以下本発明を、その好ましい実施形態に基づき説明する。本発明の吸収性物品は、主として尿や経血等の排泄体液を吸収保持するために用いられるものである。本発明の吸収性物品には例えば使い捨ておむつ、生理用ナプキン、失禁パッド等が包含されるが、これらに限定されるものではなく、人体から排出される液の吸収に用いられる物品を広く包含する。
本発明の吸収性物品は、典型的には、表面シート、裏面シート及び両シート間に介在配置された液保持性の吸収体を具備している。表面シート及び裏面シートとしては、当該技術分野において通常用いられている材料を特に制限無く用いることができる。例えば表面シートとしては、親水化処理が施された各種不織布や開孔フィルム等の液透過性のシートを用いることができる。裏面シートとしては、熱可塑性樹脂のフィルムや、該フィルムと不織布とのラミネート等の液不透過性又は撥水性のシートを用いることができる。裏面シートは水蒸気透過性を有していてもよい。吸収性物品は更に、該吸収性物品の具体的な用途に応じた各種部材を具備していてもよい。そのような部材は当業者に公知である。例えば吸収性物品を使い捨ておむつや生理用ナプキンに適用する場合には、表面シート上の左右両側部に一対又は二対以上の立体ガードを配置することができる。
図1には、本実施形態の吸収性物品における吸収体の断面の構造が模式的に示されている。同図に示す吸収体10は、長繊維のウエブ(以下、ウエブという)20の単層構造になっている。ウエブ20中には高吸収性ポリマー21が含まれている。高吸収性ポリマー21は、ウエブ20中に均一に埋没担持されている。
長繊維は親水性を有するものであることが好ましい。親水性を有する長繊維として本発明において用いられるものには、本来的に親水性を有する長繊維、及び本来的には親水性を有さないが、親水化処理が施されることによって親水性が付与された長繊維の双方が包含される。好ましい長繊維は本来的に親水性を有する長繊維であり、特にアセテートやレーヨンの長繊維が好ましい。とりわけアセテートは湿潤しても嵩高性が保持されるので特に好ましい。アセテートとしては、セルローストリアセテート及びセルロースジアセテートが好ましい。
図1に示す吸収体10は、それに含まれる高吸収性ポリマー21によって特徴付けられる。この高吸収性ポリマー21は、荷重下での通液速度が高いことを特徴とするものである。通液速度は、高吸収性ポリマーを十分に吸液させて飽和させた状態下に荷重を加えて測定される。従って、通液速度が速いということは、高吸収性ポリマーが吸液して飽和した状態で圧力が加わっても、液の通過が妨げられにくいことを意味する。それ故、通液速度が速い高吸収性ポリマーを用いることは、繰り返し液を吸収した状態にある吸収性物品の吸収体が着用者の体圧を受けても、高吸収性ポリマーのゲルブロッキングが起こりにくい。高吸収性ポリマーのゲルブロッキングは、体液を表面シートから吸収する速度を低下させる。即ち高吸収性ポリマーのゲルブロッキングは、長時間にわたり肌と表面シートの間に体液が存在することを意味する。すなわち、皮膚のかぶれ、尿のもれ、吸収体の液吸収容量の低下や、ウエットバック発生の原因となるものである。
高吸収性ポリマーのゲルブロッキングを効果的に防止する観点から、本実施形態においては高吸収性ポリマーとしてその通液速度の値が30〜300ml/min、好ましくは32〜200ml/min、更に好ましくは35〜100ml/minのものを用いている。通液速度の値が30ml/min未満である場合、吸液によって飽和膨潤した高吸収性ポリマーどうしが荷重下に付着し合って、液の通過を妨げてしまいゲルブロッキング発生が起こりやすくなる。通液速度の値は大きければ大きいほどゲルブロッキングの発生を防止する観点から好ましい。通液速度が300ml/minを超える場合は、吸収体中の液の流れ性が高すぎて、特に一度に多量の排泄物が排泄された場合や、月齢の高い乳幼児或いは大人の例に見られるように排泄速度が速い場合、さらに吸収体の薄型化を図った場合に、液の固定が十分でなく、漏れを生じる可能性がある。また、一般に、通液速度を高めることは高吸収性ポリマーの架橋度を高くすることになり、高吸収性ポリマーの単位重量あたりの吸収容量が低くなり、多量の高吸収性ポリマーを使用しなければならない。これらの観点から通液速度の上限値は決定される。
前記の範囲の高通液速度を有する高吸収性ポリマー21は従来知られていた。しかし、パルプを主体とする吸収体を備えた従来の吸収性物品においては、パルプが高吸収性ポリマー間に介在しているために、体液の吸収によって高吸収性ポリマー21が十分膨潤しても、パルプがゲルブロッキングを防ぎ且つ体液の通液路として働く。またパルプが吸収体コアの骨格を成していると、体圧が加わっても潰れないため吸収体コア中に内在している高吸収性ポリマーには体圧ほどの圧力が加わらない。従ってパルプを主体とする吸収体を備えた従来の吸収性物品では、前記の範囲の高通液速度を有する高吸収性ポリマー21ほどの物性は必要とは考えられていなかった。つまり、前記の範囲の高通液速度を有する高吸収性ポリマー21は、長繊維のウエブ20と組み合わせた吸収体10において、その効果を発現するものである。
前記の範囲の通液速度を有する高吸収性ポリマー21を得るためには、例えば高吸収性ポリマーの粒子内部及び表面の架橋密度を調整したり、架橋密度に勾配を設けたり、粒子表面に無機物質を添加したり、高吸収性ポリマーの粒子形状を調整するなどの様々な方法が知られている。所望の通液速度を有する高吸収性ポリマー21を得るには、本出願人の先の出願に係る特許第2721658号公報に記載の陰イオン界面活性剤を分散剤として用いた逆相懸濁重合法を用いてもよいし、水溶液重合法などの他の方法を用いてもよい。
