JP4410040B2 - マイクロ流体制御機構およびマイクロチップ - Google Patents

マイクロ流体制御機構およびマイクロチップ Download PDF

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Description

本発明は、マイクロ流体制御機構およびマイクロチップに関し、さらに詳細には、化学実験や生物実験の実験操作に用いるマイクロチップに実施して好適なマイクロ流体制御機構およびマイクロチップに関する。
近年、マイクロチップを利用して化学や生物実験操作を行うことが提案されており、実際に化学分析や細胞計測などの実験操作をマイクロチップ内で行うことが可能になってきている。
ここで、マイクロチップとは、平板状の基板に微細加工によってマイクロチャネル(マイクロ流路)を集積化して形成したものを意味する。
こうしたマイクロチップを用いることにより、試料の節約を図ることができたり、また、実験にかかるスピードを高速化して実験に費やす時間の短縮化を図ることができたり、また、実験操作の自動化を図ることができたりするなどの優れた効果が奏されるものであった。
ところで、実験に用いる試料や試薬などは多くの場合には液体であるが、上記したマイクロチップを用いた実験においては、これら試料や試薬などの液体をマイクロチップに形成されたマイクロ流路の中に導入する必要がある。こうした液体をマイクロ流路の中に導入する手法としては、以下に説明する二種類の手法(第1の手法および第2の手法)が一般に用いられている。
(1)第1の手法・・・シリンジポンプを用いる手法
この手法は、マイクロ流路にコネクターを介してチューブを接続し、シリンジポンプを用いて液体をマイクロ流路内に圧送するという手法である(非特許文献1参照)。
(2)第2の手法・・・電気浸透現象を用いる手法
この手法は、マイクロ流路の両端にリザーバーを設け、そこに電極を差し込んで高電圧をかけると、電気浸透現象によりマイクロ流路内に液体が流れ込むという手法である(非特許文献2参照)。

しかしながら、上記した第1の手法ならびに第2の手法には、以下に示すような問題点(問題点1乃至問題点3)があった。
(I)問題点1
外部装置としてシリンジポンプや高圧電源などを必要とするために、こうした外部装置を含む装置全体の構成が複雑になるとともに高価なものとなってしまっていた。
(II)問題点2
マイクロ流路にチューブを接続したり電極を挿入したりする必要があるため、実際に実験を開始するまでの準備操作に手間がかかり、準備操作までを含めた全体の作業時間に長時間を要することとなっていた。
(III)問題点3
特に、第1の手法に関しては、試料や試薬のほとんどが動力を伝達するために用いられることになり、そのための試料や試薬が浪費されることになって無駄の多いものとなっていた。

こうした問題点1乃至問題点3を解決するため、試料や試薬などの液体をマイクロ流路の中に導入するのに、マイクロチップ外部からの動力をほとんど必要としないか、あるいは、外部からの動力を全く必要としない手法として、以下に説明する二種類の手法(第3の手法および第4の手法)が提案されている。
(3)第3の手法・・・圧縮空気を用いる手法
この手法は、マイクロ流路に壊れやすい隔壁を介して圧力室を設け、マイクロ流路内に液体を送るエネルギーを圧力室内に圧縮空気として蓄えておく。そして、電流によって圧力室の隔壁を破壊すると、圧縮空気の空気圧が開放されてマイクロ流路内に液体が流れ込むという手法である(非特許文献3参照)。
(4)第4の手法・・・毛細管現象を用いる手法
この手法は、マイクロ流路の反応室の壁に、試料となる所定の分子を予め固定化しておき、薬液や洗浄液などの複数の溶液をこの反応室に1つずつ順番に、毛細管現象により流し込んで反応させるという手法である(非特許文献4参照)。

しかしながら、上記第3の手法ならびに第4の手法は、以下に示すような新たな問題点(問題点4および問題点5)を招来するものである。
(IV)問題点4
第3の手法では、マイクロ流路の中に液体を導入するのは、マイクロチップの圧力室に蓄えておいた圧縮空気、即ち、予めマイクロチップに蓄えておいたエネルギーであるが、マイクロ流路の中に液体を導入し始めるためには、電流によって圧力室の隔壁を破壊しなければならない。つまり、第3の手法は、マイクロ流路の中に液体を導入し始めるためのトリガーとして、マイクロチップ外部からの動力を必要としており、完全にマイクロチップ外部からの動力なしに、マイクロ流路の中に液体を導入することができなかった。
(V)問題点5
第4の手法では、毛細管現象により反応室に液体が導入されるので、マイクロチップ外部からの動力なしに、マイクロ流路の中に液体を導入することはできるのだが、反応室に液体が導入されると直ちに、その液体が反応室の壁に固定された分子と反応を開始してしまう構成なので、マイクロ流路内で複数の液体を混合することができなかった。

M.Tokeshi et al. Analystical Chemistry 72(2000)pp.1711−1714 S.C.Jacobson et al. Analystical Chemistry 71(1999)pp.4455−4459 C.C.Hong,J.W.Choi,and C.H.Ahn,"Disposable air−bursting detonators as an alternative on−chip power source,"Proceedings of the 15th IEEE International Conference on Micro Electro Mechanical Systems,pp.240−243,Las Vegas,USA,January 20−24,2002. D.Juncker,et al."Autonomous microfluidic capillary system," Analytical Chemistry 74,pp.6139−6144,2002.
本発明は、従来の技術の有する上記したような種々の問題点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、上記した問題点1乃至問題点5を解決し、構造が単純で、液体をマイクロ流路の中に導入するのに外部からの動力を必要としないマイクロ流体制御機構およびマイクロチップを提供しようとするものである。
上記目的を達成するために、本発明は、高分子材料により形成し、マイクロ流路内に減圧された空間を生起させて、自動的にマイクロ流路内に液体を導入するようにしたものである。
即ち、本発明のうち請求項1に記載の発明は、所定の形状に形成されたマイクロチャネルと、上記マイクロチャネルの複数の端部のそれぞれに形成され、上記マイクロチャネル内に液体を導入するために外部に開口する複数のポートとを有し、上記マイクロチャネルの全体または一部を高分子材料により形成し、低圧環境において上記高分子材料を脱気した後に大気中に戻すことにより、上記マイクロチャネル内の空気を上記高分子材料に溶解させ、上記複数のポートの少なくともいずれか1つのポートに液体を滴下するとともに他のポートを封止することにより上記マイクロチャネル内に減圧された空間を生起し、上記減圧された空間に上記液体が吸引されるようにしたものである。
また、本発明のうち請求項2に記載の発明は、所定の形状に形成されたマイクロチャネルと、上記マイクロチャネルの複数の端部のうちの所定の端部側に連接され、上記マイクロチャネルの内部とのみ連通し外部に対して遮蔽された内部空間を有する減圧室と、上記マイクロチャネルの複数の端部のうちの上記減圧室が連接された端部を除いた残余の端部それぞれに形成され、上記マイクロチャネル内に液体を導入するために外部に開口する複数のポートとを有し、上記マイクロチャネルまたは上記減圧室のそれぞれの全体または一部のうちの少なくともいずれかを高分子材料により形成し、低圧環境において上記高分子材料を脱気した後に大気中に戻すことにより、上記マイクロチャネル内と上記減圧室内との空気を上記高分子材料に溶解させ、上記複数のポートの少なくともいずれか1つのポートに液体を滴下するとともに他のポートを封止することにより上記マイクロチャネルと上記減圧室とにより形成される減圧された空間を生起し、上記減圧された空間に上記液体が吸引されるようにしたものである。
また、本発明のうち請求項3に記載の発明は、本発明のうち請求項1または請求項2のいずれか1項に記載の発明において、上記マイクロチャネルに1以上の狭通路を形成したものである。
