JP4570246B2 - 細胞活性を調節する方法 - Google Patents
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Description
(技術分野)
本発明は、細胞活性を調節する方法およびそのために有用な薬剤に関する。具体的には、本発明は、内皮細胞活性およびさらに具体的には内皮細胞接着分子の発現を調節する方法に関する。最も具体的には、本発明は内皮細胞接着分子の発現を予防または減少して、冠状心疾患を処置する方法を提供する。
【0002】
(背景技術)
本明細書において引用する参考文献一覧を明細書の最後に記載する。本明細書において引用するヌクレオチドおよびアミノ酸配列の配列番号(SEQ ID NO)を参考文献の直前に定義する。
【0003】
アテローム性冠状動脈心疾患は、欧米において主な死亡原因の一つである(世界保健統計年鑑(World Health Statistics Annual))。アテローム形成の初期事象は、VCAM−1、ICAM−1およびE−セレクチンなどの接着分子によって内皮に単核細胞が接着することである。VCAM−1、ICAM−1およびE−セレクチンはすべて、サイトカインに応じて迅速に合成される。VCAM−1は、単核白血球が内皮に接着するのに主に関係する。VCAM−1は炎症性サイトカインIL−1およびTNF−αによって迅速に誘発され、その誘発は48−72時間維持される。ICAM−1は、多細胞型で発現され、活性化された内皮への単核細胞およびリンパ球の接着に関係する。E−セレクチンは、内皮に沿って動く軸流からサイトカインを捕捉するのに重要な内皮特異的接着分子である(Abbassi et al., 1993)。
【0004】
初期アテローム性動脈硬化症病変の進行と成長アテローム性動脈硬化症プラークに対する接着分子の関与については、かなりの証拠がある(Van der Wal et al., 1992)。変動的で低レベルのE−セレクチンおよびVCAM−1が、プラークを覆う動脈内皮において検出された(Van der Wal et al., 1992; Wood et al., 1993)。VACM−1はまた、新血管形成の領域およびプラークの基部における炎症性湿潤において観察され、動脈内膜の新血管形成が進行した冠状動脈病変に炎症性細胞を補充する重要な部位であることが示唆されている(O'Brien et al., 1993)。ICAM−1は、アテローム性プラークを覆う内皮において発現することが示された(Johnson-Tidey et al., 1994)。
【0005】
接着分子の発現など細胞活性の上方制御を引き起こす情報伝達は明らかにされていない。これら細胞の情報伝達メカニズムを解明することは、冠状動脈性心疾患および炎症性症状など、該細胞活性が有害である症状への治療戦略の開発に必要である。
【0006】
本発明に至る研究において、本発明者はスフィンゴシンキナーゼ情報伝達経路を同定した。その経路を通じて、接着分子発現などの細胞活性が達成される。この経路の個々の構成成分の発現および活性を調節することにより、これらの細胞活性が調節される。本発明者はまた、スフィンゴシンキナーゼ活性を発揮する薬剤およびスフィンゴシンキナーゼ活性のアゴニストおよびアンタゴニストとして機能し得る薬剤を検出するための迅速で高容量のアッセイを開発した。
【0007】
(発明の要約)
下記の本明細書および請求の範囲を通して、文脈からして別の意味に取らざるを得ない場合を除き、単語“含む(comprise)”および変体の“含む(comprises)”、“含んでいる”は、記述されたそのもの、その方法または両者の複合を含意するが、他のもの、方法または両者の複合を排除することを意味するわけではない。
【0008】
本発明の1つの態様は、哺乳動物における細胞活性を調節する方法に関し、該方法は、スフィンゴシンキナーゼ情報伝達経路の1以上の成分の活性を調節するのに十分な時間および条件でもって、薬剤の有効量を該哺乳動物に投与することを含む。
【0009】
本発明の別の態様は、哺乳動物における接着分子発現を調節する方法に関し、該方法は、スフィンゴシンキナーゼ情報伝達経路の1以上の成分の活性を調節するのに十分な時間および条件でもって、薬剤の有効量を該哺乳動物に投与することを含む。
【0010】
本発明のさらに別の態様は哺乳動物における接着分子発現を調節する方法を提供し、該方法は、スフィンゴシンキナーゼおよび/またはSph−1−Pの1つまたは両方の活性を調節するのに十分な時間および条件でもって、薬剤の有効量を該哺乳動物に投与することを含む。
【0011】
本発明のさらに別の態様は、哺乳動物における内皮細胞接着分子発現を調節する方法に関し、該方法は、スフィンゴシンキナーゼ情報伝達経路の1以上の成分の活性を調節するのに十分な時間および条件でもって、薬剤の有効量を該哺乳動物に投与することを含む。
【0012】
本発明のさらに別の態様は、哺乳動物における内皮細胞接着分子発現を下方調整する方法を提供し、該方法は、スフィンゴシンキナーゼおよび/またはSph−1−Pの1つまたは両方の活性を調節するのに十分な時間および条件でもって、薬剤の有効量を該哺乳動物に投与することを含む。
【0013】
本発明のさらに別の態様は哺乳動物における接着分子発現を調節する方法に関し、該方法は、スフィンゴシンキナーゼ情報伝達経路の1以上の成分またはその機能的等価物の有効量を該哺乳動物に投与することを含む。
【0014】
本発明のさらに別の態様は炎症メカニズムを含む疾患状態を治療または予防する方法に関し、該方法は、スフィンゴシンキナーゼ情報伝達経路の1以上の成分の活性を調節するのに十分な時間および条件でもって、薬剤の有効量を該哺乳動物に投与することを含む。情報伝達経路において該調節は接着分子発現をもたらす。
【0015】
本発明のさらに別の態様は、冠状心疾患を示す哺乳動物を処置する方法を提供し、該方法は、スフィンゴシンキナーゼ情報伝達経路の1以上の成分を下方調整するのに十分な時間と条件で薬剤の有効量を該哺乳動物に投与することを含む。情報伝達経路において、該下方調整は内皮細胞接着分子発現の下方調整をもたらす。
【0016】
本発明のさらに別の態様は、炎症メカニズムを含む疾患状態を治療または予防する方法を提供し、該方法は、該哺乳動物にスフィンゴシンキナーゼ情報伝達経路の1以上の成分またはその機能的等価物を投与することを含む。
【0017】
本発明のさらに別の態様は、哺乳動物のおける接着分子発現を調節する医薬の製造において、スフィンゴシンキナーゼ情報伝達経路の1以上の成分の活性を調節し得る薬剤を使用することに関する。
【0018】
本発明のさらに別の態様は、哺乳動物のおける接着分子発現を調節する医薬の製造において、スフィンゴシンキナーゼ情報伝達経路の1以上の成分またはその機能的等価物を使用することに関する。
【0019】
本発明のさらに別の態様は、スフィンゴシンキナーゼ情報伝達経路の1以上の成分の調節において用いる薬剤に関する。情報伝達経路では該成分が接着分子発現を調節する。
【0020】
本発明のさらに別の態様は、哺乳動物における接着分子発現を調節するのに用いるスフィンゴシンキナーゼ情報伝達経路の1以上の成分またその機能的等価物に関する。
【0021】
本発明のさらに別の態様は、スフィンゴシンキナーゼ情報伝達経路の1以上の成分を調節し得る薬剤、および1以上の薬学的に許容される担体および/または希釈剤を含む医薬組成物に関する。情報伝達経路では該調節が接着分子発現の調節をもたらす。
【0022】
本発明のさらに別の態様は、スフィンゴシンキナーゼ情報伝達経路の1以上の成分またその機能的等価物、および1以上の薬学的に許容される担体および/または希釈剤を含む医薬組成物に関する。
【0023】
本発明の別の態様は、脂質に構造的または機能的に反応性の分析物を検出する方法に関する。該方法は次のいずれかを、
(i)分析物が放射標識された該分析物;または
(ii)該分析物とレポーター分子が放射標識されたレポーター分子、該分析物は該レポーター分子と同時にまたは別個に該脂質と接触させられる;
該脂質とシンチラントの存在下に、脂質放射標識複合体が該シンチラントを形成し励起するのに十分な時間および条件で接触せしめ、該励起シンチラントを検出する工程を含む。
【0024】
本発明の別の態様は、スフィンゴシンに構造的または機能的に反応性の分析物を検出する方法に関する。該方法は次のいずれかを、
(i)分析物が放射標識された該分析物;または
(ii)該分析物とレポーター分子が放射標識されたレポーター分子、該分析物は該レポーター分子と同時にまたは別個に該脂質と接触させられる;