高吸収性ポリマー21の通液速度の測定は、2.0kPa荷重下で行われる。この荷重は、吸収性物品を着用している間に吸収体に加わる体圧にほぼ相当する。通液速度の具体的な測定方法は、例えば特開2003−235889号公報の段落0005に記載されている。本発明においては、この公報に記載されている測定方法で用いられる試料の重量である0.200gを0.32gに変更して測定を行う。具体的には以下の手順で通液速度を測定する。
〔通液速度の測定方法〕
ゲル通液速度は、垂直に立てた円筒(内径25.4mm)の開口部の下端に金網(目開き150μm)とコック(内径2mm)付き細管(内径4mm、長さ8cm)とを有する濾過円筒管内に、該コックを閉鎖した状態で、850〜150μmの粒度に調整した測定試料0.32gを投入し、生理食塩水50mlを注ぎ、注ぎ始めてから30分間静置した後、金網(目開き150μm、直径25mm)付き荷重(21.2g)を金網と測定試料が接するようにして濾過円筒内に挿入し、1分後におもり(77.0g)を金網付き荷重の上にのせ、さらに1分間静置した後該コックを開き、0.9重量%生理食塩水の液面が40mlの目盛り線から20mlの目盛り線に達するまでの時間(T1)(秒)を計測して、次式から求める{(T0)は測定試料なしのときの時間である}。
通液速度(ml/min)=20×60/(T1−T0)
通液速度の更に詳細な測定方法は前記の公報の段落0008及び0009に記載されている。測定装置は同公報の図1及び図3に記載されている。
高吸収性ポリマー21は前記の範囲の通液速度を有するので、これを多量にウエブ20中に配合しても、ゲルブロッキングが起こりにくい。高吸収性ポリマー21をウエブ20中に多量に配合できることは、吸収体10の液吸収容量を向上させ得る点から有利である。この観点から、吸収体10においては、高吸収性ポリマーと長繊維との重量比(高吸収性ポリマー/長繊維)を2以上に設定し、好ましくは3以上に設定する。この重量比に特に制限はないが、5以上、特に10程度であれば、吸収体10の液吸収容量を十分に大きくすることができる。
従来の吸収性物品の吸収体においても繊維材料の量を多くすれば高吸収性ポリマーを多量に保持することは可能であった。しかし、その場合には吸収体の坪量及び厚みが大きくなってしまう。これに対して本発明においては、繊維材料であるウエブ20の量に対して高吸収性ポリマー21の量を相対的に大きくすることが容易である。このことは、吸収体10を厚くすることなくその液吸収容量を向上させ得る点から非常に有利である。長繊維に対する高吸収性ポリマー21の重量比の上限値は、高吸収性ポリマー21の極端な移動や脱落防止の観点から決定される。長繊維の捲縮の有無や捲縮の程度にもよるが、該上限値が10程度であれば、着用者が激しい動作を行っても高吸収性ポリマーの極端な移動や脱落は起こりにくい。
前記の範囲の通液速度を有する高吸収性ポリマー21は、JIS K7224(VORTEX法)に従い測定された初期吸収速度が高いことが好ましい。通液速度は、高吸収性ポリマーを十分に吸液させて飽和させた状態下に測定されるものであること、液を吸収していない初期状態においても吸収速度が高い高吸収性ポリマーを用いることで、長繊維のウエブを備えた吸収体の吸収速度が一層高まることが本発明者らの検討の結果判明した。これと共に高吸収性ポリマーのゲルブロッキングが一層起こりづらくなり、また液吸収後の吸収体の感触が改善されることも判明した。
前記の方法に従い測定される初期吸収速度は、その値が小さいほど液の吸収速度が高いことを意味する。高吸収性ポリマー21の初期吸収速度が好ましくは45秒以下、更に好ましくは35秒以下であると、十分に満足すべき性能の吸収性物品、具体的には液吸収速度が高く且つゲルブロッキングが起こりづらい吸収体を備えた吸収性物品が得られる。
前記の初期吸収速度を有する高吸収性ポリマーを調製するには、例えば、先に述べた本出願人の先の出願に係る特許2721658号公報に記載の陰イオン界面活性剤を分散剤として用いた逆相懸濁重合法を用いればよいし、水溶液重合法を用いて合成してもよい。
なお、高吸収性ポリマーの初期吸収速度の評価方法としては、上述のVORTEX法の他にDW法が知られている。これらの両者のうち、本発明の吸収性物品における吸収体が、高吸収性ポリマーと長繊維のウエブとを備えていることを考慮すると、DW法よりもVORTEX法に従い高吸収性ポリマーの初期吸収速度を評価することが適切である。
以上説明した高吸収性ポリマー21とは別に、本発明においては、高吸収性ポリマー21として、以下の方法で測定されたパルプとの親和性の尺度が0.3〜0.9、好ましくは0.4〜0.8、更に好ましくは0.5〜0.7のものを用いることもできる。この数値は0から1までの値をとり、値が大きいほどパルプとの親和性が低いことを意味する。以下の測定方法から明らかなように、パルプとの親和性が低いとは、高吸収性ポリマー21がパルプに付着しづらいことをいう。パルプとの親和性の尺度が前記の範囲ということは、本発明においては、パルプとの親和性が低い高吸収性ポリマー21を用いることが有利であることを意味している。このような高吸収性ポリマー21は、吸液してもポリマーどうしが粘着しづらいので、吸液した状態の吸収体10においては、ポリマーどうしの間に自由水(間隙水)が少ない状態になっている。従って、吸収体10に着用者の体圧が加わっても、その自由水(間隙水)を吸収体10の横方向(平面方向)へ逃し得る空間がポリマーどうしの間に維持される。その結果、吸収体10からの液の逆戻り、即ちウエットバックが起こりづらくなり、吸収性物品の肌当接面がさらさらしたドライ感を呈する。パルプとの親和性の尺度が前記の範囲高吸収性ポリマー21を得るためには、例えば、本出願人の先の出願に係る特許第2721658号公報に記載の陰イオン界面活性剤を分散剤として用いた逆相懸濁重合法を採用してもよいし、水溶液重合法を用いて合成してもよい。