また、本発明のうち請求項4に記載の発明は、本発明のうち請求項3に記載の発明において、上記狭通路を2個形成したものである。
また、本発明のうち請求項5に記載の発明は、一方の端部に複数の導入用流路が連接され、他方の端部が減圧室に連接された混合用流路と、上記複数の導入用流路それぞれの上記混合用流路と連通する側の端部とは異なる端部側に形成され、上記導入用流路内に液体を導入するために外部に開口する複数のポートと、上記減圧室の内部空間を、上記混合用流路の内部とのみ連通させ外部に対して遮蔽する封止手段とを有し、上記封止手段、上記減圧室または上記混合用流路のそれぞれの全体または一部のうちの少なくともいずれかを高分子材料により形成し、低圧環境において上記高分子材料を脱気した後に大気中に戻すことにより、上記導入用流路内と上記混合用流路内と上記減圧室内との空気を上記高分子材料に溶解させ、上記複数のポートの少なくともいずれか1つのポートに液体を滴下するとともに他のポートを封止することにより上記導入用流路と上記混合用流路と上記減圧室とにより形成される減圧された空間を生起し、上記減圧された空間に上記液体が吸引されるようにしたものである。
また、本発明のうち請求項6に記載の発明は、本発明のうち請求項5に記載の発明において、上記混合用流路に1以上の狭通路を形成したものである。
また、本発明のうち請求項7に記載の発明は、本発明のうち請求項6に記載のマイクロ流体制御機構において、上記狭通路を2個形成したものである。
また、本発明のうち請求項8に記載の発明は、本発明のうち請求項1、請求項2、請求項3、請求項4、請求項5、請求項6または請求項7のいずれか1項に記載の発明において、上記高分子材料をゴムとしたものである。
また、本発明のうち請求項9に記載の発明は、本発明のうち請求項1、請求項2、請求項3、請求項4、請求項5、請求項6、請求項7または請求項8のいずれか1項に記載の発明によるマイクロ流体制御機構を有するマイクロチップである。
また、本発明のうち請求項10に記載の発明は、本発明のうち請求項9に記載の発明において、上記ポートからそれぞれ異なる種類の液体を導入し、上記狭通路において異なる種類の液体からなる界面を形成するようにしたものである。
また、本発明のうち請求項11に記載の発明は、本発明のうち請求項10に記載の発明において、上記液体の少なくとも一つが試料を含む溶液であり、他の少なくとも一つが試料と相互作用する物質を含む溶液であるようにしたものである。
また、本発明のうち請求項12に記載の発明は、本発明のうち請求項11に記載の発明において、上記試料を上記相互作用物質の方向に電気泳動し、試料の濃縮、分離、検出またはそれらの組み合わせを行うようにしたものである。
また、本発明のうち請求項13に記載の発明は、本発明のうち請求項11または請求項12のいずれか1項に記載の発明において、上記試料がDNAであり、上記相互作用する物質がDNA−ポリマー複合体であるようにしたものである。
本発明は、以上説明したように構成されているので、上記した問題点1乃至問題点5を解決し、構造が単純で、液体をマイクロ流路の中に導入するのに外部からの動力を必要としないマイクロ流体制御機構およびマイクロチップを提供することができるという優れた効果を奏する。
以下、添付の図面に基づいて、本発明によるマイクロ流体制御機構およびマイクロチップの実施の形態の一例を詳細に説明するものとする。
まず、図1には本発明によるマイクロ流体制御機構を実施したマイクロチップの概略構成上面説明図が示されており、図2(a)には図1に示すマイクロチップのA−A線による断面図(概略構成縦断面図)が示されており、図2(b)には図1に示すマイクロチップのB−B線による断面図(概略構成縦断面図)が示されている。
ここで、マイクロチップ10は、第1の板状部材12と、第2の板状部材14と、第1の板状部材12に配置された封止手段としての被覆部材16とを有して構成されている。
そして、第1の板状部材12には、マイクロチャネルとして、上面から見てY字型状の一連の流路を構成するマイクロチャネル20が形成されている。
このマイクロチャネル20は、上面から見て直線状に延長するマイクロ流路たる混合用流路22と、混合用流路22の一方の端部22aが二股に分岐されて形成されたマイクロ流路たる第1導入用流路24ならびに第2導入用流路26とを有するものである。
ここで、混合用流路22、第1導入用流路24ならびに第2導入用流路26は、第1の板状部材12の下面12b側が開口した溝状に形成されており、その下面12b側の開口面は第2の板状部材14により遮蔽されている。
また、第1導入用流路24の一方の端部24a、即ち、混合用流路22の端部22a側とは異なる側の端部は、第1の板状部材12の上面12a側に形成された試料や試薬などの液体を導入するために外部に開口している開口部たる第1サンプル用ポート30と連通している。一方、第2導入用流路26の一方の端部26a、即ち、混合用流路22の端部22a側とは異なる側の端部は、第1の板状部材12の上面12a側に形成された試料や試薬などの液体を導入するために外部に開口している開口部たる第2サンプル用ポート32と連通している。
従って、第1導入用流路24の端部24aならびに第2導入用流路26の端部26aは、大気に開放されていることになる。一方、第1導入用流路24の他方の端部24bと第2導入用流路26の端部26bとは、混合用流路22の一方の端部22aと連通している。
そして、混合用流路22の他方の端部22b、即ち、第1導入用流路24ならびに第2導入用流路26と連通する側とは異なる側の端部は、減圧室40の側方開口部40aと連通している。即ち、混合用流路22の一方の端部22aには、第1導入用流路24ならびに第2導入用流路26の複数の導入用流路が連接されおり、他方の端部22bには減圧室40が連接されている。
この減圧室40は、第1の板状部材12の上面12aにおいて略円形形状の上方開口部40bで開口するとともに下面12b側において略円形形状の開口部で開口する円筒状に形成されており、その下面12b側の開口部は第2の板状部材14により遮蔽されている。
一方、減圧室40の上方開口部40bには封止手段たる被覆部材16が配設されており、被覆部材16によって上方開口部40bは封止されている。これにより、減圧室40の内部空間40cは、混合用流路22の内部とのみ連通し、外部に対しては遮蔽されている。即ち、混合用流路22の他方の端部22bは、減圧室40の内部空間40cには開放されているが、大気には開放されていない。
ここで、マイクロチップ10を構成する第1の板状部材12、第2の板状部材14および被覆部材16の材料としては、高分子材料を用いることができる。
例えば、高分子材料の一つであるゴムは、固体のミクロ構造がかなり疎であり、かつ固体分子の運動自由度が相当に大であるので、気体が固体中に入り込み易く、非常に多くの気体が溶解する固体材料である。このように非常に多くの気体が溶解可能な固体材料であるゴムなどの高分子材料によって、第1の板状部材12、第2の板状部材14および被覆部材16を形成するとよい。
なお、この実施の形態においては、マイクロチップ10を構成する第1の板状部材12、第2の板状部材14および被覆部材16の材料としてゴム、さらに具体的には、ポリジメチルシロキサン(polydimethylsiloxane(以下、「PDMS」と称する。)などのシリコーンゴムを用いている。
ここで、
C:固体中の気体濃度(cm(STP)/cm
P:固体に接触する気体の圧力(atm)
S:溶解度係数(cm(STP)/(cmatm))
とするヘンリーの法則
C=SP
により、PDMSの空気に対する溶解度係数を算出することができる。なお、気体濃度Cは、1cmの固体に溶けている気体の量を、標準状態(STP、0℃、1atm)での体積に換算したものである。
そして、温度35℃、空気を窒素80%、酸素20%とすると、PDMSの空気に対する溶解度係数は、
S=0.11cm(STP)/(cmatm)
となる。ただし、このPDMSの空気に対する溶解度係数Sは、PDMSの重合度などに依存するものである。
マイクロチップ10を構成する第1の板状部材12、第2の板状部材14および被覆部材16の材料としては、非常に多くの気体が溶解可能な固体材料が好適であり、例えば上記したPDMSのように、空気に対する溶解度係数S=0.001〜10(cm(STP)/(cmatm))の高分子材料を用いることができる。
なお、マイクロチップ10を構成する第1の板状部材12、第2の板状部材14および被覆部材16の材料は、上記したものに限られるものではないことは勿論であり、マイクロチップ10を用いて実験を行う際の試料や試薬などの液体の種類などに応じて適宜に選択することができる。
