JP4483780B2 - 酒石酸抵抗性酸性ホスファターゼ5bの免疫測定法およびそれに用いるキット - Google Patents
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Description
破骨細胞の活性を表す酸性ホスファターゼの指標としてTRACP活性を求める従来の活性測定法は、特異性、感度、測定の煩雑さ及び測定時間の点で問題を有している。
一般的に活性測定法によるTRACP 5bの測定は、酒石酸の存在下で合成基質としてリン酸エステルを用いて酵素反応により生ずる反応生成物(アルコールやフェノール類)を比色定量することにより酵素活性を求めている。その際、酒石酸が前立腺由来酸性ホスファターゼを阻害し、残存した酸性ホスファターゼ活性を基質で測定することにより、TRACP活性をTRACP 5b活性とみなして求めている。しかしながら、検体中に存在する破骨細胞由来以外の赤血球由来や血小板由来の酒石酸抵抗性酸性ホスファターゼも測定してしまうため、特異性の点で問題を有する。
このような方法の改善法としては、血清を5倍に希釈した液を37℃で1時間インキュベートする前処理をした後、残りのTRACP活性を、酒石酸存在下、基質としてp−ニトロフェニルリン酸を用いて測定する方法が知られている(日大医誌.49:904−911.1990;およびClin.Chem.33:458−462.1987)。この方法は赤血球由来酸性ホスファターゼの影響は回避できるが、血小板由来酸性ホスファターゼの影響は除くことは出来ない。さらにより特異的な活性測定法として、本発明者らは、TRACP 5bと赤血球や血小板由来酒石酸抵抗性酸性ホスファターゼ活性がフッ素に対する感受性に差のあることを利用したTRACP 5b測定法を報告した(特開平10−37198号公報)。しかしながら、赤血球及び血小板由来酒石酸抵抗性酸性ホスファターゼの影響はないものの、TRACP 5aの影響を除くことができず、またTRACP 5b活性を総酒石酸抵抗性酸性ホスファターゼ活性からフッ素存在下で阻害されなかった活性を差し引きすることにより求めており、精度の点で問題がある。さらに上記フッ素を利用した方法にTRACP 5aの阻害物質を組み合わせて用いることにより、よりTRACP 5b活性を測定する方法が報告されている(特開2001−231595号公報)。しかしながら、フッ素のみを用いる方法はより特異的ではあるものの、やはり差し引きで破骨細胞由来TRACP 5b活性を求めているため同様に、精度の点で問題を残している。
一方、免疫測定法によるTRACP 5bの測定方法として、ポリクローナル抗体やモノクローナル抗体を用いた免疫測定法も知られている(J Clin Endocrinol Metab.71:442−451.1990;J Bone Miner Res.13:683−687.1998;Immunol Lett.70:143−149.1999;J Bone Miner Res.14:464−469.1999;Clin Chem.45:2150−2157.1999;およびClin Chem.46:1751−1754.2000)。これらの方法は、Band 5全体を測定してしまうため、TRACP 5aの影響を無視できない。さらに、TRACP 5bをより特異的に測定する免疫測定法(特表2002−510050号公報)が報告されている。この方法では、5aと5bの至適pHの差を利用して活性測定で測定値を算出しているため、よりTRACP 5b活性に特異的な測定法であるとしている。しかし、用いる抗体は、5bに特異性があるものではないため、5bへの特異性が必らずしも十分とはいえず、骨吸収マーカーとして使用するには、さらなる改良が求められている。
本発明は、検体中の酒石酸抵抗性酸性ホスファターゼ5b(TRACP 5b)を免疫測定する方法であって、
検体中のTRACP 5bを抗体に結合させ、次いで、抗体に結合したTRACP 5bを、TRACP 5bの基質である一般式(1)
