JP4652255B2 - セラミックス焼結体の補修方法 - Google Patents

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Description

本発明は、一部が欠損したセラミックス焼結体の補修方法に関する。
セラミックス焼結体は、硬い、燃えない、錆びないという優れた特徴から、本質的に、高温、高腐食性、高磨耗性といった過酷な条件下で使用が可能である。しかも、セラミックス焼結体は、このような過酷な条件下でも、優れた電磁気的、光学的、機械的な高度な機能を果たすため、様々な分野で用いられている。
その半面、セラミックス焼結体には、脆いという欠点があり、一旦その一部が欠損してしまうと、その欠損部の補修方法としては、セラミックス焼結体の破片を接着剤によって貼り付ける等の方法しかなかった。
しかしながら、この方法では、使用する接着剤が樹脂成分を含む場合には、接着部の耐熱性が劣り、また接着剤が無機材料からなる場合には、この無機材料と補修されるセラミック焼結体との熱膨張係数を一致させることが困難であるため、補修されたセラミック部材が温度変化の激しい環境下に曝された場合に再び欠損するという問題があった。
このため、セラミックス焼結体に欠損が生じた場合には、これらを廃棄して新品を購入せざるを得ない場合も多く、特にセラミックス焼結体が高価である場合には、コストの面でも問題であった。
本発明は、上記のような従来技術の問題点に鑑みてなされたものであり、一部が欠損したセラミックス焼結体を、その物性を変化させることなく極めて短時間に補修する方法を提供することを目的とする。
さらに本発明は、補修されたセラミックス焼結体が温度変化の激しい環境下に曝された場合においても欠損することがないような、セラミックス焼結体の補修方法を提供することを目的としている。
本発明のセラミックス焼結体の補修方法は、一部が欠損したセラミックス焼結体の欠損部にセラミックス粉末を含有するペーストを充填し、電磁波照射によって該ペーストを加熱して、該セラミックス粉末を焼結させることを特徴としている。
前記ペーストの粘度は、10,000〜1,000,000センチポイズであることが好ましい。
前記ペーストは、さらに焼結助剤を含有していてもよい。
前記セラミックス焼結体としては、たとえば窒化アルミニウム、酸化アルミニウム、窒化ケイ素、酸窒化アルミニウム、酸窒化珪素、またはジルコニアが挙げられる。
前記セラミックス粉末としては、前記セラミックス焼結体と同じ成分の粉末であることが好ましい。
前記電磁波の周波数は、0.2〜30GHzであることが好ましい。
本発明に係るセラミックスの補修方法によれば、一部が欠損したセラミックス焼結体を、その物性をほとんど変化させることなく極めて短時間に補修することが可能である。
特に、一部が欠損したセラミックス焼結体(補修されるセラミックス焼結体)と同種類の成分のセラミックス粉末を主成分として有するペーストを用いて補修を行う場合においては、補修部分と補修されるセラミック焼結体との間で物性、特に熱膨張係数が実質的に一致するため、補修されたセラミック焼結体は、温度変化の激しい環境下に曝された場合においても欠損することがほとんどない。
以下、本発明のセラミックス焼結体の補修方法についてより詳細に説明する。
図1に示すように、本発明のセラミックス焼結体の補修方法は、一部が欠損したセラミックス焼結体1の欠損部2にセラミックス粉末を含有するペースト3を充填し、電磁波照射によってペースト3を加熱して、ペースト3中のセラミックス粉末を焼結させることを特徴としている。
本発明のセラミックス焼結体の補修方法によって補修されるセラミックス焼結体の用途としては、たとえば半導体製造装置部材、重電用スイッチング部材、絶縁性が要求される各種放熱部材、構造部材などが挙げられる。
本発明で用いられるセラミックス焼結体を構成するセラミックスとしては、特に制限はなく、たとえばアルミナ、炭化ケイ素、窒化ケイ素、窒化アルミニウム(AlN)、酸窒化アルミニウム、酸窒化珪素、およびジルコニア等が挙げられる。
