JP4453532B2 - 溶銑の脱硫方法 - Google Patents

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本発明は、機械的攪拌を伴う溶銑の脱硫において脱硫反応を促進させる方法に関わり、さらに詳しくは、CaOを主成分とする脱硫剤とFeOを混合添加した後、金属Al源を添加して溶銑中のAl含有率を調整する脱硫方法に関する。
(A)発明の背景
最近、鋼材使用環境が厳しくなるにつれて、鋼材中の不純物、特に、硫黄含有率(以下、「S含有率」とも記す)の低減に対する要求は、ますます強くなる。例えば、 ラインパイプ向けの鋼板素材では、S含有率を10ppm以下に低減することが要求されている。また、その他の鋼種においても、低硫黄化が必要となっている。
低硫黄化の方法としては、炭素含有率(以下、「C含有率」とも記す)が高く、かつ酸素ポテンシャル低くて、熱力学的に脱硫に有利な溶銑段階において行う方法と、二次精錬により行う方法とがある。コスト面からは、溶銑脱硫により可能な限りS含有率を低減することが望ましい。
(B)従来技術およびその問題点
従来、溶銑脱硫方法としては、トーピードあるいは溶銑鍋中の溶銑に脱硫剤を吹き込む方法、鍋中の溶銑をインペラーと称する攪拌羽根により脱硫剤とともに機械的に回転攪拌する方法が一般的である。脱硫剤としては、ソーダ灰、カルシウムカーバイト、金属マグネシウム、石灰石などが挙げられるが、最近は、KR法と称するインペラーによる攪拌法の採用により、脱硫反応の効率が向上してきたため、コスト面から、生石灰を主成分として、これに少量のソーダ灰あるいは螢石を含む生石灰系のものが主流となっている。
CaOによる脱硫は、下記(1)式に示されるような還元反応である。
(CaO)+[S]=(CaS)+[O] ・・・・(1)
ここで、(CaO)および(CaS)は、それぞれスラグ中のCaOおよびCaSを、また、[S]および[O]は、それぞれ溶銑(メタル)中のSおよびOを表す。なお、以下の説明においても、スラグ中およびメタル中の化学成分については、同様の表記法を用いる。
CaOによる脱硫の場合、熱力学的には溶銑中の[C]含有率により定まる酸素ポテンシャルにおいても、平衡[S]含有率は9ppm程度と十分に低い値であり、CaOの脱硫能は高い。しかしながら、CaOのみでは脱硫反応はほとんど進行しない。その理由は、固体のCaO内では、Sの拡散速度が、極めて遅いからである。換言すれば、脱硫反応は、精錬剤のごく表面のみで進行することによる。
例えば、添加するCaO量を10kg/溶銑tとして、[S]含有率が40ppmから10ppmまで低下した場合に、脱硫反応に使われるCaOは0.7kg/溶銑t程度であり、添加したCaO量の7%程度である。そこで、従来、脱硫剤を溶融または半溶融のスラグ状態としてSの移動速度を高め、脱硫反応が速く進行しやすいサイト(反応場所)の容量を増加させて、脱硫反応を促進させるために、滓化促進剤として螢石(CaF2)を添加する方法が知られている。しかしながら、このCaF2はフッ素による環境汚染の問題を有しており、使用が禁止される方向にある。
そこで、CaOの融点を低下させる他の融点低下剤としてAl23を用いる方法も検討されている。しかしながら、CaO−Al23系では、たとえAl23を共晶点のAl23組成である38質量%となるように多量に配合しても、脱硫処理温度の1350℃程度においては液相を形成しないことから、脱硫促進効果は少ない。
一方、特許文献1には、上述の方法とは技術的思想の異なる脱硫促進方法が提案されている。この方法は、生石灰を主原料とした脱硫精錬剤に酸化鉄源を混合して適切な液相率の液相を形成させることにより、機械的攪拌法(KR法)における回転攪拌羽根の回転運動により精錬剤を造粒し、回転攪拌羽根により造粒粒子を効率良く溶銑に巻き込ませて、脱硫効率を向上させる方法である。すなわち、特許文献1に開示された方法は、従来とは異なった視点から、溶銑中への脱硫剤の巻き込み性の改善を図ったものである。
