JP4431424B2 - 骨形成を促進するための組成物 - Google Patents

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本発明は、骨形成を促進するための組成物に関し、具体的には有効成分としてフェノール性アミド化合物を含む組成物、例えば医薬品や食品、健康食品もしくは機能性食品、に関する。したがって本発明の組成物は、骨粗鬆症の治療又は予防に有用である。
骨粗鬆症は、低骨量及び骨組織の老化に伴って発症する疾患であり、これが原因で骨が脆くなり骨折が起り易くなる。この疾患の90%以上が中高年に起こる退行性骨粗鬆症であり、特に女性では閉経後に出現し、男性に比べて重症化し易い。女性では閉経期の40〜50歳代から急激に骨量が減少し、60歳代で2人に1人、70歳以上で10人に7人が骨粗鬆症を起す状態にある。一方、男性では60歳過ぎから徐々に増え、70歳以上で10人に4人足らずである。現在わが国には、1,000万人以上の骨粗鬆症患者がいると推定されている。骨には蛋白質やリンなどとともに骨重量の約50%に相当するカルシウムが含まれているが、このカルシウムなどの量、即ち骨量は約40歳をピークに加齢とともに減少し、骨量が成人平均の約70%以下となるとき骨粗鬆症の症状が現れると言われている。
骨の形成は、骨芽細胞と破骨細胞のバランスによって制御されており、これらの細胞群に、骨形成を促進する因子として女性ホルモン(エストロゲン)やビタミンDなど、骨破壊を促進する因子として副甲状腺ホルモンなどが、バランスよく影響しあって作用することが知られている。骨形成は本来、骨吸収に伴ってバランスをもって行われるものであり、破骨細胞は、骨芽細胞と骨吸収促進因子の存在下で形成され、骨芽細胞によってその一生が支配されている。このように、生体内では、多数のサイトカイン類や増殖因子が介在して骨芽細胞と破骨細胞とのバランスが保たれ骨の健康が維持されている。ひとたび代謝障害、内分泌障害、加齢などにより骨吸収と骨形成のバランスがくずれるとき、骨量が減少し、骨の内部構造が壊れ、脆弱性が亢進し、その結果、骨粗鬆症を発症する。
骨芽細胞は、間葉組織からできた骨形成細胞であり、未分化間葉系細胞から前駆骨芽細胞、幼若骨芽細胞を経て成熟骨芽細胞へと分化し形成される。骨基質は骨芽細胞から形成され、骨芽細胞は骨細胞として骨基質の中に封入される。前駆細胞の段階から成熟細胞の段階の間にI型コラーゲン、アルカリホスファターゼ(ALP)、オステオネクチンが産生され、幼若骨芽細胞まで分化するとオステオポンチン、成熟細胞まで分化すると骨シアロタンパク(BSP)、オステオカルシン(BGP)がそれぞれ産生し始める(H. Komori, The Bone 12:49-59, 1998;非特許文献1)。骨芽細胞の分化過程で産生されるこれらのタンパクのレベルや活性は、骨形成の促進又は抑制の指標として用いることができる。実際、細胞内アルカリホスファターゼ活性は、骨芽細胞培養株を利用して骨形成促進物質候補をスクリーニングするための指標として使用されている(特開2003−155236;特許文献1)。一方、破骨細胞は、骨組織のみに存在し、高度に石灰化した骨組織を破壊、吸収する。その起源は単球・マクロファージ系の造血細胞に由来し、前駆細胞から前破骨細胞、破骨細胞、成熟破骨細胞へと分化誘導される。また、破骨細胞は、骨ミネラルを溶解する水素イオンと骨基質を分解するリソゾーム酵素を産生し、これらを骨表面との間に形成されたHowshipの吸収窩に分泌する。したがって、破骨細胞の骨吸収を選択的に阻害する物質は骨粗鬆症の臨床治療に使用可能であろう。
骨粗鬆症の治療薬として現在使用されているものは、カルシウム剤(商品名アスパラCA、カルチコール、乳酸カルシウムなど)、ビタミンD剤(商品名アルファロール、ワンアルファ、ロカルトロール、ハイティクロールなど)、女性ホルモン剤(商品名エストリールなど)、イプリフラボン(商品名オステン、アスオストなど)、ビタミンK2製剤(例えばグラケーなど)、ビスホスホネート類(商品名ファサマックス、リセドロネート、チルドロネート、イバンドロネートなど)、などである。
