JP4448585B2 - アポリポ蛋白質a−iに対するモノクローナル抗体 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、特定のヒトアポリポ蛋白質A−I(以下、「アポA−I」という)に対するモノクローナル抗体、これを用いた特定のアポA−Iの免疫学的測定方法及びこれを含有する免疫学的測定試薬に関するものである。
【0002】
【従来の技術及び発明が解決しようとする課題】
アポA−IはHDLを構成する主なアポタンパク質であり、HDLの末梢細胞から肝臓へのコレステロールを逆転送する機能において中心的な役割を果たしているものである。(Philips M. C. et al. Biochem. Biophys. Acta, 906:p. 223(1987) )。このことから、動脈硬化症の診断にアポA−Iを測定することが行われている。
【0003】
近年、アポリポ蛋白質A−II(以下、「アポA−II」という)を持たないアポA−I含有HDL(石塚ら:医学と薬学、39巻5号、1041頁、1988)が、アポA−I及びアポA−II含有HDLより細胞からのコレステロール引き抜き作用が強いことや、脂質とは結合せずに存在するアポA−Iや小粒子で脂質含量の少ないpreβ1−HDL(T. Miida. et al. Biochemistry, 29:p.10469(1990))に存在するアポA−Iが細胞からのコレステロールの逆転送系において重要な役割を演じていることが判明したことから、これら特定のアポA−Iを測定することが重要となってきた。アポA−IIを持たないアポA−I含有HDLのうち、preβ1−HDLは、細胞表面との特異的な相互作用を介して末梢細胞からコレステロールを引き抜き(Fielding, C. et al, Lipid Res., 36: p211- 228(1995))、その作用はHDLよりも効率的であることから、特に注目されている。
【0004】
しかしながら、特定のアポA−Iと選択的に反応する抗体がなかったため目的とするアポA−Iを電気泳動法、免疫沈殿法等で他のアポA−Iと分離する必要があり、簡便に測定するのは不可能であった。
【0005】
【課題を解決するための手段】
このような実情において、本発明者は鋭意研究を行った結果、特定のアポA−Iに対し特異的に反応するモノクローナル抗体を得ることに成功し、これを用いれば、前記の脂質とは結合せずに存在するアポA−Iやpreβ1−HDLを構成するアポA−I等のアポA−Iが正確かつ容易に測定でき、脂質代謝異常をより正確に診断できることを見出し、本発明を完成した。
すなわち、本発明は、(1)分子量が15万以下で、かつアポA−IIを持たないHDLに存在するアポA−I及び(2)脂質と結合していないアポA−Iと特異的に反応するモノクローナル抗体を提供するものである。
また本発明は、このモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマを提供するものである。
また本発明はこのモノクローナル抗体を検体に反応させることを特徴とするアポA−Iの免疫学的測定法を提供するものである。
さらに本発明は、このモノクローナル抗体を含有するアポA−Iの測定試薬を提供するものである。
【0006】
【発明の実施の形態】
本発明のモノクローナル抗体は、例えば次の方法で製造することができる。
免疫原としてはアポA−Iを含むリポタンパク質又は精製したアポA−Iを用いる。免疫に使用する動物としては特に限定されないが、一般的にはマウス、ラットなどが使用される。免疫方法は、一般的な手法に従って行うことができる。例えば、免疫原を通常の緩衝液や生理食塩水に懸濁させたもの、あるいは、フロインド・コンプリート・アジュバンドなどの補液との混合物を、動物の皮下、皮内、腹腔などに投与して一時刺激後、必要に応じて同様の操作を繰り返し行う方法が挙げられる。抗原の投与量は投与経路、動物種に応じて適宜決定されるが、通常の投与量は、1回当たり10μg〜1mg程度とするのが適当である。