JP4340376B2 - 分子膜および非電解物質検出方法 - Google Patents

分子膜および非電解物質検出方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、辛味や甘味を呈する非電解物質を高感度に検出するための技術に関する。
【0002】
【従来の技術】
飲食物等の味の評価を行うために、脂質等からなる分子膜をセンサとして用いる方法が従来から提案されている。
【0003】
このような目的で使用されている従来の分子膜は、例えばPVC(ポリ塩化ビニル)等の高分子材と、脂質(例えば第四級アンモニウム塩)等の両親媒性物質または苦味物質と、可塑材とを所定の割合で混合して膜状に形成したものであり、液に浸けたときにその液内の物質成分に応じて膜電位が変化する。
【0004】
このような分子膜の応答特性は、一般的に各味物質に対して顕著な選択性を有していないため、検査対象に含まれる味物質を分析するような場合には、分子膜の成分の混合比や物質が異なる複数の分子膜を用いて同一の検査対象を測定し、得られた測定結果から検査対象に含まれる各味物質の量等を解析していた。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、従来の分子膜を用いた検査では、非電離質の辛味物質や甘味物質の検出感度が低く、特に、辛味物質については全く検出することができないという問題があった。
【0006】
本発明は、この問題を解決して、非電解物質の検出を高感度に行える分子膜および非電解質検出方法を提供することを目的としている。
【0007】
【課題を解決するための手段】
前記目的を達成するために、本発明の請求項1の分子膜は、高分子材と、電荷をもたない第1可塑剤と、電荷をもつ第2可塑剤とを所定の割合で混合して形成され、前記第2可塑剤と逆極性の電荷を有する脂質の吸着によって膜電位が変化する。
【0008】
また、本発明の請求項2の分子膜は、請求項1の分子膜において、
前記高分子材約800mgに対して、前記第1可塑剤が400〜3000μl、前記第2可塑剤が1〜20μlの割合で含まれていることを特徴としている。
【0009】
また、本発明の非電解物質検出方法は、
前記請求項1記載の分子膜を用いて、液中の非電解物質を検出する非電解物質検出方法であって、
前記検出対象の非電解物質を含まない第1基準液に前記分子膜を浸けて、膜電位を測定する第1測定段階と、
前記第1基準液と同質の液に前記分子膜と反対の極性の電荷をもつ脂質が添加された第2基準液に前記分子膜を浸ける段階と、
前記第2基準液に浸けた前記分子膜を前記第1基準液に浸けて、膜電位を測定する第2測定段階と、
前記第1測定段階で得られた膜電位と前記第2測定段階で得られた膜電位の差を基準値として求める段階と、
前記分子膜を洗浄する段階と、
前記洗浄した分子膜を前記第1基準液に浸けて、膜電位を測定する第3測定段階と、
前記第2基準液に添加した脂質と同物質が添加された検査対象液に前記分子膜を浸ける段階と、
前記検査対象液に浸けた前記分子膜を前記第1基準液に浸けて、膜電位を測定する第4測定段階と、
前記第3測定段階によって得られた膜電位と前記第4測定段階によって得られた膜電位の差を検査値として求める段階と、
前記基準値と検査値とから、前記検査対象液中の非電解物質を検出する段階とを含むことを特徴としている。
【0010】
【発明の実施の形態】
以下、図面に基づいて本発明の実施の形態を説明する。
図1は、本発明の実施の形態の非電解物質検出方法を行うためのシステムを示している。
【0011】
このシステムは、基準液や検査対象液等を入れるための容器11と、参照電極12と、分子膜センサ15と、参照電極12の電位を基準として分子膜センサ15の電位を検出する電圧検出器20と、電圧検出器20の出力をディジタル値に変換するA/D変換器21と、A/D変換器21の出力に対する記憶、演算等の処理を行うための演算装置22と、演算装置22の処理結果を出力する出力装置22とによって構成されている。
【0012】
参照電極12および分子膜センサ15は、容器11に入れた液体に浸けて使用するものであり、参照電極12の表面は、液体内の脂質等に反応しないように、KCl(塩化カリウム)100mmolを寒天で固定した緩衝層13で覆われており、上端にリード線12aが接続されている。
【0013】
