JP4400526B2 - 内燃機関用制御装置 - Google Patents

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Description

本発明は、内燃機関用制御装置にかかり、特に多気筒内燃機関における気筒間の特性ばらつきに対応した適正なる制御を実施するための技術に関するものである。
内燃機関では所定の回転角度周期で燃焼が行われ、その燃焼に伴い出力軸に回転力が付与され、所望とする機関回転速度が実現されるようになっている。この場合、多気筒内燃機関では、機差や経時変化等を要因として気筒ごとに燃焼状態などが相違し、それにより排気エミッションやドライバビリティが悪化することが懸念される。
その対策として、例えば特許文献1では、回転速度信号を少なくとも2つのフィルタ手段によって異なる周波数でフィルタリングし、該フィルタリングした回転速度信号から少なくとも2つの周波数固有の安定動作実際値と、安定動作目標値と、固有周波数の制御偏差とを検出するようにしている。より具体的には、カム軸周波数とクランク軸周波数と1/2の点火周波数とを各々中心周波数とする帯域フィルタ(BPF)を用い、その各帯域フィルタに回転速度信号を入力する。そして、フィルタ出力に基づいて周波数固有の制御偏差を算出するとともに、それら周波数固有の制御偏差を加算して加算値を求め、その加算値に基づいて内燃機関の出力を制御するようにしている。そしてこれにより、各気筒を均等に制御することができるとしていた。
上記特許文献1の場合、仮に気筒間で回転変動のばらつきが生じると、その気筒間のばらつきが制御偏差として算出され、全気筒を相対的に見て回転速度が大きい傾向にあるか、小さい傾向にあるかなどが把握できる。そして、その気筒間ばらつきを無くし、全気筒についての均等化を図るように制御が実施される。例えば、気筒間ばらつきに応じて各気筒の燃料噴射量を増減させることによりそのばらつきを解消するようにしていた。
しかしながら、上記特許文献1の技術では、内燃機関の各気筒において理想値に対してどれだけの誤差が生じているかなどが不明である。すなわち、絶対的な特性のズレが把握できない。そのため、各気筒における燃焼の状態を最適に制御することができないという問題があった。例えば、全気筒が同じ傾向で理想状態から外れている場合最適な制御が実施できない。近年では、排気エミッションやドライバビリティの改善要求が益々強まる傾向にあり、その要求に応えるには制御の多様化を図ることのできる技術が望まれている。
特開平8−218924号公報
本発明は、内燃機関の各気筒の特性を適正に把握して制御に反映し、ひいては排気エミッションやドライバビリティの改善を図ることができる内燃機関用制御装置を提供することを主たる目的とするものである。
請求項1に記載の発明では、内燃機関のクランク軸の回転速度を逐次算出するとともに、フィルタ手段により、前記算出した回転速度を、内燃機関の燃焼周波数に基づき設定した単一の周波数にてフィルタ処理して瞬時トルク相当値を算出する。そして、フィルタ手段により算出した瞬時トルク相当値に基づいて内燃機関の各気筒の特性を制御する。ここで、燃焼周波数は単位角度ごとの燃焼頻度を表した角度周波数であり、内燃機関の気筒数に対応する燃焼角度周期の逆数により決定される。
内燃機関では、基本的に燃焼による回転上昇と負荷による回転降下とが繰り返されており、瞬時回転速度は回転角度に応じて変動する。このとき、内燃機関の各気筒では、気筒間の機差や経時変化等により燃焼状態等が変化し、それに起因して排気エミッションやドライバビリティの悪化が生じるおそれがあった。かかる場合において、都度の回転速度は瞬時発生トルクの反映であると考えられるため、回転速度に基づいて瞬時トルク相当値の算出が可能であり、その瞬時トルク相当値を気筒ごとにモニタすれば、気筒ごとの特性ばらつき(回転挙動の変化等)を把握することが可能となる。この点本発明では、フィルタ手段により、内燃機関の燃焼周波数に基づく周波数で回転速度のフィルタ処理がなされるため、回転速度から燃焼周波数の成分を抽出し、燃焼周期に対応するようにして瞬時トルク相当値を算出することができる。このとき、各気筒の燃焼周期ごとにトルクの収支が完結するようにして都度の瞬時トルク相当値を算出することが可能となる。そして、その瞬時トルク相当値に基づいて、燃料噴射量制御やトルク制御等を実施することにより、内燃機関における各気筒の特性を好適に制御することが可能となる。その結果、各気筒の特性を適正に把握して制御に反映し、ひいては排気エミッションやドライバビリティの改善を図ることができる。
また本発明では、単一のフィルタ手段によってフィルタ処理を実施して瞬時トルク相当値を算出するため、複数のフィルタ手段によってフィルタ処理を実施するとともに、各フィルタ手段による回転速度信号の比較により制御偏差を検出する従来技術(特開平8−218924号公報)とは異なり、気筒間の相対的な特性ばらつきだけでなく、各気筒の絶対的な特性ばらつき(理想値に対するズレ)が検出可能となる。故に、気筒別制御の多様化を図ることができ、排気エミッションやドライバビリティの改善にかかる種々の要求に好適に対処できるようになる。
このとき、前記フィルタ手段を規定する伝達関数の応答周波数ωとして燃焼周波数が用いられると良い。これにより、内燃機関の燃焼周波数に基づいたフィルタ処理が実現できる。なお、伝達関数を周期Tで表した場合、その周期Tは2π/ωである。
また、前記フィルタ手段として帯域フィルタ(BPF)が用いられると良い。つまり、回転速度情報には、加減速に伴う低周波の変動成分や、回転位置の誤差分、ノイズといった高周波の変動成分が含まれており、フィルタ手段として帯域フィルタを用いることにより、低周波及び高周波の変動成分を除去し、トルク変動成分のみ抽出することができる。これにより、瞬時トルク相当値を精度良く算出することができ、結果として各気筒の特性をより正確に把握することができるようになる。
内燃機関の運転時における都度のトルク値(瞬時トルク相当値)は概ね各気筒の行程や回転角度位置に対応して変動しており、その変動は、燃焼トルク、慣性トルク、負荷トルクが各気筒の行程や回転角度位置に応じて各々増減することに起因する。図10には、4気筒エンジンを例にして、回転速度、燃焼トルク、慣性トルク、負荷トルクの推移とそれらの対応関係を示す。