該スフィンゴシンとシンチラントの存在下に、スフィンゴシン放射標識複合体が該シンチラントを形成し励起するのに十分な時間および条件で接触せしめ、該励起シンチラントを検出する工程を含む。
【0025】
本発明の別の態様は、スフィンゴシンキナーゼ活性を示す分析物検出する方法に関する。該方法は、該分析物および33P−ATPとスフィンゴシンとをシンチラントの存在下に接触せしめる工程を含む。該分析物は該33P−ATPと同時にまたは別個に該スフィンゴシンに、33Pスフィンゴシン複合体が該シンチラントを形成し励起するのに十分な時間と条件で接触せしめ、該励起シンチラントを検出する。
【0026】
(図面の簡単な説明)
図1は、接着タンパク質VCAM−1およびE−セレクチンの腫瘍壊死因子(TNF)調節誘導に対する高密度リポタンパク質(HDL)の効果を示すグラフである。平均蛍光強度は、細胞表面の接着分子の発現強度を表わすフローサイトメーター測定である。
【0027】
図2は、接着タンパク質発現に対するスフィンゴシンキナーゼ阻害剤の効果を示すグラフである。細胞表面発現の強度は、TNFの100Uにより起された平均蛍光強度の%として測定された。図2Aの黒印は、接着タンパク質に対する細胞透過性セラミド(C2−セラミド)の作用を表わす。白印は100U/ml TNFの存在でのセラミドの作用を表わす。図2Bはスフィンゴシン−1−ホスフェート(Sph−1−P)の作用を示す。図2Cは、TNFまたはSph−1−Pにより起された接着タンパク質発現(MFI)に対するジメチルスフィンゴシン(DMS)の効果を示す。図2Dは、E−セレクチンmRNAに対するこれらの薬剤の作用を示す。
【0028】
図3は、スフィンゴシン経路の主要成分に対するHUVECのTNF処理後の時間的変化を示すグラフである。白丸は、図3Aではスフィンゴシンの加水分解を、図3Bではセラミドの生成を、図3Cではスフィンゴシンキナーゼ活性を、図3Dではスフィンゴシン−1−ホスフェートの形成を表わし、すべて時間0からの%である。黒丸は、HDLでHUVECを前処置した作用を示す。
【0029】
図4は、ERK(図4A)およびNF−κB(図4B)の生成に対するSph−1−P、TNFおよびHDLの作用についての写真表示である。棒グラフは、ERK活性化に対する3つの独立の実験の要約である。(±SEM)。*はTNFとの差異についてのp値を<0.01で、†は<0.05で、‡は無に対するp<0.01を表わす。図4Bの上部はNF−κBによるゲル遅速化を示す。図4Bの下部は、NF−κBのp50およびp65成分に特異的な抗体のスーパーシフトを示し、TNFおよびSph−1−Pにより促進されたNF−κBの類似の組成を示す。
【0030】
図5は、HDLがTNF−α誘導の接着タンパク質発現を阻害するスフィンゴシンキナーゼ経路についての模式図である。
【0031】
図6は、スフィンゴシンキナーゼ活性の多ウェルアッセイについての模式図である。アッセイの基本は、多ウェルプレートの壁に吸収により結合したスフィンゴシンのリン酸エステル化である。プレートでは壁がシンチラントで満たされている(Flashplates, New England Nuclear)。γ−33P標識ATPを酵素源の存在でインキュベートする。活性酵素が存在すると33Pはスフィンゴシンに移行する。ウェルを洗い、未結合33Pを除去する。スフィンゴシンに結合した33Pはシンチラントを励起し、シンチレーション計数器で測定される信号が生じる。
【0032】
図7は、スフィンゴシンキナーゼ活性が多ウェルアッセイで測定したときに400分まで直線状であることを示すグラフである。50μlの内皮細胞抽出物(実施例8に記載のようにつくり、スフィンゴシンキナーゼ活性を有する)および50μlのATP溶液(400μM ATP/20μCi/ml 33P−ATP含有)を、リン脂質混合でコートしたフラッシュプレートと共に、スフィンゴシンあり(黒四角)またはスフィンゴシンなし(白四角)で、インキュベートし、そして洗滌前の表示時間で37℃でインキュベートした。
【0033】
図8は、スフィンゴシンキナーゼ活性について各組織毎に示すグラフである。50μlの抽出物からの高速“上澄”(白棒)および“ペレット”(黒棒)フラクションをスフィンゴシンキナーゼ活性についてアッセイした。
【0034】
(好ましい実施態様についての詳細な説明)
本発明の1つの態様は、哺乳動物における細胞活性を調節する方法に関し、該方法は、スフィンゴシンキナーゼ情報伝達経路の1以上の成分の活性を調節するのに十分な時間および条件でもって、薬剤の有効量を該哺乳動物に投与することを含む。
【0035】
用語“哺乳動物”は、ヒト、霊長類、家畜(例えばウマ、ウシ、ヒツジ、ブタ、ヤギ)、実験用動物(例えばマウス、ラット、ウサギ、モルモット)、愛玩動物(例えば、イヌ、ネコ)、捕獲野生動物(例えばカンガルー、シカ、キツネ)であって、好ましくは、哺乳動物はヒトまたは実験用動物である。さらに好ましくは、哺乳動物はヒトである。
【0036】
“細胞活性を調節する”とは、細胞が行い得る活性の1以上を上方調整、下方調整あるいは変化せしめることを意味する。活性には、限定でないが、1以上のケモカイン産生、サイトカイン産生、酸化窒素シンテアーゼ産生、接着分子発現および他の炎症調節物の産生などがある。好ましくは、該細胞活性は接着分子発現である。接着分子発現についての以下の言及は、他の細胞活性についての言及を含むと読まれるべきである。
【0037】
本発明の1つの態様は、哺乳動物における接着分子発現を調節する方法に関し、該方法は、スフィンゴシンキナーゼ情報伝達経路の1以上の成分の活性を調節するのに十分な時間および条件でもって、薬剤の有効量を該哺乳動物に投与することを含む。
【0038】
用語“発現”とは、ポリペプチドの合成をもたらす核酸分子の転写および翻訳を意味する。
【0039】
“接着分子”とは、細胞の、他の細胞または細胞外マトリックスタンパク質などのタンパク質との結合を調節する分子を意味すると理解されるべきである。接着分子の例には、限定ではないが、インテグリン、セレクチン(例えばE−セレクチン、P−セレクチン)、免疫グロブリン遺伝子スーパーファミリーのメンバー(例えばVCAM−1、ICAM−1)およびCD44がある。
【0040】
スフィンゴシンキナーゼ情報伝達経路成分の“活性”を調節するとは、該成分が行い得る機能を調節することを意味する。該機能には、限定ではないが、ある成分が行う役割また程度を増加または低下すること、またはある成分が行う機能の性質を修飾することが含まれる。該“活性”の調節には、ある成分の濃度を増加または低下することも含まれると理解されるべきである。該“活性”の調節は下記によって達成される。
(i)基質(例えばスフィンゴシンまたはATP)との競合によるスフィンゴシンキナーゼの触媒的活性の調節;
(ii)アロステリック・メカニズムによるスフィンゴシンキナーゼの触媒活性での干渉(基質結合部位以外の分子上の部位との結合);
(iii)次のことを変えるなどによる酵素活性化での干渉:
−リン酸エステル化などの翻訳後共有結合修飾、脂質修飾
−タンパク質、脂質またはイオンなどの必要コアクチベーターとの非共有結合
−酵素の細胞レベル下での局在。
【0041】
“スフィンゴシンキナーゼ情報伝達経路”とは、スフィンゴシンキナーゼおよび/またはスフィンゴシン−1−ホスフェートの1つまたは両方を利用する情報伝達経路を意味する。本発明を1つの理論または作用機序に限定するものではないが、スフィンゴシンキナーゼ情報伝達経路は接着分子発現をもたらすカスケードであると考えられ、次の形態をとり得る。
(i)S.Mase活性を介してのスフィンゴミエリンからのセラミドの生成、該セラミドはスフィンゴシンに変わる;
(ii)スフィンゴシンキナーゼの促進によるスフィンゴシン−1−ホスフェート(以下、“Sph−1−P”と表示する)生成:
(iii)Sph−1−P生成の下流でのMEK/ERKの活性化および核転座、該下流での現象は接着分子発現に導く。
【0042】
用語“成分”は、スフィンゴシンキナーゼ情報伝達経路カスケードに関与する、または関与し得るすべての分子を意味すると理解されるべきである。この分子には、限定でないが、細胞タンパク質、代謝体(例えば、スフィンゴミエリン、セラミッド、スフィンゴシン、Sph−1−P)、キナーゼ類(例えば、S.Mase、スフィンゴシンキナーゼ、タンパク質キナーゼCおよびERK)および転写因子(例えば、NF−κB)がある。好ましくは、該成分はスフィンゴシンキナーゼおよび/またはSph−1−Pである。
【0043】