(ただし、式中、Xは、Cl、F、BrまたはIを示す)
で表される2−ハロ−4−ニトロフェニルリン酸またはその塩と酵素反応させて、その酵素活性を測定することにより、検体中のTRACP 5bを免疫測定する方法である。
また、本発明は、TRACP 5bを免疫測定するためのキットであって、
i)固相支持体、
ii)TRACP 5bに対する抗体、および
iii)一般式(1)
(ただし、式中、Xは、Cl、F、BrまたはIを示す)
で表される2−ハロ−4−ニトロフェニルリン酸またはその塩であるTRACP 5bの基質
を含むキットである。
図2は、TRACP 5bに対する抗体を固定化したプレートに検体(標準液又は血清)作用させ、その後、酵素基質として2−クロロ−4−ニトロフェニルリン酸を用いてレート法により酵素活性を測定したグラフである。
発明の実施するための形態
本発明で対象となる検体は、ヒトの血液、血清、血漿などが挙げられるが、TRACP 5bを含む可能性のある検体であれば、特に限定しない。
本発明においては、抗体は、固相支持体に結合していることが好ましい。また、抗体は、TRACP 5bに対する抗体であればモノクローナル抗体、ポリクローナル抗体のいずれもが使用可能であるが、特異性の面からモノクローナル抗体が好ましい。モノクローナル抗体としては、従来既知のTRACP 5bに対するモノクローナル抗体が使用可能である。
本発明に使用する抗体として、ヒト破骨細胞から精製されたTRACP 5bを免疫原としてTRACP 5bのモノクローナル抗体を製造することができる。モノクローナル抗体は、例えば精製ヒトTRACP 5bを免疫原として動物を免疫し、その動物が産生する抗ヒトTRACP 5b抗体産生細胞と骨髄腫瘍細胞とを融合させることによって得られるハイブリドーマによって産生される。
上記ハイブリドーマは以下の方法によって得ることができる。即ち、ヒトTRACP 5bを、フロイントの完全、不完全アジュバント、水酸化アルミニウムアジュバント、百日咳アジュバント等の既に公知のものを用いて共に混和し、感作用アジュバント液を作製して数回に分けてマウス、ラット等の動物に1〜3週間おきに腹腔内皮下、または尾静脈投与することによって免疫する。感作抗原量は1μg〜100mgの間とされているが、一般的には50μg程度が好ましい。免疫回数は2〜7回が一般的であるがさまざまな方法が知られている。次いで脾臓等に由来する抗体産生細胞と、骨髄腫瘍細胞(ミエローマ細胞)等の試験管内で増殖能力を有する細胞とを融合する。抗体産生細胞はマウス、ヌードマウス、ラットなどの脾臓等より得ることができる。
融合法としては、既にそれ自体公知であるケーラーとミルスタインの定法(Nature.256,495.1975)によってポリエチレングリコール(PEG)を用いることで融合できる。センダイウィルス、電気融合法によっても融合を行うことができる。
融合した細胞からヒトTRACP 5bを認識する抗体を産生するハイブリドーマを選択する方法としては以下のようにして行うことができる。即ち、融合した細胞から限界希釈法によってHAT培地およびHT培地で生存している細胞により作られるコロニーからハイブリドーマを選択する。96穴ウェルなどにまかれた融合細胞からできたコロニー培養上清中にヒトTRACP 5bに対する抗体が含まれている場合には、ヒトTRACP 5bをプレート上に固定化したアッセイプレート上に上清をのせ、反応後に抗マウスイムノグロブリン−HRP標識抗体等の2次標識抗体を反応させるELISA法により、ヒトTRACP 5bに対するモノクローナル抗体産生クローンを選択できる。標識抗体の標識物質にはHRPの他、アルカリ性ホスファターゼなどの酵素、蛍光物質、放射性物質等を用いることができる。コントロールとしてブロッキング剤であるBSAのみを結合したアッセイプレートによるELISAを同時に行うことでヒトTRACP 5b特異的抗体のスクリーニングができる。つまりヒトTRACP 5bプレートで陽性であり、BSAによるELISAで陰性のクローンを選択できる。