また、マイクロチップ10の第1の板状部材12は、例えば、長さL1が30mm、長さL2が30mm、厚さL3が2mmの大きさの直方体形状を有しており、第2の板状部材14は、例えば、第1の板状部材際12と略一致する寸法に設定されている。
そして、マイクロチャネル20の混合用流路22の端部22aから端部22bまでの長さL4は、例えば、14mmに設定され、混合用流路22の幅L5は、例えば、100μmに設定され、混合用流路22の深さL6は、例えば25μmに設定されている。
また、第1導入用流路24の端部24aから端部24bまでの長さ、ならびに、第2導入用流路26の端部26aから端部26bまでの長さL7は、例えば、4mmに設定されている。なお、第1導入用流路24ならびに第2導入用流路26の幅は、例えば、混合用流路22の幅L5と略一致する寸法に設定され、第1導入用流路24ならびに第2導入用流路26の深さは、例えば、混合用流路22の深さL6と略一致する寸法に設定されている。
また、第1サンプル用ポート30ならびに第2サンプル用ポート32の直径L8は、例えば、2mmに設定されている。また、減圧室40の上方開口部40bの直径L9は、例えば、1mmに設定されている。
なお、上記した各構成部位の寸法は各構成部位の大きさの一例を示すものであって、本発明は当該記入された寸法の大きさに限定されるものではない。従って、必要な反応時間や流速などに応じて、上記した各構成部位の寸法は適宜変更すればよく、例えば、反応時間を比較的長く確保したいときには、混合用流路22の長さL4を延長すればよく、流速を比較的遅くしたいときには、混合用流路22の断面積を小さくすればよい。
以上の構成において、マイクロチップ10を脱気するために圧力10kPaの真空チャンバーに0.5〜3時間入れる(図3(a)参照)。このように、マイクロチップ10全体を低圧環境に置くことにより、マイクロチップ10全体に溶け込んでいる空気を抜くことができる(図3(a)における破線矢印参照)。つまり、マイクロチップ10を形成しているPDMSに溶解している気体が取り除かれることになる。
そして、脱気を開始してから所定時間が経過した後、マイクロチップ10を真空チャンバー内から大気中(100kPa)に取り出す(図3(b)参照)。こうして、真空チャンバー内における脱気を終了し、大気中に取り出されてマイクロチップ10が大気圧に戻されたときから、マイクロチップ10を形成するPDMSへの空気の再溶解が始まる(図3(b)における破線矢印参照)。
こうしたPDMSへの空気の再溶解は、気体溶解度に関するヘンリーの法則に基づく現象である。即ち、PDMSなどのシリコーンゴムは、液体のように平衡溶解度が接触気体の分圧に比例するものである。このため、低圧から大気圧に戻すことにより、平衡溶解度が再び上がり、系がこの新しい平衡に向かってPDMSへの空気の再溶解が始まる。
そして、上記したように溶解度係数S=0.11(cm(STP)/(cmatm))のPDMSは、非常に多くの気体が溶解可能な固体材料であって、こうしたPDMSよりなるマイクロチップ10の外部環境が低圧環境下から大気圧に戻されることで、マイクロチップ10全体に新たに多くの空気が溶解することになる。
こうして大気中に取り出された後、マイクロチップ10の第1サンプル用ポート30に第1の液体を滴下する。
ここで、マイクロチャネル20を構成する3つの流路、即ち、混合用流路22、第1導入用流路24ならびに第2導入用流路26のうち、混合用流路22の端部22b側は、被覆部材16によって予め大気には開放されておらず、第1導入用流路24の端部24aは、第1サンプル用ポート30に滴下された第1の液体によって封止されている。その結果、第1の液体がマイクロチャネル20に導入されたときには、第2導入用流路26の端部26aのみが大気に開放されていることになる。
次に、マイクロチップ10の第2サンプル用ポート32に第1の液体と混合すべき第2の液体を滴下する。
これにより、第2導入用流路26の端部26aが、第2サンプル用ポート32に滴下された第2の液体によって封止されるので、マイクロチャネル20に形成された各流路が外部に対して閉ざされ、第1の液体と第2の液体とを混合用流路22へ導入する動作が開始される。
より詳細には、第1サンプル用ポート30に第1の液体を滴下し、第2サンプル用ポート32に第2の液体を滴下した状態では、マイクロチャネル20に形成された各流路が外部に対して閉ざされるので、混合用流路22内の空気や、混合用流路22の端部22bが開放している減圧室40の内部空間40cの空気は、第1サンプル用ポート30ならびに第2サンプル用ポート32を介したマイクロチップ10の外部との連絡を失い、マイクロチップ10の閉ざされた各流路と減圧室とにより形成される空間(以下、「閉空間」と称する。)に位置するようになる。
ここで、上記したようにマイクロチップ10を真空チャンバー内から大気中に取り出したときから、マイクロチップ10を形成するPDMSへの空気の再溶解が始まっているので(図3(b)参照)、この閉空間に位置する空気は、混合用流路22の内壁22cや減圧室40の内壁40dからPDMSに溶解する(図3(d)における破線矢印参照)。
その結果、混合用流路22内や減圧室40の内部空間40cよりなる閉空間の圧力が下がり、第1導入用流路24内の第1の液体と第2導入用流路26内の第2の液体とは、同時に混合用流路22に流れ込む(図3(c)参照)。こうして第1の液体と第2の液体との2液は混合用流路22内において混合される。
上記したように、本発明によるマイクロ流体制御機構を実施したマイクロチップ10においては、第1の板状部材12、第2の板状部材14および被覆部材16をPDMSにより形成して、脱気し、PDMSへの空気の再溶解が始まるようにした状態において、混合すべき2液によってマイクロチャネル20が外部に対して閉ざされると、マイクロチャネル20内に減圧された空間が生起され、液体は減圧された空間に吸引されて自動的に混合用流路22内に導入される。
このように、本発明は、単純な構造であって、液体をマイクロ流路の中に導入するのに外部からの動力を必要とすることがない。このため、本発明によれば、「従来技術」の項に示した問題点1、問題点2ならびに問題点3が解決されることになり、全体の装置構成の簡潔化を図ることができ、実験の準備操作までを含めた全体の作業時間の短縮化を図ることができ、試料や試薬の使用量の低減化を図ることができるようになる。
さらに、本発明は、マイクロ流路の中に液体を導入し始めるためのトリガーとして、マイクロチップ外部からの動力を必要とすることもないので、完全にマイクロチップ外部からの動力なしに、マイクロ流路の中に液体を導入することができ、「従来技術」の項に示した問題点4を解決することができる。
また、本発明によれば、第1の液体と第2の液体との2液を混合用流路22内において混合することができるので、「従来技術」の項に示した問題点5を解決することができる。
ここで、従来のマイクロチップにおいては、マイクロ流路内を液体が流れる際に、マイクロ流路の内壁に気包が付着してしまって、液体の流れがブロックされることがあった。
これに対して、本発明によるマイクロ流体制御機構を実施したマイクロチップ10においては、第1の板状部材12、第2の板状部材14がPDMSにより形成されており、このため、マイクロチャネル20の全体、即ち、混合用流路22、第1導入用流路24ならびに第2導入用流路26のそれぞれの内壁が全てPDMSにより形成されていることになる。その結果、混合用流路22、第1導入用流路24ならびに第2導入用流路26のそれぞれの内部を液体が流れる際に、混合用流路22、第1導入用流路24ならびに第2導入用流路26のそれぞれの内壁に気泡が付着しても、直ちに気体はPDMSに溶解され、気泡は吸い込まれて消えてしまう。従って、マイクロチャネル20内で液体の流れがブロックされることがなく、再現性のよい安定した液体の流れを得ることができ、良好な動作状態を維持し、高精度な実験結果を得ることができる。
ここで、流れを可視化するために、蛍光微粒子の水溶液を用いて実験を行った結果について説明することとする。蛍光微粒子の平均直径は2ミクロン、濃度は6.5×10個/mLである。
図4には、マイクロチャネル20において2液の混合時の溶液の流れを示す顕微鏡写真が示されている。撮影された蛍光微粒子により、導入された2液が、第1サンプル用ポート30ならびに第2サンプル用ポート32それぞれから、合流点である混合用流路22の一方の端部22aに至り(図4におけるLeftの矢印ならびにRightの矢印参照)、減圧室40に向かって進行する流れ(図4におけるTotal矢印参照)が観察される。
