=“オフ”である場合には、図2に示した第2の燃料噴射制御モード510が選択されて、DI比率r>0%に設定される。すなわち、必要な全燃料噴射量の少なくとも一部が筒内噴射用インジェクタ110より噴射される。
基本的には、噴分け禁止フラグxihdは、先端推定温度Tinjと基準温度Tr1,Tr1♯との比較に基づいて、筒内噴射用インジェクタ110が低温状態および高温状態のいずれであるかに応じて設定される。すなわち、筒内噴射用インジェクタ110の低温状態ではxihd=“オン”に設定され、筒内噴射用インジェクタ110の高温状態ではxihd=“オフ”に設定される。
燃料ポンプ駆動フラグxpmpによって、筒内噴射用インジェクタ110からの噴射燃料を所定圧力prfまで昇圧するための高圧燃料ポンプ150(図1)の運転および停止が制御される。具体的には、xpmp=“オン”の場合に高圧燃料ポンプ150が運転される一方で、xpmp=“オフ”の場合に高圧燃料ポンプ150は停止される。燃料ポンプ駆動フラグxpmpは、先端推定温度Tinjと基準温度Tr2,Tr2♯との比較に基づいて設定される。
エンジン始動時においては、噴分け禁止フラグxihdは、初期値として、筒内噴射用インジェクタ110の低温状態に対応する“オン”に設定される。また、先端推定温度Tinjが基準温度Tr2より低いので、燃料ポンプ駆動フラグxpmp=“オフ”に初期設定される。これにより、吸気通路噴射用インジェクタ120から全燃料噴射量は噴射され、かつ、高圧燃料ポンプ150は停止されている。この状態では、高圧燃料ポンプ150から筒内噴射用インジェクタ110への供給燃料の圧力(以下、単に「燃料圧」と称する)は、低いままである。
吸気通路噴射用インジェクタ120による燃料噴射によりエンジンが運転されるに伴って先端推定温度Tinjは上昇を始め、時刻t1で基準温度Tr2に達する。これにより、燃料ポンプ駆動フラグxpmpが“オフ”から“オン”へ変化するので、高圧燃料ポンプ150が運転を開始して、燃料圧fprは上昇を始める。
先端推定温度Tinjは、エンジンの運転に伴ってさらに上昇を続け、時刻t2には基準温度Tr1に達する。基準温度Tr1は、筒内噴射用インジェクタ110の低温状態および高温状態の境界値に相当するので、時刻t2において、筒内噴射用インジェクタ110は、低温状態から高温状態に遷移する。すなわち、筒内噴射用インジェクタ110の先端温度が上昇し、先端の噴孔部でのデポジット堆積を抑制するために、筒内噴射用インジェクタから全燃料噴射量の少なくとも一部を噴射することが好ましい状態となったことが示される。
筒内噴射用インジェクタ110が高温状態である場合には、筒内噴射用インジェクタ110からの正常な燃料噴射が可能な圧力範囲内に燃料圧が入っているかどうかが、さらに判定される。具体的には、燃料圧fprと所定圧力prfとの差|fpr−prf|が所定値pb以下であるかどうかが判定される。なお、図3では所定圧力prfを一定値としているが、所定圧力prfについては、筒内噴射用インジェクタ110に要求される燃料噴射条件に応じて変化させてもよい。
筒内噴射用インジェクタ110が高温状態で、かつ、燃料圧が所定レベルまで上昇している場合には、噴分け禁止フラグxihdが“オン”から“オフ”に変化される。これにより、図1におけるモード遷移520が実行され、燃料噴射分担制御が第1の制御噴射制御モード500から第2の制御噴射制御モード510へ遷移して、全燃料噴射量の少なくとも一部が筒内噴射用インジェクタ110から噴射されるように、DI比率rが設定される(すなわちr>0%)。
これにより、先端温度が上昇した筒内噴射用インジェクタ110からの燃料噴射が開始されるので、筒内噴射用インジェクタ110へのデポジット堆積を抑制することができる。さらに、筒内噴射用インジェクタ110からの燃料噴射開始時に、燃料圧をチェックしているので、この際にエンジンでの全燃料噴射量が変動して、出力トルクの不連続が発生することを回避できる。