細胞融合に用いる免疫細胞は、最終免疫の3〜4日後に摘出した脾臓細胞が好適である。また、前記免疫細胞と融合させる他方の親細胞としての骨髄腫細胞(ミエローマ細胞)としては既に確立されている公知の各種細胞株、例えば、マウスにおけるNS1(P3/NSI/I−Ag4444−1)〔Eur. J. Immunol. 6:511-519(1976)〕、SP2/O−Ag14〔Nature 276:269(1978)〕、P3X63−Ag8.653〔J. Immunol. 123:1548(1979)〕、P3X63−Ag8U.1〔Curr. Top. Microbiol. Immunol. 81:1(1978)〕等や、ラットにおけるY3−Ag1.2.3〔Nature 277:131-133(1979)〕、YB2/O(YB2/3HL/P2.G11. 16Ag.20)〔Methods Enzymol. 73B:1(1981)〕等が挙げられ、これらは何れも使用することができる。細胞融合には通常用いられるポリエチレングリコール(PEG)、センダイウイルス(HVJ)等を使用することができる。細胞融合は通常の方法と同様にすればよく、例えば免疫細胞は骨髄細胞に対して約1〜10倍で、ポリエチレングリコールは平均分子量1000〜6000のものを30〜60%の濃度で使用し、免疫細胞と骨髄細胞の混合ペレットに滴下し混ぜ合わせる方法が挙げられる。ハイブリドーマの選択は、通常の選択培地、例えばHAT培地(ヒポキサンチン、アミノプテリン及びチミジンを含む培地)を用いて行えばよい。
【0007】
HAT培地で培養後、得られたハイブリドーマは、通常の限界希釈法に従い、目的とする抗体の産生株の検索及び単一クローン化が行われる。目的とする抗体の産生株の検索には、例えば、ELISA法、RIA法等が利用でき、これによりある特定のアポA−Iに対してのみ特異的に反応する抗体を産生するハイブリドーマを選択することができる。
【0008】
本発明のモノクローナル抗体を選択するには、次のような方法が挙げられる。
まず、培養上清中のモノクローナル抗体を抗マウスIgG抗体等を介して固相化し、これに血漿などのリポタンパク質混合液を反応させる。次に、酵素などで標識した抗アポA−I抗体又は同じく標識したアポA−IIに対する抗体を反応させ、抗アポA−I抗体の系のみに反応し、且つ抗アポA−II抗体の系とは反応しないモノクローナル抗体を選択する。
【0009】
このようなモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマとしては、本発明者が見出したハイブリドーマ55201が挙げられ、このハイブリドーマ55201は、工業技術院生命工学工業技術研究所(〒305−8566 茨城県つくば市東1丁目1番3号)にFERM BP−6938として寄託されている(原寄託日.1998年11月17日)。
【0010】
かくして得られる抗体産生ハイブリドーマからの抗体の製造は、常法に従いハイブリドーマを培養し、培養上清から分離する方法、あるいは、前記ハイブリドーマをこれと適合性のある哺乳類動物に投与し、腹水として回収する方法により実施できる。
【0011】
本発明のハイブリドーマ55201が産生するモノクローナル抗体55201は次の性質を有する。
【0012】
(A)(1)分子量が15万以下で、かつアポA−IIを持たないHDLに存在するアポA−I及び(2)脂質と結合していないアポA−Iに反応する。
(B)ヒト健常者血漿を超遠心分離装置でVLDL、LDL、HDL2、HDL3及びボトム(Bottom)の5つの画分に分離したとき、HDL3及びボトム画分中のアポA−Iに反応する。
【0013】
上記(A)における、(1)分子量が15万以下で、かつアポA−IIを持たないHDLとしては、preβ1−HDLが特に好ましい。
【0014】