女性ホルモン剤は、いわゆるエストロゲン製剤であるエストリオールである。女性の閉経後に急激な骨量の減少が起こるが、これは女性ホルモンの1つである卵胞ホルモン(エストロゲン)の分泌低下が大きな原因とされている。このため、女性ホルモン剤の投与によって骨粗鬆症の予防効果が期待できるわけである。しかし、このホルモン剤の投与によって子宮癌や乳癌などの癌、心筋梗塞などの血栓性疾患の危険性が増大することが知られている。
イプリフラボンは、もともとアルファルファ(ムラサキウマゴヤシ)という牧草に含まれるフラボノイド系動物成長因子の1つとして見出されたものであるが、骨吸収を直接抑制することに加えて、エストロゲンによるカルシトニン(骨吸収抑制ホルモン)分泌促進効果を増強することによって間接的に骨吸収を抑制し、これによって骨粗鬆症における疼痛を軽減し、骨量の減少を抑制する働きがある。しかし重大な副作用として、消化性潰瘍、胃腸出血が知られている。
上記の治療薬若しくは予防薬に加えて、骨形成促進剤を含む種々の骨粗鬆症治療剤が報告されている。例えば、特開2003−155236(特許文献1)には、プテロカルパン[(5αR, 11αR)-3-ヒドロキシ-9,10-ジメトキシプテロカルパン]が骨形成促進作用と抗動脈硬化作用を有することが開示されている。プテロカルパンはマメ科のアストラガラス属植物であるオウギに含まれるイソフラボン化合物である。特開2002−308771(特許文献2)には、ドロロキシフェンなどのエストロゲンアゴニスト/アンタゴニストと骨形成を促進し骨量を増加させる薬物(フッ化ナトリウム、副甲状腺ホルモン、成長ホルモン又は成長ホルモン分泌物質など)との医薬混合物が開示されている。特開2001−253827(特許文献3)には、ポリホスホネート類(アレンドロネード、シマドロネードなど)及びスタチン類(シンバスタチン、ブラバスタチン、セリバスタチンなど)を含む、骨形成を促進及び/又は骨損失を予防及び/又はアテローム動脈硬化症を治療するための医薬組成物が開示されている。特開2000−191526(特許文献4)には、有効成分としてサポニン、ダイジン、ダイゼイン、ゲニスチン及びゲニスティン(イソフラボン類)を含む大豆の煮汁が骨形成促進及び骨粗鬆症予防効果があることが開示されている。特開平9−169665号(特許文献5)には、ホスホジエステラーゼIV阻害活性のあるキサンチン類が骨形成促進作用及び骨密度低下抑制作用をもつことが開示されている。特開平6−312930号(特許文献6)には、黄体ホルモン及び抗エストロゲン作用物質(エストラジオール誘導体、トリフェニルエチレン誘導体、ベンゾチオフェン誘導体など)が骨形成作用を有する、安全性の高い骨粗鬆症治療剤であることが開示されている。特開平5−17367号(特許文献7)には、単球-マクロファージコロニー形成刺激因子の骨粗鬆症治療効果が開示されている。
特開2003−155236 特開2002−308771 特開2001−253827 特開2000−191526 特開平9−169665号 特開平6−312930号 特開平5−17367号 H. Komori, The Bone 12:49-59, 1998
現在市販されている骨粗鬆症治療剤又は予防剤には、その有効成分の副作用が問題となる場合が少なくない。そこで、有効な骨形成促進効果をもつとともに、副作用のより軽減された安全性の高い化合物又は組成物が求められている。
本発明者らは、砂糖の原料である甜菜に含まれるポリフェノール化合物類(Hideyuki Chijiら、Agric. Biol. Chem., 48(6):1653-1654 (1984))に注目し、それらの化合物に高い骨芽細胞分化促進効果があることを見出し、本発明を完成するに至った。
本発明は、下記の式1
Figure 0004431424
[式中、Rは、H又はOR’( R’はC1〜C4アルキルを表す。)である。]
の化合物もしくはその塩、又はそれらの混合物を含む、骨形成を促進するための組成物を提供する。
一つの実施態様において、上記化合物が、式1中RがHである化合物である。
別の実施態様において、上記化合物は、式1中RがOR’(R’はC1〜C3アルキルを表す。)である化合物である。
別の実施態様において、上記化合物は、式1中RがOCH3又はOC2H5である化合物である。