なお、図3に示されるように、高圧燃料ポンプ150の運転制御に用いられる基準温度Tr2は、燃料噴射分担制御に用いられる基準温度Tr1よりも低く設定される(Tr2=Tr1−ΔTp)。これにより、先端推定温度Tinjが基準温度Tr1に達するまでに、予め高圧燃料ポンプ150の運転を開始することができる。この結果、吸気通路噴射用インジェクタ120のみを使用する状態から、筒内噴射用インジェクタ110および吸気通路噴射用インジェクタ120の併用状態への移行をスムーズに行なうことができる。
また、筒内噴射用インジェクタ110の先端温度が上昇するまでの期間(図3における時刻t2以前)は、全燃料噴射量を吸気通路噴射用インジェクタ120から噴射して、筒内噴射用インジェクタ110を不使用としているので、機関冷間時に筒内燃料噴射を行なうことによる排気性状の悪化や内燃機関の潤滑性能低下などの悪影響を回避することかできる。
本発明の実施の形態に係る制御装置による燃料噴射分担制御では、筒内噴射用インジェクタ110および吸気通路噴射用インジェクタ120の併用状態(第2の燃料噴射制御モード510)へ一旦遷移した後でも、筒内噴射用インジェクタ110の先端温度が低下した場合には、再び吸気通路噴射用インジェクタ120のみを使用する状態(第1の燃料噴射制御モード500)への遷移を可能としている。
図3に示されるように、先端推定温度Tinjは、時刻t2以降で低下して、時刻t3で基準温度Tr1♯より低くなる。基準温度Tr1♯は、筒内噴射用インジェクタ110の低温状態および高温状態の境界値に相当するので、時刻t3において、筒内噴射用インジェクタ110は、高温状態から低温状態に遷移する。すなわち、筒内噴射用インジェクタ110の先端温度が低下して、先端の噴孔部でのデポジット堆積の危険性が低くなったことが示される。また、この状態では、燃焼室内の温度も低下しているので、筒内燃料噴射を行なうことにより、排気性状の悪化や内燃機関の潤滑性能低下などの悪影響が発生する可能性を回避することも示される。
したがって、筒内噴射用インジェクタ110の低温状態への遷移に応答して、噴分け禁止フラグxihdは、“オフ”から再び“オン”に変化する。これに応答して、図1におけるモード遷移530が実行され、燃料噴射分担制御は、第2の制御噴射制御モード510から第1の制御噴射制御モード510へ遷移する。これにより、筒内噴射用インジェクタ110からの燃料噴射が禁止され、全燃料噴射量が吸気通路噴射用インジェクタ120から噴射されるようにDI比率rが設定される(すなわちr=0%)。この結果、エンジン温度および筒内噴射用インジェクタ110の温度が再び低下した場合にも、全燃料噴射量を吸気通路噴射用インジェクタ120から供給することにより、機関冷間時に筒内燃料噴射を行なうことによる悪影響の発生を防止できる。
さらに、筒内噴射用インジェクタ110の温度(特に,先端部分)が低下して、時刻t4において、先端推定温度Tinjは、基準温度Tr1♯よりも低く設定された基準温度Tr2♯(Tr2♯=Tr1♯−ΔTp♯)よりも低くなる。これに応答して、燃料ポンプ駆動フラグxpmpが“オン”から“オフ”に変化することにより、高圧燃料ポンプ150は停止される。
したがって、筒内噴射用インジェクタの先端温度が十分低下した場合には、筒内噴射用インジェクタ110からの燃料噴射が禁止されるのに伴って高圧燃料ポンプ150の運転を停止することにより、燃費の向上を図ることができる。
図4に示されるように、筒内噴射用インジェクタ110の高温状態から低温状態への遷移(モード遷移530に対応)を判定する際の基準温度Tr1♯と、低温状態から高温状態への遷移(モード遷移520に対応)を判定する基準温度Tr1とは、異なる値に設定される。このように、モード遷移520および530の間で、基準温度にヒステリシス(図3におけるΔT1)を設けることにより、燃料噴射制御モード500および510の間の遷移が頻繁に起こって、いわゆるハンチング現象が発生するのを防止できる。
