JP4606646B2 - 電動ディスクブレーキおよびその制御プログラム - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、電動モータの回転運動をピストンの直線運動に変換して制動力を発生させる電動ディスクブレーキおよびその制御プログラムに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
電動モータの回転運動をピストンの直線運動に変換して制動力を発生させる電動ディスクブレーキとして、例えば、特開2000−213575号公報に開示されたものがある。この電動ディスクブレーキは、電動モータと、この電動モータの回転運動をピストンの直線運動に変換するボールネジ機構と、ピストンのストローク位置を検出するストロークセンサとを有し、このストロークセンサの検出結果に基づいて電動モータを制御し、ピストンによる直線運動でブレーキパッドをディスクロータに押圧させて制動力を発生させるものである。
【0003】
この電動ディスクブレーキには、電動モータによりボールネジ機構を介してピストンを移動させる際に、ブレーキパッドがディスクロータに接触することでピストンに生じる反力を検出するための押圧センサがピストンに設けられており、この押圧センサでブレーキパッドがディスクロータに接触したことを検出し、このときのストロークセンサの検出値から、ブレーキパッドがディスクロータに接触する際のピストンのストローク位置を検出するようになっている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、ブレーキパッドは、使用により摩耗を生じたり、制動の状況によっては熱膨張を生じたりすることで、その厚みが変化することになり、このような厚みの変化に対応して、制動解除時におけるピストンのストローク位置すなわちパッドクリアランスを制御しないと、ブレーキパッドのディスクロータへの引きずり現象等が生じてしまうことが予想される。
【0005】
このため、上記のような押圧センサを用いて、ブレーキパッドがディスクロータに接触する際のピストンのストローク位置を検出し、このストローク位置に基づいてブレーキパッドとディスクロータとのクリアランスすなわちパッドクリアランスを常に適正な値に維持するようにピストンの待機時のストローク位置を調整することを考えた。
【0006】
しかしながら、ブレーキパッドがディスクロータに接触する際のピストンのストローク位置を検出するために、ブレーキパッドがディスクロータに接触することでピストンに生じる反力を検出するための押圧センサを設けるのでは、当然のことながら、コストが増大してしまう。
【0007】
したがって、本発明は、低コストで、ブレーキパッドがディスクロータに接触する際のピストンのストローク位置を検出することができる電動ディスクブレーキおよびその制御プログラムの提供を目的としている。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、本発明の請求項1記載の電動ディスクブレーキは、電動モータと、該電動モータの回転運動をピストンの直線運動に変換する変換機構部と、前記ピストンのストローク位置を検出する位置検出手段と、該位置検出手段の検出結果に基づいて前記電動モータを制御する制御手段とを有し、前記電動モータに電流を供給することでピストンによってブレーキパッドをディスクロータに押圧させて制動力を発生させるものであって、前記電動モータにより前記変換機構部を介して前記ピストンを移動させる際に、前記ブレーキパッドが前記ディスクロータに接触しない状態において前記電動モータの電流値に電流リップルを発生させる一方、前記ブレーキパッドが前記ディスクロータに接触した状態において前記電動モータの電流値から電流リップルを消失させる電流リップル発生手段を有し、前記制御手段は、前記電動モータの電流値における前記電流リップルの発生状態と前記位置検出手段で検出される前記ピストンのストローク位置とから前記ブレーキパッドの前記ディスクロータへの接触位置であるパッド接触位置を検出することを特徴としている。
【0009】
これにより、電動モータにより変換機構部を介してピストンを移動させる際に、ブレーキパッドがディスクロータに接触しない状態において電動モータの電流値に電流リップルを発生させる一方、ブレーキパッドがディスクロータに接触した状態において電動モータの電流値から電流リップルを消失させる電流リップル発生手段を設けるとともに、制御手段が、この電流リップルの発生状態と位置検出手段で検出されるピストンのストローク位置とからブレーキパッドのディスクロータへの接触位置であるパッド接触位置を検出する。このように、ブレーキパッドのディスクロータへの接触の有無により電動モータの電流値に電流リップルの変化を与える電流リップル発生手段を設けることでパッド接触位置を検出することができる。