本発明の好ましい実施態様により、哺乳動物における接着分子発現を調節する方法が提供される。該方法は、スフィンゴシンキナーゼおよび/またはSph−1−Pの1つまたは両方の活性を調節するのに十分な時間および条件でもって、薬剤の有効量を該哺乳動物に投与することを含む。
【0044】
多くの疾患状態での主要現象は、炎症に導く活性などの細胞活性の上方調整である。例えば、サイトカイン、ケモカイン、eNOSなどの炎症メディエーター産生の上方調整であり、接着分子発現の上方調整である。該上方調整は多くの刺激物により誘導され得る。刺激物には、例えば、腫瘍壊死因子−α(TNF)やインターロイキン−1(IL−1)などの炎症サトイキン、エンドトキシン、酸化または修飾脂質、放射または組織損傷が含まれる。好ましい態様において該細胞活性は内皮細胞活性である。
【0045】
本発明の1つ態様は、哺乳動物における内皮細胞接着分子発現を調節する方法に関し、該方法は、スフィンゴシンキナーゼ情報伝達経路の1以上の成分の活性を調節するのに十分な時間および条件でもって、薬剤の有効量を該哺乳動物に投与することを含む。最も好ましい成分はスフィンゴシンキナーゼおよび/またはSph−1−Pである。
【0046】
スフィンゴシンキナーゼ情報伝達経路に関与する成分の大部分がある種の細胞活性に刺激性であるが、阻害性情報伝達成分も明らかである。例えば、Sph−1−Pはスフィンゴシンからスフィンゴシンキナーゼによって生成される。内皮細胞の刺激は、接着分子発現の上方調整に導く細胞性基質スフィンゴシンキナーゼ活性の迅速かつ一時的な増加をおこす。Sph−1−P産生はスフィンゴシンキナーゼ活性に平行して誘導される。しかし、スフィンゴシンキナーゼ情報伝達経路の阻害性成分は接着分子発現の阻害をもたらす。スフィンゴシンキナーゼ情報伝達経路の1以上の成分の活性に関する用語“調節”は、該活性の上方調整または下方調整あるいは変化を意味する。好ましい方法は、スフィンゴシンキナーゼ情報伝達経路活性の下方調整であって、スフィンゴシンキナーゼ情報伝達経路の1以上の刺激成分の活性を阻害または低下するか、または該経路の1以上の阻害成分の活性を上方調整することにより行われる。しかし、接着分子発現を上方調整する該成分の活性の調節は、ある種の状況において望ましい。最も好ましくは、該刺激成分の生物活性が下方調整される。
【0047】
この最も好ましい実施態様により、哺乳動物における内皮細胞接着分子発現を下方調整する方法が提供される。この方法は、スフィンゴシンキナーゼおよび/またはSph−1−Pの1つまたは両方の活性を下方調整するのに十分な時間または条件で、薬剤の有効量を該哺乳動物に投与することを含む。
【0048】
薬剤の哺乳動物への投与による該活性の調節は、いくつかの技法の1つによって達成される。この技法には、限定ではないが、該哺乳動物にタンパク様または非タンパク様分子を導入することが含まれる。この分子は、
(i)該成分の合成を調節する;
(ii)該成分に対するアンタゴニストとして機能する;
(iii)該成分に対するアゴニストとして機能する。
【0049】
該タンパク様分子は、融合タンパク質、または、例えば天然産物スクリーニングを含む天然、組み換えまたは合成源から誘導される。該非タンパク様分子は、例えば天然産物スクリーニングなどの天然源からの誘導されるか、または化学的に合成される。本発明は、該成分のアゴニストまたはアンタゴニストとして作用し得る該成分の化学類似体を含む。化学アゴニストは、該成分から必ずしも誘導されることを要しないが、一定の立体配座の類似性を共有する。また、化学アゴニストは特殊に設計されて該成分の特定の物理化学的性質に類似する。アンタゴニストは、該成分を遮断しまたは阻害し得るか、または該成分の正常な機能の発揮を防止し得るかする化学物である。アンタゴニストには、該成分またはその部分に特異的なモノクロナール抗体および哺乳動物細胞中の遺伝子またはmRNAの転写または翻訳を防止するアンチセンス核酸が含まれる。
【0050】
本発明方法の例として高密度リポタンパク質(“HSL”と表示する)の利用がある。HDLでの内皮細胞の処置は、TNFの誘導スフィンゴシンキナーゼ活性化の増幅および期間の両方を阻害する。HDL処置は、スフィンゴシンキナーゼ活性の阻害により、Sph−1−P形成の増幅および期間を実質的に鈍化する。Sph−1−P形成の阻害は、MEK/ERK活性化およびNF−κB核転座の鈍化を含む下流経路現象の鈍化をもたらして、接着タンパク質発現を低下する。同様に、N、N−ジメチルスフィンゴシンは、TNF−α誘導接着タンパク質発現およびmRNAレベルを、スフィンゴシンキナーゼ活性の競合的阻害により低下する。この点でのスフィンゴシンキナーゼ情報伝達経路の遮断は、細胞内Sph−1−Pの下流形成を妨げて、接着タンパク質発現に導くMEK/ERKおよびNF−κBのさらなる下流現象を防止する。
【0051】
この最も好ましい実施態様により、哺乳動物における内皮細胞接着分子発現を下方調整する方法が提供される。この方法は、スフィンゴシンキナーゼの活性を下方調整するのに十分な時間または条件で、HDLの有効量を該哺乳動物に投与することを含む。
【0052】
“有効量”とは、望む応答を少なくとも部分的にでも得るために、または接着分子発現の開始を遅らすまたは進行を阻害する、または開始や進行を停止するために必要な量を意味する。この量は、処置されるべき個体の健康および生理条件、処置されるべき個体の系統学的グループ、医学状態の評価および他の関連因子によって変わる。量は日常の試験を通して決定できる比較的広い範囲にあることが期待される。
【0053】
細胞接着分子発現の調節は、1以上のスフィンゴシンキナーゼ情報伝達経路成分またはその機能的等価物を投与することにより達成される。
【0054】
この最も好ましい実施態様により、哺乳動物における内皮細胞接着分子発現を下方調整する方法が提供される。この方法は、スフィンゴシンキナーゼおよび/またはSph−1−Pの1つまたは両方の活性を該哺乳動物に投与することを含む。
【0055】
用語“機能的等価物”とは、限定ではないが、該成分の機能的活性を有する誘導体を含む。
【0056】
誘導体は、天然、合成、融合タンパク質を含む組換え源からの、断片、部分、部分体、化学的等価物、変異体、同族体、模倣体を含む。誘導体はアミノ酸の挿入、欠失また置換から誘導され得る。アミノ酸挿入誘導は、アミノおよび/またはカルボキシル末端融合、および単一または複数のアミノ酸の配列内挿入を含む。挿入アミノ酸配列の異型は、1以上のアミノ酸残基がタンパク質内の前もって決定した部位に導入されたものである。なお、ランダムな挿入も得た産物の適当なスクリーニングでもって可能である。欠失異型は配列から1以上のアミノ酸を除去することを特徴とする。置換的アミノ酸異型は、配列中の少なくとも1つの残基が除去され、その位置に別の残基が挿入されたものである。アミノ酸配列への追加は、他のペプチド、ポリペプチド、またはタンパク質との融合を含む。
【0057】
該成分の誘導体は、ペプチド、ポリペプチド、または他のタンパク様または非タンパク様分子と融合した完全な成分の特定のエピトープまたは部位を有する断片を含む。例えば、該成分またはその誘導体は、ある分子と融合して、その細胞への挿入が容易になる。該成分の類似体には、限定でないが、側鎖の修飾、ペプチド、ポリペプチドまたはタンパク質合成時の非天然アミノ酸および/またはその誘導体の合体、架橋剤の使用、タンパク様分子またはその類似体に対し配座拘束を課す方法などがある。核酸配列の誘導体は、同様に単一または複数のヌクレオチド置換、欠失および/または付加から誘導される(他の核酸分子との融合を含む)。本発明の核酸分子の誘導体には、オリゴヌクレオチド、PCRプライマー、アンチセンス分子および核酸分子の共抑制および融合に用いられる分子がある。
【0058】
本発明における側鎖修飾の例には、アミノ基の修飾がある。例えばアルデヒドとの反応に続くNaBH4でに還元による還元的アルキル化;メチルアセチミデートによるアミジン化;酢酸無水物によるアシル化;シアネートによるアミノ基のカルバモイル化;2,4,6−トリニトロベンゼンスルホン酸(TNBS)によるアミノ基のトリニトロベンジル化;コハク酸無水物およびテトラヒドロフタル酸無水物によるアミノ基のアシル化;およびピリドキサル−5−ホスフェートによるリジンのピリドキシル化と続くNaBH4での還元である。
【0059】
アルギニンのグアニジン基は、2,3−ブタネジオン、フェニルグリオキサルおよびグリオキサルなどの試薬での異項環縮合産物の形成によって修飾される。
【0060】