本発明の補修方法においては、セラミックス焼結体の欠損部にペーストを充填し、このペーストに電磁波を照射することによってペーストを加熱し、ペースト中の前記セラミックス粉末を焼結させる。なお前記ペーストは、ペースト中のセラミックス粉末あるいは焼結助剤の、電磁波吸収による自己発熱によって加熱される。
このセラミックス粉末としては、セラミックス焼結体あるいは欠損したセラミックスと同一成分のセラミックス粉末を用いることが好ましいが、異なる成分のセラミックス粉末を用いることもできる。セラミックス焼結体(補修されるセラミックス焼結体)と同種類の成分のセラミックス粉末を主成分として含有するペーストを用いて補修を行うと、補修部分と補修されるセラミック焼結体との間で物性、特に熱膨張係数が実質的に一致するため、補修されたセラミック焼結体(一部が欠損したセラミックス焼結体、およびセラミックス粉末が焼結してなる補修部分)が温度変化の激しい環境下に曝された場合においても欠損することがほとんどない点で好ましい。
ここで、電磁波を利用した誘電加熱によって試料に吸収されるエネルギーPは、
P=2πfε0εrtanδE2
〔ただし、ε0は真空の誘電率、εrは比誘電率、tanδは誘電正接、fは周波数、Eはマイクロ波等の電磁波の電界強度である。〕
で表され、誘電損率ε"(=εrtanδ)が大きいと試料のエネルギー吸収効率が高くなる。
誘電損率ε"(=εrtanδ)は温度、周波数などによって変化し、一般にセラミックス誘電損率は室温付近では小さいが、温度の上昇と共に急激に上昇する。
前記ペースト中のセラミックス粉末が、誘電損率の大きな物質、たとえば表1に示すような誘電損率を有する炭化ケイ素(SiC)、ジルコニア(ZrO2)、ステアタイトで
あるならば、このセラミックス粉末を電磁波の照射によって自己発熱させ、室温から焼結温度まで加熱することができる。
一方、前記ペースト中のセラミックス粉末が、誘電損率の小さな物質、たとえば測定周波数を2.45GHzとしたときの誘電損率(εrtanδ)が室温(25℃)では0.0001〜0.002、かつ800℃では0.003〜0.3である物質、特に誘電損率が室温(25℃)では0.005〜0.002、かつ800℃では0.003〜0.1である物質の場合には、電磁波の照射によって、このセラミックス粉末を自己発熱させ、室温から焼結温度まで加熱することは困難である。
このような誘電損率の小さな物質の具体例としては、窒化アルミニウムが挙げられる。窒化アルミニウムの誘電損率の値を表1に示す。
Figure 0004652255
前記ペーストは、さらに焼結助剤を含有していてもよい。
前記ペースト中に焼結助剤が含まれていると、ペースト中のセラミックス粉末の焼結温度を降下させることができるため、より短時間でかつより少ないエネルギーでセラミックス焼結体を補修できる点で好ましい。
前記セラミックス粉末が、窒化アルミニウムのような誘電損率の小さな物質であって、室温付近では電磁波の照射による自己発熱が困難な場合には、焼結助剤を用いることが特に好ましい。電磁波照射により焼結助剤を自己発熱させ、この発熱によって誘電損率が小さい前記セラミックス粉末の温度を自己発熱可能な温度まで上昇させ、その後は前記セラミックス粉末を電磁波照射によって焼結させることができる。
この焼結助剤としては、イットリウム(Y)、カルシウム(Ca)、セリウム(Ce)、ホルミウム(Ho)、イッテルビウム(Yb)、ガドリニウム(Gd)、ネオジウム(Nd)、サマリウム(Sm)、ジスプロシウム(Dy)およびストロンチウム(Sr)からなる群から選ばれる少なくとも1種の元素を含有する化合物が好ましく、この化合物の形態としては、好ましくは酸化物、窒化物、塩化物、硝酸塩、炭酸塩、フッ化物挙げられる。より具体的には、たとえばセラミックス粉末が窒化アルミニウムである場合には、Y23およびCaOが好ましい。