【0010】
本発明の請求項2記載の電動ディスクブレーキは、請求項1記載のものに関して、前記制御手段は、検出した前記パッド接触位置に基づいて前記ブレーキパッドの前記ディスクロータとのクリアランスを調整することを特徴としている。
【0011】
このように、制御手段が、電流リップル発生手段により発生させられる電流リップルの発生状態と位置検出手段で検出されるピストンのストローク位置とからパッド接触位置を検出し、このパッド接触位置に基づいてブレーキパッドのディスクロータとのクリアランスを調整する。このように、ブレーキパッドのディスクロータへの接触の有無により電動モータの電流値に電流リップルの変化を与える電流リップル発生手段を設けることでパッド接触位置を検出し、これに基づいてブレーキパッドのディスクロータとのクリアランスを調整することができる。
【0012】
本発明の請求項3記載の電動ディスクブレーキは、請求項1または2記載のものに関して、前記電流リップル発生手段は、前記ブレーキパッドが前記ディスクロータに接触しない状態においては前記電動モータの駆動で回転する一方、前記ブレーキパッドが前記ディスクロータに接触した状態においては回転が停止される回転部に設けられたウエーブワッシャを有することを特徴としている。
【0013】
これにより、電動モータにより変換機構部を介してピストンを移動させる際に、ブレーキパッドがディスクロータに接触しない状態においては電動モータの駆動で回転部が回転することになり、この回転部に設けられたウエーブワッシャが空回りして電動モータの電流値に電流リップルを発生させる一方、ブレーキパッドがディスクロータに接触した状態においては電動モータの駆動があっても回転部が停止することになり、この回転部に設けられたウエーブワッシャも回転しなくなって電動モータの電流値から電流リップルを消失させる。
【0014】
本発明の請求項4記載の電動ディスクブレーキの制御プログラムは、電動モータと、該電動モータの回転運動をピストンの直線運動に変換する変換機構部と、前記ピストンのストローク位置を検出する位置検出手段とを有して、前記ピストンによってブレーキパッドをディスクロータに押圧させて制動力を発生させるべく、前記位置検出手段の検出結果に基づいて前記電動モータを制御する電動ディスクブレーキの制御プログラムにおいて、前記電動モータに電流を供給して前記変換機構部を介して前記ピストンを移動させる際に、前記電動モータの電流値に発生する電流リップルを検出する電流リップル検出手段と、該電流リップル検出手段からの電流リップルの消失信号と前記位置検出手段からのピストンストローク位置検出信号とに基づいて前記ブレーキパッドの前記ディスクロータへの接触位置を検出するパッド接触位置検出手段と、該パッド接触位置検出手段のパッド接触位置に基づいて前記ブレーキパッドと前記ディスクロータとのクリアランスを調整するクリアランス調整手段とを有することを特徴としている。
【0015】
このように、電流リップルの消失信号と位置検出手段からのピストンストローク位置検出信号とに基づいてブレーキパッドのディスクロータへの接触位置を検出し、このパッド接触位置に基づいてブレーキパッドとディスクロータとのクリアランスを調整する。このように、ブレーキパッドのディスクロータへの接触の有無により電動モータの電流値に電流リップルの変化を与えることでパッド接触位置を検出し、これに基づいてブレーキパッドのディスクロータとのクリアランスを調整することができる。
【0016】
【発明の実施の形態】
本発明の一実施形態の電動ディスクブレーキを図面を参照しつつ以下に説明する。
【0017】
図1に示すように、本実施形態の電動ディスクブレーキ10は、図示せぬ車輪とともに回転するディスクロータ11の一側(通常は車体に対して内側)にキャリパ本体12が配置されており、このキャリパ本体12には、略C字形に形成されてディスクロータ11を跨いで反対側へ延びる爪部13が一体的に結合されている。ディスクロータ11の両側、すなわち、ディスクロータ11とキャリパ本体12との間および爪部13の先端部との間に、それぞれブレーキパッド14,15が設けられている。ブレーキパッド14,15は、車体側に固定されるキャリア16によってディスクロータ11の軸方向に沿って移動可能に支持されて、制動トルクをキャリア16で受けるようになっており、また、キャリパ本体12は、キャリア16に取付けられた図示せぬスライドピンによってディスクロータ11の軸方向に沿って摺動可能に案内されている。
【0018】
キャリパ本体12には、ボルト17によって略円筒伏のケース18が結合され、このケース18内には、電動モータ19および回転検出器20が設けられている。一方、キャリパ本体12内には、ボールランプ機構21及び減速機構22が挿入されている。ケース18の後端部には、カバー23がボルト24によって取付けられている。
