JP4507514B2 - インクジェットヘッド - Google Patents

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  • Particle Formation And Scattering Control In Inkjet Printers (AREA)

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明はインクジェットヘッドに関し、詳しくは、圧電素子からなる駆動壁とチャネル部とが交互に並設されると共に前面及び後面にそれぞれチャネル部の出口と入口とが対向状に配置され、前記駆動壁に電圧を印加することにより該駆動壁をせん断変形させてチャネル部内のインクを吐出させるようにしたヘッドチップを有するインクジェットヘッドに関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、チャネル部を区画する駆動壁に電圧を印加することにより該駆動壁をせん断変形させてチャネル部内のインクを吐出させるようにしたシェアモード型のインクジェットヘッドとして、インクを吐出させるためのアクチュエータを、圧電素子からなる駆動壁とチャネル部とが交互に並設されると共に前面及び後面にそれぞれチャネル部の出口と入口とが対向状に配置される所謂ハーモニカ型のヘッドチップにより構成することで、1枚のウェハーからの取り数が多く、極めて生産性を向上させたインクジェットヘッドが公知である(特許文献1〜3)。
【0003】
このようなインクジェットヘッドのチャネル部は、その入口から出口に亘る長さ方向で大きさと形状がほぼ変わらないストレートタイプとなり、その後方側には、チャネル部にインクを供給するためのインク供給室を構成するインク供給室形成部材としてのインクマニホールドが固着されるため、各駆動壁に形成された駆動電極に電圧を印加するための配線を駆動回路と電気的に接続させることが困難である。
【0004】
特に、近年、より高画質、高精細の画像を記録するために、ノズルの高密度化が進んでおり、駆動壁とチャネル部とを上下方向に多段状に形成することで、ノズル面に複数のノズル列を形成して高密度化を図ったヘッドチップ構造を有するインクジェットヘッドも考えられており、特に上下方向に3段以上に構成されたヘッドチップの場合、その中程に位置する各駆動電極に電圧を印加するための配線を駆動回路と電気的に接続させることがますます困難となる問題があった。
【0005】
【特許文献1】
特開2002−103612号公報
【特許文献2】
特開2002−103614号公報
【特許文献3】
特開2002−210955号公報
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
そこで、本発明の課題は、各チャネル部内の駆動電極と駆動回路からの配線との電気的接続を簡単に行うことのできる、生産性の高い高密度のインクジェットヘッドを提供することにある。
【0007】
本発明の他の課題は、本明細書の以下の記載により明らかになる。
【0008】
【課題を解決するための手段】
請求項1記載の発明は、 圧電素子からなる駆動壁とチャネル部とが交互に並設されると共に前面及び後面にそれぞれチャネル部の出口と入口とが対向状に配置され、且つ前記駆動壁と前記チャネル部とが上下方向に複数段に形成されてなるヘッドチップの上面及び下面に、前記チャネル部の長さよりも長尺に形成された上側基板及び下側基板がそれぞれ固着されて前記チャネル部の後方側に延びており、
前記両基板の間に亘って各チャネル部にインクを供給するインク供給室を形成するための囲い壁部によって形成されたインク供給室形成部材が、前記ヘッドチップの後面を包囲するように設けられてなり、
前記ヘッドチップの外面には、各チャネル部の駆動電極と電気的に接続される第1の配線がそれぞれ引き出されており、
前記各第1の配線のうち、前記ヘッドチップの最も外側に位置する段の各チャネル部とこの段に隣り合う段の各チャネル部との2段の各チャネル部の駆動電極と電気的に接続される第1の配線は、各段毎にヘッドチップの前面と後面とに振り分けられ、該前面及び後面を介してそれぞれ上面又は下面のいずれか一方の面まで引き出されており、
前記各第1の配線が引き出された前記ヘッドチップの上面又は下面に固着される前記上側基板又は前記下側基板には、前記各第1の配線の各々と電気的に接続される第2の配線がそれぞれ形成されており、