また、分子膜センサ15は、アクリル等の基材16の表面に分子膜17がその一面側を露呈させた状態で固定されており、その反対面には、参照電極12の緩衝層13と同等の緩衝層18を介して電極19が設けられており、この電極19にリード線15bが接続されている。
【0014】
この分子膜17は、従来の分子膜のように種々の味物質に応答することがないように脂質や苦味物質を含まず、電荷を持たない第1可塑材と、電荷をもつ第2可塑剤と、膜のベースとなる高分子材とを所定の割合で混合して作製したものである。
【0015】
例えば、高分子材PVC(ポリ塩化ビニル)と、第1可塑剤として電荷をもたないDOPP(ジオクチルフェニルフォスフォネート)と、第2可塑剤としてマイナスの電荷をもつDOPPモノエステル体とを混合したもの約800mgを、THF10ccに溶解し、平底の容器(例えば直径85mmのシャーレ)に移し、これを均一な加熱されたプレート上で約30度Cに2時間保って、THFを揮散させることで、厚さ約200μmの分子膜17を得ている。
【0016】
また、高分子材、第1可塑剤、第2可塑剤の混合割合いは、高分子材約800mgに対して、第1可塑材が400〜3000μl、第2可塑材が1〜20μlにしており、このように作製した分子膜17に対しては、塩味物質、酸味物質、旨味物質、甘味物質、苦味物質、渋味物質および辛味物質の基本味物質は吸着せず、脂質分子のみが吸着性を示すことが確認されている。
【0017】
即ち、この分子膜17は、従来の分子膜とは全く異なり、基本の味物質に対して応答性が無く、液中の脂質に対してのみ応答性を有している。
【0018】
なお、実際の測定の際には、測定条件等が変わらないように、支持材(図示せず)によって基準電極12と分子膜センサ15の間隔を一定にしている。
【0019】
参照電極12の電位を基準とする分子膜17の膜電位は、電圧検出器20によって検出され、その膜電位がA/D変換器21によってディジタル値に変換されて演算装置22へ出力され、記憶、演算処理がなされ、その処理結果が出力装置23から出力される。
【0020】
次に、この分子膜17と前記システムを用いて検査対象液内の辛味物質や甘味物質等の非電解物質を検出するための非電解物質検出方法の手順を、図2のフローチャートにしたがって説明する。
【0021】
なお、この検出方法では、検出対象の非電解物質を含まず、人の唾液に相当する無味の第1基準液と、この第1基準液と同質の液体に、分子膜17と反対の極性(前記したように第2可塑剤がマイナス)の電荷をもつ脂質、例えばプラス電荷のTOMA(トリオクチルメチルアンモニウムクロリド)を所定濃度(1ppm)で添加した第2基準液とを用いている。第1基準液としては、例えばKCl(塩化カリウム)30mM+酒石酸0.3mM溶液を用いている。
【0022】
また、検査対象液にも、第2基準液と同様に、分子膜17と反対の極性の電荷をもつ脂質TOMAを同一濃度で添加している。
【0023】
始めに、参照電極12および分子膜センサ15を第1基準液に浸けて、膜電位Vaを測定して記憶する(S1:第1測定段階)。
【0024】
次に、参照電極12および分子膜センサ15を第2基準液に所定時間浸けてから(S2)、第1基準液に戻して、膜電位Vbを測定して記憶する(S3:第2測定段階)。
【0025】
そして、第1測定段階で得られた膜電位Vaと第2測定段階で得られた膜電位Vbの差ΔV=Vb−Vaを基準値として算出して記憶してから(S4)、参照電極12および分子膜センサ15を洗浄する(S5)。
【0026】
この洗浄には、例えば30パーセントエタノール+100mMHClの洗浄液を用いている。
【0027】
次に、洗浄した参照電極12および分子膜センサ15を再び第1基準液に浸けて、膜電位Vcを測定して記憶してから(S6:第3測定段階)、脂質が添加されている検査対象液に所定時間浸ける(S7)。
【0028】
そして、この検査対象液に浸けた参照電極12および分子膜センサ15を第1基準液に戻して、膜電位Vdを測定して記憶する(S8:第4測定段階)。
【0029】
続いて、第3測定段階によって得られた膜電位Vcと第4測定段階によって得られた膜電位Vdの差ΔV′を検査値として算出して記憶する(S9)。
【0030】
最後に、基準値ΔVと検査値ΔV′とから、脂質の吸着に対する検査対象液中の物質の影響度Pを求める(S10)。
【0031】
なお、この影響度Pは、例えば次の演算によって求める。
P=(ΔV′/ΔV)−1
【0032】
