JP4385239B2 - 過給機用焼結ステンレス鋼材料及びその製造方法 - Google Patents

過給機用焼結ステンレス鋼材料及びその製造方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、ターボチャジャー、スーパーチャジャー等の各種過給機に用いられる焼結ステンレス鋼材料及びその製造方法に関する。さらには、この材料を用いた過給機に関する。
【0002】
【従来技術】
例えば、自動車エンジンに用いられる過給機においては、常に排ガス等の高温にさらされる上、場合によっては部材どうしの摩擦・摺動にも耐えなければならない。このため、これらの過給機用材料には少なくとも耐熱性・耐摩耗性が要求される。
【0003】
一方、過給機の作製にあたって、これらの材料はいくつかの部品を互いに溶接することによってアッセンブリー化される場合も多い。殊に、複雑な形状を有する部位では、溶接により構成される部分の割合が高くなる。このため、溶接性も、これら部材に要求される一つの特性と言える。
【0004】
ところで、少なくとも耐熱性が要求される過給機で使用される構造部材(材質)としては、一般にステンレン鋼材料からなるものが汎用されているが、ステンレン鋼材料(特に焼結材料)は溶接による接合が容易ではない。このため、溶接性に優れたステンレス鋼材料の開発が切望されている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、耐熱性・耐摩耗性と溶接性とを兼ね備えた材料は未だ開発されていない。例えば、オーステナイト系ステンレス鋼材料は高温域での使用には有効であるものの、一般に機械的強度が低い。一方、マルテンサイト系ステンレス鋼材料は機械的強度に優れる反面、溶接性がきわめて低いため、前記のような複雑なアッセンブリーの組立てには不向きである。
【0006】
このように、今までに開発されている材料では、過給機に要求される特性を十分に満足することができないというのが現状である。
【0007】
従って、本発明は、かかる従来技術の問題点に鑑みてなされたものであり、過給機用として優れた特性を発揮できる焼結ステンレス鋼材料を提供することを主な目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、上記従来技術の問題に鑑みて鋭意研究を重ねた結果、特定の構成からなる焼結ステンレス鋼材料が上記目的を達成できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち、本発明は、下記の過給機用焼結ステンレス鋼材料及びその製造方法に係るものである。
【0010】
1.Cr:8〜28重量%、Mo、W、V及びTiの少なくとも1種:1〜10重量%、Si:0.2〜5重量%、C:0.05〜0.8重量%、O:0.35重量%以下であって、残部がFe及び不可避元素からなることを特徴とする過給機用焼結ステンレス鋼材料。(第一発明)
2.Cr:8〜28重量%、Mo、W、V及びTiの少なくとも1種:1〜10重量%、Cu:0.5〜5重量%、Si:0.2〜5重量%、C:0.05〜0.8重量%、O:0.35重量%以下であって、残部がFe及び不可避元素からなることを特徴とする過給機用焼結ステンレス鋼材料。(第二発明)
3.マトリックスがマルテンサイトであり、硬質粒子としてCr、Mo、W、V及びTiの少なくとも1種のフェロアロイが存在する上記第1項又は第2項に記載の過給機用焼結ステンレス鋼材料。
【0011】
4.Cr、Mo、W、V及びTiの少なくとも1種の供給源の一部又は全部としてフェロアロイを用い、当該フェロアロイを含む原料粉末を成形及び焼結することを特徴とする上記第1項〜第3項のいずれかに記載の過給機用焼結ステンレス鋼材料の製造方法。
【0012】
5.フェロアロイが、フェロモリブデン、フェロタングステン、フェロバナジウム、フェロチタン及びフェロクロムの少なくとも1種である上記第4項記載の製造方法。
【0013】
6.上記第1項1〜第3項のいずれかに記載の材料を少なくとも一部に用いてなる過給機。
【0014】
【発明の実施の形態】
第一発明の過給機用焼結ステンレス鋼材料は、Cr:8〜28重量%(好ましくは9〜23重量%、より好ましくは10〜20重量%)、Mo、W、V及びTiの少なくとも1種:1〜10重量%(好ましくは2〜10重量%、より好ましくは3〜8重量%)、Si:0.2〜5重量%(好ましくは0.5〜4量%、より好ましくは0.5〜3重量%)、C:0.05〜0.8重量%(好ましくは0.1〜0.7重量%、より好ましくは0.1〜0.6重量%)、O:0.35重量%以下(好ましくは0.32重量%以下、より好ましくは0.25重量%以下)であって、残部がFe及び不可避元素からなることを特徴とする。
【0015】
