JP4654432B2 - 機械受容(StretchActivated)チャネルの活性化抑制剤 - Google Patents

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Description

本発明は、機械受容(Stretch Activated;SA)チャネルの活性化を抑制するペプチドや、該ペプチド又は該ペプチドをコードするDNAを有効成分とするSAチャネルの活性化抑制剤や循環器病疾患の治療薬、前記ペプチドを標的とした循環器病疾患の判定方法、SAチャネルの活性化抑制剤のスクリーニング方法に関する。
あらゆる細胞は多様な機械刺激(張力、圧力、ズリ応力など)に対して様々な応答を示すが、その仕組みにはよく分かっていない。その最大の理由は、機械刺激の受容体(センサー)の分子実体や作動原理が不明な点にある。機械受容(Stretch Activated:SA)チャネルは、細胞膜の伸展で活性化されるイオンチャネルの総称であり、1984年に発見された新しい型のイオンチャネル(例えば、非特許文献1参照)で、電位依存性チャネル、受容体型チャネルに次いで第3のグループを作るものと予想されている。ただし広範なイオン選択性と被刺激性(電位、リガンド刺激にも応じるものがある)を併せ持つので、遺伝子レベルでファミリーを構成するとは考えにくい。これ以外に膜伸展で不活性化されるSI(Stretch Inactivated)チャネルや、膜が凹む刺激にのみ応じるPS(Pressure Sensitive)チャネル、あるいはズリ応力で活性化するものもあり、これらはあわせてMS(mechano−sensitive)チャネルあるいはMG(Mechano-gated)チャネルと呼ばれている。
これらのチャネルのうち、現在高次構造が分かっているのは細菌のMscL(閉構造)(例えば、非特許文献2参照)とMscSチャネル(開構造)(例えば、非特許文献3参照)のみであるが、点突然変異体とパッチクランプ法、あるいは分子動力学によるメカノゲーティング機構の詳細な研究が進行中である。細菌のMSチャネルは脂質2重膜上に再構成された状態でも伸展感受性を失わないので、膜伸展で増加する膜張力を直接感じて開口するものと考えられており、張力感知部位の同定も行われている(例えば、非特許文献4参照)(図1)。一方真核生物のMSチャネルとしては、酵母由来のMid1チャネル(例えば、非特許文献5参照)をはじめとして、MEC/DEGファミリーあるいはTRPファミリーに属するチャネルが、MSチャネル候補として数多く報告されている。例えば、線虫の機械受容に関連するMEC/DEGファミリーに属する膜2回貫通型イオンチャネル(例えば、非特許文献6参照)、BNC1(Brain Sodium Channel 1)と皮膚毛包受容器の関連(例えば、非特許文献7参照)、TRPチャネルファミリーに属するNOPMC(no mechanreceptor potential C)とショウジョウバエの機械感覚毛との関連(例えば、非特許文献8参照)、あるいはVR−OAC(vanilloid receptor−related osmotically activated channel)と呼ばれる浸透圧感受性チャネルと皮膚や聴器における機械受容との関連などが指摘されている(例えば、非特許文献9参照)。ごく最近では、ショウジョウバエ聴覚器におけるDm CG5842(TRPVのメンバー)(例えば、非特許文献10参照)、あるいはマウス心筋のTRPV2(例えば、非特許文献11参照)、さらには、マウス痛覚器(高閥値機械受容器)とTRPV4の関連(例えば、非特許文献12参照)など、TRPVサブファミリーとMSチャネルの密接な関連を指摘する報告が増えている。
しかしながら報告されている電気生理学のデータや個人的情報によれば、これらのチャネルの異所的発現効率が良好でないため、まだ詳細な電気生理学的解析に耐えうる状況にはないようである。これまでしばしば指摘されているように、これらのチャネルの膜での発現や機能の発揮には細胞膜裏打ち骨格や骨格関連タンパク質の協力が必要なのかもしれない(例えば、非特許文献13,14参照)。事実TRPV4のCHO細胞での機能的発現量はマイクロフィラメント会合タンパク質MAP7によって著しく増大するという報告がある(例えば、非特許文献15参照)。これらに比較して、高等生物の各種臓器に発現する2P(ポア)ドメインKチャネル(TREK/TRAAKファミリー)(例えば、非特許文献16参照)や本発明者らが最近クローニングした心筋や血管平滑筋に発現するbigKcaチャネル型のSAKCA(例えば、特許文献1、非特許文献17,18参照)は、発現効率が高く安定した伸展感受性を示すので、ほぼ間違いなくMSチャネルであると断言できる。
