JP4347440B2 - 積層セラミックコンデンサの内部電極用導電性ペースト、およびそれを用いた積層セラミックコンデンサの製造方法 - Google Patents
積層セラミックコンデンサの内部電極用導電性ペースト、およびそれを用いた積層セラミックコンデンサの製造方法 Download PDFInfo
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、積層セラミックコンデンサの内部電極用導電性ペーストと、それを用いた積層セラミックコンデンサの製造方法とに関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、積層セラミックコンデンサをはじめとする積層セラミック部品は、金属粉とバインダー樹脂とを含む導電性ペーストを用いてスクリーン印刷法によってセラミックグリーンシート上に内部電極用パターンを形成した後、当該セラミックグリーンシートを複数枚積層して焼成する、いわゆるシート積層法によって作製されている(特開平6−203628号公報など)。
【0003】
また、上記セラミックグリーンシートは一般に、基板材料として要求される電気的、熱的特性などに応じて、アルミナ(Al2 O3 )、ムライト(3Al2 O3 ・2SiO2 )、窒化アルミニウム(AlN)、チタン酸バリウム(BaTiO3 )などの各種セラミック原料粉末に、有機性添加物および溶媒からなるバインダーを加えてセラミック泥しょうを調製し、当該セラミック泥しょうをドクターブレード法などにより帯状のキャリヤフィルム上に連続塗布した後、乾燥して作製されている。
【0004】
近年、積層セラミック部品に対する小型、大容量化の要求が厳しくなり、例えば積層セラミックコンデンサにおいては、この小型、大容量化を実現するために、誘電率の高い誘電材料を用いたり、あるいはセラミックグリーンシートの厚みを薄くして多層化することなどが行われている。
ところが、上記積層セラミックコンデンサに対する小型、大容量化の要求はますます厳しくなり、誘電率の高い誘電材料の使用や、セラミックグリーンシートの薄層化だけではその要求に十分対応することができず、薄層化したセラミックグリーンシート上に形成する内部電極用パターンにおいても、印刷塗膜の厚みを薄膜化することが検討されている。
【0005】
しかしながら、上記スクリーン印刷法を用いて薄膜の内部電極用パターンを印刷する場合には、導電性ペーストに多量のビヒクル(溶剤およびバインダー樹脂をいう)を添加して焼成時の硬化収縮率を大きくしなければならず、その結果、下記▲1▼〜▲2▼のような問題が生じて、印刷塗膜の薄膜化に限界がある。
▲1▼ 導電性ペースト中の金属粉末の含有量が少なくなるため、内部電極としての特性が損なわれたり、積層セラミックコンデンサの静電容量がばらついたりするおそれがある。
【0006】
▲2▼ 導電性ペースト中に含まれる溶剤によってセラミックグリーンシートが溶けてしまい(いわゆる、溶剤によるシートアタック)、積層セラミックコンデンサの特性が損なわれるおそれがある。
また上記▲1▼〜▲2▼の問題点に加えて、スクリーン印刷法では、印刷時にスクリーン版が引き伸ばされるため、メッシュが伸縮し、印刷寸法や印刷位置に±20μm程度のバラツキが生じるおそれがある。
【0007】
そこで最近、スクリーン印刷法に代えて、オフセット印刷法(特開平9−237737号公報参照)やグラビア印刷法(特開平8−250370号公報参照)などの印刷法による内部電極用パターンの形成が検討されている。
中でも、凹版オフセット印刷法は、印刷形状に優れ、かつ、内部電極としての特性を損なわずに(すなわち、使用する導電性ペースト中の金属粉末の含有量を減少させずに)薄膜の印刷塗膜を形成できることから、有効な印刷方法として期待される。
【0008】
この凹版オフセット印刷法では、凹版の凹部に導電性ペーストを充填し、ついでこの導電性ペーストを転写体表面に一旦、転移させた後、セラミックグリーンシート上に転写する工程が採用されている。
とくに、転写体表面をシリコーンゴムによって形成すると、当該転写体表面の導電性ペーストがセラミックグリーンシートへ完全に転写するために、印刷パターンのエッジがシャープであるなど、印刷形状の良好な内部電極用パターンを形成することができる。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、凹版オフセット印刷方法に用いられる凹版は、通常ガラスや金属であって、当該凹版の表面自由エネルギーは40〜60dyn/cm程度と転写体のそれよりも大きくなるために、上記公報に開示の導電性ペーストを使用した場合には、凹版から転写体へ導電性ペーストを転移させる際に導電性ペーストが分裂して、その導電性ペーストの一部が凹版の凹部内に残存する現象(以下、ペーストの分断という)が生じるおそれがあった。
【0010】
その結果、このペーストの分断が内部電極用パターンの塗膜表面の形状(平滑性や均一性など)に乱れ(凹凸)を引き起こし、積層セラミックコンデンサなどの積層セラミック部品においては、図6aに示すように、ショート不良61や、デラミネーション62、内部電極用パターンの途切れ63などの構造の欠陥が発生して、静電容量がばらついたり、加速寿命試験で寿命が短くなるなど信頼性や再現性が低下するといった問題が生じるおそれがあった。
【0011】
本発明の目的は、上記問題点を解決し、薄膜の内部電極用パターンを印刷する上で、特に凹版から転写体への良好な転移を実現し得る、積層セラミックコンデンサの内部電極用導電性ペーストを提供することである。
また本発明の他の目的は、上記導電性ペーストを用いた積層セラミックコンデンサの製造方法を提供することである。
【0012】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、内部電極用パターンを印刷する際に使用する導電性ペーストの流動特性(具体的には粘弾性)に着目し、かかる導電性ペーストの流動特性が、凹版からブランケットへの導電性ペーストの転移性に影響するのではないかと考え、引き続く研究を重ねたところ、驚くべきことに、導電性ペーストの粘度およびチキソ性を所定の範囲に設定すれば、凹版からブランケットへの導電性ペーストの良好な転移が実現でき(すなわち、ペーストの分断を防止でき)、塗膜表面が平滑な薄膜の内部電極用パターン、ひいては静電容量のばらつきが少なく、高い信頼性や再現性を有する、小型、薄型、大容量化した高積層のセラミックコンデンサを製造することができるという事実を見出し、本発明を完成するに至った。
【0013】