別の実施態様において、上記化合物は、式1中RがOCH3である化合物である。
別の実施態様において、上記混合物は、式1中RがHである化合物とRがOCH3である化合物を含む。
別の実施態様において、上記化合物又は前記混合物が、甜菜の種子、根又は葉から得られるものである。
別の実施態様において、上記混合物が甜菜からの抽出物又は糖蜜である。
別の実施態様において、上記化合物が、化学合成によって得られるものである。
別の実施態様において、上記組成物が医薬品である。
別の実施態様において、上記医薬品が、骨粗鬆症の治療又は予防用である。
別の実施態様において、上記組成物が、食品である。
別の実施態様において、上記食品が、健康食品又は機能性食品である。
別の実施態様において、上記食品、健康食品又は機能性食品が骨粗鬆症の予防用である。
本発明で使用する用語は、下記の意味を有する。
上記式1のR’について、「C1〜C4アルキル」は、低級アルキルであるメチル(CH3)、エチル(C2H5)、n-もしくはi-プロピル(C3H7)又はn-もしくはi-ブチル(C4H9)を意味する。また同様に、「C1〜C3アルキル」は、メチル、エチル又はn-もしくはi-プロピルを意味する。
「塩」とは、式1の構造中のフェノール性水酸基がナトリウム又はカリウムなどの金属塩、あるいは脂肪族、芳香族、ヘテロ環式などのアミン類との塩を意味する。通常、医薬品で汎用されるような金属塩、アミン塩が好ましい。
「混合物」とは、上記式1の化合物から選択される2以上の化合物を含む混合物を意味し、単なる精製化合物の混合物だけでなく、天然物又は化学合成からの精製途中で得られるような上記化合物を含む中間処理物であってもよい。ここで「中間処理物」とは、粗精製物、溶媒抽出物、クロマトグラフィーからの溶出物、又はこれらに類するものを意味するが、これらに限定されない。中間処理物中の上記化合物の含有率は、20%以上、30%以上、40%以上、50%以上、60%以上、70%以上、80%以上、又は90%以上である。中間処理物は上記化合物以外の物質を含むことがあるが、そのような物質は人体に悪影響を及ぼさないものであるべきである。
「抽出物」とは、天然物、化学反応物、又はこれらの処理物を、水又は有機溶媒で抽出処理し、溶媒を除いた後の固体又は液体又はシロップを意味する。また、「糖蜜」とは、甜菜から砂糖を結晶化した後に残るシロップを指す。
「治療」又は「予防」とは、骨形成を促進することによって、骨粗鬆症の発症前後の骨量の減少や骨の脆弱性を有意に改善、緩和又は予防することを意味する。本発明により骨芽細胞の分化を促進することによって成熟骨芽細胞の形成が促進され、その結果、骨形成が促進されるとともに、骨形成と破骨細胞による骨吸収の不均衡が改善又は緩和される。
「医薬品」とは、治療又は予防を目的とした医薬組成物を意味する。本発明においては、この目的を達成するのに有効な量の上記式1の化合物が含有されているべきである。通常、医薬品は固体又は液体の賦形剤を含むとともに、必要に応じて崩壊剤、香味剤、遅延放出剤、滑沢剤、結合剤、着色剤などの添加剤を含むことができる。医薬品の形態は、錠剤、注射剤、カプセル剤、顆粒剤、散剤、細粒剤、徐放製剤などを含むが、これらに限定されない。
「食品」とは、業界等で日常的に使用される意味を有し、人間が食することができるすべての食料を指すが、好ましくは加工品である。たとえば菓子類、乳製品、穀類加工品などの加工食品に、本発明の式1の化合物又はその混合物を混入させることができる。また、「健康食品」及び「機能性食品」とは、業界で一般的に使用される意味を有し、骨粗鬆症の症状又は兆候を示す骨量の減少や骨の脆弱性を予防するために特別に処方された、医薬品又は一般の食品とは区別される食品の一種を指す。
本発明により、イソフラボン類とは構造的に異なるタイプのフェノール性アミド化合物が高い骨芽細胞の分化促進活性を有することを初めて見出し、したがって骨形成の促進作用を有することから骨粗鬆症の治療又は予防に使用できる。
本発明は、下記の式1
Figure 0004431424
[式中、Rは、H又はOR’( R’はC1〜C4アルキルを表す。)である。]
