JP4339976B2 - パワーモジュール基板 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、電気自動車、ハイブリット車、新幹線、地下鉄、通勤電車、エレベーター、クレーンや空調装置等に搭載されるパワーデバイスであるIGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)や、半導体素子が収容搭載される半導体素子収納用パッケージや、半導体素子の他にコンデンサや抵抗体等の各種電子部品が搭載される混成集積回路装置等で、大電流を流すことが可能な低抵抗配線導体を有する放熱回路基板に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
パワーデバイスは最も歴史ある半導体素子であるが、近年、高耐圧化、大電流化、高速・高周波化、高機能化が著しく進み、IGBT、GTO、IPM、パワーMOS FET等の高速のMOS系パワーデバイスが出現するに至った。これらのパワーデバイスは、自動車、インバータ電車、ストロボ、電子レンジ、ゴルフカート等に広く利用されている。しかしながら、環境問題を背景にハイブリッド車、電気自動車が一般に普及しつつある昨今では、これらのパワーデバイス、特にIGBTの高耐電圧化、小型化、薄型化、軽量化が要求されている。
【0003】
一方、大電流化に伴い半導体素子から発生する熱も増加の一途をたどっている。この熱を効率よく放散するため、大電力のパワーモジュール基板では、良好な熱伝導率を有する窒化アルミニウム質のセラミック基板を利用したものや、更に金属放熱板や金属放熱フィンを取り付けたものも採用されるようになった。
【0004】
このようなパワーモジュール基板は、当初、簡単な工作機械等に使用されてきたが、ここ数年、電車の駆動部、電気自動車、ハイブリットカー等で使用されるようになり、より厳しい環境条件下で使用されるようになってきた。このような背景により、そのパワーモジュール基板の重要な構成部材として使用される窒化アルミニウム質のセラミック基板に対しても、耐熱性の向上、熱負荷時の熱応力に対する強度の向上が要求されるようになってきた。
【0005】
従来、窒化アルミニウム質のセラミック基板は、窒化アルミニウム粉末と希土類元素酸化物またはアルカリ土類金属との混合粉末の成形体を常圧窒素雰囲気中で焼結させる方法や、上記混合粉末をホットプレス焼結する方法などにより窒化アルミニウム質のセラミック基板を作製し、それをさらに加工して製造されていた。
【0006】
一方、金属とセラミックスを接合する方法としては、Mo−Mn法、活性金属ろう付け法、硫化銅法、DBC法、銅メタライズ法などがあるが、特に大電力パワーモジュール基板では、従来のアルミナ質のセラミック基板に変わって高熱伝導の窒化アルミニウム質のセラミック基板が注目されており、ある程度の繰り返し耐熱衝撃に耐えうる銅板の接合方法としては、例えば特開平3−261669号公報に記載されている銅板の外周部全周に0.25mm以上のろう材フィレットを形成する方法、特開平6−275948号公報、特開平6−350215号公報、特開平8−139420号公報に記載されている非酸化性雰囲気下もしくは真空中で熱処理する方法が提案されている。
【0007】
ここで、図3を用いて、従来のパワーモジュール基板の構造を説明する。
窒化アルミニウム質のセラミック基板5の片面には表面にNiメッキからなる金属層3が施された多孔質金属層4からなる導電性電極、もう一方の面には同じく表面にNiメッキからなる金属層14が施された接合用の多孔質金属層13が接合されており、Niメッキからなる金属層3の上にはさらに半導体素子1がはんだ2により固定されている。また、多孔質金属層13は、Niメッキからなる金属層14を介して、放熱板16とはんだ15もしくは樹脂により接合されている。更に放熱板14は押さえ治具8及びネジ9により冷却器7に熱伝導性グリス6を介して組み付けられている。セラミック基板5は概ね素子2〜3個の実装可能な小型サイズに分割された構造となっている。
【0008】