焼結助剤を用いる場合には、前記ペースト中には、前記セラミックス粉末と前記焼結助剤とが、質量比で、セラミックス粉末:焼結助剤=100:0.5〜10、好ましくは100:2〜7の割合で含まれることが望ましい。前記セラミックス粉末と前記焼結助剤との割合が上記範囲内にあると、セラミックス粉末の焼結温度が充分に低下し、かつ焼結助剤が充分に飛散あるいはセラミックス焼結体中に充分拡散し、セラミックス焼結体と補修
部のセラミックスとの結合が強固になる。
前記セラミックス粉末および前記焼結助剤の平均粒径は、好ましくは0.3〜3μmである。平均粒径がこの範囲にあると、ペースト全体の体積に占める前記セラミックス粉末の体積が大きくなるため、焼結後の補修部(すなわち、ペースト中のセラミックス粉末が焼結した部分)密度が大きくなる。
また、ペーストに焼結助剤が含まれる場合、このペーストにはさらにカーボン粉末が含まれていてもよい。カーボン粉末が含まれていると、電磁波照射による加熱時に焼結助剤の飛散を促進できる点で好ましい。
前記ペースト中には、前記セラミックス粉末と前記カーボン粉末とが、質量比で、セラミックス粉末:カーボン粉末=100:0.5〜30、好ましくは100:1〜10の割合で含まれることが望ましい。カーボン粉末の割合が上記範囲内にあると、焼結時に焼結助剤の飛散を促進することができる。
前記カーボン粉末の粒径は、好ましくは0.1〜10μmである。粒径がこの範囲にあると、ペースト中のカーボンの分布を均一にすることが可能である。
前記ペーストが含有する溶剤としては、たとえばエチルセルロース、ターピネオールが挙げられる。この溶剤の含量は、ペースト中に、室温(25℃)で10〜50質量%とすればよい。また前記ペーストは、粘度調整剤や分散剤等を含んでいてもよい。
前記ペーストは、上記各成分をハイスピードディスパー、サンドグラインドミル、バスケットミル、ボールミル、三本ロール、ロスミキサー、プラネタリーミキサー、万能品川攪拌機など、従来公知の混合・攪拌装置を用いて調整することができる。
本発明において使用する前記ペーストの粘度は、好ましくは10,000〜1,000,000センチポイズ(mPa・s)であり、さらに好ましくは20,000〜300,000センチポイズ(mPa・s)である。ペーストの粘度が10,000センチポイズより小さい場合には、補修個所に充填された前記ペーストが垂れてしまい使用上問題が生じることがある。また、ペーストの粘度が1,000,000センチポイズを超える場合には、補修後において、セラミックス焼結体と補修部との間に空隙が観測されることがあるなど、セラミックス焼結体と補修部との密着性の点で問題が生じることがある。
本発明の方法によりセラミックス焼結体を補修する際には、図1に示すように、セラミックス焼結体の欠損部に、焼結後に余剰部が形成される程度にペーストを過剰に充填し、セラミックス粉末の焼結後にその余剰部を研磨して補修部の形状を整えることが好ましい。充填したペーストを焼結して、所望の形状を直接得ることは困難であるが、このような方法を採ることにより、補修部を容易に所望の形状とすることができる。
セラミックス焼結体の欠損部に充填された前記ペーストに対して照射する電磁波としては、好ましくは周波数が0.2〜30GHzである電磁波(マイクロ波またはミリ波)を使用することができ、たとえば2.45GHzの電磁波を使用できる。
また、電磁波のエネルギーを前記セラミックスに効率的に吸収させるためには、少なくとも前記セラミックスの接合面近傍を電磁波を外部に漏らさない容器内に収容して電磁波照射を行うことが好ましい。
電磁波の照射には、従来公知の装置を用いることができる。
上記のような本発明のセラミックス焼結体の補修方法によって補修されたセラミックス
焼結体は、補修されたセラミック部材が温度変化の激しい環境下に曝された場合においても欠損することがほとんどない。
[実施例]
以下、本発明について実施例に基づいてさらに具体的に説明するが、本発明はかかる実施例により何等限定されるものではない。
<装置、測定方法>
マイクロ波照射には、美濃窯業(株)製のマイクロ波焼成炉(型番:MW−Master)(以下、「補修装置」ともいう。)を用いた。