この図4に示す蛍光微粒子の画像を解析して、溶液の流速の計算を行った結果が図5乃至図7に示されている。
図5には、脱気時間を変えた場合の全流速の時間変化を示すグラフが示されている。なお、「脱気時間」とは、マイクロチップ10を圧力10kPaの真空チャンバーに入れて置く時間であり、0.5時間、1時間、2時間ならびに3時間と変化させた。また、「全流量」とは、図4におけるTotal矢印に対応する流量、即ち、マイクロチップ10の混合用流路22内における溶液の流れの流量である。そして、「全流量の体積流量(nL/s)」は、「全流量の平均流速(mm/s)」と混合用流路22の断面積との積に等しいものであって、図4におけるTotal矢印に対応する流量である。また、「溶液注入前のインターバル」とは、真空チャンバー内における脱気を終了して大気中に取り出されたマイクロチップ10の第1サンプル用ポート30に第1の液体を滴下し、さらに第2サンプル用ポート32に第2の液体を滴下するまでの時間であり、5分とした。なお、「時間」は、第2サンプル用ポート32に第2の液体を滴下してからの経過時間である。
この図5に示す結果から、導入された2液が合流点である混合用流路22の一方の端部22aにおいて合流した後の混合用流路22における全流量は、時間とともに減少し、かつ、脱気時間にほとんど依存しないことが判る。つまり、本発明によるマイクロチップ10によれば、非常に小さい流量、例えば、1mm/sのような流量が再現性よく得られるものである。
なお、図5において混合用流路22における全流量が時間とともに減少するのは、時間が経過するのに伴ってマイクロチップ10を形成するPDMSの吸気能力が低下することと、液体の流れが進行して混合用流路22内や減圧室40の内部空間40cが液体で満たされて、PDMSの吸気面積が減少することに起因しているものと思われる。
図6には、全流量に対する一方の支流の流量の比の時間変化を示すグラフが示されている。なお、図6における「脱気時間」、「溶液注入前のインターバル」ならびに「時間」はそれぞれ、図5において説明したものと同様である。また、「全流量」とは、図4におけるTotal矢印に対応する流量、即ち、マイクロチップ10の混合用流路22内における溶液の流れの流量である。また、「左支流の流量」とは、図4におけるLeft矢印に対応する流量、即ち、マイクロチップ10の第1導入用流路24内における溶液の流れの流量であって一方の支流の流量である。
この図6に示す結果から、左支流の流量/全流量の比は0.5に近く、本発明によるマイクロチップ10によれば、第1導入用流路24内の第1の液体と第2導入用流路26内の第2の液体とが均等に混合され、理想的に釣り合いのとれた2液の混合を実現することができる。
なお、この図6に示す場合には、第2サンプル用ポート32に第2の液体を滴下してからの経過時間が6分以上になると、左支流の流量/全流量の比は0.5からずれる傾向にある。これは、経過時間が長くなると、2液の混合が進行して流量が小さくなるために、左支流の流量/全流量の比の0.5からのずれが顕著に現れたものである。
ここで、所定時間経過した後も左支流の流量/全流量の比を0.5近くに維持するためには、例えば、第1サンプル用ポート30ならびに第2サンプル用ポート32の形状や内壁表面の加工精度を向上させるとよい。また、第1導入用流路24ならびに第2導入用流路26のそれぞれにおいて、第1の液体ならびに第2の液体の液面形状が維持されるようにし、2液それぞれの圧力が等しくなるようにすると、2液それぞれの流れが対称となり、所定時間経過して流量が小さくなったときでも、左支流の流量/全流量の比を0.5に近く維持することができる。
図7には、溶液注入前のインターバルを変えた場合の全流速の時間変化を示すグラフが示されている。なお、図7における「脱気時間」、「全流量の体積流量(nL/s)」、「全流量の平均流速(mm/s)」、「溶液注入前のインターバル」ならびに「時間」はそれぞれ、図5において説明したものと同様である。そして、「脱気時間」は1時間に固定し、「溶液注入前のインターバル」を3分、5分、10分ならびに15分と変化させた。
この図7に示す結果から、溶液注入前のインターバルが、全流量に大きく影響することが判る。このように溶液注入前のインターバルが全流量に大きく影響するので、溶液注入前のインターバルは比較的短時間、例えば、5分〜10分で、第2サンプル用ポート32に第2の液体を滴下するとよい。
次に、本発明によるマイクロ流体制御機構を実施したマイクロチップ10の製造方法について説明する。
ここで、本発明によるマイクロ流体制御機構を実施したマイクロチップの製造過程の概略は、図8(a)(b)(c)(d)の順に時系列で示されている。
まず、マイクロチップ10の第1の板状部材12は、以下のような型成型技術によって製造される。即ち、所定の高さのマイクロチャネル20を成形するための反転パターンを形成するために、超厚膜フォトレジスト(SU−8:Microchem社製、米国)をシリコン基板の上にスピンコートし、製造者メーカーの指示にしたがって処理する。その後、反転パターンを露光し、現像する。
現像の後に、接着を強化するために、炉中で4分間150℃で焼き、それから1〜2時間かけて室温まで徐冷する。型離れをよくするために、シリコン基板は、反応性イオンエンッチング(RIE)機械(RIE−10NR:サムコインターナショナル研究所社製,日本)中で、CHFプラズマにより重合化されたフロロカーボン層を2分間成膜する。その時の条件は、CHFガス流量50sccm、圧力20Pa、電力200wである。
さらに、PDMS(Sylgard 184:Dow Corning社製、米国)の未重合溶液を、当該溶液を保持する型枠を使用してシリコン基板上に注ぐ(図8(a)参照)。これに対して65℃で1時間の第1キュアと、100℃で1時間の第2キュアとを行う。キュアされたPDMSチップは、シリコン基板から剥離される。
こうして製造されたPDMSチップに対して、金属パイプを使用してパンチすることにより、第1サンプル用ポート30、第2サンプル用ポート32ならびに減圧室40に対応する丸孔を穿設する(図8(b)参照)。
上記したようにして製造された第1の板状部材12は、同じくPDMSチップからなる第2の板状部材14の表面に単に接触させるだけで可逆的接着される(図8(c)参照)。
そして、減圧室40の開口部を被覆するようにして、第1の板状部材12の上面12aにPDMSからなるテープを貼り付けると(図8(d)参照)、マイクロチップ10が完成する。この際、PDMSからなるテープに代わって、市販されている粘着テープを用いてもよい。
なお、上記した実施の形態は、以下の(1)乃至(11)に示すように変形することができるものである。
(1)上記した実施の形態においては、上記において図8(a)(b)(c)(d)を参照しながら説明した製造工程によってマイクロチップ10を製造するものとしたが、これに限られるものではないことは勿論であり、マイクロチップを形成する材料の種類などに応じて、適宜の製造プロセスでマイクロチップを製造するようにしてもよい。
(2)上記した実施の形態においては、マイクロチップ10は、第1の板状部材12、第2の板状部材14ならびに被覆部材16により構成されるようにしたが、これに限られるものではないことは勿論であり、適宜の製造プロセスを用いることにより、第1の板状部材12、第2の板状部材14ならびに被覆部材16のそれぞれに対応する部分が全て一体的に成形されるようにしてもよいし(図9に示すマイクロチップ10’参照)、あるいは、第1の板状部材12と被覆部材16とを一体的に成形するようにしてもよい。このように、被覆部材16が第1の板状部材12と一体的に形成された場合には、減圧室40の内部空間40cを外部に対して遮蔽する領域が封止手段となる。
(3)上記した実施の形態のマイクロチップ10は、真空チャンバー内において脱気した後、マイクロチップ10を真空チャンバー内から大気中に取り出して使用するようにしたが、これに限られるものではないことは勿論である。例えば、予め脱気処理を行った状態のマイクロチップ10を、真空保持可能な密閉容器(箱や袋)に収納しておけば、保管や搬送が容易で便利になり、大量生産や市販するのに好適で、ユーザーは使用時に容器を開封してマイクロチップを取り出せば直ちに使用することができる。
