JP4443706B2 - 右回り全回転垂直釜の内釜 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明はミシンの内釜に関し、特に右回り全回転垂直釜の内釜に関する。
【0002】
【従来の技術】
ミシンの釜は、ミシンの主軸に連動して回転する外釜と、ミシンに対して固定される内釜とを備え、外釜は針により運ばれた上糸をすくい取り、内釜の周囲を回って内釜内の下糸をくぐらせて縫目を形成する。
【0003】
内釜にはレース部が形成され、これに対応して外釜にはレース溝が形成され、内釜のレース部は外釜のレース溝に嵌合する。内釜及び外釜は通常鋼鉄製であるが、無給油化による摩擦抵抗を減少させるため、内釜のレース部のみを合成樹脂製とする技術は公知である(特開平6−238084、特開平10−146485)。
【0004】
図8〜図10は左回り全回転垂直釜の内釜のレース部を合成樹脂製とした例を示した斜視図で、図8は内釜本体10、図9は合成樹脂製のレース部20、図10はレース部20を組み込んだ内釜を示す。
【0005】
内釜本体10は、ほぼ円形の底部11と、この底部11の正面11A側においてその中心部から直立して設けられた支柱12と、底部11の外周から支柱12の方向に形成された周面13を有する。内釜本体10の周面13には溝13aが形成されている。図9において合成樹脂製のレース部20は糸分け部20aと糸抜け部20bを備え、図10に示すように、内釜本体10の溝13a内へ嵌合されて固定される。レース部20は周面13の釜軸方向(底部11に対して直角方向)中間部に形成されている。縫製の際に上下動するミシンの針31は最下降時に、内釜本体10の針落ち穴13bを通る。
【0006】
図11は図8〜図10の内釜、図示しない外釜の剣先32及び上糸33の関係を説明するための背面図である。外釜は剣先32によって上糸33を捕捉し、内釜本体10の周囲をR1方向に回転する。捕捉された上糸33はレース部20の糸分け部20aにおいて内釜本体10の正面側の上糸33aと背面側の上糸33bに分けられ、背面側の上糸33bは外釜の回転に伴って、内釜本体10の底部11の背面11Bと接しながら移動する。やがて上糸33は糸抜け部20bから外れて釜から抜けて図示しない下糸と絡んで縫目を形成する。その後、剣先32が再び上糸33を捕捉する。
【0007】
このように底部11の背面11B側の上糸33bは、底部11と接しながら糸分け部20aと糸抜け部20bの間を移動するが、この上糸33bが接する糸分け部20aと糸抜け部20bの間の部分を糸渡り面11aと称する。
【0008】
図12〜図15は右回り全回転垂直釜の内釜のレース部を合成樹脂製とした例を示した斜視図で、図12は内釜本体10、図13は合成樹脂製のレース部20、図14及び図15は内釜本体10へレース部20を組み込んだ状態を示す。この右回り全回転垂直釜の内釜本体10においては図14から明らかなように、その背面側において内釜本体10の底部11とレース部20とがほぼ同一面となるように形成されている。縫製の際に上下動するミシンの針31に対して、内釜本体10はその針落点とは重ならない位置に配置され、針31はその下降時に、底部の背面11B側を通る。
【0009】
底部11は外周部11bの肉厚が薄くなるようにその背面11B側において凹部が形成されている。合成樹脂製のレース部20は円環の一部を切断された形状とされ、切断された両端部がそれぞれ糸分け部20aと糸抜け部20bとされている。このレース部20は内釜本体10の底部11の外周部11bへ接着されて固定される。
【0010】
図16は図12〜図15の内釜本体10、図示しない外釜の剣先32及び上糸33の関係を説明するための背面図である。右回り全回転垂直釜であるので、図11の左回り全回転垂直釜とは外釜の回転方向が逆となる。内釜本体10の背面側の上糸33bは、糸分け部20aから糸渡り面11aと接しながら糸抜け部20bへ移動する。なお図14及び図16において参照符号Aは、内釜本体10の底部の背面11B側の上糸33bが糸分け部20aから糸抜け部20bへ移動する際に接触する領域を示す。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
