JP4536655B2 - 細胞導入剤、細胞導入方法、細胞導入剤の製造方法、細胞導入剤製造用組成物、および、細胞導入剤製造用キット - Google Patents

細胞導入剤、細胞導入方法、細胞導入剤の製造方法、細胞導入剤製造用組成物、および、細胞導入剤製造用キット Download PDF

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Description

本発明は、ポリヌクレオチド等の目的の物質を細胞内に導入するための細胞導入剤、細胞導入方法、細胞導入剤の製造方法、細胞導入剤製造用組成物、および、細胞導入剤製造用キットに関する。
哺乳動物細胞へのDNAの導入は遺伝子の構造、機能および制御に関する極めて有効な研究手法となっており、遺伝子治療やDNAワクチンなどの分野で期待されている。従来の遺伝子導入法としては、レトロウイルス、アデノウイルスなどの組換え体を遺伝子治療用のベクターとして用いるウイルス法が一般的である。
しかし、ウイルス自体を用いることにはいくつかの問題が指摘されている。すなわち、予期しない変異ウイルスの出現による毒性の危険性や、ウイルスの免疫原性によって生体内で活性が中和される可能性があること、さらに使用可能な遺伝子サイズに制限があり、比較的小サイズのものしか使用できないこと、製造や輸送が困難であること、高価格であることなどが指摘されている。
このため、基礎研究や遭伝子治療への応用のために、ウイルスベクターに代わるウイルスを用いない遺伝子導入(トランスフェクション)技術の開発が現在盛んになされている。非ウイルス性遺伝子導入方法としては、DNAとカルシウムの共沈物を用いるリン酸カルシウム法、リポソーム等のカチオン性脂質とアニオン性のDNAとの複合体粒子を形成するリポフェクション法等が様々な方法が知られている。
これらの非ウイルス性遺伝子導入方法は、基礎研究や遺伝子治療への応用のために、技術開発が現在盛んになされている。しかしながら、依然として、非ウイルス性遺伝子導入技術はウイルス法に比べて遺伝子導入や発現の効率が著しく劣っている。
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、目的の物質(薬剤、タンパク質、およびポリヌクレオチド等)を細胞内に導入するための細胞導入剤であって、細胞への導入効率が高く、優れた再現性及び生体適合性を有する細胞導入剤、細胞導入方法、細胞導入剤の製造方法、細胞導入剤製造用組成物、および、細胞導入剤製造用キットを提供することを目的とする。
本発明者らは、上記課題を解決するため鋭意研究の結果、リン酸カルシウム系材料とDNAの複合体粒子において、pH6.0に変化させてから所定時間内にpH8.0において存在していた複合体粒子の少なくとも50%が溶解するように複合体粒子のpHに対する溶解速度を調節することにより、細胞内でのDNAの放出時間をコントロールすることができ、効率的な細胞内導入を実現できることを見いだし、この知見に基づいて本発明を完成させるに至った。
複合体粒子は、エンドサイトーシスにより細胞内に取り込まれ、エンドソームから細胞質へ放出される。エンドソーム内のpHは酸性(約pH5)であるので、エンドサイトーシスにより取り込まれた複合体粒子は、pH7前後からpH5といった外部pHの変化にさらされる。本発明は、複合体粒子のpHに対する溶解速度を所定の範囲に調節することにより、複合体粒子が細胞内に取り込まれた後速やかに溶解してDNAを放出するので、極めて高い細胞導入効率を実現するものである。
従来、リン酸カルシウム法におけるトランスフェクション効率については、複合体粒子がいかに効率よく細胞内に取り込まれるか、また、複合体粒子が細胞内に取り込まれた後、いかに効率よくエンドソームから脱出できるかという観点から検討がなされてきた。しかし、細胞内に取り込まれた後、複合体粒子が溶解してDNAを細胞内に放出する際のメカニズムについて考察した例は報告されていない。すなわち、本発明は、細胞内に取り込まれた後、エンドソーム内の酸性pHを利用して複合体粒子を速やかに溶解させるべく、複合体粒子のpHに対する溶解速度をコントロールしたことを特徴とする。
すなわち、本発明は以下のとおりである。
[1] 目的の物質を細胞内に導入するための細胞導入剤であって、
少なくとも前記目的の物質およびリン酸カルシウム系材料から構成される複合体粒子を含有し、
pH8.0からpH6.0に変化させた場合において、pH6.0に変化させてから所定時間内に、pH8.0において存在していた前記複合体粒子の少なくとも50%が溶解する特性を有することを特徴とする細胞導入剤。
[2] 前記複合体粒子の平均粒径が、500nm以下であることを特徴とする[1]に記載の細胞導入剤。
[3] 前記リン酸カルシウム系材料が、炭酸アパタイトであることを特徴とする[1]または[2]に記載の細胞導入剤。
[4] 前記目的の物質が、マイナスに帯電している物質である[1]〜[3]のいずれか一項に記載の細胞導入剤。
[5] 前記目的の物質が、薬剤、タンパク質、およびポリヌクレオチドからなる群より選ばれる少なくとも一種の物質であることを特徴とする[1]〜[4]のいずれか一項に記載の細胞導入剤。
[6] [1]〜[5]のいずれか一項に記載の細胞導入剤を用いて、目的の物質を細胞内に導入することを特徴とする細胞導入方法。
[7] 目的の物質を細胞内に導入するために用いられ前記目的の物質および炭酸アパタイトから構成される複合体粒子を含有する細胞導入剤の製造方法であって、
少なくともカルシウムイオン、リン酸イオン、炭酸水素イオン、および前記目的の物質を含有する組成物を調製することにより、前記複合体粒子を形成する工程を含むことを特徴とする細胞導入剤の製造方法。
[8] 前記カルシウムイオンおよび前記目的の物質を含有する第1の溶液を調製する工程、
前記リン酸イオンおよび前記炭酸水素イオンを含有する第2の溶液を調製する工程、および、
前記第1の溶液と前記第2の溶液とを混合して前記組成物を調製する工程を含むことを特徴とする[7]に記載の細胞導入剤の製造方法。
[9] 前記組成物のカルシウムイオン濃度が、0.1mM以上であることを特徴とする[7]または[8]に記載の細胞導入剤の製造方法。
[10] 前記組成物のリン酸イオン濃度が、0.1mM以上であることを特徴とする[7]〜[9]のいずれか一項に記載の細胞導入剤の製造方法。
[11] 前記組成物の炭酸水素イオン濃度が、1.0mM以上であることを特徴とする[7]〜[10]のいずれか一項に記載の細胞導入剤の製造方法。
[12] 前記組成物が、さらにフッ素イオンまたはストロンチウムイオンを含有することを特徴とする[7]〜[11]のいずれか一項に記載の細胞導入剤の製造方法。
[13] 前記組成物のpHが、pH6.0〜9.0であることを特徴とする[7]〜[12]のいずれか一項に記載の細胞導入剤の製造方法。
[14] 前記組成物を10℃以上に保持することにより、前記複合体粒子を形成することを特徴とする[7]〜[13]のいずれか一項に記載の細胞導入剤の製造方法。
[15] 目的の物質を細胞内に導入するために用いられ前記目的の物質および炭酸アパタイトから構成される複合体粒子を含有する細胞導入剤を製造するための細胞導入剤製造用組成物であって、
少なくともカルシウムイオン、リン酸イオン、および炭酸水素イオンを含有し、
前記目的の物質を添加することにより前記細胞導入剤を製造することを特徴とする細胞導入剤製造用組成物。
[16] 目的の物質を細胞内に導入するために用いられ前記目的の物質および炭酸アパタイトから構成される複合体粒子を含有する細胞導入剤を製造するための細胞導入剤製造用組成物であって、
少なくともリン酸イオン、および炭酸水素イオンを含有し、
前記目的の物質とカルシウムイオンを添加することにより前記細胞導入剤を製造することを特徴とする細胞導入剤製造用組成物。