【0019】
電動モータ19は、ケース18の内周部に固定されたステータ25と、ステータ25に挿入されて軸受26,27によってケース18に回転可能に支持されたロータ28とを備えている。回転検出器20は、ケース18側に固定されたレゾルバステータ29及びロータ28に取付けられたレゾルバロータ30からなり、これらの相対回転に基づいてロータ28の回転位置を検出するものである。そして、電動モータ19及び回転検出器20には、コネクタ31を介して図示せぬコントローラ(制御手段)が接続され、このコントローラは、回転検出器20の検出結果に基づいて制御信号を出力し、電動モータ19のロータ28を所望のトルクで所望の角度だけ回転するように制御する。
【0020】
ボールランプ機構21は、環状の第1及び第2ディスク32,33と、これらの間に介装された複数のボール(鋼球)34とから構成されている。第1ディスク32は、軸受35によってキャリパ本体12に回転可能に支持され、ロータ28内に挿入される円筒部36が一体的に形成されている。第2ディスク33には、円筒部36よりも小径の円筒状のスリーブ37が一体的に形成され、このスリーブ37が円筒部36内に挿通されている。
【0021】
ボールランプ機構21の第1ディスク32及び第2ディスク33の対向面には、それぞれ円周方向に沿って延びる円弧状の例えば3つのボール溝38,39が形成されている。これらのボール溝38,39は、等しい中心角(例えば90゜)の範囲に延ばされて、同じ方向に傾斜されている。そして、第1及び第2ディスク32,33に形成されたボール溝38,39間にボール34が装入され、第1、第2ディスク32,33の相対回転によって、ボール溝38,39内をボール34が転動することにより、第1ディスク32と第2ディスク33とが軸方向に相対変位するようになっている。このとき、第1ディスク32が第2ディスク33に対して反時計回りに回転したとき、これらが離間する方向に変位する。
【0022】
第2ディスク33とブレーキパッド14との間には、ピストン40が設けられている。ピストン40には、外周にネジ部41を形成した円筒部42が設けられている。円筒部42は、第2ディスク33のスリーブ37内に挿入され、その内周に形成されたネジ部43に螺合されている。円筒部42内には、ケース18にブラケット44を介して取付けられた軸45の二面取部46が嵌合されて、ピストン40が回転しないように支持している。ネジ部41とネジ部43とで不可逆ねじを形成しており、ピストン40は、その軸方向に力が作用しても移動することはないが、第2ディスク33を反時計回りに回転させることにより、ディスクロータ11側へ移動するようになっている。
【0023】
軸45の外周部及び第2ディスク33のスリーブ37の内周部にそれぞれ形成されたバネ受47,48間に複数の皿バネ(圧縮ばね)49が介装され、そのばね力によって第2ディスク33がボール34を第1ディスク32との間で挟みつけるように付勢されている。軸45は、調整ネジ50およびロックナット51によってブラケット44に取付けられている。
【0024】
そして、本実施形態において、第2ディスク33には、最もディスクロータ11側の外径部にリング部材52が固定されている。一方、爪部13のキャリパ本体12側には、その内側に円筒部材53が位置固定で設けられており、この円筒部材53の内側には、第1ディスク32および第2ディスク33の相互対向側が配置されている。この円筒部材53の内側には、上記リング部材52と対向するようにリング部材54が固定されている。
【0025】
ここで、図2に示すように、リング部材52には、リング部材54に対向する側の対向面52aに、軸線方向に山型をなして突出する凸部52bが円周方向に多数連続的に形成されており、リング部材54にも、リング部材52に対向する側の対向面54aに、軸線方向に山型をなして突出する凸部54bが円周方向に多数連続的に形成されている。
【0026】
そして、リング部材52の対向面52aとリング部材54の対向面54aとの間には、ウエーブワッシャ55が介装されている。このウエーブワッシャ55は、図2に示すように、リング状をなすとともに、軸線方向に山型をなすように屈曲する屈曲部55aが、円周方向に沿って順に逆方向に山型をなすように形成された形状をなしている。なお、介装前のウエーブワッシャ55の軸線方向の幅は、リング部材52、54の対向面52a、54a間の幅の最大値よりも大きくされている。
【0027】