パルプを主体とする従来の吸収体においては、パルプとの親和性が低い高吸収性ポリマーを併用すると、ポリマーがパルプに付着しづらい。更に、吸収体の形状安定性が劣るので、着用者の活動時に吸収体がよれ、それによってポリマーが吸収体中で偏在しやすかった。この現象を防ぐためには、高吸収性ポリマーに対してパルプの混合比率を高めねばならず、その結果、パルプの使用量を下げることができず、高吸収性ポリマーの特性を十分生かすことができなかった。これに対して、本発明者らは意外にも、長繊維のウエブ20を主体とする吸収体を用いることで、パルプとの親和性が低い高吸収性ポリマーであってもこれをウエブ中に均一に担持できることを見出した。もちろん長繊維のウエブ20を主体とする吸収体は、パルプとの親和性が高いポリマーも均一担持することができる。
パルプとの親和性の尺度は次の方法で測定される。高吸収性ポリマー1.0gを、濾紙(アドバンテック東洋製4A185mm)上の中心から半径5cmの円内に均一に散布する。その後、高吸収性ポリマーを膨潤させるために、0.9重量%NaCl水溶液50gを前記円内に均一に塗布し、完了から1分経過後に濾紙のポリマー散布面を下に向ける。パルプとの親和性は落下したポリマーの量Aと脱落せずに濾紙に付着しているポリマー量Bを測定し、次式によって求められる。
パルプとの親和性=B/(A+B)
上述した何れの高吸収性ポリマーを用いる場合であっても、該高吸収性ポリマーは、JIS K7223に従い測定された無荷重下における保持量が28g/g以上、特に33g/g以上、とりわけ35g/g以上であることが好ましい。また、同法に従い2kPa荷重下における保持量が13g/g以上、特に15g/g以上であることが好ましい。保持量は、高吸収性ポリマーがどの程度の液を吸収保持できるかの尺度となるものであり、この値が大きいほど多量の液を吸収することができ、且つそれを再放出することなく保持することができる。本発明で用いられる高吸収性ポリマーの液の保持量が前記の値以上であることによって、漏れが発生するまでに吸収できる液の量を高めることができ、またウエットバック量を少なくすることができるという利点がある。更に、液吸収後の吸収体の感触が改善される。液の保持量の測定条件として、無荷重下及び2kPa荷重下という2つの条件を設定した理由は、排尿の際に吸収性物品に体圧が加わっていない場合(例えば着用者が立っている場合や、這っている場合)と、体圧が加わっている場合(例えば着用者が座っている場合や、俯せ寝している場合)とがあることを考慮したものである。なお2kPaの荷重が吸収性物品を着用している間に吸収体に加わる体圧にほぼ相当することは、先に述べた通りである。
高吸収性ポリマーの液の保持量の測定方法は図2に示す通りである。先ず図2(a)に示すように、直径60mmの円筒100を用意する。円筒100は、上部100a及び下部100bに分離可能になっている。上部100aと下部100bとは螺合によって一体可能になっている。上部100aと下部100bとの間には400メッシュ(目の大きさ38μm)の金網101を配置し、上部100aと下部100bとの螺合によって金網101を円筒100に固定する。
次に図2(b)に示すように、金網101の上に、吸水前のドライな状態の高吸収性ポリマーPを1g散布する。その上に、ガラスフィルタ102を載せ、更にその上におもり103を載せて、高吸収性ポリマーPに2kPaの荷重が加わるようにする。このときの全体重量をA(g)とする。
次に図2(c)に示すように、生理食塩水の入った容器104内に円筒100を沈め、高吸収性ポリマーPに生理食塩水を吸収させる。30分間静置し、高吸収性ポリマーPを充分に膨潤させた後、図2(d)に示すように円筒100を容器104から引き上げ、水切り台105の上に載置して30分間水を切る。水切り後の全体重量を測定し、その値をB(g)とする。
以上の操作とは別に、高吸収性ポリマーPを散布せずに図2(a)〜(d)と同様の操作を行い、図2(e)に示すように全体重量を測定し、その値をC(g)とする。
2kPa荷重下における高吸収性ポリマーPの保持量(g/g)は、前記のA、B及びCの値を用い、(B−A−C)で算出される。
一方、無荷重下における高吸収性ポリマーPの保持量(g/g)は、図2(a)〜(e)の操作において、おもり103を用いない以外は、2kPa荷重下における高吸収性ポリマーPの保持量の測定と同様にして測定される。
前記の保持量を有する高吸収性ポリマーを調製するには、例えば、先に述べた本出願人の先の出願に係る2721658号公報に記載の陰イオン界面活性剤を分散剤として用いた逆相懸濁重合法を用いればよい。
図1においては、高吸収性ポリマー21がウエブ20中にほぼ均一に埋没担持されている状態が示されている。しかし高吸収性ポリマー21の分散状態はこれに限られない。例えば高吸収性ポリマー21は、ウエブ20の肌対向面側に偏倚して埋没担持されていてもよい。或いは、高吸収性ポリマー21は、ウエブ20中において、ウエブ20の肌非対向面側に偏倚して埋没担持されていてもよい。高吸収性ポリマー21が、ウエブ20の肌対向面側又は肌非対向面側に偏倚している場合、高吸収性ポリマー21の存在量は、ウエブ20の厚み方向に関して連続的に変化していてもよく、或いは段階的に変化していてもよい。高吸収性ポリマー21が、ウエブ20の肌対向面側に偏倚していると、液のスポット吸収性が高くなる。そのような吸収体10を備えた吸収性物品は軽失禁者用の失禁パッドや生理用ナプキンとして好適である。一方、高吸収性ポリマー21が、ウエブ20の肌非対向面側に偏倚していると、液の拡散性が高くなり、吸収体全体での液の吸収性が高くなる。そのような吸収体10を備えた吸収性物品は使い捨ておむつとして好適である。