なお、上記の特許文献1に開示された方法においても、酸素ポテンシャルを低下させ、脱硫反応を促進させるために、Alを添加することは有効である。すなわち、同文献の請求項4、あるいは実施例に示されているように、脱硫すべき溶銑にAl源を添加するか、または、脱硫処理に先立ち金属Alを投入する方法である。その添加量としては、脱硫処理後の[Al]含有率が0.01%以上となる量が必要である。
しかしながら、本発明者らの検討によれば、FeO成分をCaOの1重量部に対して0.02〜0.07重量部混合しただけの脱硫剤では、酸素ポテンシャルが高く、脱硫の進行が安定して高水準に達しない場合が多い。また、脱硫前にAlを添加後、FeOを含む脱硫剤を添加すると、FeOは溶銑中の[Al]により還元されて減少し、脱硫剤の造粒が意図するように進行しない。さらには、FeOの還元に消費されるAlおよび空気酸化によって消費されるAlをも考慮すると、脱硫処理後の[Al]含有率を0.01%以上とするには、高価なAlを多量に要するという問題のあることが判明した。
特開2003−253315号公報(特許請求の範囲および段落[0022]など)
前述のとおり、従来技術においては下記の問題が残っている。すなわち、(1)滓化促進剤として螢石(CaF2)を添加し、CaO脱硫剤中のSの移動速度を高めて脱硫を促進する方法は、フッ素による環境汚染の問題を有する。(2)他の融点低下剤としてAl23を用いる方法もあるが、多量に配合しても液相を形成しにくく、脱硫促進効果は少ない。(3)CaOにFeOを混合した精錬剤により液相を形成させ、機械的攪拌法により精錬剤を造粒させて、回転攪拌羽根により溶銑中に巻き込ませることにより、脱硫効率を向上させる方法があるが、形成されるスラグの酸素ポテンシャルが高く、安定した高水準の脱硫が進行しない。また、脱硫前にAlを添加すると、FeOが溶銑中の[Al]により還元されて減少し、脱硫剤の造粒が進行しない。
本発明は、上記の問題に鑑みてなされたものであり、その課題は、溶銑を機械的攪拌条件下において、CaOを主成分とする脱硫剤を用いて安価で効率よく脱硫を促進させる方法を提供することにある。
本発明者らは、上述の課題を解決するために、溶銑の機械的攪拌を行いながら、CaOを主成分としてFeOを混合した脱硫剤を添加した後、金属Al源を添加して効率的に脱硫する方法を検討し、下記の(a)〜(e)の知見を得て、本発明を完成させた。
(a)CaOを主成分とする脱硫剤にFeOを添加して形成されるCaO−FeO系スラグ中のFeOが溶銑中の[Si]と反応して生成されるSiO2、および、その後にAlを添加して生成されるAl23により、半溶融のCaO−SiO2−Al23スラグが形成さる。この半溶融スラグは、CaO−FeO系スラグよりも脱硫能が高いので、脱硫を効果的に促進する。
(b)対象とする溶銑中の[Si]含有率は0.1質量%以上が適切である。CaOの表面に生成するCaO−SiO2−Al23系スラグ中のSiO2含有率が適度に高くなり、スラグの粘性が低下して脱硫速度が上昇するからである。
(c)FeOの添加量はCaO質量の1〜3質量%が適切である。1質量%未満では、CaO表面に形成される半溶融スラグの量が少な過ぎ、一方、3質量%を超えると、形成されるスラグの酸素ポテンシャルが上昇し過ぎて、いずれの場合も脱硫の進行が悪化するからである。
(d)金属Alの添加量は、脱硫処理後の溶銑中のsol.Al含有率が0.002〜0.008質量%となるように調整するのが適切である。0.002質量%未満では、後述するとおり脱硫反応の容量係数が小さ過ぎ、また、0.008質量%を超えると、脱硫剤が凝集して前記容量係数が低下し過ぎ、いずれの場合も脱硫反応速度が低下するからである。
(e)CaOを主成分とする脱硫剤にCaO質量の15質量%以下のソーダ灰および/またはCaO質量の7質量%以下のAl23を添加すると、さらに脱硫反応が進行するので、好ましい。