前記各第2の配線のうち、一端が前記各第1の配線のうちの前記ヘッドチップの前面又は後面のいずれか一方の面を介して引き出された方と電気的に接続される第2の配線の他端は、前記ヘッドチップとの固着面から当該第2の配線が形成された前記上側基板又は前記下側基板の外面に引き出されていると共に、前記各第2の配線のうち、一端が前記各第1の配線のうちの前記ヘッドチップの前面又は後面のいずれか他方の面を介して引き出された方と電気的に接続される第2の配線の他端は、前記ヘッドチップとの固着面側において後端まで延びており、
前記インク供給室形成部材には、一端が前記ヘッドチップとの固着面側において後端まで延びている第2の配線の他端と電気的に接続される第3の配線が形成されてヘッド表面に露出していると共に、前記第2の配線が外面と前記ヘッドチップとの固着面側との両面に形成された前記上側基板又は前記下側基板よりも後方にはみ出したはみ出し部を有しており、前記第3の配線の他端は、前記はみ出し部においてヘッド表面に露出していることを特徴とするインクジェットヘッドである。
【0011】
請求項記載の発明は、前記インク供給室形成部材は、前記上側基板と前記下側基板との間に亘って前記ヘッドチップの後面を包囲するように設けられた壁部により形成され、前記両基板及び前記壁部で囲まれる空間によって、前記インク供給室を形成してなることを特徴とする請求項記載のインクジェットヘッドである。
【0012】
請求項記載の発明は、前記駆動電極、前記インク供給室に臨む第1の配線及び前記第2の配線の表面に電極保護膜が形成されていることを特徴とする請求項1又は2記載のインクジェットヘッドである。
【0013】
請求項記載の発明は、前記ヘッドチップにおける駆動壁以外の部材、前記上側基板及び前記下側基板のうちの少なくとも一つが、窒化アルミを成分に含むセラミックス、圧電材料及び液晶ポリマーのうちから選ばれるいずれかの材料からなることを特徴とする請求項1、2又は3記載のインクジェットヘッドである。
【0014】
請求項記載の発明は、前記ヘッドチップにおける駆動壁以外の部材、前記上側基板及び前記下側基板のうちの少なくとも一つの熱膨張係数が、前記圧電素子の熱膨張係数の±2×10−6/℃であることを特徴とする請求項1〜のいずれかに記載のインクジェットヘッドである。
【0015】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態について図面に基づいて説明する。
【0016】
図1は、本発明に係るインクジェットヘッドの分解斜視図、図2は図1の(ii)-(ii)線に沿うインクジェットヘッドの縦断面図、図3(a)はヘッドチップの正面図、(b)はヘッドチップの背面図である。
【0017】
図中、Aはインクジェットヘッド、1はヘッドチップ、2はヘッドチップ1の前面に固着されたノズルプレート、3はヘッドチップ1の上面に固着された上側基板、4はヘッドチップ1の下面に固着された下側基板、5はインク供給室形成部材である。
【0018】
なお、本明細書においては、ヘッドチップからインクが吐出される側を「前」、その反対側を「後」とし、それぞれの面を「前面」、「後面」という。また、本明細書においては、ヘッドチップから見て上側基板が固着される側を「上」、下側基板が固着される側を「下」とし、ヘッドチップにおいて並設されるチャネル部を挟んで上下に位置する外側面をそれぞれ「上面」、「下面」という。
【0019】
ヘッドチップ1は、詳細には図3に示すように、ヘッドチップ1を構成する上下2枚のカバー基板11、11の間に圧電素子12からなる駆動壁14(141〜144)とチャネル部15(151〜154)とが図示左右方向に沿って交互に並設されることによって構成される段が、上下方向に複数段に形成されている。図示例では各段に4つのチャネル部15と5つの駆動壁14とが形成され、それらが上下方向に4段(a1〜a4)に形成されているものを例示している。なお、各チャネル部151〜154は、各段a1〜a4毎に半ピッチずつずれている。
【0020】
圧電素子12に用いられる圧電材料としては、電圧を加えることにより変形を生じる公知の圧電材料を用いることができ、有機材料からなる基板、非金属製の基板等がある。特に、非金属製の圧電材料基板が好ましく、成形、焼成等の工程を経て形成される圧電セラミックス基板、又は成形、焼成を必要としないで形成される基板等がある。
