JP4502811B2 - 水晶体上皮細胞の剥離および/または死を選択的に誘発することにより後嚢混濁を防止するための処理溶液および方法 - Google Patents

水晶体上皮細胞の剥離および/または死を選択的に誘発することにより後嚢混濁を防止するための処理溶液および方法 Download PDF

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Description

本発明は、他の眼球細胞および組織を損なうことなく、冗長な術前処置を行うことなく、水晶体上皮細胞の剥離および/または死を選択的に誘発することにより後嚢混濁を防止するために使用されるイオン輸送機構干渉剤を単独でまたは他の試薬と組み合わせて含む新規処理溶液および方法に関する。
発明の背景
ヒトの目の水晶体の主な役割は、角膜および眼房水を通過した光線を網膜上に集中させることである。水晶体の構造および代謝は、その一体性および透明性の維持に直接貢献する。水晶体は、全体が、異なる成熟段階の上皮細胞からなり、成熟過程で組織が決して廃棄されない点で特異である。新しい水晶体細胞が形成されると、古い細胞は水晶体の内部に移される。水晶体は、間もなく、直接血液供給から分離され、栄養および排泄経路の両方について眼房水および硝子体液に依存する。水晶体の光学的特徴は、一定の細胞体積および細胞間空間体積を減少させるような線維の密充填を維持している水晶体細胞への依存が大きい。したがって、この繊細な構造を維持することが、水晶体の本質的特徴となる。水晶体は、このイオン、糖、アミノ酸および水のバランスを調節することにより一定の細胞体積を維持する独自の性能を発達させている。
ヒトの目の白内障は、水晶体の透明性の損失による光の透過の妨害である。視野のぼけおよび曇りを発生させる白内障は、明らかに低視力の最も一般的な原因である。曇った水晶体は、外科的処置、すなわち、嚢外白内障摘出(ECCE)により除去することができる。ECCEは、手動または自動真空技術を用いて皮質浄化により臨床的核部を除去することを含む。後部の赤道嚢は、後室眼内水晶体を挿入することができる被膜または嚢として無傷のまま残される。後部嚢および小帯が無傷の場合、この水晶体は、通常、患者の人生を通して合併症無く所定の位置に残る。手術中、水晶体嚢の前部を注意深く開き、白内障を除去する。眼内水晶体を、嚢の残りの(後部)部分に挿入する。これにより、自然の水晶体調節が損なわれる。
標準的な白内障手術は、水晶体乳化として知られている手順である。この手順は、水晶体の内容物を攪拌して、水晶体物質を破壊し、これは、その後、洗浄液を同時に注入および抽出する水晶体乳化プローブにより水晶体嚢から放出される。この処置により剥離された死んだものと生きているものの両方の水晶体上皮細胞が、この放出作用により洗浄される。
前部水晶体嚢の保存と、注射可能な物質による水晶体内容物の置換とを含む新規治療が開発されつつある。
この手術後、視力が回復されるが、広く行われている白内障手術の最も頻繁な合併症の1つは、白内障手術後の水晶体上皮細胞(LEC)の増殖である。二次白内障としても知られている後嚢混濁(PCO)は、嚢外手術の後に起こる最も頻繁な合併症であり、患者の約20〜40%において起こる。ここ数十年間で、多くの実験的および臨床的研究の結果により、PCOの病因の理解が向上した。
PCOの主な原因は、残留LECの増殖および後部水晶体嚢への移動である。残留水晶体上皮細胞の大部分を除去しようとする外科医の苦労にかかわらず、これらの除去は困難である。したがって、多くのLECが、外科的処置の最後の水晶体嚢中に残される。LECの増殖は、眼内水晶体がその中に配され経時的に曇る膜または被膜を発生させる。LECの増殖は、例えば注射可能な水晶体を利用する新規白内障治療における大きな問題でもある。曇った膜は、「後白内障」すなわちPCOと呼ばれる。PCOの症状は、白内障の症状と同じであり、視力が次第に衰え、処置しなければ失明に至ることもある。
PCOの形成を防止または最小化させる多くの努力が成された。これらの努力は、おおまかに3つの分野、すなわち、手術改良、水晶体設計改良および化学的予防に分類される。
PCOの防止を試みて多くの手術法が開発されている。これらは、種々の手術用具の使用、およびレーザー、超音波および凍結技術の適用を含んでいる。PCOが一旦生じると、曇った嚢の中心部に開口を設けるためにレーザービームを用いる簡単で迅速な手順としてYAGレーザー嚢切開が適用される。しかしながら、YAGレーザー嚢切開には強度の危険を伴う。これは、主に、網膜剥離、緑内障、類嚢胞黄斑浮腫を含む。
眼内水晶体を作る物質のタイプ、および眼内水晶体端部の状態について、多大な関心が集まっている。両凸面および平坦凸ポリメチルアクリレート並びにシリコーン板肝性眼内水晶体および、鋭利な眼端部を有する水晶体が、PCOへの有利な効果を有すると報告されている。特に、Alcon’s Acrysoflensにより、この分野で著しい進展が成された。しかしながら、これらのレンズは、比較的高価で、それ自体の合併症および制約を生み出す。
化学薬剤を利用してLECの増殖を破壊または防止する他の試みが成された。2001年9月21日付出願の英国特許出願第0122807.1号において、アルドース還元酵素阻害剤によりソルビトール経路を調節してLECにおける細胞内ソルビトール濃度を減少させることにより、浸透圧ショックによりLECの死を誘発させることによりPCOを防止できるという仮説が立てられた。しかしながら、ソルビトール経路を調節するためには、提案された治療は、手術前48時間まで水晶体嚢を予備処置することを含み、したがって、現在の白内障手術に容易には取り込まれない。
他の化学的手法も試された。例えば、LECに特異的な免疫毒素結合抗体の使用は、PCOの発生率を減少させ得るが完全には防止できない。Clarkら著、J.Cataract Refract.Surg.1998年12月;第24(12)巻:1614〜20頁およびMeacockら著、J.Cataract Refract.Surg.2000年5月;26(5)巻:716〜21頁を参照されたい。エチレンジアミン四酢酸、トリプシンおよびDISPASE(登録商標)(中性プロテアーゼ)が、LECの分離のために用いられたが、小帯および周囲組織を損傷し得る。Nishi著、J.Cataract Refract.Surg.1999年1月;25(1)巻:106〜17頁およびNishiら著、Opthalmic Surg.1991年8月;22(8)巻:444〜50頁を参照。PCOの防止について試験した他の薬剤には、水晶体上皮細胞の移動および増殖を阻害するRGDペプチド;マイトマイシンCおよび5−フルオロウラシルのような有糸分裂阻害剤がある。Chung HS、Lim SJ、Kim HB著、J.Cataract Refract Surg.2000年10月;26(10)巻:1537〜42頁;Shin DH、Kim Y.Y.、Ren Jら著、Ophthalmology、1998年;105巻:1222〜1226頁を参照。
不運なことに、上記化学的薬剤の大部分が、効果的投与量で用いた場合、角膜内皮細胞(CEDC)および網膜色素上皮細胞(RPEC)のような眼球細胞を含む周囲眼球組織への許容できないレベルの毒性を示す。
発明の簡単な概要
本発明によれば、先に論じたPCOを防止する従来の手段の不利益が克服されている。本発明は、他の眼球細胞および組織を著しく損なうことなく、水晶体上皮細胞(LEC)の剥離および/または細胞死を迅速かつ選択的に誘発することによりPCOを防止し、存在する標準的白内障手術におよび更なる可能性のある新規治療に容易に組み込まれ、白内障手術中またはその後に残留水晶体上皮細胞を容易に除去させることができる。PCO防止は、処理溶液の単独または複数の適用により達成される。処理溶液は、白内障手術の前、中または後に水晶体嚢に適用または導入される。処理溶液は、イオン輸送機構干渉剤を単独または浸透圧ストレス剤および適当なpHを達成するための薬剤などの他の治療薬剤と組み合わせて含み、水晶体上皮細胞の剥離および/または死を選択的に誘発することにより後嚢混濁を防止する。イオン輸送機構干渉剤は細胞機構および広範囲の細胞の細胞イオン分布を干渉することができるが、薬剤の濃度は、処理溶液が水晶体上皮細胞の細胞機構を選択的に干渉するが他の眼球細胞は実質的に損なわないように選択される。処理溶液は、水晶体上皮細胞の細胞死および/または剥離を選択的に誘発するが、他の眼球細胞および組織は実質的に損なわれず、冗長な術前処置が要らない。
