JP4432015B2 - 薄膜配線形成用スパッタリングターゲット - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、液晶ディスプレイ、薄膜センサ−、磁気ヘッド等の薄膜電子部品の電気配線、電極等に用いられる金属薄膜配線の形成に用いられるスパッタリングターゲットに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
ガラス基板上に薄膜デバイスを作成する薄膜トランジスタ型液晶ディスプレイ(TFT−LCD)や、セラミック基板上に素子を形成する薄膜センサ−等に用いる電気配線膜には従来から耐食性、耐熱性、基板との密着性に優れる高融点金属である純Cr膜、純Ta膜、純Ti膜等の純金属膜またはそれらの合金膜が用いられている。
【0003】
各種薄膜デバイスの高機能、多機能化に伴い低抵抗化の要求と、地球環境への影響を配慮した、より無害な材料への転換が迫られている。現在、LCD分野においては、大型化、高精細化に伴い配線膜、電極膜には信号の遅延を防止するために低抵抗化の要求があり、例えば12インチ以上の大型カラーLCDに用いられる電極膜では30μΩcm以下の比抵抗にすることが要求されている。そして、これらの製造工程で出る廃液や製品を廃棄した際の、環境への影響が少ないこと、すなわち有害物が発生しないことも重要である。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、純Ta膜は耐食性に優れるが、薄膜にした場合β−Taとなり、比抵抗は180μΩcmと非常に高い膜となるという問題がある。また、純Ti膜やTi合金膜では六方最密構造(hcp)を有しており、50μΩcmと高い抵抗値しか得られない。さらに、純Cr膜やCr合金膜は30μΩcm以下の比抵抗を得られるが、配線膜や電極膜にフォトエッチングとする場合にそのエッチング液中に有害なCrイオンが生成することが問題となっている。
【0005】
上記した純Ta、純TiおよびTi合金膜、純CrおよびCr合金膜以外では、純Mo膜,純W膜,純Al膜およびAl合金膜についての検討もされている。しかし、純Mo膜では比抵抗は低いが耐食性に問題があり、純Wでは密着性に問題があることが知られている。また、純Al膜およびAl合金膜では、上述の高融点金属膜より比抵抗は低いが、耐食性や薄膜デバイスを製造する際の加熱工程中にヒロックの発生、そしてサーマルマイグレーションによる断線等の耐熱性に問題がある。
【0006】
上述のように、高融点な材質でかつ、低電気抵抗と耐食性、耐熱性を有する配線材料が望まれるため、最近では高融点金属の合金による配線材質も提案されてきている。例えば特開平7−301822号に提案されるMo−Cr合金を用いることで耐熱性と耐食性を兼ね備えた導電性のある膜が得られるとされている。また、WO95/16797ではMo−W合金を用いることで耐食性を改善することが可能であると述べられている。
【0007】
しかし、特開平7−301822号のようなMo−Cr合金膜では、エッチング時に有害なCr化合物が発生するという問題がある。また、WO95/16797のようなMo−W合金膜では、エッチング時に残さやむらが発生しやすい問題がある。
【0008】
さらに、上記のような金属配線を用いる薄膜デバイスを高効率に生産するために、大きな基板を用いて一度に多数のデバイスを製造する方法が用いられている。例えば対角12インチの大型LCDを製造するために、基板サイズが従来の370×470mmから550×650mm、さらに650×830mmへと大型化することで、一度にそれぞれ2枚、6枚、9枚のLCDを製造することが可能となる。現在、金属配線を形成する方法としてはスパッタリング法が一般に用いられている。このため、これらの金属膜を形成するために用いられるスパッタリングターゲットも、その基板に高品質な膜を安定に形成するために継ぎ目のない大型一体品が要求され、高密度、高強度な材料とする必要がある。
【0009】
本発明は、上記問題点に鑑み、薄膜配線に要求される耐食性、耐熱性、基板との密着性に優れた高融点金属膜を、有害物を発生させることなく、再現性良く形成できるスパッタリングターゲットを提供することを目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、高融点金属膜、特に低抵抗なMoに種々添加元素を加えたMo合金ターゲットを作成し、系統的にスパッタリングによりMo合金膜を形成し、種々評価を行い検討した結果、その中でも、NbやVを含有するMo合金膜は、有害なCrを含有せず、低抵抗で高い耐食性を有する金属薄膜が得られることを見いだし、本発明に至った。