また、第二発明の過給機用焼結ステンレス鋼材料は、Cr:8〜28重量%(好ましくは9〜23重量%、より好ましくは10〜20重量%)、Mo、W、V及びTiの少なくとも1種:1〜10重量%(好ましくは2〜10重量%、より好ましくは3〜8重量%)、Cu:0.5〜5重量%(好ましくは0.5〜4重量%、より好ましくは0.5〜3重量%)、Si:0.2〜5重量%(好ましくは0.5〜4重量%、より好ましくは0.5〜3重量%)、C:0.05〜0.8重量%(好ましくは0.1〜0.7重量%、より好ましくは0.1〜0.6重量%)、O:0.35重量%以下(好ましくは0.32重量%以下、より好ましくは0.25重量%以下)であって、残部がFe及び不可避元素からなることを特徴とする。すなわち、第二発明は、上記第一発明にさらにCuを必須成分として含むものである。Cuは寸法安定性等の向上に寄与することができる点で第二発明がより好ましい。
【0016】
第一発明及び第二発明(以下、両者を「本発明」という)の焼結体の構造としては、特に、マトリックスがマルテンサイトであり、硬質粒子(分散材)としてCr、Mo、W、V及びTiの少なくとも1種のフェロアロイが存在することが好ましい。フェロアロイとしては、Feを含むものであれば良く、例えばFe−Cr系、Fe−Mo系、Fe−W系、Fe−Ti系、Fe−V系等の2元系、Fe−Cr−Si系、Fe−Cr−C系等の3元系等が挙げられる。この中でも、フェロモリブデン、フェロタングステン、フェロバナジウム、フェロチタン及びフェロクロムの少なくとも1種を用いるのが好ましい。
【0017】
マトリックスは、マルテンサイトが実質的にマトリックスのすべてを占有していることが望ましいが、本発明の効果を妨げない範囲内で他の合金相が存在していても良い。マルテンサイトは、通常マトリックス中50体積%以上存在していれば良い。マルテンサイトが本発明材料におけるマトリックスの主要構成成分として存在することにより特に優れた機械的強度を発揮することができる。
【0018】
硬質粒子が存在する場合、その存在割合は、最終製品の用途、所望の合金特性等に応じて適宜設定できるが、通常は本発明材料中1〜20重量%程度、好ましくは2〜15重量%とすれば良い。かかる範囲内に設定することにより特に耐摩耗性等の向上を図ることができる。また、硬質粒子の平均粒径も硬質粒子の種類等によって適宜設定できるが、通常20〜150μm程度とすれば良い。
【0019】
本発明材料の製造方法は、例えば各合金成分の原料粉末を用いて公知の粉末冶金における焼結体の製造方法に従って実施することができる。例えば、原料粉末を混合し、成形した後、この成形体を焼結すれば良い。
【0020】
原料粉末としては、各成分ごとの単体粉末を用いることもできるが、これらの2成分以上が合金化した合金粉末を用いることもできる。特に、本発明ではCr、Mo、W、V及びTiの少なくとも1種の供給源の一部又は全部としてフェロアロイを用いることが好ましい。すなわち、前記のFe−Cr系、Fe−Mo系、Fe−W系、Fe−Ti系、Fe−Cr−Si系等の合金粉末を各成分の供給源の一部又は全部として用いることにより、これらの硬質粒子が分散材として存在する焼結体を効率良く製造することができる。なお、C(炭素)成分としては、特に黒鉛を用いることが好ましい。
【0021】
これらの原料粉末は、1種又は2種以上使用できる。また、これらは公知の製法により得られるもの又は市販品を用いることができる。原料粉末の平均粒径は、特に制限されないが、通常20〜150μm程度とすれば良い。
【0022】
原料粉末の成形は、公知の成形方法及び条件を採用できる。例えば、プレス成形、HIP法、CIP法、ホットプレス法等が挙げられる。成形に際し、必要に応じてバインダー、焼結助剤等の添加剤を配合することもできる。成形工程では、成形体の密度は、合金組成等によって適宜変更できるが、通常は焼結体密度が6〜7g/cm3程度となるように調節すれば良い。
【0023】
焼結工程では、成形体の焼結を行う。焼結温度は、合金組成等に応じて適宜設定できるが、通常は1100〜1300℃程度とすれば良い。焼結時間は、焼結温度等に応じて適宜調整することができる。焼結雰囲気は、通常は還元性雰囲気(アンモニアガス等)とすれば良いが、必要に応じて真空中、不活性ガス雰囲気等としても良い。焼結雰囲気の調整によって特に焼結体の含有酸素量の制御を行うこともできる。
【0024】
【発明の効果】
本発明の過給機用焼結ステンレス鋼材料は、特定の合金組成から構成されていることから、耐熱性・耐摩耗性に加えて、溶接性にも優れており、過給機の構造材料として好適に用いることができる。
【0025】
本発明の過給機用材料は、過給機のいずれの部位にも使用できる。また、本発明材料が適用できる過給機の種類としては特に限定されず、スーパーチャジャー、ターボチャジャー等のいずれのタイプであっても良い。また、自動車過給機のほか、航空機、船舶等の過給機にも適用することができる。特に、本発明では、自動車過給機に適している。
【0026】
本発明材料を少なくとも一部に用いてなる過給機は、溶接性に優れていることから各部位との接合が強固であり、しかも耐熱性・耐摩耗性に優れているので従来品よりも優れた耐久性を発揮できる。
