JP4550176B2 - 音声符号化方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、音声信号の圧縮符号化を行う音声符号化方法に係り、特に音声符号化における符号化パラメータの一つであるピッチ周期の情報を符号化する処理に関する。
【0002】
【従来の技術】
音声信号を低ビットレートで高能率に圧縮符号化する技術は、自動車電話等の移動体通信や企業内通信において、電波の有効利用や通信コストの削減のための重要な技術である。
【0003】
8kbps以下の低ビットレートで品質の優れた復号音声の合成が可能な音声符号化方式として、CELP(Code Excited Linear Prediction)方式が知られている。このCELP方式は、M.R.Schrodeder氏とB.S.Atal氏により、“ Code-Excited Linear Prediction (CELP)High-Quality Speech at Very low Bit Rates”,Proc.ICASSP; 1985, pp.937-939(文献1)で発表されて以来、高品質な音声が合成できる方式として注目され、品質の改善や計算量の削減について種々の検討がなされてきた。
【0004】
CELP方式による音声符号化で必要な構成要素の一つとして、適応符号帳がある。適応符号帳は、入力信号のピッチ予測分析を閉ループ動作または合成による分析(Analysis by Synthesis)によって行うものである。一般に、適応符号帳によるピッチ予測分析は、20〜147サンプルの探索範囲(128候補)でピッチ周期の探索を行って、目標信号に対する歪が最小となるピッチ周期を求め、このピッチ周期の情報を7ビットの符号化データとして伝送することが多い。
【0005】
上述した従来のCELP方式では、サブフレーム単位に閉ループ動作によってピッチ周期を決定するため、ピッチ周期の探索範囲が128候補と大きい場合、計算量が膨大になってしまう。さらに、このような直接的なピッチ周期探索法では、ピッチ周期の情報はサブフレーム当たり7ビット必要となり、仮に4サブフレームで1フレームが構成されるとして、フレーム当たり28ビットものビット数が必要になってしまう。
【0006】
本来、音声信号のピッチ周期の変動はゆるやかな部分が多く、サブフレーム毎に全探索を行う必要はない。このようなピッチ周期の性質を利用して、計算量の削減およびビット数の削減が可能である。そのような観点から、ピッチ周期の探索範囲を限定するための差分ピッチ表現を用いる方法が報告されている。
【0007】
その一つに、ピッチ周期の探索に際し、例えば奇数サブフレームについては全ての候補を探索し、偶数サブフレームについては奇数サブフレームの近傍の候補のみを探索することで、計算量とビット数を削減する方法がJ.P.Campbell, Jr. 氏らによって、“An Expandable Error-Protected 4800 bps CELP coder(U.S. Federal Standard 4800 bps Voice Coder) ”,Proc. ICASSP;1989, pp.735-738)(文献2)で報告されている。この方法によれば、奇数サブフレームについては128候補の全探索、偶数サブフレームについては前サブフレームを基準にして例えば32候補に限定してピッチ周期の探索を行うことにより、ピッチ周期探索に必要な計算量を削減できる。また、偶数サブフレームについてはピッチ周期を32候補から選定すると予め決めてあれば、ピッチ周期の情報を5ビットで表現でき、結果としてサブフレーム数が4の場合、ピッチ周期の情報量をフレーム当たり24ビットに削減することができる。
【0008】
しかし、この方法では奇数サブフレームで求めたピッチ周期に、実際のピッチ周期と大きく異なる値が選択された場合、次のサブフレームにまで影響を与えてしまい、復号音声に品質劣化が知覚されるという問題が生じる。従って、このように前サブフレームで求めたピッチ周期を基準にして現サブフレームのピッチ周期の探索範囲を決定する場合、復号音声の品質低下を招くことの無いようにピッチ周期の探索範囲を決定することが重要である。このような品質劣化を招かないようにするには、探索範囲を大きく設定すればよいが、この方法では計算量やピッチ周期情報のビット数を十分に削減できないという問題が生じる。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
