JP4451994B2 - 動弁機構の摺動部材及びその表面処理方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、内燃機関における動弁機構の摺動部材(例えばバルブリフタやアウターシム又はそれらの相手部材であるカムのように他部材との摺動面を有する部材をいう。)及びその表面処理方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
内燃機関の直打式の動弁機構には、図3に示すように、端壁52及び側壁53からなる倒立カップ状のバルブリフタ51が使用され、端壁52の頂面54にカム61のカム外周面62が摺接する。内燃機関の燃費向上と出力増加とを図るためには、カム外周面62と頂面54との間の摩擦損失(フリクションロス)を減らすことが有効であり、そのためにはカム外周面62及び頂面54の表面粗さを向上させる必要がある。また、カム外周面62と頂面54には耐摩耗性も要求される。
【0003】
頂面54については、従来、摩擦損失低減のために10点平均表面粗さ(単に表面粗さという)が0.8〜3.2μmRz(例えば1.6μmRz)となるよう研磨した後、耐摩耗性向上のためにリン酸塩皮膜処理が施されていた。近年は、さらなる摩擦損失低減のために、研磨後に超仕上げ又はラップを行うことが考えられている。また、さらなる耐摩耗性向上のために、リン酸塩皮膜処理に代えてマンガン系、CrN、TiN等のコーティング処理を施すことも考えられている。
【0004】
カム外周面62については、従来、摩擦損失低減のために表面粗さが0.8〜3.2μmRz(例えば1.6μmRz)となるよう研磨していた。しかし、カム外周面62の表面粗さの向上は加工上難しいため、研磨又はペーパーラップにより1.6μmRz前後にする程度が現状であり、他の有効な手段が無かった。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
現状よりも内燃機関の燃費向上と出力増加とを図るためには、さらに摩擦損失を低減させる必要がある。しかし、上記のように研磨後に別工程の超仕上げ又はラップを行う方法は、頂面54には適用できるがコストが非常に高くなるという問題があり、カム外周面62には適用できないという問題があるため、実用的ではない。また、上記のように耐摩耗性を向上させるためにマンガン系等のコーティング処理を施す方法は、やはりコストが非常に高くなるという問題があった。
【0006】
本発明の目的は、動弁機構の摺動部材の表面粗さを安価に且つ効果的に向上させて摩擦損失を低減させることができ、もって内燃機関のさらなる燃費向上と出力増加に資することができ、また、別工程を経なくても表面粗さを向上させると同時に耐摩耗性を向上させることができる動弁機構の摺動部材及びその表面処理方法を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、本発明に係る動弁機構の摺動部材は、カムの外周面が、40〜200μmの微小ショットを100m/秒以上の高速で噴射する精密ショットピーニングにより表面粗さ0.8μmRz未満で且つ粗さ性状が微小ディンプル状である平滑面に仕上げられているとともに加工硬化しており、かつ、該カムの外周面が摺接するバルブリフタの平らな頂面又はアウターシムの平らなシム外面が、40〜200μmの微小ショットを100m/秒以上の高速で噴射して該頂面又はシム外面の全域に均等に衝突させる精密ショットピーニングにより表面粗さ0.8μmRz未満で且つ粗さ性状が微小ディンプル状である平滑面に仕上げられているとともに加工硬化していることを特徴とする。
【0008】
また、本発明に係る動弁機構の摺動部材の表面処理方法は、カムの外周面に、40〜200μmの微小ショットを100m/秒以上の高速で噴射する精密ショットピーニングを施すことにより、該摺動面を表面粗さ0.8μmRz未満で且つ粗さ性状が微小ディンプル状である平滑面に仕上げるとともに加工硬化させ、かつ、該カムの外周面が摺接するバルブリフタの平らな頂面又はアウターシムの平らなシム外面に、40〜200μmの微小ショットを100m/秒以上の高速で噴射して該頂面又はシム外面の全域に均等に衝突させる精密ショットピーニングを施すことにより、該頂面又はシム外面を表面粗さ0.8μmRz未満で且つ粗さ性状が微小ディンプル状である平滑面に仕上げるとともに加工硬化させることを特徴とする。
【0009】