の化合物もしくはその塩、又はそれらの混合物を含む、骨形成を促進するための組成物を提供する。
本発明で使用される式1の化合物は、天然物からの抽出又は化学合成によって製造することができる。なお、式1の構造式中アミドカルボニルに隣接する二重結合はトランス(trans)配置である。以下に、化学合成による製造及び天然物からの製造について説明する。
化学合成による製造
上記式1の化合物は、例えば、下記式2
Figure 0004431424
の化合物(Ferulic acid)と、下記式3
Figure 0004431424
[式中、Rは、Hあるいは、OCH3、OC2H5、O-n-C3H7、O-i-C3H7、O-n-C4H9、又はO-i-C4H9である。]
の化合物からアミド結合を形成させることによって合成できる。式2及び式3の化合物は市販品を利用するか、さもなくば当業者には公知の出発物質と反応法を組合わせて容易に合成することができるだろう。
通常、式2及び式3の化合物のフェノール性水酸基は、反応前に予めベンジルオキシカルボニル基、ベンジルオキシ基、ベンジル基などで保護されるのがよい。反応後、これらの保護基は、アルカリ処理などの公知の方法によって除去可能である。これら2つの化合物のアミド結合形成反応は、高温(例えば150〜200℃)で2つの化合物を直接加熱してアミド結合を形成する方法、式2の化合物を三塩化リン、五塩化リン又は塩化チオニルと処理して酸塩化物を形成し、式3の化合物のアミノ基との間でトリエチルアミンなどの弱塩基の存在下でアミド結合を形成する方法、式2の化合物のカルボキシル基をエチルクロロホルメートなどのアルキルクロロホルメートと反応させてカルボン酸無水物としたのち、式3の化合物と反応させてアミド結合を形成させる方法、式2の化合物をN,N’-ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)と反応させてアシルイソ尿素としたのち、式3の化合物と反応させてアミド結合を形成する方法、などで行うことができる。これらのアミド結合形成反応は、当業者には周知の反応であるが、例えば日本生化学会編、生化学実験講座1、タンパク質の化学IV、化学修飾とペプチド合成(東京化学同人);Stanley R. SandlerとWolf Karo、Organic Functional Group Preparations Vol. I(Academic Press, New York(1968);Hideyuki Chijiら、Agric. Biol. Chem., 48(6):1653-1654 (1984)に開示される方法を使用できる。
天然物からの製造
式1の化合物のうち、R基が-H及び-OCH3である化合物(それぞれN-tans-feruloyltyramine(「Amide 2」)及びN-trans-feruloylhomovanillylamine(「Amide 1」)という)は、いわゆるサトウダイコン(sugar beet)と称する甜菜の種子、根及び葉から、本発明者の一人である知地英征らの方法(Agric. Biol. Chem., 48(6):1653-1654 (1984))によって抽出、単離することができる。甜菜種子は粉砕後に、例えば、アセトン抽出、エタノール抽出、中和処理、ヘキサン抽出、水層の酢酸エチル抽出、イオン交換樹脂、シリカゲル等のカラムクロマトグラフィーによる酢酸エチル層の分離(シリカゲルクロマト溶離剤:ベンゼン-酢酸エチル-エタノール系)を順次実施することによって式1の上記2種類の化合物を混合物として得ることができ、これをさらに溶離剤を例えばクロロホルム-1%エタノールに替えてシリカゲルクロマトグラフィーに掛けることによってAmide1、ついでクロロホルム-2%エタノールからAmide 2をそれぞれ分離することができる。同様の又は類似の方法を用いて、甜菜の葉や根から目的の化合物を抽出、分離することができる。甜菜の根は、砂糖の原料であり、工業的に砂糖を結晶分離したあと糖蜜から分離できる。糖蜜は酵母の発酵原料、液体肥料、飼料添加物などに利用されているが、上記化合物の原料として使用できる。