以下において、この発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。なお以下では図中における同一または相当部分には同一符号を付してその詳細な説明は原則的に繰返さないものとする。
図1に、本発明の実施の形態に係る内燃機関の制御装置であるエンジンECU(Electronic Control Unit)で制御されるエンジンシステムの概略構成図を示す。なお、図1には、エンジンとして直列4気筒ガソリンエンジンを示すが、本発明はこのようなエンジンに限定されるものではない。
図1に示すように、エンジン(内燃機関)10は、4つの気筒112を備え、各気筒112はそれぞれ対応するインテークマニホールド20を介して共通のサージタンク30に接続されている。サージタンク30は、吸気ダクト40を介してエアクリーナ50に接続され、吸気ダクト40内にはエアフローメータ42が配置されるとともに、電動モータ60によって駆動されるスロットルバルブ70が配置されている。このスロットルバルブ70は、アクセルペダル100とは独立してエンジンECU300の出力信号に基づいてその開度が制御される。一方、各気筒112は共通のエキゾーストマニホールド80に連結され、このエキゾーストマニホールド80は三元触媒コンバータ90に連結されている。
各気筒112に対しては、筒内に向けて燃料を噴射するための筒内噴射用インジェクタ110と、吸気ポートまたは/および吸気通路内に向けて燃料を噴射するための吸気通路噴射用インジェクタ120とがそれぞれ設けられている。これらインジェクタ110、120はエンジンECU300の出力信号に基づいてそれぞれ制御される。
なお、本実施の形態においては、2つのインジェクタが別個に設けられた内燃機関について説明するが、本発明はこのような内燃機関に限定されない。たとえば、筒内噴射機能と吸気通路噴射機能とを併せ持つような1個のインジェクタを有する内燃機関であってもよい。
図1に示すように、各筒内噴射用インジェクタ110は共通の燃料分配管130に接続されている。この燃料分配管130は、燃料分配管130に向けて流通可能な逆止弁140を介して、機関駆動式の高圧燃料ポンプ150に接続されている。高圧燃料ポンプ150の吐出側は電磁スピル弁152を介して高圧燃料ポンプ150の吸入側に連結されており、この電磁スピル弁152の開度が小さいときほど、高圧燃料ポンプ150から燃料分配管130内に供給される燃料量が増大され、電磁スピル弁152が全開にされると、高圧燃料ポンプ150から燃料分配管130への燃料供給が停止されるように構成されている。なお、電磁スピル弁152はエンジンECU300の出力信号に基づいて制御される。
一方、各吸気通路噴射用インジェクタ120は、共通する低圧側の燃料分配管160に接続されており、燃料分配管160および高圧燃料ポンプ150は共通の燃料圧レギュレータ170を介して、電動モータ駆動式の低圧燃料ポンプ180に接続されている。さらに、低圧燃料ポンプ180は燃料フィルタ190を介して燃料タンク200に接続されている。燃料圧レギュレータ170は低圧燃料ポンプ180から吐出された燃料の燃料圧が予め定められた設定燃料圧よりも高くなると、低圧燃料ポンプ180から吐出された燃料の一部を燃料タンク200に戻すように構成されている。したがって吸気通路噴射用インジェクタ120に供給されている燃料圧および高圧燃料ポンプ150に供給されている燃料圧が上記設定燃料圧よりも高くなるのを阻止している。
エンジンECU300は、デジタルコンピュータから構成され、双方向性バス310を介して相互に接続されたROM(Read Only Memory)320、RAM(Random Access Memory)330、CPU(Central Processing Unit)340、入力ポート350および出力ポート360を備えている。
エアフローメータ42は吸入空気量に比例した出力電圧を発生し、このエアフローメータ42の出力電圧はA/D変換器370を介して入力ポート350に入力される。エンジン10には機関冷却水温に比例した出力電圧を発生する水温センサ380が取付けられ、この水温センサ380の出力電圧は、A/D変換器390を介して入力ポート350に入力される。
燃料分配管130には燃料分配管130内の燃料圧に比例した出力電圧を発生する燃料圧センサ400が取付けられ、この燃料圧センサ400の出力電圧は、A/D変換器410を介して入力ポート350に入力される。三元触媒コンバータ90上流のエキゾーストマニホールド80には、排気ガス中の酸素濃度に比例した出力電圧を発生する空燃比センサ420が取付けられ、この空燃比センサ420の出力電圧は、A/D変換器430を介して入力ポート350に入力される。