心臓に対する過度の伸展刺激は自動能の亢進、不整脈・細動の誘発、ANP、BNP分泌亢進、あるいは肥大などの様々な応答を引き起こす。心肥大については、これまでに多くの研究がなされており、PKCの下流でのERKの活性化や、Ca2+流入などの関与が言われてきたが、ごく最近アンジオテンシンIIとは無関係にAT1受容体が機械刺激で活性化され、その下流でERKの活性化が起こることが示された(例えば、非特許文献19参照)。しかし肝心の機械受容体はまだ謎である。一方HansenらはSAチャネルと伸展誘発性不整脈の関係について興味深い結果を報告している(例えば、非特許文献20参照)。彼らはイヌ摘出心室を用いて伸展依存性不整脈を再現性よく誘発できるモデルを調整し、その不整脈がSAチャネルのブロッカーであるガドリニウム(Gd3+)でほぼ完全に抑えられることを示した。彼らはこの結果から、不整脈の発生機序(SAチャネルの活性化による脱分極で説明可能)もGd3+による抑制も、陽イオン選択性のSAチャネルによって統一的に説明できるとしている。確かに心筋細胞には120pSの陽イオン選択性のSAチャネルが報告されている(例えば、非特許文献21参照)。しかしその後、心筋には数種類のカリウム選択性や陰イオン選択性のSAチャネルも見つかっているので(例えば、非特許文献22〜24参照)このように単純に割り切れるか否かは慎重な検討が必要である。また後述するように最近発見された蜘蛛毒由来のMSチャネルブロッカーGsMTx−4が伸展誘発性の心房細動に抑制効果があることが報告され注目されている(例えば、非特許文献25参照)。心臓には伸展刺激以外にズリ応力、経壁圧力も負荷されているがその効果については研究が進んでいない。また前述したように岩田ら(例えば、非特許文献11参照)はマウス心筋にMSチャネルとして働くと思われるTRPV2の発現を報告しているが、成体の正常心筋細胞膜での発現やその機能については今後の課題である。心筋と並んで最もよく研究されてきたのは、血管内皮細胞とメカニカルストレスの関係である。内皮細胞には陽イオン選択性のSAチャネル(約35pS)活性が報告されており(例えば、非特許文献26参照)、このチャネルの活性化による細胞内Ca2+濃度の上昇が確認されている(例えば、非特許文献27参照)。拍動による血管の周期的伸展がこのチャネルを活性化して細胞形態のリモデリングや接着力の強化に寄与するという報告がある(例えば、非特許文献28,29参照)。血管平滑筋にも同様なSAチャネルが発現しており、伸展誘発性の収縮に寄与するらしい。血管内皮細胞のSAチャネルの分子実体の解明は多くの研究者が待ち望んでいるがいまだに謎である。また、ズリ応力に応答するKチャネルがずいぶん以前に報告されているが(例えば、非特許文献30参照)、その後目覚しい進展はない。
心臓は体内の中で最も活発に収縮−弛緩を繰り返す臓器で、その機能にはmechano-electric-feedbackが重要なことは以前から指摘されている。ところが肝心の機械センサーについては何も分かっていない。そこで機械センサーとして最も可能性の高いMSチャネルのパッチクランプ法によるスクリーニングが鶏胚から単離した培養心筋細胞を使って行われた(例えば、非特許文献22参照)。その後我々も同様の標本を使って再スクリーニングを行い、1種類の陽イオンチャネルと4種類のKチャネルの計5種類のMSチャネルを同定するとともに、最も観測頻度が高い大きなコンダクタンスのKチャネルがカルシウム依存性BigK(BK)チャネルに一致することを発見した。このチャネルはBKチャネルの特徴である(細胞内)Ca2+依存性と電位依存性に加えて、伸展依存性と細胞内ATP依存性を併せ持っているので当初、SAKca、ATPチャネルと命名した(例えば、非特許文献23参照)。これは心筋における最初のBKチャネルの報告である。BKチャネルはsiolと呼ばれる遺伝子によってコードされるタンパク質であることが分かっているので(例えば、非特許文献31参照)、本発明者らは、BKチャネルに対するdegenerate primersを用いて鶏胚心筋細胞から調製したライブラリーを元にSAKca、ATPチャネルの遺伝子クローニングを試みた。その結果、既知のBKチャネルと非常に高い相同性を持ちC末に59アミノ酸残基から成るSTREX(Stress-Axis-Regulated-Exon)(例えば、非特許文献32参照)と呼ばれる特異的配列が挿入されたsplicing variant(1172残基)の同定に成功し、改めてSAKCAと命名した(Fig.2a)。ここでいうstressは機械的なそれではなく、生理的・心理的ストレスの意味であり、そのようなストレスが負荷されるとこの挿入配列をもつBKチャネルがアップレギュレーションされることが知られている(例えば、非特許文献33参照)。この遺伝子をCHO細胞に一過性に発現すると、心筋細胞と同様の、280pS(140mM K)のコンダクタンスをもつSABKcaチャネルが再現性よく観測された。また、STREX配列に対する抗体を作成し、免疫組織学を行ったところ心筋や血管平滑筋に強い発現が認められた。