【0011】
すなわち、本発明の薄膜配線形成用スパッタリングターゲットは、基板上にMo合金膜を形成するためのスパッタリングターゲットであって、その組成が、VとNbから選ばれる1種以上を合計で2〜15原子%含有し、残部Moおよび不可避的不純物からなり、相対密度が95%以上、かつ抗折力が300MPa以上であることを特徴とする薄膜配線形成用スパッタリングターゲットである。
【0012】
さらには、その組織は、結晶粒径が300μm以下の薄膜配線形成用スパッタリングターゲットである。あるいは、Mo、V、Nbのうちの1種以上の単独相およびこれら元素から選ばれる2種以上で構成される拡散相からなる金属組織、またはMo、V、Nbから選ばれる2種以上で構成される拡散相からなる金属組織を有する薄膜配線形成用スパッタリングターゲットである。
【0013】
あるいはさらに、本発明の薄膜配線形成用スパッタリングターゲットは、ガス成分を除き、Mo、V、Nbの合計が99.9質量%以上の純度を有するものであり、好ましくはガス成分であるO含有量が1000ppm以下、さらには300ppm以下であって、C含有量が500ppm以下である。
【0014】
【発明の実施の形態】
本発明の薄膜配線形成用スパッタリングターゲットは、Moを主体としたV、Nbを含有するMo合金ターゲットであり、有害なCrを含有せず、低抵抗で高い耐食性を有する金属薄膜を得ることができる。本発明の薄膜配線形成用スパッタリングターゲットの形態はその製造方法により種々あるが、スパッタリングターゲットとして要求される高密度、高強度、均一組織、高純度を得るために適した手法を用いることができる。例えば、低酸素な材料を得るに適した溶解法にて製造したインゴットを用いてターゲットとする手法や、均一組織を得やすい、粉末焼結法からなるターゲットとする手法が例示できる。
【0015】
通常、電子部品用薄膜配線を形成する方法にはスパッタリングが用いられ、スパッタリングにより形成された膜の組成はそのターゲット組成との相関が強く、ターゲット組成とほぼ同じ組成の膜が得られる。
【0016】
本発明の薄膜配線形成用スパッタリングターゲットにおいて、Moを主体した理由は、金属薄膜配線の材料としてはCr、Mo、Wが考えられる。Crは耐食性やエッチング等のプロセス安定性の上で優れた元素であり多くの分野で用いられている。しかし、形成した膜を配線等に加工する際に用いるエッチング液中に有毒な六価Crが生成される。そして、Wは基板への密着性が低いといった問題がある。それに対して本発明のターゲットの主成分であるMoは、密着性や低抵抗性を実用上兼ね備えた元素であり、さらにCrに比較し、エッチング等によるプロセス上で発生する生成物が有毒でない等、今後の地球環境に配慮した電子部品用薄膜配線を最も安定に得られる元素であるためである。
【0017】
Moに添加する合金としてはCr、W、V、Nb、Ta等が考えられる。これら元素はMoに添加しても大幅な抵抗値の増加はなく、耐食性の向上に効果がある。しかし、Crを加えた場合、上述のようにエッチング時に有毒なCr化合物が発生し、またW、Taではエッチング時に残さやむらが生じやすい。
【0018】
このため、本発明のMoを主体とするターゲットには、V、Nbを、その選ばれる1種以上を添加することが適している。これらの元素を1種以上含むMo合金ターゲットとすることで、そのスパッタリングにより形成される配線膜は低抵抗で高い耐食性を有し、エッチング残さが生じ難いMo合金膜を得ることが可能となる。
【0019】
ここで、V、Nbから選ばれる1種以上の元素の添加量は2〜50原子%が望ましい。2原子%未満では形成した膜の耐食性向上の効果が低く、50原子%を超えると抵抗値が増加してしまうためである。本発明の上記範囲にてVやNbを添加しても抵抗値が大きく増加しない理由は定かではない。しかし、Mo−VあるいはMo−Nbの2元系金属による平衡相状態図から判断するに、高温域で全率固溶であり、化合物相が形成されないことと関与していると考えられる。
【0020】