本実施の形態に係るエンジンシステムにおける空燃比センサ420は、エンジン10で燃焼された混合気の空燃比に比例した出力電圧を発生する全域空燃比センサ(リニア空燃比センサ)である。なお、空燃比センサ420としては、エンジン10で燃焼された混合気の空燃比が理論空燃比に対してリッチであるかリーンであるかをオン−オフ的に検出するO2センサを用いてもよい。
アクセルペダル100は、アクセルペダル100の踏込み量に比例した出力電圧を発生するアクセル開度センサ440に接続され、アクセル開度センサ440の出力電圧は、A/D変換器450を介して入力ポート350に入力される。また、入力ポート350には、機関回転数を表わす出力パルスを発生する回転数センサ460が接続されている。エンジンECU300のROM320には、上述のアクセル開度センサ440および回転数センサ460により得られる機関負荷率および機関回転数に基づき、運転状態に対応させて設定されている燃料噴射量の値や機関冷却水温に基づく補正値などが予めマップ化されて記憶されている。
エンジンECU300は、所定プログラムの実行により各センサからの信号に基づいて、エンジンシステム10の全体動作を制御するための各種制御信号を生成する。これらの制御信号は、出力ポート360および駆動回路470を介して、エンジンシステム10を構成する機器・回路群へ送出される。
本発明の実施の形態に係るエンジン10では、各気筒112に筒内噴射用インジェクタ110および吸気通路噴射用インジェクタ120の両方が設けられているため、上記のように算出された必要な全燃料噴射量について、筒内噴射用インジェクタ110および吸気通路噴射用インジェクタ120の間での燃料噴射分担制御を行なう必要がある。
以下では、両インジェクタ間での燃料噴射分担比率を、全燃料噴射量に対する筒内噴射用インジェクタ110からの燃料噴射量の比率である、DI比率rで示すこととする。すなわち、「DI比率r=100%」とは、筒内噴射用インジェクタ110からのみ燃料噴射が行なわれることを意味し、「DI比率r=0%」とは、吸気通路噴射用インジェクタ120からのみ燃料噴射が行なわれることを意味する。「DI比率r≠0%」、「DI比率r≠100%」および「0%<DI比率r<100%」とは、筒内噴射用インジェクタ110と吸気通路噴射用インジェクタ120とで燃料噴射が分担して行なわれることを意味する。なお、概略的には、筒内噴射用インジェクタ110は、出力性能の上昇に寄与し、吸気通路噴射用インジェクタ120は、混合気の均一性に寄与する。
図2は、この発明の実施の形態に係る制御装置による燃料噴射分担制御の基本概念を説明する図である。
図2を参照して、本発明の実施の形態に係る燃料噴射分担制御では、筒内噴射用インジェクタ110の先端部の温度推定値Tinj(以下、単に「先端推定温度Tinj」と称する)に応じて、第1の燃料噴射制御モード500および第2の燃料噴射制御モード510のいずれかが選択される。
既に説明したように、機関冷間時には、吸気通路噴射用インジェクタ120のみによって燃料噴射を行なうことが、排気性状および潤滑性能の維持の面から好ましい。したがって、先端推定温度Tinjから筒内噴射用インジェクタ110(特に先端部)が低温状態であると推定される場合には、第1の燃料噴射制御モード500に従って、全燃料噴射量が吸気通路噴射用インジェクタ120から噴射される。すなわちDI比率r=0%に設定される。
これに対して、筒内噴射用インジェクタ110の高温時には、先端の噴孔部でのデポジット堆積が懸念されるため、筒内噴射用インジェクタから全燃料噴射量の少なくとも一部を噴射することが好ましい。したがって、先端推定温度Tinjから筒内噴射用インジェクタ110(特に先端部)が高温状態であると推定される場合には、第2の燃料噴射制御モード510に従って、DI比率r>0%に設定される。
なお、第2の燃料噴射制御モード510では、エンジン温度やエンジンの運転状態(回転率および負荷率)に応じて、予め作成されたマップの参照によってDI比率が設定され、設定されたDI比率に従って、筒内噴射用インジェクタ110および吸気通路噴射用インジェクタ120の両方による燃料噴射あるいは、筒内噴射用インジェクタ110のみによる燃料噴射が行なわれる。第2の燃料噴射制御モード510におけるDI比率に設定については、後ほど詳細に説明する。
以下に詳細に説明するように、第1の燃料噴射制御モード500から第2の燃料噴射制御モード510へのモード遷移520、および第2の燃料噴射制御モード510から第1の燃料噴射制御モード500へのモード遷移530は、先端推定温度Tinjと所定の基準温度との比較に基づき実行される。このように、本発明の実施の形態では、筒内噴射用インジェクタ110の先端温度を推定することが必要となるので、先端推定温度Tinjの算出手法についてまず説明する。