白内障手術の前、中または後に適用または導入することができる処理溶液の単独または複数は、(i)正常の細胞機能の干渉によりそれらの基質または膜からのLECの選択的剥離を誘発して、結果的に細胞死を引き起こすまたは少なくともLECを容易に除去させる;(ii)正常細胞機能の干渉によりLECの選択的死を誘発する;および/または(iii)正常細胞機能の干渉によりLECの浸透圧ストレスへの感受性を誘発し、結果的に、細胞剥離および/または死を発生させることにより、LECを選択的かつ迅速に除去することができる。本発明は、特異的かつ独自にLECを標的するように広範囲の細胞のイオン輸送機構を干渉する化学薬剤を提供する。
この眼球処理溶液および方法は、他の眼球細胞よりもLECの剥離および/または死の発生率を実質的に高めるようにイオン輸送機構干渉剤を利用することによりPCOを防止する。本発明のイオン輸送機構干渉剤は、LECの細胞膜を通過するイオンおよび水の流れを制御する細胞内、細胞外および/または細胞間機構を直接または間接的に干渉することができる。この干渉により、細胞を収縮および/または膨張させ、細胞剥離および/または死を引き起こすことができる。薬剤の濃度は、イオン輸送機構干渉剤を含む処理溶液が水晶体上皮細胞の著しい剥離および/または死を引き起こすが、他の眼球細胞のかなりの部分の死および/または剥離は引き起こさないように選択される。特に、イオン輸送機構干渉剤には、共輸送干渉剤、ナトリウムポンプ干渉剤、交換干渉剤、またはチャネル干渉剤がある。
イオン輸送機構干渉剤は、それ自体、LECの細胞剥離および/または死を誘発する、または、浸透圧ストレスを引き起こす更なる薬剤にLECが充分に反応できなくするようにLECを感作して、LECを選択的に剥離および/または殺し、PCOを防止することができる。この更なる薬剤は、LECにおいて浸透圧ショックを誘発して細胞剥離および/または死を引き起こすオスモライトのような浸透圧ストレス剤である。
本発明の処理溶液は、特定の浸透圧ストレスの選択的濃度にしたがって選択される適当なpHを有する。溶液のpHは、溶液中の水素イオンの濃度を増加または減少させる任意の酸、塩基または他の薬剤により調節することができる。
本発明のこれらおよび他の利点および新規特長、並びにここでの詳細は、以下の説明により、より充分に理解される。
発明の詳細な説明
本発明を1つ以上の好ましい実施形態を用いて説明するが、これらの実施形態に本発明が限定されるものではない。一方、本発明は、本明細書に添付の特許請求の範囲の精神および範囲に含まれる全ての変更、修飾および等価物を含む。
本発明は、イオン輸送機構干渉剤を単独または他の薬剤と組み合わせて用いて水晶体嚢からの剥離および/または水晶体上皮細胞の死を迅速かつ選択的に誘発することによりPCOを防止するが、他の眼球細胞を実質的に損なうことなく、また冗長な術前処置を行わない。この選択的剥離および/または死は、目の他の細胞と異なるLECの特異的性質により可能になる。その結果、用いられる薬剤の投与量および濃度により、LECが剥離され、殺され、および/または水晶体から除去され、他の眼球細胞および組織は損なわれないままである。
水は、効果的に、ヒト細胞の細胞膜を通過する熱力学的平衡を示す。実質的に全てのヒト細胞の細胞膜が水への透過性が高いので、細胞体積は、浸透活性溶解質(電解質およびオスモライト)の細胞内用物により、および、細胞外液の浸透度および/または張度により決められる。通常、細胞内および細胞外張度は同じであり、生理学的条件下において、大部分の哺乳動物細胞は、大きな範囲の張度に曝されない。体液の浸透度は、通常、約285mOsm/kg HOであり、体液ホメオスタシスの極めて狭い範囲(±3%)内で調節される。しかしながら、病態生理学的条件下では、体液ホメオスタシスの妨害に遭遇し得る。約220mOsm/kg HO〜約350mOsm/kg HOの範囲の細胞質液浸透度が観察された。これらの極端な条件下において、体細胞は、体積制御機構の非存在下に、それぞれ20〜30%膨張および収縮する。
水晶体上皮細胞は、他の細胞と同様に、細胞外浸透度の変化に対して防御すると共に一定細胞体積を維持するために細胞体積制御プロセスを用いる。水晶体上皮細胞、線維上皮細胞および毛様体上皮細胞のための体積制御機構は、先に記載されている。例えば、C.W.McLaughlinら著、Amer.J.Phsiol.Cell Physiol.2001年9月;281(3)巻:C865〜75頁;J.J.Zhangら著、Exp.Physiol.1997年3月:82(2)巻:245〜59頁;J.J.Zhangら著、Exp.Physiol.1994年9月:79(5)巻:741〜53頁;J.J.Zhangら著、J.Physiol.1997年3月:499巻(Pt.2):379〜89頁を参照されたい。浸透圧摂動後、細胞が等張媒体中で有していた体積に戻る傾向がある体積制御相が確保される。細胞体積の変化は、特定の代謝および膜輸送経路を活性化し、それにより、浸透活性溶質が蓄積または喪失される。制御体積減少(RVD)は、低細胞外浸透圧または張度に反応して細胞体積を減少または維持するために用いられるプロセスである。制御体積増加(RVI)は、高細胞外浸透圧または張度に反応して細胞体積を増加または維持するために用いられるプロセスである。細胞溶質含量(すなわち、細胞内張度)または細胞外張度が変化すると、迅速な膜内外水流が起こって平衡が回復される。形質膜は高度に影響を受け易いので、水流が細胞の膨張または収縮を引き起こす。
平衡を達成するように細胞が細胞内イオン濃度を変化させる1つの方法は、細胞の表面上に配されたイオン輸送機構の利用である。これらの機構は、イオンを細胞に入れまたは出し、細胞内イオン強度を変化させ、その結果、浸透圧を変化させる。例えば、種々の細胞型内でのRVD中に活性化されるイオン輸送機構は、導電性KおよびClチャネル(別々の導電性KおよびCl輸送経路)、K−Cl共輸送および機能的に共役したK−HおよびCl−HCO 交換を含む。種々の細胞型内でのRVI中に活性化されたイオン輸送機構は、Na−K−2Cl共輸送、および機能的に共役したNa−HおよびCl−HCO 交換を含む。
異なる細胞型の間においてイオン輸送機構の反応および性質が驚くほど多様である。HoffmannおよびSimonsen著、Physiol Rev.1989年4月;69(2)巻:315〜82頁を参照。例えば、細胞は、そこでRVDおよびRVIを行うことができる細胞がいずれも行わない特定の体積設定点を有する。異なる細胞は、そこで所定の輸送機構がオンオフする異なる体積設定点を有する。Parker,J.CAm著J Physiol.1993年、265巻:C1191〜1200頁;Parker JCら著、J Gen Physiol.1995年6月;105(6)巻:677〜99頁を参照。水晶体細胞がそのRVIおよびRVDプロセスをオフする設定点または閾値は、他の眼球細胞と異なる。細胞の形態、細胞外マトリクスとのインテグリンの相互作用は、細胞の剥離および生存率の決定、または付着細胞におけるプログラム細胞死の誘発において重要な役割を果たす。これが、LECと、眼および体の他の細胞との相違である。
水晶体上皮細胞のイオン輸送機構の干渉は、これらの細胞が、低浸透または高浸透細胞外環境または他の細胞ストレスに適切に反応することを妨げる。細胞がこれらのストレスに反応することができないので、細胞剥離および/または細胞死が直ちに引き起こされるか最終的に引き起こされる。
