JP4390961B2 - 表面特性及び耐食性に優れたフェライト系ステンレス鋼 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、フェライト系ステンレス鋼に関するものであって、フェライト系ステンレス鋼に特有な耐リジング特性等の耐表面特性が優れ、また耐食性が優れたフェライト系ステンレス鋼に関する。
【0002】
【従来の技術】
フェライト系ステンレス鋼は鋼は、オ−ステナイト系ステンレス鋼に比べてNi含有量が少なく低価格であるため、建材や厨房器具、また自動車の排気系部品等をはじめ広く使用されている。フェライト系ステンレス鋼を加工して製品を製造する場合、オーステナイト系ステンレス鋼では殆ど見られないリジングといわれる表面凹凸が発生することが知られている。このリジングは加工度に比例して大きくなるため、強加工したところでは著しく美観を損ねることになる。また、一旦成形後2次加工を受ける場合は、凹凸によって加工条件が局所的に変化して割れの原因となることもある。
従来から、リジング対策として熱延板焼鈍や熱延条件の適正化等が採られてきた。しかしこのような熱延工程の適正化だけでは、リジング特性は改善されるものの、ステンレス鋼の基本特性である耐食性に関しては改善効果は小さい。
【0003】
ステンレス鋼の基本特性である耐食性に関しては、従来から介在物に着目したり、また低S化等の対策により耐銹性を改善する試みがなされてきた。低S化では精錬コストの上昇など、安価なフェライト系ステンレス鋼のメリットを減少させるなど、実プロセスでは適用に限界がある。
また介在物組成に関しては、特開平10−237596号公報に示されるように、複合介在物の組成制御による耐食性改善が開示されている。しかしこの発明では、塩基度はCaO、CaF2 を用いて調整するとの通常範囲の技術的記述しかなく、具体的介在物制御方法は開示されておらず、耐食性に優れたフェライト系ステンレス鋼を得ることができない。
【0004】
上記のように、耐食性とリジング特性を同時に解決できるフェライト系ステンレス鋼や、その製造方法に関する技術は確立されていないのが実状である。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
従って本願発明の目的は、フェライト系ステンレス鋼のリジング等の表面特性を改善し、且つ耐食性も改善したフェライト系ステンレス鋼を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明者等は、従来プロセスの製造条件でも耐リジング性や加工性を改善できる方法を、鋼成分の影響の明確化を目的として検討した。その結果、Mg,Ca等の微量成分を規定することで耐リジング特性を改善しつつ、耐食性の低下を防止できることを見いだした。特にリジング特性を改善するには、Mgの適量添加による鋳片組織の微細等軸晶化を明確化した。
また、同時に精錬時に使用されるCaOや介在物性の特性改善に用いられるCaの影響について詳細に検討し、Mg,Caを同時に制御することにより、表面特性及び耐食性が優れたフェライト系ステンレス鋼が得られることを知見し、下記の本発明を完成した。
【0007】
本発明の要旨は以下の通りである。
(1)質量%で、
C :0.039〜0.1%、 Si:0.01〜1%、
Mn:0.01〜1%、 P :0.04%以下、
S :0.01%以下、 Cr:10〜25%、
Al:0.001〜0.2%、 N :0.0002〜0.05%、
O :0.01%以下、 Mg:0.0012〜0.006%、
Ca:0.0005%以下
を含有し、且つMg+10Ca≦0.006を満足し、残部がFeおよび不可避的不純物からなる表面特性及び耐食性に優れたフェライト系ステンレス鋼。
(2)更に質量%で、B:0.005%以下を含有することを特徴とする前記(1)記載の表面特性及び耐食性に優れたフェライト系ステンレス鋼。
(3)更に質量%で、
Ti:0.01〜2%、 Nb:0.01〜2%、
Zr:0.01〜2%、 W :0.01〜2%、
V :0.01〜2%
の1種以上を含有することを特徴とする前記(1)または(2)記載の表面特性及び耐食性に優れたフェライト系ステンレス鋼。
(4)更に質量%で、
Mo:0.01〜2%、 Sn:0.01〜0.5%、
Co:0.01〜2%、 Ni:0.01〜2%、
Cu:0.01〜3%
の1種以上を含有することを特徴とする前記(1)乃至(3)のいずれか1項に記載の表面特性及び耐食性に優れたフェライト系ステンレス鋼。
【0009】
【発明の実施の形態】
本発明によれば、フェライト系ステンレス鋼のリジング特性及び耐食性を改善できる。以下に本発明を詳細に説明する。