同様に、図5に示されるように、高圧燃料ポンプ150の運転状態から停止状態への遷移を判定する際の基準温度Tr2♯と、停止状態から運転状態への遷移を判定する基準温度Tr2とも、ヒステリシス(図3におけるΔT2)を設けることにより、高圧燃料ポンプ150が短時間の間に停止状態および運転状態の間を頻繁に繰り返すようなハンチング現象を防止することできる。
時刻t4以降に、再び先端推定温度Tinjが上昇した場合には、基準温度Tr1,Tr♯1を用いて、時刻t1,t2と同様の判定が実行されて、筒内噴射用インジェクタ110の温度が再び上昇した場合には、高圧燃料ポンプ150による燃料圧の上昇を確認した上で、再び筒内噴射用インジェクタ110からの燃料噴射が開始される。
次に、図3で説明した燃料噴射分担制御のフローチャートを図6および図7を用いて説明する。
図6を参照して、燃料噴射分担制御が開始されると、まず、始動時であるかどうかが判定され(ステップS100)、始動時である場合には(ステップS100におけるY判定)、噴分け禁止フラグxihdが“オン”へ初期設定される(ステップS110)。一方、始動時でない場合には(ステップS100におけるN判定)、現在の噴分け禁止フラグxihdの値が維持される。
次に、上記(1)および(2)式に従って、筒内噴射用インジェクタ110(DIインジェクタ)の先端温度が推定され、先端推定温度Tinjが算出される(ステップS120)。
次に、噴分け禁止フラグxihdが“オン”であるかどうかが判定され(ステップS130)、xihd=“オン”の場合(ステップS130におけるY判定)には、ステップS140〜S170による高圧燃料ポンプ駆動制御が実行される。
まず、先端推定温度Tinjが基準温度Tr2以上であるかどうかが判定され(ステップS140)、Tinj≧Tr2である場合(ステップS140におけるY判定)には、燃料ポンプ駆動フラグxpmpが“オン”に設定される(ステップS160)。
一方、Tinj<Tr2の場合(ステップS140におけるN判定)には、さらにTinjがTr2♯よりも低くなっているかどうかが判定される(ステップS150)。なお、図3に示したように、基準温度Tr2♯は、ヒステリシスΔT2を設けて、基準温度Tr2よりも低く設定されている。
ステップS150でのN判定すなわち、Tr2♯≦Tinj<Tr2である場合には、燃料ポンプ駆動フラグxpmpが“オン”に設定される。一方、ステップS150におけるY判定、すなわちTinj<Tr2♯(<Tr2)である場合には、高圧燃料ポンプ150の運転を停止するために、燃料ポンプ駆動フラグxpmpが“オフ”に設定される(ステップS170)。
なお、xihd=“オフ”の場合(ステップS130におけるN判定)には、それ以前に燃料ポンプ駆動フラグxpmpが“オン”に設定されており、かつ、高圧燃料ポンプ150を運転する必要がある。このため、ステップS140〜S170による高圧燃料ポンプ駆動制御は実行されず、燃料ポンプ駆動フラグxpmp=“オン”が維持される。
次に、基準温度Tr1,Tr1♯を用いて、第1の燃料噴射御状態500および第2の燃料噴射制御モード510の間の遷移を判定する、ステップS180〜S230が実行される。
ステップS180では、先端推定温度Tinjが基準温度Tr1以上であるかどうかが判定される。Tinj≧Tr1の場合には(ステップS180におけるY判定)、筒内噴射用インジェクタ110からの正常な燃料噴射が可能な圧力(所定圧力prf)に燃料圧が達しているかどうかがさらに判定される(ステップS190)。具体的には、燃料圧センサ400によって検出された燃料圧fprと所定圧prfとの差が所定範囲pb内に入っていれば、すなわち|fpr−prf|≦pbである場合(ステップS190におけるY判定)には、筒内噴射用インジェクタ110が高温状態であり、かつ、燃料圧も上昇しているので、筒内噴射用インジェクタ110からの燃料噴射を開始するために、噴分け禁止フラグxihdを“オフ”に設定する(ステップS210)。