ストレスに反応することができない、または反応できなくなる水晶体上皮細胞は、幾つかの反応を奏する。1つの反応は細胞死である。別の考えられる反応は、その基礎となっている基質または膜からの細胞の剥離である。例えば、細胞は、基質へのその付着をもはや維持できなくなるように収縮することがあり、これが細胞骨格の再配列に関与し得る。細胞収縮により、付着細胞が、その局所的細胞接触部を転位させ、細胞骨格がこれらの接触部に転位することもある。剥離は、結果的に、細胞死を誘発するおよび/または細胞の除去を容易にする。細胞死は、周囲の細胞および細胞外マトリクス(ECM)からの細胞剥離を導き、細胞剥離が即時的な細胞死を伴うことなく起こり得る。例えば、細胞外マトリクス接触部の破壊は、その派出細胞からの細胞剥離により誘発されるアポトーシスの一形態であるアノイキスを誘発することが示された。水晶体上皮細胞による別の考えられる反応は、細胞が浸透圧ストレスまたはショックの影響を受け易くなるように細胞を弱化または感作することである。例えば、一旦細胞が感作されると、浸透圧ショックまたはストレスに適当に反応できなくなり、ショックまたはストレスの感作細胞への導入が、剥離および/または細胞死を引き起こす。本発明の処理溶液および方法は、他の眼球細胞を実質的に損傷せずに、LECからのこれらの反応の少なくとも1つを選択的かつ迅速に誘発することによりPCOを防止する。
1つの実施形態において、本発明の眼球処理溶液および方法は、イオン輸送機構干渉剤を用いて、角膜内皮細胞(CEDC)および網膜色素上皮細胞(RPEC)などの他の眼球細胞よりも、基質または膜からのLECの剥離および/または細胞死の発生率を実質的に高くすることによりPCOを防止する。したがって、本発明の大きな利点は、本発明の薬剤での処理により、他の眼球細胞および組織を著しく損なうことなく、水晶体嚢から実質量のLECを除去させることによりPCOを防止することである。
イオン輸送機構干渉剤は、水晶体上皮細胞の細胞膜を通過するまたはその中でのイオンおよび水の流れを調節する細胞内、細胞外および/または細胞間機構を直接または間接的に干渉することができる薬剤である。イオン輸送機構干渉剤は、正常細胞イオン分布機構を干渉し、結果として、細胞の機能を干渉する。本発明のイオン輸送機構干渉剤は、単独または他の薬剤と組み合わさって、LEC細胞イオンの正常分布を妨げ、それにより、選択的にLEC剥離および/または死を直接または間接的に誘発してPCOを防止する。薬剤の濃度は、処理溶液が、LECのイオン輸送機構を干渉してLECの剥離および/または死を引き起こすが、他の眼球細胞のイオン輸送機構は実質的に干渉しないように選択される。LECは、細胞剥離および/または死故に水晶体嚢から容易に除去することができるが、他の眼球細胞は実質的に損なわれないままである。
イオン輸送機構干渉剤は、LEC中での1つ以上の以下の細胞機構を干渉することができる:(1)共輸送機構(例えば、K−Cl共輸送、Na−Cl共輸送、Na−K−2Cl共輸送およびアミノ酸輸送);(2)ナトリウムポンプ;(3)イオン交換(例えば、機能的に共役したNa−HおよびCl−HCO 交換;機能的に共役したK−HおよびCl−HCO 交換;Cl−Cl交換、Ca2+−Na交換);および(4)イオンチャネル(例えば、カリウムチャネル、塩化物チャネル、体積感受性有機オスモライトおよびアニオン交換(VSOAC)および他のアニオンチャネル)。イオン輸送機構干渉剤は、これら細胞機構を直接または間接的に活性化または阻害することができる。
低張媒体中では、脊椎動物細胞は、最初に、浸透水平衡により膨張するが、続いて、KClの正味損失および同時の細胞水の損失によりその体積を調節して正常細胞体積を回復する。細胞膨張は、輸送経路を活性化し、それにより、カリウム、塩化物および有機オスモライトの正味流出が生じる。種々の細胞型内でのRVD中に活性化されるイオン輸送機構は、導電性KおよびClチャネル(別々の導電性KおよびCl輸送経路)、K−Cl共輸送および機能的に共役したK−HおよびCl−HCO 交換を含む。例えば、カリウムおよび塩化物は、主に、K−Cl共輸送の活性化によりまたは別々のカリウムおよびアニオンチャネルにより細胞から失われる。
これに対して、高張媒体中では、脊椎動物細胞は、最初に、浸透水平衡により収縮するが、続いて、KClの正味増加および同時の細胞水の取り込みによりその体積を調節して正常細胞体積を回復する。細胞収縮は、輸送経路を活性化し、それにより、塩化物、ナトリウムおよびカリウムの正味流入が生じる。種々の細胞型内でのRVI中に活性化されたイオン輸送機構は、Na−ClまたはNa−K−2Cl共輸送、および機能的に共役したNa−HおよびCl−HCO交換を含む。
イオン輸送機構干渉剤としては、例えば、以下のものが挙げられるが、これらに限定されない。
n−エチルマレイミド
バリノマイシン
グラミシジン
カテコールアミン
カルシウム
イオノフォアA23187(例えば、イオノフォアA23187+カルシウムを含む)
カルモジュリン
ピモジド
ループ利尿剤(例えば、フルセミド、ブメタイド、エタクリン酸、ピレタニド、トラセミド)
アミロライド
ジ−イソチオシアノ−ジスルホニルスチルベン(DIDS)
スタウロスポリン(SITS)
ニフルム酸
スチルベン誘導体(例えば、4,4’−ジニトロスチルベン−2,2’−ジスルホン酸)
キニーネ
サイトカラシンB
通常、4クラスのイオン輸送機構干渉剤がある:(1)共輸送干渉剤;(2)ナトリウムポンプ干渉剤;(3)交換干渉剤;および(4)チャネル干渉剤。以下に記載のように、イオン輸送機構干渉剤が、4つの上記クラスのうちの1つまたはそれ以上に含まれると分かる。
共輸送干渉剤は、細胞の共輸送機構を直接または間接的に干渉することができる薬剤である。より詳細には、共輸送干渉剤は、LECの共輸送機構を活性化または阻害する。共輸送干渉剤の濃度は、処理溶液が、他の眼球細胞よりも、LECの剥離および/または死の発生率を実質的に高めるように選択される。共輸送機構としては、例えば、K−ClまたはNa−K−2Cl共輸送がある。共輸送干渉剤としては、例えば、以下のものがある:
n−エチルマレイミド(NEM)(例えば、n−エチルマレイミド+ルビジウムを含む)
ヨードアセトアミド
フルセミド(フロセミドとしても知られている)
ブメタニド
水銀(Hg2+
および水晶体上皮細胞の共輸送機構を活性化または阻害することができる他の薬剤。
ナトリウムポンプ干渉剤は、細胞のナトリウムポンプ機構として知られているNa/K/ATPaseを直接または間接的に干渉することができる薬剤である。より詳細には、ナトリウムポンプ干渉剤は、LECのNa/K/ATPaseポンプを活性化または阻害する。例えば、LECは不浸透性のアニオン性高分子を含み、拡散性イオンと水の侵入から生じるコロイド浸透膨張(Gibbis−Donnan平衡)が、消散的漏侵入と同じ割合でイオンを押し出すイオン押し出しポンプの操作により定常的に生じる。ナトリウムポンプ干渉剤の濃度は、処理溶液が、他の眼球細胞よりも、LECの剥離および/または死の発生率を実質的に高めるように選択される。ナトリウムポンプ干渉剤には、例えば、ウアバインおよび水晶体上皮細胞のナトリウムポンプを活性化または阻害することができる他の薬剤がある。
更に別のタイプのイオン交換機構干渉剤は、交換干渉剤である。交換干渉剤は、細胞のイオン交換を直接または間接的に干渉することができる薬剤である。より詳細には、交換干渉剤は、LECのイオン交換機構を活性化または阻害し、これは、細胞内または細胞外イオン再分布を引き起こすのみならず、細胞内pHも変化させる。イオン交換機構の例には、K−HおよびCl−HCO交換およびCl−HCO交換に機能的に共役したNa−H交換がある。例えば、LECのK−HおよびCl−HCO 交換の活性化によりカリウムおよび塩化物損失を誘発する刺激は、交換干渉剤である。交換干渉剤の例としては、以下のものがある。
スタウロスポリン(SITS)
アミロライド
ジ−イソチオシアノ−ジスルホニルスチルベン(DIDS)
カルモジュリン(CaM)
銅(Cu2+
水素(H
および水晶体上皮細胞の交換チャネルを活性化または阻害することができる他の薬剤。