以上のように、内釜本体10のレース部20を合成樹脂製とした内釜本体10は公知であるが、レース部20とその他の部分とは別の部材で構成され、その材質も異なっていた。図8〜図11の左回り全回転垂直釜の場合にはレース部20は内釜本体10の周面13の釜軸方向中間部に形成された溝13a内へ嵌合されるため、しっかりと固定される。しかしながら図12〜図16の右回り全回転垂直釜の場合にはレース部20は内釜本体10の底部の背面11Bに接着されて固定されており、且つ、レース部20は円環の一部を切断された形状でその両端に糸分け部20a及び糸抜け部20bが形成されている。このため、レース部20の糸分け部20a及び糸抜け部20b近傍へ、図15に示すように正面側から背面側へ向う外力Fが加わると、糸分け部20a及び糸抜け部20bが内釜本体10から剥離し易い。
【0012】
また、上糸33が接触する領域Aにおいて、レース部20(の糸分け部20a及び糸抜け部20b)と内釜本体10の底部背面11B(の糸渡り面11a)との継ぎ目が存在する。このような継ぎ目においては表面が滑らかに形成されにくく、また、バリができやすい。このため、上糸33が継ぎ目へ引っ掛かり、糸切れ、ルーピング等が発生することがある。
【0013】
本発明の目的は、従来にない新規な構造の右回り全回転垂直釜の内釜を提供することにある。
本発明の他の目的は、上糸が、糸分け部及び糸抜け部と糸渡り面の間の継目へ引っ掛かることによる糸切れ、ルーピング等を防止することができる右回り全回転垂直釜の内釜を提供することにある。
【0014】
本発明の更に他の目的は、レース部20の剥離を防止することができる右回り全回転垂直釜の内釜を提供することにある。
【0015】
【課題を解決するための手段】
本発明は、円形の底部と、この底部の正面側においてその中心部から直立して設けられた支柱と、前記底部の正面側においてその外周から正面の方向に形成された周面を有する内釜本体と、前記底部の外周に沿って外側に固定されると共に全周の一部が切り欠かれた内釜レース部とを備え、縫製の際に上下動するミシン針が前記底部の背面を通過すると共に、前記内釜レース部の切り欠かれた部分の一端部に形成された糸分け部により外釜が捕捉した上糸を釜正面側と釜背面側とに分けると共に、前記切り欠かれた部分の他端部に形成された糸抜け部から上糸が抜ける右回り全回転垂直釜の内釜において、前記糸分け部と前記糸抜け部とに挟まれると共に、前記上糸の釜背面側に分けられた部分が接する糸渡り面を備え、前記底部の外周の一部をなす前記糸渡り面に対応する位置に切り欠き部を設けると共に前記底面の切り欠き部の端縁部に底部正面に対して窪んだ凹部を設け、前記切り欠き部を覆うようにして、前記糸渡り面を前記内釜レース部と共に樹脂により一体的に形成すると共に、前記切り欠き部に形成された凹部に対して正面側から接する突出部も前記内釜レース部と一体的に形成したことを特徴とする。
【0016】
好ましくは、前記底面の切り欠き部以外の外周端縁部に底部背面に対して窪んだ凹部を設け、前記内釜レース部は前記切り欠き部以外の端縁部に形成された凹部に対して背面側から接するようにする。
【0017】
更に好ましくは、前記糸渡り面は、前記内釜本体の外周面と前記底部の背面とを連ねるように傾斜した傾斜面とする。
【0018】
【発明の実施の形態】
以下、図面に基づいて本発明の実施の形態を説明する。図1〜図7は本実施の形態の右回り全回転垂直釜の内釜を示す図である。
【0019】
図1〜図3は内釜本体を示し、図1(A)は背面図、図1(B)は正面図、図2(A)は背面側から見た斜視図、図2(B)は正面側から見た斜視図、図3は図1(B)のX−X断面図である。図4はレース部を示し、(A)は背面側から見た斜視図、(B)は正面側から見た斜視図を示す。本実施の形態による内釜は図1〜図3の内釜本体10へ、図4のレース部20を固定することにより構成される。図5及び図6はレース部20を組み込んだ内釜を示し、図5(A)は背面図、図5(B)は正面図、図6(A)は背面側から見た斜視図、図6(B)は正面側から見た斜視図、図7は図5(B)のY−Y断面図である。
【0020】
