JP4512876B2 - 金属微粒子、金属微粒子を製造する方法及び金属微粒子を含有する組成物等 - Google Patents

金属微粒子、金属微粒子を製造する方法及び金属微粒子を含有する組成物等 Download PDF

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Description

本発明は、可視光から近赤外光の波長域において任意の特定波長に対して選択的な光吸収機能を有し、しかもその吸光度が高く、かつ吸光スペクトルの幅が狭く、シャープな吸光特性を有する金属微粒子、特に金微粒子とこれを含有する組成物等に関する。
金属の微粒子に光を照射するとプラズモン吸収と呼ばれる共鳴吸収現象が生じる。この吸収現象は金属の種類と形状によって吸収波長が異なる。例えば、球状の金微粒子が水に分散した金コロイドは530nm付近に吸収域を持ち、また微粒子の形状を短軸10nm程度のロッド状にすると、ロッドの短軸に起因する530nm付近の吸収の他に、ロッドの長軸に起因する長波長側の吸収を有することが知られている(非特許文献1)。
この貴金属微粒子を塗料や樹脂組成物の着色材として用いることが知られており、この着色材を含む樹脂組成物を光学フィルター等の光学材料として用いることが提案されている(特許文献1)。また、光学フィルター材料としては、特定の化学構造を有する染料を含有したカラーフィルター(特許文献2)や、特定の染料と金属錯体とを併せて含有する塗膜を有する光学フィルター(特許文献3)が知られている。前者のカラーフィルターについては、透明基板上に赤、緑、青の3色のスライプ状パターンを有するものが提示されており、後者の光学フィルターについては、750nm〜1100nmの波長域において光透過率が0.01〜30%のものが例示されている。
一方、金属微粒子のプラズモン励起を利用して金属細線パターンを形成する方法も知られている(特許文献4)。これは金属微粒子を平滑な半導体表面や固体金属表面に担持させ、金属微粒子がプラズモン励起に対応して線状に伸長することを利用した方法である。
S−S.Chang etal,Langmuir,1999,15,P701−709 特開平11−80647号公報 特開2001−108815号公報 特開2002−22935号公報 特開2001−64794号公報
以上のように、貴金属微粒子を塗料や樹脂組成物の着色材として用いることが知られているが、この貴金属微粒子は球状であり、例えば、金の球状微粒子の場合には得られるプラズモン発色は青、青紫、赤紫等の可視光線に限定されるため、球状金微粒子のプラズモン吸収を利用した組成物やこの組成物を塗布しあるいは練り込んだ基材は、青、青紫、赤紫等の色調に限られていた。
また、染料を用いたカラーフィルター等は染料は顔料や金属微粒子と比較して耐熱性、耐光性、および耐薬品性に劣り、長時間経過すると退色や吸収機能の低減を生じるものが多く、信頼性が低いと云う問題があった。一方、固体表面の金属微粒子を利用する方法は、この金属微粒子を固体表面に担持した状態で成長させるものであるため、各種溶媒、バインダーに分散させることができず、塗料化することができない。また、金属微粒子のプラズモン吸収は合成過程における金属微粒子の成長にのみ利用されており、金属微粒子の長軸に起因する特定波長の選択的な光吸収機能を利用したものではない。
本発明は、従来のカラーフィルターや金属微粒子の細線化方法などにおける上記問題を解決したものであり、金属微粒子を利用し、かつ金属微粒子をアスペクト比が1.1より大きいロッド状の微粒子(金属ナノロッドと云う)にすることによって、従来の球状金属微粒子では得られない色調を発揮できるようにし、しかもその波長吸収特性および耐熱性等に優れた着色材や光フィルター材料として好適な金属微粒子とその含有組成物および用途を提供する。
本発明によれば、以下の構成からなる金属微粒子とその含有組成物等が提供される。