図3は、高分子材PVC約800mgに対して、第1可塑材(DOPP)が1000μl、第2可塑材(DOPPのモノエステル体)が10μlの割合で混合して形成した分子膜17を用いて、以下の6種類のサンプル液A〜Fについて、上記処理を1サンプル当たり5回ずつ行って平均を求めた結果を示している。
【0033】
サンプル液A(辛味):KCl(30mM)+酒石酸(0.3mM)+カプサイシン(10μM)
サンプル液B(塩味):KCl(300mM)+酒石酸(0.3mM)
サンプル液C(酸味):KCl(30mM)+酒石酸(3.0mM)
サンプル液D(甘味):KCl(30mM)+酒石酸(0.3mM)+蔗糖(1M)
サンプル液E(旨味):KCl(30mM)+酒石酸(0.3mM)+MSG(10mM)
サンプル液F(苦味):KCl(30mM)+酒石酸(0.3mM)+塩酸キニーネ(0.1mM)
なお、これらのサンプル液は人の感じる領域の中間の濃度に設定している。
【0034】
図3から明らかなように、非電解物質を含むサンプル液A、Dについての影響度Pは負の値で、しかもその絶対値は他のサンプル液の影響度の絶対値より格段に大きい。
【0035】
したがって、上記検出方法を用いることで、非電解物質を高感度に検出することができる。
【0036】
ここで、辛味や甘味の非電解物質を含むサンプル液A、Dのように、影響度Pが負になるということは、基準値ΔVより検査値ΔV′の方が小さいということであり、これは、第2基準液に分子膜17を浸けたときの液中物質の吸着度合いより、検査対象液に分子膜17を浸けたときの液中物質の吸着度合いの方が少ないということを示している。
【0037】
前記したように、分子膜17は基本的な味物質自体に感応せず、脂質(TOMA)にのみ感応するから、上記の吸着度合いの減少は、添加したTOMAの分子膜17への吸着を、辛味物質や甘味物質が抑制していることを示している。
【0038】
なお、辛味物質による脂質(TOMA)の吸着抑制作用は、液中で辛味物質自体が脂質(TOMA)に結合することによって生じ、甘味物質による脂質(TOMA)の吸着抑制作用は、甘味物質が分子膜17の表面を覆って辛味物質の分子膜への吸着を妨害していることによって生じるものと推測される。
【0039】
この分子膜17に対する脂質(TOMA)の吸着抑制作用は、塩味物質を含むサンプル液B、旨味物質を含むサンプル液E、苦味物質を含むサンプル液Fでも現れているが、その程度は非電解物質を含むサンプル液A、Dに比べて格段に低い。
【0040】
また、塩味物質を含むサンプル液Cのように、影響度Pが正になるということは、基準値ΔVより検査値ΔV′の方が大きいということであり、これは第2基準液に分子膜17を浸けたときの液中物質の吸着度合いより、検査対象液に分子膜17を浸けたときの液中物質の吸着度合いの方が大きいということを示している。つまり、塩味物質には、分子膜17に対する脂質の吸着を増長させる作用があることになる。
【0041】
このように、基本の味物質に対する応答性をもたない分子膜17を用いることで、検査対象液に添加された脂質の分子膜への吸着に対する味物質の影響度を把握することができる。
【0042】
また、成分が未知の検査対象液に対して上記測定を行ったときに、大きなマイナスの影響度Pが得られた場合、その検査対象液に大きな分子の非電解物質が含まれている可能性が高いと予想でき、逆にプラスの影響度Pが得られた場合には、その検査対象液に大きな分子の非電解物質が含まれている可能性が低いと予想できる。また、小さな分子の非電解質が含まれているとも予想される。それは、小さな分子の非電解質は、添加される脂質と疎水結合し、添加された脂質の疎水性がほどよく強くなり、分子膜への吸着が強くなると考えられるからである。
【0043】
また、予め非電解物質の濃度が異なる複数のサンプル液について前記測定を行って非電解物質の濃度と影響度との関係を求めておけば、非電解物質の濃度が未知の検査対象液に対して得られた影響度から、その検査対象液に含まれる非電解物質の濃度を求めることができる。
【0044】
このように、上記方法によれば、従来では全く検出することができなかった辛味物質や感度が不足していた甘味物質のような非電解物質を、他の味物質よりも高感度に検出することができる。
【0045】