ここで、第2ディスク33が回転するときには、この第2ディスク33に固定されたリング部材52と爪部13に円筒部材53を介して固定配置されたリング部材54とが相対回転することになり、これらの間に介装されたウエーブワッシャ55は、その屈曲部55aがこれらリング部材52、54の凸部52b、54bを乗り越えることで、第2ディスク33の回転に対して適度な抵抗力を付与する。
【0028】
他方、第2ディスク33が回転を停止させたときには、この第2ディスク33に固定されたリング部材52と爪部13に円筒部材52を介して固定配置されたリング部材54とが相対回転を停止させることになり、これらの間に介装されたウエーブワッシャ55も、その屈曲部55aがこれらリング部材52、54の凸部52b、54bを乗り越えることがなくなる。
【0029】
次に、減速機構22について説明する。電動モータ19の口ータ58の一端部に偏心軸57が形成され、偏心軸57の外周部には、軸受58を介して偏心板59が回転可能に取付けられている。キャリパ本体12には、偏心板59に対向させて固定板60が固定されている。偏心板59及び固定板60の対向面には、それぞれ周方向に沿って複数の穴(凹所)61,62が形成されており、これらの穴61,62間にボール(鋼球)63が介装してオルダム機構を構成して、公転運動する偏心板59を支持している。偏心板59の一端面は、第1ディスク32に対向されており、これらの対向面には、それぞれサイクロイド溝64,65が形成され、サイクロイド溝64,65間にボール(鋼球)66が挿入されている。
【0030】
第2ディスク33のスリーブ37の先端外周部には、円筒状のスプリングホルダ67がピン68によって回転しないように取付けられている。スプリングホルダ67の一端部が、第1ディスク32の円筒部36の先端部に係合して、これらの相対回転を一定範囲に制限している。スプリングホルダ67の周りには、コイルスプリング(ばね手段)69が巻装され、コイルスプリング69は、所定のセット荷重をもって捻られて、その一端部がスプリングホルダ67に結合され、他端部が第1ディスク32の円筒部36に結合されている。
【0031】
以上のように構成した本実施形態の電動ディスクブレーキの基本作動について次に説明する。
【0032】
非制動状態では、ボールランプ機構21のボール34がボール溝38,39の最も深い端部にあり、第1ディスク32と第2ディスク33とが最も近い位置にある。制動時に、電動モータ19のロータ28を時計回りに回転させると、偏心板59が公転し、サイクロイド溝64,65及びボール66の作用によって第1ディスク32がロータ28に対して、次式で示される一定の回転比Nで反時計回りに回転する。
N=(d−D)/D
ここで、
d:サイクロイド溝64の基準円直径
D:サイクロイド溝65の基準円直径
すなわち、第1ディスク32は、ロータ28に対して一定の減速比α(=1/N)で減速されて反時計回りに回転し、その分、トルクが増幅される。
【0033】
第1ディスク32の回転力は、コイルスプリング69を介して第2ディスク33に伝達される。ピストン40がブレーキパッド14,15を押圧する前は、ピストン40に軸方向の荷重が殆ど作用せず、ピストン40と第2ディスク33との間のネジ部41,43に生じる抵抗が小さいので、コイルスプリング69のセット荷重によって第2ディスク33が第1ディスク32と一体に回転し、第2ディスク33とピストン40との間に相対回転が生じて、ネジ部41,43の作用によってピストン40がディスクロータ11側ヘ前進する。なお、これにより、ネジ部41,43は電動モータ19の回転運動をピストン40の直線運動に変換する変換機構部を構成している。
【0034】
上記前進時において、第1ディスク32と一体に回転する第2ディスク33に固定されたリング部材52と、爪部13に円筒部材53を介して固定配置されたリング部材54とが相対回転することになり、これらの間に介装されたウエーブワッシャ55は、その屈曲部55aがこれらリング部材52、54の凸部52b、54bを順次乗り越えることで、第2ディスク33の回転に対して適度な抵抗力を付与する。なお、リング部材52、54の凸部52b、54bに対するウエーブワッシャ55の屈曲部55aのこのような乗り越えは、断続的に発生することになり、第2ディスク33および第1ディスク32には、回転に対する抵抗力が断続的に発生する。このような抵抗力が断続的に発生することにより、電動モータ19の電流値に図3に範囲X1で示すように電流リップルが発生することになる。
【0035】
そして、ピストン40が一方のブレーキパッド14をディスクロータ11ヘ押圧し、その反力によってキャリパ本体12がキャリア16のスライドピンに沿って移動して、爪部13が他方のブレーキパッド15をディスクロータ11に押圧する。
【0036】