すなわち、本発明の積層セラミックコンデンサの内部電極用導電性ペーストは、バインダー樹脂として、ブチラール系樹脂Bまたはアクリル系樹脂Aとセルロース系樹脂Cとを重量比で(AまたはB/C=)1/1〜6/1の範囲になるように配合した混合樹脂と、前記混合樹脂100重量部に対して500〜2000重量部の金属粉末および100〜500重量部の溶剤とを含み、ずり速度を0sec−1から12sec−1まで等速的に変化させた際の、ずり速度が8〜12sec−1の範囲での、ずり応力Sとずり速度Dとの比S/Dで表される粘度が800〜2300poiseの範囲内で、かつずり速度1sec−1のときの粘度V1と、ずり速度10sec−1のときの粘度V2との比V1/V2で表されるチキソ性が3〜13の範囲内であり、凹版オフセット印刷に用いて積層セラミックコンデンサの内部電極を形成するために用いることを特徴とする。
【0014】
本発明の積層セラミックコンデンサの内部電極用導電性ペースト(以下、単に導電性ペーストという)は、ドクターブレード等で凹版凹部に導電性ペーストを充填する際は、当該導電性ペーストにせん断力が働いてずり速度が大きくなり、粘度が低下するため、凹版の凹部への充填を容易にすることができる。
また、凹版の凹部内および転写体上では、上記導電性ペーストにせん断力が働かないために(すなわち、ずり速度が小さくなる)粘度が高くなり、導電性ペーストの内部凝集力が高まって、凹版から転写体、および転写体からセラミックグリーンシートへの導電性ペーストの転移を、ペーストの分断を発生せずに行うことができる。
【0015】
よって、上記導電性ペーストを凹版オフセット印刷法を用いてセラミックグリーンシート上にパターン印刷すれば、印刷形状(とくに印刷塗膜の表面粗さ)が良好で、かつ薄膜の内部電極用パターンを高精度でもって形成することができ、ひいては積層セラミックコンデンサの電気的特性の信頼性などが向上する。
上記所定のチキソ性および粘度を有する導電性ペーストを調製するには、例えばバインダー樹脂として、ブチラール系樹脂Bまたはアクリル系樹脂Aとセルロース系樹脂Cとを重量比で(AまたはB/C=)1/1〜6/1の範囲になるように配合した混合樹脂を使用すればよい。かかる樹脂においてセルロース系樹脂は、導電性ペーストに適度なチキソ性を付与している。
【0016】
本発明の積層セラミックコンデンサの製造方法は、
(1) セラミックグリーンシート上に、上記所定の粘度およびチキソ性を有する導電性ペーストを用いて凹版オフセット印刷法によって内部電極用パターンを印刷する工程を繰り返して、複数枚の、内部電極用パターンを有するセラミックグリーンシートを形成する工程と、
(2) 上記複数枚のセラミックグリーンシートを積層して積層体を形成する工程と、
(3) 上記(2)の積層体を焼成する工程と
を含むことを特徴とする。
また本発明の積層セラミックコンデンサの製造方法は、
(a) セラミックグリーンシート上に、請求項1または2記載の導電性ペーストを用いて凹版オフセット印刷法によって内部電極用パターンを印刷する工程と、上記内部電極用パターン上にセラミックグリーンシートを積層する工程とを交互に繰り返して積層体を形成する工程と、
(b) 上記(a)の積層体を焼成する工程と
を含むことを特徴とする。
【0017】
本発明の製造方法によれば、内部電極用パターンを凹版オフセット印刷法によって形成するので、従来のスクリーン印刷法を用いた場合に比べて、薄膜の印刷が可能であるとともに、塗膜厚みの調節が容易で、しかもパターンの形状および印刷位置の精度に優れた内部電極用パターンを形成することができる。
また上記凹版オフセット印刷法には、前述した特定の導電性ペーストを使用するので、凹版から転写体、転写体からセラミックグリーンシートへの導電性ペーストの転移をペーストの分断を発生することなく良好に実現し、塗膜表面が平滑な内部電極用パターンを形成することができる。
【0018】
従って、図6bに示すように、塗膜表面が平滑な薄膜の内部電極用パターンを積層化することができるので、誘電体層においてショート不良などの構造欠陥が発生せず、信頼性が高く、かつ小型化、薄型化、大容量化した、高積層の積層セラミックコンデンサなどの積層セラミック部品を作製することができる。
なお、上記特開平9−237737号公報には、導電性ペーストのバインダー樹脂としてセルロース系樹脂、ロジン系樹脂、ブチラール系樹脂、アクリル系樹脂、エポキシ系樹脂などを単独または複数で用いてもよいと記載しているが、これらの樹脂を複数で用いるにあたり、具体的な樹脂の組み合わせや、その配合比については何ら開示されていない。もちろん、導電性ペーストの粘度およびチキソ性については示唆も教示もされていない。
【0019】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を詳細に説明する。
まず、本発明の導電性ペーストについて説明する。
(導電性ペースト)
本発明の導電性ペーストに使用される金属粉末としては、例えば銅粉末、銀粉末、銅粉末表面を銀で被覆した粉末、金粉末、白金粉末、パラジウム粉末、鉄粉末、ニッケル粉末またはこれらの合金の粉末などがあげられ、これらは単独であるいは組み合わせて使用される。
【0020】
上記金属粉末の形状としては、例えば球状、鱗片状などがあげられるが、得られる導電性ペーストの粘弾性を考慮すると、球状のものが好適である。
また、上記金属粉末の平均粒子径は、数μm〜サブミクロンであるのがよい。但し、得られる導電性ペーストの粘弾性を考慮すると、その平均粒子径は0.1〜0.5μmのであるのが好ましい。
【0021】
また本発明では、導電性ペーストにおける金属粉末の分散性を向上させるため、上記金属粉末をシランカップリング剤などのカップリング剤を用いて表面を高分子有機質に改質したものが好適に使用される。
さらに本発明では、セラミックグリーンシートとの密着性を高めるために、共材としてセラミックグリーンシートと同様の金属粉末(アルミニウム系金属やチタンなど)を所望量導電性ペースト中に添加してもよい。
【0022】
上記金属粉末の使用量は、バインダー樹脂100重量部に対して500〜2000重量部である必要があり、好ましくは700〜1300重量部であるのがよい。
金属粉末の使用量が上記範囲を下回ると、薄膜の内部電極用パターンを形成した場合に、十分な静電容量が得られないなどの、積層セラミックコンデンサの電気的特性が損なわれるおそれがある。
【0023】
逆に、金属粉末の使用量が上記範囲を上回ると、導電性ペースト中のバインダー樹脂の使用割合が少なくなり、導電性ペーストの内部凝集力が弱くなってペーストの分断が発生したり、あるいは転写体への転移性が非常に劣るおそれがある。