ところが、従来のパワーモジュール基板では、多孔質金属層4にはんだ2で半導体素子1を固定する際に、多孔質金属層4にニッケルメッキからなる金属層3を形成し、はんだ2との濡れを向上させているが、従来の手法でははんだ2内にボイドが残留し、これが半導体素子1からの熱放散に悪影響を与えている事が判った。
【0009】
図2(a)(b)は、従来のパワーモジュール基板のはんだ層のボイドを示す図であり、多孔質金属層4の上には、はんだ流れを改善するため金属層3が形成され、この上に半導体素子1がはんだ2により固定される構造となっていた。図2(a)は、透過X線によりはんだ2のボイドの分布を調べたものであるが、図に示すように、従来は大小のボイドがはんだ2中に散在していた。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
つまり、パワーモジュール用回路基板の多孔質金属層4には、はんだやロウ材の流れを良くするために、表面に無電解ニッケルメッキからなる金属層3が施されるが、半導体素子1を搭載するはんだ付けの際にはんだ2内にボイドが発生したり、はんだの濡れが悪くなるという問題があった。
【0011】
このため、100A以上の大電流を扱う場合には、はんだ2内にボイド等が存在するとボイド上の半導体素子1が部分発熱し、半導体素子1が発生する熱が均一に十分放熱されないために半導体素子1が劣化するという問題が発生していた。
【0012】
【課題を解決する為の手段】
本発明者等は、鋭意検討した結果、セラミックス基板少なくとも一方の面に形成した多孔質金属層を300〜700MPaの引張り応力が残留した金属層で被覆するとともに、該金属層上に半導体素子等を搭載したことを特徴とする。
【0013】
本発明によれば、はんだ濡れ性が良好で、且つはんだ内部に発生するボイドが極めて少ないパワーモジュール基板とすることができるので、半導体素子からの発熱を有効に放熱することができ、多孔質金属層とセラミック基板との熱膨張差に起因する熱応力によって誘発されるセラミック基板へのクラック発生や進展を防ぎ、導電性電極に100A以上の大電流を流すことが可能なパワーモジュール基板を提供できるようになる。しかもそのパワーモジュール基板を実際の車載条件である−40℃〜150℃の冷熱環境で繰り返し使用しても不具合の起こらない高信頼性のパワーモジュール基板の提供が可能となる。
【0014】
また、本発明は、前記金属層の厚みが0.5〜5.0μmであり、その表面粗さが0.5〜3.0μmであることを特徴とする。
【0015】
【発明の実施の形態】
以下、本発明のパワーモジュール基板を図面に基づき詳細に説明する。
【0016】
図1は、本発明のパワーモジュール基板の一実施例を示す断面図である。セラミック基板5の表面には、多孔質金属層4および金属層3が順次積層された導電性電極が設けられ、前記多孔質電極層4には、300〜700MPaの引張り応力が残留した金属層3が被覆されている。そして、半導体素子1がはんだ2により前記金属層3上に搭載されている。
【0017】
さらに、セラミック基板5は、押さえ治具8のネジ9を締め付けることにより、高熱伝導性グリース6を介して放熱板7に密着固定されている。また、半導体素子1は、ワイヤーボンド12により、バスバー10や信号配線11と接続されている。
【0018】
前記多孔質金属層4は、JIS−C2141に基づき気孔率が3〜25%、特に5〜15%であることが好ましい。これは多孔質金属層4に形成される気孔率が3%未満であると、多孔質金属層4のヤング率を、セラミックス基板5との間に発生する熱応力を吸収できるものとすることができず、また25%を越えると多孔質金属層4の電気抵抗、熱抵抗が大きくなり、半導体素子1と外部電気回路との接続を良好に行うことができなくなるためである。
【0019】
なお、この多孔質金属層4を形成する金属は、低抵抗であればいかなる材料から構成されてもよいが、特に銅(Cu)、銀(Ag)、アルミニウム(Al)の群から選ばれる少なくとも1種が好ましく、特に熱伝導性に優れ、安価である等の点から銅(Cu)が最適である。