ここで、摺動部材とは、相手部材との摺動面を有する部材であり、次の部材を説明する。
(1)バルブリフタ: バルブリフタは一般に端壁及び側壁からなる倒立カップ状をなす。バルブリフタにおいて、相手部材であるカムに対する摺動面は端壁の頂面であり、シリンダヘッドのガイド穴に対する摺動面は側壁の外周面である。端壁の頂面にはカム外周面のノーズにより大きな荷重がかかり、側壁の外周面には実質的にほとんど荷重がかからないため、端壁の頂面のみに精密ショットピーニングを施してもよく、合理的かつ効率的に本発明の効果が得られる。
(2)アウターシム: アウターシムはバルブリフタの端壁の頂面に嵌着されるものであり、該アウターシムが使用される場合は、該アウターシムのシム外面が端壁の頂面に代わってカムに対する摺動面となる。そこで、シム外面に精密ショットピーニングを施す。また、シム内面と頂面との間も回転により摺動するので、これらの面に精密ショットピーニングを施すこともできる。
(3)カム: カムの摺動面はカム外周面である。一般にカム外周面はベース円とノーズとからなるプロフィールをなす。ベース円は相手部材に摺接するときにさほど荷重がかからず摩擦力も小さいが、ノーズは相手部材に摺接するときに最も荷重がかかって摩擦力が大きくなる。そこで、摩擦損失低減に有効な箇所であるノーズのみに精密ショットピーニングを施してもよく、合理的かつ効率的に本発明の効果が得られる。
【0010】
摺動部材の材料は、特に限定されないが、浸炭焼入れ鋼、窒化鋼、合金鋼等の鋼材や、アルミニウム合金、チタン合金等の軽合金を例示できる。
【0011】
精密ショットピーニングに使用する微小ショットは、特に限定されないが、ガラスビーズショットやスチールショットを例示できる。ショットの大きさ及び噴射速度については、前記のとおり40〜200μmの微小ショットを100m/秒以上の高速で噴射する。WPC処理(Wide Peaning Cleaning,株式会社不二機販及び株式会社不二製作所の登録商標)はこの条件に適合するものである。
【0012】
【発明の実施の形態】
内燃機関の直打式の動弁機構には、図1に示すように、円板状の端壁2及び円筒状の側壁3からなる倒立カップ状のバルブリフタ1が使用され、該バルブリフタ1は鋼材の冷間鍛造加工等により一体形成されている。図1(a)に示すように、端壁2の頂面4にカム11のカム外周面12が摺接するタイプ▲1▼と、図1(b)に示すように、端壁2の頂面に相対摺動回転可能に嵌着された円板状のアウターシム7のシム外面8にカム11のカム外周面12が摺接するタイプ▲2▼とがある。側壁3の外周面5はシリンダヘッドのガイド穴(図示略)に対して摺動する。カム11は鋼材の切削加工等により形成され、カム外周面12はベース円12aとノーズ12bとからなる所定のプロフィールをなす。
【0013】
タイプ▲1▼でカム外周面12に対する摺動面である頂面4、タイプ▲2▼でカム外周面12に対する摺動面であるシム外面8、及びこれらに対する摺動面であるカム外周面12は、精密ショットピーニングにより表面粗さ0.8μmRz未満(例えば0.4μmRz)で且つ粗さ性状が微小ディンプル状である平滑面(図2(d)参照)に仕上げられている。次に、これら摺動面の表面処理方法を説明する。
【0014】
頂面4又はシム外面8については、冷間鍛造加工等の後にまず粗研磨するが、この粗研磨ではさほど精密な平滑面とする必要はなく、表面粗さ1.6〜3.2μmRz程度又はそれ以上の粗い研磨でよい。続いて、図2(a)(b)に示すように、頂面4又はシム外面8に精密ショットピーニング機の噴射ノズル20を近付け、該噴射ノズル20を移動させながらその噴射口から40〜200μmの例えばガラスビーズ製の微小ショットを100m/秒以上で噴射することにより、頂面4又はシム外面8の全域に微小ショットを均等に衝突させる。この精密ショットピーニングにより、頂面4又はシム外面8を表面粗さ0.8μmRz未満で且つ粗さ性状が微小ディンプル状である平滑面に仕上げるとともに、微小ショットの衝突により加工硬化して圧縮残留応力が付与される。なお、噴射ノズル20側ではなく、バルブリフタ1又はアウターシム7を移動させてもよい。
【0015】
カム外周面12については、切削加工等の後に研磨することなく、精密ショットピーニングを施す。この精密ショットピーニングの方法は、上記頂面4又はシム外面8のそれと同様であり、図2(c)に示すように行う。なお、カム外周面12の全域に精密ショットピーニングを施してもよいが、ノーズ12bのみに精密ショットピーニングを施してもよい。