これに対して、|fpr−prf|>pbである場合(ステップS190におけるN判定)には、筒内噴射用インジェクタ110が高温状態であるものの、かつ、燃料圧が不十分で正常な筒内燃料噴射を行なうことができないため、噴分け禁止フラグxihdは現在値、すなわち“オン”に維持される(ステップS220)。
一方、Tinj<Tr1の場合(ステップ180におけるN判定)には、さらにTinjがTr1♯よりも低くなっているかどうかが判定される(ステップS200)。なお、図3に示したように、ヒステリシスΔT1を設けてTr1♯<Tr1に設定されている。
ステップS200でのY判定すなわち、Tinj<Tr1♯の場合には、図2に示すモード遷移530が行なわれるので、噴分け禁止フラグxihdを“オン”に設定する(ステップS230)。一方、Tinj≧Tr1♯の場合(ステップS200におけるN判定)には、モード遷移530の条件が許可されないため、噴分け禁止フラグxihdは現在値、すなわち“オフ”に維持される(ステップS220)。
上記のような噴分け禁止フラグxihdの設定制御により、図2に示したような燃料噴射制御モード500,510間のモード遷移520,530が実現される。噴分け禁止フラグxihd=“オン”である場合(ステップS240におけるY判定)には、図2に示した第1の燃料噴射制御モード500に従い、筒内噴射用インジェクタ110からの燃料噴射が禁止されて、全燃料噴射量は吸気通路噴射用インジェクタ120から噴射されて、ポート噴射(PFI)が100%となる。すなわちDI比率r=0%に設定される(ステップS250)。
一方、噴分け禁止フラグxihd=“オフ”である場合(ステップS240におけるN判定)には、図2に示した第2の燃料噴射制御モード510に従い、エンジンECU300内のマップが参照されて、エンジン温度、回転数および負荷率に応じたDI比率rが選択される(ステップS260)。ステップS260で求められDI比率に従って、筒内噴射用インジェクタ(DIインジェクタ)および吸気通路噴射用インジェクタ(PFIインジェクタ)の間で燃料噴分けが実行される(ステップS270)。
以上のように、図6および図7に示したフローチャートを実行するプログラムをエンジンECU300に格納することにより、当該プログラムの起動に応答して、図5に示したような燃料噴射分担制御が実行可能である。
ここで、本発明の実施の形態に係るエンジンシステムの構成と、本発明の構成との対応関係を説明すれば、筒内噴射用インジェクタ110が本発明における「第1の燃料噴射手段」に対応し、吸気通路噴射用インジェクタ120が本発明における「第2の燃料噴射手段」に対応し、高圧燃料ポンプ150および燃料圧センサ400が本発明における「高圧燃料ポンプ」および「圧力測定部」にそれぞれ対応する。
さらに、図6および図7に示したフローチャートと、本発明の構成との対応関係を説明すれば、ステップS180による温度判定が本発明における「第1の温度判定手段」に対応し、ステップS140による温度判定が本発明における「第2の温度判定手段」に対応し、ステップS190における燃料圧判定が本発明における「圧力判定手段」に対応し、ステップS160,S170による燃料ポンプ駆動フラグ制御が、本発明における「ポンプ運転制御手段」に対応する。また、第1の燃料噴射制御モード500における燃料噴射を行なうステップS250は、本発明における「第1の燃料噴射制御手段」に対応し、第2の燃料噴射制御モード510における燃料噴射を行なうステップS270は、本発明における「第2の燃料噴射制御手段」に対応する。