本発明者らは実験室で、17Crー0.05C−0.01N−0.005S−0.025Pを基本成分とするフェライト系ステンレス鋼の50kg鋼塊を溶製した。溶製に際してはMg,Ca等の微量元素と鋳片組織の関係を詳細に調査した。また、この鋼塊を実験室で熱延実験を行って3〜5mmの熱延板を製造し、酸洗後、1mmの厚みまで冷延し840℃にて焼鈍を行い、供試材とした。リジング特性は製品板の圧延方向からJIS5号試験試験片を採取し、16%引張試験後、圧延方向に対して直角方向に粗度計により凹凸を測定した。
また、耐食性はJIS G0577に準じて30℃の3.5%NaCl溶液中にて孔食電位を測定した。測定にあたっては、介在物の影響を明確にするため600番研磨仕上の研磨ままの状態で行いVc’10を孔食電位として評価した。
【0010】
その結果、Mg添加によるリジング特性改善はMg量が5ppm 以上で現れ、また耐食性の改善効果はCa量を5ppm 未満とし、且つMg+10Ca≦0.006%を満足することで現れることが判明した。リジング特性の改善は、溶鋼中に生成したMg系酸化物による異質核生成による等軸細粒化効果に起因した熱延集合組織改善によるもの、また耐食性改善はMg酸化物やMg系硫化物に加え、Ca酸化物及び硫化物の体積分率低減による発銹起点の減少に起因するものと考えられる。図1に孔食電位とMg+10Caの関係を示す。この図に示すごとく、Mg+10Caを0.006%以下とすることで耐食性の低下を防止できる。
【0011】
上記の関係について成分範囲を広げて検討した結果、本発明は下記の成分系で成り立つことが判明した。
すなわち、本願発明のフェライト系ステンレス鋼は、質量%で
C :0.039〜0.1%、 Si:0.01〜1%、
Mn:0.01〜1%、 P :0.04%以下、
S :0.01%以下、 Cr:10〜25%、
Al:0.001〜0.2%、 N :0.0002〜0.05%、
O :0.01%以下、 Mg:0.0012〜0.006%、
Ca:0.0005%以下
を含有し、且つ、Mg+10Ca≦0.006%を満足することを基本とし、さらに必要に応じ、下記成分を含有する。
B :0.005%以下、 Ti:0.01〜2%、
Nb:0.01〜2%、 Zr:0.01〜2%、
W :0.01〜2%、 V :0.01〜2%、
Mo:0.01〜2%、 Sn:0.01〜0.5%、
Co:0.01〜2%、 Ni:0.01〜2%、
Cu:0.01〜3%
の1種または2種以上。
【0012】
一方、上記フェライト系ステンレス鋼を製造するには、次の条件を採用する。
1300℃以下で加熱後熱間圧延を行い、酸洗、冷間圧延、焼鈍を行う。
前記熱間圧延において、粗圧延終了温度を1000℃以上とし、熱延後の巻取温度を750〜900℃とすること、或いは前記巻取温度を750℃未満にし、この熱延板に焼鈍を実施することである。
【0013】
以下に本発明における成分の限定理由を述べる。
C:Cは耐食性の点では有害であり、特に溶接部の耐食性に悪影響を与えるが、強度の観点からは0.039%以上必要である。0.1%を超えて添加すると耐食性や加工性が劣化するため、0.1%以下とする。
【0014】
Si:Siは脱酸剤として使用されるが、0.01%未満では十分な効果がなく、また1%を超えて添加すると脆化を著しく促進させ延性、靭性を劣化させるので、0.01〜1%添加する。
【0015】
Mn:Mnは脱酸元素として添加するが、0.01%未満では効果が十分でなく、1%を超えて添加してもその効果が飽和するため0.01〜1%添加する。
【0016】
P:Pは熱延時の再結晶を遅らせリジング特性を低下させたり、加工性を低下させるため、その含有量は少ないほど望ましく、0.04%以下とする。
【0017】
S:Sは硫化物として存在すると耐食性低下の原因となるため、本発明では0.01%以下とした。
【0018】
Cr:Crは本発明のフェライト系ステンレス鋼の主要元素であり、耐食性の観点から10%以上添加する必要がある。しかし25%を超えて添加しても、耐食性は向上するがコストアップや製造性の低下が大きく、また加工性や靭性が劣化するので、Crの上限は25%とした。
【0019】
Al:Alは脱酸元素やNの固定用に使用され、0.001%以上が必要であり、0.2%超では上記効果も飽和するため、0.001〜0.2%とする。
【0020】
N:NはCと同様に含有量が少ないほど耐食性、加工性が好ましいが、0.0002%未満にすることは工業的には困難であり、また0.05%を超えて添加すると加工性、靭性、耐食性が劣化するため、Nは0.0005〜0.05%の範囲とする。