図3には本発明の吸収性物品に係る吸収体10の他の例が示されている。本実施形態の吸収体10は、同種又は異種のウエブ20,20及び高吸収性ポリマー21の散布層を備えている。吸収体10はウエブ20を複数備えており、ウエブ20,20間にポリマー21の散布層が位置している。ウエブの層数の上限の数に特に制限はなく、吸収性物品の具体的な用途に応じて適切な数のウエブが用いられる。高吸収性ポリマー21はその一部がウエブ20内に担持されている。本実施形態の吸収体10は、ウエブ20の厚さ方向中央部に、高吸収性ポリマーが偏倚したものと捉えることができる。
吸収体10における高吸収性ポリマー21の厚み方向における散布状態は前述した通りであり、平面方向における散布状態としては、次に述べるものが挙げられる。先ず典型的な散布状態としては平面方向に均一に高吸収性ポリマー21が散布される状態が挙げられる。別の散布状態として、高吸収性ポリマー21が吸収体10の前側に偏倚するように散布される状態が挙げられる。この場合、吸収体10の幅方向での散布坪量を同じにして、且つ吸収体10の前側ほど散布坪量を高くすることができる。或いは、吸収体10の後側に向けて開口したコ字状となるように高吸収性ポリマー21を散布することもできる。高吸収性ポリマー12が吸収体10の前側に偏倚するように散布されていると、身体の前側からの液漏れの防止効果が高い吸収性物品が得られる。このような吸収性物品は、パンツ型使い捨ておむつとして特に有用である。
吸収体10の平面方向における高吸収性ポリマー21の別の散布状態として、高吸収性ポリマー21が吸収体10の後側に偏倚するように散布される状態が挙げられる。例えば、吸収体10の前側に向けて開口したコ字状となるように高吸収性ポリマー21を散布することができる。高吸収性ポリマー21が吸収体10の後側に偏倚するように散布されていると、身体の後側からの液漏れの防止効果が高い吸収性物品が得られる。このような吸収性物品は、低月齢乳児や寝たきりの方用の使い捨ておむつとして特に有用である。
吸収体10の平面方向における高吸収性ポリマー21の更に別の散布状態として、吸収体10の周縁領域には高吸収性ポリマー21を散布せず、周縁領域に取り囲まれる中央領域に高吸収性ポリマーを散布する状態が挙げられる。吸収体10の周縁領域に高吸収性ポリマー21が散布されていないことで、吸収体10からの高吸収性ポリマー21の脱落を効果的に防止できる。
吸収体10においては、ウエブ20を構成する長繊維が、吸収体10の平面方向に一方向に配向していることが好ましい。長繊維が一方向に配向していることに起因して、吸収体10に液が吸収されると、該液は長繊維の配向方向へ優先的に拡散する。つまり吸収体10の平面方向に優先的に拡散する。逆に、長繊維の配向方向と直交する方向への拡散は抑制される。長繊維が吸収性物品の長手方向に配向している場合には、吸収性物品の側部からの液漏れ(横漏れ)が効果的に防止される。一方、長繊維が吸収性物品の幅方向に配向している場合には、吸収性物品の長手方向への拡散が抑制され、スポット吸収性が得られる。
ウエブ20を構成する長繊維としては捲縮しているものを用いることが好ましい。長繊維はその捲縮率(JIS L0208)が10〜90%、特に10〜60%、とりわけ20〜50%であることが好ましい。捲縮した長繊維からウエブ20を形成することで、ウエブ20中に高吸収性ポリマー21を安定的に且つ多量に埋没担持することが容易となる。長繊維を捲縮させる手段に特に制限はない。また、捲縮は二次元的でもよく或いは三次元的でもよい。捲縮率は、長繊維を引き伸ばしたときの長さAと、元の長繊維の長さBとの差の、伸ばしたときの長さAに対する百分率で定義され、以下の式から算出される。
捲縮率=(A−B)/A × 100 (%)
元の長繊維の長さとは、長繊維が自然状態において、長繊維の両端部を直線で結んだ長さをいう。自然状態とは、長繊維の一方の端部を水平な板に固定し、繊維の自重で下方に垂らした状態をいう。長繊維を引き伸ばした時の長さとは、長繊維の捲縮がなくなるまで伸ばした時の最小荷重時の長さをいう。
長繊維の捲縮率は前述の通りであり、捲縮数は1cm当たり2〜25個、特に4〜20個、とりわけ10〜20個であることが好ましい。
長繊維の繊維径は、高吸収性ポリマーの担持性に関連している。ウエブ20の坪量が同一であることを条件として、1.0〜10dtex、特に1.7〜7.8dtexの長繊維を用いることで満足すべき担持性が得られる。本発明において長繊維とは、繊維長をJIS L1015の平均繊維長測定方法(C法)で測定した場合、好ましくは70mm以上、更に好ましくは80mm以上、一層好ましくは100mm以上である繊維のことをいう。ただし、測定対象とするウエブの全長が100mm未満である場合には、当該ウエブ中の繊維の好ましくは50%以上、更に好ましくは70%以上、一層好ましくは80%以上がウエブ全長にわたって延びている場合に、当該ウエブの繊維は長繊維であるとする。本発明で用いられる長繊維は一般に連続フィラメントと呼ばれるものである。また、連続フィラメントの束は一般にトウと呼ばれている。従って、本発明における長繊維とは、連続フィラメントを含む概念のものである。また長繊維が配向したウエブとは、ウエブを形成する原料としての長繊維の束(いわゆるトウ)と、連続フィラメントのトウ層を含む概念のものである。また、該長繊維の一部が切断され繊維長が上記値を下回る繊維(切断された繊維)が、吸収体中に混合されても良い。多くの場合、該切断された繊維は製造工程において生じるものである。