以上説明したように、本発明の実施の形態に係る内燃機関の制御装置では、筒内インジェクタ110の先端推定温度に基づいて、先端温度の上昇時に筒内噴射用インジェクタ110からの燃料噴射を開始する。これにより、筒内噴射の開始タイミングを適切に設定できるので、機関冷間時における筒内噴射用インジェクタからの燃料噴射による不具合を抑制した上で、筒内噴射用インジェクタの先端へのデポジット堆積をより確実に抑制することができる。すなわち、筒内噴射用インジェクタの先端温度が許容温度以上に上昇しても筒内噴射用インジェクタからの燃料噴射が開始されない不具合や、筒内噴射用インジェクタの先端温度が許容温度に達していない状態で筒内噴射用インジェクタからの燃料噴射が実行されて排気性状の悪化や内燃機関の潤滑性能低下などの悪影響を抑制できる。
さらに、筒内噴射用インジェクタ110からの燃料噴射開始時に、燃料圧をチェックしているので、燃料噴射制御モードの切換え時にエンジンでの全燃料噴射量が変動して出力トルクの不連続が発生することを回避できる。
次に、第2の燃料噴射制御モード510における、すなわちステップS260におけるDI比率の好ましい設定について説明しておく。
図8および図9は、図1に示したエンジンシステムにおけるDI比率の設定マップの第1の例を説明する図である。
図8および図9に示されるマップは、エンジンECU300のROM320に記憶される。図8は、エンジン10の温間用マップであって、図9は、エンジン10の冷間用マップである。
図8および図9に示すように、これらのマップは、エンジン10の回転数を横軸にして、負荷率を縦軸にして、筒内噴射用インジェクタ110の分担比率がDI比率rとして百分率で示されている。
図8および図9に示すように、温間時のマップと冷間時のマップとに分けてエンジン10の回転数と負荷率とに定まる運転領域ごとに、DI比率rを規定した。エンジン10の温度が異なると、筒内噴射用インジェクタ110および吸気通路噴射用インジェクタ120の制御領域が異なるように設定されたマップを用いて、エンジン10の温度を検知して、エンジン10の温度が予め定められた温度しきい値以上であると図8の温間時のマップを選択して、そうではないと図9に示す冷間時のマップを選択する。それぞれ選択されたマップに基づいて、エンジン10の回転数と負荷率とに基づいて、筒内噴射用インジェクタ110および/または吸気通路噴射用インジェクタ120を制御する。
図8および図9に設定されるエンジン10の回転数と負荷率について説明する。図8のNE(1)は2500〜2700rpmに設定され、KL(1)は30〜50%、KL(2)は60〜90%に設定されている。また、図9のNE(3)は2900〜3100rpmに設定されている。すなわち、NE(1)<NE(3)である。その他、図8のNE(2)や、図9のKL(3)、KL(4)も適宜設定されている。
図8および図9を比較すると、図8に示す温間用マップのNE(1)よりも図9に示す冷間用マップのNE(3)の方が高い。これは、エンジン10の温度が低いほど、吸気通路噴射用インジェクタ120の制御領域が高いエンジン回転数の領域まで拡大されるということを示す。すなわち、エンジン10が冷えている状態であるので、(たとえ、筒内噴射用インジェクタ110から燃料を噴射しなくても)筒内噴射用インジェクタ110の噴口にデポジットが堆積しにくい。このため、吸気通路噴射用インジェクタ120を使って燃料を噴射する領域を拡大するように設定され、均質性を向上させることができる。
図8および図9を比較すると、エンジン10の回転数が、温間用マップにおいてはNE(1)以上の領域において、冷間用マップにおいてはNE(3)以上の領域において、「
