JP4415537B2 - 燃料電池システム - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、水素と酸素との電気化学反応により電気エネルギを発生させる燃料電池を備える燃料電池システムに関するもので、車両、船舶及びポータブル発電機等の移動体用発電機、或いは家庭用発電機に適用して有効である。
【0002】
【従来の技術および発明が解決しようとする課題】
水素と酸素との電気化学反応を利用して発電を行う燃料電池システムでは、所定の出力が得られるように、水素や酸素を供給する補機の制御条件等を設定しているが、電解質膜の導電率、電極触媒の活性等が経時的に低下するため、当初設定された条件では所定の出力が得られなくなる。
【0003】
このような燃料電池の劣化による出力低下を補償するためには、水素や酸素の供給量を増加させる方法が考えられる。しかしながら、この方法では、燃料電池の出力は維持できるが、補機の消費動力が増加するため、補機の消費動力を差し引いた燃料電池システムとしての出力は低下する。また、燃料電池の出力を維持する条件が、必ずしも燃料電池システムの効率を最大にする動作条件と等しくなるものではない。
【0004】
本発明は上記の点に鑑みてなされたもので、劣化した際の燃料電池システム効率の低下を最小限に抑えることを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、請求項1に記載の発明では、酸素を主成分とする酸化ガスと水素を主成分とする燃料ガスとを電気化学反応させて電気エネルギを発生させる燃料電池(10)と、燃料電池(10)から供給される電力によって作動して、酸化ガスあるいは燃料ガスの少なくとも一方を燃料電池(10)に供給する補機(21、23、32、34)とを備える燃料電池システムにおいて、燃料電池(10)の出力電流を計測する電流計測手段(12)と、燃料電池(10)の出力電圧を計測する電圧計測手段(12)と、出力電流と出力電圧との関係を示す電流・電圧特性を演算する演算手段(40)とを備え、電流・電圧特性に基づいて燃料電池(10)の劣化状態を診断し、劣化状態に応じて、劣化後のシステム効率が最大となるように補機(21、23、32、34)の制御条件を補正し、さらに、補機(32、34)にて供給される燃料ガスの圧力または量の少なくとも一方を変更して、燃料電池(10)のアノード電極の劣化状態を診断することを特徴とする。
【0006】
これによると、劣化状態に応じて劣化後のシステム効率が最大となるように補機の制御条件を補正することにより、劣化した際のシステム効率の低下を最小限に抑えることができる。
また、補機(32、34)にて供給される燃料ガスの圧力または量の少なくとも一方を変更して、燃料電池(10)のアノード電極の劣化状態を診断することにより、アノード電極の劣化の有無を推定することができる。
【0007】
請求項2に記載の発明では、酸素を主成分とする酸化ガスと水素を主成分とする燃料ガスとを電気化学反応させて電気エネルギを発生させる燃料電池(10)と、燃料電池(10)から供給される電力によって作動して、酸化ガスあるいは燃料ガスの少なくとも一方を燃料電池(10)に供給する補機(21、23、32、34)とを備える燃料電池システムにおいて、燃料電池(10)の出力電流を計測する電流計測手段(12)と、燃料電池(10)の出力電圧を計測する電圧計測手段(12)と、出力電流と出力電圧との関係を示す電流・電圧特性を演算する演算手段(40)とを備え、電流・電圧特性に基づいて燃料電池(10)の劣化状態を診断し、劣化状態に応じて、劣化後のシステム効率が最大となるように補機(21、23、32、34)の制御条件を補正し、さらに、補機(21、23)にて供給される酸化ガスの圧力または量の少なくとも一方を変更して、燃料電池(10)のカソード電極の劣化状態を診断することを特徴とする。
【0008】
これによると、劣化状態に応じて劣化後のシステム効率が最大となるように補機の制御条件を補正することにより、劣化した際のシステム効率の低下を最小限に抑えることができる。また、補機(21、23)にて供給される酸化ガスの圧力または量の少なくとも一方を変更して、燃料電池(10)のカソード電極の劣化状態を診断することにより、カソード電極の劣化の有無を推定することができる。