筒内噴射用インジェクタ110の先端温度は、インジェクタが連結されたエンジン全体からの伝熱および筒内(燃焼室内)温度からの伝熱によって変化する。エンジン全体からの伝熱については、機関冷却水温および外気温から計算される配管温度によって推定することが可能である。また、筒内温度については、燃焼室内での燃焼状況、すなわちエンジンの運転条件(回転数および負荷率)ならびに空燃比(A/f)から推定することができる。したがって、先端推定温度Tinjは、下記(1)式に示すように、Ta,Tw,Tcylを変数とする所定関数によって算出される。
Tinj=f(Ta,Tw,Tcyl)… (1)
ここで、Taは外気温センサ(図示せず)によって検出された外気温を示し、Twは水温センサ380により検出された冷却水温示す。Tcylは、下記(2)式に示されるように、エンジン回転数Erpm、エンジン負荷率Eldおよび設定空燃比A/fを変数とす所定関数によって算出される。
Tcyl=f(Erpm,Eld,A/F)… (2)
なお、式(1),(2)の関数については、筒内噴射用インジェクタ110(特に先端部分)に温度センサを取り付けた上で、種々の条件でエンジンシステム10を運転させる実験を行なうことにより、この実験結果を反映して決定することができる。また、筒内噴射用インジェクタ110への伝熱現象をさらに正確に反映するために、他の変数を用いて上記(1),(2)式に代わる温度推定を行なってもよい。
次に図3を用いて、この発明の実施の形態に係る制御装置による燃料噴射分担制御の動作例を説明する。
図3を参照して、噴分け禁止フラグxihdは、図2に示した第1の燃料噴射制御モード500および第2の燃料噴射制御モード510の選択を示すフラグである。xihd=“オン”である場合には、図2に示した第1の燃料噴射制御モード500が選択されて、DI比率r=0%に設定される。すなわち、必要な全燃料噴射量は吸気通路噴射用インジェクタ120から噴射される。一方、xihd=“オフ”である場合には、図2に示した第2の燃料噴射制御モード510が選択されて、DI比率r>0%に設定される。すなわち、必要な全燃料噴射量の少なくとも一部が筒内噴射用インジェクタ110より噴射される。
基本的には、噴分け禁止フラグxihdは、先端推定温度Tinjと基準温度Tr1,Tr1♯との比較に基づいて、筒内噴射用インジェクタ110が低温状態および高温状態のいずれであるかに応じて設定される。すなわち、筒内噴射用インジェクタ110の低温状態ではxihd=“オン”に設定され、筒内噴射用インジェクタ110の高温状態ではxihd=“オフ”に設定される。
燃料ポンプ駆動フラグxpmpによって、筒内噴射用インジェクタ110からの噴射燃料を所定圧力prfまで昇圧するための高圧燃料ポンプ150(図1)の運転および停止が制御される。具体的には、xpmp=“オン”の場合に高圧燃料ポンプ150が運転される一方で、xpmp=“オフ”の場合に高圧燃料ポンプ150は停止される。燃料ポンプ駆動フラグxpmpは、先端推定温度Tinjと基準温度Tr2,Tr2♯との比較に基づいて設定される。
エンジン始動時においては、噴分け禁止フラグxihdは、初期値として、筒内噴射用インジェクタ110の低温状態に対応する“オン”に設定される。また、先端推定温度Tinjが基準温度Tr2より低いので、燃料ポンプ駆動フラグxpmp=“オフ”に初期設定される。これにより、吸気通路噴射用インジェクタ120から全燃料噴射量は噴射され、かつ、高圧燃料ポンプ150は停止されている。この状態では、高圧燃料ポンプ150から筒内噴射用インジェクタ110への供給燃料の圧力(以下、単に「燃料圧」と称する)は、低いままである。
吸気通路噴射用インジェクタ120による燃料噴射によりエンジンが運転されるに伴って先端推定温度Tinjは上昇を始め、時刻t1で基準温度Tr2に達する。これにより、燃料ポンプ駆動フラグxpmpが“オフ”から“オン”へ変化するので、高圧燃料ポンプ150が運転を開始して、燃料圧fprは上昇を始める。
先端推定温度Tinjは、エンジンの運転に伴ってさらに上昇を続け、時刻t2には基準温度Tr1に達する。基準温度Tr1は、筒内噴射用インジェクタ110の低温状態および高温状態の境界値に相当するので、時刻t2において、筒内噴射用インジェクタ110は、低温状態から高温状態に遷移する。すなわち、筒内噴射用インジェクタ110の先端温度が上昇し、先端の噴孔部でのデポジット堆積を抑制するために、筒内噴射用インジェクタから全燃料噴射量の少なくとも一部を噴射することが好ましい状態となったことが示される。