〔1〕塩化金酸水溶液にCTAB、アセトン、シクロヘキサン、およびシクロヘキサノンを加えた反応溶液に、還元剤を添加して塩化金酸を還元することによって生成させた金微粒子であって、アスペクト比1.1〜8.0、プラズモン吸収の最大吸収波長550nm〜1200nmであり、最大吸収波長のピーク位置における吸光度が1.53〜3.2(測定濃度1.6×10-4mol/L、溶媒:水)である金微粒子からなることを特徴とする金属微粒子。
〔2〕最大吸収波長のピーク位置における吸光度が1.53〜3.2(測定濃度1.6×10-4mol/L、溶媒:水)であって最大吸収波長の吸光スペクトルの半値幅が200nm以下である金微粒子からなる上記[1]に記載する金属微粒子。
〔3〕塩化金酸水溶液にCTAB、アセトン、シクロヘキサン、およびシクロヘキサノンを加えた反応溶液に、還元剤を添加して塩化金酸を還元することによって、アスペクト比1.1〜8.0、プラズモン吸収の最大吸収波長550nm〜1200nmであり、最大吸収波長のピーク位置における吸光度が1.53〜3.2(測定濃度1.6×10-4mol/L、溶媒:水)、および最大吸収波長の吸光スペクトルの半値幅が200nm以下の金微粒子からなる金属微粒子を製造する方法。
〔4〕上記[1]または上記[2]に記載する金属微粒子を含有する組成物。
〔5〕上記[1]または上記[2]に記載する金属微粒子を、窒素原子および/またはイオウ原子を含有する分散剤と共にバインダーに配合した組成物。
〔6〕上記[4]または上記[5]の組成物によって形成されたコーティング組成物、塗膜、透明被膜、またはフィルム。
〔7〕上記[1]または上記[2]に記載する金属微粒子を含む光学フィルター材料、配線材料、電極材料、触媒、着色剤、化粧品、近赤外線吸収材、偽造防止インク、電磁波シールド材、表面増強蛍光センサー、生体マーカー、ナノ導波路、記録材料、記録素子、偏光材料、ドラッグデリバリーシステム(DDS)用薬物保持体、バイオセンサー、DNAチップ、または検査薬。
〔具体的な説明〕
以下、本発明を実施形態に基づいて具体的に説明する。
本発明の金属微粒子は、塩化金酸水溶液にCTAB、アセトン、シクロヘキサン、およびシクロヘキサノンを加えた反応溶液に、還元剤を添加して塩化金酸を還元することによって生成させた金微粒子であって、アスペクト比1.1〜8.0、プラズモン吸収の最大吸収波長550nm〜1200nmであり、最大吸収波長のピーク位置における吸光度が1.53〜3.2(測定濃度1.6×10-4mol/L、溶媒:水)である金微粒子からなる金属微粒子であり、好ましくは、最大吸収波長のピーク位置における吸光度が1.53〜3.2(測定濃度1.6×10-4mol/L、溶媒:水)であって最大吸収波長の吸光スペクトルの半値幅が200nm以下である金微粒子からなる金属微粒子である。


本発明に係る上記金属微粒子の代表的なものは、粒子の大きさがナノサイズのロッド状金微粒子(金ナノロッドと云う)である。この金ナノロッドは長軸の長さに基づく選択的な波長吸収機能を有しており、この吸光度は短軸に基づく530nm付近の吸光度よりも大きく、550nm〜1200nmの波長域において最大波長吸収効果を有する。アスペクト比が1.1未満であると球状粒子に近くなり、550nm以上の長波長域における波長吸収機能を得るのが難しい。一方、アスペクト比が8.0より大きいと、最大吸収波長の吸光スペクトルの半値幅が200nmよりも大きくなりやすく、シャープな吸光特性を得るのが難しくなる。
一般に、吸光度Aは、光が透過する材料の吸光係数ε、この材料を入れる石英製測定セルの光路長L、材料濃度Cに基づいて、以下に示すLambert Beerの式〔1〕によって与えられる。この吸光係数εは光が通過する材料の特有の値であり、吸光係数εが大きいほど吸光度Aが大きく、ピーク値の高い吸光スペクトルが得られる。
A=εLC …〔1〕