[17] 目的の物質を細胞内に導入するために用いられ前記目的の物質および炭酸アパタイトから構成される複合体粒子を含有する細胞導入剤を製造するための細胞導入剤製造用キットであって、
少なくともカルシウムイオンを含有する第1成分と、
少なくともリン酸イオンおよび炭酸水素イオンを含有する第2成分とからなり、
前記第1成分に前記目的の物質を添加した後、当該第1成分および前記第2成分を混合することにより、前記複合体粒子を含有する細胞導入剤を製造することを特徴とする細胞導入剤製造用キット。
本発明の細胞導入剤を用いることによって、目的物質を極めて効率的に細胞内に導入することが可能となる。本発明の細胞導入剤に含まれる複合体粒子はpH8.0からpH6.0に変化させると少なくとも50%が溶解する特性を有するため、細胞内に取り込まれた後は、速やかに目的物質を放出する。また、低分子量の医薬品からDNA等の比較的分子量の大きいポリアニオンまで、様々な物質を細胞内に導入することが可態である。また、本発明の細胞導入剤に含まれる複合体粒子は、リン酸カルシウム系材料から構成されるため、細胞内に取り込まれやすく、毒性の心配が少ない。
また、前記複合体粒子の平均粒径を500nm以下とすることにより、細胞内への取り込み効率をより高めることができる。さらに、前記リン酸カルシウム系材料として炭酸アパタイトを用いることにより、大きな結晶への成長が抑えられ細胞内への取り込み効率をより高めることができる。また、前記目的の物質として、薬剤、タンパク質、およびポリヌクレオチドを用いることにより、疾患の治療、遺伝子組換え技術、RNA干渉(RNA Interference)等に好適に利用することができる。
また、本発明の細胞導入方法は、本発明の細胞導入剤を用いるため、目的物質を極めて効率的に細胞内に導入することができる。したがって、疾患の治療、遺伝子組換え技術、RNA干渉(RNA interference)等に好適に利用することができる。
また、本発明の細胞導入剤の製造方法は、少なくともカルシウムイオン、リン酸イオン、炭酸水素イオン、および目的の物質を含有する組成物を調製することにより、目的の物質および炭酸アパタイトから構成される複合体粒子を含有する細胞導入剤を製造する方法であり、本発明の細胞導入剤を簡便に製造することができる。また、本発明の細胞導入剤の製造方法において、カルシウムイオンおよび目的の物質を含有する第1の溶液を調製し、これとは別に、リン酸イオンおよび炭酸水素イオンを含有する第2の溶液を調製し、当該第1の溶液と第2の溶液とを混合して前記組成物を調製することによって、複合体粒子の生成効率を高めることができる。また、前記組成物のカルシウムイオン濃度を、0.1mM以上とすることにより、前記複合体粒子の生成効率を高めることができる。また、前記組成物のリン酸イオン濃度を、0.1mM以上とすることにより、前記複合体粒子の生成効率を高めることができる。また、前記組成物の炭酸水素イオン濃度を、1.0mM以上とすることにより、前記複合体粒子の生成効率を高めることができる。また、前記組成物のpHを、pH6.0〜9.0にコントロールすることにより、細胞導入効率の高い細胞導入剤を製造することができる。また、前記組成物を10℃以上に保持することにより、細胞導入効率の高い細胞導入剤を製造することができる。
また、本発明の細胞導入剤製造用組成物は、少なくともカルシウムイオン、リン酸イオン、および炭酸水素イオンを含有するため、その使用に際しては、目的の物質を添加するだけで本発明の細胞導入剤を簡便に調製することができる。また、もうひとつの本発明の細胞導入剤製造用組成物は、少なくともリン酸イオン、および炭酸水素イオンを含有するため、使用に際しては、目的の物質およびカルシウムイオンを添加するだけで本発明の細胞導入剤を簡便に調製することができる。
また、本発明の細胞導入剤製造用キットは、少なくともカルシウムイオンを含有する第1成分と、少なくともリン酸イオンおよび炭酸水素イオンを含有する第2成分とからなり、使用に際しては、前記第1成分に目的の物質を添加し、当該第1成分および前記第2成分を混合するだけで、高い導入効率を実現できる細胞導入剤を簡便に調製することができる。
以下に、本発明の実施形態について下記の順に詳細に説明する。
〔I〕細胞導入剤
〔II〕細胞導入剤の製造方法
〔III〕細胞導入方法
〔I〕細胞導入剤
本発明の細胞導入剤は、目的の物質を細胞内に導入するために用いられるものであり、少なくとも目的の物質およびリン酸カルシウム系材料から構成される複合体粒子を含有するものである。
本発明の細胞導入剤に含まれる複合体粒子は、pH8.0からpH6.0に変化させた場合において、pH6.0に変化させてから所定時間内に、pH8.0において存在していた前記複合体粒子の少なくとも50%が溶解する特性を有することを特徴とする。以下、本願明細書において、pH7超からpH7以下へpHを変化させることによって複合体粒子が溶解する性質を「pH溶解性」と呼ぶ。
エンドソーム内のpHは酸性(約pH5)であるので、エンドサイトーシスにより取り込まれた複合体粒子は、pH7前後からpH5といった外部pHの変化にさらされるが、本発明の複合体粒子は、pH溶解性が高いため、細胞内に取り込まれた後は、速やかに溶解して目的の物質を放出する。これによって、目的物質を細胞内に効率的に導入することができる。
本発明において、複合体粒子に要求されるpH溶解性は、pH8.0からpH6.0に変化させることによってpH8.0において存在していた複合体粒子の50%以上が所定時間内に溶解するレベルであれば足りるが、本発明においては複合体粒子のpH溶解性が高いほど好ましい。
複合体粒子のpH溶解性の高さは、(1)複合体粒子が溶解するために要するpH変化の幅、(2)複合体粒子が溶解するために要する時間、および、(3)pH変化によって溶解する複合体粒子の割合の3つのパラメーターによって規定される。すなわち、複合体粒子が溶解するために要するpH変化がわずかであるほど、複合体粒子のpH溶解性が高いことを意味する。また、複合体粒子が溶解するために要する時間が短いほど、複合体粒子のpH溶解性が高いことを意味する。また、pH変化によって溶解する複合体粒子の割合が高いほど、複合体粒子のpH溶解性が高いことを意味する。
本発明において、複合体粒子の50%以上が溶解するために必要とされるpH変化は、スタート時のpH値がpH7.0超pH8.0以下であり、pH変化後のpH値がpH6.0以上pH7.0以下である。本発明においては、このpH変化の幅が狭いほど好ましい。本発明では、pH変化前のpH値がpH7.0超pH8.0以下、好ましくはpH7.0超pH7.5以下、より好ましくはpH7.0超pH7.2以下、さらに好ましくはpH7.0超pH7.1以下、特に好ましくはpH7.0超pH7.05以下、最も好ましくはpH7.0超pH7.01以下であることが好ましい。また、pH変化後のpH値がpH6.0以上pH7.0以下、好ましくはpH6.5以上pH7.0以下、より好ましくはpH6.7以上pH7.0以下、さらに好ましくはpH6.8以上pH7.0以下、さらに好ましくはpH6.9以上pH7.0以下、特に好ましくはpH6.95以上pH7.0以下であることが好ましい。
また、複合体粒子の50%以上が溶解するために要する時間が、10分以内であることが好ましく、5分以内であることがより好ましく、2分以内であることがさらに好ましく、1分以内であることが特に好ましい。
また、pH変化によって溶解する複合体粒子の割合が、pH変化前に存在していた複合体粒子の50%以上、好ましくは80%以上、より好ましくは100%であることが好ましい。
すなわち、本発明に用いる複合体粒子は、pHをわずかに酸性側に変化させることによって、速やかに溶解する特性を有することが好ましい。