【0009】
請求項3に記載の発明では、酸素を主成分とする酸化ガスと水素を主成分とする燃料ガスとを電気化学反応させて電気エネルギを発生させる燃料電池(10)と、燃料電池(10)から供給される電力によって作動して、酸化ガスあるいは燃料ガスの少なくとも一方を燃料電池(10)に供給する補機(21、23、32、34)とを備える燃料電池システムにおいて、燃料電池(10)の出力電流を計測する電流計測手段(12)と、燃料電池(10)の出力電圧を計測する電圧計測手段(12)と、出力電流と出力電圧との関係を示す電流・電圧特性を演算する演算手段(40)とを備え、電流・電圧特性に基づいて燃料電池(10)の劣化状態を診断し、劣化状態に応じて、劣化後のシステム効率が最大となるように補機(21、23、32、34)の制御条件を補正し、さらに、燃料電池(10)は、積層された多数のセルを所定の押し付け圧にて押し付けて構成され、押し付け圧を変更して、セル間の接触抵抗の増加を診断することを特徴とする。
【0010】
これによると、劣化状態に応じて劣化後のシステム効率が最大となるように補機の制御条件を補正することにより、劣化した際のシステム効率の低下を最小限に抑えることができる。また、積層された多数のセルの押し付け圧を変更して、セル間の接触抵抗の増加を診断することにより、セル間の接触抵抗の増加の有無を推定することができる。
【0011】
請求項4に記載の発明では、酸素を主成分とする酸化ガスと水素を主成分とする燃料ガスとを電気化学反応させて電気エネルギを発生させる燃料電池(10)と、燃料電池(10)から供給される電力によって作動して、酸化ガスあるいは燃料ガスの少なくとも一方を燃料電池(10)に供給する補機(21、23、32、34)とを備える燃料電池システムにおいて、燃料電池(10)の出力電流を計測する電流計測手段(12)と、燃料電池(10)の出力電圧を計測する電圧計測手段(12)と、出力電流と出力電圧との関係を示す電流・電圧特性を演算する演算手段(40)とを備え、電流・電圧特性に基づいて燃料電池(10)の劣化状態を診断し、劣化状態に応じて、劣化後のシステム効率が最大となるように補機(21、23、32、34)の制御条件を補正し、さらに、燃料電池(10)は、積層された多数のセルを所定の押し付け圧にて押し付けて構成され、押し付け圧を変更して、セルの電解質膜の劣化を診断することを特徴とする。
【0012】
これによると、劣化状態に応じて劣化後のシステム効率が最大となるように補機の制御条件を補正することにより、劣化した際のシステム効率の低下を最小限に抑えることができる。また、積層された多数のセルの押し付け圧を変更して、セルの電解質膜の劣化を診断することにより、セルの電解質膜の劣化の有無を推定することができる。
【0013】
なお、請求項5に記載の発明のように、補機(21、23、32、34)の制御条件を補正する前の電流・電圧特性と、補機(21、23、32、34)の制御条件の補正を行う際の電流・電圧特性とに基づいて、燃料電池(10)の劣化状態を診断することができる。
【0016】
なお、上記各手段の括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示すものである。
【0017】
【発明の実施の形態】
(第1実施形態)
図1は第1実施形態に係る燃料電池システムを示す模式図で、この燃料電池システムは例えば電気自動車に適用される。
【0018】
図1に示すように、本実施形態の燃料電池システムは、水素と酸素との電気化学反応を利用して電気エネルギを発生する燃料電池10を備えている。この燃料電池10は、電気負荷11や2次電池(図示せず)等の電気機器に電力を供給するものである。因みに、電気自動車の場合、車両走行用の電動モータが電気負荷11に相当する。
【0019】
本実施形態では燃料電池10として固体高分子電解質型燃料電池を用いており、基本単位となるセルが複数個積層され、且つ電気的に直列接続されている。燃料電池10では、以下の水素と酸素の電気化学反応が起こり電気エネルギが発生する。
【0020】
(アノード電極側)H2→2H++2e-