Amide1は、融点161℃、マススペクトルM+, m/z 343.1394、IRスペクトル3350〜3400cm-1(OH、NH), 1660cm-1(C=O)、NMRスペクトル(アセトン-d6)δ2.82(2H, J=7Hz), 3.62(2H, J=7Hz), 3.86(3H), 3.90(3H), 5.54(1H), 5.58(1H), 6.14 (1H, J=16Hz), 7.56(1H, J=16Hz), 6.68-7.0(6H)の物性値を有する。Amide 2は、融点148℃、マススペクトルM+, m/z 313.1337、IRスペクトル3390cm-1(OH、NH), 1660cm-1(C=O)、NMRスペクトル(アセトン-d6)δ2.76(2H), 3.54(2H), 6.52(1H, J=16Hz), 7.48 (1H, J=16Hz), 6.72-7.22(5H), 7.24(1H), 8.04 (1H), 8.22(1H)の物性値を有する。
式1の化合物の骨形成を促進する活性は、後述の実施例に記載するように、培養した2.0x104cells/wellの骨芽細胞培養株MC3T3-E1に、培地中濃度0.1〜10.0μMとなるように該化合物を添加し4日間培養し、骨芽細胞の分化指標であるアルカリホスファターゼ(ALP)活性(特開2003-155236;特許文献1)と、細胞数の指標であるDNA量(C. LabarcaとK. Paigen, Analytical Biochemistry 102:344-352, 1980)を測定し、DNA量に対するALP活性を決定することによって実施できる。このALP活性が対照と比べて有意に高いほど、化合物の骨形成促進活性が高いことを示す。
あるいは、本発明の組成物の有効成分である式1の化合物をラットなどの実験動物(病態モデル動物などを含む)に胃ゾンデの投与、または試験飼料の給餌によって4週間以上飼育し、動物の大腿骨の骨幹部及び骨幹端部組織の骨成分の変動をカルシウム量、アルカリホスファターゼ活性、DNA量を指標として測定することによって、骨形成促進効果を決定することができる。骨組織のカルシウム量は、骨組織を0.25Mショ糖溶液で洗浄し、100℃で6時間乾燥したのち、乾燥重量を測定し、濃硝酸を添加して24時間120℃で分解し、カルシウム量を原子吸光光度計で定量する。アルカリホスファターゼ活性は、骨組織を冷0.25Mショ糖溶液で洗浄後、6.5mMバルビタール緩衝液(pH7.4 )中で破砕し、60秒間超音波処理、3000rpmで遠心し、上清画分の酵素活性を公知の方法(Methods of Enzymatic Analysis, Vol. 1-2, Academic Press, New York, pp856-860, 1965)で測定する。DNA量は、骨組織を冷0.25Mショ糖溶液で洗浄し、水分除去後、0.1N水酸化ナトリウム溶液中で破砕し、抽出し、3000rpmで遠心し、その上清画分をDNA測定試料とし公知の方法(J. Biol. Chem. 214:39-77, 1955)で測定する。
後述の実施例4では、骨芽細胞培養株MC3T3-E1を用いるアッセイ系でAmide 1及びAmide 2のALP活性を測定し、その結果を示したが、Amide 1は対照の約2.5倍の最大ALP活性を、Amide 2は約2倍の最大ALP活性をそれぞれ示した(図1、図2)。特にAmide 1は、培地中濃度0.1μMで対照の約2.2倍、1.0μMで約2.5倍の活性を示し、Amide 2よりも低濃度で高い活性を有していた。これらの結果から、Amide 1及びAmide 2化合物が、骨芽細胞の分化を促進する活性、即ち骨形成を促進する作用又は機能、を有することが明らかになった。同様に、Amide 1及びAmide 2以外の化合物もまた、Amide 1及びAmide 2と類似のALP活性、骨形成促進作用をもつ。
したがって、本発明は、上記式1の化合物類又はそれら2以上の化合物の混合物を含む、骨形成を促進するための組成物、具体的に医薬品(若しくは医薬組成物)あるいは食品、健康食品又は機能性食品、を提供する。