【0016】
本実施形態のバルブリフタ1、アウターシム7又はカム11によれば、効率の高い精密ショットピーニングにより頂面4、シム外面8又はカム外周面12の表面粗さを安価に且つ効果的に向上させて摩擦損失を低減させることができる。また、表面粗さRzの数値のみならず、粗さ性状が微小ディンプル状になるため、摩擦損失の低減効果はさらに高くなる。もって内燃機関のさらなる燃費向上と出力増加に資することができる。また、別工程を経なくても表面粗さの向上と同時に、頂面4、シム外面8又はカム外周面12の最表面が前記の通り加工硬化するので、耐摩耗性を向上させることができる。
【0017】
なお、頂面4又はシム外面8のみに精密ショットピーニングを施してもよいし、カム外周面12のみに精密ショットピーニングを施してもよいが、頂面4又はシム外面8とカム外周面12との両者に精密ショットピーニングを施すことにより、さらに摩擦損失の低減が実現できる。
【0018】
なお、本発明は前記実施形態の構成に限定されるものではなく、例えば次のように、発明の趣旨から逸脱しない範囲で変更して具体化することもできる。
(1)ガイド穴に対する摺動面である側壁3の外周面5を、精密ショットピーニングにより表面粗さ0.8μmRz未満で且つ粗さ性状が微小ディンプル状である平滑面に仕上げること。
(2)シム内面9と端壁の頂面とを、精密ショットピーニングにより表面粗さ0.8μmRz未満で且つ粗さ性状が微小ディンプル状である平滑面に仕上げること。
【0019】
【発明の効果】
以上詳述した通り、本発明によれば、動弁機構の摺動部材の表面粗さを安価に且つ効果的に向上させて摩擦損失を低減させることができ、もって内燃機関のさらなる燃費向上と出力増加に資することができ、また、別工程を経なくても表面粗さを向上させると同時に耐摩耗性を向上させることができる、という優れた効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施形態に係るバルブリフタ及びカムを示す斜視図である。
【図2】(a)(b)(c)は同バルブリフタ、アウターシム及びカムの摺動面の表面処理方法を示す概略断面図、(d)は同処理後の摺動面の概略拡大断面図である。
【図3】従来のバルブリフタ及びカムを示す斜視図である。
【符号の説明】
1 バルブリフタ
2 端壁
3 側壁
4 頂面
5 外周面
7 アウターシム
8 シム外面
11 カム
12 カム外周面
12a ベース円
12b ノーズ
20 噴射ノズル
Claims (4)
- カムの外周面が、40〜200μmの微小ショットを100m/秒以上の高速で噴射する精密ショットピーニングにより表面粗さ0.8μmRz未満で且つ粗さ性状が微小ディンプル状である平滑面に仕上げられているとともに加工硬化しており、かつ、該カムの外周面が摺接するバルブリフタの平らな頂面又はアウターシムの平らなシム外面が、40〜200μmの微小ショットを100m/秒以上の高速で噴射して該頂面又はシム外面の全域に均等に衝突させる精密ショットピーニングにより表面粗さ0.8μmRz未満で且つ粗さ性状が微小ディンプル状である平滑面に仕上げられているとともに加工硬化していることを特徴とする動弁機構の摺動部材。
- カムの外周面に、40〜200μmの微小ショットを100m/秒以上の高速で噴射する精密ショットピーニングを施すことにより、該カムの外周面を表面粗さ0.8μmRz未満で且つ粗さ性状が微小ディンプル状である平滑面に仕上げるとともに加工硬化させ、かつ、該カムの外周面が摺接するバルブリフタの平らな頂面又はアウターシムの平らなシム外面に、40〜200μmの微小ショットを100m/秒以上の高速で噴射して該頂面又はシム外面の全域に均等に衝突させる精密ショットピーニングを施すことにより、該頂面又はシム外面を表面粗さ0.8μmRz未満で且つ粗さ性状が微小ディンプル状である平滑面に仕上げるとともに加工硬化させることを特徴とする動弁機構の摺動部材の表面処理方法。
- 前記カムのカム外周面についてはノーズのみが、前記精密ショットピーニングにより前記平滑面に仕上げられているとともに加工硬化している請求項1記載の動弁機構の摺動部材。
- 前記カムのカム外周面についてはノーズのみに、前記精密ショットピーニングを施すことにより、前記平滑面に仕上げるとともに加工硬化させる請求項2記載の動弁機構の摺動部材の表面処理方法。
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