(カソード電極側)2H++1/2O2+2e-→H2O
そして、各セル毎の出力電圧を検出すると共に燃料電池10の出力電流を検出するセルモニタ12が設けられ、セルモニタ12で検出したセル電圧信号および電流信号が後述する制御部40に入力されるようになっている。なお、セルモニタ12は本発明の電圧計測手段および電流計測手段に相当する。
【0021】
また、燃料電池10は、積層された多数のセルが押し付け装置13により所定の押し付け圧にて押し付けられている。押し付け装置13は、本例では圧電素子を用いており、圧電素子に印加する電圧を調整することにより押し付け圧を制御するようになっている。
【0022】
燃料電池システムには、燃料電池10のカソード電極(空気極)側に空気(酸素)を供給するための空気流路20と、燃料電池10のアノード電極(燃料極)側に水素を供給するための燃料流路30が設けられている。空気流路20は燃料電池10内部において空気が通過する部位を含み、燃料流路30は燃料電池10内部において水素が通過する部位を含む。なお、空気は本発明の酸化ガスに相当し、水素は本発明の燃料ガスに相当する。
【0023】
空気流路20の最上流部には、大気中から吸入した空気を燃料電池10に圧送するための空気ポンプ21が設けられ、空気流路20における空気ポンプ21と燃料電池10との間には、空気への加湿を行う加湿器22が設けられている。空気ポンプ21は、電動モータ(図示せず)にて駆動され、燃料電池10から電動モータに電力が供給され、その回転数を変動させることで空気供給量(酸素供給量)を調整することができる。空気流路20における燃料電池10の下流側には、燃料電池10に供給される空気の圧力、換言すると空気流路20内の空気の圧力を調整するための空気調圧弁23が設けられている。なお空気ポンプ21および空気調圧弁23は、本発明の補機に相当する。
【0024】
燃料流路30の最上流部には、水素が充填された水素ボンベ31が設けられ、燃料流路30における水素ボンベ31と燃料電池10との間には、燃料電池10に供給される水素の圧力を調整するための水素調圧弁32と、水素への加湿を行う加湿器33が設けられている。
【0025】
燃料流路30における燃料電池10の下流側は、水素調圧弁32の下流側に接続されて燃料流路30が閉ループに構成されており、これにより燃料流路30内で水素を循環させて、燃料電池10での未使用水素を燃料電池10に再供給するようにしている。
【0026】
そして、燃料流路30における燃料電池10の下流側には、燃料流路30内で水素を循環させるための水素ポンプ34が設けられている。水素ポンプ34は、電動モータ(図示せず)にて駆動され、燃料電池10から電動モータに電力が供給され、その回転数を変動させることで水素供給量を調整することができる。なお、水素調圧弁32および水素ポンプ34は、本発明の補機に相当する。
【0027】
制御部(ECU)40は、CPU、ROM、RAM等からなる周知のマイクロコンピュータとその周辺回路にて構成されている。そして、制御部40には、セルモニタ12からの電圧信号および電流信号が入力される。また、制御部40は、演算結果に基づいて、空気ポンプ21、加湿器22、空気調圧弁23、水素調圧弁32、加湿器33、水素ポンプ34に制御信号を出力する。
【0028】
なお、制御部40は、本発明の演算手段に相当し、また、電流・電圧特性に基づいて燃料電池10の劣化状態を診断して補機の制御条件を補正する制御手段に相当する。
【0029】
次に、上記構成の燃料電池システムの作動を、図1〜図8に基づいて説明する。なお、図3〜図8は制御部40にて実行される制御処理のうち、燃料電池10の劣化状態を診断して補機等の制御条件を補正する、劣化補正制御の部分の流れ図である。
【0030】
図2は燃料電池10の出力電流と出力電圧との関係を示す電流・電圧特性(I−V特性)であり、実線は初期の電流・電圧特性、一点鎖線は劣化時の電流・電圧特性である。なお、初期の電流・電圧特性は、制御部40に記憶されている。
【0031】
図2に示すように、電流・電圧特性において電圧が最低になるときの電流値を、本明細書では限界電流値という。図2中の破線は、各特性線を直線近似したものであり、直線近似した線において電流I=0のときの電圧差ΔVsを、本明細書ではシフト成分という。また、直線近似した線において電流変化量ΔIに対する電圧変化量ΔVの比(ΔV/ΔI)を、本明細書では傾き成分という。