上述したように、従来の音声符号化方法であるCELP方式では、サブフレーム単位の閉ループ探索によってピッチ周期を求めるため、ピッチ周期を求めるのに必要な計算量が膨大となり、しかも符号化データであるピッチ周期情報のビット数が増大するという問題点がある。
【0010】
また、文献2に記載されたようにピッチ周期の探索範囲を限定し、奇数サブフレームについては全ての候補を探索し、偶数サブフレームについては奇数サブフレームの近傍の候補のみを探索するしてピッチ周期を求める方法では、ピッチ周期を求めるための計算量およびピッチ周期情報のビット数が減少するが、奇数サブフレームで実際のピッチ周期と大きく異なる値が選択された場合、次のサブフレームにまで影響を与えて復号音声に品質劣化が知覚されてしまい、これを防ぐために探索範囲を大きくすると計算量やピッチ周期情報のビット数を十分に削減できなくなるという問題点があった。
【0011】
本発明は、このような従来技術の問題点を解消するためになされたもので、音声信号のピッチ周期を少ない計算量で正しく求め、かつ少ない情報量で表現できる音声符号化方法を提供することを目的とする。
【0012】
【課題を解決するための手段】
上記の課題を解決するため、本発明は入力音声信号のピッチ周期を所定の分析範囲から分析により求め、該ピッチ周期の情報を符号化データとして出力する処理を含む音声符号化方法において、過去に求めたピッチ周期の長さに応じてピッチ周期の分析範囲を決定することを特徴とする。
【0013】
入力音声信号をフレームと呼ばれる所定の長さの単位に分割し、フレームをさらにサブフレームと呼ばれる単位に分割して処理する場合を例にとり、図1を用いて本発明の基本的な考えを説明する。
【0014】
図1は、入力音声信号の隣接するサブフレーム間のピッチ周期の変化量の累積頻度を表したものであり、8kHzでサンプリングされた複数話者による約200秒の音声データを用い、有声定常区間とみなせる部分に対しての結果である。
横軸は符号化しようとしている現サブフレームの前サブフレームのピッチ周期に対する現サブフレームのピッチ周期の変化量(サンプル値)を表し、縦軸は累積頻度を百分率で表している。また、図1では前サブフレームのピッチ周期の長さに対応させて6本のグラフを表示している。例えば一番上のグラフは、前サブフレームのピッチ周期が20〜30サンプルのときの累積頻度を表し、以下、前サブフレームのピッチ周期が30〜40サンプル、40〜50サンプル、50〜60サンプル、60〜70サンプル、そして70サンプル以上のときの結果を表している。
【0015】
図1に示されるように、前サブフレームのピッチ周期が20〜30サンプルと短いときには、現サブフレームのピッチ周期は±4サンプル以内にほぼ100%含まれている。一方、前サブフレームのピッチ周期が長くなるほど、前サブフレームと現サブフレームのピッチ周期の変化量が大きくなる傾向にある。特に、前サブフレームのピッチ周期が70サンプルを越えると、ピッチ周期の変化量は±10サンプルまで存在し得るようになる。
【0016】
これらの結果から分かるように、前サブフレームのピッチ周期の長さと、隣接するサブフレーム間(前サブフレームと現サブフレーム間)のピッチ周期の変化量との間には相関がある。図2に、前サブフレームのピッチ周期の長さと、隣接するサブフレームのピッチ周期の変化量の関係を示す。
【0017】
そこで、本発明ではこのような前サブフレームのピッチ周期の長さと隣接するサブフレーム間のピッチ周期の変化量との間の相関を利用し、前サブフレームで求められたピッチ周期の長さに応じて現サブフレームのピッチ周期の探索範囲を決定する。具体的には、前サブフレームで求められたピッチ周期が長いときには現サブフレームのピッチ周期の探索範囲を大きくし、前サブフレームで求められたピッチ周期が短いときには現サブフレームのピッチ周期の探索範囲を小さくする。これによりピッチ周期探索のための計算量の削減と、復号音声の品質改善を実現することが可能となる。