【0020】
又、この多孔質金属層4中の気孔は、直径の平均が30μmを越えると配線電極の単位面積あたりの密度のばらつきが大きくなり、多孔質金属層4の電気抵抗、熱抵抗に部分的に大きな部分が発生して半導体素子1と外部電気回路との電気的接続を良好に行えなくなる場合があることから、この気孔の直径は30μm以下、特に10μm以下であることが望ましい。
【0021】
この多孔質金属層4の厚さは50〜600μmであることが望ましい。これは、厚さが50μmよりも薄いと、熱膨張差によって発生する応力を十分に緩和できず、600μmを越える厚さに形成することが難しく、また、熱抵抗が悪化する恐れがあるためである。
【0022】
さらに、多孔質金属層4の表面には、金属層3が形成される。この金属層3を形成する理由は、多孔質金属層4の表面に直接はんだ2を流そうとしても、はんだ2が多孔質金属層4にうまく濡れず半導体素子1を固定できないからである。また、金属層3は、はんだ2の流れを良くするため、還元雰囲気中で熱処理する。還元雰囲気中で処理する理由は、酸化雰囲気中で処理し金属層3の表面が酸化すると、はんだ2の濡れが悪くなるからである。
【0023】
多孔質金属層4の表面に形成する金属層3は、メッキにより形成することが好ましい。これにより、面全体に均質な金属層3を形成することができ、はんだ2層中に発生するボイドを抑制できる。
【0024】
さらに、前記金属層3は厚み0.5〜5.0μmであることが望ましい。これは金属層3の厚さが0.5μmより薄いと多孔質金属層4上にピンホールと呼ばれる金属層3が形成されない部分が発生しやすく、金属層3の外観が悪くなり、金属層3とはんだ2との濡れ性も悪くなってしまう。一方、金属層3の厚みが5.0μmを越えると多孔質金属層4との接合強度が弱くなってしまったり、金属層3の被膜中にトラップされるガス量が増え、チップ等を鉛−錫を主成分とするはんだ合金で接合する際にトラップされたガスが排出され、ボイドの発生原因となる。
【0025】
また、金属層3を形成した面の表面粗さ(Ra)については、0.3〜3.0μmであることが望ましい。ただしこれは、金属層3を形成した下地の表面粗さを意味しており前記金属層3自体の表面粗さを意味するものではなく、はんだの濡れ性に金属層3の下地の表面状態が影響することを意味している。これは前記表面粗さを0.3〜3.0μmとすると、金属層3の皮膜中にトラップされたガスが、はんだ2と金属層3の界面を移動し外部へ排出されるのにちょうどよい具合になっているものと推定している。
【0026】
また、還元雰囲気中で熱処理した後の金属層3被膜中の残留応力値を300〜700MPaの引っ張り応力とすることが本発明の要旨である。金属層3中の残留応力が引っ張り応力であるのは、金属層3が熱処理により焼結し収縮するためで、その結果、金属層3被膜中に引張り応力が働いている。この引張り応力が、300MPa未満であると熱処理が十分でなく、熱処理によるガスの排出が不十分で半導体素子1をはんだ付けする際に、はんだ層2中にボイドが多数発生する。また、引張り応力が700MPaを越えると、ガスの排出は十分であるが金属層3の濡れ性が良くなりすぎて、却って気孔が残留しやすくなってしまう。
【0027】
この金属層3の残留応力は、X線応力解析装置により測定することができる。X線応力解析装置のメカニズムは、被測定物に残留応力があるとそれに従って被測定物の結晶格子が歪む。この結晶格子の歪みをX線回折装置により解析して、残留応力が引っ張り応力なのか圧縮応力なのか、また、その大きさがどれ位なのかを判定することができる。
【0028】
また、これまで、メッキ等の手法で形成する金属層3について、例えば、熱処理する条件は決めることができても、その状態を具体的に数値化する手法がなかった。例えば、同じNiメッキでもボロン系のNiメッキとリン系のNiメッキでは焼き付け温度が異なる。そこで本発明者等は、前記金属層3の状態を判定する指標として、残留応力を利用しているのである。
【0029】
そして、金属層3の材質としては、Ni、Cuが使用可能であるが、耐酸化性、耐熱性を考慮すると、Niを使用することが好ましい。