【0032】
図3は劣化補正制御の全体の流れを示すもので、燃料電池10の劣化状態を診断するための情報として劣化特性データを収集し(ステップS100)、劣化特性データに基づいて燃料電池10の劣化内容を推定し(ステップS200)、劣化状態に応じて補機等の制御条件を補正するようになっている(ステップS300)。
【0033】
劣化特性データの収集(図3のステップS100)の詳細について、図4にて説明する。
【0034】
まず、燃料電池10に供給される水素の流量および圧力を所定条件に設定し(ステップS101)、燃料電池10に供給される空気の流量、圧力および湿度を所定条件に設定して(ステップS102)、電流・電圧特性変化データを収集する(ステップS103、詳細後述)。
【0035】
この所定条件下での電流・電圧特性変化データの収集により、劣化発生の有無が判定可能である。劣化発生の有無については、初期の電流・電圧特性と現在の電流・電圧特性とを比較することにより判定できる。
【0036】
続いて、ステップS101およびステップS102で設定した条件から、水素流量のみを増加させた条件を設定して(ステップS104)、電流・電圧特性変化データを収集する(ステップS105、詳細後述)。
【0037】
次に、ステップS101およびステップS102で設定した条件から、空気流量のみを増加させた条件を設定して(ステップS106)、電流・電圧特性変化データを収集する(ステップS107、詳細後述)。この各条件による電流・電圧特性の測定データに基づき、図6に示す手続で劣化要因の判定を行う。
【0038】
電流・電圧特性変化データの収集(図4のステップS103、105、107)の詳細について、図5にて説明する。まず、燃料電池10の電流を所定の増加速度で変化させつつ(ステップS1031)、燃料電池10の電流と電圧をセルモニタ12にて計測する(ステップS1032)。
【0039】
次に、ステップS1032で得たデータに基づいて現在の電流・電圧特性の傾き成分を算出し(ステップS1033)、制御部40に記憶された初期の電流・電圧データとステップS1032で得たデータとに基づいて、現在の電流・電圧特性のシフト成分を算出し(ステップS1034)、ステップS1032で得たデータに基づいて現在の電流・電圧特性の限界電流値を算出し(ステップS1035)、ステップS1033〜1035で算出した値を格納する(ステップS1036)。
【0040】
劣化内容の推定(図3のステップS200)の詳細について、図6にて説明する。
【0041】
まず、燃料電池10に供給される水素の流量を増加させたときのシフト成分の変化量を算出する(ステップS201)。ここで、アノード電極の触媒が劣化している場合には、水素流量を増加させることにより、水素流量を増加させる前の電流・電圧特性に対して、電流・電圧特性のシフト成分が減少する。よって、このシフト成分の増加量が所定値以下の場合には(ステップS202がYES)、アノード電極の触媒の劣化無しと判定され(ステップS203)、一方、シフト成分の増加量が所定値を超えている場合には(ステップS202がNO)、アノード電極の触媒の劣化有りと判定される(ステップS204)。
【0042】
次に、燃料電池10に供給される空気の流量を増加させたときのシフト成分の変化量を算出する(ステップS205)。ここで、カソード電極の触媒が劣化している場合には、空気流量を増加させることにより、空気流量を増加させる前の電流・電圧特性に対して、電流・電圧特性のシフト成分が減少する。よって、このシフト成分の増加量が所定値以下の場合には(ステップS206がYES)、カソード電極の触媒の劣化無しと判定され(ステップS207)、一方、シフト成分の増加量が所定値を超えている場合には(ステップS206がNO)、カソード電極の触媒の劣化有りと判定される(ステップS208)。
【0043】