上述のようにスパッタリングにより形成された膜の組成は、そのターゲット組成と相関が強く、上記組成のターゲットを用いることで、同様な組成の膜を形成することが可能であり、各種特性に優れた金属膜が得られる。
【0021】
スパッタリングターゲットの相対密度は、スパッタリングで薄膜を形成する際の生産性に関与するスパッタレートや、さらに重要な膜特性に影響するため、高い方が好ましい。種々検討の結果、相対密度が95%未満ではスパッタレートが低下し、さらには形成した膜応力の増加や比抵抗の上昇を引き起こしてしまう。また、相対密度が95%未満の場合は、ターゲット中に大きな欠陥が残存したり、その表面から内部まで繋がるポアの存在が懸念される。これら欠陥は、ターゲット製造工程の機械加工時にて部分剥離や割れの発生につながりターゲット製造の歩留低下、さらには加工油や洗浄液の内部への浸透等によるスパッタリング時の膜特性の低下を引き起こす。よって、本発明のスパッタリングターゲットでは、その相対密度は最低でも95%が必要であり、望ましくは98%以上が好ましい。
【0022】
さらに、スパッタリングターゲットとしては、その強度は高い程良く、本発明のVあるいはNbを所定量添加するMo合金ターゲットの場合、300MPa以上の抗折力とする必要がある。検討の結果、抗折力が300MPa未満では、ターゲット製造工程での機械加工時や、冷却板であるバッキングプレートを貼り付ける際に生じる応力によって割れや表面剥離が発生し易くなる。また、スパッタリング時の表面加熱による熱応力で亀裂が発生し、安定したスパッタリングが行なえなくなる。
【0023】
本発明のスパッタリングターゲットは、液晶ディスプレイ用の金属配線膜の形成にも用いられ、これらの分野では大型一体のターゲットが必要である。また、高い生産性を得るべく短時間で膜を形成するために、ターゲットには高い投入電力が印加され、この際の熱衝撃等にも耐える必要がある。以上、ターゲットの安定製造と安定した膜形成を行なうために高い強度が必要であって、本発明のスパッタリングターゲットは、例えば500mm角以上の大型ターゲットを安定して得る上でも、最低でも300MPaの抗折力が必要である。望ましくは500MPa以上である。
【0024】
以上のように、本発明の薄膜配線形成用スパッタリングターゲットは、基板上にMo合金膜を形成するためのスパッタリングターゲットにおいて、その組成が、VとNbから選ばれる1種以上を合計で2〜50原子%含有し、残部Moおよび不可避的不純物からなり、相対密度が95%以上、好ましくは、抗折力が300MPa以上の薄膜配線形成用スパッタリングターゲットであって、その安定製造が可能となることに加え、諸特性に優れたMo合金膜を安定かつ高効率に形成することが可能である。
【0025】
スパッタリングターゲットを用いて得られる膜の特性は、その形成する際のスパッタリング条件である投入電力、基板加熱温度、スパッタ圧力等にも大きく左右されるが、本発明のMo合金ターゲットを用いることにより、さらには形成条件を最適化することで、薄膜配線に必要な比抵抗を達成できる。比抵抗の増加は薄膜デバイスの信号遅延を起こし性能低下を及ぼすが、本発明のターゲットを用いれば、比抵抗が30μΩcm以下、さらに好ましくは20μΩcm以下の金属薄膜を安定して得ることが可能である。よって、液晶ディスプレイ、プラズマディスプレイ、電界放射型ディスプレイ、エレクトロルミネッセンスディスプレイの薄膜配線や薄膜磁気センサー、磁気記録ヘッド等の電極、バリヤ層等の金属薄膜が必要なあらゆる用途に用いることが可能である。
【0026】
さらに、本発明の薄膜配線形成用スパッタリングターゲットは、高密度、高強度であることに加え、その結晶粒径が300μm以下であることが好ましい。スパッタリングターゲットは、使用されるとターゲット表面が“エロージョンエリア”と呼ばれる、削れた表面となる。そして、その表面形状は結晶粒の結晶方位の差によって凹凸状となり、結晶粒径が大きいほど凹凸は大きくなる。
【0027】
エロージョンエリアに生じる凹凸は、使用するスパッタリング装置やその成膜条件もあいまって、異常放電の誘発が懸念される。また、凹凸の側面に付着したスパッタ粒子が剥がれ、パーティクルを発生することがあり、これは製造する薄膜デバイスに用いる膜厚や配線幅によっては、歩留の低下を引き起こす。この凹凸は結晶粒を微細化することで抑制できる。したがって、本発明のスパッタリングターゲットは、その結晶粒径が300μm以下であることが好ましく、より望ましくは100μm以下である。