本発明の実施態様では、式1の化合物は、式1中RがHである化合物、式1中RがOR’(R’はC1〜C4アルキルを表す。)であるいずれかの化合物、式1中RがOR’(R’はC1〜C3アルキルを表す。)であるいずれかの化合物、式1中RがOCH3又はOC2H5である化合物である。また別の実施態様では、2以上の上記化合物の混合物であってもよく、その1例は、式1中RがHである化合物とRがOCH3である化合物を含む混合物である。これらの化合物又は混合物には、甜菜の種子、根又は葉から得られるものが包含され、より具体的には、甜菜からの抽出物又は糖蜜に由来するものである。また、上述したとおり、式1の化合物は、上記の方法などで化学合成されたものも包含され、適宜その2以上の化合物を組合わせて混合物とすることができる。
本発明の組成物を医薬品として使用する場合、その投与剤型としては、例えば錠剤、散剤、細粒剤、顆粒剤、被覆錠剤、徐放製剤、カプセル剤、注射剤などが挙げられる。該医薬品は賦形剤、必要に応じて結合剤、崩壊剤、滑沢剤、香味剤、着色剤、遅延放出剤などの添加剤を含むことができる。経口製剤の場合、賦形剤として、例えば乳糖、コーンスターチ、白糖、ブドウ糖、マンニトール、ソルビット、結晶セルロースなど、結合剤として、例えばポリビニルアルコール、ポリビニルエーテル、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、アラビアゴム、トラガント、ゼラチン、シェラック、ポリビニルピロリドン、ブロックコポリマーなど、崩壊剤として、例えば澱粉、寒天、ゼラチン末、結晶セルロース、炭酸カルシウム、炭酸水素ナトリウム、クエン酸カルシウム、デキストリン、ペクチンなど、滑沢剤として、例えばステアリン酸マグネシウム、タルク、ポリエチレングリコール、シリカ、硬化植物油など、香味剤として、例えばココア末、ハッカ油、桂皮末などが使用できるが、これらに限定されない。必要により、徐放性又は腸溶性製剤とするためのコーティングを施すことができる。注射用製剤の場合には、pH調整剤、溶解剤、等張化剤、緩衝化剤などが使用されるが、これらに限定されない。
骨粗鬆症の治療又は予防を必要とする患者には、経口投与、静脈内投与、動脈内投与、筋肉内投与、腹腔内投与、直腸内投与などの投与法を、患者の状態、年齢、性別などに応じて適宜選択される。有効成分の用量は、通常成人の場合1日あたり約0.1mg〜約5,000mgであり、この範囲に限定されないが、患者の状態、年齢、性別などに応じて適宜選択される。本発明で使用される化合物の中には甜菜に含有されるものもあり、このような化合物は低毒性であると考えられる。
本発明の組成物を食品、健康食品又は機能性食品として使用する場合、これらは骨粗鬆症の予防用として骨形成促進のために使用される。上述したとおり、たとえば菓子類、乳製品、穀類加工品などの加工食品に、本発明の化合物又はその混合物を、適当な賦型剤と一緒に、また必要に応じて香味剤、着色剤などの添加剤を加えて、混入させることができる。また、「健康食品」及び「機能性食品」の場合、たとえばゼラチンカプセル内に本発明の化合物又はその混合物を封入し、骨粗鬆症の症状又は兆候を示す骨量の減少や骨の脆弱性を予防するための、即ち骨形成促進のための、健康維持食品として使用することができる。有効成分の添加量は、通常成人の場合1日あたり約0.1mg〜約5,000mgに相当する量であるが、この範囲に限定されない。
以下の実施例により、本発明をさらに具体的に説明する。
N-trans-Feruloylhomovanillylamine(「Amide 1」)の合成方法
(1)4-Benzyloxy-3-methoxyphenethylamineの合成
四つ口フラスコ(500 ml容)に水素化リチウムアルミニウム6.08 g(160 mmol)を入れ、それにtetrahydrofuran(THF)280 mlを加え、窒素気流下で還流加熱した。そこに4-benzyloxy-3-methoxy-β-nitrostyrene 9.12g (32 mmol)のTHF溶液(120 ml)を滴下した。2時間還流加熱した後、反応液を室温まで冷却し、水を加えた。沈殿物をろ過し、ろ液にジエチルエーテルを加え、その有機溶媒層を分離し、2N水酸化ナトリウム水溶液、ついで水で洗浄した。溶媒を乾燥剤(硫酸マグネシウム)で乾燥後、減圧留去し、4-benzyloxy-3-methoxy-phenethylamine(黄色油状物5.27g、収率64.1%)を得た。