続いて、電流・電圧特性の傾き成分増加発生時の要因判定法を説明する。傾き成分の増加は、内部抵抗の増加が要因である。その内部抵抗の増加要因は、スタックの押し付け圧の低下によるセル間の接触抵抗の増加と、電解質膜自体の抵抗増加の2つがある。なお、現在の電流・電圧特性の傾き成分が、初期の傾き成分に対して増加していない場合は(ステップS209がYES)、このような劣化が発生していないと考えられる。
【0044】
傾き成分の増加量が所定値を超えている場合は(ステップS209がNO)、まず、押し付け装置13による押し付け圧を上げて(ステップS210)、電流・電圧特性を収集する(ステップS211、詳細は図5参照)。押し付け圧を上げて傾き成分が所定値以上低下した際には(ステップS212がYES)、セル間の接触抵抗が増加していると判定される(ステップS213)。
【0045】
次に、通常時の傾き成分の増加量から、押し付け圧の低下に起因する傾き成分の増加量を差し引いて、電解質膜の抵抗増加に起因する傾き成分の増加量を算出し(ステップS214)、ステップS214で算出した値が所定値以上であれば(ステップS215がYES)、電解質膜の劣化があると判定する(ステップS216)。そして、ステップS201〜216での劣化内容の診断結果を保存する(ステップS217)。
【0046】
制御条件の補正(図3のステップS300)の詳細について、図7にて説明する。
【0047】
アノード触媒が劣化した場合には(ステップS301がYES)、燃料電池10に供給される水素の流量の増加量を複数設定して、水素流量増加時の電流・電圧特性データを収集すると共に(ステップS302)、水素流量増加時の補機の消費電力を算出する(ステップS303)。
【0048】
そして、ステップS302で得た電流・電圧特性と、ステップS303で算出した補機消費電力とに基づいて、燃料電池10の各電流値毎に、燃料電池システムの出力が最大となる水素流量の条件を求める(ステップS304)。ここで求めた電流値と水素流量との関係が、アノード触媒劣化が生じた際における最適な運転条件であり、ここで求めた電流値と水素流量との関係となるように、電流と水素流量の制御マップを更新し(ステップS305)、以後、この更新した制御マップに基づいて水素流量を制御する。
【0049】
次に、カソード触媒が劣化した場合には(ステップS311がYES)、燃料電池10に供給される空気の流量の増加量を複数設定して、空気流量増加時の電流・電圧特性データを収集すると共に(ステップS312)、空気流量増加時の補機の消費電力を算出する(ステップS313)。
【0050】
そして、ステップS312で得た電流・電圧特性と、ステップS313で算出した補機消費電力とに基づいて、燃料電池10の各電流値毎に、燃料電池システムの出力が最大となる空気流量の条件を求める(ステップS314)。ここで求めた電流値と空気流量との関係が、カソード触媒劣化が生じた際における最適な運転条件であり、ここで求めた電流値と空気流量との関係となるように、電流と空気流量の制御マップを更新し(ステップS305)、以後、この更新した制御マップに基づいて空気流量を制御する。
【0051】
次に、押し付け圧の低下によるセル間の接触抵抗の増加が有り(ステップS321がYES)、かつ、その接触抵抗の増加量が所定値以上の場合には(ステップS322がYES)、押し付け装置13による押し付け圧を上げると共に、押し付け圧が低下したことを知らせる警報を出力する(ステップS323)。
【0052】
次に、電解質膜の劣化が有り(ステップS331がYES)、かつ、その劣化度合が所定値以上の場合には(ステップS332がYES)、加湿器22、33による加湿の条件を補正すると共に、電解質膜の劣化が有ったことを知らせる警報を出力する(ステップS333)。
【0053】
ステップS333の詳細について、図8にて説明する。まず、電流と加湿量目標値のマップにおける、加湿量目標値を新値に増加補正し(ステップS3331)、この更新したマップに基づいて加湿量を制御して、電流・電圧特性を収集する(ステップS3332、詳細は図5参照)。
【0054】
そして、加湿量目標値を補正後の電流・電圧特性の傾き成分が、補正前の傾き成分に対して減少した場合は(ステップS3333がYES)、電流と加湿量目標値のマップを更新し(ステップS3334)、以後、この更新したマップに基づいて加湿量を制御する。