内釜本体10は、ほぼ円形の底部11と、この底部11の正面11A側においてその中心部から直立して設けられた支柱12と、底部11の正面11A側においてその外周から正面の方向に形成された周面13を有する。底部11はその外周部11bの肉厚が薄くなるようにその背面11B側において凹部が形成されている。また、底部11には切り欠き部11dが形成されている。釜をミシンに取付ける際にはこの切り欠き部11dが縫針の方向となるように上向きに配置される。底部11の正面11A側には、切り欠き部11dを形成する外周縁11c付近に沿って凹部11eが形成されている。
【0021】
レース部20は液晶ポリマー、高密度ポリエチレン、ポリイミド等の合成樹脂によりほぼ円環形状に成形される。このレース部20はその外周部を一部を切り欠いて糸渡り面20cを形成され、この糸渡り面20cの両端に糸分け部20aと糸抜け部20bを形成されている。糸渡り面20cは上糸がスムースに移動可能なように軸方向(図7の左右方向)へ傾斜して形成されている。このレース部20は、糸渡り面20cが内釜本体10の底部11の切り欠き部11dによって形成される空間内に配置されるようにして内釜本体10へ固定される。このため、内釜本体10の底部11の切り欠き部11dは糸渡り面20cよりも大きく形成されている。
【0022】
レース部20は糸渡り面20cからレース部20中心方向へ向って、内釜本体10の底部11の外周縁11cに対応した形状の突出部20dが形成され、この突出部20dから更にレース部20中心方向へ向って、底部11の凹部11eに対応した形状の突出部20eが形成されている。突出部20dは、レース部20が内釜本体10の底部11に固定されたとき、突出部20dの背面が底部11の背面11Bとほぼ同一面となるような形状に成形され、同様に突出部20eは、その正面が底部11の正面11Aとほぼ同一面となるような形状に成形されている。
【0023】
図5(A)に示すように図示しない外釜は剣先32によって上糸33を捕捉し、内釜本体10の周囲をR2方向に回転する。捕捉された上糸33はレース部20の糸分け部20aにおいて内釜本体10の正面側の上糸33aと背面側の上糸33bに分けられ、背面側の上糸33bは外釜の回転に伴って、糸渡り面20cと接しながら移動する。やがて上糸33は糸抜け部20bから外れて釜から抜け、図示しない下糸と絡んで縫目を形成する。その後、剣先32が再び上糸33を捕捉する。
【0024】
このように内釜本体10の底面側の上糸33bは、糸分け部20aから糸渡り面20cを通って糸抜け部20bへと移動するが、この上糸33bが接する糸分け部20a、糸渡り面20c及び糸抜け部20bは樹脂により一体成形されているため樹脂部と鋼材部の継ぎ目がない。従って表面を滑らかに形成でき、また、バリができにくい。このため、上糸33がスムースに移動可能となる。
【0025】
図6及び図7に示すようにレース部20の糸渡り面11a近傍において正面方向から外力F1が加わっても、レース部20は底部11の凹部11eによって支持されるので、内釜本体10の底部11の背面11Bから剥離しにくい。また、レース部20へ背面方向から外力F2が加わる場合にはレース部20は底部11の外周部11bによって支持されるので内釜本体10の底部11の正面11A側から剥離しにくい。
【0026】
また、本実施の形態によるレース部20は、図13に示した従来例による右回り全回転垂直釜の内釜におけるレース部が円環の一部を切断された形状とされているのと異なり、無端の円環形状とされているので、その糸分け部20a及び糸抜け部20bが特に剥離し易いということがない。
【0027】
さらに、糸分け部20a及び糸抜け部20bと糸渡り面20cとを樹脂により一体成形したことにより、上糸33が接触する領域において、継ぎ目が存在せず表面が滑らかに形成されている。このため、スムースな糸渡りを実現することができ、糸切れ、ルーピング等を防止することができる。
【0028】
以上においては、本発明を図面に示した実施の形態に基づいて説明したが本発明はこの実施の形態には限定されず特許請求の範囲に記載した事項の範囲内において種々変形可能である。例えば、糸渡り面20cとレース部20とを樹脂により一体成形した例を示したが、糸渡り面のみを樹脂製として内釜本体10へ固定してもよい。
【0029】
【発明の効果】
本発明によれば、底部の背面側に内釜レース部及び糸渡り部を有する右回り全回転垂直釜の内釜において、糸渡り部に対応する位置に切り欠き部を有する内釜本体と、切り欠き部を覆うようにして内釜本体へ固定される樹脂製の糸渡り面とにより構成される、従来にはない新規な構造の右回り全回転垂直釜の内釜が提供される。