【0021】
O:Oは酸化物を形成し、鋳造時のノズル詰まりやキズ発生の原因となったり、耐食性を低下させる原因となるため、本発明においては0.01%以下とした。
【0022】
Mg:Mgは鋳造時の異質核生成となる酸化物を形成し、鋳片組織の等軸晶化やリジング特性の改善に必須の成分であり、0.0012%以上添加する。但し、多量に添加すると発銹起点となる酸化物や硫化物の体積分率が高くなるため、上限を0.006%と、Caとの関係でMg+10Ca≦0.006%を満足することが必要である。
【0023】
Ca:Caは耐食性を確保する観点から本発明において制御する重要な成分であり、Caは0.0005%以下とし、Mgとの関係でMg+10Ca≦0.006%を満足することが重要である。
【0024】
B:Bは粒界に偏析しやすい元素であり、本発明のような加工性を改善するために必要に応じて添加し、特に2次加工割れに対しては有効である。また、一部部分変態するγ相の分散化にも効果があり、リジング特性の改善ができる。但し、0.005%を超えて添加しても、二次加工性やγ相の分散効果が飽和するので、0.005%以下で添加する。
【0025】
本発明では、耐食性改善の観点からTi,Nb,Zr,W,Vのいずれか1種以上を含有させることができる。
Ti:TiはC,N,P,Sを固定することで、耐食性の改善に有効な元素であり、必要に応じて選択元素として添加できる。0.01%未満ではその効果は十分ではなく、また2%を超えて添加してもその効果は飽和し、また靱性が低下し加工性を低下させるため、0.01〜2%で添加できる。
【0026】
Nb:NbはCやNを固定し、耐食性の点で好ましい元素であり、必要に応じて選択元素でとして添加できる。0.01%未満ではその効果は十分でなく、また2%を超えて添加してもその効果は飽和し、また高価となるため、0.01〜2%とした。
【0027】
Zr:ZrはC やNを固定するため、また、特に溶接部でのCr炭窒化物の析出を抑制して耐食性を向上させ、また排気材料として高温での強度を必要とする場合は必要に応じて添加できる。0.01%未満ではその効果は十分でなく、また2%を超えて添加してもその効果は飽和し、また高価となるため0.01〜2%とした。
【0028】
W:WはCを固定して耐食性を向上させ、また高温での強度を得るのに有効な元素であり、必要に応じて添加できる。0.01%未満ではその効果は十分でなく、また2%を超えて添加してもその効果は飽和し、また高価となるため0.01〜2%とした。
【0029】
V:VはCやNを固定するため、特に溶接部でのCr炭窒化物の析出を抑制して耐食性を向上させ、また高温強度を必要とする場合は必要に応じて添加できる。0.01%未満ではその効果は十分でなく、また2%を超えて添加してもその効果は飽和し、また高価となるため0.01〜2%とした。
【0030】
さらに本発明では必要に応じてMo,Sn,Co,Ni,Cuのいずれか1種以上を含有させることができる。
Mo:Moは耐食性の点で好ましい元素であり、必要に応じて選択元素として添加できる。0.01%未満ではその効果は十分でなく、また2%を超えて添加してもその効果は飽和し、また高価となるため0.01〜2%とした。
【0031】
Sn:Snは耐食性の点で好ましい元素であり、必要に応じて選択元素として添加できる。0.01%未満ではその効果は十分でなく、また0.5%を超えて添加してもその効果は飽和し、また靭性が低下するため、0.01〜0.5%とした。
【0032】
Co:Coは耐食性の点で好ましい元素であり、必要に応じて選択元素として添加できる。0.01%未満ではその効果は十分でなく、また2%を超えて添加してもその効果は飽和し、また高価となるため0.01〜2%とした。
【0033】
Ni:Niは耐食性の点で好ましい元素であり、必要に応じて選択元素として添加できる。0.01%未満ではその効果は十分でなく、また2%を超えて添加してもその効果は飽和し、また高価となるため0.01〜2%とした。
【0034】
Cu:Cuは耐食性の点で好ましい元素であり、必要に応じて選択元素として添加できる。0.01%未満ではその効果は十分でなく、また3%を超えて添加してもその効果は飽和し、また高価となるため0.01〜3%とした。
【0035】
本発明では、上記成分を満足することで通常プロセス条件で製造しても耐リジング特性ならびに耐食性を十分確保可能であるが、上記成分に加えて熱延条件を規制することで、特性の安定化や更なる特性向上が可能となる。
以下に、製造条件の限定理由を述べる。
【0036】