本発明の前記抗体を用いて、従来の任意の免疫学的測定方法により、ヒト検体中の特定のアポA−Iを測定することができる。検体としては血漿又は血清が用いられる。用いることのできる免疫学的測定方法としては、通常の競合法、サンドイッチ法によるRIA又はEIA等が挙げられる。これらの方法の実施にあたっては、本発明抗体の標識体を用いることもできる。ここで標識物質としては、パーオキシダーゼ、アルカリホスファターゼ、グルコアミラーゼ、β−ガラクトオキシダーゼ等の酵素;125I、131I、トリチウム等の放射性物質が挙げられる。また、抗体を固相化するための単体としては、各種プラスチックウェル、各種プラスチックビーズ等が挙げられる。
【0015】
例えば、ELISA法で測定する場合には、精製したアポA−Iを標準品として次のような方法で定量することができる。即ち、本発明のモノクローナル抗体を固相化したELISAプレートに、希釈した試料を添加し反応させた後、酵素標識した抗アポA−Iポリクローナル抗体を反応させ、発色後吸光度の変化から試料中に存在するアポA−Iを定量する方法が挙げられる。
【0016】
なお、これらの測定は、通常の免疫学的測定法と同様に0〜40℃のいずれの温度で行うこともできる。
【0017】
前記のように本発明のモノクローナル抗体を用いれば、血漿又は血清中の前記(A)のアポA−I(1)及び/又は(2)が測定できるが、加温前の検体の測定値に比べて37℃加温後の検体の測定値は著しく低下する。このことから、血漿又は血清中に存在する前記(A)のアポA−Iは37℃に加温したときに減少することが判明した。従って、この性質を利用することによっても検体中の前記(A)のアポA−Iを定量することができる。すなわち、検体加温前と加温後に上記の免疫学的測定法により前記(A)のアポA−I量を測定し、加温による測定値の減少量又は減少率を測定すればよい。かくすることによっても前記(A)のアポA−Iの定量が可能となる。ここで、検体の加温前の温度は0〜25℃、加温の温度は30〜40℃とするのが好ましい。また、加温前の検体には、0〜10℃に低温保存した検体も含まれる。
これらの測定法により、血漿又は血清中の前記(A)のアポ−I(1)及び/又は(2)が正確かつ容易に測定できる。
【0018】
【実施例】
次に実施例を挙げて本発明を更に詳細に説明するが、本発明は、これらに限定されるものではない。
【0019】
実施例1(モノクローナル抗体の調製)
(1)ハイブリドーマの調製
ヒト健常者プール血清から超遠心分離法によりHDLを分離し、これをエタノールとエーテルの混合液及びエーテルにて脱脂した。つづいて窒素ガスにてエーテルを完全に除去後、8M尿素溶液にて再溶解し、セファクリル S200カラム(Pharmacia社製)を用いゲル濾過を行った。分離した各フラクションからアポA−Iを含むフラクションをプールし、PBSで透析後免疫原とした。この免疫原と完全フロイントアジュバンド(GIBCO社製)とを1対1で混和乳化し、0.1mg/0.1mL(エマルジョン)で6週齢の雌BALB/Cマウスの皮下に1週間間隔で6回投与後、最終免疫の2日後に脾臓を摘出した。摘出した脾臓から得られた脾臓細胞と骨髄腫細胞SP2/O−Ag14とを6対1の割合で混合し、50%ポリエチレングリコール1540(和光純薬社製)存在下にて細胞融合させた。融合細胞は脾臓細胞として2.5×106/mLになるようにHAT培地に懸濁し、96穴培養プレート(CORNING社製)に0.2mLづつ分注した。これを5%CO2インキュベーター中で37℃にて培養し、おおよそ2週間後に、ハイブリドーマの生育してきたウェルの培養上清について、次に示すELISA法にしたがって有望抗体産生株を選択した。即ち、まず、マイクロプレート(NUNC社製)にヤギ抗マウスIgG(Fc)抗体(JACKSON社製)を介し、各培養上清中のIgGを固相化した。これにヒト健常者血漿希釈液を添加し、アポA−Iを含むリポタンパク質(主にHDL)を反応させた。つづいて、アポA−Iを山羊に免疫して得たヤギ抗アポA−I抗体をビオチン−N−ヒドロキシ−スクシンイミド(ZYMED社製)を用いビオチン化したビオチン標識抗アポA−I抗体、もしくはアポA−IIを山羊に免疫して得たヤギ抗アポA−II抗体を同様にビオチン化したビオチン標識抗アポA−IIを反応させ、ペルオキシダーゼ標識ストレプトアビジン(ZYMED社製)を反応後、オルトフェニレンジアミン(東京化成社製)を含む基質溶液で発色させた。これをマイクロプレートリーダー(A.492)で測定し、ビオチン標識抗アポA−I抗体を用いた系で高い反応性を示し、且つビオチン標識抗アポA−II抗体を用いた系では反応性を示さなかった株を選択した。このハイブリドーマを限界希釈法によりクローン化を行い、モノクローナル抗体ハイブリドーマ55201を作製した。