本発明は、上記の知見に基いて完成されたものであり、その要旨は、下記の(1)および(2)に示す溶銑の脱硫方法にある。
(1)Siを0.1質量%以上含有する溶銑を容器中において機械的に攪拌しながら、CaOが脱硫剤中の主要成分を占め、その含有率が75質量%以上である脱硫剤と前記CaO質量の1〜3質量%のFeOを混合添加した後、金属Al源を添加することにより、脱硫処理後の溶銑中のsol.Al含有率が0.002〜0.008質量%となるように調整することを特徴とする溶銑の脱硫方法。
(2)前記(1)に記載の溶銑の脱硫方法において、CaOが脱硫剤中の主要成分を占め、その含有率が75質量%以上である脱硫剤として、前記CaO質量の15質量%以下のソーダ灰および/またはCaO質量の7質量%以下のAl23を含有する精錬剤を用いることを特徴とする溶銑の脱硫方法。
本発明において、「機械的に攪拌する」とは、攪拌翼(攪拌羽根)を用いて溶銑を攪拌することを意味し、例えば、攪拌羽根を浸漬させて溶銑を攪拌するKR法による攪拌などが該当する。
「CaOを主成分とする」とは、CaOが脱硫剤中の主要成分を占め、その含有率が75質量%以上であることを意味する。
「金属Al源」とは、金属Al、金属Alを含む混合物などを意味し、例えば、ショットAl、Al溶解時に生成するAl灰(金属AlおよびAl23の混合物)などが該当する。
なお、以下の説明において、成分含有率は「質量%」により表示し、これを単に「%」と表記することとする。
本発明の溶銑の脱硫方法によれば、螢石を用いることなく、溶銑を機械的攪拌条件下において、CaOを主成分とする脱硫剤を用いて安価にかつ安定した脱硫促進作用のもとに、脱硫処理を行うことができる。さらに、脱硫処理後のスラグにはフッ素成分が含まれないので、環境汚染の問題もなく、スラグの有効利用が可能である。
(A)本発明の脱硫方法の基本構成
本発明は、前記のとおり、Siを0.1%以上含有する溶銑を容器中において機械的に攪拌しながら、CaOを主成分とする脱硫剤と前記CaO質量の1〜3%のFeOを混合添加した後、金属Al源を添加することにより、脱硫処理後の溶銑中のsol.Al含有率が0.002〜0.008%となるように調整する溶銑の脱硫方法である。以下、本発明についてさらに詳細に説明する。
本発明者らは、脱硫剤にCaF2を添加する以外の方法により、CaOを主成分とする脱硫剤の表面に、脱硫能が高く、かつSの物質移動の速い低融点の相を形成させる方法について検討を行った。種々の酸化物のなかで、FeOはCaOに比較的浸潤しやすいので、CaOと混合して添加することにより、CaO−FeO系の溶融あるいは半溶融部分を形成する。しかしながら、FeOの添加だけであれば、前記特許文献1に記載された効果は期待できるものの、スラグの酸素ポテンシャルが高くなるので、抜本的な脱硫作用の改善を行うには限界がある。
そこで、下記に示す着想に至った。すなわち、「一旦生成したCaO−FeO系スラグ部分のFeOが、溶銑中の[Si]と一部反応して生成するSiO2、および、その後Alを添加することにより生成されたAl23により、半溶融のCaO−SiO2−Al23系スラグが形成される。この半溶融スラグは、CaO−FeO系スラグよりも脱硫能が高いことから、より効果的に脱硫が進行すると期待できる。この場合の半溶融スラグは、純CaOと共存するので、CaOの活量(aCaO)は1に近いと考えられる。」である。
上記の着想内容を検証するために、下記の試験を行ってそれらを確認した。まず、特許文献1に開示された方法のとおり、CaOを主成分とする脱硫剤に、CaO質量の5%のFeOを混合してKR法により脱硫処理を実施した。次に、本発明法として、KR法により攪拌しながらCaOを主成分とする脱硫剤にFeOを混合した脱硫剤を添加した後、1分後に金属Al含有率が約50%のAl灰を添加した試験を実施し、両者を比較した。
その結果、本発明法による脱硫試験の方が良好な脱硫状況を示した。脱硫処理後の脱硫剤(脱硫スラグ)をSEMにより観察した結果、CaO−SiO2−Al23系スラグが認められ、このスラグ中に多量のSが含まれていることを確認した。