(4)上記した実施の形態のマイクロチップ10においては、第1の板状部材12、第2の板状部材14ならびに被覆部材16をいずれも、PDMSにより形成するようにしたが(図10(a)参照)、これに限られるものではないことは勿論であり、第1の板状部材12の全体または一部、第2の板状部材14の全体または一部、被覆部材16の全体または一部、これらのうちの少なくともいずれかをPDMSにより形成するようにしてもよい。
例えば、図10(b)に示すように、第1の板状部材12の全体と被覆部材16の全体とをPDMSにより形成するようにしてもよいし、図10(c)に示すように、被覆部材16の全体だけをPDMSにより形成するようにしてもよいし、図10(d)に示すように、第1の板状部材12の一部だけをPDMSにより形成するようにしてもよいし、図10(e)に示すように、第1の板状部材12の一部と第2の板状部材14の一部とをPDMSにより形成するようにしてもよい。なお、10(a)(b)(c)(d)(e)において、梨子地で示した領域がPDMSにより形成された領域を示している。
つまり、PDMSのような高分子材料により形成される領域は、マイクロチップ10の全体に限られるものではなく、被覆部材16の全体または一部、マイクロチャネル20の混合用流路22の全体または一部、減圧室40の全体または一部、これらのうちの少なくともいずれかとすることができる。
ただし、PDMSなどの高分子材料により形成される領域全体の容量は、高分子材料内部の気体濃度に影響するものなので、マイクロチャネル20内に減圧された空間が生起可能な範囲で、マイクロチャネル20全体や減圧室40全体の寸法に応じて、高分子材料により形成される領域は適宜変更するとよい。
さらに、高分子材料により形成された部分だけを予め脱気処理し、それから、高分子材料により形成されていないその他の部分とともに組み立てて、マイクロチップとするようにしてもよい。例えば、図10(c)に示す場合では、第1の板状部材12と第2の板状部材14とはPDMSにより形成されていないので、PDMSにより形成されている被覆部材16だけを脱気処理した後に、第1の板状部材12の上面12aに組み付ければよい。
(5)上記した実施の形態においては、導入用のマイクロ流路として、第1導入用流路24ならびに第2導入用流路26を形成したが、これに限られるものではないことは勿論であり、混合用流路の一方の端部に連接される導入用流路の本数は3本以上でもよい。
(6)上記した実施の形態のマイクロチップ10においては、マイクロチャネル20の全てのポート、即ち、第1サンプル用ポート30ならびに第2サンプル用ポート32のいずれにも液体を滴下して、マイクロチャネル20を外部に対して閉ざし、第1の液体と第2の液体とが同時に混合用流路22に流れ込むようにしたが、このように複数のポート全てに所定の液体を滴下するのに限られるものではない。
例えば、上記した実施の形態のマイクロチップ10において、混合用流路22に試料となる所定の分子を予め固定化しておき、第1サンプル用ポート30に所定の液体を滴下した後、第2サンプル用ポート32を被覆するように第1の板状部材12の上面12aにテープを貼り付けるなどすると、マイクロチャネル20が外部に対して閉ざされ、第1サンプル用ポートに滴下された溶液が混合用流路22に流れ込んで、固相反応を行わせることができる。
また、3本以上の導入用流路を形成した場合に、2液以上の混合を行うのに全ての導入用流路を使用する必要がなければ、3本以上の導入用流路のそれぞれに形成された3個以上のポートのうちのいずれかのポートに所定の液体を滴下するとともに、残余のポートは外部に対して遮蔽されるようにすれば、マイクロチャネルが外部に対して閉ざされ、2液以上の溶液が混合用流路22に流れ込んで混合される。
(7)上記した実施の形態においては、マイクロチャネル20として上面から見てY字型状の一連の流路を形成したが、これに限られるものではないことは勿論であり、マイクロチャネル20の形状は、混合用流路の総数やポートの大きさなどによって、適宜の形状を採用することができる。
また、単一のマイクロチップに形成されるマイクロチャネルの総数も、上記した実施の形態のマイクロチップ10のように1つに限られることなしに、複数のマイクロチャネルを形成するようにしてもよい。
(8)上記した実施の形態のマイクロチップ10に限られることなしに、例えば、本発明によるマイクロ流体制御機構をマイクロチップ100(図11ならびに図12参照)に備えるようにし、上面から見て十字型状の一連のマイクロチャネル120を形成すれば、マイクロチップ100を電気泳動用のマイクロチップとして使用することができる。
具体的には、マイクロチップ100は、第1の板状部材112と第2の板状部材114とにより構成されている。なお、第1の板状部材112はPDMSにより形成されており、第2の板状部材114はガラスにより形成されている。
そして、十字型状のマイクロチャネル120は、端部122aと端部122bとを両端とする第1の流路122と、端部124aと端部124bとを両端とする第2の流路124とを有するものである。この第1の流路122と第2の流路124とは交差箇所120aにおいて略直交するようにして形成され、第1の流路122の全長は、第2の流路124の全長に比べて短くなされている。なお、図11ならびに図12には各構成部位の寸法は各構成部位の大きさの一例が示されているが、当該記入された寸法の大きさに限定されるものではないことは勿論である。
このマイクロチップ100は、上記した実施の形態のマイクロチップ10(図1ならびに図2参照)と比べて、マイクロチャネル全体の形状が異なっているのでポートの総数が異なっており、さらに、マイクロチップ10が有する減圧室40ならびに減圧室40の内部空間40cを外部に対して遮蔽する被覆部材16を備えていない。
以上の構成のマイクロチップ100を用いて電気泳動分離を行う場合には、まず、上記した実施の形態のマイクロチップ10と同様に、マイクロチップ100を脱気するために圧力10kPaの真空チャンバーに0.5〜3時間(例えば、1時間)入れる。これにより、マイクロチップ100の第1の板状部材112を形成しているPDMSに溶解している気体が取り除かれることになる。
そして、脱気を開始してから所定時間が経過した後、マイクロチップ100を真空チャンバー内から大気中(100kPa)に取り出す。これにより、マイクロチップ100の第1の板状部材112を形成しているPDMSへの空気の再溶解が始まる。
こうして大気中に取り出されたマイクロチップ100の全てのポートに、電気泳動分離のための分離材料たる液体を滴下する。より詳細には、第1の流路122の端部122aが連通するポート131、端部122bが連通するポート132、第2の流路124の端部124aが連通するポート133ならびに端部124bが連通するポート134の4つのポートそれぞれに、DNAなどを分ける篩いの役目を果たすポリアクリルアミド水溶液などのポリマー(高分子)溶液を滴下する。
これにより、マイクロチャネル120の複数の端部のそれぞれに形成された複数のポートの全てが、各ポートそれぞれに滴下されたポリマー溶液によって封止されるので、マイクロチャネル120に形成された各流路が外部に対して閉ざされる。その結果、第1の流路122内の空気や第2の流路124内の空気は、マイクロチップ100の閉ざされた各流路により形成される空間に位置するようになる。そして、この空間に位置する空気は、第1の流路122の第1の板状部材112により形成される内壁や、第2の流路124の第1の板状部材112により形成される内壁からPDMSに溶解する。
その結果、マイクロチップ100の閉ざされた各流路により形成される空間の圧力が下がり、第1の流路122の端部122a、端部122bならびに第2の流路124の端部124a、端部124bのそれぞれから、交差箇所120aに向かって、第1の流路122内ならびに第2の流路124内にポリマー溶液が流れ込み、マイクロチャネル120がポリマー溶液で満たされる。
こうしてマイクロチャネル120内にポリマー溶液が充填された後、ポート131,132,133,134のそれぞれに装着された白金電極を通じて、ポート131からサンプルを導入し、第1の流路122をサンプル注入用の流路として使用し、第2の流路124を分離用の流路として使用して電気泳動分離を行う。
上記したように、本発明によるマイクロ流体制御機構を備えたマイクロチップ100によれば、マイクロチャネル120の一部をPDMSにより形成し脱気するようにしたため、マイクロ流路内に減圧された空間が生起され、電気泳動分離のためのポリマー溶液を自動的にマイクロチャネル120に充填させることができる。