【0030】
また、Niメッキからなる金属層3に関しては、ボロン(B)を含む無電界Niメッキにより形成することが望ましい。はんだのボイド、濡れ性評価においてNi被膜中にボロン(B)を含まない無電解リンNi(P−Ni)メッキ、及び電解Niメッキについては、はんだボイド、はんだ濡れに対して良好な結果が得られない場合がある。一方、ボロン(B)を含む無電解Ni(B−Ni)メッキにおいてもメッキによる金属層3の厚みが0.5μm以下であるとピンホール等の無メッキ部が発生しやすく、はんだの濡れが悪く引け巣や半導体素子の浮きが発生する。逆にメッキによる金属層3の厚みが5μmを越えるとボイドは増加する傾向となる。これは、メッキによる金属層3の厚みが厚くなるとメッキの被膜中にトラップするガス量が増大し、はんだリフローの際にメッキ被膜中にトラップされていたガスがはんだ2と半導体素子1間にトラップされるものと考えられる。
【0031】
図2(c)(d)に、本発明のパワーモジュール基板のはんだ2のボイドを示す図を示した。多孔質金属層4の上には、はんだ流れを改善するため金属層3が形成され、この上に半導体素子1がはんだ2により固定される構造となっている。図2(a)に示すように、従来は大小のボイドがはんだ2中に散在していたのに対し、本発明のはんだ2層中のボイド分布を調べた図2(c)には、ボイドがほとんど見られない。このように、金属層3を改善することにより、はんだ2層中のボイドを大きく改善できることが判る。
【0032】
セラミック基板5は一般に多層配線基板に適用されるアルミナ(Al2O3 )、窒化アルミニウム(AlN)、窒化珪素(Si3N4)のうちの少なくとも1種を主成分とするセラミック焼結体であればいずれも適用できるが、高熱伝導性が要求されるパワーモジュール基板としては窒化アルミニウムを用いることが望ましい。
【0033】
アルミナとしては、高強度で熱伝導率が高くなる純度99%以上のアルミナを使用することが望ましい。焼結助剤としては、SiO2、MgO、CaO等が使用できる。窒化アルミニウムとしては、例えば焼結助剤として0.5〜5重量%の希土類元素酸化物を含有するものを使用できる。また、窒化珪素としては、例えば希土類元素酸化物2〜10重量%、アルミナ1〜3重量%、SiO22〜5重量%含有するものを使用できる。
【0034】
次に、図1に示した本発明のパワーモジュール基板を作製する具体的な方法について説明する。
【0035】
先ず、所定のセラミック原料粉末にアクリル樹脂などの有機バインダー、可塑剤、溶剤等を添加混合してスラリーを調整し、該スラリーをドクターブレード法、カレンダー法、圧延法などのシート形成法によってセラミックシートを成型する。
【0036】
前記シートを適宜寸法に加工したものを必要な厚さとなるように積層し、脱脂工程を経てセラミック材料に応じて適当な焼成温度で焼成する。例えばAl2O3の場合は1500〜1700℃、AlNの場合は1700〜2000℃、Si3N4の場合は1600〜2000℃で焼成することが好ましい。
【0037】
次に、上記のようにして作製されたセラミックス基板5の片面に、金属粒子を粒度配合したスラリーを所定厚みで塗布し、焼き付け処理を施すことにより、所定の気孔率で且つ気孔径が30μm以下である微細な気孔を持つ多孔質金属層4を形成する。より具体的には、前記金属粒子を焼き付ける際に、その金属粒子に適した温度よりもやや低い温度で焼成して焼結の進行を制御することによって、所定の気孔を残存させる。その後、この多孔質金属層4の表面に、所定の厚みの金属層3を形成し、金属層3の引っ張り応力が300〜700MPaとなるような熱処理を施すことにより、本発明のパワーモジュール基板を作製することができる。
【0038】