【0021】
非金属製の圧電材料基板において、成形、焼成等の工程を経て形成される圧電セラミックス基板としては、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)が好ましい。さらにBaTiO3、ZnO、LiNbO3、LiTaO3等を用いてもよい。
【0022】
PZTとしては、PZT(PbZrO3−PbTiO3)と、第三成分添加PZTがある。添加する第三成分としてはPb(Mg1/2Nb2/3)O3、Pb(Mn1/3Sb2/3)O3、Pb(Co1/3Nb2/3)O3等がある。
【0023】
また、非金属製の圧電材料基板において、成形、焼成を必要としないで形成される基板としては、例えば、ゾル−ゲル法、積層基板コーティング法等で形成することができる。
【0024】
圧電素子12は、2枚の圧電材料基板12a、12bを分極方向を互いに反対に向けて接合してなる。これにより圧電素子12に複数列の溝を並設することで、分極方向が互いに反対方向となる駆動壁14が形成される。
【0025】
圧電材料基板12aと12bを接合する手段としては、接着剤を用いた接合を採用できるが、接合可能であれば、特にこれに限定されない。接着剤を用いて接合する場合、その接着剤層の硬化後の厚みは、1〜10μmの範囲が好ましい。
【0026】
なお、図示していないが、カバー基板11の代わりに圧電材料基板12a又は12bの一方を厚手のものとし、他方の圧電材料基板12a又は12b側から一方の圧電材料基板12a又は12bの中途部までに亘って平行な複数列の溝を形成することで、上記同様の駆動壁14を形成するようにしてもよい。
【0027】
各チャネル部15の形状は、両側壁が垂直方向(上下方向)に向いており、そして互いに平行である。また、その入口から出口に亘る長さ方向で大きさと形状がほぼ変わらないストレートタイプである。このようにチャネル部15がストレートタイプであることにより、泡抜けが良く、電力効率が高く、発熱が少なく、高速応答性が良いインクジェットヘッドとすることができる。
【0028】
各駆動壁14には、各チャネル部15内に臨んで駆動電極16(161〜164)が形成されている。駆動電極16を形成する金属は、Ni(ニッケル)、Co(コバルト)、Cu(銅)、Al(アルミニウム)等があるが、NiやCuが好ましく、特に好ましくはNiである。
【0029】
駆動電極16の形成は、蒸着法、スパッタリング法、めっき法、CVD(化学気相反応法)等の真空装置を用いた方法等が挙げられるが、めっき法によるものが好ましく、特に無電解めっきにより形成されることが好ましい。無電解めっきによれば、均一且つピンホールフリーの金属被膜からなる電極を形成することができる。
【0030】
無電解めっきによる電極形成においては、Ni−P(リン)めっき又はNi−B(ホウ素)めっきを単独で使用してもよいし、あるいはNi−PとNi−Bを重層してもよい。Ni−PめっきはP含量が高くなると電気抵抗が増大するので、P含量が1〜数%程度がよい。Ni−BめっきのB含量は、普通1%以下なので、Ni−PよりNi含量が多く、電気抵抗が低く、且つ、外部の配線との接続性が良いため、Ni−PよりNi−Bの方が好ましいが、Ni−Bは高価なので、Ni−PとNi−Bを組み合わせることも好ましい。更に、Ni−Pめっき又はNi−Bめっきを下層として、その上層にAu(金)を電解めっき又は蒸着により形成してもよい。めっき膜の厚みは0.5〜5μmの範囲が好ましい。
【0031】
ヘッドチップ1には、上面及び下面、すなわち上側基板3及び下側基板4との各固着面に、各駆動壁14に形成された各駆動電極16と電気的に接続される第1の配線171〜174が引き出されている。
【0032】
各第1の配線171〜174は、複数段からなるヘッドチップ1のうち、上下に隣り合う2段の各チャネル部15の各駆動電極16と電気的に接続され、各段毎にヘッドチップ1の前面と後面とに振り分けられて、上側基板3及び下側基板4との固着面にまで引き出されている。図示例では、上側基板3側に位置する2段(a1、a2)の各駆動電極161と162のうち、最も上段(a1)の駆動電極161と電気的に接続される第1の配線171は、ヘッドチップ1の後面においてその直上のカバー基板11の後端面を通って上面に引き出され、その下段(a2)の駆動電極162と電気的に接続される第1の配線172は、ヘッドチップ1の前面においてその上段(a1)の各駆動壁141の前端面を通って上面に引き出されている。また、下側基板4側に位置する2段(a3、a4)の駆動電極163と164のうち、最も下段(a4)の駆動電極164と電気的に接続される第1の配線174は、ヘッドチップ1の後面においてその直下のカバー基板11の後端面を通って下面に引き出され、その上段(a3)の駆動電極163と電気的に接続される第1の配線173は、ヘッドチップ1の前面においてその下段(a4)の各駆動壁144の前端面を通って下面に引き出されている。