【0018】
また、本発明では過去の駆動信号系列を予め定められた範囲に含まれる周期で繰り返して生成される複数の適応ベクトルを格納した適応符号帳を有し、この適応符号帳から取り出される適応ベクトルを合成フィルタに通して得られる信号と目標ベクトルとの誤差が最小となる周期の適応ベクトルを所定の探索範囲から探索し、この探索した適応ベクトルの情報を符号化データとして出力する処理を含む音声符号化方法に適用する場合には、入力音声信号を予め定められた長さのフレームに分割し、各フレームの音声信号をさらにサブフレームに分割して、符号化しようとする現サブフレームの前サブフレームで求められたピッチ周期の長さに応じて現サブフレームについての適応符号帳からの適応ベクトルの探索範囲を決定することを特徴とする。
【0019】
この探索範囲の決定に際しても、前サブフレームで求められたピッチ周期が長いときには適応符号帳からの適応ベクトルの探索範囲、つまり現サブフレームのピッチ周期の探索範囲を大きくし、前サブフレームで求められたピッチ周期が短いときには探索範囲を小さくすることにより、探索のための計算量の削減と復号音声の品質改善を実現することが可能となる。
【0020】
さらに、本発明は前サブフレームで求められたピッチ周期を基準として、現サブフレームのピッチ周期の前サブフレームで求められたピッチ周期からの変化量を求め、この変化量を現サブフレームのピッチ周期の情報として符号化することを特徴とする。
【0021】
前サブフレームのピッチ周期の長さに関わらず、同一符号量で現サブフレームのピッチ周期の情報を表す構成のときは、前サブフレームのピッチ周期が短い場合に全く選択されないピッチ周期候補が表れたり、前サブフレームのピッチ周期が長い場合に予め想定した以上の変化量が出現して、復号音声の品質低下を招くことがある。
【0022】
これに対し、本発明では前サブフレームのピッチ周期が短い場合は、前サブフレームと現サブフレームとの間のピッチ周期の変化量が小さいことから、前サブフレームのピッチ周期を基準としたときの現サブフレームのピッチ周期探索範囲を小さくし、その分ピッチ周期探索候補の間隔を狭くして無駄なピッチ周期探索候補を無くすようにする。逆に、前サブフレームのピッチ周期が長い場合には、前サブフレームのピッチ周期を基準としたときの現サブフレームのピッチ周期探索範囲を大きくし、その分ピッチ周期探索候補の間隔を広くしてピッチ周期の大きな変化にも対応できるようにする。
【0023】
このようにすることによって、復号音声の品質向上を図るとともに、現サブフレームのピッチ周期の前サブフレームで求められたピッチ周期からの変化量を現サブフレームのピッチ周期の情報として符号化することにより、ピッチ周期の情報量を効果的に削減できる。
【0024】
さらに、本発明では現サブフレームのピッチ周期を求める際のピッチ周期探索候補の配置に関して、前サブフレームで求めたピッチ周期により近い候補については密に、より遠い候補については疎にそれぞれ配置することを特徴とする。図1から分かるように、前サブフレームのピッチ周期の近傍ほど現サブフレームのピッチ周期が出現する確率が高く、また、この傾向は前サブフレームのピッチ周期が短いほど顕著に現れる。従って、与えられた探索範囲に対し現サブフレームのピッチ周期の候補を探索範囲内に均一に配置するよりも、前サブフレームのピッチ周期の近傍は密に、離れるほど疎に配置した方が復号音声の品質は向上することになる。
【0025】
さらに、この場合において前サブフレームのピッチ周期の長さに応じて疎密の度合いを変えることで、復号音声の品質はより向上する。特に、前サブフレームのピッチ周期が短いときには探索範囲を小さくとって、探索候補の密の度合いを高くするか、もしくは密の範囲を広くすることが可能となり、ピッチ周期の短い音声の復号品質を改善することができる。
【0026】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。
(第1の実施形態)