チャネル干渉剤は、細胞のイオンチャネルを直接または間接的に干渉することができる薬剤である。より詳細には、チャネル干渉剤は、LECのイオンチャネルを活性化または阻害する。イオンチャネルには、例えば、カリウム、塩化物およびVSOAC輸送経路がある。例えば、カリウムチャネルおよび塩化物チャネルの活性化により塩化カリウムおよび有機オスモライトの損失を誘発する刺激は、チャネル干渉剤である。チャネル干渉剤の濃度は、処理溶液が、他の眼球細胞よりも、LECの剥離および/または死の発生率を実質的に高めるように選択される。チャネル干渉剤には、例えば以下のものがある。
ケトコナゾール(KETO)
5−ニトロ−2−(3−フェニルプロピルアミノ)安息香酸(NPPB)
1,9−ジデオキシフォルスコリン(DDF)
タモキシフェン
ベラパミット
キニーネ
バリウム(Ba2+
ジフェニルアミン−2−カルボキシレート(DPC)
アントラセン−9−カルボン酸
インドクリノン(MK−196)
ピモジド
および水晶体上皮細胞のイオンチャネルを活性化または阻害することができる他の薬剤。
本発明の薬剤を用いて、薬剤の濃度は、処理溶液の適用により、LEC細胞生存率が好ましくは約10%未満、より好ましくは約5%未満、より好ましくは0%に近づくように選択される。RPECおよびCEDCのような他の眼球細胞についての所望の細胞生存率は、好ましくは約70%超、より好ましくは約90%、より好ましくは100%に近いものである。
これらの環境下において、上記試薬を、場合によっては他の薬剤と組み合わせて含む処理溶液は、選択的に、LECの剥離および/または死を誘発し、他の眼球細胞よりも、LECの剥離および/または死の発生率を実質的に高める。実施例に示すように、細胞の剥離および/または死は、ある領域を濯ぎ、洗浄しまたは、剥離および/または死んだLECが除去され得るように攪拌した後またはその前にこの細胞領域を観察することにより確認することができる。
先に記載した本発明の薬剤(以下、主薬剤と呼ぶ)は、単独でまたは以下に記載の更なる薬剤または他の薬剤および/または化学物質と組み合わせて、選択的に、LECの剥離および/または死を直接または間接的に誘発する。例えば、本発明の眼球処理溶液および方法は、主薬剤に加えて浸透圧ストレス剤を含むことができ、この溶液は、角膜内皮細胞および網膜色素上皮細胞よりも、水晶体上皮細胞の細胞剥離および/または死の発生率を実質的に高めて、後嚢混濁を防止する。
浸透圧ストレス剤は、LECにおいて浸透圧ショックを誘発することができる薬剤である。LECにおける浸透圧ショックは、正常の細胞内または細胞外イオン平衡を変化させる任意の細胞条件により引き起こすことができる。例えば、浸透活性溶質の細胞外濃度の変化および、細胞体積制御に含まれる特定のイオン輸送系の活性に影響を与える種々の刺激(例えば、ホルモン、成長因子および他の外部刺激、細胞膜電位、および細胞質セカンドメッセンジャー)は、浸透圧ショックを引き起こし得る。大きな細胞通過イオン流出は、細胞体積ホメオスタシスにショックを与える。低浸透圧ストレスは、低張溶液または低浸透圧の溶液に細胞を曝すことにより引き起こすことができる。逆に、高浸透圧ストレスは、高張溶液または高浸透圧の溶液に細胞を曝すことにより引き起こすことができる。浸透活性イオンおよび有機溶質の細胞内濃度の増加または減少は、細胞体積調節にショックを与え、RVDおよびRVI反応に含まれる膜輸送プロセスを活性化することもできる。
浸透圧ストレス剤の適用または導入は、主薬剤がLECを浸透圧ショックに感受性とする(例えば、イオン輸送機構の阻害により)場合に、および浸透圧ストレス剤自体が細胞剥離および/または死を誘発する場合に適している。例えば、イオン輸送機構干渉剤がナトリウム−カリウムポンプのような必須のイオン輸送機構を阻害する場合、LECは、それ自体を、外部浸透圧ストレスまたはショックに対して防御することはできず、その結果、更なる浸透圧ストレス剤により引き起こされる細胞外浸透圧へのその感受性が高められる。浸透圧ストレスまたはショックにLECが反応できないことが、死シグナル伝達プロセスの活性化により細胞死を惹起する。
しかしながら、主薬剤は浸透圧ストレス剤でもあり、そのために、主薬剤が、選択的に、LECのイオン輸送機構を干渉すると共に浸透圧ショックを引き起こすと解される。
より詳細には、浸透圧ストレス剤は、高浸透度または低浸透度を有する。低浸透溶液は、生理学的条件において通常見られるよりも低い溶質濃度を有し、高浸透溶液は、生理学的条件において通常見られるよりも高い溶質濃度を有する。換言すると、浸透圧ストレス剤は細胞外高浸透度または低浸透度を作り出す。
任意の生理学的に許容できる電解質およびオスモライト、浸透圧強度に貢献する任意の溶質は、浸透圧ストレスまたはショックの誘発に適している。オスモライトの例には、以下のものがある:
塩(NaClなど);
アミノ酸(タウリン、グリシンおよびアラニンなど)
糖(マンニトール、ミオイノシトール、ベタイン、グリセロホスホリルコリン、ベタイン類、尿素、スクロースおよびグルコースなど);
および任意の他の有機または無機のオスモライト。
オスモライトは、先に記載したように塩化ナトリウムであり得るが、塩化物はヨウ化物、臭化物、硝酸塩、チオシアン酸塩、フッ化物、硫酸塩、イセチオン酸塩、グルコン酸塩および任意の他の許容できる代用物で置換することができ、同様に、ナトリウムはカリウム、セシウム、ルビジウム、リチウム、フランシウムおよび任意の他の許容できる代用物で置換することができることが分かる。
浸透圧ストレス剤および主薬剤は、PCOの治療において、別々に、同時にまたは順次適用することができる。
処理溶液は、好ましくは、用いられる薬剤および濃度に依存して、pHが約5〜11である。好ましい実施形態において、約±200mMのNaClを含む処理溶液はpHが好ましくは約8〜10の範囲である。処理溶液のpHは、主薬剤または浸透圧ストレス剤の濃度を変化させることにより、またはpHを変化させる更なる化学的薬剤を導入することにより調節することができる。pHは、任意の酸または塩基あるいは、水素イオン濃度を増加または低下させる任意の薬剤により調節することができる。
処理は、ある範囲の濃度の主薬剤、浸透圧ストレス剤および、pHを調節する薬剤を用いると作用する。本発明によれば、適当な薬剤濃度は、広範囲の細胞の細胞機構を干渉することができる薬剤が、LECのイオン交換機構を選択的に干渉して、LECの剥離および/または死を引き起こすように選択される。処理溶液を適用すると、高い割合のLECが剥離および/または死滅される一方、低い割合の他の眼球細胞が損なわれる。濃度範囲の一端において、処理溶液の効率は低下し、LEC細胞の死により長い時間がかかる。濃度範囲の他の端部において、薬剤は眼の中の他の細胞を損傷させる傾向がある。主薬剤、浸透圧ストレス剤および、pHを調節する薬剤の適当な濃度は、LECの選択的細胞死および/または剥離によりPCOが防止され、他の眼球細胞および眼球組織への著しい損傷は引き起こさないように選択すべきである。好ましくは、単独または複数の薬剤の濃度は、適用時に、LECについての細胞生存率が、約10%未満、好ましくは約5%未満、より好ましくは0%に近づき、RPECおよびCEDCのような他の眼球細胞の細胞生存率が約70%超、好ましくは約90%、より好ましくは100%に近づくように選択すべきである。
先に記載した薬剤および導入する濃度は、相互関係にある。例えば、高pH処理溶液は、浸透度が低水準であるLECを殺す。特定の薬剤の適当な濃度の例を、以下の実施例に示す。更に、濃度は、広く行われている白内障手術技術の特定の要望および患者の要求に適するように調節することができる。
本発明の処理溶液は、白内障手術の前、中または後に投与してPCOを防止することができる。水晶体嚢の前部を開き、白内障を取り出す。次に、眼内水晶体を、嚢の後部に挿入することができる。あるいは、水晶体核部を注射可能な眼内水晶体で置換することができる。残留LECを、真空または他の手術技術を用いて除去してもしなくてもよい。水晶体乳化、レーザーまたは他の技術を用いて、水晶体内容物を除去することができる。単独または複数の処理溶液を、このプロセスの前、中または後の任意の時間に局所的に適用または導入することができる。次に、眼球領域を洗浄して残留細胞を除去することができる。