【0033】
また、反対に、第1の配線172、173がヘッドチップ1の後面を通り、第2の配線171、174がヘッドチップ1の前面を通るようにしてもよい。
【0034】
なお、ヘッドチップ1の前面及び後面を通って上面及び下面にまで引き出された各第1の配線171〜174は、図1に示すように、上面及び下面の各面において互いに接することのないように離間している。
【0035】
ヘッドチップ1の上面及び下面にそれぞれ固着される上側基板3及び下側基板4は、ヘッドチップ1の幅(チャネル部15の並設方向の長さ)とほぼ同幅で、且つヘッドチップ1の長さ(ヘッドチップ1の前面から後面に亘る長さ)よりも十分に長尺な基板からなり、その表面には、ヘッドチップ1の上面及び下面にまで引き出された各第1の配線171〜174に対応して同ピッチで、それぞれ第2の配線31、32、41、42が平行に形成されている。
【0036】
すなわち、上側基板3において、第1の配線171と電気的に接続される第2の配線31は、ヘッドチップ1との固着面側である上側基板3の下面(内面)に、各第1の配線171に対応して同数、同ピッチで、該上側基板3の後方に延び、後端にまで形成されており、第1の配線172と電気的に接続される第2の配線32は、同じく上側基板3の下面(内面)に各第1の配線171に対応して同数、同ピッチで形成され、それが上側基板3の前端面を通って上面に引き出され、ヘッドチップ1との固着面の反対面側である上側基板3の上面(外面)の後方に延び、後端にまで形成されている。
【0037】
更に、下側基板4において、第1の配線173と電気的に接続される第2の配線41は、ヘッドチップ1との固着面側である下側基板4の上面(内面)に、各第1の配線173に対応して同数、同ピッチで形成され、それが下側基板4の前端面を通ってヘッドチップ1との固着面の反対面側である下面(外面)に引き出され、該下側基板4の下面(外面)の後方に延び、後端にまで形成されており、第1の配線174と電気的に接続される第2の配線42は、同じく下側基板4の上面(内面)に各第1の配線174に対応して同数、同ピッチで、該下側基板4の後方に延び、後端にまで形成されている。
【0038】
これら各上側基板3及び下側基板4は、その前端面がヘッドチップ1の前面と面一となるように、且つ、各第2の配線31、32、41、42をヘッドチップ1の各第1の配線171〜174と対向させ、第1の配線171〜174とそれに対応する第2の配線31、32、41、42とが電気的に接続するようにヘッドチップ1の上面及び下面に接着剤や異方性導電フィルム等を用いて固着されている。
【0039】
これによりヘッドチップ1は、該ヘッドチップ1の後方側に張り出した上側基板3及び下側基板4によって上下から挟み付けられた状態とされ、これら上側基板3及び下側基板4によって、各駆動電極161〜164と電気的に接続される配線が、ヘッドチップ1からその後方側まで引き出されている。
【0040】
ノズルプレート2は、上側基板3及び下側基板4がそれぞれ固着されたヘッドチップ1の前面側に固着されている。ノズルプレート2には、各チャネル部15に対応するノズル孔21が開設されている。
【0041】
インク供給室形成部材5は、上側基板3と下側基板4との間においてヘッドチップ1の後面に設けられ、該ヘッドチップ1の後面側において各チャネル部15にインクを供給するためのインク供給室を構成している。ここでは、インク供給室形成部材5は、ポリイミド、ポリカーボネート等のエンジニアリングプラスチックと呼ばれる高機能樹脂またはセラミック材料により、上側基板3と下側基板4との間に亘って前記ヘッドチップ1の後面を包囲するように設けられた平面視略コ字型を呈する囲い壁部(側壁5a、5b及び後壁5c)によって形成されている。これによりヘッドチップ1の後面側には、上下が上側基板3と下側基板4とによって覆われると共に側面がこのインク供給室形成部材5を構成する囲い壁部の側壁5a、5b及び後壁5cによって閉鎖された空間が形成され、この空間によって各チャネル部15にインクを供給するためのインク供給室51が構成される。