両ブレーキパッド14,15がディスクロータ11に押圧された後は、その反力によってピストン40に軸方向の大きな荷重が作用するため、ネジ部41,43の抵抗が増大してコイルスプリング69のセット荷重を超えて、第2ディスク33が回転を停止させることになり、その結果、コイルスプリング69が撓んでボールランプ機構21の第1ディスク32および第2ディスク33間に相対回転が生じる。これにより、ボール34がボール溝38,39内を転動して第2ディスク33およびピストン40を一体に前進(すなわち直線運動)させ、ピストン40によってブレーキパッド14,15をディスクロータ11にさらに押付ける。なお、これにより、ボールランプ機構21も電動モータ19の回転運動をピストン40の直線運動に変換する変換機構部を構成している。また、回転検出器20は、電動モータ19のロータ28の回転位置を検出しており、ロータ28の回転位置に対応して前進するピストン40のストローク位置すなわちこのピストン40で進退させられるブレーキパッド14,15のストローク位置を検出する位置検出手段を構成している。
【0037】
上記のように両ブレーキパッド14,15がディスクロータ11に押圧された時点で、回転が停止させられた第2ディスク33に固定されたリング部材52と、爪部13に円筒部材53を介して固定配置されたリング部材54とが相対回転を停止させることになり、これらの間に介装されたウエーブワッシャ55も停止して、その屈曲部55aがこれらリング部材52、54の凸部52b、54bを乗り越えることがなくなって、第1ディスク32には回転に対する抵抗力が断続的に発生することがなくなる。その結果、電動モータ19の電流値からは、図3に範囲X2で示すように電流リップルは消失することになり、電流値はブレーキパッド14,15からの反力の増大にともなってほぼ直線的に上昇することになる。
【0038】
すなわち、ウエーブワッシャ55および両リング部材52、54が、電動モータ19によりピストン40を移動させる際に、ブレーキパッド14,15がディスクロータ11に接触しない状態において電動モータ19の電流値に電流リップルを発生させる一方、ブレーキパッド14,15がディスクロータ11に接触した状態において電動モータ19の電流値から電流リップルを消失させる電流リップル発生手段を構成している。なお、ウエーブワッシャ55は、ブレーキパッド14,15がディスクロータ11に接触しない状態においては電動モータ19の駆動で相対回転する一方、ブレーキパッド14,15がディスクロータ11に接触した状態においては相対回転が停止される回転部を構成する両リング部材52、54間に設けられている。
【0039】
制動解除時には、電動モータ19のロータ28を反時計回りに回転させることによって、減速機構22を介して第1ディスク32が時計回りに回転し、ブレーキパッド14,15がディスクロータ11に押圧されている間は、第1、第2ディスク32,33が相対回転して第2ディスク33が後退し、ブレーキパッド14,15がディスクロータ11から離間した後は、第1、第2ディスク32,33が一体回転して、ネジ部41,43の作用によってピストン40がさらに後退する。
【0040】
そして、本実施形態の電動ディスクブレーキ10においては、コントローラが、電動モータ19の電流値における電流リップルの発生状態と回転検出器20で検出されるピストン40のストローク位置すなわちブレーキパッド14,15のストローク位置とからブレーキパッド14,15のディスクロータ11への接触位置である上記パッド接触位置を検出する。そして、コントローラは、別途入力されるブレーキペダルの踏力を検出する図示せぬ踏力センサの信号等から目標推力を割り出し、パッド接触位置を原点(0位置)とした図4に示すような目標推力と目標位置との制御テーブルから、割り出された目標推力に対する目標位置を求めて、この目標位置にピストン40が位置するように回転検出器20で検出しつつ電動モータ19を制御する。
【0041】
また、コントローラは、上記パッド接触位置に基づいてブレーキパッド14,15のディスクロータ11との制動解除時におけるクリアランスすなわちパッドクリアランスを調整する。すなわち、このパッド接触位置からピストン40を所定のパッドクリアランスに相当する一定距離だけ後退させることにより、常にパッドクリアランスを一定に維持する。
【0042】
このようなコントローラの制御内容についてさらに図5に示すフローチャートを参照して以下に説明する。
【0043】
コントローラは、ステップS1において、図示せぬ踏力センサからの検出信号により、ブレーキペダルが踏まれているか否かを検出し、ブレーキペダルが踏まれている場合、ステップS2において、ブレーキパッド14,15がディスクロータ11に接触を開始させるピストン40のストローク位置であるパッド接触位置を、回転検出器20で検出される電動モータ19の回転位置で検出するパッド接触位置検出が済んでいるか否かを、後述するステップS5でセットされるパッド接触位置検出フラグがセットされているか否かにより判定する。