【0020】
(2)モノクローナル抗体の調製
あらかじめ2週間前にプリスタン0.5mLを腹腔内に注射しておいた12週齢の雌BALB/Cマウスに、ハイブリドーマ55201を細胞数0.5×106個の量で腹腔内に投与した。約14日後に腹水を採取し、遠心処理して上清を得た。上清を等量の吸着用緩衝液(3M NaCl−1.5M グリシン−NaOH, pH8.5)と混和後、濾過した。この濾液を吸着用緩衝液で平衡化したプロテインAカラム(ファルマシア)に通して抗体をカラムに吸着させた後、0.1Mクエン酸緩衝液(pH3.0)で溶出させてモノクローナル抗体55201を精製した。
【0021】
実施例2(モノクローナル抗体の特異性)
(1)ウェスタンブロット法
実施例1で得た抗体が、アポA−Iに対する抗体であることを確認するため、ウェスタンブロット法により解析した。即ち、ヒト健常者血清をSDS−ポリアクリルアミドゲル電気泳動にかけ、PVDF膜(ミリポア社製)に電気的に転写し、3%−スキムミルクを含むPBST(0.05%Tween20を含むPBS)で1時間ブロッキング後、一次抗体としてモノクローナル抗体55201を、二次抗体としてペルオキシダーゼ標識抗マウスIgG抗体(AMERICAN QUALEX社製)を反応させた。PVDF膜をPBSTで洗浄後、ジアミノベンジジンを基質として加え、発色させた。図1に示す如く、モノクローナル抗体55201は分子量28000のアポA−Iに対するバンドのみ認められ、アポA−Iに対する特異抗体であることが確認された。
【0022】
(2)ELISA法
実施例1で得たモノクローナル抗体(55201)を20mMリン酸緩衝生理食塩水(PBS;pH7.2)で3μg/mLの濃度に調整後、96穴ELISAプレート(ヌンク社製)に50μL/ウェル加え、4℃で一夜インキュベートした。プレートをPBSで3回洗浄後、ブロッキング液(1%BSAを含むPBS)を100μL/ウェル加え、1時間ブロッキングした。ブロッキング液を除去後、ブロッキング液にて希釈したヒト健常者血漿希釈液を50μL/ウェル加え、室温で1時間インキュベートした。ブロッキング液で3回洗浄した後、ビオチン標識ヤギ抗アポA−I抗体、もしくはビオチン標識抗アポA−II抗体を50μL/ウェル加え、室温で1時間インキュベートした。同様にブロッキング液で3回洗浄した後、ペルオキシダーゼ標識ストレプトアビジンを加え、室温で30分間インキュベートした。再びブロッキング液で3回洗浄した後、ペルオキシダーゼ基質溶液を50μL/ウェル加えた。10分後、1.5N硫酸を50μL/ウェル加え、492nmにおける吸光度を測定した。
【0023】
この結果を図2に示す。図2より、モノクローナル抗体55201はアポA−IIを含むHDLとは反応せず、アポA−Iのみを含むHDLと特異的に反応することが示された。
【0024】
(3)ゲル濾過分離画分に対する反応性
実施例1で得た抗体の特異性を検討するため、ヒト健常者血漿をゲル濾過にて分離し、その分離した各画分に対する反応性を調べた。即ち、ヒト健常者血漿をゲル濾過用カラム4本(TSK−GEL G3000SW、7.5mmID×60cm 2本、同G3000SW、7.5mmID×30cm 1本、ファルマシア スーパーデックス200HR10/30)を接続させたファルマシア FPLCシステムにて分離し、各フラクションのアポタンパク濃度を測定するとともに、以下に示すELISA法にて各モノクローナル抗体の反応性を比較した。