このような複合体粒子は、目的の物質とリン酸カルシウム系材料とから構成される。目的の物質としては、リン酸カルシウム系材料と複合体粒子を形成しうる物質であれば、特に限定なく使用することができる。具体的には薬剤や、タンパク質、ポリヌクレオチド等のポリアニオンを使用できる。さらに本発明における目的の物質としてはマイナスに帯電している物質が好ましい。
本発明に使用可能な薬剤の具体例としては、抗癌剤および抗腫瘍抗生物質を挙げることができる。抗癌剤の具体例には、メトトレキセート(Methotrexate、抗葉酸剤)、ビンブラスチン(Vinblastine、ビンカアルカロイド)、アントラサイクリン(Antracyclines;ダウノマイシン(Daunomycin)、アドリアマイシン(Adriamysin))が含まれる。抗腫瘍抗生物質にはドゥオカルマイシン(Duocarmycin)、エネダインズ(Enediynes)、ネオカルジノスタチン(Neocarzinostatin)、カリケアマイシン(Calicheamicin)、マクロライド(Macrolide)を含む。このような薬剤を用いて複合体粒子を形成することにより、薬剤の細胞内導入効率を向上させることができるため、各種の疾患治療に好適に利用することができる。
ポリヌクレオチドとしては、DNA、RNAのいずれも使用することができる他、DNAおよびRNAからなる混成ポリヌクレオチド等も使用することができる。例えば、本発明の細胞導入剤を用いて遺伝子組換えを行う場合は、発現させようとする遺伝子を含むベクターDNAを用いて複合体粒子を形成すればよい。ここでDNAとしては、環状のプラスミドDNA、直鎖プラスミドDNA、人工染色体、三重鎖DNAなどのいかなるDNAを用いてもよい。あるいは、細胞機能を調整することができるRNA、例えばアンチセンスRNA、RNA干渉を生じさせるsiRNAを用いて複合体粒子を形成してもよい。
本発明において、複合体粒子を構成するリン酸カルシウム系材料は、CaとPO4を主要成分とする材料である。本発明においては、リン酸カルシウム系材料がアパタイト類であることが好ましい。アパタイト類としては、ハイドロキシアパタイト、炭酸アパタイト等を用いることができるが、特に炭酸アパタイトを用いることが好ましい。
本発明に好適に用いられる炭酸アパタイトは、Ca10-mm(PO46(CO31-nnで表される。ここで、Xは、炭酸アパタイトにおけるCaを部分的に置換しうる元素であり、例えばSr、Mn、希土類元素等を例示できる。mは、0以上1以下の正数であり、0以上0.1以下であることが好ましく、0以上0.01以下であることがより好ましく、0以上0.001以下であることが特に好ましい。また、Yは、炭酸アパタイトにおけるCO3を部分的に置換しうる単位であり、OH、F、Cl等を例示できる。nは、0以上0.1以下の正数であり、0以上0.01以下であることが好ましく、0以上0.001以下であることがより好ましく、0以上0.0001以下であることが特に好ましい。
本発明の細胞導入剤に含まれる複合体粒子の平均粒径は、500nm以下であることが好ましく、400nm以下がより好ましく、300nm以下がさらに好ましく、200nm以下が特に好ましい。複合体粒子の平均粒径が小さいほど、複合体粒子の細胞内への取り込み効率を向上させることができる。複合体粒子の平均粒径の下限については特に限定はないが、通常は20nm以上である。
本発明の細胞導入剤は前記複合体粒子を含有するものである。本発明の細胞導入剤は、目的の物質を変性させることなく細胞に導入できる限り、その剤型には特別の制限がなく、粉末、固形物、溶液等、どのような剤型であっても構わない。
〔II〕細胞導入剤の製造方法
次に、本発明の細胞導入剤の製造方法について説明する。本発明の細胞導入剤の製造方法は、少なくともカルシウムイオン、リン酸イオン、炭酸水素イオン、および、目的の物質の4成分を必須成分として含有する組成物を調製することにより、前記複合体粒子を形成することを特徴とする方法である。この組成物は水溶液として調製することが好ましい。
ここで、組成物中におけるカルシウムイオン濃度を、0.1mM以上とすることが好ましく、0.5mM以上とすることがより好ましく、1mM以上とすることがさらに好ましい。また、カルシウムイオン濃度を、1M以下とすることが好ましく、100mM以下とすることがより好ましく、10mM以下とすることがさらに好ましい。
また、リン酸イオン濃度は、0.1mM以上とすることが好ましく、0.5mM以上とすることがより好ましく、1mM以上とすることがさらに好ましい。また、リン酸イオン濃度を、1M以下とすることが好ましく、100mM以下とすることがより好ましく、10mM以下とすることがさらに好ましい。
また、炭酸水素イオン濃度は、1.0mM以上とすることが好ましく、5mM以上とすることがより好ましく、10mM以上とすることがさらに好ましい。また、炭酸水素イオン濃度を、10M以下とすることが好ましく、1M以下とすることがより好ましく、100mM以下とすることがさらに好ましい。
これらのイオンの組成物中へ供給形態は特に限定されないが、これらのカルシウムイオン源、リン酸イオン源、炭酸水素イオン源となる塩を水溶液中に添加することが好ましい。添加量は、カルシウムイオン濃度、リン酸イオン濃度、炭酸水素イオン濃度が、上述の範囲内となるようコントロールすることが好ましい。
また、組成物中における目的の物質の濃度は、通常1μg/L〜1mg/Lとすることが好ましいが、目的の物質を細胞内に導入可能な限り、この範囲を超過あるいは下回ってもよい。
上記必須4成分の混合順序は特に限定されず、いかなる混合順序で組成物を調製してもよいが、好ましい調製方法の一例として、カルシウムイオンおよび目的の物質を含有する第1の溶液を調製するとともに、別途、リン酸イオンおよび炭酸水素イオンを含有する第2の溶液を調製し、第1の溶液と第2の溶液とを混合することにより、必須4成分を含有する組成物を調製することが好ましい。ここで、最終的に組成物に含まれることになるカルシウムイオンの全量を第1の溶液に含有せしめる必要はない。すなわち、最終的に組成物に含まれることになるカルシウムイオンの一部を第1の溶液に含有せしめ、残りのカルシウムイオンを第2の溶液に含有せしめてもよい。
組成物のカルシウムイオン濃度を比較的高く設定する場合、目的の物質を最後に添加すると、目的の物質と複合体を形成する前に、炭酸アパタイトの沈殿物が生じる場合があるが、カルシウムイオンおよび目的の物質を含有する第1の溶液と、リン酸イオンおよび炭酸水素イオンを含有する第2の溶液とを混合することにより、複合体粒子を効率的に形成させることができる。
また、上記組成物中に、フッ素イオン、塩素イオン、Sr、Mn等を添加することにより、炭酸アパタイトにおけるCaまたはCO3を部分的に置換してもよい。ここで、フッ素イオン、塩素イオン、Sr、Mnの添加量は、形成される複合体粒子のpH溶解性、粒径範囲に著しい影響を与えない範囲内とする。
また、複合体粒子を形成するという本発明の目的を逸脱しない範囲内で、他の成分を組成物に添加することもできる。
例えば、目的物質を導入する標的となる細胞を培養するための培地を利用して上記組成物を調製してもよい。通常、細胞導入剤を培地に添加すると培地の組成が変化し、その組成変化が大きい場合は、予め細胞導入剤に含まれる各成分の濃度を計算し最終的に意図する培地組成となるよう培地を調節する必要があるため、実験操作が煩雑となる。しかし、予め液体培地を利用して上述の必須4成分を含有する組成物を調製し、この液体培地中で複合体粒子を形成させ、これを細胞導入剤として用いることにより、細胞導入剤添加による培地の成分の組成比の大幅な変化を防ぐことができる。
培地を利用して上記組成物を調製する場合、まず、培地を液体培地として調製する。そして、カルシウムイオン、リン酸イオン、炭酸水素イオン、および、目的の物質の必須4成分のうち、液体培地中に含まれない成分または必要濃度に達していない成分について、該当する成分を液体培地に補うことによって、必須4成分を含有する組成物を調製する。