先に記載したように、処理溶液は主薬剤、浸透圧ストレス剤、および溶液のpHの調節に用いられる任意の化学薬剤を含むことができる。あるいは、主薬剤、浸透圧ストレス剤、および/またはpHの調節のための任意の化学薬剤を含む別々の溶液を順次または同時に適用または導入してPCOを防止することができる。先に記載したように、主薬剤は、浸透圧ストレス剤であっても良い。単独または複数の溶液を、注射器、ドロッパー、水晶体乳化に用いられるプローブ、または任意の他の適当なまたは従来の適用手段により適用することができる。
本発明の更なる利点は、処理溶液が、水晶体上皮細胞の比較的迅速な剥離および/または死を誘発して、それにより、本発明の処理溶液が白内障手術中に容易に導入されるということである。水晶体上皮細胞の剥離は、本発明の溶液または薬剤の適用後約30分以内に起こり、数時間以内に細胞死が生じる。好ましくは、剥離は、適用後約15分以内に起こるが、選択される薬剤および濃度に依存する。
本発明の処理溶液および方法が、他の眼球細胞よりも、LECの細胞剥離および/または死の発生率を実質的に高めたか、すなわち、このような処理が選択的であるかを、処理後の細胞生存率を比較することによりまたは効果を決める他の許容できる方法により決めることができる。より詳細には、この処理溶液および方法は、先に記載したように他の眼球細胞の生理学的損傷は最小限にしか引き起こさないでPCOを防止すべきである。好ましくは、単独または複数の薬剤の濃度は、適用時に、LECについての細胞生存率が約10%未満でありRPECおよびCEDCのような他の眼球細胞についての細胞生存率が約70%超であるように選択すべきである。単独または複数の処理溶液が、更なる薬剤、化学物質、蛋白、および/または物質を含んでもよく、2以上の主薬剤または浸透圧ストレス剤を含んでもよいことが理解される。更なる化学的成分または生物学的成分を添加して、単独または複数の処理溶液の特性、例えば、生理学的許容性、粘度および貯蔵性能を向上させることができる。
処理溶液をキットまたは他のパッケージに包装することができ、あるいは単一溶液もしくは、先に記載したように後で適用するための別々の溶液として貯蔵することができる。例えば、キットまたはパッケージには、浸透圧ストレス剤を含む溶液とは別に包装されたイオン輸送機構干渉剤を含有する溶液がある。更に、処理溶液は、水晶体乳化中に用いられる液体を含むキットまたはパッケージ中、または、注射可能な眼内水晶体の注入前に水晶体内容物を除去するために用いられるキット中に包装することができる。
実施例
(比較例1)
以下に記載のように、96ウエル平底プレート中で成長させたLEC、CEDCおよびRPECのコンフルエント単層を、種々の濃度のNaCl(オスモライト)溶液に曝す。NaCl溶液(以下に記載のように調製)200μlを、各ウエルに、それぞれ137mM、170mM、340mM、680mM、1360mMおよび2000mM NaClの濃度で添加する。溶液はpHが8.0±0.4である。NaClの濃度は、それぞれ約285〜4000mOsm/Lの最終浸透度に相当する。高張NaClの添加後約5〜10分以内に、LECの一部が収縮、丸まり、および単層からの接着性損失を用量依存的に奏し始めた。この効果は、CEDCおよびRPECでは顕著には見られない。
高浸透圧NaClの増加に応じたLEC、CEDCおよびRPECの細胞生存率を図1に示す(LECを明灰色ダイアモンドで、RPECを暗灰色四角で、CEDCを黒色ダイアモンドで示す)。各点は、2つの実験の平均を示す。約1380mM NaClの高張ストレスにおいて、LECの約40%が生き残り、CEDCおよびRPECの80%超が生き残り、これらの細胞間の異なる浸透許容度を証明している。
ヒト水晶体上皮細胞、ヒト角膜内皮細胞およびヒト網膜色素上皮細胞の一次および第一継代を培養する。LEC、CEDCおよびRPECを、細胞単離および酵素消化の標準的技術を用いて死後眼球から単離する。Uebersax ED,Grindstaff RDおよびDefoe DM著、Exp Eye Res.2000年3月;70(3)巻:381〜90頁;Wagner LM、Saleh SM、Boyle DJおよびTakemoto DJ著、Mol Vis.2002年3月14日;8巻;59〜66頁;Cammarata PR、Schafer G、Chen SW、Guo ZおよびReeves RE著、Invest Ophthalmol Vis Sci.2002年2月;43(2)巻:425〜33頁;Rakic JM、Galand AおよびVrensen GF著、Exp Eye Res.2000年11月;71(5)巻:489〜94頁を参照されたい。LECおよびCEDCを、イーグル基礎培地(MEM)中で培養する。RPECを、2mMグルタミン、25mmol/L Hepes、pH7.4、10U/mLペニシリンおよび10μg/mLストレプトマイシンおよび15%熱不活性化ウシ胎児血清(FCS)が加えられたハムF10倍地中で培養する。初代培養LEC、CEDCおよびRPECを、90〜100%コンフルエンスに達するまで96ウエル平底プレート中にて10細胞/ウエルの濃度で継代培養する。5%COの加湿雰囲気、37℃のインキュベーター内で、これらの細胞をコフルエンスになるまで成長させる。アッセイ前の一晩、細胞をコンフルエントの状態に維持する。
NaClの高浸透圧溶液を、まず、dHO 500mlにNaCl58.44gを添加することにより2M NaCl貯蔵溶液を作って調製する(NaClは英国ドーセット在Sigma Chemical coから供給)。次に、2M貯蔵溶液を、蒸留水(dHO)で希釈することにより所望の濃度の浸透圧NaCl溶液を調製する。例えば、170mM NaClの高浸透圧溶液を作るには、2M NaCl貯蔵溶液を1対10.1の比でdHOにより希釈する;340mM NaClの高浸透圧溶液を作るには、2M NaCl貯蔵溶液を1対4.56の比でdHOにより希釈する。最終的浸透度(mOsm/kg/HO)を、凝固点降下浸透圧測定器を用いる凝固点降下法により決める。
処理後、処理細胞を充分洗浄し、新しい媒体と12時間培養してから、細胞生存率を調べる。指示された高張ストレス水準でのこれらの細胞が生存する可能性を、曝露後12〜24時間でMTTアッセイにより調べる。
MTTアッセイは、Mosmann(Mosmann T.著、J Immunol Methods.1983年12月16日;65(1−2)巻:55〜63頁)に記載のように行われるミトコンドリア機能を調べるためのアッセイである。テトラゾリウム塩3−(4,5−ジメチルチアゾール−2−イル)−2,5−ジフェニルテトラゾリウムブロミド(MTT;Sigma Chemical Co.から提供)をリン酸平衡塩(PBS)溶液に5mg/mlの割合で溶解し、0.22μmミリポアフィルターを通して滅菌する。MTT貯蔵溶液を成長培地に1対10の比で添加する。細胞をこの成長培地と共に、3〜4時間インキュベートする。MTT添加時に生きている細胞において、ミトコンドリアの脱水素酵素が、テトラゾリウム環を暗青色ホルマザン反応生成物へと分解し、これが細胞内に蓄積する。更に処理することなく、MTT反応培地を明視野顕微鏡観察により観察する。各ウエル中の細胞は、反応生成物で完全に満たされている(非付着細胞の場合)場合、または複数の増殖巣から生じる多くのホルマザン結晶を含む(付着または拡散細胞の場合)場合は、MTT陽性と記録される。次に、MTT反応培地を、ジメチルスルホキシド(DMSO)で溶解し、マイクロプレートリーダーで読み取り、細胞生存率を測定する。ウエル当たりの生きている細胞(MTT陽性)の数を、特定濃度において決め、全細胞に対する百分率として表す(図1に表す)。
(実施例2)
実験前にFCSを除去するために、LECのコンフルエント単層をハンクス平衡塩溶液(HBSS)で3回洗う。LECを、実施例1と同じ96ウエル培養プレート中で調製する。これらの細胞を、30μMフルセミド(共輸送干渉剤、イオン輸送機構干渉剤)の存在下および非存在下に、増加濃度(約135mM、約170mM、約340mM、約680mM、約1360mMおよび約2000mM)のNaCl(オスモライト)を含む処理溶液200μl/ウエルに、約5〜10分間曝す。処理溶液はpH8.0±0.4である。処理後、処理された細胞を充分に洗い、新しい媒体を用いて培養する。処理LECの生存率を、実施例1に記載のように処理後12〜24時間でMTTアッセイにより決めた。