以上の構造を有する本実施形態の吸収体10は、薄型で低坪量のものとなる。吸収体10の厚さや坪量は、吸収性物品の具体的な用途に応じて適切な値が選択される。例えば乳幼児用の使い捨ておむつの吸収体として用いる場合には、ウエブ20はその坪量が5〜200g/m2、特に10〜100g/m2であることが好ましい。この場合、一方、高吸収性ポリマー21の散布坪量は50〜500g/m2、特に100〜300g/m2であることが好ましい。
生理用ナプキンの吸収体として用いる場合には、ウエブ20はその坪量が5〜100g/m2、特に10〜50g/m2であることが好ましい。一方、高吸収性ポリマー21の散布坪量は10〜200g/m2、特に15〜100g/m2であることが好ましい。失禁パッドの吸収体として用いる場合には、ウエブ20はその坪量が5〜200g/m2、特に10〜100g/m2であることが好ましい。一方、高吸収性ポリマー21の散布坪量は10〜500g/m2、特に15〜350g/m2であることが好ましい。
吸収体10におけるウエブ20及び高吸収性ポリマー21の合計の坪量は、吸収体10を例えば使い捨ておむつに用いる場合には、好ましくは120〜400g/m2、特に150〜300g/m2である。生理用ナプキンに用いる場合には、好ましくは35〜200g/m2、特に50〜150g/m2である。失禁パッドに用いる場合には、好ましくは35〜500g/m2、特に50〜400g/m2である。
吸収体10は、高吸収性ポリマー21が含まれたウエブ20のみから構成されていてもよく、或いはウエブ20が、例えば各種シート材料によって包まれていてもよい。また、ウエブ20の上面及び/又は下面に各種シート材料が配されていてもよく、更にそれら全体が別のシート材料によって包まれていてもよい。前記シート材料としては、フラッフパルプやティッシュペーパーなどの紙、乾式パルプシート、不織布(例えばエアスルー不織布、エアレイド不織布)等が挙げられる。吸収体10が使い捨ておむつに用いられる場合には、該吸収体10が前記のどのような形態である場合でもその厚みが好ましくは1〜4mm、更に好ましくは1.5〜3mmという薄型のものである。生理用ナプキンに用いられる場合には、好ましくは0.5〜3mm、更に好ましくは1〜2mmである。失禁パッドとして用いられる場合には、好ましくは0.5〜4mm、更に好ましくは1〜3mmである。
吸収体10の厚みは、吸収体10上に5cm×5cmの大きさのアクリル板を載せ、更にその上に重りを載せ、2.5g/cm2の荷重が加わった状態下に測定される。本実施形態においては、キーエンス社のLK080クラス2レーザー変位計を用いて厚みを測定した。測定点数は5点の平均とし、20%以上測定値が振れた場合はそのデータを削除し、別の測定値を追加した。試料には予め250g/cm2の荷重を12時間掛けて、しわを伸ばした状態としておいた。
図4には本発明の吸収性物品に係る吸収体10の更に他の例が示されている。本実施形態の吸収体10は、フラッフパルプの積繊層22の上に、高吸収性ポリマー21を含む長繊維のウエブ20を重ねた構造を有している。積繊層22中には、ウエブ20中に含まれている高吸収性ポリマー21と同種又は異種の高吸収性ポリマー23が含まれている。なお図4では積繊層22中にはポリマーが含まれている状態が示されているが、これに代えて積繊層22中にポリマーを含有させなくてもよい。この吸収体10では、フラッフパルプの積繊層22が、排泄された液の一次ストック層として作用するので、液の排泄速度が高い場合(例えば尿が排泄される場合)であっても、液漏れを効果的に防止できる。この観点から、ウエブ20中に埋没担持される高吸収性ポリマー21は、ウエブ20の肌非対向面側に偏倚して埋没担持されていることが好ましい。なお、フラッフパルプの積繊層22中には高吸収性ポリマー23を含有させなくてもよい。尤も、高吸収性ポリマー23を含有させた方が、積繊層22による液の一次ストック層としての効果が一層高くなるので好ましい。この吸収体10を備えた吸収性物品は使い捨ておむつとして好適である。
本発明の吸収性物品に係る吸収体10のその他の例として、図5ないし図7に示すものも用いることができる。図5(a)ないし(c)には、1枚の液透過性シート30と、高吸収性ポリマー21を含む長繊維のウエブ20の1層又は2層とを組み合わせた形態の吸収体10が示されている。液透過性シート30としては、例えば乾式パルプシート、コットンシート、不織布、フラッフパルプと高吸収性ポリマーとの混合シートなどが挙げられる。図5(a)においては、ウエブ20の下側に液透過性シート30が配置されている。図5(b)においては、ウエブ20の上側に液透過性シート30が配置されている。図5(b)においては、2層のウエブ20間に液透過性シート30が配置されている。
図6(a)ないし(c)には、2枚の液透過性シート30と、高吸収性ポリマー21を含む長繊維のウエブ20の1層又は2層とを組み合わせた形態の吸収体10が示されている。2枚の液透過性シート30は同種でもよく、或いは異種でもよい。図6(a)においては、液透過性シート30とその上に配置されたウエブ20とを一組とする組み合わせが二組積層されている。図6(b)においては、ウエブ20とその上に配置された液透過性シート30とを一組とする組み合わせが二組積層されている。図6(c)においては、ウエブ20の上下に液透過性シート30がそれぞれ配置されている。