【0042】
このように上側基板3と下側基板4との間に亘ってヘッドチップ1の後面を包囲するように設けられた側壁5a、5b及び後壁5cからなる壁部によってインク供給室51が構成されることで、インク供給室形成部材5とヘッドチップ1との固着部位は、側壁5a、5bの前端面と固着されるヘッドチップ1の両側端部との極く一部の領域のみで済む利点がある。
【0043】
すなわち、従来一般に、インク供給室を構成するためのインク供給室形成部材(インクマニホールド)は、一面が開口する箱型状の部材を、該開口がヘッドチップの後面においてチャネル部の周囲を囲む全域に対して固着されるようになっているため、その固着面となる上下のカバー基板を含む全域に糊代を確保する必要がある。従って、この糊代の確保のために、カバー基板を余計に大きく形成しなくてはならず、ヘッドチップを無駄に大きくする必要がある。しかも、チャネル部にかからないようカバー基板の厚みに相当する極めて微小なスペースにも接着剤を塗布する必要があるため、塗布作業も面倒である上に、接着剤がチャネル部にはみ出すおそれすらもある。
【0044】
しかし、本実施形態に示すように、上側基板3と下側基板4との間に亘って壁部(側壁5a、5b及び後壁5c)を設けることによってインク供給室51を形成することで、チャネル部15の周囲のカバー基板11の全域にまで接着剤を塗布する必要がなく、このため、インク供給室51を形成するためにヘッドチップ1を無駄に大きく形成する必要も、微小スペースへの接着剤の塗布作業もほとんど不要となり、生産性の向上を図ることができるようになり、本発明において好ましい態様である。
【0045】
なお、52はインク供給室51内にインクを流入させるための流入口であり、これによりインク供給室51はインクマニホールドとして機能する。このインク供給室51は、図示しないが、ゴミの流入を防ぐためにフィルターを内蔵している。
【0046】
本実施形態に示すインク供給室形成部材5は、その後壁5cが上側基板3及び下側基板4よりも後方にはみ出しており、はみ出し部53が形成された好ましい態様を示している。インク供給室形成部材5の後方側には、上記上側基板3及び下側基板4との固着面と同一面が、該上側基板3及び下側基板4からはみ出して上方及び下方に一部露出している。
【0047】
このインク供給室形成部材5には、一端が上記各第2の配線31、32、41、42のうち、上側基板3の下面及び下側基板4の上面、即ち上側基板3と下側基板4の各内面においてそれぞれ後端まで延びて形成された第2の配線31、42と電気的に接続されると共に、他端が該インク供給室形成部材5において外部に露出する面にまで引き出された第3の配線541、542が形成されている。ここでは、一方の第3の配線541は、インク供給室形成部材5の上面において、第2の配線31と同数且つ同ピッチで、平行に形成され、該インク供給室形成部材5のはみ出し部53の上面まで引き出されている。また、他方の第3の配線542は、インク供給室形成部材5の下面において、第2の配線42と同数且つ同ピッチで、平行に形成され、該インク供給室形成部材5のはみ出し部53の下面まで引き出されている。このような第3の配線541、542は、インク供給室形成部材5にパターニングを行い、無電解めっき法等を用いて金属を析出させることにより形成することができる。
【0048】
これにより、ヘッドチップ1の各段の各駆動電極161〜164と電気的に接続される配線は、上側基板3の上面、下側基板4の下面、インク供給室形成部材5のはみ出し部53の上面及び下面の各面においてヘッド表面に露出するため、ヘッドチップ1の上下方向の中程に位置する2段目、3段目の駆動電極であっても、インクジェットヘッドAの外部において駆動回路と電気的に接続することが容易に可能となる。
【0049】