BKチャネルは一般的にチャネルの基本特性を総て備えたαサブユニットとそのゲーティング特性を修飾するβサブユニットからなり、我々がクローニングしたのは前者である。両サブユニットの共発現の結果などから、αサブユニットのみで、天然のSAKcaチャネルのほぼ総ての性質を再現できた。ここではαサブユニットのみの結果を紹介する(例えば、非特許文献17参照)。これまでに、幾つかの細胞・組織において伸展刺激依存性のBKチャネルが報告されている。多くの場合、パッチ膜に共存するカルシウム透過性SAチャネルの活性化に伴うカルシウム上昇で間接的にBKチャネルが活性化されるようであるが(例えば、非特許文献34参照)、中には膜伸展が直接活性化するという報告もある(例えば、非特許文献35参照)。一方、数多くの種・細胞からBKチャネル及びそのsplicing variant(STREX挿入も含む)がクローン化されているが(例えば、非特許文献36参照)、伸展感受性と分子構造の関連に関しての報告は全くない。
前記のように、本発明者らは、上記特許文献1において、細胞膜伸展刺激に対して活性化するカルシウム依存性カリウム透過性機械受容(SAKCA)チャネルタンパク質の遺伝子を新規にクローニングし、その発現によって1172個のアミノ酸からなるSAチャネルタンパク質(図1参照)を取得し、このSAKCAチャネルがSTREX配列を含むこと、STREX配列が伸展感受性に重要であることを明らかにしている。
特開2000−97060号公報 J. Physiol. 352, 685-701(1984) Science 282, 2220-2226 (1998) Science 298, 1582-1587 (2002) Biophys. J. 86, 2113-2120 (2004) Science 285, 882-886 (1999) Nature 349, 588-593 (1991) Nature 407, 1007-1011 (2000) Science 287, 2229-2234 (2000) Cell 103, 525-535 (2000) Nature 424, 81-84 (2003) J Cell Biol. 2003, 9; 161 (5) : 957-67 THE JOURNAL OF BIOLOGICAL CHEMISTRY Vol. 278, No. 25, Issue of June 20, pp. 22664-22668 (2003) Biophys J. 59, 722-728 (1991) Proc Natl Acad Sci USA. 93, 6577-6582 (1996) THE JOURNAL OF BIOLOGICAL CHEMISTRY Vol. 278, No. 51, Issue of December 19, pp. 51448-51453 (2003) Curr. Opin. Cell Biol. 13, 422-428 (2001) J Membr Biol, 196: 185-200 (2003) Biophys. J. 86, A2825 (2004) Nat Cell Biol. 2004 Jun; 6 (6): 499-506 Circulation 81, 1094-1105 (1990) Biosci. Rep., 8: 407-414 (1988) Am. J. Physiol. 264 (3 Pt 2): H960-72 Am. J. Physiol. 276, H 1827-38 (1999) J. Physiol., 456:285-302 (1992) Nature 409, 35-36 (2001) Nature 325, 811-813 (1987) Am. J. Physiol. 264:C1037-C1044 (1993) Am. J. Physiol. 43: H1532-H1538 (1998) Biochem. Biophys. Res. Com. 239:372-376 (1997) Nature 331: 168-170 (1998) Science 261, 221-224 (1993) J. Biol. Chem. 272, 11710-11717 (1997) Science 280, 443-446 (1998) Am. J. Physiol. 257, F347-F452 (1989) Am. J. Hypertens. 7, 82-89 (1994) J. Neuron 19, 1061-1075 (1997)