図3に、本発明の第1の実施形態に係る構成を示す。図3において、音声入力端子101から与えられる入力音声信号は、ピッチ周期算出部102に入力される。ピッチ周期算出部102は、入力音声信号に内在するピッチ周期を算出し、そのピッチ周期の情報を符号化データ出力端子103から符号化データとして出力するものであり、ピッチ分析部104とピッチ周期の分析範囲決定部105およびバッファ106からなっている。
【0027】
以下、図4に示すフローチャートを用いてピッチ周期算出部102の処理の流れを説明する。
まず、バッファ106には、符号化データ出力端子103から出力された過去のピッチ周期Lprvの情報が格納されており、この過去のピッチ周期Lprvを基準として分析範囲決定部105でピッチ周期の分析範囲を決定する(ステップS1001)。
次に、ステップS1001で決定された分析範囲に含まれるピッチ周期の候補について、ピッチ分析部104でピッチ周期の分析(ピッチ分析)を行い、ピッチ周期Lを求め(ステップS1002)、このピッチ周期Lの情報を符号化データ出力端子103より出力する。ピッチ分析の方法としては、例えば入力音声信号または予測残差信号の相関分析によりピッチ周期を求める方法を用いることができる。
最後に、ステップ1002でピッチ分析部104により求められたピッチ周期Lの情報を次の処理の準備のためにバッファ106に過去のピッチ周期Lprvの情報として格納する(ステップS1003)。
【0028】
次に、図5を用いてピッチ周期の分析範囲決定部105について詳細に説明する。
図5(a)は過去のピッチ周期Lprvが短い場合、図5(b)は過去のピッチ周期Lprvが長い場合のピッチ周期分析範囲(探索範囲)の説明図である。
過去のピッチ周期Lprvが短い場合、ピッチ周期の変化量が小さいことから、図5(a)に示すように探索範囲を例えば−1〜+2サンプルの小さい範囲に設定しても、ピッチ周期の探索を行うことができる。逆に、過去のピッチ周期Lprvが長い場合は、ピッチ周期の変化量が多いことから、探索範囲を図5(b)に示すように、例えば−3〜+4サンプルと大きく設定する。
【0029】
このように本実施形態では、過去のピッチ周期Lprvの長さに応じてピッチ周期の分析範囲を決定することにより、ピッチ周期の分析に必要とされる平均的な計算量を削減することが可能になると同時に、復号音声の品質改善を実現することができる。
【0030】
(第2の実施形態)
図6に、本発明の第2の実施形態におけるピッチ周期算出部102の構成を示す。本実施形態の特徴は、ピッチ周期の分析に、過去の駆動信号系列を予め定められた範囲に含まれる周期で繰り返して生成される複数の適応ベクトルを格納した適応符号帳を用いる点にある。すなわち、本実施形態におけるピッチ周期算出部102は、適応符号帳201、探索範囲決定部202、バッファ203、乗算器204、重み付き合成フィルタ205、減算器206、聴感重みフィルタ207および歪み算出部208からなる。
【0031】
以下、図7に示すフローチャートを用いて、本実施形態におけるピッチ周期算出部102の処理の流れを説明する。
第1の実施形態と同様に、バッファ203には出力端子103から出力された過去のピッチ周期Lprvの情報が格納されており、この過去のピッチ周期Lprvを基準として探索範囲決定部202でピッチ周期の探索範囲を決定する(ステップS2001)。
次に、こうして決定されたピッチ周期探索範囲に含まれるピッチ周期を基に、適応符号帳201から適応ベクトルを取り出し(ステップS2002)、この適応ベクトルと入力音声信号との重み付き誤差信号の大きさを求める(ステップS2003)。重み付き誤差信号の大きさは、直接的には以下のようにして求められる。
【0032】
すなわち、適応符号帳201から取り出した適応ベクトルに乗算器204で理想ゲインgoptを乗じ、そのゲインを乗じた後の信号を重み付き合成フィルタ205に通して合成信号を生成する。そして、入力端子101から入力される入力音声信号を聴感重みフィルタ207に通し、この聴感重みフィルタ207から出力される信号と合成フィルタ205から出力される合成信号との差信号を減算器206で求め、この差信号のパワー(歪み)を歪み算出部208で算出することで、重み付き誤差信号の大きさを求める。