すなわち、このインクジェットヘッドAには、ヘッドチップ1の各段a1〜a4に対応して、各々駆動回路と電気的に接続している4枚の配線基板61〜64が接合される。配線基板61は、上側基板3の上面において、その下面に形成された配線611と上側基板3の上面に引き出された第2の配線32とが電気的に接続するように異方性導電フィルムにより接合され、インクジェットヘッドAの後方に延びている。配線基板62は、インク供給室形成部材5のはみ出し部53の上面において、その下面に形成された配線621とインク供給室形成部材5のはみ出し部53の上面に引き出された第3の配線541とが電気的に接続するように異方性導電フィルムにより接合され、インクジェットヘッドAの後方に延びている。配線基板63は、下側基板4の下面において、その上面に形成された配線631と下側基板4の下面に引き出された第2の配線41とが電気的に接続するように異方性導電フィルムにより接合され、インクジェットヘッドAの後方に延びている。配線基板64は、インク供給室形成部材5のはみ出し部53の下面において、その上面に形成された配線641とインク供給室形成部材5のはみ出し部53の下面に引き出された第3の配線542とが電気的に接続するように異方性導電フィルムにより接合され、インクジェットヘッドAの後方に延びている。
【0050】
このように配線基板61、63は上側基板3と下側基板4の各外面を利用して固着され、配線基板62、64は、インク供給室形成部材5のはみ出し部の上面及び下面を利用して固着されるため、全ての配線基板61〜64の引き出し方向を後方に揃えることができると共に、これら配線基板61〜64との電気的接続により、インクジェットヘッドAは駆動回路と電気的に接続され、各駆動電極161〜164への電圧印加が可能とされる。
【0051】
駆動回路との電気的接続を行うための配線基板61〜64はフレキシブル配線基板(FPC)であることが好ましい。また、各配線基板61〜64には、図示しないが、駆動ICが実装されていると、接続端子数の削減化を図れるために好ましい。
【0052】
ヘッドチップ1における駆動壁14以外の部材(本実施形態ではカバー基板11)、上側基板3及び下側基板4のうちの少なくとも一つは、窒化アルミを成分に含むセラミックス、圧電材料及び液晶ポリマーのうちから選ばれるいずれかの材料からなることが好ましい。これにより放熱特性が優れ、また、温度変化に対して安定なインクジェットヘッドを得ることができる効果がある。
【0053】
また、上記ヘッドチップ1における駆動壁14以外の部材(本実施形態ではカバー基板11)、上側基板3及び下側基板4のうちの少なくとも一つの熱膨張係数が、駆動壁14を構成する圧電素子12の熱膨張係数の±2×10-6/℃であることが更に好ましい。熱膨張係数をこの範囲とすることで、各部材間に熱膨張係数の差による剥離等が起こらない。
【0054】
更に、インク供給室51には第1の配線17及び第2の配線31、42の一部が臨むため、これらは各チャネル部15内の駆動電極16同様、インクと直に接触する。従って、インクとして水系インクを使用可能とするため、各チャネル部15内の駆動電極16、第1の配線17及び第2の配線31、42の表面に電極保護膜を形成することが好ましい。電極保護膜としては、柔軟性を有すると共に剥離しにくく、駆動壁14のせん断変形に追従し易く、また、駆動電極16の耐久性をより向上させることができることから、パリレン膜等の有機絶縁膜が好ましい。
【0055】
ここで、ヘッドチップ1の製造方法の一例について説明する。なお、以下に記載する数値はあくまで一例であり、本発明は以下の数値に限定されるものではない。
【0056】
まず、図4に示すように、分極方向(矢印で示す)を互いに反対方向に向けた各厚さ0.1mmの2枚の圧電材料基板(PZT)12a、12bを積層した圧電素子12を、厚さ0.6mmのセラミック基板からなるカバー基板11(大きさ50mm角)に貼り付けた積層体を準備する。なお、前述したように、カバー基板11と圧電材料基板12bは同一であってもよく、この場合は分極方向を異ならせた2枚の圧電材料基板により積層体が構成される。
【0057】
次に、図5に示すように、この積層体の上下両面にスピンコート法によりポジレジスト(光が照射された部分が現像で溶解される)100、101をコーティングし、その後、図6に示すように、上記圧電素子12の側から0.08mm厚の円盤状の砥石(ダイシングブレード)を用いて0.141mmピッチで互いに平行な溝150、150・・・を研削加工する。この溝150は、その長さ方向に亘って略均一な深さ(0.20mm)であり、長さ方向に亘って溝150の断面形状がほぼ変わらないストレートな溝である。加工する溝150の数は、例えば258本の加工を行うと、257本の駆動壁14と256本のチャネル部用の溝150及び両側に1本ずつの余りの溝150が形成される。