また、上記組成物を簡便に調製するため、細胞内に導入しようとする物質を添加するだけで上記組成物を調製できる細胞導入剤製造用組成物を提供することもできる。このような細胞導入剤製造用組成物は、カルシウムイオン、リン酸イオン、および、炭酸水素イオンの少なくとも3成分を所定の割合で含有する組成物として提供される。使用に際しては、この細胞導入剤製造用組成物に、細胞内に導入しようとする目的の物質を所定量添加すれば、カルシウムイオン、リン酸イオン、炭酸水素イオン、および、目的の物質の必須4成分を含有する組成物を容易に調製することができる。
また、細胞内に導入しようとする目的の物質およびカルシウムイオンを添加するだけで上記組成物を調製できる細胞導入剤製造用組成物を提供することもできる。このような細胞導入剤製造用組成物は、リン酸イオン、炭酸水素イオンの少なくとも2成分を所定の割合で含有する組成物として提供される。使用に際しては、この細胞導入剤製造用組成物に目的の物質およびカルシウムイオンを所定量添加すれば、カルシウムイオン、リン酸イオン、炭酸水素イオン、および、目的の物質の必須4成分を含有する組成物を容易に調製することができる。
このような組成物は、例えば溶液の形態で提供してもよいし、粉末状、ペースト状で提供してもよい。また、このような細胞導入剤製造用組成物において、各種イオンは、塩の形で含まれていてもよい。
また、上記組成物を簡便に調製するための他の形態として、少なくともカルシウムイオンを含有する第1成分と、少なくともリン酸イオンおよび炭酸水素イオンを所定の割合で含有する第2成分とからなる細胞導入剤製造用キットを提供してもよい。細胞導入剤製造用キットの使用に際しては、第1成分に前記目的の物質を混合した後、当該第1成分および前記第2成分を混合することにより、カルシウムイオン、リン酸イオン、炭酸水素イオン、および、目的の物質の必須4成分を含有する組成物を容易に調製することができる。ここで、第1成分および第2成分は、それぞれ溶液の形態で提供してもよいし、粉末状、ペースト状で提供してもよい。また、第1成分および第2成分において、各種イオンは、塩の形で含まれていてもよい。
カルシウムイオン、リン酸イオン、炭酸水素イオン、および、目的の物質の必須4成分を含有する組成物を調製した後、この組成物を所定時間放置すると、目的の物質および炭酸アパタイトから構成される複合体粒子が形成される。
ここで、組成物の温度を10℃以上に保持しながら複合体粒子を形成させることが好ましい。より好ましくは25℃以上、さらに好ましくは37℃以上、特に好ましくは50℃以上に保持することが好ましい。また、目的の物質が変性しない範囲であれば特に温度の上限はないが、通常80℃以下、好ましくは70℃以下であれば問題ない。
また、組成物のpHをpH6.0〜9.0に調整して、複合体粒子を形成させることが好ましい。より好ましくはpH7.0以上、さらに好ましくはpH7.1以上、特に好ましくはpH7.2以上、最も好ましくはpH7.5以上とすることが好ましく、また、pH9.0以下、さらに好ましくはpH8.5以下、特に好ましくはpH8.0以下とすることが好ましい。
上記組成物を調製後、複合体粒子が形成されるまで組成物を放置する。複合体粒子の形成に必要とされる時間は、通常1分〜24時間程度であり、多くの場合は10分〜1時間程度で顕微鏡下で観察できる複合体粒子が形成される。
この複合体粒子を含有する組成物は、そのまま細胞導入剤として用いることができるが、必要に応じて他の成分を添加してから用いてもよい。また、組成物から複合体粒子を単離して粉末状としたり、あるいは、複合体粒子を錠剤等に固形化したりして、細胞導入剤として用いてもよい。
〔III〕細胞導入方法
本発明の細胞導入方法は、本発明の細胞導入剤を用いて、目的の物質を細胞内に導入することを特徴とする。ここで、細胞に導入する目的物質は、細胞機能を調整することができるマイナスに帯電した物質であることが好ましい。
本発明において、目的物質を導入する標的となる細胞としては、細菌細胞、放線菌細胞、酵母細胞、カビ細胞、植物細胞、昆虫細胞、動物細胞等の各種細胞を使用することができる。このうち、動物細胞、中でも哺乳類細胞を好ましく使用することができる。目的物質を導入する標的となる細胞は、in vitro、in vivoのいずれも含まれる。すなわち、培養細胞、培養組織、生体などいかなる細胞を用いてもよい。
培養細胞を用いる場合は、本発明の細胞導入剤を含有する培地を調製し、この培地を用いて通常の培養条件にて培養することによって、細胞内に目的物質を導入することができる。
また、本発明の細胞導入剤を各種疾患治療のための医薬として用いる場合は、例えば、薬理活性を有する物質とリン酸カルシウム系材料から構成される複合体粒子を含む細胞導入剤を調製し、これを哺乳類動物(ヒトを含む)の皮下や筋肉内、腹腔内あるいは血管内等に投与して、生体細胞に薬理活性を有する物質を直接導入することもできる。
また、遺伝子治療のための医薬として用いる場合、細胞機能を調整することができるポリヌクレオチド(例えば、ベクターDNA、アンチセンスRNA、RNAi等)とリン酸カルシウム系材料から構成される複合体粒子を含む細胞導入剤を調製し、対象とする細胞への導入及び発現させることができる。遺伝子治療を行う対象となる疾患としては、例えば、癌又は遺伝病などの疾患が挙げられる。
以下、実施例に基づき、本発明についてさらに詳細に説明する。なお、本発明は下記実施例に限定されるものではない。
なお、実施例で使用した試薬は下記のとおりである。SV40プロモーター制御下にあるルシフェラーゼを含むpGL3(プロメガ社製)とCMV制御下にあるGFP遺伝子を含むpEGFP−N2(クロンテック社製)は、XL−1 Blue(Molecular Cloningに示されている方法によって)で増やし、そしてQiagenプラスミドキットによって精製した。Propidium iodide(PI)とLysoSensorTM Green DND−189はそれぞれSigma社およびMolecular Probe社より購入した。リポフェクタミンとDMEM(カタログ番号12800)はGibco BRL社より購入した。
また、細胞培養については、HeLa、HepG2およびNIH3T3細胞株は75cm2フラスコで10%ウシ胎仔血清(FBS)、50μg/mlペニシリン、50μg/mlストレプトマイシン、100μg/mlネオマイシン含有Dulbecco’s modified Eagle’s medium(DMEM,Gibco BRL)中で37℃、5%CO2雰囲気下において培養した。初代培養肝細胞は雄のICRマウス(5−7週令)(SLC、静岡、日本)の肝臓から既知のin situでのパーヒュージョンを改変した方法を用いて単離し、そしてコラーゲンをコートした24穴プレートに播種し、DMEMの代わりにWilliams’E(WE)培地(Gibco BRL)を同様にして用いて培養した。
実施例1 細胞導入剤
〔1〕細胞導入剤の調製
3〜6μ1の1M塩化カルシウム溶液を2μ1のプラスミドDNAを含む無血清炭酸水素イオン緩衝(DMEMもしくはWE)培地(pH7.5)1mlに懸濁し、37℃で30分培養し、DNA/炭酸アパタイトの複合体粒子を生じさせた。
使用したDMEM培地、WE培地の組成を下記に示す。
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フッ素含有、又はストロンチウム含有の炭酸アパタイトは、0.01〜3μ1の1Mフッ化ナトリウム又は塩化ストロンチウムを、カルシウムイオンとDNAと共に加えて同上の条件で培養して生成した。