図10において、タイミングA1,A2,A3は、それぞれ任意の気筒で燃料の燃焼(爆発)により回転速度が降下から上昇に転ずるタイミングを示している。なお、A1−A2間、A2−A3間の角度がそれぞれ燃焼角度周期に相当する。(b)に示すように、燃焼トルクは燃焼開始に伴い上昇し、燃焼終了に伴い降下する。また、慣性トルクはフライホイールの回転慣性力に応じて変化し、(c)に示すように、概ね回転速度の上昇時(ピストンの下動時)にマイナス値となり、回転速度の降下時(ピストンの上動時)にプラス値となるよう変化する。(d)に示すように、負荷トルクは常時マイナスで比較的小さい幅で変化する。燃焼トルクと慣性トルクと負荷トルクとの総和(図10の(b)+(c)+(d))が瞬時トルク相当値である。
ここで、気筒ごとに特性のばらつきが存在しておらず特性の気筒間差がなければ、トルク変化の挙動は各気筒で同一となり、瞬時トルク相当値やその他トルク値(燃焼トルク、負荷トルク等)が各気筒で同一波形で推移するが、特性の気筒間差によりトルク変化の挙動が相違すると、瞬時トルク相当値等の波形が異なるものとなる。この場合、各気筒の同一の回転角度位置では、気筒ごとの特性に応じて瞬時トルク相当値が相違する。例えば、図10に示すように、各気筒の同一の回転角度位置「B」で瞬時トルク相当値を求めた場合、その時の瞬時トルク相当値(図のC1,C2)は各気筒の特性に相応したものとなる。また、それに付随して瞬時トルク相当値のピーク値やボトム値にも気筒間差が生じる。
そこで、気筒ごとに所定の回転角度位置での前記瞬時トルク相当値を求め、その瞬時トルク相当値に基づいて気筒ごとの特性を推定する。又は、気筒ごとに所定の回転角度位置での前記瞬時トルク相当値を求め、その瞬時トルク相当値を気筒間で比較することにより特性の気筒間差を推定する。なお、瞬時トルク相当値を求めるための回転角度位置は、同一である1つ又は複数の角度位置でも、ほぼ同一とみなせる近傍の角度位置でも良く、いずれにしても所定の角度位置で評価できるものであれば良い。
また、気筒ごとに前記瞬時トルク相当値のピーク値及びボトム値の少なくともいずれかを求め、該求めた値に基づいて気筒ごとの特性を推定する。又は、気筒ごとに前記瞬時トルク相当値のピーク値及びボトム値の少なくともいずれかを求め、該求めた値を気筒間で比較することにより特性の気筒間差を推定する。この場合、瞬時トルク相当値のピーク値だけで各気筒の特性(又は気筒間差)を評価する手法、同ボトム値だけで各気筒の特性(又は気筒間差)を評価する手法、同ピーク値とボトム値との差分により各気筒の特性(又は気筒間差)を評価する手法などが考えられる。
実際に燃焼が行われる燃焼状態では、上記のとおり燃焼トルクと慣性トルクと負荷トルクとの総和(図10の(b)+(c)+(d))が瞬時トルク相当値となるのに対し、燃焼が行われない燃焼休止状態(燃料カット状態など)では、慣性トルクと負荷トルクとの総和(図10の(c)+(d))が瞬時トルク相当値となる。つまり、燃焼状態と燃焼休止状態とでは、瞬時トルク相当値に燃焼トルク分の差異が生じる。故に、各気筒において燃焼状態で算出した瞬時トルク相当値と、燃焼休止状態で算出した瞬時トルク相当値との差分により、気筒ごとの燃焼トルクを算出すると良い。これにより、気筒ごとの燃焼トルクを正確に算出することができ、ひいては各気筒の燃料噴射量を気筒ごとに把握することができる。また、現実の燃焼トルクを本来理想とする値(目標値)に一致させるようにして気筒ごとに特性を制御することができる。
例えば、各気筒における燃焼期間内で所定の角度位置を定めておき、その角度位置において燃焼状態での瞬時トルク相当値と燃焼休止状態での瞬時トルク相当値とをそれぞれ算出する。そして、それら瞬時トルク相当値の差分により気筒ごとの燃焼トルクを算出すると良い。なお、上記のように算出した燃焼トルクを気筒間で比較することにより、燃焼トルクの気筒間差を算出することも可能である。
一方、燃焼角度周期に対応する区間内において瞬時トルク相当値を積分演算することにより、気筒ごとの仕事量の収支を求めることが可能となる。また、燃焼(爆発)に伴い回転上昇する区間や、その後クランク軸等に作用する負荷により回転降下する区間等において瞬時トルク相当値を積分演算することにより、燃焼、慣性力、負荷等によるそれぞれの仕事量を求めることが可能となる。
そこで、瞬時トルク相当値を気筒ごとに一定区間積分して気筒ごとの燃焼、慣性力、負荷等による仕事量又はその総和の少なくともいずれかを算出すると良い。こうして気筒ごとの燃焼、慣性力、負荷等による仕事量や、その総和が算出できれば、各気筒の燃料噴射量や負荷によるトルク損失量などを気筒ごとに把握することができる。また、燃焼等による仕事量を本来理想とする値(目標値)に一致させるようにして気筒ごとに特性を制御することができる。
想定される処理として、図10の(e)に示す斜線部分D1が燃焼による仕事量に相当するとし、該D1部分に対応する区間での瞬時トルク相当値の積分演算により燃焼による仕事量を算出すると良い。また、同図10の(e)に示す斜線部分D2が負荷による仕事量に相当するとし、該D2部分に対応する区間での瞬時トルク相当値の積分演算により負荷による仕事量を算出すると良い。
また、瞬時トルク相当値を気筒ごとに一定区間積分するとともに、その積分値を気筒間で比較することにより燃焼、慣性力、負荷等による仕事量又はその総和の気筒間差(気筒間ばらつき)を算出すると良い。これにより、各気筒の特性を相対的に把握することができ、気筒間差を無くして各気筒を均一に制御することなどが可能となる。
また、瞬時トルク相当値を気筒ごとに一定区間積分して気筒ごとの燃焼、慣性力、負荷等による仕事量又はその総和の少なくともいずれかを燃焼状態パラメータとして算出するとともに、気筒ごとに算出した燃焼状態パラメータの全気筒の平均値を算出し、さらに燃焼状態パラメータの全気筒の平均値と気筒ごとの燃焼状態パラメータとの差分により気筒間差を算出すると良い。これにより、各気筒の特性を相対的に把握することができ、気筒間差を無くして各気筒を均一に制御することなどが可能となる。
上述したとおり内燃機関の燃焼状態と燃焼休止状態とでは、瞬時トルク相当値に燃焼トルク分の差異が生じる。そこで、燃焼状態及び燃焼休止状態において都度の瞬時トルク相当値を気筒ごとに一定区間積分して気筒ごとの仕事量を算出し、燃焼状態での仕事量と燃焼休止状態での仕事量との差分により、気筒ごとの燃焼による仕事量を算出すると良い。これにより、気筒ごとの燃焼による仕事量を正確に算出することができる。