本発明の金微粒子(金ナノロッド)は、測定試料溶液中の金微粒子濃度1.6×10-4mol/L(溶媒:水)、測定セルの光路長1cmにおいて、550nm〜1200nmの波長に対して、吸光係数が6000〜20000L/mol・cmであり、従って、最大吸収波長のピーク位置の吸光度は概ね0.96〜3.2であり、例えば、実施例1の金微粒子の吸光度は1.53である。


本発明の金ナノロッドにおいて、最大吸収波長の吸光スペクトルの半値幅は200nm以下である。具体的には、例えば、図1に示す本発明の金微粒子では、最大吸収波長のピーク位置は822nm、ピーク位置の吸光度は約1.53であり、吸光度の半値位置はおのおの短波長側が約760nmおよび長波長側が約910nm、従って、吸光スペクトルの半値幅は約150nmである。
上記金ナノロッドは、溶液中の塩化金酸を化学的に還元した後に、光照射を行う合成法において、化学的還元工程および光照射工程の条件を調整することによって得ることができる。例えば、合成溶液として用いる塩化金酸水溶液に、ヘキサデシルトリメチルアンモニウムブロミド(CTAB)を加え、その濃度を0.24〜0.8mol/Lに調整し、これにアセトン、シクロヘキサンを添加し、これにアスコルビン酸等の還元剤を加えて塩化金酸を還元する。この化学的還元の後に光照射を行って、金ナノロッドを成長させる。この場合、CTABと共にシクロヘキサノンを0.01〜1.0wt%添加することによって、最大吸収波長のピーク位置を長波長側に移行させることができる。また、光照射の時間や強度を調整し、また照射後に光を遮断した環境下で静置することなどによって、金微粒子のアスペクト比等を制御することができ、これにより本発明の金微粒子を得ることができる。
本発明の金ナノロッド等の金属微粒子は、これを分散剤、分散媒などと共にバインダー(樹脂)に配合した組成物として利用することができる。この分散剤としては、例えば、数平均分子量が数千以上であって、金ナノロッドに対して吸着性の高い窒素原子およびイオウ原子などの吸着部位を主鎖中に有し、かつ、水、アルコール、その他の非水系有機溶媒などの溶媒に対して親和性のある複数の側鎖を有する塩基性高分子型分散剤が挙げられる。具体的には、市販されているものとして、例えば、ソルスパース13940、ソルスパース24000SC、ソルスパース28000、ソルスパース32000(以上、アビシア社製品)、フローレンDOPA-15B、フローレンDOPA―17(以上、共栄社化学社製品)、アジスパーPB814、アジスパーPB711(以上、味の素ファインテクノ社製品)などが挙げられる。
塩化金酸を用いた上記製造方法によって合成された金ナノロッドのように、金ナノロッド表面にCTABなどが付着している場合には、上記分散剤を添加することによって金ナノロッド表面に吸着しているCTABが上記分散剤と置換するので、樹脂等に対する分散性を高めることができる。
バインダー(樹脂)としては、通常塗料用や成形用に利用されている可視光線から近赤外光領域の光に対して透過性を有する各種樹脂を特に制限無く使用できる。例えばアクリル樹脂、ポリエステル樹脂、アルキド樹脂、ウレタン樹脂、シリコーン樹脂、フッ素樹脂、エポキシ樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリビニルアルコール、等の各種有機樹脂や、ラジカル重合性のオリゴマーやモノマー(場合により硬化剤やラジカル重合開始剤と併用する)が代表的なものとして挙げられる。
本発明の金属微粒子含有組成物において、必要に応じて配合する溶媒としては、バインダーが溶解もしくは安定に分散するような溶媒を適宜選択すればよく、具体的には、水の他に、メタノール、エタノール、プロパノール、ヘキサノール、エチレングリコール等のアルコール類、キシレンやトルエン等の芳香族炭化水素、シクロヘキサン等の脂環式炭化水素、アセトンやメチルエチルケトン等のケトン類、酢酸エチルや酢酸ブチル等のエステル類、エチレングリコールモノブチルエーテル等のエーテル等、あるいはこれらの混合物が代表的なものとして挙げられるが、これらに限定されるものではない。