さらに、金属Al源の添加量の影響について調査した。CaOを主成分とする脱硫剤にCaO質量の2%のFeOを混合し、溶銑中[Si]との反応が始まって1分後に、Alの添加量を種々に変更してAlを添加し、脱硫におよぼす影響を調査した。本発明法の場合に、試験結果から求められたln[S]の値と脱硫時間tとの間には直線関係が得られたことから、脱硫反応はSの物質移動律速であることがわかった。そこで、本発明法における脱硫反応速度を下記(2)式により表し、下記式における見かけの容量係数Kと脱硫処理後の溶銑中のsol.Al含有率との関係を調査した。
−d[S]/dt=K・[S] ・・・・(2)
ここで、[S]は溶銑中のS含有率(質量%)、K(=kA/V)は脱硫反応における見かけの容量係数(1/min)、kはSの物質移動係数(m/min)、Aは脱硫剤と溶銑との接触界面積(m2)、Vは溶銑の体積(m3)、そしてtは脱硫反応時間(min)である。
図1は、脱硫反応の容量係数におよぼす溶銑中のsol.Al含有率の影響を示す図である。同図の結果から、脱硫処理後のsol.Al含有率が0.004%以下の場合、sol.Al含有率が高くなるほど、脱硫反応の容量係数Kは増大するが、sol.Al含有率が0.01%以上になると、スラグが凝縮して大粒子となり、その結果、脱硫剤と溶銑との接触界面積Aと溶銑体積Vとの比、(A/V)の値が低下し、脱硫速度が低下することが判明した。
上記の試験において、脱硫処理前の脱硫剤の粒径は、ほとんどが粒径1mm以下の微粉であった。脱硫が良好な場合には、脱硫処理後における脱硫剤の粒径は、1〜8mm程度であったのに対して、sol.Al含有率が0.004%を超えて高くなると、脱硫処理後のスラグの粒径は増大しはじめ、sol.Al含有率が0.008%を超えた場合には、脱硫処理後におけるスラグの粒径は大部分が粒径10mm以上の粗粒となった。したがって、sol.Al含有率が過度に高くなった場合には、脱硫剤が凝集し、比(A/V)の値が低下したために、脱硫速度が低下したものと判断される。
(B)本発明方法の好ましい態様
以下に、本発明方法の範囲を前記のとおり規定した理由および好ましい態様について説明する。
1)溶銑中のSi含有率
対象とする溶銑中の[Si]含有率は0.1%以上が適切である。CaOの表面に生成するCaO−SiO2−Al23系スラグ中のSiO2含有率が適度に高くなり、スラグの粘性が低下してスラグ中におけるSの物質移動速度が増大し、その結果、脱硫速度が上昇するからである。しかし、溶銑中の[Si]含有率が0.6%を超えて高くなると、CaO−SiO2−Al23系スラグ中の塩基度(CaO/SiO2)が低くなって脱硫能が低下し、脱硫速度が逆に低下するため、溶銑中の[Si]含有率は0.6%以下とすることが好ましい。
2)FeOの添加量
FeOの添加量はCaO質量の1〜3%とするのが適切である。FeO添加量が1%未満では、CaO表面に形成される半溶融スラグ量が過少となって脱硫の進行が悪化し、一方、FeO添加量が3%を超えて高くなると、脱硫スラグの酸素ポテンシャルが上昇し過ぎて、脱硫が進行しにくくなるからである。
3)Alの添加量
Alの添加量は、脱硫処理後の溶銑中のsol.Al含有率が0.002〜0.008%となるように調整するのが適切である。溶銑中のsol.Al含有率が0.002%未満では、前記図1にみられるとおり、スラグの酸素ポテンシャルが高くなり、スラグの脱硫能が低くなって、脱硫反応の容量係数が小さくなることから、脱硫反応速度は遅くなる。また、sol.Al含有率が0.008質量%を超えて高くなると、脱硫剤が凝集して前記容量係数が低下する結果、脱硫反応速度が低下する。Alの添加量は、脱硫処理後の溶銑中のsol.Al含有率が0.003〜0.005%となるように添加するのが好ましい。