この処理後、フルセミドの存在下では、比較例1で観察されたものと同じ細胞収縮および剥離の現象が生じたが、変化はより劇的である。図2は、フルセミドの非存在下では(ダイアモンドで示す)、1380mM NaClでの迅速高張ショック後にLECの約40%が生き残っていることを示す。しかしながら、フルセミドを用いる共輸送機構の阻害後には(円で示す)、LECの浸透圧許容性が劇的に低下し、340mM NaClでの迅速高張ショック後に殆ど細胞が生き残っていない。この結果は、LECの生存能が、フルセミドの非存在下における2000mM NaClでの高張ショックから、フルセミドの存在下における170mM NaClでの高張ショックへとシフトしていることを示す。
各点は、3つの実験の平均±標準偏差(S.D)を表す。30.3mMフルセミドの貯蔵溶液を、まず、フルセミド20mgをDMSO100μlに溶解して溶解を確認し、次に、所望の濃度の高浸透圧NaClの1.9mlに加えることにより調製する。30μMフルセミドを得るために、次に、フルセミド貯蔵溶液5μLを、所望の濃度のNaCl溶液(比較例1に記載のように調製)5mlに添加する。
(比較例3)
この実施例は、LEC浸透圧生存率へのpHの効果を示す。比較例1に記載のようにLECのコンフルエント単層を調製する。細胞の対照群を、pH7.4±0.3において、生理学的135mM NaClを含む溶液に曝す。異なる群の細胞を、種々のpH(8.0±0.4、8.4±0.5、8.9±0.8、および10.6±0.5)において増加濃度の(〜170mMおよび〜340mM)NaClを含む溶液200μl/ウエルに10分間曝す。
0、1、3または5μlの5N NaOH貯蔵溶液を、選択された高浸透圧NaCl溶液(実施例に記載のように調製)10mlに直接添加することにより、溶液のpHを調節する。対応する最終的pHを、専門pHメーターを用いて決めた。NaOHを添加していないNaCl溶液10mlの最終的pHは、約8.0±0.4のpH読取値を示した。5N NaOH1μlを添加したNaCl溶液10mlの最終的pHは、約8.4±0.5のpH読取値を示した。5N NaOH3μlを添加したNaCl溶液10mlの最終的pHは、約8.9±0.8のpH読取値を示した。5N NaOH5μlを添加したNaCl溶液10mlの最終的pHは、約10.6±0.5のpH読取値を示した。
処理細胞の細胞生存率を、実施例1に記載のように処理後12〜24時間でのMTTアッセイにより決める。溶液適用後のLECの細胞生存率を図3に示す。示されるように、灰色棒は、LECを生理学的135mM NaClに曝した対照群を表す。黒色および白色棒は、pHを上げつつ、それぞれ170mM NaClおよび340mM NaClに曝したLECを表す。示されるように、高張ストレスへのLEC感受性は、pHの上昇およびNaCl濃度の上昇と共に増加する。約10.6±0.5のpHにおいて、LECの約75%以上が5分以内に破壊され死んだ。約8.9±0.8のpHにおいて、LECがその基質から効率的に剥離するが、著しく破壊することはない。
(比較例4)
この実施例は、RPEC浸透圧生存率への細胞外pHの効果を示す。実施例1に記載のようにRPECのコンフルエント単層を調製する。これらの細胞を、変化するpH(8.4±0.5および10.6±0.5)において増加濃度(137mM、170mM、340mM、680mM、1360mMおよび2000mM)のNaClを含む溶液200μl/ウエルに10分間曝す。NaClの溶液を実施例1に記載のように調製する。溶液のpHを、実施例3に記載のように5N NaOHを1μlおよび5μl添加することにより調節する。
処理細胞の生存率を、実施例1に記載のように処理後12〜24時間でのMTTアッセイにより決めた。溶液適用後のRPECの細胞生存率を図4に示す(ダイアモンドはpH8.4±0.5を示し、丸はpH10.6±0.5を示す)。各点は3つの実験の平均±標準偏差を表す。示されるように、pHレベルを上げた場合、高張NaClに曝したRPECの生存率水準が劇的に減少する。
(実施例5)
LECおよびRPECのコンフルエント単層を実施例1に記載のように調製する。これらの細胞を、(i)200mM以下の高浸透圧NaCl;(ii)増加濃度(10μM、30μM、60μM、90μMおよび120μM)の共輸送干渉剤フルセミドおよび(iii)3μlの5N NaOHを含む処理溶液200μl/ウエルに約10分間曝す。
フルセミドを含む処理溶液を、実施例2に記載のように、フルセミドの貯蔵溶液を200mM以下の高浸透圧NaCl溶液(実施例1のように調製)で希釈することにより調製する。例えば、60μMのフルセミドを加えた高浸透圧NaCl溶液を得るために、フルセミド貯蔵溶液10μLを、高浸透圧NaCl溶液5mLに添加する。溶液のpHを、3μlの5N NaOHで調節する。
処理細胞の生存率を、実施例1に記載のように処理後12〜24時間でのMTTアッセイにより決める。LEC(丸)およびRPEC(ダイアモンド)の細胞生存率を図5に示す。各点は、HLECについて6つの実験のおよびHRPECについて4つの実験の平均±標準誤差(s.e.m)を表す。示されるように、10μMフルセミドにおいては、LECの50%超が収縮し、失われまたは死ぬ。30μMと120μMとの間のフルセミドにおいて、LECの90%超が除去または殺される。一方、30μMと90μMとの間のフルセミドにおいて、RPECは殆ど除去または殺されない。したがって、例えば、このpHにおける高浸透圧NaCl溶液約200mM中では、約15μM〜約100μMがRPECに著しい損傷が生じない効果的濃度である。
(実施例6)
LEC、CEDCおよびRPECのコンフルエント単層を実施例1に記載のように調製する。これらの細胞を、(i)200mM以下の高浸透圧NaCl;(ii)増加濃度(14μM、28μM、56μM、112μMおよび224μM)の共輸送干渉剤ブメタニドおよび(iii)3μlの5N NaOHを含む処理溶液200μl/ウエルに約10分間曝す。
ブメタニドを含有する処理溶液を以下のように調製する。1.4Mブメタニドの貯蔵溶液を調製する。次に、1.4Mブメタニド溶液1μlを高浸透圧NaCl溶液(実施例1のように調製)1mLで希釈することにより14mMブメタニドの第2の貯蔵溶液を作る。14mMブメタニド貯蔵溶液をNaCl溶液で希釈して、それぞれ、約0μM(対照)、14μM、28μM、56μM、112μMおよび224μMのブメタニドの最終的所望濃度を得る。溶液のpHを、3μLの5N NaOHを用いて調節する。
処理細胞の生存率を、実施例1に記載のように処理後12〜24時間でのMTTアッセイにより決める。図6は、LEC(丸)、RPEC(ダイアモンド)およびCEDC(四角)の細胞生存率を示す。各点は、LECについて6つの実験のおよびRPECおよびCEDCについてそれぞれ3つの実験の平均±s.e.mを表す。示されるように、28μM、112μMおよび224μMのブメタニドにおいて、位相差顕微鏡観察でLECの殆ど全てが収縮、剥離および/または死に、洗浄後に殆ど細胞が残っていない。殆ど100%の細胞が、MTT陰性反応を示す。一方、これら同じ濃度において、約20%未満のRPECおよび30%未満のCEDCが殺されるまたは除去される。したがって、28μM、112μMおよび224μMのブメタニドが、これらの特定の処理溶液について適した処理濃度である。
(実施例7)
LECのコンフルエント単層を実施例1に記載のように調製し、96ウエル平底培養プレートの代わりにカバーガラス上で成長させる。次に、LECを充分に洗って血清を除去する。
200mM以下のNaCl、90μMのフルセミドおよび3μlの5N NaOHを含有する処理溶液10mLを、深い35mmペトリ皿内で調製する。