本発明の課題は、SAチャネルの活性化を抑制するペプチドや、該ペプチド又は該ペプチドをコードするDNAを有効成分とするSAチャネルの活性化抑制剤や循環器病疾患の治療薬、前記ペプチドを標的とした循環器病疾患の判定方法、SAチャネルの活性化抑制剤のスクリーニング方法を提供することにある。
STREX配列ではシステインに富むので、まずERA配列を中心にしたSTREXと未知のタンパク質Xとの特異的結合の可能性が考えられ、さらにその未知タンパク質Xとの結合がSA活性の実現に必須であるという仮説が考えられる。すなわち、SAKCAは何らかの様式で膜の伸展を感じる必要があるのだが、これまでの2次構造予測からはその責任部位であるSTREXは細胞質側に露出していて、直接には細胞膜と相互作用しそうもない。そこでCHO細胞にSAKCAと過剰なSTREX−GFP融合タンパク質を共発現させたところ、まずSTREX−GFPの細胞膜局在が確認され、STREXのパートナーが膜会合タンパク質である可能性が出てきた。より重要なことは、STREX−GFPの過剰共発現でSAKCAのSA活性が著しく阻害されたことである。すなわち、導入された過剰なSTREXがSAKCAのSTREXと競合して未知タンパク質XとSAKCA−STREXの結合を阻害したと考えられた。さらにSTREX配列のうち672位のALAを中心にした様々な配列の7アミノ酸ペプチドを合成し、細胞質側からのSAKCAチャネルに対する影響を調べたところERAを含むLERAFPL配列(配列番号1)のみがSA活性を強く抑制することを見い出した。
次の課題は、謎の仲介タンパク質Xの同定である。本発明者らはLERAFPL配列の阻害特異性を利用してこのタンパク質を精製できないかと考え、この配列を含む様々なペプチドを固定した親和性カラムを調整し、心筋細胞の溶解物に適用した。その結果、LERAFPL配列カラムに特異的に結合する分子量約50kDaのタンパク質を精製することができた。質量分析器でペプチド配列を決定したところ、仮想的タンパク質Xがユビキタスタンパク質の一つであるペプチド延長因子EF1−αであることを見い出し、本発明を完成するに至った。
すなわち本発明は、(1)LERAFPLに示されるアミノ酸配列からなり、機械受容(Stretch Activated)チャネルの活性化を抑制するペプチドや、(2)上記(1)記載のペプチドと、マーカータンパク質及び/又はペプチドタグとを結合させた融合ペプチドや、(3)LERAFPLに示されるアミノ酸配列からなるペプチド又は該ペプチドをコードするDNAを有効成分とする機械受容(Stretch Activated)チャネルの活性化抑制剤に関する。
さらに本発明は、()インビトロで、LERAFPLに示されるアミノ酸配列からなるペプチドと被検物質とを接触させ、その結合の程度を測定・評価することを特徴とする機械受容(Stretch Activated)チャネルの活性化抑制剤のスクリーニング方法に関する。
本発明によると、SAチャネルの活性化を抑制するペプチドや、該ペプチド又は該ペプチドをコードするDNAを有効成分とするSAチャネルの活性化抑制剤や循環器病疾患の治療薬、前記ペプチドを標的とした循環器病疾患の判定方法、SAチャネルの活性化抑制剤のスクリーニング方法を提供することができる。
本発明のSAチャネルの活性化を抑制するペプチドとしては、LERAFPLに示されるアミノ酸配列(配列番号1)からなるペプチドであれば特に制限されず、かかるペプチド化学合成により調製することができる。例えば、Fmoc法(フルオレニルメチルオキシカルボニル法)、tBoc法(t−ブチルオキシカルボニル法)等の化学合成法に従って本発明のペプチドを合成することができる他、各種の市販のペプチド合成機を利用して本発明のペプチドを合成することもできる。
本発明の融合ペプチドとしては、上記本発明のペプチドとマーカータンパク質及び/又はペプチドタグとが結合しているものであればどのようなものでもよい。マーカータンパク質としては、従来知られているマーカータンパク質であれば特に制限されるものではなく、例えば、アルカリフォスファターゼ、HRP等の酵素、抗体のFc領域、GFP等の蛍光物質などを具体的に挙げることができ、またペプチドタグとしては、HA、FLAG、Myc等のエピトープタグや、GST、マルトース結合タンパク質、ビオチン化ペプチド、オリゴヒスチジン等の親和性タグなどの従来知られているペプチドタグを具体的に例示することができる。かかる融合ペプチドは、常法により作製することができ、Ni−NTAとHisタグの親和性を利用した本発明のペプチドの精製や、本発明のペプチドの検出や、本発明のペプチドに対する抗体の定量や、その他当該分野の研究用試薬としても有用である。