筒内噴射用インジェクタ110が高温状態である場合には、筒内噴射用インジェクタ110からの正常な燃料噴射が可能な圧力範囲内に燃料圧が入っているかどうかが、さらに判定される。具体的には、燃料圧fprと所定圧力prfとの差|fpr−prf|が所定値pb以下であるかどうかが判定される。なお、図3では所定圧力prfを一定値としているが、所定圧力prfについては、筒内噴射用インジェクタ110に要求される燃料噴射条件に応じて変化させてもよい。
筒内噴射用インジェクタ110が高温状態で、かつ、燃料圧が所定レベルまで上昇している場合には、噴分け禁止フラグxihdが“オン”から“オフ”に変化される。これにより、図1におけるモード遷移520が実行され、燃料噴射分担制御が第1の制御噴射制御モード500から第2の制御噴射制御モード510へ遷移して、全燃料噴射量の少なくとも一部が筒内噴射用インジェクタ110から噴射されるように、DI比率rが設定される(すなわちr>0%)。
これにより、先端温度が上昇した筒内噴射用インジェクタ110からの燃料噴射が開始されるので、筒内噴射用インジェクタ110へのデポジット堆積を抑制することができる。さらに、筒内噴射用インジェクタ110からの燃料噴射開始時に、燃料圧をチェックしているので、この際にエンジンでの全燃料噴射量が変動して、出力トルクの不連続が発生することを回避できる。
なお、図3に示されるように、高圧燃料ポンプ150の運転制御に用いられる基準温度Tr2は、燃料噴射分担制御に用いられる基準温度Tr1よりも低く設定される(Tr2=Tr1−ΔTp)。これにより、先端推定温度Tinjが基準温度Tr1に達するまでに、予め高圧燃料ポンプ150の運転を開始することができる。この結果、吸気通路噴射用インジェクタ120のみを使用する状態から、筒内噴射用インジェクタ110および吸気通路噴射用インジェクタ120の併用状態への移行をスムーズに行なうことができる。
また、筒内噴射用インジェクタ110の先端温度が上昇するまでの期間(図3における時刻t2以前)は、全燃料噴射量を吸気通路噴射用インジェクタ120から噴射して、筒内噴射用インジェクタ110を不使用としているので、機関冷間時に筒内燃料噴射を行なうことによる排気性状の悪化や内燃機関の潤滑性能低下などの悪影響を回避することかできる。
本発明の実施の形態に係る制御装置による燃料噴射分担制御では、筒内噴射用インジェクタ110および吸気通路噴射用インジェクタ120の併用状態(第2の燃料噴射制御モード510)へ一旦遷移した後でも、筒内噴射用インジェクタ110の先端温度が低下した場合には、再び吸気通路噴射用インジェクタ120のみを使用する状態(第1の燃料噴射制御モード500)への遷移を可能としている。
図3に示されるように、先端推定温度Tinjは、時刻t2以降で低下して、時刻t3で基準温度Tr1♯より低くなる。基準温度Tr1♯は、筒内噴射用インジェクタ110の低温状態および高温状態の境界値に相当するので、時刻t3において、筒内噴射用インジェクタ110は、高温状態から低温状態に遷移する。すなわち、筒内噴射用インジェクタ110の先端温度が低下して、先端の噴孔部でのデポジット堆積の危険性が低くなったことが示される。また、この状態では、燃焼室内の温度も低下しているので、筒内燃料噴射を行なうことにより、排気性状の悪化や内燃機関の潤滑性能低下などの悪影響が発生する可能性を回避することも示される。
したがって、筒内噴射用インジェクタ110の低温状態への遷移に応答して、噴分け禁止フラグxihdは、“オフ”から再び“オン”に変化する。これに応答して、図1におけるモード遷移530が実行され、燃料噴射分担制御は、第2の制御噴射制御モード510から第1の制御噴射制御モード510へ遷移する。これにより、筒内噴射用インジェクタ110からの燃料噴射が禁止され、全燃料噴射量が吸気通路噴射用インジェクタ120から噴射されるようにDI比率rが設定される(すなわちr=0%)。この結果、エンジン温度および筒内噴射用インジェクタ110の温度が再び低下した場合にも、全燃料噴射量を吸気通路噴射用インジェクタ120から供給することにより、機関冷間時に筒内燃料噴射を行なうことによる悪影響の発生を防止できる。
さらに、筒内噴射用インジェクタ110の温度(特に,先端部分)が低下して、時刻t4において、先端推定温度Tinjは、基準温度Tr1♯よりも低く設定された基準温度Tr2♯(Tr2♯=Tr1♯−ΔTp♯)よりも低くなる。これに応答して、燃料ポンプ駆動フラグxpmpが“オン”から“オフ”に変化することにより、高圧燃料ポンプ150は停止される。
したがって、筒内噴射用インジェクタの先端温度が十分低下した場合には、筒内噴射用インジェクタ110からの燃料噴射が禁止されるのに伴って高圧燃料ポンプ150の運転を停止することにより、燃費の向上を図ることができる。