時トルク相当値を気筒ごとに一定区間積分して算出した燃焼、慣性力、負荷等による仕事量若しくはその総和、又はそれらの気筒間差を、学習値として記憶保持する。つまり、各気筒の特性ばらつきは機差や経時変化を要因とし、その影響は定常的に現れる。そのため、各気筒の特性ばらつきを表す気筒ごとの燃焼、慣性力、負荷等による仕事量又はその総和や、それらの気筒間差を学習値として記憶保持することで、定常的な特性ばらつきを好適に制御に反映することができるようになる。
ここで、各気筒の特性ばらつきに起因して燃料噴射手段による噴射開始時期、着火時期、噴射終了時期が変動すると、それに応じて各気筒における回転速度の挙動が変化し、ひいては瞬時トルク相当値の挙動も変化する。逆に言えば、瞬時トルク相当値の挙動により、噴射開始時期、着火時期、噴射終了時期を推定することが可能となる。ゆえに、気筒ごとの瞬時トルク相当値の上昇に際し、瞬時トルク相当値とあらかじめ定めた判定しきい値との比較により燃料噴射手段による噴射開始時期又は着火時期を推定すると良い。又は、気筒ごとの瞬時トルク相当値の降下に際し、瞬時トルク相当値とあらかじめ定めた判定しきい値との比較により燃料噴射手段による噴射終了時期を推定すると良い。
また、気筒ごとの瞬時トルク相当値の上昇に際し、瞬時トルク相当値とあらかじめ定めた判定しきい値との比較により燃料噴射手段による噴射開始時期又は着火時期を推定するとともに、各気筒の噴射開始時期又は着火時期の比較によりその気筒間差を算出すると良い。
さらに、気筒ごとの瞬時トルク相当値の降下に際し、瞬時トルク相当値とあらかじめ定めた判定しきい値との比較により燃料噴射手段による噴射終了時期を推定するとともに、各気筒の噴射終了時期の比較によりその気筒間差を算出すると良い。
以下、本発明を具体化した一実施の形態を図面に従って説明する。本実施の形態は、車両ディーゼルエンジンのコモンレール式燃料噴射システムとして本発明を具体化しており、その詳細な構成を以下に説明する。
図1は、コモンレール式燃料噴射システムの概要を示す構成図である。図1において、多気筒ディーゼルエンジン(以下、エンジンという)10には気筒毎に電磁式インジェクタ11が配設され、これらインジェクタ11は各気筒共通のコモンレール(蓄圧配管)12に接続されている。コモンレール12には燃料供給ポンプとしての高圧ポンプ13が接続され、高圧ポンプ13の駆動に伴い噴射圧相当の高圧燃料がコモンレール12に連続的に蓄圧される。高圧ポンプ13は、エンジン10の回転に伴い駆動され、エンジン回転に同期して燃料の吸入及び吐出が繰り返し行われる。高圧ポンプ13には、その燃料吸入部に電磁駆動式の吸入調量弁(SCV)13aが設けられており、フィードポンプ14によって燃料タンク15から汲み上げられた低圧燃料は吸入調量弁13aを介して当該ポンプ13の燃料室に吸入される。
コモンレール12にはコモンレール圧センサ16が設けられており、このコモンレール圧センサ16によりコモンレール12内の燃料圧(コモンレール圧)が検出される。図示は省略するが、コモンレール12には電磁駆動式(又は機械式)の減圧弁が設けられており、コモンレール圧が過剰に上昇した場合にはこの減圧弁が開放されて減圧が行われるようになっている。
また、エンジン10のクランク軸17付近には、該クランク軸17の回転速度を検出するための回転速度センサ18が設けられている。回転速度センサ18は、例えば、クランク軸17に一体に設けられたタイミングロータの歯の通過を検出する電磁ピックアップ式センサであり、該センサ18の検出信号を波形整形することによりパルス状の回転速度信号(NEパルス)が生成されるようになっている。本実施の形態では、NEパルスの角度間隔(パルス立ち上がりエッジ間の角度)が30°CAであり、30°CA周期で回転速度の検出が可能となっている。
ECU20は、CPU、ROM、RAM、EEPROM等からなる周知のマイクロコンピュータを備えた電子制御ユニットであり、ECU20には、コモンレール圧センサ16や回転速度センサ18の検出信号の他、アクセル開度センサや車速センサなどの各種センサから検出信号が逐次入力される。そして、ECU20は、エンジン回転速度やアクセル開度等のエンジン運転情報に基づいて最適な燃料噴射量及び噴射時期を決定し、それに応じた噴射制御信号をインジェクタ11に出力する。これにより、各気筒においてインジェクタ11から燃焼室への燃料噴射が制御される。
ところで、エンジン10では、都度の運転状態等に則して所望のエンジン回転速度が実現されるが、同回転速度を細かく見ると、燃焼サイクル内の各行程に応じて回転上昇と回転降下とが繰り返される。すなわち図2の(a)に示すように、4気筒エンジンの場合、各気筒の燃焼順序は第1気筒(#1)→第3気筒(#3)→第4気筒(#4)→第2気筒(#2)であり、180°CAごとに燃料噴射が行われてその燃料が燃焼に供される。このとき、1気筒ずつの燃焼周期(180°CA周期)で見ると、燃焼に伴いクランク軸に回転力が付与されてエンジン回転速度が上昇するとともに、その後クランク軸等に作用する負荷によりエンジン回転速度が降下する。かかる場合、回転速度の挙動に応じて気筒ごとの仕事量が推定できると考えられる。
ここで、各気筒の燃焼周期の終了時においてその時の回転速度から当該気筒の仕事量を算出することが考えられる。例えば、図2の(b)に示すように、第1気筒の燃焼周期の終了時であるタイミングt1で当該第1気筒の仕事量を算出し、次の第3気筒の燃焼周期の終了時であるタイミングt2で当該第3気筒の仕事量を算出する。ところがこの場合、回転速度センサ18の検出信号(NEパルス)により算出される回転速度にはノイズや検出誤差による要因が含まれており、図2の(b)に示すように、実際の回転速度(図の点線)に対して回転速度の検出値(図の実線)がばらつく。そのため、タイミングt1,t2等では、正確な仕事量が算出できないという問題が生じる。
そこで本実施の形態では、図3に示すように、回転速度Neを入力信号として一定の角度周期でフィルタ手段M1に取り込むとともに、そのフィルタ手段M1において各時点の回転変動成分のみを抽出して瞬時トルク相当値Nefltを算出する。このとき、回転速度Neは、NEパルスの出力周期(本実施の形態では30°CA)でサンプリングされる。フィルタ手段M1は例えばBPF(帯域フィルタ)にて構成され、BPFにより回転速度信号に含まれる高周波成分と低周波成分とが除去される。このフィルタ手段M1の出力である瞬時トルク相当値Neflt(i)は、例えば以下の式(1)により表される。
Figure 0004400526