図7には、3枚の液透過性シート30と、高吸収性ポリマー21を含む長繊維のウエブ20の2層とを組み合わせた形態の吸収体10が示されている。3枚の液透過性シート30は同種でもよく、或いは異種でもよい。同様に、2層のウエブ20は同種でもよく、或いは異種でもよい。図7に示す吸収体10は、上下に隣り合う液透過性シート30の間にウエブ20が配置されて構成されている。
本発明の吸収性物品に係る吸収体の好ましい製造方法は次の通りである。例えば図1に示す形態の吸収体10を製造する場合には、まず、先に述べた捲縮率を有する長繊維のトウを用意する。このトウに張力を加えて長手方向に引き伸ばした状態で搬送しながら所定手段によって開繊しウエブを得る。開繊には例えば圧縮空気を利用した空気開繊装置を用いることができる。長繊維は捲縮を有しているので、張力が加わることによって、該長繊維はその長手方向に容易に引き伸ばされた状態となる。開繊したウエブには、その上から高吸収性ポリマーが散布される。散布に際しては、開繊したウエブの搬送速度を減速した状態で、該ウエブをバキュームコンベア上に転写させる。ウエブは、該バキュームコンベア上で張力が緩められる。それによってウエブの引き伸ばし状態が解除され、長繊維は捲縮した状態に復帰する。またウエブは、その厚みが引き伸ばし状態時よりも大きくなり、高吸収性ポリマーの埋没担持性が向上する。この状態下に高吸収性ポリマーが散布される。捲縮状態となっている長繊維は、その繊維間に高吸収性ポリマーを収容し得る空隙を有する。この空隙に高吸収性ポリマーが埋没担持される。これにより、所望の坪量の高吸収性ポリマーを埋没担持させることができる。高吸収性ポリマーの散布と同時に、ウエブにおけるポリマーの散布面と反対側の面から吸引を行い、ポリマーの埋没担持を促進させることが効果的である。吸引の程度を適宜調整することで、ウエブの厚み方向におけるポリマーの分布を変えることができる。
なお前記実施形態においては、ウエブ20中には、前記の通液速度を有する高吸収性ポリマー21又はパルプとの親和性の尺度が前記の範囲内の高吸収性ポリマー21のみが含まれていたが、これに代えて、吸収性物品に他の機能を付与する目的で、高吸収性ポリマー21以外の高吸収性ポリマーを配合してもよい。尤も、高吸収性ポリマー21以外の高吸収性ポリマーを配合し過ぎると、前記の通液速度を有する高吸収性ポリマー21を配合することによる利点が減殺されるので、高吸収性ポリマー21以外の高吸収性ポリマーの配合量は、高吸収性ポリマーの全配合量に対して60重量%以下、特に20重量%以下であることが好ましい。
別の実施形態においては、前記ウエブ中の高吸収性ポリマーと積層するフラッフパルプ中に混合する高吸収性ポリマーは、ウエブ中の高吸収性ポリマーと同一のものを用いても良く、異なるものを用いても良い。異なる高吸収性ポリマーを用いる場合は、好ましくは互いに2.0kPa荷重下での通液速度が30〜300ml/minの性能を確保した高吸収性ポリマーを使用する。互いの高吸収性ポリマー間で、前記の通液性のレベルが異なっている場合は、肌に近い側に位置する層内の高吸収性ポリマーの通液性が、肌から遠い側に位置する層内の高吸収性ポリマーの通液性よりも高い方が、素早く排泄物を吸収し、肌から遠い側に位置する層内で排泄物を固定できる点で好ましい。また、肌から遠い側に位置する層内の高吸収性ポリマーの吸収容量のほうが高いほうが好ましい。好ましくは肌に近い側に位置する層がウエブ層で、肌から遠い側に位置する層が高吸収性ポリマーを含むフラッフパルプの層である。
図8〜図11には、本発明の吸収性物品の一実施形態としてのパンツ型の使い捨ておむつ1が示されている。おむつ1は、液透過性の表面シート2、液不透過性又は撥水性の裏面シート3及び両シート2,3間に位置する液保持性の吸収体10を有する吸収性本体5と、該吸収性本体5の外側(非肌当接面側)に位置して該吸収性本体5を接合固定している外装体100とを具備する。おむつ1は、着用者の股間部に配される股下部Cと、その前後に延在する腹側部A及び背側部Bを有している。腹側部Aは着用時に着用者の腹側に配され、背側部Bは着用時に着用者の背側に配される。
外装体100は、図10に示すように、2枚のシート111,112と、これら2枚のシート間に固定された各部の弾性部材とからなる。おむつ1においては、図9に示すように、2枚のシート111,112間に、ウエスト開口部7の周縁部にウエストギャザーを形成するウエスト部弾性部材71、レッグ開口部8の周縁部にレッグギャザーを形成するレッグ部弾性部材81、及びウエスト開口部7の周縁端から下方に20mm離間した位置からレッグ開口部8の上端までの領域である胴回り部Dに左右に分割された状態の胴回りギャザーを形成する胴回り弾性部材91がそれぞれ伸張状態で固定されている。各弾性部材71、81、91はホットメルト型接着剤等の接合手段により接合されている。
本実施形態のおむつ1における吸収体10は、図9〜図11に示すように、吸収体10の肌当接面側の第1吸収体41と吸収体10の非肌当接面側の第2吸収体42とからなる。第1吸収体41は、第2吸収体42の肌当接面側に配されている。本実施形態における第1吸収体41は、平面視矩形状であり、吸収性本体5の長手方向の略全長に亘る長さ及び該吸収性本体5の幅より若干狭い幅を有している。そして、第1吸収体41として、高吸収性ポリマーが含まれた親水性を有する長繊維のウエブが用いられ、また第2吸収体42として、パルプと高吸収性ポリマーとの混合積繊体が用いられている。第1吸収体41及び第2吸収体42を含む吸収体10全体の2.0kPa荷重下での通液速度は30〜300ml/minになっている。また、第1吸収体41における高吸収性ポリマーと長繊維との重量比(高吸収性ポリマー/長繊維)は2以上になっている。