ここで、従来の電気泳動解析に用いられるマイクロチップにおいては、マイクロ流路にシリンジを接続し、ポリマー溶液を圧送してマイクロ流路内に充填させていた。このため、外部装置としてシリンジなどが必要となり、装置全体の構成が複雑になるとともに高価なものとなっていた。また、従来のシリンジを用いた圧送では、PDMSのような表面が疎水性の場合には特に、マイクロ流路内に気泡が生じないようにしてポリマー溶液を充填することが困難であった。
これに対して、本発明によるマイクロ流体制御機構を備えたマイクロチップ100は、液体をマイクロ流路の中に導入するのに外部からの動力を必要とすることがないので、従来の電気泳動解析に用いられるマイクロチップに比べて全体の装置構成の簡潔化を図ることができる。さらに、本発明によれば、PDMSにより形成されていたり、あるいは、複雑な形状のマイクロチャネルであっても、当該マイクロチャネル内に自動的に充填されたポリマー溶液内には気泡がなく、良好な動作状態で電気泳動分離を行うことができる。
このように本発明によるマイクロ流体制御機構は、マイクロチップ10が有する減圧室40や被覆部材16がなくとも、上記したマイクロチップ100のようにしてマイクロ流路内に減圧された空間を生起させることができ、マイクロチャネルの各流路内に所定の単一種類の液体を気泡なしに充填させるのに有用である。
なお、上記したマイクロチップ100のマイクロチャネル120の全体を、PDMSなどの高分子材料により形成するようにしてもよいし、第1の流路122の端部122bが連通するポート132に代わって、端部122bに減圧室を連接するようにしてもよい。
(9)上記した実施の形態においては、本発明によるマイクロ流体制御機構をマイクロチップに備えるようにしたが、これに限られるものではないことは勿論であり、例えば、微量な液体を取扱う各種システムに、本発明によるマイクロ流体制御機構を採用してもよい。
また、上記したマイクロチップ10において混合される第1の液体として酵素溶液を用い、第2の液体として試料を用いた場合には、酵素反応を観察することができ、これに限られることなしに各種溶液を使用することができる。
(10)上記した実施の形態においては、マイクロチャネル20、120を直線状に形成するとともにその断面積を略一定としたが、これに限られることなしに、マイクロチャネル20、120の断面積が急激に小さくなる箇所たる狭通路を形成するようにしてもよい。このように、マイクロチャネル20、120の断面積が急激に小さくなる箇所たる狭通路を形成すると、流路断面積が急激に小さくなることにより、狭通路が溶液の移動に対して抵抗として作用することになる。
例えば、図13には、マイクロチップ10のマイクロチャネル20における混合用流路22の内壁に対向するように突出部200を形成して狭通路202を形成した例が示されており、また、図14には、マイクロチップ100のマイクロチャネル120における第2の流路124の内壁に対向するように突出部300を形成して狭通路302を形成した例が示されている。
ここで、図15には、こうした狭通路を備えたマイクロチップのマイクロチャネルの他の形状が示されている。
即ち、この図15に示すマイクロチップ400は、マイクロチャネル402の形状のみが上記したマイクロチップ10、120と異なり、材料や製造方法などは上記したマイクロチップ10、120と同様であるため、その詳細な説明は省略する。
マイクロチャネル402は、逆T字形状に形成された第1の流路404と第2の流路406とより構成されている。即ち、第1の流路404と直交するように、第2の流路406の一方の端部406aが連接されている。
そして、第1の流路404の一方の端部404aは外部に開口している開口部たる第1のポート408と連通しており、第1の流路404の他方の端部404bは外部に開口している開口部たる第2のポート410と連通しており、第2の流路406の他方の端部406bは外部に開口している開口部たる第3のポート412と連通している。
また、このマイクロチャネル402においては、第1の流路404に第1の狭通路414および第2の狭通路416の2つの狭通路が形成されており、第1の狭通路414は、第1の流路404と第2の流路406との接続部と第1のポート408との間であって、第1の流路404と第2の流路406との接続部の近傍に形成されていて、一方、第2の狭通路416は、第1の流路404と第2の流路406との接続部と第2のポート410との間であって、第2のポート410寄りに形成されている。
ここで、第1の狭通路414は、第1の流路404の内壁に突出部418を所定ピッチずらして互いに対向するように2個ずつ配置することにより構成されている。同様に、第2の狭通路416は、第2の流路406の内壁に突出部420を所定ピッチずらして互いに対向するように2個ずつ配置することにより構成されている。従って、これら第1の狭通路414と第2の狭通路416とは、クランク形状の流路となる。

次に、上記した図15に示すマイクロチップ400を使用したアフィニティーマイクロチップ電気泳動を用いて、DNAの濃縮および配列特異的分離を行う手法について説明する。マイクロチップ400のような本発明によるマイクロチップを用いると、検体DNAの濃縮とその配列特異的分離を一度の操作で簡易かつ迅速に行うことができる。
具体的には、以下に説明する本願発明者により実施された実験によれば、110倍以上の検体DNAの濃縮と配列特異的分離に成功した。これらは一度の操作で行うことができ、その時間はわずか15秒以内である。また、本手法は、希薄な検体DNAの一塩基変異検出に対して、簡易なデバイス作製および検出操作を可能にするものである。
なお、マイクロチップ400の各部の寸法は図15に記載した通りであり、また、マイクロチャネル402の第1の流路404と第2の流路406との断面形状は、幅100μm、深さ22μmの矩形状であり、第1の狭通路414と第2の狭通路416の最も断面積が急激に小さくなる箇所の断面形状は、幅10μm、深さ22μmの矩形状である。また、マイクロチップ400のPDMS部分は鋳型法により作製し、スライドガラスへ可逆的に貼り合わせた。
実験においては、検体として2種類の蛍光標識一本鎖DNA(K−ras遺伝子コドン10〜13とその一塩基変異体)の等量混合物を用いた(正常体(N):FITC-5’-GGA GCT GGT GGC-3’,変異体(M):FITC-5’-GGA GCT AGT GGC-3’)。検体DNAの濃縮と分離のためのDNA−ポリ(N,N−ジメチルアクリルアミド)(DNA−PDMA)複合体は、N,N−ジメチルアクリルアミドとメタクリロイル基を有する一本鎖リガンドDNA(5’-CAC CAG C-3’,正常体の中央部分に相補)のラジカル重合により得た。
図16(a)(b)(c)(d)(e)には本願発明者が行った実験操作の概略図が示されており、これらを参照しながら実験操作について説明する。
まず、マイクロチップ400を10kPaに設定された真空容器500内に5分間保持し、PDMSに溶存する空気を脱気する(図16(a):脱気)。
それから、マイクロチップ400を大気中に出した後に、検体DNAおよびDNA−PDMA複合体をそれぞれ第1のポート408、第2ポート410、第3のポート412へ3μlずつ滴下する(図16(b):試料滴下)。
第1のポート408、第2ポート410、第3のポート412へ滴下された溶液は、上記した本発明の作用により自発的にマイクロチャネル402、即ち、第1の流路404および第2の流路406内に充填され、第1の狭通路414と第2の狭通路416との付近でそれぞれ液−液界面を形成する(図16(c):自発的な溶液充填と界面形成)。
ここで、試料のプラグ長さは二つの狭通路、即ち、第1の狭通路414と第2の狭通路416との間距離で決定され、その長さは11mmである。白金電極を第1のポート408、第2ポート410、第3のポート412へ取り付けた後、高電圧(250V/cm)を印加して電気泳動を行った。
図17に濃度プロファイルを示し、図18にその蛍光顕微鏡写真(印加電圧250V/cm,25mMトリス−ほう酸緩衝溶液(pH 7.4),10mM MgCl,初期DNA濃度 各0.1μM,プラグ長 11mm)を示す。図17の濃度は既知濃度試料により決定した。
高電圧印加により検体DNAは電気泳動されるが、液−液界面付近の溶液組成の変化により検体DNAは液−液界面付近で濃縮された(図16(d):濃縮,図17および図18の5s)。
また、電圧の切替などを行わずにそのまま電気泳動を続けるだけで、正常体と変異体が分離して検出された(図16(e):分離,図17および図18の15s)。