【0030】
糸渡り面と内釜レース部とを樹脂により一体成形して内釜本体へ固定することにより、上糸が接触する領域において、糸分け部及び糸抜け部と糸渡り面との間に継ぎ目が存在せずに滑らかな面を形成することができる。このため、上糸が継ぎ目へ引っ掛かることによる糸切れ、ルーピング等を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本実施の形態の右回り全回転垂直釜の内釜本体を示し、(A)は背面図、(B)は正面図である。
【図2】 本実施の形態の内釜本体を示し、(A)は背面側から見た斜視図、(B)は正面側から見た斜視図である。
図2(B)は正面側から見た斜視図、
【図3】 図1(B)のX−X断面図である。
【図4】 本実施の形態の内釜のレース部を示し、(A)は背面側から見た斜視図、(B)は正面側から見た斜視図である。
【図5】 本実施の形態の内釜を示し、(A)は背面図、(B)は正面図である。
【図6】 本実施の形態の内釜を示し、(A)は背面側から見た斜視図、(B)は正面側から見た斜視図である。
【図7】 図5(B)のY−Y断面図である。
【図8】 従来例による左回り垂直釜の内釜本体の斜視図である。
【図9】 従来例による左回り垂直釜のレース部の斜視図である。
【図10】 従来例による左回り垂直釜のレース部を組み込んだ内釜の斜視図
である。
【図11】 図8〜図10の内釜、図示しない外釜の剣先及び上糸の関係を説明するための背面図であ
【図12】 従来例による右回り垂直釜の内釜本体の斜視図である。
【図13】 従来例による右回り垂直釜のレース部の斜視図である。
【図14】 従来例の右回り垂直釜の内釜を背面側から見た斜視図である。
【図15】 従来例の右回り垂直釜の内釜を正面側から見た斜視図である。
【図16】 図12〜図15の内釜、図示しない外釜の剣先及び上糸の関係を説明するための背面図である。
【符号の説明】
10 内釜本体 11 底部 11A 底部の正面
11B 底部の背面 11a 糸渡り面 11b 外周部
11c 外周縁 11d 切り欠き部 11e 凹部
12 支柱 13 周面 13a 溝
13b 針落ち穴 20 レース部 20a 糸分け部
20b 糸抜け部 20c 糸渡り面 20d 突出部
20e 突出部 31 針 32 剣先
33 上糸

Claims (3)

  1. 円形の底部と、この底部の正面側においてその中心部から直立して設けられた支柱と、前記底部の正面側においてその外周から正面の方向に形成された周面を有する内釜本体と、
    前記底部の外周に沿って外側に固定されると共に全周の一部が切り欠かれた内釜レース部とを備え、
    縫製の際に上下動するミシン針が前記底部の背面を通過すると共に、前記内釜レース部の切り欠かれた部分の一端部に形成された糸分け部により外釜が捕捉した上糸を釜正面側と釜背面側とに分けると共に、前記切り欠かれた部分の他端部に形成された糸抜け部から上糸が抜ける右回り全回転垂直釜の内釜において、
    前記糸分け部と前記糸抜け部とに挟まれると共に、前記上糸の釜背面側に分けられた部分が接する糸渡り面を備え、
    前記底部の外周の一部をなす前記糸渡り面に対応する位置に切り欠き部を設けると共に、前記底面の切り欠き部の端縁部に底部正面に対して窪んだ凹部を設け、
    前記切り欠き部を覆うようにして前記糸渡り面を前記内釜レース部と共に樹脂により一体的に形成すると共に、前記切り欠き部に形成された凹部に対して正面側から接する突出部も前記内釜レース部と一体的に形成したことを特徴とする右回り全回転垂直釜の内釜。
  2. 前記底面の切り欠き部以外の外周端縁部に底部背面に対して窪んだ凹部を設け、
    前記内釜レース部は前記切り欠き部以外の端縁部に形成された凹部に対して背面側から接することを特徴とする請求項1記載の右回り全回転垂直釜の内釜。
  3. 前記糸渡り面は、前記内釜本体の外周面と前記底部の背面とを連ねるように傾斜した傾斜面であることを特徴とする請求項1又は2記載の右回り全回転垂直釜の内釜。
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