上記導電性ペーストにおける金属粉末の凝集や分散不良は、内部電極間の短絡の発生を引き起こす場合がある。そこで、上記金属粉末をペースト中で十分に分散させるため、バインダー樹脂や分散剤などを配合すればよい。
【0024】
上記分散剤としては、導電性ペーストの調製に通常使用される種々の界面活性剤があげられる。中でも、導電性ペーストの安定化を図るという点から高分子界面活性剤を使用するのが好ましい。
上記バインダー樹脂としては、例えばセルロース系樹脂、ロジン系樹脂、ポリビニール系樹脂、ブチラール系樹脂、アクリル系樹脂、フェノール系樹脂、エポキシ系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリウレタン系樹脂などがあげられ、これらは単独または組み合わせて使用される。
【0025】
但し、積層セラミックコンデンサを製造する場合には、セラミックグリーンシートと導電性ペーストからなる内部電極用パターンとを同時焼成するのが一般的であるから、脱バインダー性に優れた樹脂を適宜選択して使用するのがよい。
また、上記の樹脂の中でも、セルロース系樹脂は、導電性ペーストに適度なチキソ性を付与することができるので、当該セルロース系樹脂を適量配合した混合樹脂をバインダー樹脂として使用するのが好ましい。
【0026】
具体的に説明すると、脱バインダー性に優れ、かつ適度なチキソ性を有する導電性ペーストの調製に用いられるバインダー樹脂として、本発明ではブチラール系樹脂Bまたはアクリル系樹脂Aとセルロース系樹脂Cとを重量比で(AまたはB/C=)1/1〜6/1の範囲になるように配合した混合樹脂が用いられる。
なお、上記ブチラール系樹脂としては、ビニルブチラール、酢酸ビニルおよびビニルアルコールの共重合体であるポリビニルブチラールが例示される。
【0027】
またアクリル系樹脂としては、アクリル酸およびそのエステル、アクリルアミド、アクリロニトリル、メタクリル酸およびそのエステルなどの重合体および共重合体が例示される。
上記セルロース系樹脂としては、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、メチルセルロース、エチルセルロース、エチルヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルエチルセルロース、硝酸セルロース、セルロースアセテート、セルロースアセテートブチレート、セルロースアセテートプロピオネートなどがあげられる。これらは単独または2種以上組み合わせて使用される。
【0028】
上記バインダー樹脂の使用量は、導電性ペースト全量に対して3〜15重量%、好ましくは5〜9重量%であるのがよい。
バインダー樹脂の使用量が上記範囲を下回ると、バインダーとしての特性を満足せず、導電性ペーストの内部凝集力が弱くなるおそれがある。逆に、バインダー樹脂の使用量が上記範囲を上回ると、前述した所定の粘度範囲に調整するために溶剤を多量に使用しなければならず、導電性ペースト中の金属粉末の使用割合が少なくなるため、薄膜の内部電極用パターンを形成した場合に、積層セラミックコンデンサとしての特性を満足しないおそれがある。
【0029】
また、本発明の導電性ペーストに使用する溶剤としては、前述のバインダー樹脂や分散剤などと相溶するものであれば特に制限はないが、沸点が150℃以上のものが好適である。溶剤の沸点が上記範囲を満足しない場合には、印刷時において溶剤が揮発しやすく、導電性ペーストが経時変化を起こし、印刷特性が悪くなるおそれがある。
【0030】
上記溶剤を具体的に説明すると、例えばヘキサノール、オクタノール、ノナノール、デカノール、ウンデカノール、ドデカノール、トリデカノール、テトラデカノール、ペンタデカノール、ステアリルアルコール、セリルアルコール、シクロヘキサノール、テルピネオール等のアルコール;エチレングリコールモノブチルエーテル(ブチルセロソルブ)、エチレングリコールモノフェニルエーテル、ジエチレングリコール、ジエチレングリコールモノブチルエーテル(ブチルカルビトール)、セロソルブアセテート、ブチルセロソルブアセテート、カルビトールアセテート、ブチルカルビトールアセテート等のアルキルエーテルなどがあげられ、印刷適正や作業性等を考慮して適宜選択して使用される。
【0031】
なお、溶剤として高級アルコールを使用する場合には、ペーストの乾燥性や流動性に劣るおそれがあるため、これらよりも乾燥性が良好なブチルカルビトール、ブチルセロソルブ、エチルカルビトール、ブチルセロソルブアセテート、ブチルカルビトールアセテートなどを併用すればよい。
上記溶剤は、得られる導電性ペーストの粘度およびチキソ性が所定の範囲内になるように使用すればよい。
【0032】
具体的に説明すると、先に説明したブチラール系樹脂Bまたはアクリル系樹脂Aとセルロース系樹脂Cとを重量比で(AまたはB/C=)1/1〜6/1の範囲になるように配合した混合樹脂100重量部に対して100〜500重量部である必要があり、好ましくは200〜300重量部の溶剤を添加するのがよい。
【0033】
本発明の導電性ペーストは、上述の金属粉末、ビヒクル(バインダー樹脂および溶剤)の他に、必要に応じて可塑剤、静電気防止剤、消泡剤、酸化防止剤、滑剤、硬化剤などの助剤を適宜配合し、3本ロール、ニーダー等の混合機を用いて混練・分散して調製される。
斯くして調製される導電性ペーストは、ずり速度を0sec-1から12sec-1まで等速的に変化させた際の、ずり速度が8〜12sec-1の範囲での、ずり応力Sとずり速度Dとの比S/Dで表される粘度が800〜2300poiseの範囲内であって、かつずり速度1sec-1のときの粘度v1 と、ずり速度10sec-1のときの粘度v2 との比v1 /v2 で表されるチキソ性が3〜13の範囲内である。
【0034】
ここで、本発明の導電性ペーストの流動特性(粘弾性)について図7を用いて説明する。
本発明の導電性ペーストは、ずり速度を0sec-1から12sec-1へ等速的に変化させることによって流動性が増し、粘度は次第に低下して図7中の実線Aに示すようなループを描く。このような現象はチキソトロピー性といわれるものである。
【0035】
図7中の実線Aと同様に、図7中の実線B〜Eもチキソトロピー性を有する導電性ペーストであるが、実線Bの流動特性を示す導電性ペーストの場合には、ずり速度が1sec-1ときの粘度と、ずり速度が10sec-1ときの粘度との比で表されるチキソ性が13より大きいために、導電性ペーストの調製が困難になるだけではなく、凹版の凹部内にドクターブレード等で導電性ペーストを充填する際に、当該ペーストにせん断力が働くまでの初期段階で粘度が高くなり、凹版の凹部内への導電性ペーストの充填が困難(以下、ペーストの充填不良という)になるおそれがある。