リガンドDNAとの親和力が大きい正常体は、二重らせん形成により液−液界面付近に著しく捕捉された。このとき正常体のピーク濃度は11μMと見積もられ、これは110倍以上濃縮されたことを示す。一方,変異体はリガンドDNAとの親和力が小さいので、リガンドDNAに捕捉されずにそのまま泳動し、正常体と分離したピークとして検出された。
このように、本発明によるマイクロチップを用いた上記した手法は、デバイスの作製が簡易であり、また迅速な遺伝子の点変異や一塩基多型の検出法として極めて有用である。

次に、マイクロチップ400とは異なる形態のマイクロチップを用いて、アフィニティー電気泳動によるDNA一塩基変異検出の実験結果について説明する。
まず、図19を参照しながら実験試料について説明すると、検体には2種類の蛍光標識一本鎖DNA(K−ras遺伝子コドン10〜13とその一塩基変異体)の等量混合物を用いた(正常体(N):FITC-5’-GGA GCT GGT GGC-3’,変異体(M):FITC-5’-GGA GCT AGT GGC-3’)。検体DNAの分離のためのDNA−ポリ(N,N−ジメチルアクリルアミド)(DNA−PDMA)複合体は,N,N−ジメチルアクリルアミドとメタクリロイル基を有する一本鎖リガンドDNA(5’-CAC CAG C-3’,正常体の中央部分に相補)のラジカル重合により得た。
次に、本発明によるマイクロチップと電極を形成したガラス基板とを貼り合わせて構成されるデバイスの作製について、図20を参照しながら説明する。
即ち、デバイスは、ガラス基板上にパターニングした電極部と、複数の直線形状のマイクロチャネルを有するPDMSチップ(本発明によるマイクロチップ)とから構成されている。
電極部は、ガラス基板上にCr/Au(10/100nm)を真空蒸着し、フォトリソグラフィー技術を用いてパターニングを行った。左右の電極幅は400μm、中央の電極幅は100μmである。なお、図21には、電極の形状ならびに各部の寸法が示されている。
また、図22にはPDMSチップにおけるマイクロチャネル、ポートならびに狭通路の配置関係を示す概略上面説明図が示されており、PDMSチップは鋳型法により作製し、6本のマイクロチャネルが形成されている。これらの6本のマイクロチャネルのそれぞれの両端部は、外部に開口している開口部たるポートに連通している。
各マイクロチャネルの断面形状は、幅100μm、深さ25μmの矩形状に形成されており、その中央部付近には狭通路が形成されている。この狭通路の位置は、ガラス基板と張り合わせる際に、中央の電極から500μmの位置となるようにした。
次に、図23を参照しながら実験操作について説明すると、まず、デバイスを真空容器内(10kPa)に15分間保持し、PDMSに溶存する空気を脱気する。
次に、大気中に出した後、検体DNAを各マイクロチャネルの図22上左側の各ポートへ、DNA−PDMA複合体を図22上右側の各ポートへ3μlずつ分注する。
溶液は本発明のマイクロチップの作用により自発的にマイクロチャネル内に充填され、狭通路付近で液液界面を形成する。試料のプラグ長さは中央電極と狭通路との間の距離で決定され、その長さは500μmである。電源を接続後、各電極に電圧(左:10V,中央:0V,右:10V)を印加して電気泳動を行った。
図24は、同一検体を6つのマイクロチャネルを用いて同時検出を行ったものである。全てのマイクロチャネルにおいて、電気泳動開始後30秒には、正常体と変異体とが明確な二つのバンドとして検出された。
また、図25は、検体として
a.正常体+変異体
b.変異体のみ
c.正常体のみ
d.正常体+変異体
を用い、分離媒体としてa〜cはDNA−PDMA複合体、dはリガンドDNAを含まないPDMAを用いて実験を行った。
aの「正常体+変異体」のマイクロチャネルは、60秒後には正常体と変異体が明確な二つのバンドとして検出された。また、コントロール実験として行ったb〜cのマイクロチャネルについても、期待される結果が得られた。

なお、公知の文献「S. Kaneda and T. Fujii著, Combining droplet-based liquid handling and on-chip capillary electrophoresis with a new sampling injection method (M. A. Northrup, K. F. Jansen, and D. J. Harrison編, Micro Total Analysis Systems 2003, Vol. 2, Transducers Research Foundation, San Diego, 2003の pp. 1279-1282に収録)」では、DNA試料溶液とポリマー溶液との界面をマイクロ流路内に形成した後、電気泳動を行うことにより、DNA試料を分離する技術が開示されている。なお、界面の形成には特開2000−27813「微量流体制御機構」の技術が使用されており、従来のマイクロチップ電気泳動と違って電圧を切り替える必要がない。
しかしながら、上記文献に開示された手法で界面を所望の位置に形成するには、空気圧を使って溶液を制御しなければならず、構造も操作も複雑であった。そのため、流路をワンチップに多数並べて同時に制御したり、一つの流路に2ヶ所以上の界面を作ったりすることは容易ではなかった。
また、ポリマー溶液には固定化DNAを含んでいないため、本発明によるマイクロチップを用いた上記した手法のように100倍以上の濃縮や配列特異的な分離は不可能であった。
ところが、本発明によるマイクロチップを用いた上記した手法によれば、マイクロチャネル内の所望の位置に液−液界面を形成することが容易にできるため、流路をワンチップに多数並べて同時に制御したり、一つの流路に2ヶ所の界面を作ったりすることに困難は生じない。
ここで、界面を2ヶ所にすることにより、試料注入用ポートとは別に電気泳動用ポートを設けることができ、そこに高電圧を印加することができるようになる。その結果、分析が高速化されることになる。
一方、界面が1ヶ所しかない場合は、電圧を切り替えないことを前提とすれば電気泳動用の電極を流路内に設けざるを得ず、そこに高電圧をかけると電気分解によって気体が生じて流路をブロックしてしまい、分析ができなくなってまうという問題点がある。
また、本発明によるマイクロチップを用いた上記した手法は、公知のDNA−ポリマー複合体技術と組み合わせることができる。この場合、試料DNA溶液とDNA−ポリマー複合体溶液の界面を形成した後、電圧を印加して試料DNAをDNA−ポリマー複合体の方向に電気泳動させる.試料DNAはポリマーに固定化されたDNAにトラップされて著しく減速される。一般にフロー系では濃度は移動度に反比例するため、試料溶液とDNA−ポリマー複合体溶液がつくる界面において、試料DNAは、例えば、100倍以上濃縮される。
さらに、もう一つの効果として、公知の配列特異的な分離を前記濃縮と同時に行うことができる。
即ち、試料がいくつかのDNAの混合物であり、それらの配列がわずかに異なる場合には、固定化DNAに対する親和性がわずかに異なることにより移動度に差ができるので、分離することが可能となるものである。
なお、本明細書において「界面」とは、そこを境にして物質濃度が急激に変わる仮想的な面を意味するものとする。当該面は、現実には拡散によって数μm〜100μm程度の厚みができると考えられるが、必ずしも全然混ざらないということを意味していない。
(11)上記した実施の形態ならびに上記した(1)乃至(10)に示す変形例は、適宜に組み合わせるようにしてもよい。
本発明は、化学実験や生物実験の実験操作、例えば、アフィニティーキャピラリー電気泳動(ACE)法を実施する際に利用することができる。