このようにして選択されたTRACP 5bに対するモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマとしては、ハイブリドーマTrK27、TrK49およびTrK62を例示することができる。ハイブリドーマTrK27、TrK49およびTrK62は、〒305−8566 日本国茨城県つくば市東1丁目1番地1中央第6の独立行政法人 産業技術総合研究所 特許生物寄託センター(IPOD)に、それぞれ、平成14年2月14日に受託番号IPOD FERMBP−7889として、平成14年11月27日に受託番号IPOD FERM BP−8249として、平成14年2月14日に受託番号IPOD FERMBP−7890として寄託されている。
ハイブリドーマは通常細胞培養に用いられる培地、例えばα−MEM、RPMI1640、ASF、S−cloneなどで培養し、その培養上清よりモノクローナル抗体を回収することができる。またハイブリドーマが由来する動物、例えばマウスをあらかじめプリスタン処理しておき、その動物にハイブリドーマを腹腔内注射することによって腹水を貯留させ、その腹水からモノクローナル抗体を回収することもできる。上清、腹水よりモノクローナル抗体を回収する方法としては、通常の方法を用いることができる。例えば硫酸アンモニウム、硫酸ナトリウムなどによる塩析法やクロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー、プロテインA、プロテインGなどによるアフィニティクロマトグラフィーなどが挙げられる。
本発明に用いるモノクローナル抗体は、TRACP 5bばかりでなくTRACP 5aとも反応するモノクローナル抗体でも構わない。また、本発明では、ポリクローナル抗体であってもよく、ポリクローナル抗体は、例えば、ヒト破骨細胞から精製されたTRACP 5bを免疫原として、ラット、マウスなどの動物に免疫し、その動物から抗血清を調製することよって得られる。
本発明においては、検体中のTRACP 5bを上記した抗体に結合させ、結合したTRACP 5bに対して、酵素基質として一般式(1)で表される2−ハロ−4−ニトロフェニルリン酸またはその塩を酵素反応させて、その酵素活性を測定することにより検体中のTRACP 5bを免疫測定する。
本発明に用いる2−ハロ−4−ニトロフェニルリン酸としては、2−クロロ−4−ニトロフェニルリン酸、2−フッ化−4−ニトロフェニルリン酸、2−ブロモ−4−ニトロフェニルリン酸を例示できる。2−ハロ−4−ニトロフェニルリン酸の塩としては、アンモニウム塩、イミダゾリウム塩、シクロヘキシルアンモニウム塩、カリウム塩、ナトリウム塩、トリスヒドロキシアンモニウム塩が例示できる。
本発明に用いる上記基質は、そのKmが、p−ニトロフェニルリン酸(PNPP)に比べ、TRACP 5bでは小さく、TRACP 5aでは大きいため、TRACP5bを測定する際に用いると、感度、特異性の面から極めて有利である。
本発明で、検体中のTRACP 5bとその基質である2−ハロ−4−ニトロフェニルリン酸またはその塩とを酵素反応させるとき、反応時のpHは、6.3より大きく6.8以下が好ましく、6.35〜6.75がさらに好ましく、6.38〜6.70が特に好ましい。pHが小さすぎるとTRACP 5aの酵素反応がしやすくなるため、(TRACP 5b反応性)/(TRACP 5a反応性)が小さくなり、TRACP 5b特異性に問題が起こりやすくなる。また、pHが大きすぎるとTRACP 5b自体の酵素反応がおきにくく測定感度が低下しやすい。