DI比率r=100%」である。また、負荷率が、温間用マップにおいてはKL(2)以上の領域において、冷間用マップにおいてはKL(4)以上の領域において、「DI比率r=100%」である。これは、予め定められた高エンジン回転数領域では筒内噴射用インジェクタ110のみが使用されること、予め定められた高エンジン負荷領域では筒内噴射用インジェクタ110のみが使用されるということを示す。すなわち、高回転領域や高負荷領域においては、筒内噴射用インジェクタ110のみで燃料を噴射しても、エンジン10の回転数や負荷が高く吸気量が多いので筒内噴射用インジェクタ110のみでも混合気を均質化しやすいためである。このようにすると、筒内噴射用インジェクタ110から噴射された燃料は燃焼室内で気化潜熱を伴い(燃焼室から熱を奪い)気化される。これにより、圧縮端での混合気の温度が下がる。これにより対ノッキング性能が向上する。また、燃焼室の温度が下がるので、吸入効率が向上し高出力が見込める。
図8に示す温間マップでは、負荷率KL(1)以下では、筒内噴射用インジェクタ110のみが用いられる。これは、エンジン10の温度が高いときであって、予め定められた低負荷領域では筒内噴射用インジェクタ110のみが使用されるということを示す。温間時においてはエンジン10が暖まった状態であるので、筒内噴射用インジェクタ110の噴口にデポジットが堆積しやすい。しかしながら、筒内噴射用インジェクタ110を使って燃料を噴射することにより噴口温度を低下させることができるので、デポジットの堆積を回避することも考えられ、また、筒内噴射用インジェクタの最小燃料噴射量を確保して、筒内噴射用インジェクタ110を閉塞させないことも考えられる。このため、この領域では、筒内噴射用インジェクタ110を用いた燃料噴射を行なっている。
図8および図9を比較すると、図9の冷間用マップにのみ「DI比率r=0%」の領域が存在する。これは、エンジン10の温度が低いときであって、予め定められた低負荷領域(KL(3)以下)では吸気通路噴射用インジェクタ120のみが使用されるということを示す。これはエンジン10が冷えていてエンジン10の負荷が低く吸気量も低いため燃料が霧化しにくい。このような領域においては筒内噴射用インジェクタ110による燃料噴射では良好な燃焼が困難であるため、また、特に低負荷および低回転数の領域では筒内噴射用インジェクタ110を用いた高出力を必要としないため、筒内噴射用インジェクタ110を用いないで、吸気通路噴射用インジェクタ120のみを用いる。
また、通常運転時以外の場合、エンジン10がアイドル時の触媒暖気時の場合(非通常運転状態であるとき)、成層燃焼を行なうように筒内噴射用インジェクタ110が制御される。このような触媒暖気運転中にのみ成層燃焼させることで、触媒暖気を促進させ、排気エミッションの向上を図る。
図10および図11には、図1に示したエンジンシステムにおけるDI比率の設定マップの第2の例が示される。
図10(温間時)および図11(冷間時)に示された設定マップは、図8および図9に示された設定マップと比較して、低回転数領域の高負荷領域におけるDI比率設定が異なる。
エンジン10では、低回転数領域の高負荷領域においては、筒内噴射用インジェクタ110から噴射された燃料により形成される混合気のミキシングが良好ではなく、燃焼室内の混合気が不均質で燃焼が不安定になる傾向を有する。このため、このような問題が発生しない高回転数領域へ移行するに伴い筒内噴射用インジェクタの噴射比率を増大させるようにしている。また、このような問題が発生する高負荷領域へ移行するに伴い筒内噴射用インジェクタ110の噴射比率を減少させるようにしている。これらのDI比率rの変化を図10および図11に十字の矢印で示す。