図2は、溶銑へのAl添加量と脱硫処理後の溶銑中のsol.Al含有率との関係を示す図である。脱硫処理後の溶銑中のsol.Al含有率は、添加する金属Al源の粒度、脱硫処理時における空気酸化、高炉スラグの残留量などにより影響されるものの、図2に示されるように、Al添加量と良好な相関関係を有する。したがって、同図の関係に基づいて、目標とする脱硫処理後の溶銑中のsol.Al含有率を満足するAl添加量を決定すればよい。
また、金属Al源としては、例えば、ショットAl、Al溶解時に生成するAl灰(金属AlおよびAl23の混合物)などを用いることができるが、Al灰の使用が安価であり、好ましい。
4)脱硫剤中のソーダ灰の含有
CaOを主成分とする脱硫剤にNa2CO3を含有させることにより、脱硫の進行は飛躍的に加速されるので、Na2CO3を含有させることが好ましい。Na2CO3の含有率は高いほどよいが、ダストとしての損失量が増加すること、および、溶銑鍋などの溶銑収容容器の内張耐火物が著しく溶損することから、その含有率は、脱硫剤中のCaO質量の15%以下とすることが好ましい。Na2CO3源としては、ソーダ灰が一般的であるが、これとほとんど同一成分を有し、天然に存在するマガジ灰を用いてもよい。
5)脱硫剤中のAl23の含有
CaOを主成分とする脱硫剤に、CaO質量の7%以下のAl23を含有させることにより、脱硫反応が促進されるので、Al23を含有させることが好ましい。この場合には、CaOに浸潤したFeOと、添加した金属Alとの反応(テルミット反応)により発熱を伴いながらCaOの表面に生成するAl23による作用ほどではないが、CaOの溶融温度を低下させることができる。しかしながら、Al23含有率が7%を超えて高くなると、Al23が酸性成分として作用し、脱硫能が低下するので好ましくない。
なお、Al23源としては、Al23を含有するものであればいずれも用いることができる。例えば、Al溶解時に生成するAl灰(金属AlおよびAl23の微粉状混合物であり、概略の成分組成は、金属Al:26〜55%、残部:Al23)は、金属AlおよびAl23の双方を含有し、かつ、安価であるので好ましい。
6)脱硫処理温度
脱硫処理温度は、1250〜1380℃の範囲が好ましい。処理温度が1250℃未満では、FeOがCaOに浸潤し難く、また、脱硫剤が溶融または半溶融状態となりにくいため、Sの移動速度が遅く、脱硫反応が進行しにくいからである。一方、処理温度が1380℃を超えて高くなると、脱硫剤の凝集および合体が促進され、脱硫剤の粒径が粗大化して、前記(2)式における比、(A/V)の値が低下して脱硫反応速度が低下する。
(試験方法)
本発明の溶銑の脱硫方法の効果を確認するため、以下に示す脱硫試験を行ってその結果を評価した。
溶銑250t(トン)をトーピードから溶銑鍋に払い出しながら焼結鉱を添加して脱珪処理を行い、溶銑鍋への払い出し終了後に、高炉スラグおよび前記脱珪処理により発生した脱珪スラグをスラグドラッガーにより除去し、脱硫試験に供した。表1に、試験に供した溶銑の主要成分組成を示した。
Figure 0004453532
機械的攪拌を伴う脱硫方法として、KR脱硫方法を採用した。KR脱硫装置の回転攪拌羽根(インペラー)を溶銑浴の深さ1600mmの位置まで浸漬し、回転数を120rpmとして機械的攪拌を行いながら、種々の成分組成の脱硫剤を添加し、約1分間回転攪拌を行った。その後、金属Al源として金属AlまたはAl灰を、脱硫処理後の溶銑中のsol.Al含有率が後述する表2に記載した所定の値になるように添加し、全攪拌時間15分間の攪拌脱硫処理を実施した。
なお、脱硫処理後の溶銑温度は、1320〜1350℃であった。脱硫処理後、スラグドラッガーにより除滓した後、転炉に注銑し、次工程の転炉吹錬を行った。
(試験結果)
表2に、溶銑中のSi含有率、脱硫剤の添加量内訳およびCaO質量に対する各成分の比率(質量%)、金属Al源の種類、処理後溶銑中のAl含有率、および、処理後溶銑中のS含有率を示した。
Figure 0004453532