本発明では、具体的には、例えばエンドポイント法を用いて、TRACP 5bを、以下のようにして測定できる。まず、固相支持体に吸着している抗体に測定すべき検体を加え、検体中のTRACP 5bと抗体とを抗原抗体反応させてTRACP 5bを抗体に結合させる。次いで、その固相支持体を洗浄液で洗浄して、抗体に吸着しなかった検体由来の成分を除去した後、反応系に酵素基質として2−ハロ−4−ニトロフェニルリン酸またはその塩を加え、抗体に結合しているTRACP 5bと基質とを、好ましくはpHが6.3より大きく6.8以下で反応させる。反応停止液で酵素反応を停止した後、反応により生成した2−ハロ−4−ニトロフェノールを、通常390nm〜450nm、好ましくは400〜430nmの波長で吸光度を測定する。その吸光度の大きさは、TRACP 5b酵素活性を反映するので、その値から、検体中のTRACP 5bを測定できる。
本発明においては、酵素活性を測定する際、従来のp−ニトロフェニルリン酸を用いる方法と異なり、2−ハロ−4−ニトロフェノールは反応時のpHで発色するので、レートアッセイすることもできる。レートアッセイするときは、TRACP 5bと基質との反応性を、一定時間、通常、1分間あたりの平均吸光度変化量として求めることにより、検体中のTRACP 5bを測定することができる。その結果、測定時間が短くなりより好ましい。
本発明では、上記した測定法から明らかな通り、抗体は固相支持体に結合させて用いるのが好ましく、固相支持体としては、通常、ELISA法等の固相免疫測定法に用いる固相支持体が用いられるが、特に限定されない。例えば、固相支持体の材料として、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリカーボネート、ポリエチレン、ナイロン、メタアクリレートなどが挙げられる。固相支持体の形状としては、プレート、ビーズ等が挙げられる。
固相支持体に吸着している抗体を調製するには、直接または間接的に物理結合や化学結合、アフィニティーを利用して固相支持体にTRACP 5bに対する抗体を結合させる。感作抗体量は、1ng〜100mg/mlの範囲であることが多い。
本発明を実施するときは、TRACP 5bを免疫測定するためのキットであって、i)固相支持体、ii)TRACP 5bに対する抗体、およびiii)一般式(1)で表される2−ハロ−4−ニトロフェニルリン酸またはその塩である基質を含むキットを用いて行える。
このキットにおいては、i)固相支持体、ii)TRACP 5bに対する抗体に関しては、固相支持体と抗体溶液とを別々に作製しておき、TRACP 5bを測定する際、抗体を固相支持体に吸着させてもよく、あらかじめ、抗体を固相支持体に吸着させた状態で提供してもよい。このキットにおいては、検体中のTRACP 5bを抗体に結合させた後、固相支持体に吸着しなかった成分を除去するために、洗浄液を含むことが好ましい。洗浄液としては、例えば、界面活性剤を含むトリス緩衝液を使用することができる。
エンドポイント法でこのキットを使用するときは、酵素反応停止液を含むことが好ましい。酵素反応停止液としては、例えば、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム溶液等のアルカリ水溶液を使用できる。
さらに、本発明のキットには、必要に応じ、検体希釈液を加えて含むこともできる。検体希釈液としては、例えば、トリス等の緩衝液を使用できる。その緩衝液には、必要に応じて、EDTA・2Na等のキレート剤、食塩等の無機塩を加えてもよい。
以下、本発明を参考例および実施例を挙げて更に詳細に説明するが、本発明はこれら参考例および実施例に何ら限定されるものではない。
参考例1
TRACP 5bに対するモノクローナル抗体の製造
(1)破骨細胞由来酸性ホスファターゼTRACP 5bの精製