カルボキシル基は、O−アシルイソウレア形成を介するカルボジイミド活性化続く対応アミドなどへの誘導化によって修飾される。
【0061】
スルフィドリル基は、ヨード酢酸またはヨードアセトアミドによるカルボキシメチル化、システイック酸への過ギ酸酸化;他のチオール化合物での混合ジスルフィドの形成;マレイミド、マレイン酸無水物または他の置換マレイミドとの反応;4−クロロマーキュリベンゾエート、4−クロロマーキュリフェニルスルホン酸、フェニルマーキュリクロライド、2−クロロマーキュリ−4−ニトロフェノールなどの水銀化合物を用いた水銀誘導体の形成;アルカリ性pHでのシアネートによるカルバモイル化などの方法によって修飾される。
【0062】
トリプトファン残基は、例えば、N−ブロモサクシンイミドによる酸化、または2−ヒドロキシ−5−ニトロベンジルブロマイドまたはスルフェニルハライドによるインドール環のアルキル化で修飾される。他方、チロシン残基は、テトラニトロメタンによるニトロ化で変えられて、3−ニトロチロシン誘導体を形成する。
【0063】
ヒスチジン残基のイミダゾール環は、ヨード酢酸誘導体によるアルキル化またはジエチルピロカルボネートによるN−カルボエトキシル化で修飾される。
【0064】
タンパク質合成の間に組み込む非天然アミノ酸および誘導体の例には、制限するわけではないが、ノルロイシン、4−アミノ酪酸、4−アミノ−3−ヒドロキシ−5−フェニルペンタン酸、6−アミノヘキサン酸、t−ブチルグリシン、ノルバリン、フェニルグリシン、オルニチン、サルコシン、4−アミノー3−ヒドロキシ−6−メチルヘプタン酸、2−チエニルアラニンおよび/またはアミノ酸のD−異性体の使用が含まれる。考えられる非天然のアミノ酸のリストを表1に示す。
【0065】
【表1】
表 1
【0066】
【表2】
(表1の続き)
【0067】
【表3】
(表1の続き)
【0068】
【表4】
(表1の続き)
【0069】
【表5】
(表1の続き)
【0070】
【表6】
(表1の続き)
【0071】
【表7】
(表1の続き)
【0072】
【表8】
(表1の続き)
【0073】
【表9】
(表1の続き)
【0074】
架橋化剤が、例えば3D立体配座を安定化するのに用いられる。用いるホモ−二官能性架橋化剤には、(CH2)nスペーサー基(n=1からn=6)を有する二官能性イミドエステル、グルタルアルデヒド、N−ヒドロキシサクシュイミドエステル、およびN−ヒドロキシサクシニイミドなどのアミノ活性部分とマレイミドまたはジチオ部分(SH)またはカルボジイミド(COOH)などの他の特異的活性部分を通常含有するヘテロ二官能性試薬などがある。さらに、ペプチドの配座的拘束が、例えば、CαおよびNα−メチルアミノ酸の組みこみ、アミノ酸のCαとCβの原子間への二重結合の導入、およびN末とC末との間、2つの側鎖の間または側鎖とN末またC末との間にアミノ結合を形成するなどの共有結合の導入によってなされる。
【0075】
本発明は、ヒト疾患状態に関して有用である。例えば、本発明が特に有用なのは、限定ではないが、冠状心疾患などの炎症メカニズムを含む疾患状態の予防または治療としての使用である。
【0076】
本発明の他の態様は、哺乳動物における炎症メカニズムを含む疾患状態の治療および予防の方法に関し、該方法は、スフィンゴシンキナーゼ情報伝達経路の1以上の成分の活性を調節するのに十分な時間および条件でもって、薬剤の有効量を該哺乳動物に投与することを含む。情報伝達経路において、該調節は接着分子発現の調節をもたらす。
【0077】
該接着分子発現の好ましい調節は、内皮細胞接着分子発現の調節である。より好ましくは、該成分がスフィンゴシンキナーゼおよび/またはSph−1−Pである。最も好ましくは、該成分は下方調整され、該下方調整が接着分子発現の下方調整をもたらすことである。
【0078】
本発明の最も好ましい実施態様において、冠状心疾患を示す哺乳動物を処置する方法が提供される。該方法は、スフィンゴシンキナーゼ情報伝達経路の1以上の成分の活性を下方調整するのに十分な時間と条件で、薬剤の有効量を該哺乳動物に投与することを含む。情報伝達経路において、該下方調整は内皮細胞接着分子発現の下方調整をもたらす。最も好ましくは、該成分がスフィンゴシンキナーゼおよび/またはSph−1−Pである。
【0079】
本発明のさらに別の態様は、炎症メカニズムを含む疾患状態を治療または予防する方法を提供し、該方法は、該哺乳動物にスフィンゴシンキナーゼ情報伝達経路の1以上の成分またはその機能的等価物を投与することを含む。情報伝達経路において、該調節は接着分子発現の調節をもたらす。
【0080】
薬剤または成分またはこれらの機能的等価物の投与は、医薬組成物の形態で、通常の手段によってなされる。医薬組成物の薬剤または成分またはこれらの機能的等価物は、特定の事例に依存した量で投与されたときに、治療的活性を発揮する。この量は、例えば、ヒトか動物か、および選択した薬剤によって変わる。広い範囲の用量が適用できる。1人の患者で考えると、薬剤または成分またはこれらの機能的等価物の約0.1mgから約1mgが1日当り体重kgにつき投与し得る。用量は、最適の医学的応答を提供するように調整される。例えば、日、週、月または適当な時間間隙で分割用量を投与することができ、また用量は状態の必要性に応じて減少され得る。薬剤または成分またはこれらの機能的等価物は、通常の方法で投与され得る。それには、経口、静注(水溶性の場合)、腹腔内、筋肉内、皮下、皮内、坐剤、植込み(例えば、徐放分子を用いる)がある。薬剤または成分またはこれらの機能的等価物の使用の具体例として、薬剤または成分またはこれらの機能的等価物が薬学的に許容される非毒性塩の形態で投与され得る。この塩には、酸付加塩または亜鉛や鉄など(本適用の目的のための塩として考えられるもの)との金属複合体がある。このような塩付加塩の例としては、塩酸塩、臭化水素酸塩、硫酸塩、リン酸塩、マレイン酸塩、酢酸塩、クエン酸塩、安息香酸塩、酒石酸塩、マロン酸塩、アスコルビン酸塩、コハク酸塩などがある。活性成分が錠剤の型で投与されるときは、錠剤は、トラガント、トウモロコシデンプンまたはゼラチンなどの結合剤;アルギン酸などの崩壊剤;ステアリン酸マグネシウムなどの滑沢剤を含む。
【0081】
本発明の好ましい実施態様において、方法に用いられる薬剤は、冠状内皮細胞に特異的な抗体に連結しており、該薬剤をこれらの細胞に特異的に運送し得る。
【0082】
本発明のさらに別の態様は、哺乳動物のおける接着分子発現を調節する医薬の製造において、スフィンゴシンキナーゼ情報伝達経路の1以上の成分の活性を調節し得る薬剤を使用することに関する。
【0083】
該接着分子発現の好ましい調節は、内皮細胞接着分子発現の調節である。より好ましくは、該成分がスフィンゴシンキナーゼおよび/またはSph−1−Pである。最も好ましくは、該成分は下方調整され、該下方調整が接着分子発現の下方調整をもたらすことである。
【0084】
本発明の別の態様は、哺乳動物での接着分子発現を調節するための医薬の製造においてスフィンゴシンキナーゼ情報伝達経路の1以上の成分またはその機能的な等価物を使用することに関する。
【0085】
本発明のさらに別の態様は、スフィンゴシンキナーゼ情報伝達経路の1以上の成分の調節において用いる薬剤に関する。情報伝達経路では該成分が接着分子発現を調節する。
【0086】
該接着分子発現の好ましい調節は、内皮細胞接着分子発現の調節である。より好ましくは、該成分がスフィンゴシンキナーゼおよび/またはSph−1−Pである。最も好ましくは、該成分は下方調整され、該下方調整が接着分子発現の下方調整をもたらすことである。
【0087】
本発明のさらに別の態様は、哺乳動物における接着分子発現を調節するのに用いるスフィンゴシンキナーゼ情報伝達経路の1以上の成分またその機能的等価物に関する。
【0088】
本発明のさらに別の態様は、スフィンゴシンキナーゼ情報伝達経路の1以上の成分を調節し得る薬剤、および1以上の薬学的に許容される担体および/または希釈剤を含む医薬組成物に関する。情報伝達経路では該調節が接着分子発現の調節をもたらす。
【0089】
本発明のさらに別の態様は、スフィンゴシンキナーゼ情報伝達経路の1以上の成分またその機能的等価物および1以上の薬学的に許容される担体および/または希釈剤を含む医薬組成物に関する。
【0090】