【0044】
このステップS2において、パッド接触位置検出が済んでいない場合、ステップS3において、パッド接触位置検出が行われたか否かを判定する。なお、ブレーキペダルの踏み込みが解除された後、ブレーキペダルが次に踏み込まれると、最初のステップS2の判断はNOとなりステップS3の判断もNOとなる。
【0045】
ステップS3において、パッド接触位置検出が行われていない場合、ステップS4において、ピストン40を前進させるように電動モータ19を回転させてステップS1に戻る。
【0046】
このようにして、ステップS4によりピストン40を前進させると、ブレーキパッド14,15がディスクロータ11に接触することになる。ここで、コントローラは、このブレーキパッド14,15がディスクロータ11に接触するパッド接触位置を検出するパッド接触位置検出を、上述したように電動モータ19の電流値に電流リップルが発生している状態(図3に示すX1の範囲)から電流リップルが消失する状態(図3に示すX2の範囲)に切り替わった時点(図3に示す時点E)の電動モータ19の回転位置に対応するピストン40のストローク位置すなわちブレーキパッド14,15の移動位置を求めることにより行っている。そして、パッド接触位置が検出されると、このパッド接触位置を図4に示す制御テーブルの原点位置とし、さらにパッドクリアランス設定の原点位置として、以後の制御を行う。
【0047】
このようにしてパッド接触位置検出が行われた場合、ステップS3において、パッド接触位置検出が行われたと判定し、ステップS5において、パッド接触位置検出が済んだことを記憶するため、そのことを示すパッド接触位置検出フラグをセットして、ステップS1に戻る。
【0048】
一方、このようにして、パッド接触位置検出が行われた後は、ステップS2において、パッド接触位置検出が済んでいるか否かの判断がYESとなり、ステップS6において、図4に示す制御テーブルに基づいて、ペダル踏力に応じた目標推力に対する目標位置にピストン40をストロークさせるように電動モータ19を制御して、ステップS1に戻る。
【0049】
ステップS1において、ブレーキペダルが踏まれていない場合、ステップS7において、パッド接触位置検出が未完であるとするため、パッド接触位置検出が済んだことを示すパッド接触位置検出フラグをリセットする。
【0050】
そして、ステップS8において、パッドクリアランスが規定クリアランスであるか否か、すなわちパッド接触位置に対し所定のパッドクリアランス分ピストン40が後退した位置にあるか否かを判定し、パッドクリアランスが規定クリアランスでなければ、ステップS9において、ピストンを後退させるように電動モータ19を回転させて、ステップS8に戻る。
【0051】
ステップS8において、パッドクリアランスが規定クリアランスである場合、ステップS10において、電動モータ19を停止させることによりピストン40を停止させて、ステップS1に戻る。
【0052】
以上に述べた本実施形態の電動ディスクブレーキ10によれば、電動モータ19によりピストン40を移動させる際に、ブレーキパッド14,15がディスクロータ11に接触しない状態において電動モータ19の電流値に電流リップルを発生させる一方、ブレーキパッド14,15がディスクロータ11に接触した状態において電動モータ19の電流値から電流リップルを消失させる。具体的には、電動モータ19によりピストン40を移動させる際に、ブレーキパッド14,15がディスクロータ11に接触しない状態においては電動モータ19の駆動でリング部材52、54が相対回転することになり、これらリング部材52、54間に設けられたウエーブワッシャ55が空回りして電動モータ19の電流値に電流リップルを発生させる一方、ブレーキパッド14,15がディスクロータ11に接触した状態においては電動モータ19の駆動があってもリング部材52、54が相対回転を停止させることになり、これらの間に設けられたウエーブワッシャ55も回転しなくなって電動モータ19の電流値から電流リップルを消失させる。そして、コントローラが、この電流リップルの発生状態と回転検出器20で検出されるピストン40のストローク位置すなわちブレーキパッド14,15のストローク位置とからブレーキパッド14,15のディスクロータ11への接触位置であるパッド接触位置を検出する。このように、ブレーキパッド14,15のディスクロータ11への接触の有無により電動モータ19の電流値に電流リップルの変化を与えることでパッド接触位置を検出することができる。
【0053】
したがって、押圧センサ等を設ける場合に比して、低コストで、ブレーキパッド14,15がディスクロータ11に接触する際のピストン40のストローク位置すなわちブレーキパッド14,15のストローク位置を検出することができる。