【0033】
聴感重みフィルタ207および重み付き合成フィルタ205は、ここでは図示していないLPC係数分析部によって求められたLPC係数を基に設定される。
また、実際上は、このような探索処理を簡略化する方法が報告されているが、本発明とは直接関係しないので、ここでは説明を省略する。
【0034】
次に、こうして求められた重み付き誤差信号の大きさが最小となるときのピッチ周期を歪み算出部208で求め(ステップS2004)、次いで探索範囲内のピッチ周期の候補を全て探索したかどうかを判断し(ステップS2005)、全て探索してなければ、残った探索候補に対してステップS2002以降の処理を継続して行う。ピッチ周期の全ての候補が探索されていれば、重み付き誤差信号の大きさが最小となるピッチ周期の情報を出力端子103より出力し、同時に、求められたピッチ周期の情報を次のサブフレーム処理のためにバッファ203に格納する(ステップS2006)。
【0035】
ここでピッチ周期の探索に際しては、第1の実施形態と同様、図5で説明したように過去のピッチ周期、つまり前サブフレームのピッチ周期が短いときには探索範囲を小さくとり、前サブフレームのピッチ周期が長いときには探索範囲を大きくとることにより、本実施形態のような適応符号帳を有する音声符号化システムにおける計算量の削減を実現できる。
【0036】
(第3の実施形態)
図8に、本発明の第3の実施形態に係る音声符号化システムの構成を示す。本実施形態は、CELP方式の音声符号化システムに本発明を適用した点にある。
図8において、図6と同一名称のブロックには同一符号を付して詳細な説明を省略し、第2の実施形態との相違点を中心に説明する。
【0037】
音声入力端子301からディジタル化された音声信号が入力され、フレーム・サブフレーム構成部302において予め定められた長さのフレームに分割され、各フレームはさらにサブフレームに分割される。フレーム・サブフレーム構成部302からの音声信号はLPC係数分析部305に与えられ、ここでLPC分析されてLPC係数が算出される。このLPC係数は、聴感重みフィルタ307および重み付き合成フィルタ315を構成する際に利用される。
【0038】
LPC係数分析部305で求められたLPC係数は、LPC係数量子化部306によって量子化され、この量子化によって求められるLPC係数インデックスはマルチプレクサ318に与えられ、後述する他の情報とともに多重化される。
また、量子化後に復号されたLPC係数は、重み付き合成フィルタ315を構成する際に用いられる。
【0039】
バッファ303には過去のピッチ周期Lprvの情報が格納されており、この過去のピッチ周期Lprvを基準に探索範囲決定部304でピッチ周期の探索範囲が決定され、この探索範囲に含まれるピッチ周期を基に適応符号帳308から適応ベクトルが取り出されて生成する。これらの点は、第2の実施形態と同様である。そして、この適応ベクトルと適応ベクトルゲイン符号帳310から選択される適応ベクトルゲインとの積が乗算器309でとられる。乗算器312では同様に、雑音符号帳311から選択される雑音ベクトルと雑音ベクトルゲイン符号帳313から選択される雑音ベクトルゲインとの積がとられる。加算器314では、乗算器309と乗算器312から得られるそれぞれの信号の和がとられ、駆動ベクトルが生成される。
【0040】
このようにして生成された駆動ベクトルは、重み付き合成フィルタ315に通して合成ベクトルが生成される。減算器316では、音声信号を聴感重みフィルタ307に通して得られる目標ベクトルと合成ベクトルとの差がとられ、この差信号を基に歪算出部317で歪値が求められる。そして、この歪値が最小となるときの適応ベクトル、適応ベクトルゲイン、雑音ベクトルおよび雑音ベクトルゲインの組み合わせが歪み算出部317で探索される。この探索を効率的に行う方法としては、例えばサブフレーム毎に適応ベクトル、適応ベクトルゲイン、雑音ベクトル、雑音ベクトルゲインの順に直列的に求めていく方法がある。また、サブフレーム毎に適応ベクトルゲインと雑音ベクトルゲインをベクトル量子化によって同時最適化を図る方法もある。