実施例1で得たモノクローナル抗体55201を20mMリン酸緩衝生理食塩水(PBS;pH7.2)で3μg/mLの濃度に調整後、96穴ELISAプレート(ヌンク社製)に50μL/ウェル加え、4℃で一夜インキュベートした。プレートをPBSで3回洗浄後、ブロッキング液(1%BSA−PBS)を100μL/ウェル加え、1時間ブロッキングした。ブロッキング液を除去後、ブロッキング液にて希釈した各フラクション又は精製アポA−Iを50μL/ウェル加え、室温で1時間インキュベートした。ブロッキング液で3回洗浄した後、アポA−Iを山羊に免疫して得たヤギ抗アポA−I抗体を過ヨウ素酸法にてペルオキシダーゼ標識したペルオキシダーゼ標識ヤギ抗アポA−I抗体を50μL/ウェル加え、室温で1時間インキュベートした。同様にブロッキング液で3回洗浄した後、ペルオキシダーゼ基質溶液を50μL/ウェル加えた。10分後、1.5N硫酸を50μL/ウェル加え、492nmにおける吸光度を測定し、精製アポA−Iを標準品として、各フラクションのアポA−I量を算出した。この結果を図3(下)に示す。尚、アポA−I、A−II、Eの各アポタンパク質は、各精製アポタンパクを山羊に免疫して得たポリクローナル抗体及びこれを過ヨウ素酸法によりペルオキシダーゼ標識した標識抗体を用いたELISA法で測定した。この結果を図3(上)に示す。図3(下)より、モノクローナル抗体55201は主に血漿中に存在する分子量6.7万以下のHDLに存在するアポA−I、もしくは脂質と結合せずに存在するアポA−Iに対して反応することが示された。
【0025】
(4)超遠心分離画分に対する反応性
実施例1で得たモノクローナル抗体55201の特異性を検討するため、ヒト健常者血漿30mLを超遠心分離装置(日立)でVLDL、LDL、HDL2、HDL3、及びボトムの5つの画分に分離し、55201抗体と反応する粒子がどの画分に存在するか調べた。即ち、実施例2(3)と同様のELISA法で精製アポA−Iを標準品として分離した画分中のアポA−I量を測定した。この結果を表1に示す。表1より、モノクローナル抗体55201と反応する血漿中の成分はVLDL、LDL及びHDL2の中にはほとんど存在せず、HDL3とボトム中に存在することが判明した。このことから、55201抗体がHDL2のような比重の低い画分に存在するアポA−Iとは反応せず、比重の高いHDL3及びボトムに存在するアポA−Iと反応することが示された。
【0026】
【表1】
【0027】
(5)preβ1−HDLとの反応
実施例1で得たモノクローナル抗体55201の特異性を検討するため、非変性二次元電気泳動法による解析を行った。即ち、ヒト健常者の血漿にモノクローナル抗体55201もしくはノーマルマウスIgGを添加後、まず、0.75%のアガロース電気泳動を行い、そのアガロース切片を切り出しポリアクリルアミドゲル電気泳動にかけた。これをニトロセルロース膜(ミリポア社)に電気的に転写し、125I標識したヤギ抗アポA−I抗体を反応させ、オートラジオグラフィーを用いHDL亜分画の変化を比較した。この結果を図4に示す。コントロールとして用いたノーマルマウスIgGの系に比べ、モノクローナル抗体55201を加えた系はpreβ1−HDLのスポットが消失するとともにIgGとpreβ1−HDLとのコンプレックスと考えられるスポットが認められた。一方、preβ1−HDL以外のHDLのスポットには変化が見られなかった。このことから、モノクローナル抗体55201がpreβ1−HDLに対して特異的に反応することが判明した。
【0028】
(6)37℃加温後のpreβ1−HDL値
実施例1で得たモノクローナル抗体55201の特異性を検討するため、4℃で保存しておいたヒト健常者血漿0.2mLをマイクロチューブに分注後、37℃で2時間インキュベートし、抗体との反応性に与える影響を調べた。即ち、実施例2(3)と同様のELISA法で精製アポA−Iを標準品としてインキュベート前とインキュベート後の血漿中のpreβ1−HDL濃度を測定した。この結果を表2に示す。表2より、37℃でのインキュベート後、反応性が著しく低下することから、血中のpreβ1−HDLは加温により減少することが判明した。