このようにすると、燃焼が不安定であることに起因するエンジンの出力トルクの変動を抑制することができる。なお、これらのことは、予め定められた低回転数領域へ移行するに伴い筒内噴射用インジェクタ110の噴射比率を減少させることや、予め定められた低負荷領域へ移行するに伴い筒内噴射用インジェクタ110の噴射比率を増大させることと、略等価であることを確認的に記載する。また、このような領域(図10および図11で十字の矢印が記載された領域)以外の領域であって筒内噴射用インジェクタ110のみで燃料を噴射している領域(高回転側、低負荷側)においては、筒内噴射用インジェクタ110のみでも混合気を均質化しやすい。このようにすると、筒内噴射用インジェクタ110から噴射された燃料は燃焼室内で気化潜熱を伴い(燃焼室から熱を奪い)気化される。これにより、圧縮端での混合気の温度が下がる。これにより対ノッキング性能が向上する。また、燃焼室の温度が下がるので、吸入効率が向上し高出力が見込める。
また、図10および図11に示した設定マップにおける、その他の領域のDI比率設定については、図8(温間時)および図9(冷間時)と同様であるので、詳細な説明は繰り返さない。
なお、図9および図11(冷間時)のマップ中には、DI比率r=0%となる領域(PFI領域)も存在しているため、第2の燃料噴射制御モード510においても、全燃料噴射量が吸気通路噴射用インジェクタ120から噴射される可能性も存在することになる。しかしながら、既に説明したように、筒内噴射用インジェクタ110の先端温度は、エンジン全体からの伝熱および筒内(燃焼室内)温度からの伝熱によって上昇する。したがって、先端推定温度Tinjの上昇時には、エンジン冷却水温および/またはエンジン回転数・負荷率が上昇しているため、PFI領域が存在しない温間用マップ(図8,図10)への移行、あるいは、冷間用マップ(図9,図11)上でのPFI領域外でのDI比率設定が行なわれる。したがって、本発明の実施の形態では、第2の燃焼噴射制御モードによる燃料噴射制御時には、実質的に、燃料噴射量のうちの少なくとも一部が筒内噴射用インジェクタ110より噴射される。
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
本発明の実施の形態に係る制御装置で制御されるエンジンシステムの概略構成図である。 この発明の実施の形態に係る制御装置による燃料噴射分担制御を説明する概念図である。 この発明の実施の形態に係る制御装置による燃料噴射分担制御の動作例を示す波形図である。 燃料噴射制御に関する判定におけるヒステリシス設定を説明する図である。 高圧燃料ポンプの運転制御に関する判定におけるヒステリシス設定を説明する図である。 この発明の実施の形態に係る制御装置による燃料噴射分担制御を説明する第1のフローチャートである。 この発明の実施の形態に係る制御装置による燃料噴射分担制御を説明する第2のフローチャートである。 図1に示したエンジンシステムにおける、DI比率設定マップ(機関温間時)の第1の例を説明する図である。 図1に示したエンジンシステムにおける、DI比率設定マップ(機関冷間時)の第1の例を説明する図である。 図1に示したエンジンシステムにおける、DI比率設定マップ(機関温間時)の第2の例を説明する図である。 図1に示したエンジンシステムにおける、DI比率設定マップ(機関冷間時)の第2の例を説明する図である。
符号の説明
10 エンジン、20 インテークマニホールド、30 サージタンク、40 吸気ダクト、50 エアクリーナ、60 電動モータ、70 スロットルバルブ、80 エキゾーストマニホールド、90 三元触媒コンバータ、100 アクセルペダル、110 筒内噴射用インジェクタ、112 気筒、120 吸気通路噴射用インジェクタ、130 燃料分配管、140 逆止弁、150 高圧燃料ポンプ、152 電磁スピル弁、160
燃料分配管、170 燃料圧レギュレータ、180 低圧燃料ポンプ、190 燃料フィルタ、200 燃料タンク、300 エンジンECU、380 水温センサ、400 燃料圧センサ、420 空燃比センサ、440 アクセル開度センサ、460 回転数センサ、500,510 燃料噴射制御モード、520,530 モード遷移(燃料噴射制御状態間)、fpr 燃料圧、r DI比率、Tinj 先端推定温度(筒内噴射用インジェクタ)、Tr1,Tr1♯ 基準温度(燃料噴射分担制御)、Tr2,Tr2♯ 基準温度(高圧燃料ポンプ駆動制御)、xihd 噴分け禁止フラグ、xpmp 燃料ポンプ駆動フラグ、ΔT1,ΔT2 ヒステリシス(基準温度)。