【0036】
実線Cの流動特性を示す導電性ペーストの場合には、上記実線Bの導電性ペーストとは逆にチキソ性が3より小さいために、凹版から転写体への転移時(すなわち、導電性ペーストにせん断力が働かない状態)にペーストの分断が発生するおそれがある。
また、実線Dの流動特性を示す導電性ペーストの場合には、ずり速度が8〜12sec-1(図7中のDa )のときの粘度が800〜2300poiseより高いために、上記チキソ性を小さくしないと凹版の凹部内に導電性ペーストを良好に充填できなくなるおそれがあったり、凹版から転写体に導電性ペーストを転移させる際にペーストの分断が発生してしまったり、凹版から転写体への転移性が非常に劣ったりするおそれがある。
【0037】
実線Eの流動特性を示す導電性ペーストの場合には、上記実線Dの導電性ペーストとは逆に、ずり速度が8〜12sec-1(図7中のDa )のときの粘度が800〜2300poiseより低いために、導電性ペーストに適度なチキソ性を付与させても凹版から転写体への転移時にペーストの分断が発生するおそれがある。また、実線Eの流動特性を示す導電性ペーストは、当該導電性ペースト中の溶剤量が多くなるために、溶剤によるシートアタックが発生したり、導電性ペーストの内部凝集力が弱くなるおそれがある。
【0038】
一方、本発明の導電性ペーストは、適度な粘度(図7中のDa における粘度が800〜2300poise)およびチキソ性(図7中の粘度v1 とv2 との比が3〜13)を有することから、上記実線B〜Eの導電性ペーストにみられた問題を生じることはなく、ドクターブレード等で凹版の凹部内に十分に充填することが可能であるとともに、凹版から転写体、および転写体からセラミックグリーンシートへ転移する際に、ペーストの分断を防止することができる。
【0039】
なお、流体の流動特性を示す用語として、上記チキソトロピック性のほかにニュートニアン流動性があげられる。このニュートニアン流動性とは、ずり速度を変化させても流動性が変化せず、粘度が一定である流動性を示し、水やアルコールなどの流体にみられる現象である。
かかるニュートニアン流動性を有する導電性ペーストを使用した場合には、上記チキソトロピック性を有する導電性ペーストと違って、凹版の凹部への導電性ペーストの充填の際と、転写体上での導電性ペーストの粘度が一定であるため、ペーストの充填不良やペーストの分断が発生するおそれがある。
【0040】
次に、本発明の積層セラミックコンデンサの製造方法について説明する。
上記積層セラミックコンデンサは、
(1) セラミックグリーンシート上に、上述の導電性ペーストを用いて、凹版オフセット印刷法によって内部電極用パターンを印刷する工程を繰り返して、複数枚の、内部電極用パターンを有するセラミックグリーンシートを形成する工程と、
(2) 上記複数枚のセラミックグリーンシートを積層して積層体を形成する工程と、
(3) 上記(2)の積層体を焼成する工程と、
を採用することにより、作製される。
また、上記積層セラミックコンデンサは、
(a) セラミックグリーンシート上に、請求項1記載の導電性ペーストを用いて凹版オフセット印刷法によって内部電極用パターンを印刷する工程と、上記内部電極用パターン上にセラミックグリーンシートを積層する工程とを交互に繰り返して積層体を形成する工程と、
(b) 上記(a)の積層体を焼成する工程と、
を採用して作製することもできる。
【0041】
まず、上記(1)または(a)の内部電極用パターンの印刷工程に使用される種々の部材について説明する。
(転写体)
本発明に用いられる転写体としては、凹版の凹部からの導電性ペーストの受理性に優れ、かつセラミックグリーンシートへの導電性ペーストの転写性に優れたものを使用するのが、表面が平滑な薄膜の塗膜を高い精度で再現できるという点から好ましい。
【0042】
かか転写体としては、例えば表面ゴム層がシリコーンゴムからなるものが好適に使用される。このシリコーンゴムとしては、ミラブル型、室温硬化型(RTV)型、電子線硬化型等の種々のシリコーンゴムが使用される。
中でも、室温硬化型の付加型シリコーンゴムは、硬化の際に副生成物を全く発生せずに、薄膜の印刷塗膜を高い精度で再現することができるので、好適に使用される。
【0043】
これらのシリコーンゴムからなる表面ゴム層は、表面が平滑であるのが好ましく、具体的には表面粗さが10点平均粗さで0.5μm以下であるのが好ましく、より好ましくは0.3μm以下である。
またシリコーンゴムの硬度(JIS−A)は、20〜80度であるのが好ましく、より好ましくは40〜70度である。シリコーンゴムの硬度をかかる範囲に調整するために、シリコーンオイルやシリコーンゲル等を適宜配合してもよい。
【0044】
上記ブランケットの支持体としては表面が平坦なものであればよく、例えばポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエーテルスルホン(PES)、ポリエステル、ポリカーボネイト(PC)等のプラスチックや、アルミニウム、ステンレス等の金属板などを使用することができる。
また上記転写体は、表面ゴム層と支持体との間に多孔質層を形成していてもよい。
【0045】
本発明で使用する転写体の形状としては、シート状のブランケットを円筒状の胴(ローラ)に巻き付けたもの、ローラ状のものなどがあげられる。また、印刷時にずれの生じないものであれば、パット印刷等に用いられる曲面状の弾性体や、その弾性体にシート状のブランケットを取り付けたものであってもよい。
(凹版)
本発明に使用される凹版としては、例えば基板の表面に内部電極用パターンに対応した凹部を形成した、平板状のものや、平板状のものを巻き付けたもの、円筒状のもの、あるいは円柱状のものがあげられる。
【0046】
上記基板としては、例えばソーダライムガラス、ノンアルカリガラス、石英、低アルカリガラス、低膨張ガラス等のガラス板のほか、フッ素樹脂、ポリカーボネート(PC)、ポリエーテルスルホン(PES)、ポリエステル、ポリメタクリル樹脂等の樹脂板、ステンレス、銅、低膨張合金アンバー等の金属板が使用可能である。中でも、パターンのエッジ形状を非常にシャープに形成することが可能な、ソーダライムガラス等のガラス板を用いるのが特に好ましい。
【0047】
凹版の凹部は、従来どおり、フォトリソグラフィ法、エッチング法、電鋳法などによって形成することができる。
上記凹版の凹部の深さは、内部電極用パターンの厚みが乾燥後の厚さで通常0.5〜5μm程度となるように、前記凹部の深さを1〜10μm程度、好ましくは3〜7μmの範囲に設定される。