(2)N-(4-Benzyloxy-3-methoxyphenethyl)- ferulamide(N-trans-feruloyl-4-benzyloxy-3-methoxyphenethylamine)の合成
丸底フラスコ(300 ml)に4-benzyloxy-3-methoxy-phenethylamine 5.27g (20.5 mmol)を入れ、TFH130 mlに溶解し、そこにferulic acid(上記式2の化合物) 3.98 g (20.5 mmol)を加えた。室温で撹拌しながら1,3-dicyclohexylcarbodiimide (DCC) 5.09 gのTFH (70 ml) 溶液を滴下した。室温で窒素気流下13時間撹拌し、出発物質の消失をTLCで確認の上、シリカゲルカラムで精製し、N-(4-benzyloxy-3-methoxyphenethyl)- ferulamide(黄色固体8.36g、収率94.2%)を得た。
(3)N-trans-Feruloylhomovanillylamineの合成
四つ口フラスコ(200ml容)にN-(4-benzyloxy-3-methoxyphenethyl)- ferulamide 4 g (9.24 mmol)を入れ、それに塩酸23 ml(277 mmol)と酢酸 44 ml(769 mmol)を加え、40℃で反応させた。出発物質が消失したところで反応を止めて、反応液に水を加え、酢酸エチルで抽出後、溶媒を減圧留去した。得られた褐色シラップ(8.36g、収率94.2%)をシリカゲルカラムで精製し、N-trans-feruloylhomovanillylamine(無色固体)を得た。
融点161℃;マススペクトルM+, m/z 343.1394;UVスペクトル220nm(ε21,900), 232nm(ε22,100), 290nm(ε20,000), 319nm(ε24,300);IRスペクトル3350〜3400cm-1(OH、NH), 1660cm-1(C=O);NMRスペクトル(アセトン-d6)δ2.82(2H, J=7Hz), 3.62(2H, J=7Hz), 3.86(3H), 3.90(3H), 5.54(1H), 5.58(1H), 6.14 (1H, J=16Hz), 7.56(1H, J=16Hz), 6.68-7.0(6H)。
N-trans-Feruloyltyramine(「Amide 2」)の合成
上記のAmide 1と同様の方法で、4-benzyloxyphenethylamineとferulic acidからN-trans-feruloyltyramineを合成した。
融点148℃;マススペクトルM+, m/z 313.1337;UV;スペクトル220nm(ε22,000), 292nm(ε16,300);IRスペクトル3390cm-1(OH、NH), 1660cm-1(C=O);NMRスペクトル(アセトン-d6)δ2.76(2H), 3.54(2H), 6.52(1H, J=16Hz), 7.48 (1H, J=16Hz), 6.72-7.22(5H), 7.24(1H), 8.04 (1H), 8.22(1H)。
甜菜種子からのAmide 1及びAmide 2の抽出分離
粉砕した甜菜種子3.35kgをアセトン5,000mlで3回抽出したのち、エタノール5,000mlで3回抽出した。抽出液を合わせて40℃で1,200mlまで減圧濃縮し、濃縮液を重炭酸水素ナトリウムで中和したのち、ヘキサン3,000mlで7回抽出しヘキサン層(油分)を除去した。水層を酢酸エチル3,000mlで6回抽出し、酢酸エチル層を40℃で減圧濃縮して褐色シロップ22.7gを得た。このうち20gをシリカゲルカラム(5.5x61cm)に供し、ベンゼン、酢酸エチル、エタノールの混合比を変えながら3,000mlずつ溶出し、フラクション4にAmide 1及びAmide 2を主成分として含む混合物4.39gを得た。この混合物を同様のシリカゲルカラムに供し、クロロホルム-1%エタノールで溶出しAmide 1(1.11g)を回収し、ついでクロロホルム-2%エタノールで溶出しAmide 2(2.02g)を回収した。