インフォームド・コンセントを行った後、外科的手術により摘出されることになったヒト大腿骨骨頭部130gを液体窒素中で凍結させ、ハンマーで粉砕後、プロテアーゼインヒビターを含む緩衝液(50mM Tris−HCl,0.3M KCl,1mM PMSF,1mM EDTA・2Na,0.1% Triton X−100,0.02% NaN3,1 unit/ml アプロチニンpH7.5)200mL中に懸濁させ、超音波ホモジナイザーにてホモジナイズした。4℃一晩攪拌後、10,000rpm,20分遠心分離し、その上清を10mMトリス緩衝液pH8.2に透析後CM−Sepharoseカラム(φ40mm×40cm)[シグマ社]にアプライし、吸着したタンパク質をNaClを含む上記トリス緩衝液の直線濃度勾配(0−0.5M NaCl)で溶出した。酒石酸耐性酸性ホスファターゼ活性は、基質2,6−ジクロロ−4−アセチルフェニルリン酸[日東紡社製]を用い測定し、活性の高い部分をプールした。それを濃縮後、0.7M NaClを含む20mMトリス緩衝液pH7.2に透析し、Superdex 200カラム(φ16mm×60cm)[アマシャムファルマシア社]にアプライし、同様に溶出したフラクションの酒石酸耐性酸性ホスファターゼ活性を測定し、活性部分をプールした。それを20mMトリス緩衝液pH7.2で2倍に希釈し、HiTrap Heparin HPカラム(5mL)[アマシャムファルマシア社]にアプライし、吸着したタンパク質をNaClを含む上記20mMトリス緩衝液pH7.4の直線塩濃度勾配(0.35M−1M NaCl)をかけ溶出した。酒石酸耐性酸性ホスファターゼ高活性フラクションをプールし、濃縮することにより、精製破骨細胞由来酸性ホスファターゼを0.4mg得た。なお、タンパク量はA280により確認し、純度はSDS−PAGE[TIFCO社]を行い銀染色の結果、分子量35,000付近でシングルバンドであることにより確認した。単一バンドになった酵素は精製TRACP 5bとして免疫抗原とした。
(2)免疫
精製ヒト破骨細胞由来酒石酸耐性酸性ホスファターゼ(TRACP 5b)を250μg/mlとなるように50mMクエン酸緩衝液(pH5.5)で希釈し、25μg(100μl)をとってフロインド完全アジュバンド[和光純薬工業社]100μlと乳化するまでよく混和した。調製した懸濁液をBalb/c 6週齢雌マウス[日本クレアー社]にジエチルエーテル麻酔下にて腹腔内投与した。2週間後には同量のTRACP 5b(25μg/ml)をフロインド不完全アジュバンド[和光純薬工業社]と混和してフロインド完全アジュバンドの時と全く同様の操作により乳化懸濁液とし、それぞれマウスに感作した。以降2週間後に同様の操作を行い、4回目には最終免疫としてTRACP 5bは25μg/mlをそれぞれ50mMクエン酸緩衝液(pH5.5)で調製しマウス尾静脈注射により投与した。
(3)ハイブリドーマの確立
最終免疫より3日後にTRACP 5bにより感作済みのマウスよりジエチルエーテル麻酔下に外科的摘出された脾臓を無菌的に分散し脾臓細胞を調製した。融合はケーラーとミルスタインの方法(Nature.256,495.1975)に従って行われ、ポリエチレングリコール(PEG4000)[メルク社]を用いて脾細胞と骨髄腫細胞P3−X63−Ag8−U1(P3U1)を融合した。その融合比率は脾臓細胞数8×107個に対して骨髄腫細胞P3−X63−Ag8−U1(P3U1)2×107個で、4:1であった。融合細胞は10%FCS[INVITROGEN社]α−MEM[IRVINE社]HAT[コスモバイオ社]培地に分散し96穴マイクロタイターカルチャープレート[住友ベークライト社]に分注して37℃、5%CO2条件にて培養した。
(4)スクリーニング