図4に示されるように、筒内噴射用インジェクタ110の高温状態から低温状態への遷移(モード遷移530に対応)を判定する際の基準温度Tr1♯と、低温状態から高温状態への遷移(モード遷移520に対応)を判定する基準温度Tr1とは、異なる値に設定される。このように、モード遷移520および530の間で、基準温度にヒステリシス(図3におけるΔT1)を設けることにより、燃料噴射制御モード500および510の間の遷移が頻繁に起こって、いわゆるハンチング現象が発生するのを防止できる。
同様に、図5に示されるように、高圧燃料ポンプ150の運転状態から停止状態への遷移を判定する際の基準温度Tr2♯と、停止状態から運転状態への遷移を判定する基準温度Tr2とも、ヒステリシス(図3におけるΔT2)を設けることにより、高圧燃料ポンプ150が短時間の間に停止状態および運転状態の間を頻繁に繰り返すようなハンチング現象を防止することできる。
時刻t4以降に、再び先端推定温度Tinjが上昇した場合には、基準温度Tr1,Tr♯1を用いて、時刻t1,t2と同様の判定が実行されて、筒内噴射用インジェクタ110の温度が再び上昇した場合には、高圧燃料ポンプ150による燃料圧の上昇を確認した上で、再び筒内噴射用インジェクタ110からの燃料噴射が開始される。
次に、図3で説明した燃料噴射分担制御のフローチャートを図6および図7を用いて説明する。
図6を参照して、燃料噴射分担制御が開始されると、まず、始動時であるかどうかが判定され(ステップS100)、始動時である場合には(ステップS100におけるY判定)、噴分け禁止フラグxihdが“オン”へ初期設定される(ステップS110)。一方、始動時でない場合には(ステップS100におけるN判定)、現在の噴分け禁止フラグxihdの値が維持される。
次に、上記(1)および(2)式に従って、筒内噴射用インジェクタ110(DIインジェクタ)の先端温度が推定され、先端推定温度Tinjが算出される(ステップS120)。
次に、噴分け禁止フラグxihdが“オン”であるかどうかが判定され(ステップS130)、xihd=“オン”の場合(ステップS130におけるY判定)には、ステップS140〜S170による高圧燃料ポンプ駆動制御が実行される。
まず、先端推定温度Tinjが基準温度Tr2以上であるかどうかが判定され(ステップS140)、Tinj≧Tr2である場合(ステップS140におけるY判定)には、燃料ポンプ駆動フラグxpmpが“オン”に設定される(ステップS160)。
一方、Tinj<Tr2の場合(ステップS140におけるN判定)には、さらにTinjがTr2♯よりも低くなっているかどうかが判定される(ステップS150)。なお、図3に示したように、基準温度Tr2♯は、ヒステリシスΔT2を設けて、基準温度Tr2よりも低く設定されている。
ステップS150でのN判定すなわち、Tr2♯≦Tinj<Tr2である場合には、燃料ポンプ駆動フラグxpmpが“オン”に設定される。一方、ステップS150におけるY判定、すなわちTinj<Tr2♯(<Tr2)である場合には、高圧燃料ポンプ150の運転を停止するために、燃料ポンプ駆動フラグxpmpが“オフ”に設定される(ステップS170)。
なお、xihd=“オフ”の場合(ステップS130におけるN判定)には、それ以前に燃料ポンプ駆動フラグxpmpが“オン”に設定されており、かつ、高圧燃料ポンプ150を運転する必要がある。このため、ステップS140〜S170による高圧燃料ポンプ駆動制御は実行されず、燃料ポンプ駆動フラグxpmp=“オン”が維持される。
次に、基準温度Tr1,Tr1♯を用いて、第1の燃料噴射御状態500および第2の燃料噴射制御モード510の間の遷移を判定する、ステップS180〜S230が実行される。
ステップS180では、先端推定温度Tinjが基準温度Tr1以上であるかどうかが判定される。Tinj≧Tr1の場合には(ステップS180におけるY判定)、筒内噴射用インジェクタ110からの正常な燃料噴射が可能な圧力(所定圧力prf)に燃料圧が達しているかどうかがさらに判定される(ステップS190)。具体的には、燃料圧センサ400によって検出された燃料圧fprと所定圧prfとの差が所定範囲pb内に入っていれば、すなわち|fpr−prf|≦pbである場合(ステップS190におけるY判定)には、筒内噴射用インジェクタ110が高温状態であり、かつ、燃料圧も上昇しているので、筒内噴射用インジェクタ110からの燃料噴射を開始するために、噴分け禁止フラグxihdを“オフ”に設定する(ステップS210)。
これに対して、|fpr−prf|>pbである場合(ステップS190におけるN判定)には、筒内噴射用インジェクタ110が高温状態であるものの、かつ、燃料圧が不十分で正常な筒内燃料噴射を行なうことができないため、噴分け禁止フラグxihdは現在値、すなわち“オン”に維持される(ステップS220)。