【0041】
このようにして歪値が最小となるときの適応ベクトル、適応ベクトルゲイン、雑音ベクトル、雑音ベクトルゲインを表すインデックスがマルチプレクサ318に与えられる。マルチプレクサ318では、LPC係数量子化部306で求められたLPC係数インデックス、適応ベクトルのインデックス、適応ベクトルゲインのインデックス、雑音ベクトルのインデックスおよび雑音ベクトルゲインのインデックスを多重化して、この多重化したデータを符号化データとして符号化データ出力端子319から出力する。そして、次の符号化処理の準備のため、ここで求めた適応ベクトルのインデックスから導出されるピッチ周期Lの情報がバッファ303に格納される。
【0042】
(第4の実施形態)
図9に、本発明の第4の実施形態に係る音声符号化システムの構成を示す。図8と同一部分に同一符号を付して説明すると、本実施形態では前サブフレームで求められたピッチ周期を基準にし、そのピッチ周期に対する変化量を符号化するという点で、これまでの実施形態と異なる。この場合、現サブフレームのピッチ周期は予め定められた符号量で符号化されるため、現サブフレームのピッチ周期の探索候補数は、前サブフレームのピッチ周期の長さに関わらず同一である。そのために、前サブフレームのピッチ周期の長さに依存して現サブフレームのピッチ周期の探索範囲を変化させる、という本発明の基本的な特徴に対応させるためには、ピッチ周期の探索候補の間隔を変える必要がある。この点については、図10を用いて後に詳しく説明する。
【0043】
図9において、探索候補決定部320はバッファ303から与えられる前サブフレームのピッチ周期Lprvを基に探索候補を決定する。ここでは、前サブフレームで求めたピッチ周期を基準としたときのピッチ周期の変化量を3ビット(8候補)で符号化する場合について、図10を用いて説明する。
【0044】
図10(a)は、前サブフレームのピッチ周期が短いときの現サブフレームの探索候補を示している。前サブフレームのピッチ周期Lprvを中心に、与えられた探索範囲(−1.5〜+2.0サンプル)に対し各候補が0.5サンプルの間隔で一様に配置されている。この状態の下で各候補の目標信号に対する歪値が順次算出され、最小歪みとなるときのピッチ周期が求められる。仮に、ピッチ周期がLprv+0.5サンプルが選択された場合、「4」が符号として出力される。図10(b)は、前サブフレームのピッチ周期が長いときの現サブフレームの探索候補を図10(a)に対比して示している。ここでは、前サブフレームのピッチ周期Lprvを中心に、与えられた探索範囲(−3.0〜+4.0サンプル)に対し各候補が1サンプルの間隔で一様に配置されている。このように、前サブフレームのピッチ周期の長さによって、現サブフレームのピッチ周期の探索範囲と探索候補の間隔を変えることにより、ピッチ周期の効率的な符号化を行うことが可能となる。
【0045】
なお、ここでは前サブフレームのピッチ周期を短い場合と長い場合という2つのカテゴリ分類した場合について説明したが、これに限定されることはなく、前サブフレームのピッチ周期をさらに多くのカテゴリに分類して、それぞれ異なる探索範囲、探索候補の間隔を用いて符号化を行ってもよい。これにより一層効率的に、ピッチ周期の符号化を行うことが可能となる。
【0046】
また、フレーム内における最初のサブフレームでは前サブフレームのピッチ周期を基準とすることなしにピッチ周期を独立に符号化し、それ以降のサブフレームでは前述したような前サブフレームのピッチ周期を基準にして、そのピッチ周期に対する変化量を符号化する構成をとってもよい。この構成によると、ビット誤り時の誤り耐性を向上させることができる。すなわち、ビット誤りがピッチ周期を表す符号に発生したとき、フレーム内で誤ったピッチ周期の伝播が停止し、次のフレームヘ影響を与えることが無いという効果が得られる。
【0047】