式(1)において、Ne(i)は回転速度の今回サンプリング値、Ne(i−2)は回転速度の2回前サンプリング値、Neflt(i−1)は瞬時トルク相当値の前回値、Neflt(i−2)は瞬時トルク相当値の前々回値である。k1〜k4は定数である。上記の式(1)により、回転速度信号がフィルタ手段M1に入力される都度、瞬時トルク相当値Neflt(i)が算出される。
上記式(1)は、次の式(2)に表す伝達関数G(s)を離散化したものである。なお、ζは減衰係数、ωは応答周波数である。
Figure 0004400526
本実施の形態では特に、応答周波数ωをエンジン10の燃焼周波数としており、上記の式(1)ではω=燃焼周波数としたことに基づいて定数k1〜k4が設定されている。燃焼周波数は単位角度ごとの燃焼頻度を表した角度周波数であり、4気筒エンジンの場合には燃焼周期(燃焼角度周期)が180°CAであり、その燃焼周期の逆数により燃焼周波数が決定される。
また、図3の積分手段M2では、瞬時トルク相当値Nefltを取り込み、その瞬時トルク相当値Nefltを各気筒の燃焼周期ごとに一定区間積分することにより、各気筒のトルク積算値である気筒別仕事量Sneflt#1〜Sneflt#4を算出する。このとき、30°CA周期で出力されるNEパルスにはそれぞれ0〜23のNEパルス番号が付されており、各気筒の燃焼順序でいうと、第1気筒の燃焼周期にはNEパルス番号=0〜5が割り当てられ、第3気筒の燃焼周期にはパルス番号=6〜11が割り当てられ、第4気筒の燃焼周期にはNEパルス番号=12〜17が割り当てられ、第2気筒の燃焼周期にはNEパルス番号=18〜23が割り当てられている。そして、次の式(3)により、第1〜第4の気筒ごとに気筒別仕事量Sneflt#1〜Sneflt#4を算出する。
Figure 0004400526
なお以下の記載では、気筒番号を#iと表し、気筒別仕事量Sneflt#1〜Sneflt#4を気筒別仕事量Sneflt#iとも表記する。
図4は、回転速度Ne、瞬時トルク相当値Neflt及び気筒別仕事量Sneflt#iの推移を示すタイムチャートである。図4において、瞬時トルク相当値Nefltは基準レベルRefに対して上下に振幅し、その瞬時トルク相当値Nefltを気筒ごとの燃焼周期内で積分することにより気筒別仕事量Sneflt#iが算出される。またこのとき、基準レベルRefよりも正側の瞬時トルク相当値Nefltの積分値が燃焼トルクに相当し、基準レベルRefよりも負側の瞬時トルク相当値Nefltの積分値が負荷トルクに相当する。なお、基準レベルRefは、各気筒を通じての平均回転速度に応じて決定されるようになっている。
この場合、各気筒の燃焼周期では本来燃焼トルクと負荷トルクとの収支が0になり、気筒別仕事量Sneflt#iが0(燃焼トルク−負荷トルク=0)となるが、気筒ごとの機差や経時変化等により各気筒でインジェクタ11による噴射特性やフリクション特性などが相違すると、気筒別仕事量Sneflt#iのばらつきが生じる。例えば、図示のように第1気筒ではSneflt#1>0となり、第2気筒ではSneflt#2<0となるなどのばらつきが生じる。
上記のように気筒別仕事量Sneflt#iを算出することにより、各気筒でそれぞれ理想値に対してどれほどの差異が生じているかや、気筒間でどれほどのばらつきが生じているかなどを把握することができる。
次に、ECU20により実施される各種演算処理について説明する。この演算処理には上記のフィルタ手段M1や積分手段M2等が含まれる。図5は、気筒別学習値の算出処理を示すフローチャートであり、本処理はNEパルスの立ち上がり時にECU20により実行される。
図5において、まずステップS101では、今回のNE割込みの時刻と前回のNE割込みの時刻とからNEパルスの時間間隔を算出するとともに、その時間間隔の逆数演算により今現在の回転速度Ne(瞬時回転速度)を算出する。続くステップS102では、上記式(1)を用い、瞬時トルク相当値Neflt(i)を算出する。
続くステップS103では、今回のNEパルス番号を判定する。そして、ステップS104〜S107では、上記の式(3)を用い、第1〜第4の気筒ごとに気筒別仕事量Sneflt#iを算出する。すなわち、
・NEパルス番号=0〜5であれば、第1気筒の気筒別仕事量Sneflt#1を算出し(ステップS104)、
・NEパルス番号=6〜11であれば、第3気筒の気筒別仕事量Sneflt#3を算出し(ステップS105)、
・NEパルス番号=12〜17であれば、第4気筒の気筒別仕事量Sneflt#4を算出し(ステップS106)、
・NEパルス番号=18〜23であれば、第2気筒の気筒別仕事量Sneflt#2を算出する(ステップS107)。
その後、ステップS108では、気筒別仕事量の学習条件が成立しているか否かを判定する。この学習条件には、全気筒で気筒別仕事量の算出が完了していること、車両の動力伝達装置(ドライブトレイン)があらかじめ定めた規定状態にあること、環境条件があらかじめ定めた規定状態にあることなどが含まれており、それら全てが成立している場合に学習条件が成立している旨判定される。なお例えば、動力伝達装置においては動力伝達系のクラッチ装置が半クラッチ状態でないことが判定される。環境条件として具体的には、エンジン水温が所定の暖機完了温度以上であることが判定される。
学習条件が成立していなければそのまま本処理を終了する。また、学習条件が成立していれば、ステップS109に進む。ステップS109では、積分回数nitgrを1インクリメントするとともに、次の式(4)を用いて気筒ごとの仕事量学習値Qlp#iを算出する。また、各気筒の気筒別仕事量Sneflt#iを0にクリアする。
Figure 0004400526
その後、ステップS110では、積分回数nitgrが所定回数kitgrに達したか否かを判定する。所定回数kitgrは、適合値としてあらかじめ定められている。そして、nitgr≧kitgrであることを条件にステップS111に進む。ステップS111では、次の式(5)を用いて気筒ごとの仕事量最終学習値Qlrn#iを算出する。また、仕事量学習値Qlp#iを0にクリアするとともに、積分回数nitgrを0にクリアする。
Figure 0004400526
式(5)によれば、所定の積分回数ごとに仕事量学習値Qlp#iが平均化され、その平均化した学習値により仕事量最終学習値Qlrn#iが更新される。このとき、仕事量学習値Qlp#iの平均化により、仕事量学習値Qlp#iの毎回の誤差分が吸収されるようになっている。