適切な薬学的形態には、注射液としての使用では無菌の水溶液(水溶性の場合)または分散物および無菌の注射液または分散物の即席製造のための無菌粉末が含まれ、クリームまたは局所適用では他の形態でもあり得る。これらの形態は、製造および保管の条件下において安定であり、細菌および菌類などの微生物による汚染作用から保護されなければならない。担体は、例えば、水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコールおよび液体ポリエチレングリコールなど)、その適切な混合物および植物性油を含む溶媒または分散媒であり得る。適切な流動性は、例えば、レシチンなどのコーティングの使用、分散物の場合には必要な粒子サイズの維持、および表面活性剤の使用によって保持され得る。微生物の作用の防止は、種々の抗細菌剤および抗真菌剤、例えば、パラベン、クロロブタノール、フェノール、ソルビン酸、チメロサールなどによってもたらされる。多くの場合、等張剤、例えば糖類または塩化ナトリウムを含むのが好ましい。注射用組成物の長期間吸収は、吸収を遅延させる薬剤、例えば、モノステアリン酸アルミニウムおよびゼラチンなどの組成物で使用することによりもたらされる。
【0091】
無菌注射液は、必要量の活性化合物を適切な溶媒に上記した他の種々の成分とともに加え、必要により濾過殺菌することにより製造される。一般的に、分散物は種々の無菌活性成分を無菌媒体に加えることにより製造される。無菌媒体は、塩基性の分散媒および上記の必要な他の成分を含む。無菌注射液の製造のための無菌粉末の場合、好ましい製造方法は真空乾燥法および凍結乾燥法であり、この方法により活性成分の粉末および所望の付加成分が、前に殺菌濾過したそれらの溶液から得られる。
【0092】
活性成分は、適切に保護される場合、例えば非活性希釈剤または吸収可能な食用担体と共に、または硬または軟カプセルに封入され、または錠剤に圧縮して、または食材に直接加えられて、経口投与される。経口治療投与のために、活性化合物は、賦形剤と共に、錠剤、舌下錠、トローチ、カプセル、エリキシル、懸濁液、シロップ、ウエハースなどの形態で使用される。このような組成物および製剤は、少なくとも1重量%の活性化合物を含有する。組成物および製剤の割合は、もちろん、変動し得、重量単位の約5−約80%の間にあるのが都合よい。このような治療に有用な組成物中の活性化合物の量は、適切な用量が得られるような量である。本発明において好ましい組成物または製剤は、経口用量単位形態が約0.1μgから2000mgの活性化合物を含有するように製造される。
【0093】
錠剤、トローチ、丸薬、カプセルなどは、以下に挙げるような構成成分を含有し得る:ゴム、アラビアゴム、トウモロコシデンプンまたはゼラチンなどの結合剤;ジカルシウムホスフェートなどの賦形剤;トウモロコシデンプン、ジャガイモデンプン、アルギン酸などの崩壊剤;ステアリン酸マグネシウムなどの滑沢剤;およびスクロース、ラクトースまたはサッカリンなどの甘味剤が加えられ、ペパーミント、冬緑油またはサクランボ香料などの香味剤が加えられる。用量単位形態がカプセルの場合、上記の型の物質に加えて液体担体を含有し得る。種々の他の物質は、コーティングとして、またはそうでなければ用量単位の物理的形態を変更するために存在する。例えば、錠剤、丸薬、またはカプセルは、シェラック、糖または両方でコートされ得る。シロップまたはエリキシルは、活性化合物、甘味剤としてスクロース、防腐剤としてメチルパラベンおよびプロピルパラベン、サクランボまたはオレンジ風味などの着色剤および香料を含有し得る。もちろん、いかなる用量単位形態を製造するのに使用されるいかなる物質も、薬学的に純粋であり、使用される量において実質的に非毒性である。さらに、活性化合物は、徐放性製剤にし得る。
【0094】
医薬組成物はまた、標的細胞を形質移入し得るベクターなどの遺伝分子を含み得る。ベクターはスフィンゴシンキナーゼ情報伝達経路の成分の発現を調節し得る核酸分子を該標的細胞に運搬する。ベクターは、例えば、ウイルス性ベクターであり得る。
【0095】
本発明方法で用いるのに適した薬剤の同定を容易にするために、本発明者は、脂質に構造的または機能的に反応性の薬剤を選別するための、高速で簡易の高容量アッセイを開発した。本発明方法で用いる薬剤を同定する意味において、このアッセイは、スフィンゴシンキナーゼ情報伝達経路の成分に類似するか、またはスフィンゴシンキナーゼ情報伝達経路の成分に対するアゴニストまたはアンタゴニストとして作用する薬剤を簡易かつ迅速に同定する手段を提供する。
【0096】
本発明の別の態様は、脂質に構造的または機能的に反応性の分析物を検出する方法を提供する。該方法は次のいずれかを、
(i)分析物が放射標識された該分析物;または
(ii)該分析物とレポーター分子が放射標識されたレポーター分子、該分析物とは該レポーター分子と同時にまたは別個に該脂質と接触させられる;
該脂質とシンチラントの存在下に、脂質放射標識複合体が該シンチラントを形成し励起するのに十分な時間および条件で接触せしめ、該励起シンチラントを検出する工程を含む。
【0097】
好ましくは、該分子または分子およびレポーター分子が脂質および固体支持体と結合したシンチラントに接触される。
【0098】
“脂質”は、脂質成分を含むすべての分子を意味すると理解されるべきである。好ましくは、該脂質は、スフィンゴシンキナーゼ情報伝達経路の脂質成分であり、より好ましくはスフィンゴシンである。本発明のこの態様は本明細書中スフィンゴシンで例示されるが、本発明の適用において限定を課すものと理解されてはならない。
【0099】
本発明の別の態様は、スフィンゴシンに構造的または機能的に活性である分析物を検出する方法に関する。該方法は次のいずれかを、
(i)分析物が放射標識された該分析物;または
(ii)該分析物とレポーター分子が放射標識されたレポーター分子、該分析物は該レポーター分子と同時にまたは別個に該脂質と接触させられる;
該スフィンゴシンとシンチラントの存在下に、スフィンゴシン放射標識複合体が該シンチラントを形成し励起するのに十分な時間および条件で接触せしめ、該励起シンチラントを検出する工程を含む。
【0100】
好ましくは、該分析物または分析物およびレポーター分子がスフィンゴシンおよびシンチラントに接触する。スフィンゴシンは、実施例9に記載の方法を用いて、シンチラントがすでに結合した固体支持体に結合し得る。
【0101】
脂質に“構造的”に反応性の分子とは、該脂質と結合、連結あるいは連絡する分子を意味すると理解されるべきである。該連結などは、ペプチド結合、イオン結合、水素結合または他の相互活性結合メカニズムの形成による。脂質に“機能的”に反応性の分子とは、該脂質と相互作用したときに、機能的な過程を直接的または間接的に生じせしめる分子であると理解されるべきである。機能的に反応性の分析物は、該脂質に構造的に相互作用をすることもあり、しないこともある。機能的に反応性の分析物の例としては、酵素(例えば、スフィンゴシンキナーゼ等価物)、脂質がその基質である酵素(例えば、スフィンゴシンキナーゼ)がある。この例において、スフィンゴシンキナーゼ活性を発揮する酵素は、ATPの存在において酵素がスフィンゴシンをリン酸エステル化するのに機能的に反応性である。構造的または機能的な活性の発生は、本発明のこの態様方法で検出される。
【0102】
構造的または機能的な反応性の検出は、脂質による放射標識複合体の形成に基づく。シンチラントとの複合放射標識の近接性により、シンチラントが励起する。
【0103】
アッセイされる分析物は直接的に放射標識され得る。これが有用なのは、例えば、該分析物が該脂質と直接結合する場合である。あるいは、レポーター分子が放射標識される。“レポーター分子”とは、分析物と脂質との間の反応性を検出するすべての分子(分析物以外)を意味すると理解されるべきである。例えば、レポーター分子は、望む分析物の表面に存在する1以上のエピトープを認識する抗体であり得る。この検出方法は、“サンドウィッチアッセイ”と普通言われている間接的な検出方法である。あるいは、レポーター分子は、検出を容易にするのに加えて、分析物と脂質との間(例えば、レポーター分子は基質となり得る)の反応性を容易にするのに要する分子であり得る。例示した方法において、レポーター分子は33P−ATPである。スフィンゴシンキナーゼ活性を示す分析物は、33P−ATPの存在下でスフィンゴシンをリン酸エステル化し、33Pのスフィンゴシンへの結合をもたらす。ホスフェートレポーター分子が存在しないと、分析物は脂質をリン酸エステル化できない。さらに、分析物が検出を容易にするのに十分に脂質と構造的に相互作用しないので、機能的反応性の検出方法は、放射標識ホスフェートでの脂質のリン酸エステル化に基づく。
【0104】
分析物が放射標識され、該分析物が脂質に結合している場合でも、分析物以外の分子が反応混合物中に存在することが分析物の脂質との反応性を容易にするために必要であり得ると理解されるべきである。