【0028】
本発明の薄膜配線形成用スパッタリングターゲットは、Mo、V、Nbのうちの1種以上の単独相と、これら元素から選ばれる2種以上で構成される拡散相とからなる金属組織とすることが好ましい。これらの3元素のスパッタリング率には大きな差はないため、各々が単独の金属として存在してもよいが、その粒界に拡散相を有する方が各々の元素の粒界が不明瞭となり、これがエロージョンエリアの凹凸を緩和し、パーティクルの発生を抑制する。
【0029】
本発明の薄膜配線形成用スパッタリングターゲットは、Mo、V、Nbから選ばれる2種以上で構成される拡散相からなる金属組織とすることが可能である。ターゲットにおいては均一な組織が最も望ましいことに加え、これらの3元素の中でV、NbはMoより酸化され易いため、Moとの拡散相を形成させることで酸化を抑制し、ターゲット表面の酸化層の生成を抑制することが可能となる。これにより、ターゲットを使用する際の、安定した膜特性を得るために初期に行なうプリスパッタリング時間を短縮することが可能となり、生産性が向上する。
【0030】
図1,2,3は、それぞれ本発明の薄膜配線形成用スパッタリングターゲットの有する金属組織を、その一例として示す顕微鏡写真である。すなわち、図1はMoとNbが単独の金属として存在した金属組織であり、図2はMoおよびVの単独相に加え、その粒界にMo−Vの拡散相を有した金属組織、そして図3はMo−Vの拡散相からなる金属組織である。
【0031】
本発明の薄膜配線形成用スパッタリングターゲットは、その高密度、高強度に加えて、スパッタリングにより得られる金属薄膜の特性を向上、安定化させるために、含まれる不純物はできる限り少ない方が好ましい。具体的には、ガス成分を除いた含有比にて、Mo、V、Nbの合計が99.9質量%以上の純度を有していることが好ましい。加えて、遷移金属であるFeを300ppm以下、Niを200ppm以下、アルカリ金属であるNa、K、Caをそれぞれ5ppm以下、放射性元素であるU、Thをそれぞれ1ppm以下とすることが望ましい。
【0032】
特に、現在の主流である非晶質Si、さらに高精細な低温多結晶Siを用いた薄膜トランジスタ駆動の液晶ディスプレイに本発明のMo合金ターゲットを用いる場合には、これらの半導体素子の接合リークを引き起こす遷移金属の低減が有効であり、Feは300ppm以下、Niは200ppm以下、さらには各々50ppm以下とすることが望ましい。また、α線を放出し半導体素子の誤動作を引き起こす放射性元素の低減も有効であって、U、Thは各々1ppm以下、さらには0.1ppm以下とすることが望ましい。加えて、ガス成分を除いた上記の純度も、99.9%以上、さらには99.99%以上が望まれる。
【0033】
さらに、本発明の薄膜配線形成用スパッタリングターゲットは、そのスパッタリングにより得られる金属薄膜の特性をさらに向上、安定化させるために、膜の比抵抗や安定性に関与するガス成分であるO(酸素)含有量を1000ppm以下、C含有量を500ppm以下とすることが好ましい。ターゲット中の酸素が1000ppm以上にもなると、そのスパッタリング装置の真空度や使用する基板の洗浄状態等の条件もあいまって、形成されたMo合金膜のO、C含有量が増加し、比抵抗や膜応力が増加する。このためターゲット中のO含有量は1000ppm以下、さらに好ましくは300ppm以下、さらには100ppm以下と少ない方がより好ましいことは言うまでもない。同様にC含有量についても500ppm以下、さらには50ppm以下とすることで膜特性をより安定化させることができる。
【0034】
本発明の薄膜配線形成用スパッタリングターゲットは、その構成を達成できる範囲で、如何なる製造方法によってもよい。例えば、溶解法では真空誘導加熱溶解法や電子ビーム溶解法、プラズマ溶解法等による手法でもよい。
【0035】
しかし、本発明に供されるMo合金の場合は融点が高いため、真空誘導加熱溶解法では溶解が難しく、電子ビーム溶解法では蒸気圧差による組成ずれが生じ易い。さらに、溶解法では溶湯をインゴットにするための鋳型等が必要となり、その大きさにより製造できるターゲットの大きさに制限もある。また、高温で溶解した後に鋳型中で凝固させると、その冷却速度の差によりインゴットの表層と内部で組織の差が生じ易く、均一組織、高強度を得るための鋳型形状等も適切に選定する必要がある。溶解−鋳造法による場合は、上記課題を考慮することで低酸素なインゴットを製造することが可能となる。