一方、Tinj<Tr1の場合(ステップ180におけるN判定)には、さらにTinjがTr1♯よりも低くなっているかどうかが判定される(ステップS200)。なお、図3に示したように、ヒステリシスΔT1を設けてTr1♯<Tr1に設定されている。
ステップS200でのY判定すなわち、Tinj<Tr1♯の場合には、図2に示すモード遷移530が行なわれるので、噴分け禁止フラグxihdを“オン”に設定する(ステップS230)。一方、Tinj≧Tr1♯の場合(ステップS200におけるN判定)には、モード遷移530の条件が許可されないため、噴分け禁止フラグxihdは現在値、すなわち“オフ”に維持される(ステップS220)。
上記のような噴分け禁止フラグxihdの設定制御により、図2に示したような燃料噴射制御モード500,510間のモード遷移520,530が実現される。噴分け禁止フラグxihd=“オン”である場合(ステップS240におけるY判定)には、図2に示した第1の燃料噴射制御モード500に従い、筒内噴射用インジェクタ110からの燃料噴射が禁止されて、全燃料噴射量は吸気通路噴射用インジェクタ120から噴射されて、ポート噴射(PFI)が100%となる。すなわちDI比率r=0%に設定される(ステップS250)。
一方、噴分け禁止フラグxihd=“オフ”である場合(ステップS240におけるN判定)には、図2に示した第2の燃料噴射制御モード510に従い、エンジンECU300内のマップが参照されて、エンジン温度、回転数および負荷率に応じたDI比率rが選択される(ステップS260)。ステップS260で求められDI比率に従って、筒内噴射用インジェクタ(DIインジェクタ)および吸気通路噴射用インジェクタ(PFIインジェクタ)の間で燃料噴分けが実行される(ステップS270)。
以上のように、図6および図7に示したフローチャートを実行するプログラムをエンジンECU300に格納することにより、当該プログラムの起動に応答して、図5に示したような燃料噴射分担制御が実行可能である。
ここで、本発明の実施の形態に係るエンジンシステムの構成と、本発明の構成との対応関係を説明すれば、筒内噴射用インジェクタ110が本発明における「第1の燃料噴射手段」に対応し、吸気通路噴射用インジェクタ120が本発明における「第2の燃料噴射手段」に対応し、高圧燃料ポンプ150および燃料圧センサ400が本発明における「高圧燃料ポンプ」および「圧力測定部」にそれぞれ対応する。
さらに、図6および図7に示したフローチャートと、本発明の構成との対応関係を説明すれば、ステップS180による温度判定が本発明における「第1の温度判定手段」に対応し、ステップS140による温度判定が本発明における「第2の温度判定手段」に対応し、ステップS190における燃料圧判定が本発明における「圧力判定手段」に対応し、ステップS160,S170による燃料ポンプ駆動フラグ制御が、本発明における「ポンプ運転制御手段」に対応する。また、第1の燃料噴射制御モード500における燃料噴射を行なうステップS250は、本発明における「第1の燃料噴射制御手段」に対応し、第2の燃料噴射制御モード510における燃料噴射を行なうステップS270は、本発明における「第2の燃料噴射制御手段」に対応する。
以上説明したように、本発明の実施の形態に係る内燃機関の制御装置では、筒内インジェクタ110の先端推定温度に基づいて、先端温度の上昇時に筒内噴射用インジェクタ110からの燃料噴射を開始する。これにより、筒内噴射の開始タイミングを適切に設定できるので、機関冷間時における筒内噴射用インジェクタからの燃料噴射による不具合を抑制した上で、筒内噴射用インジェクタの先端へのデポジット堆積をより確実に抑制することができる。すなわち、筒内噴射用インジェクタの先端温度が許容温度以上に上昇しても筒内噴射用インジェクタからの燃料噴射が開始されない不具合や、筒内噴射用インジェクタの先端温度が許容温度に達していない状態で筒内噴射用インジェクタからの燃料噴射が実行されて排気性状の悪化や内燃機関の潤滑性能低下などの悪影響を抑制できる。
さらに、筒内噴射用インジェクタ110からの燃料噴射開始時に、燃料圧をチェックしているので、燃料噴射制御モードの切換え時にエンジンでの全燃料噴射量が変動して出力トルクの不連続が発生することを回避できる。
次に、第2の燃料噴射制御モード510における、すなわちステップS260におけるDI比率の好ましい設定について説明しておく。
図8および図9は、図1に示したエンジンシステムにおけるDI比率の設定マップの第1の例を説明する図である。