具体的には、前記金属層3としてリン系のNiメッキを用いる場合は300℃程度、ボロン系のNiメッキを用いる場合は、450℃程度の温度の還元雰囲気中で熱処理すると、前記金属層3の上に理想的なはんだ2の層を形成することができる。これより極端に温度が低いと、Niメッキからなる金属層3中のガスの抜けが不十分で、はんだ2の層中にボイドが生成する原因となり、また、極端に温度が高いと、金属層3に対するはんだ2の濡れ性が良くなりすぎて、はんだ2の層中にボイドが生成する。このボイドの生成を管理するのに、代用特性として、金属層3の残留応力を測定する事が有効である。
【0039】
【実施例】
実施例1
セラミック基板5としてAl2O3、AlNからなるセラミック基板5を作製した。Al2O3粉末にSiO2、CaO及びMgOの粉末を合計で10重量%添加したAl2O3組成物、あるいはAlN粉末にCaO0.5重量%、Y2O35重量%を添加したAlN組成物に、アクリル系の有機性バインダーと可塑剤、溶剤を添加混合してスラリーを調整し、該スラリーをドクターブレード法により厚さ約300μmのシート状に成形した。前記シートを適宜寸法に加工したものを必要な厚さとなるように積層密着したのち所定寸法に切断し、この積層体をAl2O3系については1600℃、AlN系については1850℃で焼成し、縦32mm、横17mm、厚さ1.5mmの配線基板を作製した。
【0040】
さらに、セラミック基板5の表面の多孔質金属層4を形成する部分に、Ag−Cu−Tiからなるメタライズ層を900〜1100℃の温度で焼き付けた後、粒度配合したCu、Ag、Al等の粉末を含有するスラリーを所定厚み積層し、焼き付け処理を施して多孔質金属層4とした。より具体的には、所定の金属粒子を焼き付ける際に、その金属粒子に適した温度よりも低い温度で焼成して焼結の進行を制御することによって、所定の気孔を残存することができる。
【0041】
かくして得られた前記セラミック基板5の多孔質金属層4の表面にNiメッキからなる金属層3を所定厚み形成し、還元雰囲気450℃でアニール処理を施し、高温はんだリボン(サイズ13×13×0.2mm)を用いて半導体素子のはんだリフローを行った。はんだリフローはN2−H2混合雰囲気中にて行い、はんだの濡れ、及び透過X線によりはんだボイドの発生率を調査した。また、金属層3の残留応力は、理学電気製のX線応力解析装置RADを用いて、評価した。今回用いたNiからなる金属層3については、(311)面のピークを使用して、そのピークシフトから残留応力を評価した。また、Niのヤング率は192GPa、ポアソン比は0.31として、残留応力を計算した。
【0042】
また、前記基板のはんだリフローのはんだ濡れ評価は、はんだがチップの周囲にメニスカスを形成したものを○、はんだが濡れ拡がりメニスカス形成不十分のものを△、はんだが濡れず引け巣や半導体素子の浮き等があったものは×として評価した。また、はんだボイド率評価は、透過X線によりフィルム上にボイドを投影し、半導体素子1の面積に対するボイド部分の合計面積比率を測定し、5%以下のものを○、5〜10%のものを△、10%を越えるものを×として評価した。結果は表1に示した。
【0043】
【表1】
【0044】
表1から判るように、金属層3の残留応力が200MPaとなるNo.1は、はんだ中に多数のボイドが残留した。これは、金属槽3中の残留ガスの影響によるものと推定している。また、金属層3の残留応力が800MPaとなるNo.7は、メニスカスがうまく形成されず、ボイドが残留する傾向となった。
【0045】
これに対し、前記残留応力が300〜700MPaであったNo.2〜6、8〜10は、メニスカスの状態は良好でボイドが少なく良好であった。
【0046】
実施例2
実施例1において作製したNo.2、5、8、9と同様の条件でNo.11〜14に示すはんだ付け強度評価用のサンプルを各々作製し、高温高湿負荷耐久試験を実施した。耐久試験条件は、これらのサンプルを40℃×85%RHと80℃×85%RHをそれぞれ5分間保持で、3000サイクル評価し、1000サイクル毎に5個づつ引っ張り強度を測定し、その平均値により引っ張り強度の変化を評価した。また、引っ張り試験用のはんだ付け部の形状は、4mm角とした。結果は、表2に示した。
【0047】
【表2】
【0048】