【0036】
また、プラズマ溶解法を用いる方法もある。この場合、溶解素材を製造する工程がさらに必要となるが、冷間静水圧プレス(CIP)や粉末焼結等で形成した仮成形体を溶解素材とすることが可能であり、溶融飛沫を堆積することでインゴットを製造できる。この場合は飛沫を逐次冷却するため、微細な組織を得ることが可能となる。
【0037】
さらに、本発明のスパッタリングターゲットを得る方法としては粉末焼結法を用いることも可能である。焼結体を得る手法として、原料粉末は、最も簡単には、原料組成となる純金属粉末を所定の割合で混合する方法(すなわち、Mo粉末とVあるいはNb粉末を目的組成に混合する方法)がある。さらに、予め所定の組成に合金化した粉末を用いる方法(つまり、目的組成のMo−V、Mo−Nb、Mo−V−Nb粉末を用いる方法)がある。
【0038】
また、上記粉末といった種々組成の合金粉末を所定の組成となるように混合する方法(例えば、Mo−5原子%V合金粉末とMo−30原子%V合金粉末を混合してMo−15原子%Vとする方法)、合金粉末と純金属粉末を所定の組成となるように混合する方法(例えば、Mo−V粉末と純Mo粉末を目標組成に混合する方法)等、多くの組み合わせがあり、これらの粉末を焼結することで種々組成・組織のMo合金ターゲットを製造することができる。
【0039】
また、粉末焼結を行なう方法も、所定の組成に調整した粉末をカーボンモールドに入れてホットプレスする方法や、金属製のカプセルに入れて脱ガス、封止した後に熱間静水圧プレス(HIP)を行なう方法、さらに粉末を冷間静水圧プレス(CIP)で加圧成形体としたものを焼結する方法がある。本発明の組成を有するスパッタリングターゲットに適したMo合金は、ホットプレスの場合には加熱温度1200〜1600℃、面圧20MPa以上、HIPの場合には加熱温度は1100〜1300℃、圧力100MPa以上の条件で焼結成形することで、相対密度95%以上の焼結体を得ることが可能となる。
【0040】
焼結方法により加熱温度範囲が異なるのは、ホットプレスの場合、圧力が低いために1200℃未満では密度が向上せず、1600℃を超えるとV成分がモールドであるカーボンと反応してしまうからである。また、HIPの場合には、1300℃を超えると一般に容器として用いられる軟鋼やFe合金製のカプセルと粉末成分間に反応が起こり、カプセルが溶解する可能性があるためである。また、混合した粉末を水素雰囲気等の還元性雰囲気中で過熱し焼結させることで、酸素や、本発明の構成に必要としない低融点金属等を低減することも可能である。
【0041】
さらに、本発明のMo合金スパッタリングターゲットを製造する場合、上述の溶解法や粉末焼結法で製造したインゴットや焼結体に熱間塑性加工を施すことも可能である。例えば金属薄膜を用いた薄膜配線を用いる、液晶ディスプレイ等のフラットパネルディスプレイの大型化に伴い、使用される基板サイズも大型化し、スパッタリングターゲットも大型化が必要である。熱間塑性加工により、容易に大型化を達成できるものである。
【0042】
熱間塑性加工の方法はプレス、鍛造、圧延と種々方法がある。その際の加熱温度は、割れ等が発生しない安定した塑性加工を行なうために重要である。特に、本発明のMoに所定量のVあるいはNbを加えたMo合金においては、800℃未満では塑性加工に必要な素材の伸びや絞り性が大幅に低下し、1200℃を超えると引っ張り強度が低下してしまい割れが生じやすくなるため、800〜1200℃が適切である。熱間塑性加工の方法は、要求されるスパッタリングターゲットの大きさに合わせて選定すればよく、組み合わせてもよい。
【0043】
また、熱間塑性加工時の塑性加工率やその後の熱処理により、熱処理再結晶組織を制御することで、より均一微細な組織を得ることも可能である。さらに、本発明の組成範囲にて、その組成によっては焼結体のままより、熱間塑性加工を施すことにより焼結体のボイドを潰すことでさらに高密度化を達成できるものもある。その際の塑性加工率は10%以上が望ましい。焼結体中にボイドが残存した場合に10%未満の加工率では、ボイドを潰すことができない場合が多く高密度化を行なうには不充分であるためである。また、加工率が10%未満では素材の表面と内部の変形量が不均一な組織になりやすい。
【0044】