【0054】
また、コントローラが、検出したパッド接触位置に基づいてブレーキパッド14,15のディスクロータ11とのクリアランスを調整する。よって、ブレーキパッド14,15のディスクロータ11への接触の有無により電動モータ19の電流値に電流リップルの変化を与えてパッド接触位置を検出し、これに基づいてブレーキパッド14,15のディスクロータ11とのクリアランスを調整することができる。
【0055】
したがって、押圧センサ等を設ける場合に比して、低コストで、ブレーキパッド14,15がディスクロータ11に接触する際のピストン40のストローク位置を検出し、これに基づいてブレーキパッド14,15のディスクロータ11とのクリアランスを調整することができる。
【0056】
しかも、電動モータ19によりピストン40を移動させる際に、ブレーキパッド14,15がディスクロータ11に接触しない状態においては電動モータ19の駆動でリング部材52、54が相対回転することになり、これらリング部材52、54の間に設けられたウエーブワッシャ55の凸部がリング部材52,54に設けられた凹凸部を乗り越えて電動モータ19の電流値に電流リップルを発生させる一方、ブレーキパッド14,15がディスクロータ11に接触した状態においては電動モータ19の駆動があってもリング部材52、54の相対回転が停止することになり、これらの間に設けられたウエーブワッシャ55も回転しなくなって電動モータ19の電流値から電流リップルを消失させる。
【0057】
このように、ウエーブワッシャ55により電流リップルを発生させるものであるため、確実に低コストで、ブレーキパッド14,15がディスクロータ11に接触する際のピストン40のストローク位置を検出することができる。
【0058】
【発明の効果】
以上詳述したように、本発明の請求項1記載の電動ディスクブレーキによれば、電動モータにより変換機構部を介してピストンを移動させる際に、ブレーキパッドがディスクロータに接触しない状態において電動モータの電流値に電流リップルを発生させる一方、ブレーキパッドがディスクロータに接触した状態において電動モータの電流値から電流リップルを消失させる電流リップル発生手段を設け、制御手段が、この電流リップルの発生状態と位置検出手段で検出されるピストンのストローク位置とからブレーキパッドのディスクロータへの接触位置であるパッド接触位置を検出する。このように、ブレーキパッドのディスクロータへの接触の有無により電動モータの電流値に電流リップルの変化を与える電流リップル発生手段を設けることでパッド接触位置を検出することができる。
【0059】
したがって、押圧センサ等を設ける場合に比して、低コストで、ブレーキパッドがディスクロータに接触する際のピストンのストローク位置を検出することができる。
【0060】
また、本発明の請求項2記載の電動ディスクブレーキによれば、制御手段が、電流リップル発生手段により発生させられる電流リップルの発生状態と位置検出手段で検出されるピストンのストローク位置とからパッド接触位置を検出し、このパッド接触位置に基づいてブレーキパッドのディスクロータとのクリアランスを調整する。このように、ブレーキパッドのディスクロータへの接触の有無により電動モータの電流値に電流リップルの変化を与える電流リップル発生手段を設けることでパッド接触位置を検出し、これに基づいてブレーキパッドのディスクロータとのクリアランスを調整することができる。
【0061】
したがって、押圧センサ等を設ける場合に比して、低コストで、ブレーキパッドがディスクロータに接触する際のピストンのストローク位置を検出し、これに基づいてブレーキパッドのディスクロータとのクリアランスを調整することができる。
【0062】
さらに、本発明の請求項3記載の電動ディスクブレーキによれば、電動モータにより変換機構部を介してピストンを移動させる際に、ブレーキパッドがディスクロータに接触しない状態においては電動モータの駆動で回転部が回転することになり、この回転部に設けられたウエーブワッシャの凸部がリング部材に設けられた凹凸部を乗り越えて電動モータの電流値に電流リップルを発生させる一方、ブレーキパッドがディスクロータに接触した状態においては電動モータの駆動があっても回転部が停止することになり、この回転部に設けられたウエーブワッシャも回転しなくなって電動モータの電流値から電流リップルを消失させる。
【0063】
このように、電流リップル発生手段は、ウエーブワッシャにより電流リップルを発生させるものであるため、確実に低コストで、ブレーキパッドがディスクロータに接触する際のピストンのストローク位置を検出することができる。
【0064】