最後に、ステップS112では、次の式(6)を用いて気筒間差学習値ΔQlrn#iを算出する。
Figure 0004400526
式(6)によれば、全気筒の仕事量最終学習値Qlrn#iの平均値(ΣQlrn#i/4)に対する気筒ごとの仕事量最終学習値Qlrn#iのばらつきが算出される。
なお、仕事量最終学習値Qlrn#iと気筒間差学習値ΔQlrn#iとは、EEPROMやスタンバイRAM等のバックアップ用メモリに適時書き込まれる。そして、各学習値が更新された場合にはその都度上書きが行われる。このとき、燃料噴射量と回転速度(又はコモンレール圧)とをパラメータとして複数の運転領域が区画設定されており、その運転領域ごとに仕事量最終学習値Qlrn#iや気筒間差学習値ΔQlrn#iが格納されるようになっている。
次に、燃料噴射制御について図6のフローチャートを用いて説明する。図6に示す燃料噴射制御処理は、ECU20によって所定の制御周期にて繰り返し実行される。
図6において、ステップS201では、エンジン回転速度(平均回転速度)やアクセル開度といったエンジン運転状態を表すパラメータを読み込み、続くステップS202では、エンジン回転速度やアクセル開度に基づいて基本噴射量を算出する。なお、基本噴射量に対しては、エンジン水温に基づく水温補正やコモンレール圧に基づく燃圧補正が適宜実施されても良い。
次に、ステップS203では、今回の燃焼気筒に対応する学習値(仕事量最終学習値Qlrn#i、又は気筒間差学習値ΔQlrn#i)を読み出し、続くステップS204では、前記読み出した学習値により前記基本噴射量を補正して指令噴射量(目標噴射量)を算出する。
このとき、噴射量の補正形態としては、(1)各気筒における絶対的な特性誤差を解消するようにして補正を行う場合と、(2)気筒間の特性ばらつきを解消するようにして補正を行う場合とが考えられる。(1)各気筒における絶対的な特性誤差を解消するようにして補正を行う場合には、気筒ごとに、あらかじめ定めた目標仕事量と仕事量最終学習値Qlrn#iとの偏差を算出するとともに、該偏差に基づく噴射補正量を算出する。そして、該噴射補正量により基本噴射量を補正して指令噴射量を算出する。また、(2)気筒間の特性ばらつきを解消するようにして補正を行う場合には、気筒間差学習値ΔQlrn#iに基づいて気筒ごとに噴射補正量を算出し、その噴射補正量により基本噴射量を補正して指令噴射量を算出する。
最後に、ステップS205では、エンジン回転速度と指令噴射量とに基づいて指令噴射期間を算出する。こうして指令噴射期間が算出されると、その指令噴射期間に応じて指令噴射開始時刻と指令噴射終了時刻とが決定され、それら各指令時刻に基づいてインジェクタ11の駆動が制御される。
また、NEパルスごとの瞬時トルク相当値Nefltに基づいて、インジェクタ11による噴射開始時期、燃料の着火時期及びインジェクタ11による噴射終了時期や、それら各時期のズレ(ばらつき)を推定することが可能であり、その推定手法を以下に説明する。
図7は、ある気筒の燃焼に伴う瞬時トルク相当値Nefltの推移を示すタイムチャートである。図7において、タイミングt11,t12,t13,t14はそれぞれNEパルスの出力タイミングであり、それら各タイミングでは瞬時トルク相当値Nefltが算出されている。このうちタイミングt11,t12は、回転上昇途中のパルス出力タイミングであり、例えば、第1気筒について言えば、タイミングt11がパルス番号=23のパルス出力タイミングであり、タイミングt12がパルス番号=0のパルス出力タイミングである。また、タイミングt13,t14は、回転降下途中のパルス出力タイミングであり、同じく第1気筒について言えば、タイミングt13がパルス番号=5のパルス出力タイミングであり、タイミングt14がパルス番号=6のパルス出力タイミングである。
さて、回転上昇に伴い瞬時トルク相当値Nefltが増加する場合において、噴射開始付近のタイミングt11(図のA点)の時刻をTa、瞬時トルク相当値NefltをYaとし、タイミングt12(図のB点)の時刻をTb、瞬時トルク相当値NefltをYbとする。また、噴射開始時期又は着火時期を判定するための瞬時トルク相当値Nefltのしきい値をYcとする。このとき、瞬時トルク相当値NefltがYcとなるC点の通過時刻Tcは、
Tc=(Tb−Ta)*(Yc−Ya)/(Yb−Ya)+Ta …(7)
として算出される。
また、噴射開始時期又は着火時期の基準となる時刻Tc0をあらかじめ定めておき、時刻Tcと基準時刻Tc0とを比較することにより、噴射開始時期又は着火時期のズレ時間ΔTcが算出される。
ΔTc=K1*(Tc−Tc0) …(8)
なお、噴射開始時期と着火時期とは、実際には前後に異なるタイミングであるが、それら各時期の時間差をあらかじめ定めておくことにより、噴射開始時期と着火時期とを各々算出することが可能となる。
噴射開始時期又は着火時期の気筒間差を算出する場合には、噴射開始時期又は着火時期の算出値を気筒ごとに適宜比較すればよい。このとき、全気筒の噴射開始時期又は着火時期を算出するとともにその平均値を算出し、さらに気筒ごとに平均値からの差分を求めることにより、各気筒の噴射開始時期又は着火時期のばらつき(気筒間差)を算出することも可能である。
また、回転降下に伴い瞬時トルク相当値Nefltが減少する場合において、噴射終了付近のタイミングt13(図のD点)の時刻をTd、瞬時トルク相当値NefltをYdとし、タイミングt14(図のE点)の時刻をTe、瞬時トルク相当値NefltをYeとする。また、噴射終了時期を判定するための瞬時トルク相当値Nefltのしきい値をYfとする。このとき、瞬時トルク相当値NefltがYfとなるF点の通過時刻Tfは、
Tf=(Te−Td)*(Yf−Yd)/(Ye−Yd)+Td …(9)
として算出される。
また、噴射終了時期の基準となる時刻Tf0をあらかじめ定めておき、時刻Tfと基準時刻Tf0とを比較することにより、噴射終了時期のズレ時間ΔTfが算出される。
ΔTf=K2*(Tf−Tf0) …(10)
噴射終了時期の気筒間差を算出する場合には、噴射終了時期の算出値を気筒ごとに適宜比較すればよい。このとき、全気筒の噴射終了時期を算出するとともにその平均値を算出し、さらに気筒ごとに平均値からの差分を求めることにより、各気筒の噴射終了時期のばらつき(気筒間差)を算出することも可能である。
図8は、噴射開始時期の推定処理を示すフローチャートであり、本処理は、NEパルスの立ち上がりに同期したタイミングでECU20により実行される。