第2吸収体42は、平面視したときの概略形状はほぼ矩形状であるが、股下部Cの左右に、吸収体10の立体形状への変形を容易とする欠落部44,44を有している。吸収体10の立体形状への変形としては、(イ)吸収体10がおむつ幅方向の断面(例えば図11に示す断面)において凹状をなすように変形する幅方向の変形、(ロ)吸収体10がおむつ長手方向の断面において凹状をなすように変形する縦方向の変形、及び(ハ)これら両方向の変形が組み合わされた複合型の変形が代表例である。本実施形態における欠落部44は、図9及び図11に示すように、股下部Cにおける吸収体10の側縁部43から離間した部位に、該吸収体10の長手方向に沿って延びるように形成されている。股下部Cに形成された欠落部44の形成部位に関し、吸収体10の側縁部43から離間しているとは、少なくとも、おむつ長手方向中央位置において離間していれば良い。おむつ長手方向中央位置とは、展開且つ伸長状態としたおむつの長手方向の全長を2等分する位置であり、図9中のII−II線の位置である。
欠落部44は、直線部45及び該直線部45の各端部に連なる円弧部46によって画定される略弓形の細長い形状をしている。各欠落部44においては、その直線部45が、吸収体10の側縁部43寄りに位置し、円弧部46が吸収体10の幅方向内方寄りに位置している。欠落部44は、第2吸収体42の長手方向の各端縁までは延びておらず、第2吸収体42の長手方向の略中央部にのみ形成されている。従って、欠落部44の各端部と、第2吸収体42の長手方向の前後端縁との間は、欠落部が存在しない積繊部になっている。
本実施形態における第1吸収体41は、図10及び図11に示すように、第2吸収体42の肌当接面側に重ねて配されており、第2吸収体42の欠落部44,44は、何れも第1吸収体41の下に位置している。吸収体の肌当接面側とは、吸収体の両面のうち、着用時に着用者の肌側に向けられる面側であり、吸収体の非肌当接面側とは、吸収体の両面のうち、着用時に着用者の肌側とは反対側に向けられる面側である。
本実施形態における吸収体10は、第2吸収体42が欠落部44を有することにより、該吸収体の立体形状への変形性が向上しており、図11に示すように、吸収体10の両側部、具体的には、第2吸収体42の幅方向中央域の両側に位置する側部域が、おむつ着用時に、着用者の肌側に向けて容易に起立する。
吸収体10の両側部を良好に起立させ、排尿部を包み込む理想的な立体形状を形成させる観点及び吸収体10の幅方向中央域の作用によって股間部における吸収体のよれを防止する観点から、おむつ幅方向における、吸収体の側縁部43と欠落部44(欠落部のおむつ幅方向中央寄り端部の位置)との間の距離W1(図9参照)は、吸収体10の幅W(図9参照)の10〜40%であることが好ましく、20〜30%であることがより好ましい。左右の欠落部44間の幅W2(図9参照)は、20〜120mm、特に40〜100mmが好ましい。欠落部44の幅(おむつ幅方向の寸法)は、3〜20mm、特に5〜15mmが好ましい。また、欠落部44のおむつ長手方向の長さは、幼児用のおむつにおいては、10〜35cm、特に15〜30cmが好ましく、成人用のおむつにおいては、15〜55cm、特に20〜50cmが好ましい。
尚、本実施形態における吸収体10は、全体として、おむつ前後方向に縦長の矩形状の平面視形状を有している。また、吸収体10は、その全体が、ティッシュペーパーや透水性の不織布からなる透水性の被覆シート(図示略)で被覆された状態で、表面シート2と裏面シート3との間に固定されている。また、本実施形態における表面シート2は、吸収体10の両側縁部よりも延出する部分が、吸収体10の非肌当接面に巻き下げられており、吸収体の非肌当接面側において、裏面シート3に図示しない接着剤等により固定されている。尚、第1吸収体41及び第2吸収体42は、そのそれぞれが各々被覆シートで被覆されていても良い。第1吸収体41と第2吸収体42との間は接着剤等により部分的に接着されていても良いし、接着されていなくても良い。
吸収性本体5の長手方向の両側それぞれには、おむつ長手方向へ延びるように防漏カフ6が設けられている。防漏カフ6は、図10及び図11に示すように、防漏カフ形成用シート60、及び該防漏カフ形成用シート60に伸張状態で固定された弾性部材61によって形成されている。
防漏カフ形成用シート60は、吸収性本体5の両側縁部5cを覆うように配されていることが好ましい。ここで、吸収性本体5の両側縁部を覆うようにとは、股下部に起立性を有する防漏カフを形成でき、該防漏カフの存在によって、吸収性本体の側縁部が装着者の肌に直接接触しにくくなっていることをいう。より具体的には、防漏カフ形成用シート60は、展開且つ伸張状態(図9参照)のおむつ1における腹側部A及び背側部B(好ましくは更に股下部C)において、おむつの吸収性本体5の肌当接面側5aから非肌当接面側5bに亘るように配されていることが好ましい。また、防漏カフ形成用シート60は、腹側部A及び背側部Bそれぞれにおいて、吸収性本体5の肌当接面側5aに固定されていることが好ましい。このような構成により、防漏カフが吸収性本体5の両側部を包み込み易くなって防漏性が向上する。肌当接面側5aとは、吸収性本体5の両面のうち、着用時に着用者の肌側に向けられる面側であり、吸収性本体5の非肌当接面側5bとは、吸収性本体5の両面のうち、着用時に着用者の肌側とは反対側に向けられる面側である。
防漏カフ6は、図11に示すように、少なくとも股下部Cにおいて起立可能である。防漏カフ6の自由端62近傍には、複数本の弾性部材61が自由端62に沿って固定されている。防漏カフ形成用シート60は、腹側部A及び背側部Bそれぞれにおいて、2ヶ所の折り曲げ部64、65で折り曲げられて三つ折り状態で、吸収性本体5の肌当接面側の面上に公知の接合手段(ヒートシール、接着剤等)63により固定されている。