本発明の請求項4記載の電動ディスクブレーキの制御プログラムによれば、電流リップルの消失信号と位置検出手段からのピストンストローク位置検出信号とに基づいてブレーキパッドのディスクロータへの接触位置を検出し、このパッド接触位置に基づいてブレーキパッドとディスクロータとのクリアランスを調整する。このように、ブレーキパッドのディスクロータへの接触の有無により電動モータの電流値に電流リップルの変化を与えることでパッド接触位置を検出し、これに基づいてブレーキパッドのディスクロータとのクリアランスを調整することができる。
【0065】
したがって、押圧センサ等を設ける場合に比して、低コストで、ブレーキパッドがディスクロータに接触する際のピストンのストローク位置を検出し、これに基づいてブレーキパッドのディスクロータとのクリアランスを調整することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の一実施形態の電動ディスクブレーキを示す断面図である。
【図2】 本発明の一実施形態の電動ディスクブレーキのリング部材およびウエーブワッシャを示す分解斜視図である。
【図3】 本発明の一実施形態の電動ディスクブレーキの電動モータの電流の、ブレーキパッドがディスクロータに接触する前後の変化を示す特性線図である。
【図4】 本発明の一実施形態の電動ディスクブレーキのコントローラによる制御に用いられる目標推力に対するピストンの目標位置の関係を示す制御テーブルである。
【図5】 本発明の一実施形態の電動ディスクブレーキのコントローラの制御内容を示すフローチャートである。
【符号の説明】
10 電動ディスクブレーキ
19 電動モータ
40 ピストン
41,43 ネジ部(変換機構部)
21 ボールランプ機構(変換機構部)
20 回転検出器(位置検出手段)
14,15 ブレーキパッド
11 ディスクロータ
52,54 リング部材(電流リップル発生手段,回転部)
55 ウエーブワッシャ(電流リップル発生手段)
Claims (4)
- 電動モータと、
該電動モータの回転運動をピストンの直線運動に変換する変換機構部と、
前記ピストンのストローク位置を検出する位置検出手段と、
該位置検出手段の検出結果に基づいて前記電動モータを制御する制御手段とを有し、
前記電動モータに電流を供給することでピストンによってブレーキパッドをディスクロータに押圧させて制動力を発生させる電動ディスクブレーキにおいて、前記電動モータにより前記変換機構部を介して前記ピストンを移動させる際に、前記ブレーキパッドが前記ディスクロータに接触しない状態において前記電動モータの電流値に電流リップルを発生させる一方、前記ブレーキパッドが前記ディスクロータに接触した状態において前記電動モータの電流値から電流リップルを消失させる電流リップル発生手段を有し、
前記制御手段は、前記電動モータの電流値における前記電流リップルの発生状態と前記位置検出手段で検出される前記ピストンのストローク位置とから前記ブレーキパッドの前記ディスクロータへの接触位置であるパッド接触位置を検出することを特徴とする電動ディスクブレーキ。 - 前記制御手段は、検出した前記パッド接触位置に基づいて前記ブレーキパッドの前記ディスクロータとのクリアランスを調整することを特徴とする請求項1記載の電動ディスクブレーキ。
- 前記電流リップル発生手段は、前記ブレーキパッドが前記ディスクロータに接触しない状態においては前記電動モータの駆動で回転する一方、前記ブレーキパッドが前記ディスクロータに接触した状態においては回転が停止される回転部に設けられたウエーブワッシャを有することを特徴とする請求項1または2記載の電動ディスクブレーキ。
- 電動モータと、該電動モータの回転運動をピストンの直線運動に変換する変換機構部と、前記ピストンのストローク位置を検出する位置検出手段とを有して、前記ピストンによってブレーキパッドをディスクロータに押圧させて制動力を発生させるべく、前記位置検出手段の検出結果に基づいて前記電動モータを制御する電動ディスクブレーキの制御プログラムにおいて、
前記電動モータに電流を供給して前記変換機構部を介して前記ピストンを移動させる際に、前記電動モータの電流値に発生する電流リップルを検出する電流リップル検出手段と、
該電流リップル検出手段からの電流リップルの消失信号と前記位置検出手段からのピストンストローク位置検出信号とに基づいて前記ブレーキパッドの前記ディスクロータへの接触位置を検出するパッド接触位置検出手段と、
該パッド接触位置検出手段のパッド接触位置に基づいて前記ブレーキパッドと前記ディスクロータとのクリアランスを調整するクリアランス調整手段とを有することを特徴とする電動ディスクブレーキの制御プログラム。
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