【0105】
本発明での使用に適した固体支持体には、限定でないが、マイクロタイタープレート、96ウェルプレート、カラムおよびマイクロビートがある。
【0106】
好ましくは、本発明は、スフィンゴシンキナーゼ活性を示す分析物を検出する方法を提供する。該方法は、該分析物および33P−ATPをスフィンゴシンにシンチラントの存在で接触せしめる工程を含み、該分析物の該スフィンゴシンとの接触は、33P−ATPと同時にまたは別個に行なわれ、33Pスフィンゴシン複合体が該シンチラントを形成し励起するのに十分な時間と条件でなされ、そして該励起シンチラントが検出される。
【0107】
好ましくは、該分析物および33P−ATPは、固体支持体に結合したスフィンゴシンおよびシンチラントに接触させる。
【0108】
励起シンチラントの検出は、限定ではないが、シンチレーション計数器を含む適当な手段で行うことができる。
【0109】
本発明のこの態様方法でアッセイされる分析物はいかなる適当な形態でもあり得る。液体状態が特に有用であり、溶解質や均等質などの組織抽出物が有用である。該分析物は、天然、組み換えまたは含成源から誘導されたタンパク様あるいは非タンパク様の分子であり得る。
【0110】
別の態様において、本発明は、脂質と構造的または機能的に反応する分析物のアゴニストまたはアンタゴニストとして作用する薬剤の検出にまで及ぶと理解されるべきである。例えば、本発明は、スフィンゴシンキナーゼ活性のアゴニストまたはアンタゴニストを検出するのに有用である。本発明のこの実施態様は、スフィンゴシンをスフィンゴシンキナーゼに、強度なアゴニストまたはアンタゴニストの存在下に接触せしめることでなされる。スフィンゴシン放射標識複合体の形成程度と、このものの添加を行わないコントロールアッセイとを比較するとアゴニストまたはアンタゴニスト活性が分かる。特に、コントロールに比してスフィンゴシン33P複合体の形成が増加していることは、アンタゴニスト活性の指標である。本発明のこの態様は、下記した実施態様に限定されていると考えるべきでない。むしろ、本発明のこの態様は、脂質に構造的または機能的に反応するすべての分析物のアゴニストまたはアンタゴニストを検出するのに用いられる。
【0111】
本発明方法において試験するのに適した薬剤に、限定ではないが、化学実験室から単離された化合物または生物体の醗酵から生じた液がある。
【0112】
上に詳記した好ましい実施態様において、本発明のこの態様方法での使用に適したスフィンゴシンキナーゼ源は、限定でないが、(i)哺乳動物組織から誘導された部分的精製スフィンゴシンキナーゼ、(ii)酵素活性を示す哺乳動物組織の粗製均質体、(iii)組み換え酵素、(iv)HUVEC粗製溶解質を含む。
【0113】
さらに本発明の特徴を下記実施例により詳細に記載する。しかし、この詳細な説明は、本発明を例示する目的でのみ含まれていると理解されるべきである。上記した本発明についての広い記述を制限するものと、いかなる程度にも理解されてはならない。
【0114】
実施例1
HDL単離
HDLは、正常健康成人ドナーから、1.07−1.21g/mlの密度範囲の連続的超遠心により単離した。HDLの得られる調製物は二つの主要な集団を含んでいた:一つはストークス径10.45nmの粒子(HDL2)および一つは直径8.6nmの粒子(HDL3)。HDL3の接着分子発現の阻害が、精製Apo−A−1および卵ホスファチジルコリンまたはスフィンゴミエリンから精製した天然または再構築HDL粒子により誘導されるものより強いため、HDL3を本実験に使用した。実施例において、異なる対象の血漿におけるHDL2とHDL3の相対的比率の変動を起こす作用の可能性を最小化するために、ヒトHDLサブフラクション(d=1.13〜1.21g/ml)を使用している。図1に示すように、HDL3は、ヒト臍帯血管内皮細胞(HUVEC)によるVCAM−1およびE−セレクチンのTNFα−誘導発現を、>80%まで阻害した。
【0115】
実施例2
スフィンゴシンキナーゼ情報伝達経路方法論
HUVECによるTNFα誘導接着タンパク質発現におけるHDLの作用
HUVECのコンフルエントな単層を、1mg/mlのapoA−1濃度でヒト血漿から1.13〜1.21g/mlの密度のフラクションとして単離したHDL有りまたは無しでプレインキュベートした。16時間プレインキュベーション後に、細胞をTNFα(100U/ml)で処理した。TNFαの4時間の処理に続き、VCAM−1およびE−セレクチンの細胞表面発現をフローサイトメトリーを使用して測定した。
【0116】
セラミドおよびSph−1−Pの接着タンパク質発現に対する作用
HUVECを、TNFα(100U/ml)有りまたは無しのC2−セラミドの増加濃度、またはSph−1−Pの増加濃度で4時間処理した。VCAM−1またはE−セレクチンの細胞表面発現をフローサイトメトリーによって測定した。VCAM−1およびE−セレクチンの発現に対するスフィンゴシンキナーゼ阻害剤(DMS)の作用。細胞を媒体(Nil)、DMS(5μM)、Sph−1−P(5μM)、C2−セラミド(10μM)またはTNFα(100U/ml)で4時間処理し、次いでVCAM−1またはE−セレクチン発現を測定した。薬剤のE−セレクチンmRNAレベルに対する作用およびHDLとDMSの作用の比較。4時間の示した処理の後、E−セレクチンmRNAレベルをノーザンブロットアッセイにより測定した。(D)に示す結果は、3つの同様の実験の代表である。
【0117】
TNFα誘導スフィンゴミエリン加水分解、セラミド産生、スフィンゴシンキナーゼ活性化およびSph−1−P生産へのHDLの作用
HUVECを[3H]スフィンゴミエリンで標識し、TNFα処理の所望の時点で測定した。非標識細胞をHDLおよび/またはTNFαで示すように処理し、細胞を融解してセラミドレベルおよびスフィンゴシンキナーゼ活性を各々測定した。細胞をSph−1−Pのインビボでの生産の測定のために透過性にした。
【0118】
ERKおよびNF−κB活性化に対するHDLおよびスフィンゴシンキナーゼ経路の作用
細胞を薬剤で30分処理した後、ERK活性を、基質としての塩基性タンパク質(MBP)と共に、p42/p44MAPKに対する抗体での免疫沈降後にアッセイした(Berra et al., 1995; Li et al., 1996; Lee et al., 1997)。キナーゼ反応性産物を10%SDS−ポリアクリルアミドゲルで分離した。ERK活性を記載する棒グラフは、ホスホロイメージャーで定量した。NF−κB結合活性は、示したように処理30分後の電気泳動移動性シフトにより測定した。特異的NH−κB結合複合体は、抗−p50および抗−p65抗体とのスーパーシフトゲルアッセイにより、および50倍モル過剰の非標識NF−κBオリゴヌクレオチドの添加による競合分析により同定した。
【0119】
実施例3
スフィンゴシンキナーゼ情報伝達経路
接着タンパク質発現におけるスフィンゴ脂質代謝の役割を測定するために、細胞透過性形のセラミド(C2−セラミド)または内因性セラミドを産生するスフィンゴミエリナーゼ、またはSph−1−Pを内皮細胞に添加した。C2−セラミド(図2A)またはスフィンゴミエリナーゼはE−セレクチンおよびVCAM−1の不十分な刺激剤であり、TNF−αによる刺激の10%より低いレベルに到達した。対照的にSph−1−PはE−セレクチンおよびVCAM−1の強力で用量依存的な誘導物質であり、100U/ml TNFαとほぼ同等なレベルに5μMで到達した(図2B)。Sph−1−Pの有効性は、更にそのE−セレクチン mRNAの誘導により示された(図2D)。Sph−1−Pの役割を試験するために、スフィンゴシンキナーゼの競合的阻害剤であるN,N−ジメチルスフィンゴシン(DMS)で阻害した。DMSはTNF−α誘導接着タンパク質発現およびmRNAレベルを50から70%の間まで減少させた(図2CおよびD)。これは、スフィンゴースキナーゼ活性化がTNF−α作用の重要な事象であることを証明する。コントロールとして、同じ濃度のDMSが、TNF−αまたはPMAにより内皮細胞内で誘導されるスフィンゴシンキナーゼ活性およびSph−1−P形成を>90%まで阻害し、PMAはプロテインキナーゼC活性化を介してスフィンゴシンキナーゼを活性化することが示されている(7)。TNF−αでのこの作用と対照的に、DMSはSph−1−P誘導接着タンパク質発現を防止せず(図2C)、Sph−1−Pの生産におけるDMSの特異的作用を示した。これらの結果は、TNF−α誘導接着分子発現に関する新規情報伝達経路を示す。外来細胞透過性セラミドは、TNF−α誘導接着細胞タンパク質の強い阻害剤(>60%まで)であった(図2A)。