温度の測定は、この補修装置に付属の赤外放射温度計により行った。
直径100mm、厚み10mmの窒化アルミニウム焼結体((株)トクヤマ製、SH−15)においてその一部が図1(b)に示すように欠損した部材を以下のように補修した。
まず、窒化アルミニウム粉末(平均粒径1.2μm、株式会社トクヤマ製高純度窒化アルミニウム粉末Hグレード)100g、Y23粉末(平均粒径1μm、 商品名、メーカー名等 和光純薬社製酸化イットリウム)5g、および溶剤としてターピネオール15gを、ボールミルを用いて混合し、補修ペースト3を調整した。補修ペースト3の粘度は30,000センチポイズであった。そして、図1(c)に示すように、セラミックス焼結体1の欠損部2にペースト3を充填し、図2に示すように治具4を用いて補修装置6の筐体内に設置した。このとき、補修ペースト3が充填箇所から垂れることはなかった。次いで、マイクロ波発生装置5によりマイクロ波(周波数:2.45GHz)を照射し、ペースト3を窒素雰囲気中で室温から加熱した。マイクロ波の出力については、一定の速度で60分かけて3000Wまで上昇させた。電磁波の照射により、補修ペースト3は自己発熱を開始し、電磁波の照射開始から60分後に、補修ペースト3の充填部の表面温度は1,700℃に達した。次いで、電磁波照射を続けたまま、補修ペースト3の充填部分をさらに60分間加熱してこの温度を保持し、補修ペースト3中の窒化アルミニウム粉末の焼結を完了させた。
電磁波照射を終了させ、(補修ペースト3の焼結部(以下「補修部」ともいう。)を有する)セラミックス焼結体1を接合装置内で60分間放冷した後に取り出し、研削加工により補修部の表面を平らに加工した後、マシニングセンターを用いて補修部の外周部を、セラミックス焼結体1および補修部が全体として円柱形になるように加工した。本加工によって補修部が再び欠損することはなかった。
さらに、補修した部材を1000℃まで加熱して室温まで急冷したが、補修部にクラックなどの欠損が生じることはなかった。
図1は、本発明のセラミックスの補修方法の手順を示すフローチャートである。 図2は、実施例におけるセラミックス焼結体などの配置例を示す模式概略図である。
符号の説明
1・・・セラミックス焼結体
2・・・セラミックス焼結体の欠損部
3・・・ペースト
4・・・治具
5・・・マイクロ波発信機
6・・・補修装置

Claims (7)

  1. 一部が欠損したセラミックス焼結体の欠損部にセラミックス粉末を含有するペーストを、焼結後に余剰部が形成される程度に過剰に充填し、電磁波照射によって該ペーストを加熱して、該セラミックス粉末を焼結させた後、該余剰部を研磨することを特徴とするセラミックス焼結体の補修方法。
  2. 前記ペーストの粘度が10,000〜1,000,000センチポイズであることを特徴とする請求項1に記載のセラミックス焼結体の補修方法。
  3. 前記ペーストがさらに焼結助剤を含有することを特徴とする請求項1または2に記載のセラミックス焼結体の補修方法。
  4. 前記セラミックス焼結体が窒化アルミニウム、酸化アルミニウム、窒化ケイ素、酸窒化アルミニウム、酸窒化珪素またはジルコニアであることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のセラミックス焼結体の補修方法。
  5. 前記セラミックス粉末が前記セラミックス焼結体と同じ成分の粉末であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のセラミックス焼結体の補修方法。
  6. 前記電磁波の周波数が0.2〜30GHzであることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載のセラミックス焼結体の補修方法。
  7. 請求項1〜6のいずれかに記載の方法により補修されたセラミックス焼結体。
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