【0058】
その後、無電解めっき法により各溝150内に0.5〜5μmの膜厚となるように金属層を形成させる。例えば、金属層は下層がNi−Bめっき層、上層がAuめっき層となる積層構造とする。このとき、無電解めっき処理の前処理を適切に行うことにより、レジスト上にはめっきが析出しない、いわゆる選択めっきを行うようにする。
【0059】
次いで、リムーバーでレジストを溶解除去することにより、各溝150の内面にはめっき層が形成されて駆動電極16が形成され、各駆動壁14の上部及びカバー基板11の下面にはめっき層が形成されない図7の状態となる。
【0060】
以上のめっき法による駆動電極16の形成方法としてレジストを用いた選択めっき法を行う例を示したが、これに限定されるものではなく、他の方法として、レジストの代わりにドライフィルムレジストを用い、真空蒸着によりアルミニウムを全面に形成した後、溶剤でドライフィルムレジストと共に、ドライフィルムレジスト上のアルミニウムを除去するリフトオフ法でも同様な駆動電極16及び第1の配線17をパターン形成することができる。このとき、アルミニウムの上に連続して金を蒸着するとよい。
【0061】
このようにして駆動電極16を形成した基板を2個作成し、各チャネル部15が半ピッチずつずれるように積層し、上部に更にカバー基板11を固着して、駆動壁14及びチャネル部15が上下2段に積層された基板を形成した後、この2段の基板を2個積層することにより、図8に示すように上下4段(a1〜a4)の基板aを形成する。
【0062】
次に、かかるカバー基板aを、チャネル部15の長さ方向と略直交するカットラインC1、C2、C3・・・に沿って切断し、1枚の基板aから複数のヘッドチップ1、1、1・・・を作成する。
【0063】
作成されたヘッドチップ1の切断面(ヘッドチップ1の前面及び後面)の各面には、図9に示すように、各チャネル部15に対応する第1の配線形成用の開口201を有するドライフィルム200でそれぞれパターニングを行い、その後アルミニウムを蒸着することで、第1の配線の一部、すなわち第1の配線のうちのヘッドチップ1の前面部分及び後面部分をそれぞれ形成する。
【0064】
また、ヘッドチップ1の上面及び下面には、図10に示すように、各チャネル部15に対応する第1の配線形成用の開口301を有するドライフィルム300でそれぞれパターニングを行い、その後アルミニウムを蒸着することで、ヘッドチップ1の前面及び後面に形成された第1の配線の一部と電気的に接続する第1の配線の残部をそれぞれ形成する。なお、ヘッドチップ1の上面及び下面に当たるカバー基板11に、予め図10に示すパターンで配線を形成しておいてもよい。
【0065】
これらの配線形成方法としては、蒸着に限らず、スパッタリング法でもよい。
【0066】
その後、溶剤でドライフィルムとその上に形成されたアルミニウムを除去すると、各駆動電極161〜164から各第1の配線171〜174がヘッドチップ1の前面及び後面を介して上面及び下面に引き出された図3の状態となる。
【0067】
以上のインクジェットヘッドAは、ヘッドチップ1がa1〜a4の4段構成のものを例示したが、ヘッドチップ1は、駆動壁14とチャネル部15とが並設された段が上下方向に複数段に形成されていればよく、4段に限定されず、2段以上であればよい。但し、ヘッドチップの段数を5段以上とすると、各第1の配線間のピッチが狭くなり、また、配線基板との接合も困難となるため、ヘッドチップの段数は2段、3段又は4段とすることが好ましく、インクジェットヘッドの高密度化と作業効率とを考慮すると、4段構成とすることが最も好ましい。
【0068】
【発明の効果】
本発明によれば、各チャネル部内の駆動電極と駆動回路からの配線との電気的接続を簡単に行うことのできる、生産性の高い高密度のインクジェットヘッドを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係るインクジェットヘッドの分解斜視図
【図2】図1の(ii)-(ii)線に沿うインクジェットヘッドの縦断面図
【図3】(a)はヘッドチップの正面図、(b)はヘッドチップの背面図
【図4】インクジェットヘッドの製造方法の一工程を示す図
【図5】インクジェットヘッドの製造方法の一工程を示す図
【図6】インクジェットヘッドの製造方法の一工程を示す図