本実施形態においては、防漏カフ形成用シート60として、所定幅の帯状の撥水性シート一枚を、その長手方向に沿う折り曲げ線で二つ折りして、相対向する層間をホットメルト型接着剤又は部分的な熱又は超音波シール等で接合した2層構造のシートを用いている。弾性部材61は、この2層構造シートの層間に伸張状態で固定されている。
股下部Cにおける吸収性本体5は、図11に示すように、該吸収性本体5の長手方向の両側縁部5cよりもおむつ幅方向に対して内側の部位に、防漏カフ6の固定端を形成する防漏カフ形成用シート60との固定部67を有する。固定部67は、ヒートシール、高周波シール、超音波シール、ホットメルト型の接着剤等の公知の接合手段により、防漏カフ形成用シート60と巻き下げられた表面シート2の延出部とを接合して形成されている。
吸収性本体5における、固定部67よりもおむつ幅方向外側の部位には、該吸収性本体の側部立ち上げ用の弾性部材66が伸張状態で配されている。弾性部材66は、吸収性本体5の両側縁部に、各側縁部に沿って且つ腹側部Aと背側部Bとの間に亘るように配されている。本実施形態における弾性部材66は、吸収性本体5の両側縁部に配されているが、固定部67よりも外側であれば、配設部位は特に制限されず、吸収体10とその肌当接面側に位置する表面シート2との間、吸収体10と裏面シート3との間、吸収体10の被覆シート(図示略)内部等に配することもできる。これらの2カ所以上に配することもできる。但し、吸収性本体5の両側縁部又はその近傍に配することが好ましい。固定部67は、吸収性本体5の両側縁部5cから5〜50mm、特に10〜30mm程度、おむつ幅方向内側に入り込んだ部位に存在することが好ましい。
図11に示すように、股下部Cの幅方向において、防漏カフ6の固定端の位置P1は、欠落部44の位置(欠落部44のおむつ幅方向中央寄り端部の位置)P2と略一致していることが好ましい。防漏カフ6の固定端は、防漏カフ6の自由端とは反対側に存する、吸収性本体5と防漏カフ形成シート60とが接合されている箇所である。位置P1とP2とが略一致していることによって、吸収性本体5の両側部の立ち上がり性が一層向上し、吸収性本体5は排尿部を包み込む理想的な立体形状をより形成し易くなることから漏れ防止性能が一層向上する。位置P1とP2とが略一致しているという表現には、位置P1と位置P2とが完全に一致している場合の他、製造時の精度誤差も考慮し、両位置P1,P2間の距離L(図11参照)が10mm以内である場合も含まれる。上述した吸収体の側縁部41と欠落部44との間の距離W1、吸収体の幅W、左右の欠落部44間の幅W2、欠落部の幅、固定部67の吸収性本体5の両側縁部5cからの距離、前記位置P1,P2間の距離等の好ましい数値範囲は、おむつ長手方向中央位置において測定するものとする。
本実施形態のおむつ1によれば、吸収体10の両側部が容易に屈曲して起立することに加えて、弾性部材66の存在及び吸収性本体5と防漏カフ形成シート60との固定部が特定の位置にあること等によって、図11に示すように、吸収体10の起立した両側部ないし起立した吸収性本体5の両側部間に、肌当接面側に向けて凹状のポケット構造が形成される。そのポケット構造は、排泄物の漏れだしが生じにくく、また、多量の尿が短時間にまとまって排泄されたり、吸収されにくい水状便や軟便等が排泄された場合等にも、その凹状のポケット構造から排泄物が漏れだし難い。また、凹状のポケットから漏れ出した場合であっても、吸収性本体5の側縁部を覆う防漏カフ6が存在するため、おむつからの漏れだしが阻止される。即ち、排泄物が、股下部において起立した吸収性本体の側縁部を超えてしまった場合でも、この防漏カフがその外側に位置して、それ以上の排泄物の漏れを防止することができるので漏れ性能に優れている。更に、防漏カフ6によって、吸収性本体の側縁部が着用時に装着者の肌に直接接触しにくくなっているため、装着時の違和感を防止することもできる。
また、股下部Cは、装着者の動き等によって左右からの圧迫を特に受け易い部分であるため、当該部分において装着者の動きによって左右から加わった圧迫力が、吸収体10の両側部が起立することにより緩和されるため、吸収体10のパッドスタビリティ(ヨレ防止効果など)も向上させることができる。更に、装着者が脚を広げる動きや上半身を捩る動きなどにより欠落部44が開き、第2吸収体42の幅方向中央域と側部域とが離間するような場合において、第2吸収体42の欠落部44が第1吸収体41と重なっていることにより、第2吸収体42の中央域と側部域との間に生じた隙間を第1吸収体41が覆い、この隙間から排泄物が漏れ出ることを防止する。
また、本実施形態のおむつ1によれば、横漏れ防止性能を飛躍的に向上させることができるため、防漏性能を向上させ、或いは低下を抑制しつつ、吸収性本体の幅や股下部の幅を狭くしてフィット性の向上を図ることができる。このような効果は、股下部Cにおける防漏カフ6が、着用者の肌に向かって大きく起立し、充分な高さを確保することができると共に、潰れても実質的な液吸収面を狭くしにくいことと相俟って一層確実に奏される。
股下部の幅を狭くした使い捨ておむつとしては、例えば、以下に示す条件を満たす使い捨ておむつを特に好ましい例として例示できる。吸収体10の幅;背側部B及び腹側部Aそれぞれにおける最大幅が60〜140mm、特に80〜120mm、股下部Cにおける最大幅が50〜140mm、特に70〜120mm。図10及び図11中の符号9は、吸収性本体5と外装体10とを接合する接着剤である。