なお、本発明の金属微粒子含有組成物には色補正等の目的で染料や顔料を添加してもよい。例えば、金ナノロッド含有組成物において、金ナノロッドと波長吸収範囲がほぼ同一または異なる二種ないし三種以上の金ナノロッド、染料、顔料を組み合わせて用いることができる。
本発明の金属微粒子含有組成物は、例えば、金属微粒子を分散剤の存在下で分散媒に分散させ、この分散液をバインダー(樹脂)と混合することによって得ることができる。この金属微粒子をバインダー(樹脂)に配合した組成物は塗料などのコーティング材料として用いることができる。例えば、金ナノロッドを含む樹脂組成物を光学フィルターとして使用する場合には、このコーティング組成物の金ナノロッドの含有量は例えばバインダー(樹脂)100重量部に対して、0.01重量部〜90重量部が適当である。金ナノロッドの添加量が上記範囲より少ないと十分な所望の効果が得ることが難しくなる。一方、添加量が上記範囲よりも多いとコストの面で不利である。
本発明の金属ナノロッド含有組成物はコーティング組成物ないし塗料組成物、塗膜、フィルム、または板材など多様な形態で用いることができる。さらに、この金属ナノロッド含有組成物によって形成されたフィルター層を有する光学フィルターを得ることができる。具体的には、例えば、(イ)可視光線および近赤外光を吸収したい透明基材に直接に本発明の組成物を塗布もしくは印刷し、可視光線・近赤外光吸収フィルターとしての硬化塗膜を形成させる。(ロ)本発明の組成物をフィルム状や板状等に形成し、その組成物を可視光線・近赤外光吸収フィルターとして可視光線・近赤外光を吸収したい透明基材に積層もしくは包囲する。(ハ)本発明の組成物によって形成した上記塗膜やフィルムなどの形成物を透明なガラス製もしくはプラスチック製基材に積層させ、その積層体を可視光線・近赤外光吸収フィルターとして可視光線・近赤外光を吸収したい基材に積層もしくは包囲して用いる。なお、上記各使用形態において、光学フィルターの厚さは概ね0.01μm〜1mmが適当であり、コストや光透過性等を考慮すると0.05μm〜300μmが好ましい。
本発明の金属ナノロッド含有組成物は、この金属ナノロッドが分散した水分散液をその範囲に含む。この金属ナノロッド含有組成物の使用方法は限定されない。例えば、該金ナノロッド含有組成物は刷毛塗り、吹き付け、ロールコーティング、スピンコーティング、ディップコーティングなどの各種の塗布方法によって使用することができる。また、塗布のみならず、該金属ナノロッド含有組成物を鋳型に注入し成形する方法、射出成形する方法、金属ナノロッド含有組成物をバインダー(樹脂)に練りこみ成形する方法などによって使用することができる。なお、使用態様はこれらに限定されない。
また、基材が透明なガラスまたはプラスチックなどに本発明の金属ナノロッドを配合した組成物は透明基材として各種材料に利用することができる。例えば、金微粒子を樹脂に練り込んだ透明な高分子フィルムや、金微粒子が表面に分散した被覆層を有する透明基材は、波長800nm〜1200nmの近赤外線域の特定波長を吸収する光学フィルター材料として用いることができる。
さらに、本発明の金属ナノロッドないし金属ナノロッド含有組成物は、配線材料、電極材料、触媒、着色剤、化粧品、近赤外線吸収材、偽造防止インク、電磁波シールド材、表面増強蛍光センサー、生体マーカー、ナノ導波路、記録材料、記録素子、偏光材料、ドラッグデリバリーシステム(DDS)用薬物保持体、バイオセンサー、DNAチップ、または検査薬の材料として用いることができる。