【0120】
実施例4
スフィンゴシンキナーゼ情報伝達のHDL阻害
図3Aは、HUVECのTNFα刺激が、細胞性スフィンゴミエリン含量をコントロールの40%まで30分以内に減少させ、2時間までに殆ど基底レベルまで回復させることを示す。並行して、細胞性セラミドレベルは急速に増加し(約2倍)、TNFα処理後30分でピークとなった(図3B)。内皮細胞のHDLでの処理は強い作用を有した:TNFα後スフィンゴミエリンレベルの基準レベルまでの回復を送らせ、TNFα刺激後の増加したセラミドレベルを持続させた。
【0121】
HUVECのTNFα刺激は、サイトゾルのスフィンゴシンキナーゼ活性の急速で一過性の増加をもたらし、基底の最大約165±13%(p<0.01)に5分以内で到達した。HDL前処理は、TNFα誘導スフィンゴシンキナーゼ活性化の振幅および持続時間の両方を非常に阻害した(図3C)。Sph−1−Pの生産は、スフィンゴシンキナーゼ活性と並行して誘導された。HDL処理は、Sph−1−P形成の振幅および持続時間を再び実質的に鈍らせた(図3D)。
【0122】
実施例5
ERKカスケードのHDL阻害
図4Aは、TNFαおよびSph−1−Pの両方がERK活性の刺激においてほぼ等力であったが、一方C2−セラミドは刺激しないことを示す。DMSでの処理は、TNFα活性化ERKを50%(p<0.02)まで阻害し、TNFα活性化ERKシグナルカスケードにおけるスフィンゴシンキナーゼの役割を示す。HUVECのHDLとのプレインキュベーションは、またTNFα刺激ERK活性化を減少させ、Sph−1−Pの細胞性レベルの減少への作用と一致する(図4A、棒4)。
【0123】
実施例6
NF−κB活性化のHDL阻害
NF−κB結合活性を測定するために、電気泳動移動性シフトアッセイを行った。核抽出物を、30分媒体または表示の薬剤で処理したHUVECから調製した。これらの実験でプローブとして使用した二本鎖オリゴヌクレオチドは、下線を引いたE−セレクションプロモーターにおけるコンセンサスNK−κB結合部位を含む5'−GGATGCCATTGGGGATTTCCTCTTTACTGGATGT−3'(配列番号1)を含んだ。コンセンサスNF−κBオリゴヌクレオチドのゲル移動性シフトは、32P標識NF−κBプローブと4mgの核タンパク質をインキュベートすることにより行った。NF−κB特異的複合体のSph−1−P誘導形成はTNFαにより誘導されたものと類似であった。これらの特異的DNA−タンパク質複合体は、50倍モル過剰の非標識E−セレクチンNF−κBオリゴヌクレオチドの添加により完全に無くなった。NF−κB結合複合体の特異性は、更にスーパーシフト分析により同定された。抗−p50および抗−p65ポリクローナル抗体(Santa Cruz Biotechnology, CAから購入)を放射標識NF−κBプローブの添加前に添加した。同じ表現型のゲル遅延が、Sph−1−PおよびTNFα−処理細胞の両方からの核抽出物と抗体とのプレインキュベーション後のゲルシフトアッセイにおいて示された。電気泳動移動性シフトアッセイは、HUVECのSph−1−Pでの処理が有意な核NF−κB蓄積を誘導することを示す(図4B)。Sph−1−P誘導NF−κB特異的タンパク質−DNA複合体の組成は、TNFαにより誘導されたものと同一であり、p50/p65ヘテロダイマーであると抗体スーパーシフトによりおよび競合分析により明らかとなった(図4B、下部)。細胞のHDLまたはDMSとの処理は、NF−κBのTNFα誘導活性化を45−60%まで阻害するが、Sph−1−Pにより誘導されたものは阻害しなかった。
【0124】
実施例7
RNA調製
全RNAは、表示の薬剤で4時間処理したHUVECから調製した。全RNAの等量(12μg)を1%ホルムアルデヒドゲルで電気泳動し、ナイロン膜に移した。ブロットをα32P標識E−セレクションcDNAプローブとハイブリダイズした。E−セレクチンのmRNAレベルは、ホスホイメージャーにより定量し、放射標識GAPDHプローブで標準化した。
【0125】
実施例8
スフィンゴミエリン測定
スフィンゴミエリンを測定するために、HUVECを[3H]セリン(5μCi/ml)で48時間標識し、HDL有りまたは無しで更に6時間プレインキュベートした。細胞を次いで3回洗浄し、更に2時間HDL存在下または非存在下でインキュベートした。TNFαで示した時間処理した後、細胞性脂質を抽出し、薄層クロマトグラフィー(TLC)でクロロホルム:メタノール:酢酸:水(50:30:8:5、v/v)で分解した。スフィンゴミエリンスポットは螢光間接撮影法で可視化し、シンチレーション分光測定法で定量し、全細胞性脂質から回収された放射活性により標準化した。[3H]セリンの取りこみにおいて、HDLとおよびHDLとプレインキュベートした細胞の間で有意な差はない。セラミドレベルを測定するために、細胞性セラミドを抽出し、ジアシルグリセロールキナーゼ反応により定量した(Kolesnick, 1991; Hannun & Bell, 1993)。スフィンゴシンキナーゼ活性をインビトロで、少し変形させたが、先の記載のように測定した(Mattie et al., 1994; Ghosh et al., 1994; Choi et al., 1996)。10mM MgCl2、20%グリセロール、1mMメカプトエタノール、1mM EDTA、20μM ZnCl2、1mM Na3VO4、15mM NaF、10μg/mlロイペプチンおよびアプロチニン、1mM PMSFおよび0.5mM 4−デオキシピリドキシンを含む0.1M HEPES緩衝液(pH7.2)中、26 1/2Gシリンジを6回通すことにより細胞を融解させた。サイトソルフラクションを、105,000×gで90分遠心することにより調製した。スフィンゴシンキナーゼ活性は、上清を20mMスフィンゴシン−BSA複合体および[γ32P]ATP(1mM、5μCi/ml)と15分、37℃でインキュベートすることにより測定した。標識脂質を抽出し、Sph−1−Pスタンダードに従ってTLCで分離した。Sph−1−Pに対応するスポットの放射活性を、ホスホイメージャーシステムを使用して定量した。インビボのSph−1−P形成の測定は、先に記載のように行った(Olivier, 1996)。細胞を、15分、37℃で低張性緩衝液(25mM HEPES、5mM MgCl2、20μM ZnCl2、20μM Na3VO4、10μg/mlロイペプチンおよびアプロチニン、1mM PMSFおよび0.5mM 4−デオキシピリドキシン、pH7.2)中、スフィンゴシン(10μM)および[γ32P]ATP(1μM、10μCi/ml)で透過性とした。脂質を抽出し、TLCで分解し、[γ32P]Sph−1−Pを上記のように定量した。
【0126】
実施例9
スフィンゴシン−キナーゼ活性のマルチウェルアッセイ
フラッシュプレートを、メタノール中200μlのホスファチジルコリン(19.5μg/ml)、ホスファチジルセリン(5.5μg/ml)およびスフィンゴシン(25μg/ml)の混合物を添加することにより脂質基質でコートし、30℃でN2下で3時間蒸発させた。スフィンゴシンキナーゼの源を、50mM HEPES pH7.2/20%グリセロール/10mM MgCl2/1mM DTT/20μM ZnCl2/1mM Na3VO4/15mM NaF/0.5mM 4−デオキシピリドキシンを含む緩衝液中に、[32P]−γ−ATO(Bresatech, 1μCi/ウェル/200μM)と共に添加し、2時間まで37℃でインキュベートする。次いで、プレートを400μlの50mMピロリン酸ナトリウムで4回洗浄し、放射活性をシンチレーションカウンターで測定した(Top count, Packard)。
【0127】
実施例10
スフィンゴシンキナーゼ活性の測量のための組織ホモジネートの調製
組織を新たに殺した動物から回収し、すばやく液体窒素で凍結させ、2−5gの湿潤組織を、ポリトロン組織ホモジナイザーで、プロテアーゼ阻害剤カクテル(Boehringer-Mannheim)を含む2容量の50mM トリス pH7.4/20%グリセロール/1mM DTT/1mM EDTA中で均質化した。本材料を7500gで30分の遠心に付し、大きな断片を除去した。得られた上清を更に高速(100,000×g、1時間)で遠心し、“上清”および“ペレット”フラクションを産生した。
【0128】
実施例11