【0027】
【実施例】
以下、実施例及び比較例を示し、本発明の特徴とするところを明確にする。
【0028】
実施例1〜6及び比較例1〜6
表1に示す原料粉末を用い、それぞれが表2に示す配合割合となるように秤量し、均一に混合することによって各混合原料を調製した。最終的な合金組成を表3に示す。
【0029】
【表1】
Figure 0004385239
【0030】
【表2】
Figure 0004385239
【0031】
【表3】
Figure 0004385239
【0032】
次いで、各混合粉末を金型プレスによって成形圧6ton/cm2で成形し、成形体を作製した。この成形体を分解アンモニア雰囲気中1200℃で1時間焼結を行った
【0033】
試験例1
実施例及び比較例で得られた焼結体について常温及び高温(500℃)での引張試験、シャルピー衝撃試験、摩耗試験及び溶接性試験を実施した。その結果を表4に示す。なお、各試験における測定方法は下記の通りである。
(1)引張試験
JIS Z 2550(1989)「機械構造部品用焼結材料」に規定された引張試験方法に基づいて実施した。
(2)シャルピー衝撃試験
JIS Z 2550(1989)「機械構造部品用焼結材料」に規定された衝撃試験方法に基づいて実施した。
(3)摩耗試験
大越式迅速摩耗試験機を用い、荷重:61.7N、速度:10.4m/秒、摩擦距離:100m、相手材:SUS303の測定条件で行った。
(4)溶接性
相手材としてSUS303(溶製材)を用い、この相手材との溶接を電子ビームで行い、溶接部のクラックの発生の有無を肉眼で判定した。
【0034】
【表4】
Figure 0004385239
【0035】
表4の結果より、実施例の焼結体は、いずれも、常温での引張強さ:580MPa以上、常温での伸び:1%以上、500℃での引張強さ:460MPa以上、500℃での伸び:0.7%以上、シャルピー衝撃値:10J/cm2以上、摩耗幅:1.3mm以下であり、かつ、溶接性も良好であることから、溶接性に優れた過給機用焼結ステンレス鋼材料(溶接用焼結ステンレス鋼材料)として有用であることがわかる。
【0036】
試験例2
実施例1の焼結体について硬質粒子の存在を調べた。その結果を図1に示す。図1では、走査型電子顕微鏡による二次電子像(図1中「SEI」)(大きな2つの薄い色の部分)、組成像(図1中「BEI」)(大きな2つの白っぽい部分)、FeKα線によるイメージ像(図1中「FeKα」)(大きな2つの濃い色の部分)及びMoKα線によるイメージ像(図1中「MoKα」)(大きな2つの白っぽい部分)を示す。これらの結果からも明らかなように硬質粒子の存在が確認できる。特に、BEIの結果からも明らかなように、白っぽい部分がマトリックスを構成する金属元素よりも重い金属元素であることからFeMo粒子があることがわかる。また、この粒子はX線回折分析により、FeMoであることを同定した。同様に、マトリックスがマルテンサイトであることも確認した。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例1で得られた焼結体の構造を示すイメージ図である。

Claims (6)

  1. Cr:8〜28重量%、Mo、W及びTiの少なくとも1種:1〜10重量%、Si:0.2〜5重量%、C:0.05〜0.8重量%、O:0.35重量%以下であって、残部がFe及び不可避元素からなることを特徴とし、マトリックスがマルテンサイトであり、硬質粒子としてCrのフェロアロイ並びにMo、W及びTiの少なくとも1種のフェロアロイが存在する過給機用焼結ステンレス鋼材料。
  2. Cr:8〜28重量%、Mo、W及びTiの少なくとも1種:1〜10重量%、Cu:0.5〜5重量%、Si:0.2〜5重量%、C:0.05〜0.8重量%、O:0.35重量%以下であって、残部がFe及び不可避元素からなることを特徴とし、マトリックスがマルテンサイトであり、硬質粒子としてCrのフェロアロイ並びにMo、W及びTiの少なくとも1種のフェロアロイが存在する過給機用焼結ステンレス鋼材料。
  3. Cr、並びにMo、W及びTiの少なくとも1種の供給源を用い、各供給源の一部又は全部としてフェロアロイを用い、これらのフェロアロイを含む原料粉末を成形及び焼結することを特徴とする請求項1又は2に記載の過給機用焼結ステンレス鋼材料の製造方法。
  4. Crのフェロアロイとしてフェロクロムを用い、Mo、W及びTiの少なくとも1種のフェロアロイとしてフェロモリブデン、フェロタングステン及びフェロチタンの少なくとも1種を用いる請求項3記載の製造方法。
  5. 請求項1又は2に記載の材料を少なくとも一部に用いてなる過給機。
  6. 請求項1又は2に記載の材料を少なくとも一部に用いてなる自動車過給機。
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