具体的には、本発明の金属ナノロッドを溶液中に分散させものを偽造防止インクの材料などに用いることができる。この偽造防止インクは金属ナノロッドの特定波長吸収能、散乱光、または蛍光を検出方法として利用する。例えば金ナノロッドは600〜1500nmの波長域で特定の波長を吸収する性質を有するので、この範囲に検出波長を設定する。特定吸収波長を760〜1500nmの近赤外線領域に設定することによって、可視光領域で透明なインビジブルインキが得られ、これは近赤外線領域では識別可能であるので、偽造防止インクとして用いることができる。このインクは金属ナノロッドを使用することによって、インクを塗布した膜は耐候性、耐熱性、耐薬品性に優れる。また、金属ナノロッドの表面処理に用いる分散剤は使用する溶媒に相溶するものを選択すればよく、従って偽装防止インクの溶媒は適宜選択可能である。
また、本発明の金属ナノロッドは着色剤として化粧品に用いることができる。本発明の金属ナノロッドは油性材料に分散させたときに、肉眼で粒子として認識し難く、塗布したときに透明性の高い塗膜が得られる。また、この化粧品は本発明の金属ナノロッドを少量添加することによって着色カが強く、高い彩度が得られる。
さらに、金属ナノロッドを導電物質とする導電性ペーストを配線材料や電極材料に用いることができる。絶縁基材上にこの導電性ペーストを印刷などによって塗布し、乾燥(焼成)して形成した配線および電極は導電性および耐マイグレーション性に優れる。この導電性ペーストは、例えば、金属ナノロッド100重量部に対しバインダーを1〜20重量部含むものが用いられる。
金属ナノ粒子をガラス基板表面に高密度に固定することによって赤外線吸収や蛍光発光の現象が増幅されることが知られている。この現象を利用した分光法はそれぞれ表面増強赤外分光法(Surface Enhanced IR Spectroscopy:SEIRS)、表面増強蛍光分光法(Surface Enhanced Fluorecence Spectroscopy:SEFS)と呼ばれている。なかでもSEFSは簡便さに優れていると言われている。本発明の金属ナノロッドはこの表面増強赤外分光法や表面増強蛍光分光法に基づくセンサー材料として好適である。例えば、チオール末端を持つシラン処理剤(3-mercaptopropyltrimethylsilane等)で処理した金ナノロッドをガラス基板に高密度に固定したものは、金ナノロッドが550nm〜800nmの波長域において吸光度の小さい波長領域が存在することから、この領域に蛍光を発する蛍光物質(例えばローダミン系蛍光色素など)をマーカーとして用いるSEFS分光法センサーに適している。
さらに、本発明の金属ナノロッドは近赤外線に応答する生体マーカとして利用することができる。例えば750nm〜1100nmの近赤外線は有機物には殆ど吸収されないが、金ナノロッドはそのアスペクト比により750〜1100nmの波長域において特有の吸光特性を有することができる。従って、生体の特定部位が金ナノロッドで染色されると、近赤外線の照射によってその部位に近赤外線の吸収が生じるので、その位置を把握することができる。従って、これまでの方法では試料の懸濁や着色のために計測不能であった厚みのある生体材料についても、金ナノロッドで染色された任意の部分を観察することが可能になる。
具体的には、生体親和性の高い化合物、例えばポリエチレングリコール、リン脂質、糖鎖、抗体などによって被覆した本発明の金ナノロッドを用いて生体を染色する。ポリエチレングリコールやリン脂質で被覆した金ナノロッドは特定の臓器や組織に局在せずに均一に染色する目的に適している。特にポリエチレングリコールは生体の分解作用を受け難いうえに細胞透過性も高いため生体染色用被覆材として適している。一方、糖鎖や抗体は特定の臓器や組織に集積されるために特定の臓器や組織を染色する目的に適している。これらの材料によって被覆された金ナノロッドを用いることによって、従来は観察できなかった生体材料についても観察することが可能になる。