また、ピッチ周期の連続性判定を行い、ピッチ周期が連続的に変化しているという場合にのみ、本実施形態で説明したような前サブフレームのピッチ周期を基準にしてその変化量を符号化するようにするようにすることが望ましい。前フレームのピッチ周期と現フレームのピッチ周期の相関関係は、有声定常部のようにピッチ周期が安定している区間で現われ、例えば音声の立ち上がり部などのような区間では、このような相関関係は成り立ちにくい。よって、ピッチ周期の連続性を監視し、連続である場合にのみ本実施形態を適用することで、ピッチ周期が不安定な区間での品質劣化を回避することができる。
【0048】
(第5の実施形態)
次に、本発明の第5の実施形態を図11を用いて説明する。本実施形態は、前サブフレームで求められたピッチ周期を基準にし、その変化量を符号化するτの実施形態を変形した形態である。第4の実施形態では、現サブフレームのピッチ周期の探索候補は与えられた探索範囲に対して均一の間隔で配置されていたが、本実施形態では与えられた探索範囲に対し、前サブフレームで求めたピッチ周期に近いときに密に、遠いときに疎に現サブフレームのピッチ周期の探索候補が配置されることを特徴とする。
【0049】
ここでは、前サブフレームで求めたピッチ周期を基準としたときのピッチ周期の変化量を3ビット(8候補)で符号化する場合について、図11を用いて説明する。図11(a)は、前サブフレームのピッチ周期が短いときの現サブフレームの探索候補を示している。前サブフレームのピッチ周期Lprvを中心に、与えられた探索範囲(−1.5〜+2.0)に対しLprvに近い探索候補ほど間隔が狭く、Lprvに遠い探索候補ほど間隔が広く配置されている。この状態の下で各候補の目標信号に対する歪値が順次算出され、最小歪みとなるときのピッチ周期が求められる。仮に、ピッチ周期がLprv−0.25サンプルが選択された場合、「2」が符号として出力される。一方、図11(b)は、前サブフレームのピッチ周期が長いときの現サブフレームの探索候補を図11(a)に対比して示している。ここでは、与えられた探索範囲(−3.0〜+4.0)に対しLprvに近い探索候補ほど間隔が狭く、Lprvに遠い探索候補ほど間隔が広く配置されている。
【0050】
このように本実施形態では、現サブフレームのピッチ周期の候補を探索範囲内に均一に配置せず、与えられた探索範囲に対し前サブフレームのピッチ周期の近傍は密に、離れるほど疎に配置することにより、復号音声の品質を向上させることができる。
【0051】
本実施形態においても第4の実施形態と同様の変形が可能であり、例えば前サブフレームのピッチ周期を短い場合と長い場合という2つのカテゴリでなく、さらに多くのカテゴリに分類して、それぞれ異なる探索範囲、探索候補の配置を用いて符号化を行ってもよく、それによりさらに効率的なピッチ周期の符号化を行うことが可能となる。
【0052】
また、フレーム内における最初のサブフレームでは、前サブフレームのピッチ周期を基準とすることなしにピッチ周期を独立に符号化し、それ以降のサブフレームでは、前述したような前サブフレームのピッチ周期を基準にしてそのピッチ周期に対する変化量を符号化する構成をとることにより、ビット誤り時の誤り耐性を向上させることができる。
【0053】
また、ピッチ周期の連続性判定を行い、ピッチ周期が連続的に変化しているという場合にのみ、本実施形態で説明したような前サブフレームのピッチ周期を基準にしてその変化量を符号化するようにしてもよい。
【0054】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば前サブフレームのピッチ周期の長さと前サブフレーム・現サブフレーム間のピッチ周期の変化量との相関を利用し、前サブフレームで求めたピッチ周期の長さに応じて現サブフレームのピッチ周期の探索範囲を決定することにより、効率的な探索範囲の決定および探索候補の配置を行うことで、復号音声の品質を維持しつつ、ピッチ周期の探索に必要な計算量の削減を行うことができ、また符号量の増加を伴わず復号音声の品質を改善することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の基本原理を説明するための入力音声信号の隣接するサブフレーム間のピッチ周期変化量の累積頻度を前サブフレームのピッチ周期をパラメータとして示す図