さらに、熱処理により均一な再結晶組織を得るには、熱処理温度としては、800〜1000℃が望ましい。800℃未満では再結晶化が十分に起こらず、1000℃を超えると結晶粒が成長し粗大な粒となってしまうためである。このため、均一な組織を得るには熱処理温度としては800〜1000℃が望ましい。上記の方法を用いて、ボイドの消失、組織の均一化により高強度、高密度のターゲットとすることが可能となる。
【0045】
【実施例】
次に、本発明の具体的な実施例について説明する。
【0046】
まず、下記した各種の製造方法で純金属およびMo合金ターゲットを製造した。
[製法A]
真空度3×10−3Paの到達圧力の電子ビーム溶解装置を用いて直径150mmのインゴットを製造し、切り出してターゲットを製造する方法を(AE)。プラズマ溶解により直径100mmのインゴットを作製し、同様に製造にする方法を(AP)とする。
[製法B]
所定の組成になるよう粉末を混合し、焼結する方法である。うち、カーボンのモールド中に挿入し、ホットプレスにより製造した焼結体から切り出す方法を(BP)とする。なお、そのホットプレスの面圧は30MPaとし、その温度はMo合金においては1300℃とした。一方、軟鋼製のカプセルに封入し、HIP処理して製造した焼結体から切り出す方法を(BH)とする。なお、Mo合金においてそのHIP処理の圧力は120MPa、加熱温度は1300℃とした。
【0047】
さらに、上記した製法A,Bにおいては、その溶解法で製造したインゴット、または焼結体に鍛造、圧延の塑性加工を行なう方法は(R)を添え字に用いた。塑性加工の際には、加工性を向上させるために素材を加熱し、その温度はCr、Mo、V、Nb、Ta、Wでは各々1200℃、700℃、1000℃、600℃、600℃、1400℃、Mo合金では500〜700℃とした。また、大気中の窒素や酸素、さらに水分と反応し易い、Cr、Vを含有する場合は、その素材をカプセルに封入して塑性加工を行なった。
【0048】
以上の各種製造方法にて板状のターゲット素材を作製し、機械加工により所定の大きさのターゲットを製造した。
【0049】
(実施例1)
表1の組成を有する、直径100φ×厚み5t(mm)のターゲットを上述した各種製造方法で作製し、その密度を測定した。次に、それらターゲットをスパッタ装置に取り付け、150℃に加熱したガラス基板上にDCマグネトロンスパッタ法にて厚さ200nmの相当する膜を形成した。そして、リン酸と塩酸を含有したエッチング液を用いてエッチングし、薄膜配線とした。形成した膜の4端子法による測定での比抵抗、エッチング時の残さの有無、そして、耐食性の評価として80℃、湿度80%の環境に24時間放置した後の表面変色の有無を確認し、その結果を表1に示す。
【0050】
【表1】
Figure 0004432015
【0051】
表1に示したように、MoにCr、W、V、Nb、Taを添加したMo合金膜は比抵抗の増加は少ないが、Ti、Zrを加えた場合は大幅に比抵抗が増大していることがわかる。エッチング残さは、W、Ta、Ti、Zrを加えたMo合金膜で発生し、Nbであっても添加量が50原子%を超えると残さが発生している。また、純Mo、W膜の耐食性は低く、MoにV、Nbを添加すると耐食性は向上するが、2%未満ではその効果が低いことがわかる。ターゲットの相対密度についても、95%未満となると比抵抗が増加する。純CrあるいはCrを添加したMo合金ターゲットの場合、その相対密度を95%以上とすることで、形成した合金膜は低抵抗であり、エッチング残さも認められないが、上述したように、Crはエッチング液中の有毒物質が懸念される。
【0052】
(実施例2)
次に、(実施例1)と同様の製造方法に従って、種々組成のMo−V、Mo−Nb、Mo−V−Nb、そして純Moの800×900角×厚み8t(mm)の大型ターゲットを作製し、同様のスパッタリングを行なった。ターゲットの組成、相対密度、抗折力、ターゲットの割れ発生の有無、そしてスパッタリング時のスパッタレートについて確認し、その結果を表2に示す。
【0053】
【表2】
Figure 0004432015
【0054】
まず、本発明の組成および相対密度を満たすターゲットとすることで、その形成された膜の優れた低抵抗とエッチング性、そして耐食性を達成できることは(実施例1)の通りである。そして、表2より、95%以上の相対密度に加え、300MPa以上の抗折力を有することで、大型のターゲットを安定に製造することが可能となることがわかる。