本発明の金属ナノロッドを一次元に密度高くかつ規則正しく配列すると、ナノ粒子近傍に生成する近接場光の相互作用によって粒子間の光の伝搬が可能になり、これにより一次元的な導波に適したナノ導波路を作成することができる。例えば、次のような方法でナノ導波路を作成することできる。まず原子間力顕微鏡(AFM)または走査トンネル顕微鏡(STM)をマニュピレーターとして用いて金属ナノロッドを一次元的に配列させる。次に、一次元的に配列させた金属ナノロッドの配列の末端に発光性ナノ粒子(酸化亜鉛、CdTeなど)を固定し、反対側の配列の末端に近接場顕微鏡の光ファイバーセンサーを位置させる。このような構造によってナノ導波路を作成することができる。本発明の金属ナノロッドはこのようなナノ導波路の材料として好適である。
本発明の金属微粒子(金属ナノロッド)は、アスペクト比が1.1〜8.0であり、ロッドの長軸に起因して、400nm〜1200nmの可視光から近赤外光の波長域において選択的な波長吸収機能を有し、従って各種の色調を発揮させることができる。また、本発明の金属微粒子は最大吸収波長のピーク位置における吸光係数が6000〜20000L/mol・cm(測定濃度1.6×10-4mol/L、溶媒:水)であって優れた吸光度を有し、さらには最大吸収波長の吸光スペクトルの半値幅が200nm以下であって吸光スペクトルの幅が狭く、従って、シャープな吸光特性を有するので、周囲の波長に対する影響が小さく、彩度が高い色調を得ることができる。また、本発明の金属微粒子は金属質であるので、耐熱性、耐光性、および耐薬品性に優れるので、これを含有する組成物は長期間の使用においても退色や吸収機能の低減を生じることがなく、信頼性が高い。
以下、本発明を実施例によって具体的に示す。なお、以下の実施例は主に金ナノロッドに関し、800nm〜900nmの波長域における光吸収機能を示しているが、金ナノロッドのアスペクト比を変更することによって550nm〜1200nmまでの波長域についても同様の光吸収機能を有することができる。分光特性は日本分光株式会社製品のV−570で測定を行った。また、他の金属においても同様の結果を得ることができる。
[金微粒子の製造方法]
0.50mol/lのCTAB(Hexadecyltrimethylammonium Bromide)水溶液50mlに24mmol/lの塩化金酸水溶液5ml、アセトン1ml、シクロヘキサン1ml、シクロヘキサノン1ml、および10mmol/lの硝酸銀水溶液5mlを加えて反応溶液とした。この反応溶液に40mmol/lのアスコルビン酸(AS)水溶液を5ml添加して化学還元を行った。AS水溶液を添加した直後に反応溶液はオレンジ色から透明な溶液に変化した。透明になった溶液を容量100mlのビーカーに入れ、UV照射器(高圧水銀ランプ)の紫外線をビーカー上部より合成溶液に直接5分間照射した。光照射後、そのまま静置して1時間後に保存容器に移し、その溶液を水で10倍(体積比、金微粒子濃度1.6×10-4mol/l)に希釈し、吸光スペクトル測定試料溶液とした。この溶液の吸光スペクトルを図1に示した。
図示するように、この金微粒子(金ナノロッド)は、最大吸収波長のピーク位置は822nm、吸光度の半値位置はおのおの短波長側が約760nmおよび長波長側が約910nmであり、従って吸光スペクトルの半値幅は約150nmである。また、金微粒子濃度1.6×10-4mol/L、測定セルの長さ1cmにおいて、最大吸収波長のピーク位置の吸光度は1.53であり、従って、Lambert Beerの式〔1〕により、吸光係数は約9563L/mol・cmである。
[分散剤で表面処理された金微粒子]
分散剤(アビシア社製品:ソルスパース24000SC)0.1gをトルエン10gで溶解し、この分散剤トルエン溶液中に、実施例1で合成した金ナノロッド(短軸の平均長さ10nm、長軸の平均長さ42nm、アスペクト比4.2)水分散液50gを入れ、撹拌機(回転数300rpm)で10分間攪拌した。この溶液中に、エタノールを30g添加し、24時間静置した。エタノールを添加することによってCTABの溶解度が高くなり、金ナノロッド表面に吸着していたCTABが脱離し、分散剤の窒素部位が金ナノロッドに吸着してCTABと置き換わることによって表面処理が行われる。