図8および図9に示されるマップは、エンジンECU300のROM320に記憶される。図8は、エンジン10の温間用マップであって、図9は、エンジン10の冷間用マップである。
図8および図9に示すように、これらのマップは、エンジン10の回転数を横軸にして、負荷率を縦軸にして、筒内噴射用インジェクタ110の分担比率がDI比率rとして百分率で示されている。
図8および図9に示すように、温間時のマップと冷間時のマップとに分けてエンジン10の回転数と負荷率とに定まる運転領域ごとに、DI比率rを規定した。エンジン10の温度が異なると、筒内噴射用インジェクタ110および吸気通路噴射用インジェクタ120の制御領域が異なるように設定されたマップを用いて、エンジン10の温度を検知して、エンジン10の温度が予め定められた温度しきい値以上であると図8の温間時のマップを選択して、そうではないと図9に示す冷間時のマップを選択する。それぞれ選択されたマップに基づいて、エンジン10の回転数と負荷率とに基づいて、筒内噴射用インジェクタ110および/または吸気通路噴射用インジェクタ120を制御する。
図8および図9に設定されるエンジン10の回転数と負荷率について説明する。図8のNE(1)は2500〜2700rpmに設定され、KL(1)は30〜50%、KL(2)は60〜90%に設定されている。また、図9のNE(3)は2900〜3100rpmに設定されている。すなわち、NE(1)<NE(3)である。その他、図8のNE(2)や、図9のKL(3)、KL(4)も適宜設定されている。
図8および図9を比較すると、図8に示す温間用マップのNE(1)よりも図9に示す冷間用マップのNE(3)の方が高い。これは、エンジン10の温度が低いほど、吸気通路噴射用インジェクタ120の制御領域が高いエンジン回転数の領域まで拡大されるということを示す。すなわち、エンジン10が冷えている状態であるので、(たとえ、筒内噴射用インジェクタ110から燃料を噴射しなくても)筒内噴射用インジェクタ110の噴口にデポジットが堆積しにくい。このため、吸気通路噴射用インジェクタ120を使って燃料を噴射する領域を拡大するように設定され、均質性を向上させることができる。
図8および図9を比較すると、エンジン10の回転数が、温間用マップにおいてはNE(1)以上の領域において、冷間用マップにおいてはNE(3)以上の領域において、「
DI比率r=100%」である。また、負荷率が、温間用マップにおいてはKL(2)以上の領域において、冷間用マップにおいてはKL(4)以上の領域において、「DI比率r=100%」である。これは、予め定められた高エンジン回転数領域では筒内噴射用インジェクタ110のみが使用されること、予め定められた高エンジン負荷領域では筒内噴射用インジェクタ110のみが使用されるということを示す。すなわち、高回転領域や高負荷領域においては、筒内噴射用インジェクタ110のみで燃料を噴射しても、エンジン10の回転数や負荷が高く吸気量が多いので筒内噴射用インジェクタ110のみでも混合気を均質化しやすいためである。このようにすると、筒内噴射用インジェクタ110から噴射された燃料は燃焼室内で気化潜熱を伴い(燃焼室から熱を奪い)気化される。これにより、圧縮端での混合気の温度が下がる。これにより対ノッキング性能が向上する。また、燃焼室の温度が下がるので、吸入効率が向上し高出力が見込める。
図8に示す温間マップでは、負荷率KL(1)以下では、筒内噴射用インジェクタ110のみが用いられる。これは、エンジン10の温度が高いときであって、予め定められた低負荷領域では筒内噴射用インジェクタ110のみが使用されるということを示す。温間時においてはエンジン10が暖まった状態であるので、筒内噴射用インジェクタ110の噴口にデポジットが堆積しやすい。しかしながら、筒内噴射用インジェクタ110を使って燃料を噴射することにより噴口温度を低下させることができるので、デポジットの堆積を回避することも考えられ、また、筒内噴射用インジェクタの最小燃料噴射量を確保して、筒内噴射用インジェクタ110を閉塞させないことも考えられる。このため、この領域では、筒内噴射用インジェクタ110を用いた燃料噴射を行なっている。
図8および図9を比較すると、図9の冷間用マップにのみ「DI比率r=0%」の領域が存在する。これは、エンジン10の温度が低いときであって、予め定められた低負荷領域(KL(3)以下)では吸気通路噴射用インジェクタ120のみが使用されるということを示す。これはエンジン10が冷えていてエンジン10の負荷が低く吸気量も低いため燃料が霧化しにくい。このような領域においては筒内噴射用インジェクタ110による燃料噴射では良好な燃焼が困難であるため、また、特に低負荷および低回転数の領域では筒内噴射用インジェクタ110を用いた高出力を必要としないため、筒内噴射用インジェクタ110を用いないで、吸気通路噴射用インジェクタ120のみを用いる。