【0055】
(実施例3)
次に、(実施例1)、(実施例2)で作製したMo合金ターゲット素材から組織観察用の試料として直径200φ×厚み6t(mm)のターゲットを作製した。まず、試料を研磨して光学顕微鏡でミクロ組織を観察し、結晶粒径を測定した。そして、作製したターゲットをスパッタ装置に取り付け、投入電力2kw、Ar圧力0.5Paで6インチのSiウェハー上に厚み100nmのMo合金膜を形成した。比抵抗が安定とした後、50枚のSiウェハー上に成膜して得られたMo合金膜に確認される0.3μm以上のパーティクル数を調査し、基板1枚当たりの平均値として換算した。ターゲットの結晶粒径と併せて、その結果を表3に示す。
【0056】
【表3】
Figure 0004432015
【0057】
表3より、まず、ターゲットの結晶粒径が大きくなると、その形成される膜のパーティクル数が増加することが分かる。特に結晶粒径が300μmを超えると、0.3μm以上のパーティクルが大幅に増加するため、結晶粒径は300μm以下にすることが望ましい。しかし、結晶粒が細かくても密度の低いターゲットの場合、多くのパーティクルが発生していることが分かる。よって、パーティクルの発生を抑制するには、高密度化と結晶粒の微細化の両方を実施する本発明のターゲットが有効であることが分かる。なお、パーティクルの発生を低減するには、結晶粒径は細かい方が望ましく、100μm以下とすることでさらに低減することが可能である。
【0058】
(実施例4)
平均結晶粒径30μmのMo粉末、100μmのV粉末、150μmのNb粉末、さらに、電子ビーム溶解でVを5、10、20原子%含有するMo−V合金を作製し、ジョウクラッシャーで粗粉砕した後、Ar雰囲気に置換したボールミル中で粉砕を行なって、平均結晶粒径120μmの粉末を製造した。また、Nbを6、12、25原子%含有するMo−Nb混合粉末を1200℃で真空焼結した後、同様にジョークラッシャーで粗粉砕し、Ar雰囲気に置換したボールミル中で粉砕を行なって平均結晶粒径120μmの粉末とし、その粉末を熱プラズマ粉末処理してMo−Nb粉末を作製した。
【0059】
加熱温度1300℃、圧力150MPa、保持時間3時間のHIP焼結にて、上記の種々粉末より種々のMo合金焼結体を作製した。また、各々の粉末を混合し、ボールミルを用いて均一化したものにつき、加熱温度1200℃、面圧30MPa、保持時間1時間のホットプレス焼結を行ない、種々のMo合金焼結体を作製した。これら種々形態の原料粉末と高密度化の焼結手法を用いて作製した焼結体から、機械加工による切削および研削により100φ×厚み5t(mm)のターゲットと、その端材から各種試料を得た。ターゲットの相対密度および組織構成は、その試料を用いて密度を測定し、さらに試料表面を鏡面研磨後、電子顕微鏡で元素分布像を測定して組織構成を観察することで得た。
【0060】
作製したターゲットは、スパッタ装置に取り付け、250℃に加熱したガラス基板上にDCマグネトロンスパッタ法により、厚さ200nmの相当する各種のMo合金膜を形成した。そして、形成した膜の比抵抗を4端子法で測定し、比抵抗が安定するまでのプリスパッタ時間を調査した。比抵抗が安定とした後、50枚のSiウェハー上に成膜して得られたMo合金膜に確認される0.3μm以上のパーティクル数を調査し、基板1枚当たりの平均値として換算した。これらの結果を、併せて表4に示す。
【0061】
【表4】
Figure 0004432015
【0062】
まず、相対密度が95%未満のターゲットではプリスパッタ時間が長く、パーティクルの発生も多い。また、相対密度が95%以上の場合であっても、単独の元素のみが各々存在する組織より、合金化された組織を有するターゲットの方がよりプリスパッタ時間が短く、パーティクルの発生も少ないことが分かる。特にV、Nbが単独で存在せず、合金化した組織を有するターゲットでプリスパッタ時間が短く、パーティクルの発生も少ないことが分かる。以上のように、Mo合金ターゲットは、単独元素のみが存在する組織より部分的に合金化した組織を有することが望ましく、さらには、単独元素が存在せず合金化された組織とすることが望ましい。
【0063】
(実施例5)