次に、カバーガラスを、処理溶液を含むペトリ皿に移し、処理溶液中に5〜10分間維持する。次に、処理溶液を注ぎ出し、カバーガラスを剥離LECと一緒に、吸引/灌水プローブを用いて僅かに圧力をかけて、新しいHBSS溶液で濯いだ。位相差倒立顕微鏡を用いて迅速に検査し写真撮影した後、LECを新しい媒体と一緒に7日間培養して、残留細胞が生き残るか調べる。
図7は、位相差倒立顕微鏡を用いて得たLECの画像、および処理中の浸透圧反応を示す。図7Aは、0分における、全領域を覆うコンフルエントLECを示す。図7Bは、処理後5分における、堆積し基質から分離したLECを示す。図7Cは、処理後10分および洗浄後における、細胞が洗浄除去された後の実質的に透明な基質を示す。
(実施例8)
インビボ内に近い環境における処理の効果を調べるために、水晶体器官培養PCOモデルを用いる(モデルは、当初、Liuらにより開発された(Liu CS、Wormstone IM、Duncan G,Marcantonio JM、Webb SF、Davies PD著、Invest Ophthalmol Vis Sci.1996年4月;37(5)巻:906〜14頁))。ヒト水晶体を、ドナー(19〜89歳)の眼から単離し、テイラーメードのステンレス鋼スタンド上に貼り付ける。操作している顕微鏡下に、直径が約6mmの水晶体嚢100の前部を、連続的曲線状水晶体嚢開放器を用いて注意深く開く。次に、水晶体核部をHBSSで水素発現(hydroexpress)し、残りの水晶体線維を注意深く除去する。後嚢200および赤道嚢300を膜(袋)として無傷で残し、プラスチック培養皿(深さ35mmのペトリ皿)に貯蔵し、10%〜15%FCSを加えたイーグル基礎培地(MEM)で覆う。次に、器官培養モデルにおけるヒトLECを、4〜5日放置して手術損傷から回復させる。
器官培養PCOモデル2群を達成した。対照として10個の水晶体からなる第1の群を達成し、処理することなく器官培地中に保持する。これらの水晶体の全てが、4〜7日後に、前嚢100および後嚢200上にコンフルエント単層または多層増殖LECを現した。
培養の4〜5日後、20個の水晶体からなる第2の群も、増殖LECの単層を有していた。この群を充分に洗浄して血清を除去してから、処理溶液を導入した。深い35mmペトリ皿内で、(i)200mM以下のNaCl、(ii)約90μMのフルセミドまたは約28μMのブメタニドもしくは約112μMのブメタニド、および(iii)3μlの5N NaOHを含む処理溶液10mLを調製する。溶液を、他の実施例におけるように調整する。次に、器官培養物を、処理溶液を含むペトリ皿に移し、その処理溶液中に5〜10分間維持する。次に、器官培養物を、ピンセットを用いて別のペトリ皿に移す。次に、嚢をPCO器官培地中の剥離LECと一緒に、吸引/灌水プローブを用いて僅かな圧力をかけて新しいHBSS溶液で濯いだ。直ちに検査した後、器官培養物を、新しい培地と一緒に7日間培養して、残留細胞が生き残るか試験する。
この処理の、PCO器官培地モデル中のLECへの効果を、位相差倒立顕微鏡を用いて調べる。これらを、処理後0分、5分、10分および12時間に、T−Max400フィルム(コダック製)で写真撮影する。図8に示すように、処理の5〜10分以内に、LECの全てが堆積し、単層および水晶体嚢から剥がれる。位相差顕微鏡写真8Aは、切除から6〜7日後および処理前における前嚢100および後嚢200についての擬ECCE操作後の増殖LECを低倍率(視野は1mm×0.75mm)で示す。位相差顕微鏡写真8Bは、処理5分後に堆積および水晶体嚢からの剥離を開始したLECを高倍率(視野は3.4mm×1.5mm)で示す。位相差顕微鏡写真8Cは、処理後10分で単層から剥離した処理細胞の大部分を高倍率で示す。位相差顕微鏡写真8Dは、洗浄後、処理10分後には水晶体嚢がLECを欠くことを低倍率で示す。
(実施例9)
この実施例において、初代RPECへの処理の効果を調べる。他の眼球細胞への副作用を有するか否かを調べるために、初代培養RPECを、6ウエル平底培養プレートにおいて、2mMグルタミン、25mmol/L Hepes、pH7.4、10U/mLペニシリンおよび10μg/mLストレプトマイシンおよび15%熱不活性化ウシ胎児血清(FCS)が加えられたハムF10倍地中で90〜100%コンフルエンスに至るまで培養した。培養物を、5%COおよび37℃の加湿雰囲気のインキュベーターに維持し、アッセイ前にコンフルエント状態に一晩保持した。
RPEC培地を充分に洗って血清を除去してから、処理溶液を導入した。先の実施例に記載のように深い35mmペトリ皿内で、(i)200mM以下のNaCl、(ii)約90μMのフルセミドまたは約28μMのブメタニドもしくは約112μMのブメタニド、および(iii)6μlの5N NaOHを含む処理溶液20mLを調製する。次に、処理溶液5mlを、6ウエル培養プレートにおける3つのウエルの各ウエルにおいてコンフルエントRPECに加える。約10分後、溶液を完全に除去し、処理されたRPECを、吸引/灌水プローブを用いて僅かな圧力をかけて新しいHBSS溶液で充分に濯いだ。直ちに検査した後、RPEC初代培養物を、新しい培地と一緒に7日間培養して、残留細胞が生き残るか試験する。
この処理の初代RPECへの効果を、位相差倒立顕微鏡を用いて調べる。これらを、処理後0分、5分、10分および12時間に、T−Max400フィルム(コダック製)で写真撮影する。RPECは、処理溶液への10分間の曝露によりあまり影響を受けない。図9は、これらの細胞についての、処理の効果の例を示す。図9Aは、0分におけるRPECを示す。図9Bは、処理5分後のRPECを示す。図9Cは、処理10分後のRPECを示す。図8Dは、処理に続いて細胞を洗浄した後のRPECを示す。
(実施例10)
この処理が他の眼球細胞への副作用を有するか否かを調べるために、LEC、CEDCおよびRPECのコンフルエント単層を実施例1に記載のように調製する。これらの細胞を、200mM以上のNaCl、90μMのフルセミドおよび3μlの5N NaOHを含む処理溶液200μl/ウエルに約10分間曝した。
処理細胞の生存率を、実施例1に記載のように処理後12〜24時間でのMTTアッセイにより決める。処理に対するLEC、RPECおよびCEDCの細胞生存反応を図10に示す。各点は、4つの実験の平均±s.e.mを表す。示されるように、処理10分後に、処理溶液は、CEDCおよびRPECよりも、細胞生存率により測定されるLECの細胞剥離および/または死の発生率を実質的に高めた。具体的には、処理後、CEDCの70%超およびRPECの80%が生き残った。これは、LECについての10%未満の生存率と比較される。
(実施例11)
器官培養角膜ボタンへの処理の効果を調べて、処理が、インビボ内に近い環境において周囲眼球組織に損傷を起こすかどうか決める。感受性および処理への直接曝露の危険性から、角膜を選択する。角膜器官培養物をHBSSで洗い、テイラーメードのステンレス鋼スタンド上で内皮細胞側が上になるよう配する。次に、これらを、上皮の乾燥を防止するための加湿チャンバーを提供する培養皿の底部のみを覆うMEM成長培地を含む滅菌培養皿中に貯蔵する。次に、内皮角膜陥凹部を、10%および15%FCSを加えたMEM成長培地で満たし、5%COインキュベーター中で37℃で培養する。
器官培養物を、対照および処理群に分割する。培養物を、まず、HBSSで3回荒い、次に、その内皮細胞表面を、生理学的NaCl(137mM、293±9mOsm/L)または処理溶液に10分間曝す。
処理群については、深い35mmペトリ皿内で、(i)200mM以下のNaCl、(ii)約90μMのフルセミドまたは約112μMのブメタニド、および(iii)3μlの5N NaOHを含む処理溶液10mLを調製する。器官培養物を、処理溶液を含むペトリ皿に移し、処理溶液中に10分間以上保つ。次に、器官培養物を、ピンセットを用いて、新しいHBSSを含む別のペトリ皿に移す。次に、角膜器官培養物を、吸引/灌水プローブを用いて僅かな圧力をかけて新しいHBSS溶液で充分に濯ぐ。処理後、角膜器官培養物を新しい培地中で6時間インキュベートする。
対照群については、先に記載した処理溶液の代わりに、新しいHBSSを角膜器官培地に10分間適用した。