【0055】
一方、加湿量目標値を補正しても傾き成分が減少しなかった場合は(ステップS3333がNO)、加湿量を増加するだけでは電解質膜の劣化による出力低下を補償することが不可能と判断し、その旨を知らせる警報を出力する(ステップS3335)。
【0056】
上記した本実施形態によると、補機の制御条件を補正する前の電流・電圧特性と、補機の制御条件の補正を行う際の電流・電圧特性とに基づいて、燃料電池10の劣化状態を診断することができる。
【0057】
すなわち、燃料ガスの量を変更してアノード電極の劣化状態を診断することができ、酸化ガスの量を変更してカソード電極の劣化状態を診断することができ、セルの押し付け圧を変更することによりセル間の接触抵抗の増加や電解質膜の劣化を診断することができる。
【0058】
そして、劣化状態に応じて劣化後のシステム効率が最大となるように補機の制御条件を補正することにより、劣化した際のシステム効率の低下を最小限に抑えることができる。
【0059】
また、補機の制御条件を変化させた際の燃料電池10の出力電力と補機の制御条件を変化させた際の補機の消費動力との差が最大となるように、補機の制御条件を決定することにより、劣化した際のシステム効率の低下を最小限に抑えることができる。
【0060】
なお、制御条件の補正の手順(図3参照)において、ステップS302では水素流量を増加させたが、水素圧力を増加させるようにしてもよい。
【0061】
この場合、ステップS302では燃料電池10に供給される水素の圧力の増加量を複数設定して、水素圧力増加時の電流・電圧特性データを収集すると共に、ステップS303では水素圧力増加時の補機の消費電力を算出する。さらに、ステップS304では、ステップS302で得た電流・電圧特性と、ステップS303で算出した補機消費電力とに基づいて、燃料電池10の各電流値毎に、燃料電池システムの出力が最大となる水素圧力の条件を求め、ステップS305ではここで求めた電流値と水素圧力との関係となるように、電流と水素圧力の制御マップを更新し、以後、この更新した制御マップに基づいて水素圧力を制御する。
【0062】
また、制御条件の補正の手順(図3参照)において、ステップS312では空気流量を増加させたが、空気圧力を増加させるようにしてもよい。
【0063】
この場合、ステップS312では燃料電池10に供給される空気の圧力の増加量を複数設定して、空気圧力増加時の電流・電圧特性データを収集すると共に、ステップS313では空気圧力増加時の補機の消費電力を算出する。さらに、ステップS314では、ステップS312で得た電流・電圧特性と、ステップS313で算出した補機消費電力とに基づいて、燃料電池10の各電流値毎に、燃料電池システムの出力が最大となる空気圧力の条件を求め、ステップS315ではここで求めた電流値と空気圧力との関係となるように、電流と空気圧力の制御マップを更新し、以後、この更新した制御マップに基づいて空気圧力を制御する。
【0064】
また、制御条件の補正の手順において、ステップS302で水素圧力を増加させるようにすることと、ステップS312で空気圧力を増加させるようにすることを、共に実施してもよいし、いずれか一方を実施してもよい。また、流量と圧力の増加を組み合わせて同時に行ってもよい。
【0065】
(第2実施形態)
本実施形態は、上記第1実施形態の電流・電圧特性変化データの収集の手順(図5参照)を図9のように変更したものであり、その他の点は第1実施形態と同一である。
【0066】
図9において、燃料電池10を運転させながら、運転中の電流と電圧を計測し(ステップS1031a)、その計測したデータを統計処理して平均電流・電圧特性を算出し(ステップS1032a)、以下、第1実施形態と同様に、ステップS1033以降の処理を行う。
【0067】
第1実施形態の方法では、データ収集は、燃料電池システム停止中(車両停止時もしくは2次電池での走行時)に行う必要があるが、本実施形態では、燃料電池システムは従来通り運転したまま、すなわち通常運転時に電流・電圧特性が測定できるため、システムを停止せずとも良い。
【0068】
(第3実施形態)
本実施形態は、上記第1実施形態の劣化特性データの収集の手順(図4参照)を図10のように変更したものであり、その他の点は第1実施形態と同一である。