【0048】
また、凹版の種類に応じて、導電性ペーストをかき取るドクターブレードを凹版に有していてもよい。その際ブレード刃としては、例えばステンレスなどの金属や、ゴム、樹脂、セラミックなどが用いられる。
(セラミックグリーンシート)
本発明で使用するセラミックグリーンシートは、例えばアルミナ(Al2 O3 )、ムライト(3Al2 O3 ・2SiO2 )、窒化アルミニウム(AlN)、チタン酸バリウム(BaTiO3 )等の各種セラミック原料粉末に、有機性添加物および溶媒からなるバインダーを加えてセラミック泥しょうを調製し、ついで、このセラミック泥しょうを、引き上げ法、ドクターブレード法、リバースロールコータ法、グラビアコータ法などの従来公知の方法によって帯状のキャリアフィルム上に連続塗布した後、乾燥して作製される。
【0049】
そのセラミックグリーンシートの形状としては、ロールに巻かれた長尺のものや、所定の長さに切断された短冊状のものなどがあげられる。
また本発明では、スクリーン印刷法、グラビア印刷法などの印刷法によってキャリアフィルム上に所定のサイズに印刷して作製したセラミックグリーンシートであってもよい。
【0050】
本発明の製造方法によって積層セラミックコンデンサを製造する場合には、ドクターブレード法などによって予め作製している既製のセラミックグリーンシートを使用してもよいし、内部電極用パターンを印刷する際に、スクリーン印刷法、フレキソ印刷法、スプレーコート、カーテンコートなどで随時作製したものを使用してもよい。
【0051】
上記セラミックグリーンシートの厚みは、積層セラミック部品の小型化、大容量化という理由から薄ければ薄いほど好ましいが、通常1〜50μmの範囲にあるのがよい。
本発明において、この薄層のセラミックグリーンシートの表面に薄膜の内部電極用パターンを形成し、このパターン上にセラミックグリーンシートを積層し、上記内部電極用パターンとセラミックグリーンシートとの積層工程を交互に繰り返して積層セラミックコンデンサを作製する場合には、その誘電体層(具体的にはセラミックグリーンシート)の厚みを薄くできるため、従来よりも高積層化(多層化)でき、大容量化を実現できるという利点を有する。
【0052】
次に、上記の各部材を用いて(1)または(a)の内部電極用パターンを印刷する工程を図面を用いて説明する。
上記(1)または(a)の内部電極用パターンを印刷する工程は、例えば図1に示す凹版オフセット印刷機によって、図2(a)〜(c)に示す工程を経て凹版から転写体へ、転写体からセラミックグリーンシート上へ導電性ペーストが転写されることにより行われる。
【0053】
なお、図1に示す凹版オフセット印刷機は、平板状の凹版を用いたオフセット印刷機の一例を示すもので、図中の符号1はローラにシート状にブランケットを捲き付けた転写体(あるいはローラ状の転写体であってもよい)、符号2はセラミックグリーンシート、符号3は凹版、符号4は凹版の凹部、符号5はドクターブレード、符号6はセラミックグリーンシートの支持体である。
【0054】
図2(a)に示すように、まず、凹版3の凹部4に必要な量の導電性ペーストをドクターブレード5を用いて充填する。この導電性ペーストの充填は、予め凹版3の凹部4に十分な導電性ペーストを供給しておき、ドクターブレードによって余分な導電性ペーストを掻き取るようにすればよい。
次に、図2(b)に示すように、転写体1を凹版3に所定の圧力で押しつけながら回転させ、凹版の凹部4内の導電性ペースト7をペーストの分断を発生させることなく、転写体1の周りに転移させる。
【0055】
その際、上記転写体1は凹版3に通常0.1〜5kg/cm2 、好ましくは1〜2kg/cm2 の範囲で押圧されているのがよい。
そして、図2(c)に示すように、転写体1をセラミックグリーンシート2にに所定の圧力で押しつけながら回転させ、転写体1の周りに転移させた導電性ペースト7を分断させることなく完全に、セラミックグリーンシート2上に転写させる。
【0056】
上記転写体1はセラミックグリーンシート2に通常0.1〜5kg/cm2 、好ましくは1〜2kg/cm2 の範囲で押圧されていればよい。
また本発明では、平板状の凹版を用いた印刷法において、図1および2に示す転写体1に代えて、図3に示すようにパット印刷などに用いられる曲面状の弾性体11を用いたものや、図4に示すように大きな曲率をもつ転写体12にシート状のブランケット13を取り付けたものを用いてもよい。
【0057】
次に、円柱状の凹版を用いたオフセット印刷機によって、セラミックグリーンシート2上に導電性ペーストを用いて内部電極用パターンを印刷する工程を図5を用いて説明する。
なお、この円柱状の凹版を用いたオフセット印刷機は、円柱状の凹版9の近傍には、この円柱状の凹版9と当接可能なようにローラからなる転写体1が配置されており、この転写体1の近傍にはセラミックグリーンシート2が配置されている。また上記円柱状の凹版9には凹部に導電性ペーストを充填するブレード5が設けられており、このブレード5はペースト溜を有している。
【0058】
この図に示すように、まず、ドクターブレード5を設置した円柱状の凹版9の凹部4内に導電性ペースト7を充填する。
凹版9からの転写体1への転移工程、および転写体1の表面からセラミックグリーンシートへ2の転写工程における印圧としては、とくに限定されないが、通常0.1〜5kg/cm2 程度で印刷すればよい。
【0059】
凹版9から転写体1への導電性ペーストの転移速度は、転写体1の導電性ペーストの受理性を高めるという観点から、通常50〜200mm/s前後に設定されるのがよい。
また、転写体1からセラミックグリーンシート2への導電性ペーストの転写速度は、通常50〜200mm/s前後の範囲に設定されるのがよい。
【0060】
かかる条件により、凹版の凹部4に充填された導電性ペースト7は、ペーストの分断を発生することなく転写体1に転移し、続いて転写体1からセラミックグリーンシート2に良好に転写される。
なお、図5中の符号10は厚胴であり、導電性ペースト7の転写体1からセラミックグリーンシート2への転写時の圧力を調節するためのものである。
【0061】
上記(1)または(a)の工程によって形成される内部電極用パターンの厚みは、積層セラミックコンデンサの小型化や、高い信頼性を得るために、通常3μm以下、好ましくは2μm以下、より好ましくは1μm以下であるのが望ましい。