図1は、本発明によるマイクロ流体制御機構を実施したマイクロチップの概略構成上面説明図である。 図2(a)は、図1に示すマイクロチップのA−A線による断面図(概略構成縦断面図)であり、また、図2(b)は、図1に示すマイクロチップのB−B線による断面図(概略構成縦断面図)である。 図3は、図1に示すマイクロチップの動作を示す説明図であり、図3(a)は脱気処理を示す説明図であり、図3(b)は液体の滴下を示す説明図であり、図3(c)は2液の混合を示す説明図であり、図3(d)は図3(c)の一部拡大説明図である。 図4は、本願発明者による実験結果を示す顕微鏡写真である。 図5は、脱気時間を変えた場合の全流速の時間変化を示すグラフである。 図6は、全流量に対する一方の支流の流量の比の時間変化を示すグラフである。 図7は、溶液注入前のインターバルを変えた場合の全流速の時間変化を示すグラフである。 図8(a)(b)(c)(d)は、本発明によるマイクロ流体制御機構を実施したマイクロチップの製造過程を示す概略構成説明図である。 図9は、本発明によるマイクロ流体制御機構を実施したマイクロチップの他の例を示す概略構成縦断面図である。 図10(a)(b)(c)(d)(e)はそれぞれ、本発明によるマイクロ流体制御機構を実施したマイクロチップの他の例を示す概略構成説明図である。 図11は、本発明によるマイクロ流体制御機構を実施したマイクロチップの他の例の概略構成上面説明図である。 図12は、図11に示すマイクロチップのC−C線による断面図(概略構成縦断面図)である。 図13は、マイクロチャネルに狭通路を形成したマイクロチップの例を示す概略構成上面説明図である。 図14は、マイクロチャネルに狭通路を形成したマイクロチップの例を示す概略構成上面説明図である。 図14は、マイクロチャネルに狭通路を形成したマイクロチップの例を示す概略構成上面説明図である。 図16(a)(b)(c)(d)(e)は、本願発明者が行った実験操作を示す概略図である。 図17は、本願発明者が行った実験結果の濃度プロファイルを示すグラフである。 図18は、本願発明者が行った実験結果の蛍光顕微鏡写真(印加電圧250V/cm,25mMトリス−ほう酸緩衝溶液(pH 7.4),10mM MgCl,初期DNA濃度 各0.1μM,プラグ長 11mm)である。 図19は、本願発明者が行った実験における実験試料の説明図である。 図20は、本発明によるマイクロチップと電極を形成したガラス基板とを貼り合わせて構成されるデバイスの作製の手法を示す説明図である。 図21は、電極の形状ならびに各部の寸法を示す説明図である。 図22は、PDMSチップにおけるマイクロチャネル、ポートならびに狭通路の配置関係を示す概略上面説明図である。 図23は、本願発明者が行った実験操作を示す概略図である。 図24は、複数サンプルの同時測定の実験結果の蛍光顕微鏡写真である。 図25は、検体として「正常体+変異体」、「変異体のみ」、「正常体のみ」、「正常体+変異体」を用い、分離媒体として「正常体+変異体」、「変異体のみ」および「正常体のみ」はDNA−PDMA複合体、「正常体+変異体」はリガンドDNAを含まないPDMAを用いて実験を行った結果の蛍光顕微鏡写真である。
符号の説明
10,10’,100 マイクロチップ
12,112 第1の板状部材
12a 上面
12b 下面
14,114 第2の板状部材
16 被覆部材
20,120 マイクロチャネル
22 混合用流路
22a,22b 端部
22c 内壁
24 第1導入用流路
24a,24b 端部
26 第2導入用流路
26a,26b 端部
30 第1サンプル用ポート
32 第2サンプル用ポート
40 減圧室
40a 側方開口部
40b 上方開口部
40c 内部空間
40d 内壁
120a 交差箇所
122 第1の流路
122a,122b 端部
124 第2の流路
124a,124b 端部
131,132,133,134 ポート
200、300 突出部
202、302 狭通路
400 マイクロチップ
402 マイクロチャネル
404 第1の流路
406 第2の流路
408 第1のポート
410 第2のポート
412 第3のポート
414 第1の狭通路
416 第2の狭通路
418、420 突出部
500 真空容器

Claims (13)

  1. 所定の形状に形成されたマイクロチャネルと、
    前記マイクロチャネルの複数の端部のそれぞれに形成され、前記マイクロチャネル内に液体を導入するために外部に開口する複数のポートと
    を有し、
    前記マイクロチャネルの全体または一部を高分子材料により形成し、
    低圧環境において前記高分子材料を脱気した後に大気中に戻すことにより、前記マイクロチャネル内の空気を前記高分子材料に溶解させ、
    前記複数のポートの少なくともいずれか1つのポートに液体を滴下するとともに他のポートを封止することにより前記マイクロチャネル内に減圧された空間を生起し、前記減圧された空間に前記液体が吸引される
    ことを特徴とするマイクロ流体制御機構。
  2. 所定の形状に形成されたマイクロチャネルと、
    前記マイクロチャネルの複数の端部のうちの所定の端部側に連接され、前記マイクロチャネルの内部とのみ連通し外部に対して遮蔽された内部空間を有する減圧室と、
    前記マイクロチャネルの複数の端部のうちの前記減圧室が連接された端部を除いた残余の端部それぞれに形成され、前記マイクロチャネル内に液体を導入するために外部に開口する複数のポートと
    を有し、
    前記マイクロチャネルまたは前記減圧室のそれぞれの全体または一部のうちの少なくともいずれかを高分子材料により形成し、
    低圧環境において前記高分子材料を脱気した後に大気中に戻すことにより、前記マイクロチャネル内と前記減圧室内との空気を前記高分子材料に溶解させ、
    前記複数のポートの少なくともいずれか1つのポートに液体を滴下するとともに他のポートを封止することにより前記マイクロチャネルと前記減圧室とにより形成される減圧された空間を生起し、前記減圧された空間に前記液体が吸引される
    ことを特徴とするマイクロ流体制御機構。
  3. 請求項1または請求項2のいずれか1項に記載のマイクロ流体制御機構において、
    前記マイクロチャネルに1以上の狭通路を形成した
    ことを特徴とするマイクロ流体制御機構。
  4. 請求項3に記載のマイクロ流体制御機構において、
    前記狭通路は2個形成された
    ことを特徴とするマイクロ流体制御機構。
  5. 一方の端部に複数の導入用流路が連接され、他方の端部が減圧室に連接された混合用流路と、
    前記複数の導入用流路それぞれの前記混合用流路と連通する側の端部とは異なる端部側に形成され、前記導入用流路内に液体を導入するために外部に開口する複数のポートと、
    前記減圧室の内部空間を、前記混合用流路の内部とのみ連通させ外部に対して遮蔽する封止手段と
    を有し、
    前記封止手段、前記減圧室または前記混合用流路のそれぞれの全体または一部のうちの少なくともいずれかを高分子材料により形成し、
    低圧環境において前記高分子材料を脱気した後に大気中に戻すことにより、前記導入用流路内と前記混合用流路内と前記減圧室内との空気を前記高分子材料に溶解させ、
    前記複数のポートの少なくともいずれか1つのポートに液体を滴下するとともに他のポートを封止することにより前記導入用流路と前記混合用流路と前記減圧室とにより形成される減圧された空間を生起し、前記減圧された空間に前記液体が吸引される
    ことを特徴とするマイクロ流体制御機構。
  6. 請求項5に記載のマイクロ流体制御機構において、
    前記混合用流路に1以上の狭通路を形成した
    ことを特徴とするマイクロ流体制御機構。
  7. 請求項6に記載のマイクロ流体制御機構において、
    前記狭通路は2個形成された
    ことを特徴とするマイクロ流体制御機構。
  8. 請求項1、請求項2、請求項3、請求項4、請求項5、請求項6または請求項7のいずれか1項に記載のマイクロ流体制御機構において、
    前記高分子材料はゴムである
    マイクロ流体制御機構。
  9. 請求項1、請求項2、請求項3、請求項4、請求項5、請求項6、請求項7または請求項8のいずれか1項に記載のマイクロ流体制御機構を有する
    ことを特徴とするマイクロチップ。
  10. 請求項9に記載のマイクロチップにおいて、
    前記ポートからそれぞれ異なる種類の液体を導入し、前記狭通路において異なる種類の液体からなる界面を形成する
    ことを特徴とするマイクロチップ。
  11. 請求項10に記載のマイクロチップにおいて、
    前記液体の少なくとも一つが試料を含む溶液であり、他の少なくとも一つが試料と相互作用する物質を含む溶液である
    ことを特徴とするマイクロチップ。
  12. 請求項11に記載のマイクロチップにおいて、
    前記試料を前記相互作用物質の方向に電気泳動し、試料の濃縮、分離、検出またはそれらの組み合わせを行う
    ことを特徴とするマイクロチップ。
  13. 請求項11または請求項12のいずれか1項に記載のマイクロチップにおいて、
    前記試料がDNAであり、前記相互作用する物質がDNA−ポリマー複合体である
    ことを特徴とするマイクロチップ。
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