【図7】インクジェットヘッドの製造方法の一工程を示す図
【図8】インクジェットヘッドの製造方法の一工程を示す図
【図9】インクジェットヘッドの製造方法の一工程を示す図
【図10】インクジェットヘッドの製造方法の一工程を示す図
【符号の説明】
A:インクジェットヘッド
1:ヘッドチップ
11:カバー基板
12:圧電素子
14(141〜144):駆動壁
15(151〜154):チャネル部
16:駆動電極
171〜174:第1の配線
2:ノズルプレート
21:ノズル孔
3:上側基板
31、32:第2の配線
4:下側基板
41、42:第2の配線
5:インク供給室形成部材
51:インク供給室
52:流入口
53:はみ出し部
54:第3の配線
61〜64:配線基板

Claims (5)

  1. 圧電素子からなる駆動壁とチャネル部とが交互に並設されると共に前面及び後面にそれぞれチャネル部の出口と入口とが対向状に配置され、且つ前記駆動壁と前記チャネル部とが上下方向に複数段に形成されてなるヘッドチップの上面及び下面に、前記チャネル部の長さよりも長尺に形成された上側基板及び下側基板がそれぞれ固着されて前記チャネル部の後方側に延びており、
    前記両基板の間に亘って各チャネル部にインクを供給するインク供給室を形成するための囲い壁部によって形成されたインク供給室形成部材が、前記ヘッドチップの後面を包囲するように設けられてなり、
    前記ヘッドチップの外面には、各チャネル部の駆動電極と電気的に接続される第1の配線がそれぞれ引き出されており、
    前記各第1の配線のうち、前記ヘッドチップの最も外側に位置する段の各チャネル部とこの段に隣り合う段の各チャネル部との2段の各チャネル部の駆動電極と電気的に接続される第1の配線は、各段毎にヘッドチップの前面と後面とに振り分けられ、該前面及び後面を介してそれぞれ上面又は下面のいずれか一方の面まで引き出されており、
    前記各第1の配線が引き出された前記ヘッドチップの上面又は下面に固着される前記上側基板又は前記下側基板には、前記各第1の配線の各々と電気的に接続される第2の配線がそれぞれ形成されており、
    前記各第2の配線のうち、一端が前記各第1の配線のうちの前記ヘッドチップの前面又は後面のいずれか一方の面を介して引き出された方と電気的に接続される第2の配線の他端は、前記ヘッドチップとの固着面から当該第2の配線が形成された前記上側基板又は前記下側基板の外面に引き出されていると共に、前記各第2の配線のうち、一端が前記各第1の配線のうちの前記ヘッドチップの前面又は後面のいずれか他方の面を介して引き出された方と電気的に接続される第2の配線の他端は、前記ヘッドチップとの固着面側において後端まで延びており、
    前記インク供給室形成部材には、一端が前記ヘッドチップとの固着面側において後端まで延びている第2の配線の他端と電気的に接続される第3の配線が形成されてヘッド表面に露出していると共に、前記第2の配線が外面と前記ヘッドチップとの固着面側との両面に形成された前記上側基板又は前記下側基板よりも後方にはみ出したはみ出し部を有しており、前記第3の配線の他端は、前記はみ出し部においてヘッド表面に露出していることを特徴とするインクジェットヘッド。
  2. 前記インク供給室形成部材は、前記上側基板と前記下側基板との間に亘って前記ヘッドチップの後面を包囲するように設けられた壁部により形成され、前記両基板及び前記壁部で囲まれる空間によって、前記インク供給室を形成してなることを特徴とする請求項記載のインクジェットヘッド。
  3. 前記駆動電極、前記インク供給室に臨む第1の配線及び前記第2の配線の表面に電極保護膜が形成されていることを特徴とする請求項1又は2記載のインクジェットヘッド。
  4. 前記ヘッドチップにおける駆動壁以外の部材、前記上側基板及び前記下側基板のうちの少なくとも一つが、窒化アルミを成分に含むセラミックス、圧電材料及び液晶ポリマーのうちから選ばれるいずれかの材料からなることを特徴とする請求項1、2又は3記載のインクジェットヘッド。
  5. 前記ヘッドチップにおける駆動壁以外の部材、前記上側基板及び前記下側基板のうちの少なくとも一つの熱膨張係数が、前記圧電素子の熱膨張係数の±2×10−6/℃であることを特徴とする請求項1〜のいずれかに記載のインクジェットヘッド。
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