なお、セラミックグリーンシート上に内部電極用パターンを形成する印刷法としては、上述の方法に限定されるものではなく、凹版凹部に充填した導電性ペーストを一旦、転写体表面に転移させた後、当該転写体表面に転移した導電性ペーストをセラミックグリーンシート上に転写させる凹版オフセット印刷法において、前記導電性ペーストとして、その粘度が800〜2300poiseで、かつチキソ性が3〜13であるペーストを使用することにより、凹版から転写体、転写体からセラミックグリーンシートへ導電性ペーストが転写される際にペーストの分断が発生しない印刷法であればよい。
【0062】
次に、積層体を形成する工程について説明する。
本発明の製造方法において、複数枚の、内部電極用パターンを有するセラミックグリーンシートを積層して積層体を形成するには、
(A)上記(a)において、セラミックグリーンシート上に、導電性ペーストを用いて内部電極用パターンを印刷する工程と、その内部電極用パターン上にセラミックグリーンシートを形成する工程とを複数回繰り返して、セラミックグリーンシート、内部電極用パターン、セラミックグリーンシートという順に重ねる方法や、
(B)ロールに巻かれた長尺のセラミックグリーンシートを準備し、そのセラミックグリーンシート上に導電性ペーストを用いて凹版オフセット印刷法(上記(1)の工程の繰り返し)によって内部電極用パターンを等ピッチで印刷し、ついでその内部電極用パターンを有するセラミックグリーンシートを切断して、複数枚の、内部電極用パターンを有するセラミックグリーンシートを作製した後、上記(2)において、これら複数枚のセラミックグリーンシートを順に重ねる方法などがあげられる。
【0063】
その際、複数枚の、内部電極用パターンを有するセラミックグリーンシートは、図8中のAに示すように、それぞれ個々に内部電極用パターンの引き出されている側が互い違いになるように重ねられる。この重ね方によって、積層体の一端が外部電極の陽極と、もう一端が外部電極の陰極と電気的に接続することができる。
【0064】
本発明の積層体は、薄膜の内部電極用パターンおよび薄層のセラミックグリーンシートによって構成されるので、従来の積層セラミックコンデンサよりも薄く(すなわち、小型、薄型化)できる。すなわち、従来の積層セラミックコンデンサと同じ厚みで多層化することができる。従って、小型、大容量化した高積層の積層セラミックコンデンサを作製することができる。
【0065】
次に、上記(3)の積層体の焼成工程について説明する。
前記形成した積層体の焼成は、大気中または窒素雰囲気中、500〜800℃でバインダー樹脂を燃焼させた後、大気中または還元雰囲気中、1000〜1800℃にて焼成し、さらに600〜900℃で熱処理することにより行われる。その際、導電性ペーストの金属粉末として還元性を有する金属粉末(パラジウム粉末、銅粉末など)を用いる場合には、上記焼成を必ずしも窒素雰囲気中や還元雰囲気中にて行う必要はないが、還元性を有しない金属粉末(例えばニッケル粉末など)を用いる場合には、窒素雰囲気中や還元雰囲気中にて焼成するのが好ましい。
【0066】
ついで、この焼成によって得られた積層体は、上記図8に示すように、その各端面に、たとえばインジウム−ガリウムのペーストを塗布して、内部電極層と電気的に接続した外部電極81を形成することにより、積層セラミックコンデンサを構成する。
【0067】
【実施例】
以下、実施例および比較例を挙げて、本発明を具体的に説明する。
後述の実施例および比較例において使用する凹版、転写体、セラミックグリーンシートは次の通りである。
(凹版)
ソーダライムガラス基板全面に、クロム(Cr)を蒸着した後、所定のパターンをレーザーを用いて描画した。ついで、慣用のエッチング処理を行い、深さ6μmのガラス製凹版を作製した。なお、この凹版の表面自由エネルギーは45dyn/cmである。
(転写体)
円筒状のブラン胴にシート状のブランケットを装着したものである。ブランケットは、厚み0.35mmのポリエチレンテレフタレート製の支持体上に、厚み0.55mmの室温硬化型の付加型シリコーンゴム(硬度JIS−Aで60度、表面粗さ0.2μm)の層を形成したものを使用した。
(セラミックグリーンシート)
合成樹脂よりなる帯状のキャリアフィルム上に、BaTiO3 97.5モル%、CaZrO3 2.0モル%、MnO0.5モル%配合したセラミック原料粉末100モル部に対して、Y2 O3 0.5モル部を添加し、得られた混合物全量に対してバインダーとしてブチラール樹脂5.4重量%を加えてセラミック泥しょうを調製し、ついで、このセラミック泥しょうをドクターブレード法により塗布し、乾燥させることにより、厚み7.5μmの帯状セラミックグリーンシートを作製した。そして、このセラミックグリーンシートを100mm×100mmのサイズに打ち抜いたものを使用した。
実施例1
(導電性ペーストの調製)
バインダー樹脂(エチルセルロース:ポリビニルブチラール(重量比)=1:2)100重量部およびニッケル微粉末1000重量部に、溶剤としてブチルカルビトールアセテートを粘度830poise、かつチキソ性が10.8となるように配合し、3本ロールを用いて均一に分散させてペーストを調製した。
【0068】
なお、上記導電性ペーストの粘度(poise)は、レオロジ製の粘弾性測定装置「MR−500」を用いて、下記の測定条件から算出した、ずり速度が10sec-1のときの測定値である。
測定条件:コーン径20mm、コーン角5degのコーンプレートを用い、最大回転数10rpm、測定時間50秒で等速的に回転を昇降させてコーンに働くトルクを検出した。
【0069】
またチキソ性とは、ずり速度1sec-1のときの粘度v1 と、ずり速度10sec-1のときの粘度v2 との比v1 /v2 である。
(積層セラミックコンデンサの作製)
セラミックグリーンシートを前述した図1の凹版オフセット印刷機の支持体上に真空引きにより固定した。ついで、凹版の凹部内に、上記調製した導電性ペーストをドクターブレードにより充填し、この凹版上を圧力2kg/cm2 で圧接しながら転写体を回転させて、凹版凹部内の導電性ペーストを転写体上に転移させた。ついで、この転写体に圧力2kg/cm2 で圧接しながらセラミックグリーンシートを回転させることにより、転写体上の導電性ペーストをセラミックグリーンシートの片面上に転写させて内部電極用パターンを印刷した。
【0070】
このときの凹版から転写体への導電性ペーストの転移速度(凹版と転写体との相対移動速度)、および転写体からセラミックグリーンシートへの導電性ペーストの転移速度(転写体とセラミックグリーンシートとの相対移動速度)はともに、100mm/sである。
次に、上記の工程を繰り返して得られた、内部電極用パターンを有するセラミックグリーンシートを、それぞれ個々に内部電極用パターンの引き出されている側が互い違いになるように20層を積層して積層体を形成した。
【0071】