炭酸水素イオンが緩衝作用を持たせている細胞培養培地(DMEMもしくはWilliams’E培地,pH7.5)にたった3mMだけカルシウムイオンを添加し、そして37℃で30分培養することで、顕微鏡下で観察できる粒子ができた。この粒子の生成は炭酸水素イオンで緩衝させている培地もしくは溶液で生じ、全カルシウムイオン(4.8mM)および全リン酸(0.9mM)を同量含むHepes緩衝培地もしくは溶液(pH 7.5)では生じなかった。このことはリン酸とカルシウムイオンとともに炭酸塩が粒子の形成に関与していることを示唆している。
〔2〕生成した粒子の分析
生成した粒子を化学分析、赤外分光法、X線回折によって分析した。
(化学分析)
上記と同じ方法で、6mMカルシウムイオンを用いDNAを加えず炭酸アパタイトを生成し、遠心分離および蒸留脱イオン水で沈殿した粒子を凍結乾燥させた。他のアパタイト粒子も上記のように精製して凍結乾燥させた。カルシウムとリンの成分はSPS1500 VR Atomic Absorption Spectrophotometerを用いて測定した。炭素とフッ素はCHNS−932(Leco,USA)とSX−elements micro analyzer,YS−10(Yanaco,日本)をそれぞれ用いて測定した。
(赤外分光法)
上記のように調製したアパタイト粒子のフーリエ変換赤外分光分析はFT/IR−230(JASCO)を用いて行った。サンプルをすり鉢の中にいれ、そして約1mgを完全に300mgの分光用の臭化カリウムと混ぜ合わせた。臭化カリウムの窓板の中で0.5torr減気圧下において8000kgの加重を加えることで薄いペレットを調製した。
(X線回折)
調製した粒子のX線粉体解析はM18XHF−SRA回折システムを用いて行った。
元素分析により炭素が3%、リンが17%、カルシウムイオンが32%存在することがわかった。図1−1に示したFT−IRスペクトルの1410から1540cm-1間と約880cm-1におけるピークから、生成した粒子が炭酸塩を含むこと、また、図1−2に示した1000から1100cm-1および550から650cm-1にあるピークより、さらにリン酸を含むことがわかった。X線回折パターン(図1−3)はその幅の広い回折ピークが象徴するように、炭酸アパタイトがハイドロキシアパタイト(図1−4)よりも結晶性が低いことを示している。これは炭酸アパタイト本来の性質である。
実施例2 細胞への遺伝子導入
〔1〕ルシフェラーゼの発現レベル測定
実施例1〔1〕によって調製した本発明の細胞導入剤のトランスフェクション効率を調べるため、本発明の細胞導入剤を用いたルシフェラーゼの発現レベルを測定した。
対数増殖期にある細胞を24穴プレート1穴につき約50000個、遺伝子導入を行う前日に播種した。調製しておいたDNA含有粒子を含む培地を、10%FBSとともに洗浄した細胞に添加した。
4時間培養後、その培地を血清を含む培地に置換し、その細胞を1日間培養した。ルシフェラーゼの遺伝子発現は市販のキット(プロメガ社)とフォトンカウンティング(TD−20/20 ルミノメーター,USA)を用いて測定した。それぞれの遺伝子導入実験は3回繰り返して行い、トランスフェクション効率は光強度の平均値を細胞のタンパク質量(mg)で割った値で表した。
初代肝細胞はコラーゲンを被覆した24穴プレートに播種し、3時間培養後に形質転換した。リン酸カルシウム−DNAの共沈殿による形質転換はJordan M.らによる方法(Jordan, M., Schallhorn, A. & Wurm FM. Transfecting mammalian cells: optimization of critical parameters affecting calcium-phosphate precipitate formation. Nucleic acids research 24, 596-601 (1996))にて行った。簡単に言えば、12μgのプラスミドDNAを300μ1の250mM塩化カルシウム溶液中に加えた。この溶液を300μ1の2×HBS(50mM Hepes、140mM塩化ナトリウム、1.5mM Na2HPO4・2H20、pH7.05)に加え、そして即座に、2回ゆっくりとピペッティングをすることで攪拌した。
DNA/リン酸カルシウム混合物を室温にそれぞれの示されている時間放置した。1mlの血清入り培地中に室温に放置しておいた混合液を100μ1滴下し、そしてその培地中で4時間培養し、上記のように新しい血清含有培地に交換した後1日培養した。
カルシウムイオン濃度、炭酸水素イオン緩衝培地のpH、そして培養温度の影響を調べるため、カルシウムイオン濃度、培養温度を変化させて、10%FBS含有培地でHeLa細胞を用いた遺伝子導入でトランスフェクション効率を評価した。
図2−1に、炭酸水素イオン緩衝培地のpHに依存したDNA/炭酸アパタイト粒子の生成におけるDMEM中に添加されたカルシウムイオン濃度を変化させたときのトランスフェクション効率を、図2−2に炭酸水素イオン緩衝培地のpHに依存したDNA/炭酸アパタイト粒子の生成における温度を変化させたときのトランスフェクション効率を示す。ここでは、トランスフェクション効率を10%FBS含有培地でHeLa細胞を用いた遺伝子導入におけるルシフェラーゼの発現レベルで検討している。
炭酸アパタイト粒子の生成は、カルシウムイオン濃度、炭酸イオン緩衝培地のpH、そして培養温度に依存していた。高いトランスフェクション効率を得るために充分な量のDNA/炭酸アパタイト複合体を生成するために必要な最良のカルシウムイオン濃度は、培地のpH(図2−1)または温度(図2−2)と負の相関を有していた。初期の高効率なトランスフェクションよりも効率が低下するのは粒子形成量が少なくなることに起因している(顕微鏡による観察結果)。液状培地のpH、培養温度および/又はカルシウムイオン濃度の向上が粒子の生成に必要である過飽和溶液の形成に寄与している。粒子形成に関する全てのパラメーターをコントロールするだけで高い再現性が得られる融通の利くトランスフェクションシステムをはじめて本発明者らは開発することが出来た。
有効な遺伝子キャリアーとしての炭酸アパタイトの役割を評価するために、本発明者は頻繁に用いられる二種類のトランスフェクション法即ち上記のリン酸カルシウム共沈法とリポフェクション法を含む、さまざまなトランスフェクション法とそのトランスフェクション効率について比較してみた。
図2−3に、HeLa細胞を用いて、炭酸アパタイト、ハイドロキシアパタイト、リポフェクトアミンによる遺伝子導入を行ったときの遺伝子発現レベルを、図2−4に、HepG2細胞を用いて、炭酸アパタイト、ハイドロキシアパタイト、リポフェクトアミンによる遺伝子導入を行ったときの遺伝子発現レベルを、図2−5に、NIH3T3細胞を用いて、炭酸アパタイト、ハイドロキシアパタイト、リポフェクトアミンによる遺伝子導入を行ったときの遺伝子発現レベルを、図2−6に、マウス初代培養肝細胞を用いて、炭酸アパタイト、ハイドロキシアパタイト、リポフェクトアミンによる遺伝子導入を行ったときの遺伝子発現レベルを、それぞれ示す。
ここで、DNA/炭酸アパタイト複合体粒子は3から6mMのカルシウムイオン濃度(カルシウムイオン濃度が明記されていないものはすべて3mM)と2μgのプラスミドDNAを1mlの炭酸水素イオン緩衝培地(pH7.5)に加え、37℃で30分放置した。また、図2−3に示すHeLa細胞の湯合は、6mMカルシウムイオンを2μgDNAと一緒に1mlの無血清培地(上記に示した)に添加して粒子を生成し、その培地を100μ1(200ngDNA)または20μl(40ngDNA)用いて、FBS入り培地中で遺伝子導入実験を行った。DNA/ハイドロキシアパタイト複合体粒子はJordan M.らの方法にしたがって生成した。DNA/リポフェクトアミン複合体は1:6の重量比率で製造元のプロトコールに従って調製した。細胞への遺伝子導入は上述の方法で行い、Tissue culture plateの各ウェル中に(別段の記載がなければ)2μgのDNAを加えて、異なる方法で実施した。