静置した混合液は無色透明の水相と鮮やかな赤色のトルエン相に分離した。その後、有機溶媒層のみを抽出し、さらにエバポレーターを用いて余剰のトルエンを除去して、トルエンの金ナノロッド濃縮液(金微粒子含有率10wt%、固形分40wt%)を得た。この濃縮液をトルエンで10000倍(体積比)に希釈したところ凝集を起こさず、金ナノロッドは安定に分散していた。この分散液の吸光スペクトルを図2に示した。
図2に示すように、上記分散剤の表面処理によって、吸収スペクトルは変化し、最大吸収波長のピーク位置は822nmから864nmに移動している。これは金ナノロッドの表面物質の屈折率変化によるものである。
[金微粒子含有組成物およびフィルム]
実施例2の金ナノロッド濃縮液5gをラジカル重合性のウレタン系オリゴマーとラジカル重合開始剤の混合物20gに混合して塗料化した。この塗料は光を遮蔽した状態で室温下に3ヶ月以上放置しても、変色や沈降を生成せず安定であった。
この塗料をガラス板に塗布し(金微粒子含有率1wt%、乾燥膜厚10μm)、透過スペクトルを測定した。この結果を図3に示した。図示するように、図2の最大吸収波長のピーク位置に相当する波長付近(870nm)の透過率が最も低く、金ナノロッドにより特定波長が吸収されていることが確認された。
実施例1の金微粒子(金ナノロッド)水分散液の吸光スペクトル図 実施例2の金ナノロッド濃縮液の吸光スペクトル図 実施例3の金ナノロッド含有塗料による塗膜の透過スペクトル図

Claims (7)

  1. 塩化金酸水溶液にCTAB、アセトン、シクロヘキサン、およびシクロヘキサノンを加えた反応溶液に、還元剤を添加して塩化金酸を還元することによって生成させた金微粒子であって、アスペクト比1.1〜8.0、プラズモン吸収の最大吸収波長550nm〜1200nmであり、最大吸収波長のピーク位置における吸光度が1.53〜3.2(測定濃度1.6×10 -4 mol/L、溶媒:水)である金微粒子からなることを特徴とする金属微粒子。
  2. 最大吸収波長のピーク位置における吸光度が1.53〜3.2(測定濃度1.6×10 -4 mol/L、溶媒:水)であって最大吸収波長の吸光スペクトルの半値幅が200nm以下である金微粒子からなる請求項1に記載する金属微粒子。
  3. 塩化金酸水溶液にCTAB、アセトン、シクロヘキサン、およびシクロヘキサノンを加えた反応溶液に、還元剤を添加して塩化金酸を還元することによって、アスペクト比1.1〜8.0、プラズモン吸収の最大吸収波長550nm〜1200nmであり、最大吸収波長のピーク位置における吸光度が1.53〜3.2(測定濃度1.6×10 -4 mol/L、溶媒:水)、および最大吸収波長の吸光スペクトルの半値幅が200nm以下の金微粒子からなる金属微粒子を製造する方法。
  4. 請求項1または請求項2に記載する金属微粒子を含有する組成物。
  5. 請求項1または請求項2に記載する金属微粒子を、窒素原子および/またはイオウ原子を含有する分散剤と共にバインダーに配合した組成物。
  6. 請求項4または請求項5の組成物によって形成されたコーティング組成物、塗膜、透明被膜、またはフィルム。
  7. 請求項1または請求項2に記載する金属微粒子を含む光学フィルター材料、配線材料、電極材料、触媒、着色剤、化粧品、近赤外線吸収材、偽造防止インク、電磁波シールド材、表面増強蛍光センサー、生体マーカー、ナノ導波路、記録材料、記録素子、偏光材料、ドラッグデリバリーシステム(DDS)用薬物保持体、バイオセンサー、DNAチップ、または検査薬。
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