そしてこの得られた積層体を、窒素雰囲気中にて800℃で加熱し、バインダーを燃焼させた後、還元雰囲気中にて1250℃で2時間焼成し、さらに窒素雰囲気中にて900℃にて熱処理を行い、セラミック焼結体を得た。焼成後、得られた焼結体の各端面にインジウム−ガリウムペーストを塗布し、内部電極と電気的に接続した外部電極を形成し、内部電極がNiからなる積層セラミックコンデンサを作製した。
【0072】
この積層セラミックコンデンサの外形寸法は、幅1.6mm、長さ3.2mmであり、内部電極間に介在する誘電体層の厚みは5μmであった。誘電体層の総数は20であり、一層当りの対向電極の面積は2.1mm2 であった。
実施例2〜6、比較例1〜5
下記表1に示す粘度およびチキソ性を有する導電性ペーストを使用した以外は実施例1と同様にして、内部電極用パターンを形成し、積層セラミックコンデンサを作製した。
(ペーストの分断)
上記実施例および比較例にて内部電極用パターンを印刷する際の、凹版から転写体への導電性ペーストの転移性を、印刷後の凹版凹部のペーストの残存を顕微鏡により観察し、凹版における導電性ペーストの分断の有無を確認した。
【0073】
また、転写体からセラミックグリーンシートへのペーストの転写性を、印刷後の転写体の表面に粘着ローラを転がし、粘着ローラの表面を顕微鏡により観察し、転写体表面におけるペーストの分断の有無を確認した。
(印刷塗膜の表面粗さ)
導電性ペーストを用いてセラミックグリーンシート上に印刷した塗膜(電極層)を、60℃で5分間乾燥させた後、その塗膜表面の10点平均粗さ(Rz)をテンコール社製の表面・段差形状測定器 P−10を用いて測定した。
(電極層の厚み)
100個の試作積層セラミックコンデンサについて破断面電子顕微鏡を用いて観察し、内部電極層の平均厚みを測定した。
(静電容量、その変動計数(C.V.値)および加速寿命の測定)
1kHz、1Vrm、温度25℃の条件下にて、LCRメータを用いて静電容量を測定した。また静電容量の変動計数(C.V.値)を算出した。なお、この変動計数(C.V.値)は、静電容量の標準偏差を誘電体層の厚みで除した値である。さらに、温度140℃、15V/μmの条件下にて、加速寿命(分)を測定した。
【0074】
これらの評価結果を、使用した導電性ペーストの粘度およびチキソ性とともに、下記表1に示す。
【0075】
【表1】
実施例7〜12、比較例6〜10
バインダー樹脂としてエチルセルロースとポリビニルブチラールとを重量比で(前者:後者=)1:4で配合したものを使用し、かつ金属粉末としてニッケル粉末をバインダー樹脂100重量部に対して1100重量部添加した以外は実施例1と同様にして下記表2に示す粘度およびチキソ性を有する導電性ペーストを調製した。ついで、下記表2に示す粘度およびチキソ性を有する導電性ペーストを使用した以外は実施例1と同様にして、内部電極用パターンを形成し、積層セラミックコンデンサを作製した。
【0076】
実施例7〜12および比較例6〜10について、上記実施例1と同様にして(ペーストの分断)、(印刷塗膜の表面粗さ)、(電極層の厚み)および(静電容量、その変動計数(C.V.値)および加速寿命の測定)の項目について評価した。
これらの評価結果を、使用した導電性ペーストの粘度およびチキソ性とともに、下記表2に示す。
【0077】
【表2】
比較例11〜20
バインダー樹脂としてポリビニルブチラールを使用し、かつ金属粉末としてニッケル粉末をバインダー樹脂100重量部に対して1300重量部添加した以外は実施例1と同様にして下記表3に示す粘度およびチキソ性を有する導電性ペーストを調製した。ついで、下記表3に示す粘度およびチキソ性を有する導電性ペーストを使用した以外は実施例1と同様にして、内部電極用パターンを形成し、積層セラミックコンデンサを作製した。
【0078】
比較例11〜20について、上記実施例1と同様にして(ペーストの分断)、(印刷塗膜の表面粗さ)、(電極層の厚み)および(静電容量、その変動計数(C.V.値)および加速寿命の測定)の項目について評価した。
これらの評価結果を、使用した導電性ペーストの粘度およびチキソ性とともに、下記表3に示す。
【0079】
【表3】
比較例21〜30
バインダー樹脂としてアクリル樹脂(ポリメタクリル酸のメチルエステル)を使用し、かつ金属粉末としてニッケル粉末をバインダー樹脂100重量部に対して1100重量部添加した以外は実施例1と同様にして下記表4に示す粘度およびチキソ性を有する導電性ペーストを調製した。ついで、下記表4に示す粘度およびチキソ性を有する導電性ペーストを使用した以外は実施例1と同様にして、内部電極用パターンを形成し、積層セラミックコンデンサを作製した。
【0080】
比較例21〜30について、上記実施例1と同様にして(ペーストの分断)、(印刷塗膜の表面粗さ)、(電極層の厚み)および(静電容量、その変動計数(C.V.値)および加速寿命の測定)の項目について評価した。
これらの評価結果を、使用した導電性ペーストの粘度およびチキソ性とともに、下記表4に示す。
【0081】
【表4】
実施例13〜18、比較例31〜35
バインダー樹脂としてエチルセルロースとアクリル樹脂とを重量比で(前者:後者=)1:3で配合したものを使用し、かつ金属粉末としてニッケル粉末をバインダー樹脂100重量部に対して900重量部添加した以外は実施例1と同様にして下記表5に示す粘度およびチキソ性を有する導電性ペーストを調製した。ついで、下記表5に示す粘度およびチキソ性を有する導電性ペーストを使用した以外は実施例1と同様にして、内部電極用パターンを形成し、積層セラミックコンデンサを作製した。
【0082】
実施例13〜18および比較例31〜35について、上記実施例1と同様にして(ペーストの分断)、(印刷塗膜の表面粗さ)、(電極層の厚み)および(静電容量、その変動計数(C.V.値)および加速寿命の測定)の項目について評価した。
これらの評価結果を、使用した導電性ペーストの粘度およびチキソ性とともに、下記表5に示す。
【0083】
【表5】
表1〜5から明らかなように、実施例では、凹版から転写体へのペーストの転移、および転写体からセラミックグリーンシートへの導電性ペーストの転写において、ペーストの分断が全く発生しなかった。また、塗膜表面粗さ Rzが0.5μm以下と非常に平滑である。さらに、得られた積層セラミックコンデンサにおいては、静電容量の変動計数が3%以内で容量のバラツキが少なく、しかも加速寿命も長いことから信頼性が高いことがわかる。
【0084】