例えばHeLa細胞では、炭酸アパタイトを用いることでトランスフェクションさせたときのルシフェラーゼ発現レベルはリポフェクションとリン酸カルシウム共沈法と比較したとき、それぞれ15倍以上、25倍以上高かった(図2−3)。効率的な導入遺伝子の発現にはナノグラム量のDNAで十分であった(図2−3)。
トランスフェクション効率はHepG2(図2−4)、NIH3T3細胞(図2−5)、そしてマウスの初代培養肝細胞(図2−6)においても顕著に高いという結果を得た。
4時間のDNAの細胞内取り込み後、EDTAで細胞を処理した結果、ルシフェラーゼの遺伝子発現レベルが半分に減少したこと(図2−3)は、長時間にわたるDNAの取り込みは効率的な遺伝子発現に寄与するが核酸分解酵素によるDNAの加水分解と相殺されていることを示唆しており、これはPIラベルしたDNAの蛍光強度の持続によっても判る(図は無し)。
〔2〕MTTアッセイ
細胞の生存率が高いためにトランスフェクション効率が高く現れたのではないことを明らかにするためにHeLa細胞を用いてMTTアッセイを行った。
HeLa細胞は遺伝子導入後、上記の方法で1日培養した。30μ1のMTT(臭化3−(4,5−ジメチルチアゾール−2−イル)−2,5−ジフェニルテトラゾリウム)溶液(5mg/ml)をそれぞれのウェル中に加え、そして4時間培養した。0.5mlのDMSOを、培地を除いた後に加えた。結晶が溶解し、37℃で5分培養した後、波長570nmの吸光度を630nmの波長を参照波長としてマイクロプレートリーダーで計測した。
図2−7にHeLa細胞における細胞の生存率をMTTアッセイで検討した結果を示す。
〔3〕細胞導入剤に含まれる複合体粒子の分析
(走査型電子顕微鏡(SEM))
遺伝子導入のプロトコールで述べた様に調製したDNA−炭酸アパタイトの混合液の液滴を炭素コートのSEMのステージに加え、乾燥させた後に、SEM(S−800、日立、日本)で観察した。
図3−1に走査型電子頼微鏡像を示す。スケールバーは600nmである。
アパタイト構造存在下では、炭酸塩はアパタイト結晶の成長を制限し、そして溶解度を高める。本発明者らは生成した炭酸アパタイトを走査型電子顕微鏡によって観察を行い、結晶の成長が、大半は直径50nmから300nmに抑制されていることを明らかにした(図3−1、物件提出書にて提出した図を参照。)。
(共焦点レーザー顕微鏡)
巨大粒子は小さい粒子よりも食作用によって取り込まれにくいので、本発明者らは炭酸塩の結晶の大きさを抑制したときの効果の検証を、アパタイトに吸着させたPI(propidium iodide)ラベルしたプラスミドDNAの細胞への取り込みを観察することで行った。
pGL3 ベクターはPIでPI/DNA比が1:1になるようにラベルし、そしてこのラベルしたプラスミドで生成した粒子(遺伝子導入のプロトコールに従って生成)をHeLa細胞と一緒に6時間培養した。酸性部位は5μMのLyso Sensorを用いて、Molecular Probe社の示す方法に従ってラベルした。そして細胞膜に結合している粒子をPBSに溶解した5mMのEDTAを用いて除去した後、LEICA TCS−NTを用いて観察した。
図3−2(物件提出書にて提出した図を参照。)に、アパタイトを介したDNAの放出と発現を示す。図3−2において、(a)ではDNAの取り込みは見られない(コントロール実験)。これは、エンドサイトーシスがエネルギー消耗(50mMの2−デオキシグルコースと1mMのアジ化ナトリウム添加)により、ブロックされているためである。DNA/炭酸アパタイト粒子は1mlの無血清培地(図2を参照して説明したもの)中で、6mMのカルシウムイオンと2μgのDNAを用いて生成した。1mlの懸濁液の20μ1および100μ1にそれぞれ40ng(b)、200ng(c)のDNAがあり、4時間細胞に取り込ませた。(d)は2μgのDNAをハイドロキシアパタイトに吸着させ、そして同じ時間だけ細胞に取り込ませた。
1分培養することによって粒子を形成させたとき、炭酸アパタイトを用いたほうが(図3−2(c))ハイドロキシアパタイトを用いる(図3−2(d))よりも、少なくとも10倍効率的にDNAは細胞内に取り込まれた。
さらに長い時間(30分)培養して粒子を形成させると、巨大なハイドロキシアパタイト粒子を生じ、DNAを細胞内に取り込む効率がかなり低下する(本文中には示さない)ために、トランスフェクション効率が顕著に低下した(図2−3)。
従って、炭酸アパタイトは、結晶の成長を抑制するというその固有の性質のために、DNAを細胞内に取り込みやすくし、ハイドロキシアパタイトよりも優れた遺伝子導入キャリアーとなることを、本発明者らの発見は示している。
トランスジーン発現におけるエンドソームからのDNAの脱出の役割を評価するために、PIラベルしたプラスミドDNAのエンドサイトーシスに引き続き、我々はエンドソームをLysoSensor(エンドソームの蛍光プローブ)でラベルした。その結果、細胞によるDNAの取り込みから6時間後、多くのDNAがエンドソームより、それら2つが共局在した後に放出されているのがわかった(図3−3、物件提出書にて提出した図を参照。)。
〔4〕細胞導入におけるpHの影響
細胞導入におけるpHの影響を調べるため、V−ATPase(エンドソームを酸性化するのに用いられるプロトンポンプ)の特異的阻害剤であるバフィロマイシンAlを用いてトランスフェクション効率の変化を調べた。HeLa細胞をDNA/炭酸アパタイト複合体粒子および200nMバフィロマイシンAlとともに6時間培養した。5mMのEDTA含有PBSで洗ったあと、細胞を1日培養し、ルシフェラーゼの発現を検出した。結果を図4−1に示す。
V−ATPase(エンドソームを酸性化するのに用いられるプロトンポンプ)の特異的阻害剤であるバフィロマイシンAlで処理すると、HeLa細胞のトランスフェクション効率を劇的に減少させた。この結果は炭酸アパタイトを溶解しDNAをアパタイトから脱出させるのに酸性の環境が必要であることを示している。
この仮説を検討するのに、我々はフッ素を添加するとアパタイトの溶解度が下がることから、フッ素を添加した炭酸アパタイトを合成し、そしてトランスフェクション効率における粒子の溶解度の影響について検討を行った。DNA/炭酸アパタイト粒子を形成するときに加えたフッ素イオン(0.01から3mM)もしくはストロンチウムイオン(0.01から3mM)の濃度を上昇させたときのルシフェラーゼ発現の変化を調べた。結果を図4−2に示す。
驚いたことに、炭酸アパタイトに含まれるフッ素の量を増大させると、有意に(100倍)トランスフェクション効率が低下した(図4−2)。
フッ素を添加した炭酸アパタイトのトランスフェクション効率が低下したのはDNAの細胞への取り込みが減少したためではないことを示すために、本発明者らはPIでラベルしたpEGFPプラスミドを遺伝子導入した。
図4−3(物件提出書にて提出した図を参照。)に炭酸アパタイトおよび、フッ素添加炭酸アパタイトによるPIラベルしたプラスミドDNA(pEGFP−N2)の取り込みとGFPタンパク質の発現を観察した結果を示す。DNAを含む粒子を4時間培養した後、さらに20時間培養し、PBSに5mM EDTAで処理してから観察した。
細胞内に取り込まれたプラスミドDNAの量は同じであったが、炭酸アパタイトではほぼ50%の細胞にGFPの発現が見られた(図4−3、上段)のに対し、フッ素を添加した炭酸アパタイトを用いたときには、GFPを発現している細胞は見られなかった(図4−3、下段)。
DNAの取り込み期間が短いときのトランスジーン発現の効率を促進するのに、我々は少量のフッ素を添加することで炭酸アパタイトの溶解度を若干減少させることによる影響を調べた。
図4−4にDNA/炭酸アパタイト粒子の形成時におけるμMレベルのフッ素イオンを添加したときのルシフェラーゼ発現量の変化を示す。ここでは、粒子と一緒に細胞を培養した後、細胞をEDTAで洗い、さらに1日、上記のように培養した。