また、通常運転時以外の場合、エンジン10がアイドル時の触媒暖気時の場合(非通常運転状態であるとき)、成層燃焼を行なうように筒内噴射用インジェクタ110が制御される。このような触媒暖気運転中にのみ成層燃焼させることで、触媒暖気を促進させ、排気エミッションの向上を図る。
図10および図11には、図1に示したエンジンシステムにおけるDI比率の設定マップの第2の例が示される。
図10(温間時)および図11(冷間時)に示された設定マップは、図8および図9に示された設定マップと比較して、低回転数領域の高負荷領域におけるDI比率設定が異なる。
エンジン10では、低回転数領域の高負荷領域においては、筒内噴射用インジェクタ110から噴射された燃料により形成される混合気のミキシングが良好ではなく、燃焼室内の混合気が不均質で燃焼が不安定になる傾向を有する。このため、このような問題が発生しない高回転数領域へ移行するに伴い筒内噴射用インジェクタの噴射比率を増大させるようにしている。また、このような問題が発生する高負荷領域へ移行するに伴い筒内噴射用インジェクタ110の噴射比率を減少させるようにしている。これらのDI比率rの変化を図10および図11に十字の矢印で示す。
このようにすると、燃焼が不安定であることに起因するエンジンの出力トルクの変動を抑制することができる。なお、これらのことは、予め定められた低回転数領域へ移行するに伴い筒内噴射用インジェクタ110の噴射比率を減少させることや、予め定められた低負荷領域へ移行するに伴い筒内噴射用インジェクタ110の噴射比率を増大させることと、略等価であることを確認的に記載する。また、このような領域(図10および図11で十字の矢印が記載された領域)以外の領域であって筒内噴射用インジェクタ110のみで燃料を噴射している領域(高回転側、低負荷側)においては、筒内噴射用インジェクタ110のみでも混合気を均質化しやすい。このようにすると、筒内噴射用インジェクタ110から噴射された燃料は燃焼室内で気化潜熱を伴い(燃焼室から熱を奪い)気化される。これにより、圧縮端での混合気の温度が下がる。これにより対ノッキング性能が向上する。また、燃焼室の温度が下がるので、吸入効率が向上し高出力が見込める。
また、図10および図11に示した設定マップにおける、その他の領域のDI比率設定については、図8(温間時)および図9(冷間時)と同様であるので、詳細な説明は繰り返さない。
なお、図9および図11(冷間時)のマップ中には、DI比率r=0%となる領域(PFI領域)も存在しているため、第2の燃料噴射制御モード510においても、全燃料噴射量が吸気通路噴射用インジェクタ120から噴射される可能性も存在することになる。しかしながら、既に説明したように、筒内噴射用インジェクタ110の先端温度は、エンジン全体からの伝熱および筒内(燃焼室内)温度からの伝熱によって上昇する。したがって、先端推定温度Tinjの上昇時には、エンジン冷却水温および/またはエンジン回転数・負荷率が上昇しているため、PFI領域が存在しない温間用マップ(図8,図10)への移行、あるいは、冷間用マップ(図9,図11)上でのPFI領域外でのDI比率設定が行なわれる。したがって、本発明の実施の形態では、第2の燃焼噴射制御モードによる燃料噴射制御時には、実質的に、燃料噴射量のうちの少なくとも一部が筒内噴射用インジェクタ110より噴射される。
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
10 エンジン、20 インテークマニホールド、30 サージタンク、40 吸気ダクト、50 エアクリーナ、60 電動モータ、70 スロットルバルブ、80 エキゾーストマニホールド、90 三元触媒コンバータ、100 アクセルペダル、110 筒内噴射用インジェクタ、112 気筒、120 吸気通路噴射用インジェクタ、130 燃料分配管、140 逆止弁、150 高圧燃料ポンプ、152 電磁スピル弁、160
燃料分配管、170 燃料圧レギュレータ、180 低圧燃料ポンプ、190 燃料フィルタ、200 燃料タンク、300 エンジンECU、380 水温センサ、400 燃料圧センサ、420 空燃比センサ、440 アクセル開度センサ、460 回転数センサ、500,510 燃料噴射制御モード、520,530 モード遷移(燃料噴射制御状態間)、fpr 燃料圧、r DI比率、Tinj 先端推定温度(筒内噴射用インジェクタ)、Tr1,Tr1♯ 基準温度(燃料噴射分担制御)、Tr2,Tr2♯ 基準温度(高圧燃料ポンプ駆動制御)、xihd 噴分け禁止フラグ、xpmp 燃料ポンプ駆動フラグ、ΔT1,ΔT2 ヒステリシス(基準温度)。