それに対し、使用する導電性ペーストの粘弾性(粘度およびチキソ性)が本発明の構成要件を満足していない、すなわち粘度が800poise未満の導電性ペーストを使用した比較例1〜3、6〜8、11〜15、21〜25、31〜33では、凹版から転写体へ導電性ペーストを転移させる際にペーストの分断が発生し、表面粗さが非常に劣った内部電極用パターンが形成されている。その結果、得られる積層コンデンサは、静電容量の変動計数が3%以上と静電容量のバラツキが認められ、加速寿命が非常に短くなっていることがわかる。
【0085】
また、粘度が2300poiseより大きい導電性ペーストを使用した比較例4〜5、9〜10、20、30、34〜35では、導電性ペースト中の溶剤の配合割合が少な過ぎるため、凹版から転写体へ導電性ペーストを転移させる際に転移不良が発生し、内部電極用パターンを印刷することが困難となっている。
また、粘度が本発明の範囲を満足するが、チキソ性が3未満である比較例16〜19、26〜29では、チキソ性が小さいため、せん断力が働かない凹版の凹部内においてもペーストの粘度が高くならないために、導電性ペーストの内部凝集力が小さく、凹版から転写体へ導電性ペーストを転移させる際に、ペーストの分断が発生し、塗膜表面粗さ Rzが悪くなっている。
【0086】
また比較例の導電性ペーストから得られる積層セラミックコンデンサは、静電容量の変動計数が3%以上と静電容量のバラツキが認められ、加速寿命が非常に短くなっていることがわかる。
次に、下記表6に示すバインダー樹脂を用いて調製した導電性ペーストについて、上記実施例1と同様にして(ペーストの分断)、(印刷塗膜の表面粗さ)、(電極層の厚み)および(静電容量、その変動計数(C.V.値)および加速寿命の測定)の項目について評価した。
実施例19
バインダー樹脂(エチルセルロース:ポリビニルブチラール(重量比)=1:1)5重量部、ニッケル微粉末75重量部および溶剤(ブチルカルビトールアセテート)20重量部を配合した以外は実施例1と同様にして導電性ペーストを調製し、その導電性ペーストを用いて実施例1と同様にして内部電極用パターンを形成し、積層セラミックコンデンサを作製した。なお、上記導電性ペーストの粘度は1780ポアズpoise、チキソ性は8.5である。
実施例20〜24、比較例36〜42
下記表6に示すバインダー樹脂を使用した以外は実施例19と同様にして導電性ペーストを調製し、それらの導電性ペーストを用いて内部電極用パターンを形成し、積層セラミックコンデンサを作製した。
【0087】
これらの評価結果を、バインダー樹脂の配合比、導電性ペーストの粘度およびチキソ性と共に下記表6に示す。
【0088】
【表6】
表6から明らかなように、バインダー樹脂としてエチルセルロース(セルロース系樹脂)に対してポリビニルブチラール(ブチラール系樹脂)またはアクリル樹脂(アクリル系樹脂)を重量比で1〜6倍量配合した樹脂(実施例19〜24)を使用した場合には、ペーストの分断が全く発生せず、塗膜表面が非常に平滑で、かつ得られた積層セラミックコンデンサにおいては、静電容量の変動計数が3%以内で容量のバラツキが少なく、しかも加速寿命が長いことがわかる。
【0089】
【発明の効果】
以上詳述したように、積層セラミックコンデンサ用の内部電極用パターンを、所定の粘弾性(粘度およびチキソ性)を有する導電性ペーストを用いて凹版オフセット印刷によって形成することにより、凹版から転写体および転写体からセラミックグリーンシートへの導電性ペーストの転移をペーストの分断を発生することなく実現し、塗膜表面が非常に平滑な薄膜の内部電極用パターンを高い精度でもって形成することができる。
【0090】
従って、静電容量のバラツキが少なくなり、小型、大容量化した信頼性が高い、高積層のセラミックコンデンサを作製することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】平板状の凹版を用いたオフセット印刷機を示す説明図である。
【図2】図1の凹版オフセット印刷機によって導電性ペーストをセラミックグリーンシート上に印刷する工程を示す説明図である。
【図3】平板状の凹版を用いたオフセット印刷機の他の例を示す説明図である。
【図4】平板状の凹版を用いたオフセット印刷機の他の例を示す説明図である。
【図5】円筒状の凹版を用いたオフセット印刷機によって導電性ペーストをセラミックグリーンシート上に印刷する工程を示す説明図である。
【図6】従来の導電性ペーストを用いて凹版オフセット印刷法によって内部電極用パターンを形成した場合の積層セラミックコンデンサの断面図(図6a)、および本発明の製造方法によって内部電極用パターンを形成した場合の積層セラミックコンデンサの断面図(図6b)である。
【図7】積層セラミックコンデンサの内部電極用導電性ペーストにおける、ずり速度と粘度との関係を示すグラフである。
【図8】本発明の積層セラミックコンデンサの断面図である。
Claims (3)
- バインダー樹脂として、ブチラール系樹脂Bまたはアクリル系樹脂Aとセルロース系樹脂Cとを重量比で(AまたはB/C=)1/1〜6/1の範囲になるように配合した混合樹脂と、前記混合樹脂100重量部に対して500〜2000重量部の金属粉末および100〜500重量部の溶剤とを含み、ずり速度を0sec−1から12sec−1まで等速的に変化させた際の、ずり速度が8〜12sec−1の範囲での、ずり応力Sとずり速度Dとの比S/Dで表される粘度が800〜2300poiseの範囲内で、かつずり速度1sec−1のときの粘度V1と、ずり速度10sec−1のときの粘度V2との比V1/V2で表されるチキソ性が3〜13の範囲内であり、凹版オフセット印刷に用いて積層セラミックコンデンサの内部電極を形成するために用いることを特徴とする、積層セラミックコンデンサの内部電極用導電性ペースト。
- (1) セラミックグリーンシート上に、請求項1記載の導電性ペーストを用いて凹版オフセット印刷法によって内部電極用パターンを印刷する工程を繰り返して、複数枚の、内部電極用パターンを有するセラミックグリーンシートを形成する工程と、
(2) 上記複数枚のセラミックグリーンシートを積層して積層体を形成する工程と、
(3) 上記(2)の積層体を焼成する工程と
を含むことを特徴とする積層セラミックコンデンサの製造方法。 - (a) セラミックグリーンシート上に、請求項1記載の導電性ペーストを用いて凹版オフセット印刷法によって内部電極用パターンを印刷する工程と、上記内部電極用パターン上にセラミックグリーンシートを積層する工程とを交互に繰り返して積層体を形成する工程と、
(b) 上記(a)の積層体を焼成する工程と
を含むことを特徴とする積層セラミックコンデンサの製造方法。
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