表2から判るように、Cuメッキからなる金属層を形成したNo.13、14は、3000サイクルで、強度が5〜15%劣化したのに対し、Niメッキからなる金属層3を施したNo.11、12は、3000サイクルまで、ほとんど強度劣化が見られなかった。
【0049】
この結果から、金属層3としては、Niメッキの方がより優れていると判断した。
【0050】
実施例3
メッキ時間の調整によりNiメッキからなる金属層3の厚みを0.3〜7μmまで変量したサンプルと、メッキの表面粗さ(Ra)に関しては、下地の多孔質金属層の表面粗さを0.2〜4μmの範囲で調整しその上に形成するNiメッキからなる金属層厚みを2μmに固定したサンプルを準備し、各々実施例1と同様な手法で作製した。各条件、5個のサンプルを作製して、ボイド率とはんだメニスカスの状態を、実施例1と同様な方法で評価した。
結果は、表3に示した。
【0051】
【表3】
【0052】
表3から判るように、Niメッキからなる金属層3の厚みが0.3μmと薄いNo.21と前記金属層3が7μmと厚いNo.26は、ボイドが多く発生し、好ましくなかった。金属層3の厚みが厚いNo.21は、前処理の時点でのガス抜きが不十分なため、ボイドが増えたものである。また、前記厚みの薄いNo.27は、金属層3による下地の被覆が不十分で、はんだがうまく濡れず、そのため、ボイドが残留したものである。これに対し、金属層3の厚みが0.5〜5μmとなるNo.22〜25は、ボイド率、はんだメニスカス共に、良好であった。
【0053】
また、表面粗さについては、表面粗さが0.2μmとなるNo.27は、はんだの流れ性が良すぎてメニスカスがほとんどなくなり、はんだにボイドがたくさん発生した。また、表面粗さが4μmとなるNo.32は、はんだの流れ性が悪くメニスカスに巣が発生しはんだにボイドが多く発生した。これに対し、表面粗さが0.3〜3μmであるNo.28〜31は、ボイド率およびはんだメニスカス共に、良好であった。この表面粗さは、ほとんど下地の多孔質金属層4に起因するものであるが、ガス抜けを改善するのに、適当な表面粗さの範囲があるものと判断した。
【0054】
【発明の効果】
以上詳述したように、セラミックス基板上の少なくとも一方の面に形成した多孔質金属層を300〜700MPaの引張り応力が残留する金属層で被覆し、該金属層上に半導体素子等を搭載したことによって、半導体素子等のチップを半田実装する際、はんだ層に発生するボイドを低減することが可能となる。その結果、大電流に適応し得る信頼性に優れた、例えば、車載環境のような厳しい環境下においても故障することのないパワーモジュール基板を提供できるようになる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のパワーモジュール基板を示した図であり、(a)は縦断面図、(b)は平面図である。
【図2】(a)は、従来のパワーモジュール基板のはんだ層のボイドを示す平面図、(b)は(a)中のA−A断面図、(c)は本発明のパワーモジュール基板のはんだ層のボイドを示す平面図、(d)は(c)中B―B断面図である。
【図3】従来のパワーモジュール基板を示した図であり、(a)は縦断面図、(b)は平面図である。
【符号の説明】
1:半導体素子
2:はんだ
3:金属層
4:多孔質金属層
5:セラミック基板
6:高熱伝導性グリース
7:放熱板
8:押さえ治具
9:ネジ
10:バスバー
11:信号配線
12:ワイヤーボンド
13:多孔質金属層
14:メッキ層
15:はんだ
16:放熱板
Claims (3)
- セラミックス基板の少なくとも一方の面に形成した多孔質金属層を300〜700MPaの引張り応力が残留した金属層で被覆し、該金属層上に半導体素子等を搭載してなるパワーモジュール基板。
- 前記金属層がNiからなることを特徴とする請求項1記載のパワーモジュール基板。
- 前記金属層の厚みが0.5〜5.0μmであり、その下地の表面粗さ(Ra)が0.5〜3.0μmであることを特徴とする請求項1記載のパワーモジュール基板。
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