試験番号4、6、7、9、11および12は、本発明で規定する溶銑中Si含有率、CaOを主成分とする脱硫剤へのFeOの混合添加比率、および金属Al源を添加することによる脱硫処理後の溶銑中sol.Al含有率の範囲をいずれも満足する本発明例である。また、試験番号1、2、3、5、8、10および13は、本発明で規定する前記条件のうち、少なくとも1つを満足しない比較例についての試験である。
本発明例である試験番号4、6、7、9、11および12では、いずれも脱硫が順調に進行し、処理後の溶銑中S含有率は27ppm以下の良好な結果が得られた。中でも、CaOを主成分とする脱硫剤にCaO質量の15%以下のソーダ灰や7%以下のAl23を含有させた試験番号6、7、9および11では、さらに良好な脱硫結果が得られ、特に、試験番号7および9では、処理後の溶銑中S含有率が5ppm以下の極めて良好な脱硫成績が得られた。
これらに対して、比較例の試験番号1は、CaOを主成分とする脱硫剤にFeOを混合添加しなかった試験であり、同じく、試験番号2は、CaOを主成分とする脱硫剤に混合添加したFeOの添加比率が1%未満の試験であり、また、試験番号3は、脱硫処理後の溶銑中Al含有率が0.002%未満の試験である。
試験番号1では、脱硫剤にFeOを混合添加しなかったことから、脱硫処理後の溶銑中S含有率は56ppmと高く、試験番号2および試験番号3においても、処理後の溶銑中S含有率は比較的高く、脱硫の進行状況は不良であった。
試験番号5は、CaOを主成分とする脱硫剤に混合添加したFeOの添加比率が3%を超え、また、脱硫処理後の溶銑中Al含有率が0.008%を超えたことから、脱硫スラグの酸素ポテンシャルが上昇し、また、脱硫剤が凝集して粒子が粗大化したために、処理後の溶銑中S含有率は比較的高めとなった。試験番号8は、脱硫剤に混合添加したFeOの添加比率が3%を大きく超えたために、脱硫スラグの酸素ポテンシャルが高くなって脱硫の進行が悪化し、処理後の溶銑中S含有率は53ppmと高くなった。
試験番号10は、脱硫剤にソーダ灰を含有させたものの、処理後の溶銑中Al含有率が0.008%を超えたことから、脱硫剤が凝集傾向を示し、脱硫は良好ではなかった。
試験番号13は、特に脱珪を強化し、溶銑中Si含有率が0.1%未満であったことから、脱硫剤中のCaOの表面に形成されるCaO−SiO2−Al23系スラグの粘性が高く、スラグ中におけるSの物質移動速度が低下して脱硫の進行が遅くなり、処理後の溶銑中S含有率は高くなった。
本発明の溶銑の脱硫方法によれば、螢石を用いることなく、溶銑を機械的攪拌条件下において、CaOを主成分とする脱硫剤を用いて安価にかつ安定した脱硫促進作用のもとに、脱硫処理を行うことができる。さらに、脱硫処理後のスラグにはフッ素成分が含まれないので、環境汚染の問題もなく、スラグの有効利用が可能である。したがって、本発明の脱硫方法は、環境に調和しながら安価で高効率の脱硫処理を要求される溶銑脱硫工程において広範に適用できる。
脱硫反応の容量係数におよぼす溶銑中のsol.Al含有率の影響を示す図である。 溶銑へのAl添加量と脱硫処理後の溶銑中のsol.Al含有率との関係を示す図である。

Claims (2)

  1. Siを0.1質量%以上含有する溶銑を容器中において機械的に攪拌しながら、CaOが脱硫剤中の主要成分を占め、その含有率が75質量%以上である脱硫剤と前記CaO質量の1〜3質量%のFeOを混合添加した後、金属Al源を添加することにより、脱硫処理後の溶銑中のsol.Al含有率が0.002〜0.008質量%となるように調整することを特徴とする溶銑の脱硫方法。
  2. 請求項1に記載の溶銑の脱硫方法において、CaOが脱硫剤中の主要成分を占め、その含有率が75質量%以上である脱硫剤として、前記CaO質量の15質量%以下のソーダ灰および/またはCaO質量の7質量%以下のAl23を含有する精錬剤を用いることを特徴とする溶銑の脱硫方法。
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