なお、分子膜17の第1可塑剤(DOPP)を400μlより少なくすると、添加した脂質に対する感度が著しく低下してしまい、3000μl以上では膜化できなくなる。また、第2可塑剤(DOPPのモノエステル体)が1μlより少ない場合や、20μlより多い場合でも、添加した脂質に対する感度が著しく低下することが確認されており、前記したように、高分子材約800mgに対して、第1可塑材が400〜3000μl、第2可塑材が1〜20μlの割合で混合形成した分子膜が、辛味や甘味を呈する非電解物質の検査に最適なものとなる。
【0046】
なお、前記説明では、分子膜17の第2可塑剤がマイナスの電荷をもち、その反対のプラスの極性の電荷をもつ脂質を基準液および検査対象液に添加していたが、逆に第2可塑剤としてプラスの電荷をもつ分子膜を用い、マイナスの電荷をもつ脂質を基準液および検査対象液に添加してもよい。
【0047】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明の分子膜は、高分子材と、電荷をもたない第1可塑剤と、電荷をもつ第2可塑剤とを所定の割合、即ち、高分子材約800mgに対して、第1可塑剤が400〜3000μl、第2可塑剤が1〜20μlの割合で混合して形成され、前記第2可塑剤と逆極性の脂質の吸着によって膜電位が変化するように構成されているので、従来の分子膜に比べて基本味物質に対する応答性が極めて低い代わりに、第2可塑剤と逆極性の電荷をもつ脂質の吸着の程度だけを選択的に検出することができ、この脂質の吸着に対する味物質の影響度を検出することができる。
【0048】
また、本発明の非電解物質検出方法は、前記分子膜を検出対象の非電解物質を含まない第1基準液に浸けたときの膜電位と、この第1基準液と同質の液に分子膜と反対の極性の電荷をもつ脂質を添加した第2基準液に浸けてから第1基準液に浸けたときの膜電位との差を基準値として求め、さらに分子膜を第1基準液に浸けたときの膜電位と、前記脂質が添加された検査対象液に分子膜を浸けてから第1基準液に浸けたときの膜電位との差を検査値として求め、基準値と検査値とから検査対象液中の非電解物質を検出している。
【0049】
このため、従来では全く検出できなかった辛味物質や感度が不足していた甘味物質を含む非電解物質を高感度に検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施形態の検出方法を実施するための検査システムの構成を示す図
【図2】実施形態の検出方法の手順を示すフローチャート
【図3】実際のサンプル液に対する検出結果を示す図
【符号の説明】
11 容器
12 参照電極
13 緩衝層
15 分子膜センサ
16 基材
17 分子膜
18 緩衝層
19 電極
20 電圧検出器
21 A/D変換器
22 演算装置
23 出力装置

Claims (3)

  1. 高分子材と、電荷をもたない第1可塑剤と、電荷をもつ第2可塑剤とを所定の割合で混合して形成され、前記第2可塑剤と逆極性の電荷を有する脂質の吸着によって膜電位が変化する分子膜。
  2. 前記高分子材約800mgに対して、前記第1可塑剤が400〜3000μl、前記第2可塑剤が1〜20μlの割合で含まれていることを特徴とする請求項1記載の分子膜。
  3. 前記請求項1記載の分子膜を用いて、液中の非電解物質を検出する非電解物質検出方法であって、
    前記検出対象の非電解物質を含まない第1基準液に前記分子膜を浸けて、膜電位を測定する第1測定段階と、
    前記第1基準液と同質の液に前記分子膜と反対の極性の電荷をもつ脂質が添加された第2基準液に前記分子膜を浸ける段階と、
    前記第2基準液に浸けた前記分子膜を前記第1基準液に浸けて、膜電位を測定する第2測定段階と、
    前記第1測定段階で得られた膜電位と前記第2測定段階で得られた膜電位の差を基準値として求める段階と、
    前記分子膜を洗浄する段階と、
    前記洗浄した分子膜を前記第1基準液に浸けて、膜電位を測定する第3測定段階と、
    前記第2基準液に添加した脂質と同物質が添加された検査対象液に前記分子膜を浸ける段階と、
    前記検査対象液に浸けた前記分子膜を前記第1基準液に浸けて、膜電位を測定する第4測定段階と、
    前記第3測定段階によって得られた膜電位と前記第4測定段階によって得られた膜電位の差を検査値として求める段階と、
    前記基準値と検査値とから、前記検査対象液中の非電解物質を検出する段階とを含むことを特徴とする非電解物質検出方法。
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