角膜内皮細胞への処理の毒性を調べるために、角膜器官培養ボタンを、位相差倒立顕微鏡および蛍光共焦点顕微鏡の両方で調べる。共焦点顕微鏡では、角膜内皮細胞のアクチン線維の形態を調べて、細胞の無傷の構造を証明する。これらの角膜器官培養物の内皮細胞を、処理の前および後に固定し、FITC結合ファロイジンで染める。角膜内皮細胞の共焦点レーザースキャン画像は、未処理群(対照)と処理群との間に著しい相違を示さない。処理群の内皮細胞シートは、未処理群と同じ完全性を維持している。角膜内皮細胞は均一分布単層のままであり、細胞は、対照並びに処理器官培地において六角形外観を維持している。角膜内皮細胞に明らかな損傷はない。
上記技術を考慮して本発明の多くの修飾および変更が可能である。例えば、先に詳細に説明したものと異なるイオン輸送機構干渉剤を用いることができ、例えば、以下の適当な化合物が挙げられる:バリノマイシン、臭素、テオフィリンおよび他のアルキルキサンチン、イコサノイド、ホルボールエステル(例えば、TPA)、カリウム保持性利尿剤(例えば、トリアムテレン、スピロノラクトン、およびカンレノ酸カリウム)、カリクリンA、オカダ酸(OA)、プロパノロールおよびその類似体、アンギオテンシンII、ケトコナゾール(CDC)、アラキドン酸、ランタン、トリフルオペラジン、イドキシフェン、2−アミノイソ酪酸、17β−エストラジオール、ブラジキニン、ホスファチジルイノシトール4,5−ビホスフェート(PIP2)、イノシトール1,4,5−トリホスフェート(IP3)、プロスタグランジン(PGE)、アデノシン3’,5’−環状モノホスフェート(cAMP)、グアノシン3’,5’−環状モノホスフェート(cGMP)、セリン/スレオニンプロテインホスファターゼ(S/T−Ppase)、プロテインキナーゼC(PKC)、プロテインキナーゼA(PKA)、マイトジェン活性化プロテインキナーゼ(MAPK)、SRCファミリーチロシンキナーゼ(SFK)、多不飽和脂肪酸、ホスホリパーゼC(PLC)、ホスファターゼ(PP)、G−タンパク質、ルビジウム、銅(Cu2+)、硝酸イオン(NO )、バリウム(Ba2+)、塩化物イオン(Cl)、カリウム(K)、細胞内マグネシウムおよび水素濃度を変化させる薬剤、および細胞外ナトリウム、塩化物またはカリウム濃度を減少させる薬剤。他のイオン輸送機構干渉剤も存在すると解すべきである。すなわち、添付の特許請求の範囲の範囲においては、本発明は先に記載した内容以外の実施が可能であることを理解される。
図1は、種々の濃度のNaClを含む溶液を導入した後の、様々な眼球細胞(LEC、RPECおよびCEDC)の細胞生存率を示す図である。 図2は、共輸送干渉剤である、30μMのフルセミドの非存在下(ダイアモンド)および存在下(丸)において、増加した濃度のNaClを適用した後のLECの細胞生存率を示す図である。 図3は、種々のpHレベルで増加した濃度のNaClを含む溶液を適用した後の合計LECの細胞生存率を示す図である。 図4は、種々のpHレベルで増加した濃度のNaClを含む溶液を適用した後のPRECの細胞生存率を示す図である。 図5は、200mM以下のNaCl、増加した濃度の共輸送干渉剤であるフルセミドおよび3μlの5N NaOHを含む処理溶液を適用した後のLECおよびRPECの細胞生存率を示す図である。 図6は、200mM以下のNaCl、増加した濃度の共輸送干渉剤であるブメタニドおよび3μlの5N NaOHを含む処理溶液を適用した後のLEC、RPECおよびCEDCの細胞生存率を示す図である。 図7は、洗浄の(A)0分後、(B)5分後および(C)10分後における、本発明の処理溶液を用いた、初代培養LECへの処理の効果を示す3枚の写真である。 図8は、(A)処理前、(B)処理の5分後、(C)処理の10分後および(D)洗浄後における、本発明の処理溶液を用いた、ヒト器官培養PCOモデル中での初代LECへの処理の効果を示す4枚の写真である。 図9は、処理の(A)0分後、(B)5分後および(C)10分後および(D)洗浄後における、200mM以下のNaCl、90μMのフルセミドおよび3μlの5N NaOHを含む処理溶液を用いた、RPECへの処理の効果を示す4枚の写真である。 図10は、200mM以下のNaCl、90μMのフルセミドおよび3μlの5N NaOHを含む処理溶液の適用後におけるLEC、RPECおよびCEDCの生存率を示す図である。

Claims (24)

  1. フルセミドおよびブメタニドからなる群より選択される1種以上のイオン輸送機構干渉剤を含み、角膜内皮細胞および網膜色素上皮細胞よりも水晶体上皮細胞の剥離の発生率を高めて後嚢混濁を防止する、後嚢混濁を防止するための眼球処理溶液。
  2. フルセミドおよびブメタニドからなる群より選択される1種以上のイオン輸送機構干渉剤およびオスモライトを含み、角膜内皮細胞および網膜色素上皮細胞よりも水晶体上皮細胞の剥離の発生率を高めて後嚢混濁を防止する、後嚢混濁を防止するための眼球処理溶液。
  3. オスモライトがアミノ酸を含む、請求項2に記載の眼球処理溶液。
  4. アミノ酸がタウリン、グリシンおよびアラニンからなる群より選択される、請求項3に記載の眼球処理溶液。
  5. オスモライトが糖を含む、請求項2に記載の眼球処理溶液。
  6. オスモライトがマンニトール、ミオイノシトール、ベタイン、グリセロホスホリルコリン、尿素、スクロースおよびグルコースからなる群より選択される、請求項に記載の眼球処理溶液。
  7. オスモライトが塩化物を含む、請求項2に記載の眼球処理溶液。
  8. オスモライトが塩化ナトリウムを含む、請求項2に記載の眼球処理溶液。
  9. オスモライトが塩化カリウム、塩化セシウム、塩化ルビジウム、塩化リチウムおよび塩化フランシウムからなる群より選択される、請求項2に記載の眼球処理溶液。
  10. オスモライトが尿素を含む、請求項2に記載の眼球処理溶液。
  11. オスモライトがナトリウムを含む、請求項2に記載の眼球処理溶液。
  12. オスモライトが塩化ナトリウム、ヨウ化ナトリウム、臭化ナトリウム、硝酸ナトリウム、チオシアン酸ナトリウム、フッ化ナトリウム、硝酸ナトリウム、硫酸ナトリウム、イセチオン酸ナトリウムおよびグルコン酸ナトリウムからなる群より選択される、請求項2に記載の眼球処理溶液。
  13. オスモライトが塩を含む、請求項2に記載の眼球処理溶液。
  14. pHが5〜11である、請求項2に記載の眼球処理溶液。
  15. pHが8〜10である、請求項2に記載の眼球処理溶液。
  16. 溶液のpHを調節することができる薬剤を更に含む、請求項2に記載の眼球処理溶液。
  17. pHを調節することができる薬剤が水酸化物であり、8〜10のpHを有する、請求項2に記載の眼球処理溶液。
  18. 水酸化物溶液が水酸化ナトリウムを含む、請求項17に記載の眼球処理溶液。
  19. イオン輸送機構干渉剤がフルセミドであり、8〜10のpHを有する、請求項2に記載の眼球処理溶液。
  20. フルセミドが15μM〜100μMの範囲の濃度で処理溶液中に存在する、請求項19に記載の眼球処理溶液。
  21. イオン輸送機構干渉剤がブメタニドであり、8〜10のpHを有する、請求項2に記載の眼球処理溶液。
  22. フルセミドおよびブメタニドからなる群より選択される1種以上のイオン輸送機構干渉剤を含み、5〜11のpHを有し、溶液適用後30分以内に水晶体上皮細胞の剥離を誘発させる、後嚢混濁を防止するための眼球処理溶液。
  23. 角膜内皮細胞および網膜色素上皮細胞よりも水晶体上皮細胞の剥離の発生率を高めて後嚢混濁を防止する、後嚢混濁を防止するための眼球処理溶液を製造するための、フルセミドおよびブメタニドからなる群より選択される1種以上のイオン輸送機構干渉剤の使用。
  24. 角膜内皮細胞および網膜色素上皮細胞よりも水晶体上皮細胞の剥離の発生率を高めて後嚢混濁を防止する、後嚢混濁を防止するための眼球処理溶液を製造するための、フルセミドおよびブメタニドからなる群より選択される1種以上のイオン輸送機構干渉剤およびオスモライトの使用。
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