【0029】
【表2】
【0030】
実施例3(測定方法)
実施例1で得た抗体を用い、ヒト血漿中のpreβ1−HDL濃度を測定した。即ち、精製アポA−Iを標準品としてヒト健常者血漿3検体を実施例2(3)と同様のELISA法で測定した結果、図5に示す如く、3検体とも良好な希釈直線性を示し、preβ1−HDL濃度を測定できることが示された。
【0031】
実施例4(臨床検体の測定)
実施例3で確認されたpreβ1−HDL測定系の臨床的意義について検討するため、4℃で保存しておいた高脂血症患者の血漿39検体及び健常者の血漿11検体について、37℃加温前後の血漿中のpreβ1−HDL濃度を実施例2(3)と同様のELISA法で測定した。また、対照として従来の技術である血漿中の全アポA−I濃度を、37℃加温前の血漿を用いて免疫比濁法により測定した。
【0032】
加温前血漿中の、全アポA−I濃度及びpreβ1−HDL濃度を図6に示す。全アポA−I濃度は患者と健常者で明確な差は認められなかったのに対し、preβ1−HDL濃度では患者と健常者で著しい差が認められた。
加温後のpreβ1−HDL濃度を図7に示す。健常者での加温後のpreβ1−HDL値は平均で3.8μg/mLに対し、患者では平均で12.2μg/mLとなり、患者と健常者で著しい差が認められた。
加温前後でのpreβ1−HDL濃度の減少率を図8に示す。健常者での加温による減少率は平均で、79.1%に対し、患者では平均で68.5%となり、患者と健常者で著しい差が認められた。
以上の結果は、加温処理前後のpreβ1−HDL濃度及び、加温後の減少量又は減少率の測定が脂質代謝異常を示す指標として有用であることを示す。
【0033】
【発明の効果】
本発明の特定のアポA−Iに特異的に反応する抗体を使用することにより、ヒト体液中の特定のアポA−Iを測定することが可能となり、脂質代謝異常等の新たな指標がもたらされる。
【図面の簡単な説明】
【図1】ウェスタンブロット法(電気泳動)による本発明抗体の特異性を示す図である。
【図2】ELISA法による本発明抗体の特異性を示す図である。
【図3】ゲル濾過分離した分画に対する本発明抗体の反応性を示す図である。
【図4】二次元電気泳動法による本発明抗体の特異性を示す図(電気泳動像)である。
【図5】本発明抗体を用いたELISA法での希釈直線性を示す図である。
【図6】臨床検体のpreβ1−HDL値の測定結果を示す図である。
【図7】臨床検体の加温後のpreβ1−HDL値を示す図である。
【図8】臨床検体の加温によるpreβ1−HDL値の減少率を示す図である。
Claims (6)
- (1)分子量が15万以下で、かつヒトアポリポ蛋白質A−IIを持たないHDLに存在するヒトアポリポ蛋白質A−I、(2)脂質と結合していないヒトアポリポ蛋白質A−I、並びに(3)ヒト健常者血漿を超遠心分離装置でVLDL、LDL、HDL2、HDL3及びボトムの5つの画分に分離したとき、HDL3及びボトム画分中のヒトアポリポ蛋白質A−Iと特異的に反応し、37℃に加温後の血漿又は血清に対する反応性が、加温前の反応性に比べて低いモノクローナル抗体。
- (1)分子量が15万以下で、かつヒトアポリポ蛋白質A−IIを持たないHDLが、preβ1−HDLである請求項1記載のモノクローナル抗体。
- 請求項1又は2記載のモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマ。
- 請求項1又は2記載のモノクローナル抗体を検体に反応させることを特徴とするヒトアポリポ蛋白質A−Iの免疫学的測定法。
- 検体加温前と加温後に測定し、加温後の減少量又は減少率を測定するものである請求項4記載の測定法。
- 請求項1又は2記載のモノクローナル抗体を含有するヒトアポリポ蛋白質A−Iの測定試薬。
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