【図2】同じく本発明の基本原理を説明するための入力音声信号の前サブフレームのピッチ周期の長さと隣接するサブフレーム間のピッチ周期変化量との間の相関を示す図
【図3】本発明の第1の実施形態に係る音声符号化方法を適用した音声符号化システムにおけるピッチ周期算出部の構成を示すブロック図
【図4】同実施形態のピッチ周期算出部の処理手順を示すフローチャート
【図5】同実施形態における分析範囲決定部によるピッチ周期の分析範囲決定方法を説明するための図
【図6】本発明の第2の実施形態に係る音声符号化方法を適用した音声符号化システムにおけるピッチ周期算出部の構成を示すブロック図
【図7】同実施形態のピッチ周期算出部の処理手順を示すフローチャート
【図8】本発明の第3の実施形態に係る音声符号化方法を適用した音声符号化システムの構成を示すブロック図
【図9】本発明の第4の実施形態に係る音声符号化方法を適用した音声符号化システムの構成を示すブロック図
【図10】同実施形態における探索候補決定部によるピッチ周期の探索候補決定方法を説明するための図
【図11】本発明の第5の実施形態におけるピッチ周期の探索候補決定方法を説明するための図
【符号の説明】
101…音声信号入力端子
102…ピッチ周期算出部
103…ピッチ周期情報出力端子
104…ピッチ周期算出部
105…バッファ
201…適応符号帳
202…探索範囲決定部
203…バッファ
204…乗算器
205…重み付き合成フィルタ
206…減算器
207…聴感重みフィルタ
208…歪み算出部
301…音声信号入力端子
302…フレーム・サブフレーム構成部
303…バッファ
304…探索範囲決定部
305…LPC係数分析部
306…LPC係数量子化部
307…聴感重みフィルタ
308…適応符号帳
309,312…乗算器
310…ゲイン符号帳
311…雑音符号帳
313…雑音ベクトルゲイン符号帳
314,316…減算器
315…重み付き合成フィルタ
317…歪み算出部
318…マルチプレクサ
319…音声符号化データ出力端子
Claims (3)
- 入力音声信号を予め定められた長さのフレームに分割し、各フレームの音声信号をさらにサブフレームに分割して、各サブフレームのピッチ周期を所定の探索範囲から探索により求め、該ピッチ周期の情報を符号化データとして出力する処理を含む音声符号化方法において、
符号化しようとする現サブフレームより時間的に過去の前サブフレームで求められたピッチ周期が長いほど現サブフレームについての前記探索範囲を大きくし、
前記現サブフレームのピッチ周期を求める際のピッチ周期探索候補のうち、前記前サブフレームで求められたピッチ周期により近い候補を密に、前記前サブフレームで求められたピッチ周期からより遠い候補を疎にそれぞれ配置することを特徴とする音声符号化方法。 - 過去の駆動信号系列を予め定められた範囲に含まれる周期で繰り返して生成される複数の適応ベクトルを格納した適応符号帳を用い、この適応符号帳から取り出される適応ベクトルを合成フィルタに通して得られる信号と目標ベクトルとの誤差が最小となる周期の適応ベクトルを所定の探索範囲から探索し、この探索した適応ベクトルの情報を符号化データとして出力する処理を含む音声符号化方法において、
入力音声信号を予め定められた長さのフレームに分割し、各フレームの音声信号をさらにサブフレームに分割して、各サブフレームのピッチ周期を求め、符号化しようとする現サブフレームより時間的に過去の前サブフレームで求められたピッチ周期が長いほど現サブフレームについての前記探索範囲を大きくし、
前記現サブフレームのピッチ周期を求める際のピッチ周期探索候補のうち、前記前サブフレームで求められたピッチ周期により近い候補を密に、前記前サブフレームで求められたピッチ周期からより遠い候補を疎にそれぞれ配置することを特徴とする音声符号化方法。 - 前記現サブフレームのピッチ周期の前記前サブフレームで求められたピッチ周期からの変化量を求め、この変化量を前記現サブフレームのピッチ周期の情報として符号化することを特徴とする請求項1又は2記載の音声符号化方法。
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