驚いたことに、炭酸アパタイトの生成中に、1μMのフッ化ナトリウムを添加することで、ルシフェラーゼの遺伝子発現が15倍促進された。さらにエンドソームのpHを上昇させ、核酸分解酵素に対してDNAを保護することが知られているクロロキンで処理すると、同様な遺伝子発現の促進が見られた(図4−4)。
これらの結果から、微量のフッ素イオンを含む結晶によってエンドソームの緩衝作用とプロトンの消費が起きている中で、DNAが中間の速さで放出されることにより、顕著な核酸分解酵素によるDNA分解が避けられていることを示しており、PIの蛍光が持続すること(図にはない)は、転写や翻訳に際し、より完全なDNAが存在することを示している。
〔5〕アパタイトのpH依存溶解度の研究
アパタイトの溶解度とトランスフェクション効率の間の関係を調べるために、生成したアパタイトの液中に酸を添加した後の、溶液の濁度を溶解度の指標として測定した。
DNAを含まない6mMのカルシウムイオン溶液を用いてトランスフェクションのプロトコールに従って生成した、異なるアパタイトの溶解度の特徴を、1MのHClでpHを7.0から6.8に調製し、V−500(Jasco、日本)分光光度計を用いて320nmの濁度を異なる間隔で測定して検討していった。SPS 1500 VR 原子吸光分光光度計は、凍結乾爆した異なるアパタイトの粉末をゆっくりと振とう(10rpmで6時間)した後に37℃で酢酸緩衝溶液(pH6.5のものとpH5.5の溶液)中で放出されるカルシウムイオンを検出するのに用いた。
図5−1(物件提出書にて提出した図を参照。)にpH7.5で炭酸アパタイトを生成させるときに0〜3mMのフッ素イオンを添加して調製したフッ素添加炭酸アパタイト(実験プロトコールに記載)の溶解度を、アパタイト懸濁液に1N塩酸を加えてpH7.0に調製した直後に波長320nmにおける濁度で測定した結果を示す。
1N塩酸を添加することでpHを7.5から7.0に調整した後、濁度の変化が示すように、添加するフッ化ナトリウム濃度を上昇させることで生成する炭酸アパタイトの溶解度は徐々に減少した(図5−1)。この結果はフッ素を添加した炭酸アパタイトのトランスフェクション効率が徐々に減少するという結果と一致していた(図4−2)。
アパタイトの溶解度が結晶化の度合いに関係しているか検討するために、我々はアパタイトのX線散乱を検討した(図1−4、1−5、1−6)。その結果、結晶度が高いほうが溶解度は低いことがわかった(図5−1)。換言すれば、結晶性が高いアパタイト(図1−4、図1−8)は低いトランスフェクション効率を示すことを示している(図2−3、4−2)。
炭酸アパタイト中のフッ素含量の増加に伴う結晶性の増加(図1−6〜1−8)によってトランスフェクション効率は後々に低下していく(図4−2)。トランスフェクション効率の低下はフッ素を添加した炭酸アパタイトの溶解度によるためであり、他のフッ素を添加したことによる影響によるものではないことを示すのに、我々は炭酸アパタイトに添加したときのストロンチウムの影響について検討した。ストロンチウムはアパタイトの結晶性を上げ、フッ素よりも効果は小さいが、溶解性を減少させる。
図5−2(物件提出書にて提出した図を参照。)にpH7.0および6.8における炭酸アパタイト、フッ素添加炭酸アパタイト、ストロンチウムを含む炭酸アパタイトの溶解度を示す。
pHを7.5から7.0および6.8に低下させることにより、炭酸アパタイトは1分以内に完全に溶解したが、対して、フッ素を添加した炭酸アパタイトは部分的に溶けるだけであった(図5−2)。
期待通り、炭酸アパタイトの沈殿中に塩化ストロンチウムを添加したところ、フッ素を添加したときほどではないが溶解度は減少した(図5−2)。さらに、トランスフェクション効率は、DNA/炭酸アパタイト複合粒子の生成中に塩化ストロンチウムの濃度を上昇させることにより徐々に減少した(図4−2)。これらの結果より、我々の発見はアパタイトの溶解による細胞質内でのDNAの放出は炭酸アパタイトを介したトランスフェクションにおいて重要な役割を果たしていることを明確に示唆している。
本発明者らはハイドロキシアパタイトを含むアパタイトの溶解度を、pH6.5と5.5の酢酸ナトリウム緩衝液でアパタイト粉末から放出されたカルシウムイオンを原子発光分析測定することによって比較した。フッ素添加炭酸アパタイトが炭酸アパタイトに比べて溶解度が低く、ハイドロキシアパタイトと比べて高かった(図5−3を参照)。
エンドソームにおいて結晶と結合しているDNAの放出が遺伝子発現にとって本当の重要なファクターであることを証明するため、本発明者らはPI(pH感受性の色素)ラベルしたプラスミドDNAを用い、4時間の細胞内取り込み後、EDTA(図5−4−a、d、物件提出書にて提出した図を参照。以下同様。)により細胞表面に結合したDNAを除去し、さらに5時間放置した(図5−4−b、c、e)。PIの蛍光強度は遊離のプラスミドDNAでは核酸分解酵素の作用により、5時間後には大幅に減少していることが判る(図5−4−b、e)。また、4時間の細胞内取り込み後、バフィロマイシンA1で処理した細胞では蛍光強度が保持されていることが判る(図5−4−c)。
フッ素添加した炭酸アパタイトによって細胞内に取り込まれたDNA(図5−4−f)はほとんど蛍光強度が減少していない(図5−4−g)ことは、加水分解の速度が速いにもかかわらず、遺伝子発現にはDNAの放出が必須であることを示している。さらに、結晶の溶解によるV−ATPaseに誘導された大量のプロトンの蓄積がエンドソームへの不活化塩素の流入をもたらし、エンドゾームの膨張と破裂をもたらすことから、炭酸アパタイトの高い溶解性がDNAの細胞質への放出の際のエンドソームの不安定化にも寄与していると思われる(図3−3)。
以上のように、本発明にかかる細胞導入剤は、細胞導入効率が高く、優れた再現性、生体適合性を有するため、遺伝子組換え技術、各種疾患の治療等に好適に利用することができる。
生成した炭酸アパタイトのIRスペクトルを示す図である。 生成したハイドロキシアパタイトのIRスペクトルを示す図である。 4時間37℃で炭酸水素イオン緩衝DMEM培地中にてインキュベートして生成したハイドロキシアパタイトのIRスペクトルを示す図である。 炭酸アパタイトのX線回折パターンを示す図である。 ハイドロキシアパタイトのX線回折パターンを示す図である。 0.65%フッ素イオンを含むフッ化炭酸アパタイトのX線回折パターンを示す図である。 1.43%フッ素イオンを含むフッ化炭酸アパタイトのX繰回折パターンを示す図である。 2.5%フッ素イオンを含むフッ化炭酸アパタイトのX線回折パターンを示す図である。 DNA/炭酸アパタイト粒子の生成におけるpHを変化させて、10%FBS含有培地でHeLa細胞を用いた遺伝子導入を実施したときのトランスフェクション効率を示す図である。 DNA/炭酸アパタイト粒子の生成における温度を変化させて、10%FBS含有培地でHeLa細胞を用いた遺伝子導入を実施したときのトランスフェクション効率を示す図である。 HeLa細胞を用いて、炭酸アパタイト、ハイドロキシアパタイト、リポフェクタミンによる遺伝子導入を行ったときの遺伝子発現レベルを示す図である。 HepG2細胞を用いて、炭酸アパタイト、ハイドロキシアパタイト、リポフェクタミンによる遺伝子導入を行ったときの遺伝子発現レベルを示す図である。 NIH3T3細胞を用いて、炭酸アパタイト、ハイドロキシアパタイト、リポフェクタミンによる遺伝子導入を行ったときの達伝子発現レベルを示す図である。 マウス初代培養肝細胞を用いて、炭酸アパタイト、ハイドロキシアパタイト、リポフェクタミンによる遺伝子導入を行ったときの遺伝子発現レベルを示す図である。 HeLa細胞における細胞の生存率をMTTアッセイで検討した結果を示す図である。 