骨芽細胞株MC3T3-E1の分化に及ぼすAmide 1及びAmide 2の影響
(1)細胞培養
骨芽細胞株MC3T3-E1を10%仔牛胎児血清(FBS)を添加したα-MEM含有のプラスティックディッシュで37℃のCO2インキュベーターで培養した。3日おきにCa2+-,Mg2+- 非含有リン酸緩衝塩水(PBS)に0.02%EDTA、0.1%trypsinを加えたもので継代を行なった。実験には、2.0×104cells/wellを10%FBS添加のα-MEM 1mlを含有した24 well plateでコンフルエントになるまで培養した。培地交換と同時に試験試料を培地中濃度が0.1〜10.0μMになるように添加し92時間培養した。
(2)アルカリホスファターゼ(ALP)活性の測定
細胞培養後、細胞を0.25Mのショ糖溶液にて3回洗浄した。25℃にて50mM 炭酸塩緩衝液(pH 9.8)を添加し超音波処理後、フェニルリン酸を基質とする測定法に準じた富士ドライケムスライド(富士フィルム社製)を用いて測定した。
(3)DNA量の測定
細胞DNA量はH33258法(C. LabarcaとK. Paigen, Analytical Biochemistry 102:344-352, 1980)を用いて測定した。この方法は、H33258(和光純薬工業社製)がDNAと結合し蛍光(458nm)物質を生成するという原理に基づく。細胞培養後、細胞にCa2+-,Mg2+- 非含有 PBSを加えて超音波破砕を行なった。細胞ホモジネオート液、緩衝液、H33258を加えて攪拌し励起波長Ex:356nm, 発光波長Em:458nmで蛍光分析を行なった。
(4)結果
骨芽細胞株MC3T3-E1の、DNA量(μg)あたりのALP活性に及ぼすAmide 1及びAmide 2の影響を図1及び図2に示した。図1から明らかなように、Amide 1は、0.1μMで対照(Amide1又はAmide2非含有)の約2.2倍のALP活性、1.0μM で約2.5倍のALP活性を示し、これ以上の濃度ではALP活性は頭打ちとなった。一方、Amide 2は、0.1μMで対照の約1.3倍のALP活性、1.0μM で約1.5倍のALP活性、10.0μM で約2.5倍のALP活性を示した。これらの結果から、Amide 1及びAmide 2化合物がともに、骨芽細胞の分化を促進する活性、即ち骨形成を促進する作用又は機能を有することが明らかになった。またAmide 1は、培地中濃度0.1μMで対照の約2.2倍、1.0μMで約2.5倍の活性を示したことから、Amide 2よりも低濃度で高い活性を有することが判明した。
DNA量あたりのALP活性測定による、Amide 1の骨芽細胞の分化促進作用を示す。 DNA量あたりのALP活性測定による、Amide 2の骨芽細胞の分化促進作用を示す。

Claims (10)

  1. 下記の式1
    Figure 0004431424
    [式中、Rは、H又はOR’(R’はC1〜C4アルキルを表す。)である。]
    の化合物もしくはその塩、又はそれらの混合物を有効成分として含む、骨形成を促進するための医薬組成物。
  2. 式1中RがHである、請求項1に記載の医薬組成物。
  3. 式1中RがOR’(R’はC1〜C3アルキルを表す。)である、請求項1に記載の医薬組成物。
  4. 式1中RがOCH3又はOC2H5である、請求項1に記載の医薬組成物。
  5. 式1中RがOCH3である、請求項1に記載の医薬組成物。
  6. 前記混合物が、式1中RがHである化合物とRがOCH3である化合物を含む、請求項1に記載の医薬組成物。
  7. 前記化合物又は前記混合物が、甜菜の種子、根又は葉から得られるものである、請求項1、2、5又は6に記載の医薬組成物。
  8. 前記混合物が甜菜からの抽出物又は糖蜜から得られるものである、請求項7に記載の医薬組成物。
  9. 前記化合物が、化学合成によって得られるものである、請求項1に記載の医薬組成物。
  10. 骨粗鬆症の治療又は予防用である、請求項1〜9のいずれか一項に記載の医薬組成物。
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