約2週間後にコロニーの生育を確認してスクリーニングを実施した。スクリーニングの実施法を以下に述べる。スクリーニング用プレートを作製するために上記(1)にて精製したTRACP 5bを50mMクエン酸緩衝液中に溶解し、0.5μg/100μl/wellとなるように96穴ウエル[Nunc社]に分注した。プレートを4℃で2晩静置した後に0.05% Tween20を含むトリス緩衝液で3回洗浄し、非特異的反応を抑えるために1.5%BSA溶液を200μl分注して、更に4℃で1晩静置した。完成したプレートを0.05% Tween20を含むトリス緩衝液で3回洗浄した後に培養上清100μlを反応させ、更に洗浄を行った後に2次抗体であるHRP標識抗マウスイムノグロブリン抗体[Zymed社]を加えて反応させた。洗浄後にHRPの発色基質である3mg/ml O−フェニレンジアミン(OPD)[ナカライテスク社]クエン酸発色溶液を100μl加えて一定時間の発色後、1N硫酸を停止液として更に100μl添加し、測定波長492nmにて吸光度を測定した。上記のようにして陽性になったクローンは限界希釈法によって再クローニングされ上清を再度チエックした。
(5)抗体の確認
ELISAによって精製TRACP 5bとの反応を確認し、TRACP 5bと反応する抗体を産生するクローンとしてTrK27を選抜した。このハイブリドーマTrK27は、〒305−8566 日本国茨城県つくば市東1丁目1番地1中央第6の独立行政法人産業技術総合研究所 特許生物寄託センター(IPOD)に、平成14年2月14日に受託番号IPOD FERMBP−7889として寄託されている。
このハイブリドーマが産生する抗体をモノクローナル抗体タイピングキット[アマシャムファルマシア社]にて検定した結果、クラスはIgG1、軽鎖はκであった。この抗体の特異性を以下の通り検討した。検体としてTRACP 5b及びヒト血清よりHiTrap Heparin HPカラムにて溶出したTRACP 5a及び前立腺由来ACP、血小板由来ACP(血小板抽出液)、赤血球由来ACP(赤血球抽出液)を用いてELISAを行った。その結果、この抗体はTRACP 5b及び5aとは反応したが、その他のアイソフォームとは反応しなかった。
(6)モノクローナル抗体の作製および精製
得られたハイブリドーマTrK27 1×107細胞個をプリスタン[アルドリッチ社]0.5ml投与後2週間のBalb/cマウス[日本クレアー社]、10週齢、雌性に腹腔内投与し、約2週間後にマウス腹腔内に貯留した腹水をジエチルエーテル麻酔下にて外科的に採取した。スクリーニングで行ったELISA法により、腹水をサンプルとして段階希釈して確認すると高濃度のモノクローナル抗体が含まれていた。この腹水を硫安40%で処理し、PBSに透析した後、プロテインGカラム[アマシャムファルマシア社]により精製してSDS−PAGEにより確認した。その結果、非還元では分子量約150,000に単一の、メルカプトエタノール還元では分子量約50,000のバンドと25,000の2本のバンドが確認された。精製された抗体はマウス1匹あたり約15mgであって工業的利用を行うには十分量であった。
(7)抗TRACP 5b抗体固定化プレートの作製
上記(6)により得られた抗体をPBS中に溶解し、1μg/200μl/wellとなるように96穴プレート[Nunc社]に分注した。プレートを4℃で2晩静置した後に0.05% Tween20を含むトリス緩衝液で3回洗浄し、非特異的反応を抑えるために1.5%BSA溶液を200μl分注して、更に4℃1晩静置し、抗TRACP 5b抗体固定化プレートを完成させた。
参考例2
Kmの測定等による本発明で用いる基質と他の基質との比較
2−クロロ−4−ニトロフェニルリン酸(CNPP)に対するTRACP 5b及び5aの反応性の違いをみるため、それぞれの場合のKmを求めた。その結果、TRACP 5bでは1.5mM(pH6.4)、5aでは3.5mM(pH5.6)であった。5bに対するKmが5aの2分の1以下であり、この基質がTRACP 5aに比べ5bの測定に適した基質であることを示している。
一方、Clin.Chem.,47(1),74〜80によると、p−ニトロフェニルリン酸(PNPP)に対するTRACP 5b、5aの反応でのKmは、それぞれ、7.0mM(pH5.8)、1.9mM(pH5.2)である。すなわち、本発明で用いるCNPPがPNPPに比べ、TRACP 5bを測定するのに、親和性、特異性の面から有利である。