図8において、ステップS301では、今回のNEパルス番号が所定のパルス番号n(例えば、第1気筒ではn=23)であるか否かを判定する。NEパルス番号=nの場合、ステップS302で今現在の時刻(現時刻)をTaとして記憶するとともに、続くステップS303で今回の瞬時トルク相当値NefltをYaとして記憶する。
一方、ステップS304では、今回のNEパルス番号がn+1(第1気筒ではn=0)であるか否かを判定する。NEパルス番号=n+1の場合、ステップS305で今現在の時刻(現時刻)をTbとして記憶するとともに、続くステップS306で今回の瞬時トルク相当値NefltをYbとして記憶する。
その後、ステップS307では、上記の式(7)を用い、瞬時トルク相当値Nefltがしきい値Ycとなる時刻(図7のC点の通過時刻Tc)を算出するとともに、その通過時刻Tcにより噴射開始時期を推定する。最後にステップS308では、上記の式(8)を用い、噴射開始時期のズレ(理想時期からのズレ時間)を推定する。
上記のとおり気筒ごとに噴射開始時期や時期ズレが推定されると、その推定値によりインジェクタの指令噴射期間の補正が行われる。
なお、着火時期や噴射終了時期の推定処理については便宜上図示による説明を省略するが、これは前記図8に準じた処理であればよく、上記の式(7)〜式(10)にかかる各パラメータを取得して着火時期や噴射終了時期等を推定すれば良い。
以上詳述した本実施の形態によれば、以下の優れた効果が得られる。
都度の回転速度Neに対してエンジン10の燃焼周波数でフィルタ演算を実施して瞬時トルク相当値Nefltを算出したため、各気筒での燃料噴射状態や燃焼状態等を反映して適正に瞬時トルク相当値Nefltを求めることができる。また、瞬時トルク相当値Nefltを気筒ごとに一定区間積分して気筒別仕事量Sneflt#iを算出するとともに、その気筒別仕事量Sneflt#iに基づいて(実際には仕事量最終学習値Qlrn#iや気筒間差学習値ΔQlrn#iに基づいて)燃料噴射量を気筒ごとに制御するようにしたため、各気筒の特性を望みとおりに制御することができるようになる。以上により、排気エミッションやドライバビリティの改善を図ることができる。
この場合、気筒間の相対的な特性ばらつきだけでなく、各気筒の絶対的な特性ばらつきが検出可能となり、気筒別制御の多様化を図ることもできる。故に、排気エミッションやドライバビリティの改善にかかる種々の要求に好適に対処できるようになる。
フィルタ手段として帯域フィルタ(BPF)を用いたため、加減速に伴う低周波の変動成分やノイズ等の高周波の変動成分を回転速度信号から除去し、トルク変動成分のみ抽出することができる。これにより、瞬時トルク相当値Nefltを精度良く算出することができ、結果として気筒間の特性ばらつきを適正に解消することなどが実現できる。
気筒別仕事量Sneflt#iに基づいて仕事量最終学習値Qlrn#iや気筒間差学習値ΔQlrn#iを算出し、その各学習値をバックアップ用メモリにて記憶保持するようにしたため、機差や経時変化といった定常的な要因による特性ばらつきを好適に制御に反映することができるようになる。
気筒ごとの瞬時トルク相当値Nefltに基づいて噴射開始時期、着火時期又は噴射終了時期を推定するようにしたため、気筒ごとの噴射開始時期、着火時期又は噴射終了時期のばらつきを好適に解消できるようになる。
なお、本発明は上記実施の形態の記載内容に限定されず、例えば次のように実施しても良い。
上記実施の形態では、各気筒の特性を補正する手段として、気筒ごとの学習値(仕事量最終学習値Qlrn#i、又は気筒間差学習値ΔQlrn#i)により基本噴射量を補正して指令噴射量(目標噴射量)を算出するように構成したが(図6のフロー参照)、これを変更しても良い。例えば、気筒ごとの学習値(仕事量最終学習値Qlrn#i、又は気筒間差学習値ΔQlrn#i)により指令噴射期間(指令噴射開始時期、又は指令噴射終了時期)を補正する構成としても良い。
上記実施の形態では、瞬時トルク相当値Nefltを各気筒の燃焼周期内で積分して気筒別仕事量Sneflt#iを算出する構成としたが、これを変更する。つまり、気筒別仕事量Sneflt#iは、各気筒の燃焼周期内における燃焼よる仕事量や負荷による仕事量の総和(仕事量の収支を表すもの)であるが、その仕事量の総和でなく、燃焼よる仕事量や負荷による仕事量をそれぞれ算出する。具体的には、回転上昇区間に相当する所定区間で瞬時トルク相当値Nefltを気筒ごとに積分して燃焼による仕事量(気筒別燃焼仕事量)を算出する。又は、回転降下区間に相当する所定区間で瞬時トルク相当値Nefltを気筒ごとに積分して負荷による仕事量(気筒別負荷仕事量)を算出する。そして、これら気筒別負荷仕事量や気筒別負荷仕事量に基づいて気筒ごとに燃料噴射量等を制御すると良い。
燃焼状態で算出した気筒別仕事量Sneflt#iと、燃焼休止状態で算出した気筒別仕事量Sneflt#iとの差分により、気筒ごとの燃焼による仕事量(気筒別燃焼仕事量)を算出するようにしても良い。燃焼休止状態は、インジェクタによる燃料噴射を行わない燃料カット状態であり、かかる場合には、気筒別仕事量Sneflt#iに燃焼トルク分の仕事量が含まれない。故に、気筒別燃焼仕事量を正確に算出することができる。具体的には、図9に示すフローチャートに基づき、ECU20により気筒別燃焼仕事量の算出処理が実行される。
図9において、ステップS401では、今現在、燃料カット中(F/C中)であるか否かを判定する。そして、燃料カット中でなければ、ステップS402で燃焼時の気筒別仕事量Sneflt#iを算出し、燃料カット中であれば、ステップS403で燃料カット時の気筒別仕事量Sneflt#iを算出する。また、ステップS404では、燃焼状態及び燃料カット状態(燃焼休止状態)における気筒別仕事量Sneflt#iの算出が完了しているか否かを判定し、YESであることを条件にステップS405に進む。ステップS405では、燃焼時の気筒別仕事量Sneflt#iから燃料カット時の気筒別仕事量Sneflt#iを減算して気筒別燃焼仕事量を算出する。
また、燃焼状態で算出した瞬時トルク相当値Nefltと、燃焼休止状態で算出した瞬時トルク相当値Nefltとの差分により、気筒ごとの燃焼トルクを算出するようにしても良い。この場合具体的には、各気筒の燃焼期間内で所定の角度位置を定めておき、その角度位置において燃焼状態での瞬時トルク相当値Nefltと燃焼休止状態での瞬時トルク相当値Nefltとをそれぞれ算出する。そして、それらの差分により気筒ごとの燃焼トルクを算出する。なお、上記のように算出した燃焼トルクを気筒間で比較することにより、燃焼トルクの気筒間差を算出することも可能である。