【0069】
第1実施形態のステップS104では水素流量を増加させた条件を設定したのに対し、本実施形態では水素圧力のみを増加させた条件を設定するようにしている(ステップS104a)。また、第1実施形態のステップS106では空気流量を増加させた条件を設定したのに対し、本実施形態では空気圧力のみを増加させた条件を設定するようにしている(ステップS106a)。
【0070】
(第4実施形態)
本実施形態は、上記第1実施形態の劣化内容の推定の手順(図6参照)を図11のように変更したものであり、その他の点は第1実施形態と同一である。
【0071】
第1実施形態のステップS201では水素流量を増加させたときのシフト成分の変化量を算出したのに対し、本実施形態では水素圧力を増加させたときのシフト成分の変化量を算出するようにしている(ステップS201a)。また、第1実施形態のステップS205では空気流量を増加させたときのシフト成分の変化量を算出したのに対し、本実施形態では空気圧力を増加させたときのシフト成分の変化量を算出するようにしている(ステップS205a)。
【図面の簡単な説明】
【図1】第1実施形態に係る燃料電池システムを示す模式図である。
【図2】図1の燃料電池10の出力電流と出力電圧との関係を示す電流・電圧特性図である。
【図3】図1の制御部40にて実行される劣化補正制御の部分の流れ図である。
【図4】図3の劣化特性データの収集の詳細を示す流れ図である。
【図5】図4の電流・電圧特性変化データの収集の詳細を示す流れ図である。
【図6】図3の劣化内容の推定の詳細を示す流れ図である。
【図7】図3の制御条件の補正の詳細を示す流れ図である。
【図8】図7の加湿条件の補正・劣化警報の出力の詳細を示す流れ図である。
【図9】第2実施形態にて実行される制御処理の要部を示す流れ図である。
【図10】第3実施形態にて実行される制御処理の要部を示す流れ図である。
【図11】第4実施形態にて実行される制御処理の要部を示す流れ図である。
【符号の説明】
10…燃料電池、12…セルモニタ(電流計測手段兼電圧計測手段)、
21…空気ポンプ(補機)、23…空気調圧弁(補機)、
32…水素調圧弁(補機)、34…水素ポンプ(補機)、
40…制御部(演算手段)。
Claims (9)
- 酸素を主成分とする酸化ガスと水素を主成分とする燃料ガスとを電気化学反応させて電気エネルギを発生させる燃料電池(10)と、前記燃料電池(10)から供給される電力によって作動して、前記酸化ガスあるいは前記燃料ガスの少なくとも一方を前記燃料電池(10)に供給する補機(21、23、32、34)とを備える燃料電池システムにおいて、
前記燃料電池(10)の出力電流を計測する電流計測手段(12)と、
前記燃料電池(10)の出力電圧を計測する電圧計測手段(12)と、
前記出力電流と前記出力電圧との関係を示す電流・電圧特性を演算する演算手段(40)とを備え、
前記電流・電圧特性に基づいて前記燃料電池(10)の劣化状態を診断し、劣化状態に応じて、劣化後のシステム効率が最大となるように前記補機(21、23、32、34)の制御条件を補正し、
さらに、前記補機(32、34)にて供給される前記燃料ガスの圧力または量の少なくとも一方を変更して、前記燃料電池(10)のアノード電極の劣化状態を診断することを特徴とする燃料電池システム。 - 酸素を主成分とする酸化ガスと水素を主成分とする燃料ガスとを電気化学反応させて電気エネルギを発生させる燃料電池(10)と、前記燃料電池(10)から供給される電力によって作動して、前記酸化ガスあるいは前記燃料ガスの少なくとも一方を前記燃料電池(10)に供給する補機(21、23、32、34)とを備える燃料電池システムにおいて、
前記燃料電池(10)の出力電流を計測する電流計測手段(12)と、
前記燃料電池(10)の出力電圧を計測する電圧計測手段(12)と、
前記出力電流と前記出力電圧との関係を示す電流・電圧特性を演算する演算手段(40)とを備え、
前記電流・電圧特性に基づいて前記燃料電池(10)の劣化状態を診断し、劣化状態に応じて、劣化後のシステム効率が最大となるように前記補機(21、23、32、34)の制御条件を補正し、