CNPPを含む基質緩衝液のpHを5.6から6.8まで変化させ、この基質におけるTRACP 5b及び5aの活性を求めた。基質緩衝液の組成は、CNPP 5mM,MES 0.1M,酒石酸ナトリウム40mMでpHを5.6から6.8まで0.2刻みに調製した。検体として用いたTRACP 5a、5bはヒト血清をHeparinカラムにて分離し、TRACP 5a、5bの各ピークを濃縮することにより調製した。なお、TRACP 5aはpH5.6(TRACP 5aの至適)で吸光度0.8、TRACP 5bはpH6.4(TRACP 5bの至適)で吸光度0.8になるような濃度の検体を用いた。測定方法は、抗TRACP 5b抗体Trk27プレートを用い、ウエルに検体100μLを加え、室温で1時間振とう攪拌した。その後反応液を廃棄し、各ウエルを200μLの0.05% Tween20を含むトリス緩衝液で3回洗浄した。その後、基質緩衝液を100μL加え、30秒間振とう後、37℃のインキュベーターで1時間反応後、0.2N NaOH 50μLを加え酵素反応を停止させ、その405nmの吸光度をマイクロプレートリーダーにて測定した。その結果を図1に示す。この条件下において、TRACP 5bの至適pHは約6.4であり、5aは5.6であった。
CNPPを含む基質緩衝液のpH6.2、6.4、6.6及び6.8での5a,5bの反応吸光度と、比較例としてTRACP 5bの測定に適しているとされるPNPPを基質とした緩衝液pH6.1を用いた結果とを比較した。特表2002−510050号公報記載の方法に従い、PNPP基質緩衝液の組成は、PNPP 8mM,酢酸ナトリウム0.1M,酒石酸ナトリウム40mM,pH6.1とした。TRACP 5bの検体は、実施例1と同様なものを用いた。TRACP 5aの検体は、特表2002−510050号公報記載のデータに従い、比較例(PNPPをpH6.1で使用)のとき、TRACP 5aでの値が、TRACP 5bでの値の1/10になるように調製したものを用いた。測定操作は実施例1と同様にして吸光度を用い酵素活性の指標とした。その結果を表1に示す。結果から明らかなようにCNPP pH6.4,6.6での5b/5a比がそれぞれ17と18であり、本発明の方法が、従来法(比較例)に比べ、TRACP 5bの測定に適していることを示している。
抗TRACP 5b抗体TrK27固定化プレートに検体(標準液又は血清)100μLを分注し、室温で1時間振とう攪拌する。その後反応液を廃棄し、各ウエルを200μLの0.05% Tween20を含むトリス緩衝液で3回洗浄する。その後、基質(CNPP)緩衝液を100μL加え、30秒間振とう後、マイクロプレートリーダーにて、405nmの吸光度を測定した。その後、37℃のインキュベーターで60分間加温したが、その間、10分毎に405nmの吸光度を測定した。一方、比較(エンドポイント法)として、60分後に反応停止液として0.2N NaOH 50μLを加えて、同様に405nmの吸光度を測定した。図2に60分までの反応タイムコースを示した。なおTRACP 5b活性値は下記の式より計算される。
U/L=検体のΔOD/min/標準液のΔOD/min×標準液の表示値
ΔOD/minは測定波長405nmにおける1分間当りの吸光度変化
レート法として10分から20分の1分間当りの吸光度変化を求め、活性を上式より算出した。その結果、血清検体1,2のTRACP 5b活性は4.1U/Lと9.1U/Lであり、この値は、エンドポイント法での60分反応させた後、反応停止液を加えて測定した値の4.2U/Lと9.3U/Lとほとんど変らなかった。したがって、本発明では、停止液を用いず、レート法でしかも約20分以内でもTRACP 5b活性が測定可能な事を示している。
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