また、気筒ごとに同一の回転角度位置での瞬時トルク相当値Nefltを求め、その瞬時トルク相当値Nefltに基づいて気筒ごとの特性を推定するようにしても良い。又は、その瞬時トルク相当値Nefltを気筒間で比較することにより特性の気筒間差を推定すると良い。上記のようにNEパルスごとにパルス番号を付した構成では、同一のNEパルス番号にて瞬時トルク相当値Nefltを求めれば良い。なおここで、瞬時トルク相当値Nefltを求めるための回転角度位置は、同一である1つの角度位置とする他に複数の角度位置としても良い。又は、ほぼ同一とみなせる近傍の角度位置でも良く、いずれにしても所定の角度位置で評価できるものであれば良い。
また、気筒ごとに瞬時トルク相当値Nefltのピーク値及びボトム値の少なくともいずれかを求め、該求めた値に基づいて気筒ごとの特性を推定すると良い。又は、瞬時トルク相当値Nefltのピーク値及びボトム値の少なくともいずれかを気筒間で比較することにより特性の気筒間差を推定すると良い。この場合、瞬時トルク相当値Nefltのピーク値だけで各気筒の特性(又は気筒間差)を評価する手法、同ボトム値だけで各気筒の特性(又は気筒間差)を評価する手法、同ピーク値とボトム値との差分により各気筒の特性(又は気筒間差)を評価する手法などが考えられる。
上記実施の形態では、フィルタ手段として帯域フィルタ(BPF)を用いたが、他のフィルタ手段に変更することも可能である。例えば、LPFやHPFを用いても良い。このとき、LPFやHPFを規定する伝達関数の応答周波数ωとして燃焼周波数とすることで、所望とする瞬時トルク相当値の算出が可能となる。
上記実施の形態では、電磁ピックアップ式の回転速度センサ18を用いて所定の回転角度周期でエンジンの回転速度を検出する構成としたが、これを変更しても良い。クランク軸の回転位置をリニアに(すなわち連続的に)検出可能なリニア検出式の回転速度センサを用いることも可能である。リニア検出式の回転速度センサとしては、例えばレゾルバ等が知られている。この場合、任意のタイミングで瞬時トルク相当値Nefltの算出が可能となる。噴射開始時期、着火時期又は噴射終了時期を推定する場合においては、瞬時トルク相当値Nefltを連続的に算出し、そのNeflt値が所定の判定しきい値に達した時刻を計測する。そして、その計測時刻から直接的に噴射開始時期、着火時期又は噴射終了時期を推定すると良い。
発明の実施の形態におけるエンジン制御システムの概略を示す構成図である。 各気筒の回転速度の推移を示すタイムチャートである。 気筒別仕事量を算出するための制御ブロックを示すブロック図である。 回転速度、瞬時トルク相当値及び気筒別仕事量の推移を示すタイムチャートである。 気筒別学習値の算出処理を示すフローチャートである。 燃料噴射制御処理を示すフローチャートである。 ある気筒の燃焼に伴う瞬時トルク相当値の推移を示すタイムチャートである。 噴射開始時期の推定処理を示すフローチャートである。 気筒別燃焼仕事量の算出処理を示すフローチャートである。 回転速度、燃焼トルク、慣性トルク、負荷トルクの推移とそれらの対応関係を示すタイムチャートである。
符号の説明
10…エンジン、11…インジェクタ、17…クランク軸、20…ECU、M1…フィルタ手段、M2…積分手段。

Claims (22)

  1. 内燃機関のクランク軸の回転速度を逐次算出する回転速度算出手段と、
    帯域フィルタからなり、前記回転速度算出手段により算出した回転速度を、前記内燃機関の燃焼周波数に基づき設定した単一の周波数にてフィルタ処理して瞬時トルク相当値を算出するフィルタ手段と、
    前記フィルタ手段により算出した瞬時トルク相当値に基づいて前記内燃機関の各気筒の特性を制御する制御手段と、
    前記瞬時トルク相当値を気筒ごとに一定区間積分して気筒ごとの燃焼、慣性力、負荷のいずれかによる仕事量又はその総和の少なくともいずれかを算出する手段と、
    を備えたことを特徴とする内燃機関用制御装置。
  2. 内燃機関のクランク軸の回転速度を逐次算出する回転速度算出手段と、
    帯域フィルタからなり、前記回転速度算出手段により算出した回転速度を、前記内燃機関の燃焼周波数に基づき設定した単一の周波数域にてフィルタ処理して瞬時トルク相当値を算出するフィルタ手段と、
    前記フィルタ手段により算出した瞬時トルク相当値に基づいて前記内燃機関の各気筒の特性を制御する制御手段と、
    前記瞬時トルク相当値を気筒ごとに一定区間積分するとともに、その積分値を気筒間で比較することにより燃焼、慣性力、負荷のいずれかによる仕事量又はその総和の気筒間差を算出する手段と、
    を備えたことを特徴とする内燃機関用制御装置。
  3. 内燃機関のクランク軸の回転速度を逐次算出する回転速度算出手段と、
    帯域フィルタからなり、前記回転速度算出手段により算出した回転速度を、前記内燃機関の燃焼周波数に基づき設定した単一の周波数域にてフィルタ処理して瞬時トルク相当値を算出するフィルタ手段と、
    前記フィルタ手段により算出した瞬時トルク相当値に基づいて前記内燃機関の各気筒の特性を制御する制御手段と、
    前記瞬時トルク相当値を気筒ごとに一定区間積分して気筒ごとの燃焼、慣性力、負荷のいずれかによる仕事量又はその総和の少なくともいずれかを燃焼状態パラメータとして算出する手段と、
    前記気筒ごとに算出した燃焼状態パラメータの全気筒の平均値を算出する手段と、
    前記燃焼状態パラメータの全気筒の平均値と気筒ごとの燃焼状態パラメータとの差分により気筒間差を算出する手段と、
    を備えたことを特徴とする内燃機関用制御装置。
  4. 内燃機関のクランク軸の回転速度を逐次算出する回転速度算出手段と、
    前記回転速度算出手段により算出した回転速度を、前記内燃機関の燃焼周波数に基づき設定した単一の周波数にてフィルタ処理して瞬時トルク相当値を算出するフィルタ手段と、
    前記フィルタ手段により算出した瞬時トルク相当値に基づいて前記内燃機関の各気筒の特性を制御する制御手段と、
    を備え、
    気筒ごとの瞬時トルク相当値の上昇に際し、該瞬時トルク相当値とあらかじめ定めた判定しきい値との比較により燃料噴射手段による噴射開始時期又は着火時期を推定することを特徴とする内燃機関用制御装置。