マルチウェルアッセイは時間および特異性に関して直線状である
図7は、ヒト臍帯上皮細胞から作った細胞融解物のスフィンゴシンキナーゼ活性に関するアッセイの結果を説明する。シグナルが約400分の時間にわたり直線状に増加することを見ることができる。このシグナルは、プレートをコートするのに使用した脂質混合物からのスフィンゴシンの除去が、得られるシグナルをバックグラウンドレベルまで減少させるため、スフィンゴシンキナーゼに特異的である。これは、脂質またはアッセイ混合物の他の成分ではなくスフィンゴシンが、本アッセイ中でリン酸化されることを証明する。これは、本アッセイが、多くの脂質およびプロテインキナーゼを含むと予測される粗融解物で行われていたことからして、注目すべきである。
【0129】
実施例12
スフィンゴシンキナーゼのアゴニストおよびアンタゴニストの活性測定
プレートを実施例9に記載のように調製した。スフィンゴシンキナーゼ(実施例9に記載のように、緩衝液中、33P−ATPと共に調製した)をアンタゴニストまたはアゴニストの活性を試験する薬剤の存在下添加する。薬剤を、0−3時間のインキュベーションの時間で直線状の反応を産生する酵素活性のレベルまで添加する。プレートを、実施例9のように2時間、37℃でインキュベートして洗浄し、スフィンゴシンのリン酸化をシンチレーション計数により測定する。
【0130】
試験薬剤の送達に使用したのと同じ媒体溶媒の等量を含むコントロールインキュベーションと比較して、阻害(アンタゴニスト活性)は33Pの取りこみの減少として、および刺激(アゴニスト活性)は33Pの取りこみの増加として測定する。
【0131】
当業者は、本明細書に記載の発明が、特記したもの以外にも変形および修飾が可能であることを認めるであろう。本発明は、その精神および範囲内に含まれるこのような変形および修飾を含むことは理解されるべきである。本発明はまた明細書中に個別にまたは集合的に言及したまたは示した全ての段階、性質、組成および化合物、ならびに二つ以上の該段階または性質の全ての組合わせも含む。
【0132】
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【図面の簡単な説明】
【図1】 図1は、接着タンパク質VCAM−1およびE−セレクチンの腫瘍壊死因子(TNF)調節誘導に対する高密度リポタンパク質(HDL)の効果を示すグラフである。平均蛍光強度は、細胞表面の接着分子の発現強度を表わすフローサイトメーター測定である。
【図2AおよびB】 図2は、接着タンパク質発現に対するスフィンゴシンキナーゼ阻害剤の効果を示すグラフである。図2Aの黒印は、接着タンパク質に対する細胞透過性セラミド(C2−セラミド)の作用を表わす。白印は100U/ml TNFの存在でのセラミドの作用を表わす。図2Bはスフィンゴシン−1−ホスフェート(Sph−1−P)の作用を示す。
【図2CおよびD】 図2は、接着タンパク質発現に対するスフィンゴシンキナーゼ阻害剤の効果を示すグラフである。図2Cは、TNFまたはSph−1−Pにより起された接着タンパク質発現(MFI)に対するジメチルスフィンゴシン(DMS)の効果を示す。図2Dは、E−セレクチンmRNAに対するこれらの薬剤の作用を示す。
【図3AおよびB】 図3は、スフィンゴシン経路の主要成分に対するHUVECのTNF処理後の時間的変化を示すグラフである。白丸は、図3Aではスフィンゴシンの加水分解を、図3Bではセラミドの生成を表わし、すべて時間0からの%である。黒丸は、HDLでHUVECを前処置した作用を示す。
【図3CおよびD】 図3は、スフィンゴシン経路の主要成分に対するHUVECのTNF処理後の時間的変化を示すグラフである。図3Cではスフィンゴシンキナーゼ活性を、図3Dではスフィンゴシン−1−ホスフェートの形成を表わし、すべて時間0からの%である。黒丸は、HDLでHUVECを前処置した作用を示す。
【図4AおよびB】 図4は、ERK(図4A)およびNF−κB(図4B)の生成に対するSph−1−P、TNFおよびHDLの作用についての写真表示である。棒グラフは、ERK活性化に対する3つの独立の実験の要約である。(±SEM)。*はTNFとの差異についてのp値を<0.01で、†は<0.05で、‡は無に対するp<0.01を表わす。図4Bの上部はNF−κBによるゲル遅速化を示す。図4Bの下部は、NF−κBのp50およびp65成分に特異的な抗体のスーパーシフトを示し、TNFおよびSph−1−Pにより促進されたNF−κBの類似の組成を示す。
【図5】 HDLがTNF−α誘導の接着タンパク質発現を阻害するスフィンゴシンキナーゼ経路についての模式図である。
【図6】 スフィンゴシンキナーゼ活性の多ウェルアッセイについての模式図である。アッセイの基本は、多ウェルプレートの壁に吸収により結合したスフィンゴシンのリン酸エステル化である。プレートでは壁がシンチラントで満たされている(Flashplates, New England Nuclear)。γ−33P標識ATPを酵素源の存在でインキュベートする。活性酵素が存在すると33Pはスフィンゴシンに移行する。ウェルを洗い、未結合33Pを除去する。スフィンゴシンに結合した33Pはシンチラントを励起し、シンチレーション計数器で測定される信号が生じる。
【図7】 図7は、スフィンゴシンキナーゼ活性が多ウェルアッセイで測定したときに400分まで直線状であることを示すグラフである。50μlの内皮細胞抽出物(実施例8に記載のようにつくり、スフィンゴシンキナーゼ活性を有する)および50μlのATP溶液(400μM ATP/20μCi/ml 33P−ATP含有)を、リン脂質混合でコートしたフラッシュプレートと共に、スフィンゴシンあり(黒四角)またはスフィンゴシンなし(白四角)で、インキュベートし、そして洗滌前の表示時間で37℃でインキュベートした。
【図8】 図8は、スフィンゴシンキナーゼ活性について各組織毎に示すグラフである。50μlの抽出物からの高速“上澄”(白棒)および“ペレット”(黒棒)フラクションをスフィンゴシンキナーゼ活性についてアッセイした。
【配列表】
Claims (10)
- 哺乳動物における接着分子発現を下方調節する医薬の製造での、スフィンゴシンキナーゼ情報伝達経路の1以上の成分の活性を調節し得る薬剤の使用、ここで該1以上の成分はスフィンゴシンキナーゼおよびスフィンゴシン−1−ホスフェートから成る群から選択され、該薬剤はHDLおよびN,N−ジメチルスフィンゴシンから成る群から選択される。
- 該1以上の成分がスフィンゴシンキナーゼである、請求項1の使用。
- 哺乳動物における接着分子発現を上方調節する医薬の製造での、スフィンゴシンキナーゼ情報伝達経路の1以上の成分の使用、ここで該1以上の成分はスフィンゴシンキナーゼおよびスフィンゴシン−1−ホスフェートから成る群から選択される。
- 該1以上の成分がスフィンゴシン−1−ホスフェートである、請求項3の使用。
- 哺乳動物における接着分子発現を下方調節するのに用いる、スフィンゴシンキナーゼ情報伝達経路の1以上の成分の活性を調節し得る薬剤を含む組成物、ここで該1以上の成分はスフィンゴシンキナーゼおよびスフィンゴシン−1−ホスフェートから成る群から選択され、該薬剤はHDLおよびN,N−ジメチルスフィンゴシンから成る群から選択される。
- 哺乳動物における接着分子発現を上方調節するのに用いる、スフィンゴシンキナーゼ情報伝達経路の1以上の成分を含む組成物、ここで該1以上の成分はスフィンゴシンキナーゼおよびスフィンゴシン−1−ホスフェートから成る群から選択される。
- 哺乳動物における接着分子発現を下方調節するのに用いる、スフィンゴシンキナーゼ情報伝達経路の1以上の成分の活性を調節し得る薬剤、および1以上の薬学的に許容される担体および/または希釈剤を含む医薬組成物、ここで該1以上の成分はスフィンゴシンキナーゼおよびスフィンゴシン−1−ホスフェートから成る群から選択され、該薬剤はHDLおよびN,N−ジメチルスフィンゴシンから成る群から選択される。
- 哺乳動物における接着分子発現を上方調節するのに用いる、スフィンゴシンキナーゼ情報伝達経路の1以上の成分、および1以上の薬学的に許容される担体および/または希釈剤を含む医薬組成物、ここで該1以上の成分はスフィンゴシンキナーゼおよびスフィンゴシン−1−ホスフェートから成る群から選択される。
- 該1以上の成分がスフィンゴシンキナーゼである、請求項5または7の組成物。
- 該1以上の成分がスフィンゴシン−1−ホスフェートである、請求項6または8の組成物。
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