加熱温度を1300℃以下としたのは、1300℃を超えて加熱すると本発明の細粒化された鋳片を用いても、加熱時の粒成長によりリジング特性を改善できなくなるためであり、またスケールの発生が多量になり歩留まり低下を招くためであり、加熱温度としては1300℃以下とすることが必要である。
【0037】
また粗圧延終了温度を1000℃以上とし、熱延後の捲取温度を750℃以上900℃以下としたのは、上記条件で熱延を実施することにより熱延途中や捲取時の再結晶を促進することができ、リジング特性を更に改善することができるからであり、使用する部位や加工度によっては熱延板焼鈍を省略することも可能となり、低コスト化できる。
【0038】
また粗圧延終了温度を1000℃以上とし、熱延後の捲取温度を750℃未満とし、熱延板焼鈍を実施するとしたのは、熱延板焼鈍を実施する場合、粗圧延を1000℃以上で終了させることで熱延中の再結晶を促進させ、且つ捲取温度を750℃未満とすることで熱延板焼鈍時の再結晶を促進させることができ、リジング特性を著しく改善できるからである。
【0039】
【実施例】
次に、本発明の実施例を説明する。
表1に示す成分のフェライト系ステンレス鋼をラボの真空溶解にて溶製し、厚み100mmの50kg鋼塊を製造した。その後、表2に示す条件で加熱後、粗圧延を5パスで20mmまで実施し、仕上熱延を20mmから3mmまで6パスで実施し、そのまま熱延板を850〜550℃の炉に挿入し、1時間保定後炉冷して捲取をシミュレ−トした。表中の捲取温度はこのシミュレ−トの保定温度である。この後、熱延板焼鈍を実施あるいは省略した後に酸洗し、1mmの厚さまで冷延後、焼鈍を800〜840℃で実施し、リジング特性及び耐食性を評価した。
【0040】
リジング特性は製品板の圧延方向からJIS5号試験試験片を採取し、16%引張試験後、圧延方向に対して直角方向に粗度計により凹凸を測定した。凹凸高さが10μm以下を評点A、10超〜20μm以下をB、20超〜30μm以下をC、30μm超をDとした。実用上評点A,Bであれば問題ない。
耐食性はJIS G0577に準じて、30℃の3.5%NaCl溶液中にて孔食電位を測定した。測定にあたっては、介在物の影響を明確にするため600番研磨仕上の研磨ままの状態で行い、Vc+ 10を孔食電位として評価した。
【0041】
その結果、本発明条件を満たすA〜Mはリジング特性も評点AまたはBであり、且つ孔食電位も100mV以上と良好な特性を示した。これに対し、N鋼はMgによるリジング改善効果が見られず、またO、P、Q、R鋼は本発明条件よりもMgが多いかCaが多いため、耐食性確保のための条件であるMg+10Ca≦0.006を満たすことができず、耐食性が不良である。また加熱温度が1300℃を超えたS鋼は加熱組織が粗大化し、リジング特性が劣化した。
【0042】
【表1】
【0043】
【表2】
【0044】
【発明の効果】
上記のように、本発明はフェライト系ステンレス鋼の加工時の課題であるリジング特性を改善し、かつ耐食性も改善できるフェライト系ステンレス鋼を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】孔食電位とMg+10Caの関係を示す図。
Claims (4)
- 質量%で、
C :0.039〜0.1%、 Si:0.01〜1%、
Mn:0.01〜1%、 P :0.04%以下、
S :0.01%以下、 Cr:10〜25%、
Al:0.001〜0.2%、 N :0.0002〜0.05%、
O :0.01%以下、 Mg:0.0012〜0.006%、
Ca:0.0005%以下
を含有し、且つMg+10Ca≦0.006%を満足し、残部がFeおよび不可避的不純物からなる表面特性及び耐食性に優れたフェライト系ステンレス鋼。 - 更に質量%で、
B :0.005%以下
を含有することを特徴とする請求項1記載の表面特性及び耐食性に優れたフェライト系ステンレス鋼。 - 更に質量%で、
Ti:0.01〜2%、 Nb:0.01〜2%、
Zr:0.01〜2%、 W :0.01〜2%、
V :0.01〜2%
の1種以上を含有することを特徴とする請求項1または2記載の表面特性及び耐食性に優れたフェライト系ステンレス鋼。 - 更に質量%で、
Mo:0.01〜2%、 Sn:0.01〜0.5%、
Co:0.01〜2%、 Ni:0.01〜2%、
Cu:0.01〜3%、
の1種以上を含有することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の表面特性及び耐食性に優れたフェライト系ステンレス鋼。
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