  5. 気筒ごとの瞬時トルク相当値の降下に際し、該瞬時トルク相当値とあらかじめ定めた判定しきい値との比較により燃料噴射手段による噴射終了時期を推定することを特徴とする請求項4に記載の内燃機関用制御装置。
  6. 内燃機関のクランク軸の回転速度を逐次算出する回転速度算出手段と、
    前記回転速度算出手段により算出した回転速度を、前記内燃機関の燃焼周波数に基づき設定した単一の周波数にてフィルタ処理して瞬時トルク相当値を算出するフィルタ手段と、
    前記フィルタ手段により算出した瞬時トルク相当値に基づいて前記内燃機関の各気筒の特性を制御する制御手段と、
    を備え、
    気筒ごとの瞬時トルク相当値の降下に際し、該瞬時トルク相当値とあらかじめ定めた判定しきい値との比較により燃料噴射手段による噴射終了時期を推定することを特徴とする内燃機関用制御装置。
  7. 気筒ごとの瞬時トルク相当値の上昇に際し、該瞬時トルク相当値とあらかじめ定めた判定しきい値との比較により燃料噴射手段による噴射開始時期又は着火時期を推定するとともに、各気筒の噴射開始時期又は着火時期の比較によりその気筒間差を算出することを特徴とする請求項4乃至6のいずれかに記載の内燃機関の制御装置。
  8. 内燃機関のクランク軸の回転速度を逐次算出する回転速度算出手段と、
    前記回転速度算出手段により算出した回転速度を、前記内燃機関の燃焼周波数に基づき設定した単一の周波数にてフィルタ処理して瞬時トルク相当値を算出するフィルタ手段と、
    前記フィルタ手段により算出した瞬時トルク相当値に基づいて前記内燃機関の各気筒の特性を制御する制御手段と、
    を備え、
    気筒ごとの瞬時トルク相当値の上昇に際し、該瞬時トルク相当値とあらかじめ定めた判定しきい値との比較により燃料噴射手段による噴射開始時期又は着火時期を推定するとともに、各気筒の噴射開始時期又は着火時期の比較によりその気筒間差を算出することを特徴とする内燃機関用制御装置。
  9. 気筒ごとの瞬時トルク相当値の降下に際し、該瞬時トルク相当値とあらかじめ定めた判定しきい値との比較により燃料噴射手段による噴射終了時期を推定するとともに、各気筒の噴射終了時期の比較によりその気筒間差を算出することを特徴とする請求項4乃至8のいずれかに記載の内燃機関の制御装置。
  10. 内燃機関のクランク軸の回転速度を逐次算出する回転速度算出手段と、
    前記回転速度算出手段により算出した回転速度を、前記内燃機関の燃焼周波数に基づき設定した単一の周波数にてフィルタ処理して瞬時トルク相当値を算出するフィルタ手段と、
    前記フィルタ手段により算出した瞬時トルク相当値に基づいて前記内燃機関の各気筒の特性を制御する制御手段と、
    を備え、
    気筒ごとの瞬時トルク相当値の降下に際し、該瞬時トルク相当値とあらかじめ定めた判定しきい値との比較により燃料噴射手段による噴射終了時期を推定するとともに、各気筒の噴射終了時期の比較によりその気筒間差を算出することを特徴とする内燃機関用制御装置。
  11. 前記瞬時トルク相当値を気筒ごとに一定区間積分して気筒ごとの燃焼、慣性力、負荷のいずれかによる仕事量又はその総和の少なくともいずれかを算出する手段を備えたことを特徴とする請求項4乃至10のいずれかに記載の内燃機関用制御装置。
  12. 前記瞬時トルク相当値を気筒ごとに一定区間積分するとともに、その積分値を気筒間で比較することにより燃焼、慣性力、負荷のいずれかによる仕事量又はその総和の気筒間差を算出する手段を備えたことを特徴とする請求項4乃至10のいずれかに記載の内燃機関用制御装置。
  13. 前記瞬時トルク相当値を気筒ごとに一定区間積分して気筒ごとの燃焼、慣性力、負荷のいずれかによる仕事量又はその総和の少なくともいずれかを燃焼状態パラメータとして算出する手段と、
    前記気筒ごとに算出した燃焼状態パラメータの全気筒の平均値を算出する手段と、
    前記燃焼状態パラメータの全気筒の平均値と気筒ごとの燃焼状態パラメータとの差分により気筒間差を算出する手段と、
    を備えたことを特徴とする請求項4乃至10のいずれかに記載の内燃機関用制御装置。
  14. 燃焼状態及び燃焼休止状態において都度の瞬時トルク相当値を気筒ごとに一定区間積分して気筒ごとの仕事量を算出し、燃焼状態での仕事量と燃焼休止状態での仕事量との差分により、気筒ごとの燃焼による仕事量を算出することを特徴とする請求項1乃至3,11乃至13のいずれかに記載の内燃機関用制御装置。
  15. 前記瞬時トルク相当値を気筒ごとに一定区間積分して算出した燃焼、慣性力、負荷のいずれかによる仕事量若しくはその総和、又はそれらの気筒間差を、学習値として記憶保持することを特徴とする請求項1乃至3,11乃至13のいずれかに記載の内燃機関用制御装置。
  16. 前記フィルタ手段として帯域フィルタを用いたことを特徴とする請求項4乃至15のいずれかに記載の内燃機関用制御装置。
  17. 前記フィルタ手段を規定する伝達関数の応答周波数ωとして前記燃焼周波数を用いたことを特徴とする請求項1乃至16のいずれかに記載の内燃機関用制御装置。
  18. 気筒ごとに所定の回転角度位置での前記瞬時トルク相当値を求め、その瞬時トルク相当値に基づいて気筒ごとの特性を推定することを特徴とする請求項1乃至17のいずれかに記載の内燃機関用制御装置。
  19. 気筒ごとに所定の回転角度位置での前記瞬時トルク相当値を求め、その瞬時トルク相当値を気筒間で比較することにより特性の気筒間差を推定することを特徴とする請求項1乃至17のいずれかに記載の内燃機関用制御装置。
  20. 気筒ごとに前記瞬時トルク相当値のピーク値及びボトム値の少なくともいずれかを求め、該求めた値に基づいて気筒ごとの特性を推定することを特徴とする請求項1乃至17のいずれかに記載の内燃機関用制御装置。
  21. 気筒ごとに前記瞬時トルク相当値のピーク値及びボトム値の少なくともいずれかを求め、該求めた値を気筒間で比較することにより特性の気筒間差を推定することを特徴とする請求項1乃至17のいずれかに記載の内燃機関用制御装置。
  22. 各気筒において燃焼状態で算出した瞬時トルク相当値と、燃焼休止状態で算出した瞬時トルク相当値との差分により、気筒ごとの燃焼トルクを算出することを特徴とする請求項1乃至17のいずれかに記載の内燃機関用制御装置。
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