炭酸アパタイトを介したDNAの細胞内への取り込みの走査型電子顕微鏡写真(スケールバーは600nm)を示す図である。 炭酸アパタイトおよびハイドロキシアパタイトに結合したPIラベルしたプラスミドDNAの細胞内への取り込みを示す図である。(a)はDNAの取り込みは見られない(コントロール実験)。エンドサイトーシスがエネルギー消耗(50mMの2−デオキシグルコースと1mMのアジ化ナトリウム添加)により、ブロックされているため。DNA/炭酸アパタイト粒子は1mlの無血清培地中で、6mMのカルシウムイオンと2μgのDNAを用いて生成した。1mlの粒子の懸濁液の20μ1および100μ1にそれぞれ40ng(b)、200ng(c)のDNAがあり、4時間細胞に取り込ませた。(d)は2μgのDNAをハイドロキシアパタイトに吸着させ、そして同じ時間だけ細胞に取り込ませた。 エンドサイトーシスによって取り込まれたPIラベルされたDNAのエンドソームからの脱出を示す図である。エンドソームの蛍光プローブ(LysoSensor)と共局在した後に明らかに見られた。 細胞導入におけるバフィロマイシンA1(V−ATPaseの阻害剤)の影響を示す図である。HeLa細胞をDNA/炭酸アパタイト複合体粒子および200nMバフィロマイシンA1とともに6時間培養した。5mMのEDTA含有PBSで洗ったあと、細胞を1日培養し、ルシフェラーゼの発現を検出した。 DNA/炭酸アパタイト粒子を形成するときに加えたフッ素イオン(0.01から3mM)もしくはストロンチウム(0.01から3mM)の濃度を上昇させたときのルシフェラーゼ発現の変化を示す図である。 炭酸アパタイト(上段)および、フッ素添加炭酸アパタイト(下段)によるPIラベルしたプラスミドDNA(pEGFP−N2)の取り込みとGFPタンパク質の発現を示す図である。DNAを含む粒子を4時間培養し、5mM EDTAを含むPBSで処理した後、さらに20時間培養して観察した。 DNA/炭酸アパタイト粒子の形成時におけるμMレベルのフッ素イオンを添加したときのルシフェラーゼ発現量の変化を示す図である。上記の通り、粒子と一緒に細胞を培養した後、細胞をEDTAで洗い、さらに1日培養した。 pHに依存したアパタイトの溶解挙動を示す図である。pH7.5で炭酸アパタイトを生成させる(実験方法に示した通り)ときに0〜3mMのフッ素イオンを添加して調製したフッ素添加炭酸アパタイトのpH7.0での溶解度を、アパタイト懸濁液に1N塩酸を加えてpH7.0に調整した直後に波長320nmにおける濁度で測定した。 pH7.5をpH7.0および6.8に変化させたときの炭酸アパタイト、フッ素添加炭酸アパタイト、ストロンチウムを含む炭酸アパタイトの溶解速度を示す図である。 炭酸アパタイト、フッ素添加炭酸アパタイト、ハイドロキシアパタイト粉末のpH6.5および5.5の酢酸緩衝液への溶解率を示す図である。アパタイトからのカルシウムイオンの放出の割合で評価した。 アパタイト結晶からのPIラベルしたプラスミドDNAの細胞内放出を示す図である。PIの蛍光強度により、観察、測定した。細胞はDNA/炭酸アパタイトとともに4時間培養した(a、d)、さらにEDTAで処理後、5時間培養した(b、c、e)、bおよびeはバフィロマイシンAが存在しない条件で、cは200nMのバフィロマイシンAが存在する条件。同様に、細胞がDNA/フッ素化炭酸アパタイトとともに4時間培養された場合(f)、さらに、それをEDTAで処理し、5時間培養した場合(g)。白とピンクの目盛りはそれぞれ20μmと50μmを示す。

Claims (17)

  1. ポリヌクレオチドを細胞内に導入するために用いられ前記ポリヌクレオチドおよび炭酸アパタイトから構成される複合体粒子を含有する細胞導入剤の製造方法であって、
    少なくともカルシウムイオン、リン酸イオン、炭酸水素イオン、および前記ポリヌクレオチドを含有する組成物を調製することにより、前記複合体粒子を形成する工程を含むことを特徴とする細胞導入剤の製造方法。
  2. 前記カルシウムイオンおよび前記ポリヌクレオチドを含有する第1の溶液を調製する工程、
    前記リン酸イオンおよび前記炭酸水素イオンを含有する第2の溶液を調製する工程、および、
    前記第1の溶液と前記第2の溶液とを混合して前記組成物を調製する工程を含むことを特徴とする請求項に記載の細胞導入剤の製造方法。
  3. 前記組成物のカルシウムイオン濃度が、0.1mM以上であることを特徴とする請求項またはに記載の細胞導入剤の製造方法。
  4. 前記組成物のリン酸イオン濃度が、0.1mM以上であることを特徴とする請求項のいずれか一項に記載の細胞導入剤の製造方法。
  5. 前記組成物の炭酸水素イオン濃度が、1.0mM以上であることを特徴とする請求項のいずれか一項に記載の細胞導入剤の製造方法。
  6. 前記組成物が、さらにフッ素イオンまたはストロンチウムイオンを含有することを特徴とする請求項のいずれか一項に記載の細胞導入剤の製造方法。
  7. 前記組成物のpHが、pH6.0〜9.0であることを特徴とする請求項のいずれか一項に記載の細胞導入剤の製造方法。
  8. 前記組成物を10℃以上に保持することにより、前記複合体粒子を形成することを特徴とする請求項のいずれか一項に記載の細胞導入剤の製造方法。
  9. 前記細胞導入剤は、ポリヌクレオチドを、ヒトから単離された、またはヒト以外の動物細胞の細胞内に導入するために用いられる、請求項1〜8のいずれか一項に記載の細胞導入剤の製造方法。
  10. 前記複合体粒子の平均粒径が、500nm以下であることを特徴とする請求項1に記載の細胞導入剤の製造方法。
  11. 前記ポリヌクレオチドが、DNAおよび/またはRNAであることを特徴とする請求項1〜11のいずれか一項に記載の細胞導入剤の製造方法
  12. 請求項1〜11のいずれか一項に記載の製造方法により製造される細胞導入剤を用いて、ポリヌクレオチドを、ヒトから単離された、またはヒト以外の動物細胞の細胞内に導入することを特徴とする細胞導入方法。
  13. 前記ポリヌクレオチドが、DNAおよび/またはRNAであることを特徴とする請求項12に記載の細胞導入方法
  14. ポリヌクレオチドを細胞内に導入するために用いられ前記ポリヌクレオチドおよび炭酸アパタイトから構成される複合体粒子を含有する細胞導入剤を製造するための細胞導入剤製造用組成物であって、
    少なくともカルシウムイオン、リン酸イオン、および炭酸水素イオンを含有し、
    前記ポリヌクレオチドを添加することにより前記細胞導入剤を製造することを特徴とする細胞導入剤製造用組成物。
  15. ポリヌクレオチドを細胞内に導入するために用いられ前記ポリヌクレオチドおよび炭酸アパタイトから構成される複合体粒子を含有する細胞導入剤を製造するための細胞導入剤製造用組成物であって、
    少なくともリン酸イオン、および炭酸水素イオンを含有し、
    前記ポリヌクレオチドとカルシウムイオンを添加することにより前記細胞導入剤を製造することを特徴とする細胞導入剤製造用組成物。
  16. 前記ポリヌクレオチドが、DNAおよび/またはRNAであることを特徴とする請求項14または15に記載の細胞導入剤製造用組成物
  17. ポリヌクレオチドを細胞内に導入するために用いられ前記ポリヌクレオチドおよび炭酸アパタイトから構成される複合体粒子を含有する細胞導入剤を製造するための細胞導入剤製造用キットであって、
    少なくともカルシウムイオンを含有する第1成分と、
    少なくともリン酸イオンおよび炭酸水素イオンを含有する第2成分とからなり、
    前記第1成分に前記ポリヌクレオチドを添加した後、当該第1成分および前記第2成分を混合することにより、前記複合体粒子を含有する細胞導入剤を製造することを特徴とする細胞導入剤製造用キット。
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