(実施例2)で作製したターゲットから試料を切り出し、GD−Mass(グロー放電質量分析法)を用いての不純物分析を行い純度を求めた。表5に、ガス成分を除いた含有比としてのMo、V、Nbの合計質量比(純度)と、代表的な不純物である遷移金属Fe、Ni、アルカリ金属Na、放射性元素Uの質量比を示す。
【0064】
また、上記のターゲットを用いて、300×400(mm)のガラス基板上に薄膜をスパッタリング形成し、薄膜トランジスタ型液晶ディスプレイとして完成させ、その素子の動作不良率を調べた。その結果を、併せて、表5に示す。
【0065】
【表5】
Figure 0004432015
【0066】
本発明の組成および相対密度を満たさないターゲットが、その形成された膜の低抵抗性やエッチング性などに劣ることは上述の通りであるが、加えて、その純度が99.9%未満となると素子不良率が増加することが分かる。また、不純物であるFe量としては300ppm以下、さらには50ppm以下、Ni量としては200ppm以下、さらには50ppm以下、Naに関しては5ppm以下、Uに関しては1ppm、さらには0.1ppm以下とすることが、動作不良率の低減に有効であることが分かる。
【0067】
(実施例6)
(実施例4)で作製した100φ×厚み5t(mm)のターゲットおよび試料を用いて、まず試料からガス成分である酸素、炭素を、赤外発分析法を用いて分析した。そして、(実施例4)に同様の薄膜形成を実施した際の、その膜の比抵抗を4端子法で測定した。これらの結果を表6に示す。
【0068】
【表6】
Figure 0004432015
【0069】
本発明の組成および相対密度を満たすターゲットとすることが、その形成された膜の低抵抗化に有効であることは上述の通りであるが、加えて、ターゲット中の酸素量を1000ppm以下、炭素量を500ppm以下とすることが、さらなる膜の低抵抗化に望ましいことが分かる。特に、酸素については100ppm以下、炭素については50ppm以下にまで低減することが望ましく、そして、両元素共に低減することで、さらに低い抵抗値が得られる。
【0070】
【発明の効果】
以上の説明から明らかなように、本発明のスパッタリングターゲットであれば、薄膜配線に要求される低い抵抗値、耐食性などに優れた金属膜を、有害物を発生させることなく、再現性良く形成することができる。そして、大型のスパッタリングターゲットにも対応が可能であることから、工業的価値は高い。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の薄膜配線形成用スパッタリングターゲットの有する金属組織の一例を示すミクロ顕微鏡写真である。
【図2】 本発明の薄膜配線形成用スパッタリングターゲットの有する金属組織の一例を示すミクロ顕微鏡写真である。
【図3】 本発明の薄膜配線形成用スパッタリングターゲットの有する金属組織の一例を示すミクロ顕微鏡写真である。

Claims (7)

  1. 基板上にMo合金膜を形成するためのスパッタリングターゲットにおいて、その組成が、VとNbから選ばれる1種以上を合計で2〜15原子%含有し、残部Moおよび不可避的不純物からなり、相対密度が95%以上、かつ抗折力が300MPa以上であることを特徴とする薄膜配線形成用スパッタリングターゲット。
  2. 結晶粒径が300μm以下であることを特徴とする請求項1に記載の薄膜配線形成用スパッタリングターゲット。
  3. Mo、V、Nbのうちの1種以上の単独相およびこれらの元素から選ばれる2種以上で構成される拡散相からなる金属組織を有することを特徴とする請求項1または2に記載の薄膜配線形成用スパッタリングターゲット。
  4. Mo、V、Nbの元素から選ばれる2種以上で構成される拡散相からなる金属組織を有することを特徴とする請求項1または2に記載の薄膜配線形成用スパッタリングターゲット。
  5. ガス成分を除き、Mo、V、Nbの合計が99.9質量%以上の純度を有することを特徴とする請求項1ないしのいずれかに記載の薄膜配線形成用スパッタリングターゲット。
  6. O含有量が1000ppm以下、C含有量が500ppm以下であることを特徴とする請求項1ないしのいずれかに記載の薄膜配線形成用スパッタリングターゲット。
  7. O含有量が300ppm以下であることを特徴とする請求項1ないしのいずれかに記載の薄膜配線形成用スパッタリングターゲット。
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