さらに、前記補機(21、23)にて供給される前記酸化ガスの圧力または量の少なくとも一方を変更して、前記燃料電池(10)のカソード電極の劣化状態を診断することを特徴とする燃料電池システム。 - 酸素を主成分とする酸化ガスと水素を主成分とする燃料ガスとを電気化学反応させて電気エネルギを発生させる燃料電池(10)と、前記燃料電池(10)から供給される電力によって作動して、前記酸化ガスあるいは前記燃料ガスの少なくとも一方を前記燃料電池(10)に供給する補機(21、23、32、34)とを備える燃料電池システムにおいて、
前記燃料電池(10)の出力電流を計測する電流計測手段(12)と、
前記燃料電池(10)の出力電圧を計測する電圧計測手段(12)と、
前記出力電流と前記出力電圧との関係を示す電流・電圧特性を演算する演算手段(40)とを備え、
前記電流・電圧特性に基づいて前記燃料電池(10)の劣化状態を診断し、劣化状態に応じて、劣化後のシステム効率が最大となるように前記補機(21、23、32、34)の制御条件を補正し、
さらに、前記燃料電池(10)は、積層された多数のセルを所定の押し付け圧にて押し付けて構成され、
前記押し付け圧を変更して、前記セル間の接触抵抗の増加を診断することを特徴とする燃料電池システム。 - 酸素を主成分とする酸化ガスと水素を主成分とする燃料ガスとを電気化学反応させて電気エネルギを発生させる燃料電池(10)と、前記燃料電池(10)から供給される電力によって作動して、前記酸化ガスあるいは前記燃料ガスの少なくとも一方を前記燃料電池(10)に供給する補機(21、23、32、34)とを備える燃料電池システムにおいて、
前記燃料電池(10)の出力電流を計測する電流計測手段(12)と、
前記燃料電池(10)の出力電圧を計測する電圧計測手段(12)と、
前記出力電流と前記出力電圧との関係を示す電流・電圧特性を演算する演算手段(40)とを備え、
前記電流・電圧特性に基づいて前記燃料電池(10)の劣化状態を診断し、劣化状態に応じて、劣化後のシステム効率が最大となるように前記補機(21、23、32、34)の制御条件を補正し、
さらに、前記燃料電池(10)は、積層された多数のセルを所定の押し付け圧にて押し付けて構成され、
前記押し付け圧を変更して、前記セルの電解質膜の劣化を診断することを特徴とする燃料電池システム。 - 前記補機(21、23、32、34)の制御条件を補正する前の電流・電圧特性と、前記補機(21、23、32、34)の制御条件の補正を行う際の電流・電圧特性とに基づいて、前記燃料電池(10)の劣化状態を診断することを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1つに記載の燃料電池システム。
- 前記補機(21、23、32、34)の制御条件を補正する前の電流・電圧特性と、前記補機(21、23、32、34)の制御条件の補正を行う際の電流・電圧特性とに基づいて、前記燃料電池(10)の劣化状態を診断し、
さらに、前記補機(21、23)にて供給される前記酸化ガスの圧力または量の少なくとも一方を変更して、前記燃料電池(10)のカソード電極の劣化状態を診断することを特徴とする請求項1、3、4のいずれか1つに記載の燃料電池システム。 - 前記燃料電池(10)は、積層された多数のセルを所定の押し付け圧にて押し付けて構成され、
前記押し付け圧を変更して、前記セル間の接触抵抗の増加を診断することを特徴とする請求項1、2、4のいずれか1つに記載の燃料電池システム。 - 前記補機(32、34)にて供給される前記燃料ガスの圧力または量の少なくとも一方を変更して、前記燃料電池(10)のアノード電極の劣化状態を診断することを特徴とする請求項2ないし4のいずれか1つに記載の燃料電池システム。
- 前記燃料電池(10)は、積層された多数のセルを所定の押し付け圧にて押し付けて構成され、
前記押し付け圧を変更して、前記セルの電解質膜の劣化を診断することを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1つに記載の燃料電池システム。
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