Claims (6)

  1. 筒内に燃料を噴射するための第1の燃料噴射手段と、吸気通路内に燃料を噴射するための第2の燃料噴射手段と、燃料を所定圧力まで昇圧して前記第1の燃料噴射手段へ供給するための高圧燃料ポンプと、前記高圧燃料ポンプからの供給燃料の圧力を測定する圧力測定部とを備えた内燃機関の制御装置であって、
    前記内燃機関の運転状態および温度を含む情報に基づいて、前記第1の燃料噴射手段の温度を推定する温度推定手段と、
    前記温度推定手段による推定温度と第1の基準温度との比較により、前記第1の燃料噴射手段が高温状態および低温状態のいずれであるかを判定する第1の温度判定手段と、
    前記圧力測定部での測定値に基づき、前記供給燃料が所定圧力範囲内であるかどうかを判定する圧力判定手段と、
    前記温度推定手段による推定温度が、前記第1の基準温度よりも低く設定される第2の基準温度以上かどうかを判定する第2の温度判定手段と、
    前記第2の温度判定手段の判定結果に基づいて、前記推定温度が前記第2の基準温度以上であるときに前記高圧燃料ポンプを運転させる一方で、前記推定温度が前記第2の基準温度より低いときに前記高圧燃料ポンプを停止させるポンプ運転制御手段と、
    前記内燃機関に要求される条件に基づいて、全燃料噴射量に対する前記第1の燃料噴射手段および前記第2燃料噴射手段の間での燃料噴射量の分担比率を制御するための制御手段とを備え、
    前記制御手段は、
    前記全燃料噴射量が前記第2の燃料噴射手段から噴射されるように前記分担比率を制御する第1の燃料制御噴射手段と、
    前記全燃料噴射量のうちの少なくとも一部が前記第1の燃料噴射手段から噴射されるように前記分担比率を制御する第2の燃料噴射制御手段とを有し、
    前記制御手段は、前記第1の温度判定手段により前記第1の燃料噴射手段が前記高温状態であると判定された場合に、前記圧力判定手段の判定結果に基づき、前記供給燃料が前記所定圧力範囲内であるときには前記第2の燃料噴射制御手段を用いて前記分担比率を設定する一方で、前記供給燃料が前記所定圧力範囲内にないときには前記第1の燃料噴射制御手段を用いて前記分担比率を設定し、さらに、
    前記制御手段は、前記第1の温度判定手段が前記第1の燃料噴射手段を前記低温状態と判定した場合には、前記第1の燃料噴射制御手段を用いて前記分担比率を設定する、内燃機関の制御装置。
  2. 前記第1の基準温度は、前記第1の燃料噴射手段が現在前記高温状態および前記低温状態のいずれであるかに従って、それぞれ異なる値に設定される、請求項1に記載の内燃機関の制御装置。
  3. 前記第2の基準温度は、前記高圧燃料ポンプが現在運転中および停止中のいずれであるかに従って、それぞれ異なる値に設定される、請求項1記載の内燃機関の制御装置。
  4. 前記第2の燃料噴射制御手段は、前記内燃機関の温度、転数および負荷率を含む情報に
    基づいて、前記分担比率を制御する、請求項1からのいずれか1項に記載の内燃機関の制御装置。
  5. 前記温度推定手段は、前記内燃機関の冷却水温度と、外気温から計算された配管温度と、前記内燃機関の運転状態から推定される筒内温度とに基づいて、前記第1の燃料噴射手段の温度を推定する、請求項1からのいずれか1項に記載の内燃機関の制御装置。
  6. 前記温度推定手段は、前記内燃機関の負荷率および回転数、ならびに空燃比に基づいて、前記筒内温度を推定する手段を有する、請求項記載の内燃機関の制御装置。
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