本発明のSAチャネルの活性化抑制剤としては、LERAFPLに示されるアミノ酸配列からなるペプチド又は該ペプチドをコードするDNAを有効成分とするものであれば特に制限されず、かかるDNAとしては配列番号2に示される塩基配列CTTGAGAGAGCCTTCCCACTTを具体的に例示することができる。SAKCAは、心筋の他、血管平滑筋、気管支平滑筋、内臓平滑筋など平滑筋細胞が存在するところに発現しており、また腎臓でも発現するといわれていることから、本発明のSAチャネルの活性化抑制剤は、循環器疾患以外に、呼吸器疾患や内臓疾患などの予防・治療薬として利用しうる可能性がある。
本発明の循環器疾患の予防・治療薬としては、LERAFPLに示されるアミノ酸配列からなるペプチド又は該ペプチドをコードするDNAを有効成分とするものであれば特に制限されず、循環器病疾患としては、不整脈、高血圧症、心筋症、動脈硬化、心筋梗塞等を挙げることができる。本発明の循環器疾患の予防・治療薬として、本発明のSAチャネルの活性化を抑制するペプチドを有効成分として用いる場合、心臓等の細胞内にを導入する方法としては、巨大分子と非共有結合体を形成し、タンパク質等の巨大分子の構造を変化させ、タンパク質等の巨大分子を細胞内にデリバリーすることができるChariot(Active Motif社製)等の細胞毒性のない試薬を用いることができる。また、本発明の循環器疾患の予防・治療薬として、本発明のSAチャネルの活性化を抑制するペプチドをコードするDNAを有効成分として用いる場合、該DNAを適当な発現ベクターにインテグレイトし、かかるベクターをエレクトロポレーション、超音波、遺伝子銃、ハイドロダイナミクスインジェクションにより細胞内に導入する方法や、デンドリティックポリリジン等の遺伝子キャリアー分子を用いて遺伝子デリバリーすることにより細胞内に本発明のペプチドを発現させることができる。また製剤とする場合、生理的食塩水アルコール等の溶剤、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール等の溶解補助剤、ステアリルトリエタノールアミン、ラウリル硫酸ナトリウム、レシチン等の懸濁化剤、グリセリン、D−マンニトール等の等張化剤、リン酸塩、酢酸塩、クエン酸塩等の緩衝剤などを配合することができる。
本発明の循環器疾患の判定方法としては、LERAFPLに示されるアミノ酸配列からなるペプチド部分を標的とする方法であれば特に制限されず、具体的には、ヒトSTREX配列(図2参照)におけるLERAFPL相当部分の塩基配列を調べ、該塩基配列がコードするアミノ酸配列がLERAFPLと異なっている場合、例えばLERTFPL(配列番号3)、LGRAFPL(配列番号4)、LAPEFRL(配列番号5)等の変異が認められた場合、伸展感受性が低く、不整脈、低血圧症等の循環器病疾患の可能性が大きい。
本発明のSAチャネルの活性化抑制剤のスクリーニング方法としては、インビトロで、LERAFPLに示されるアミノ酸配列からなるペプチドと被検物質とを接触させ、その結合の程度を測定・評価する方法であれば特に制限されず、本発明のペプチドと被検物質とを接触させ、その結合の程度を測定・評価する方法としては、NHS活性化HiTrapカラムに結合させたLERAFPLに被検物質を接触・結合させるアフィニティークロマトグラフィーを利用する方法の他、ツーハイブリッド法やファージディスプレー法等を具体的に挙げることができる。このスクリーニング方法で得られるタンパク質等の物質は、SAチャネルのSTREX配列におけるLERAFPLに示されるアミノ酸配列部分と結合し、STREX配列におけるLERAFPLに示されるアミノ酸配列部分がEF−1と結合するのを防ぐことにより、SAチャネルの活性化を抑制することが可能となることから、不整脈、高血圧症、心筋症、動脈硬化、心筋梗塞等の循環器病疾患の予防・治療薬として期待できる。
以下、実施例により本発明をより具体的に説明するが、本発明の技術的範囲はこれらの例示に限定されるものではない。
(STREXと膜会合コンポーネントとの相互作用)
STREXは、システイン及びプロリンに富むというその性質から他の分子と相互作用することが示唆されており(Saito et al., 1997)、従ってSTREX配列が膜会合コンポーネントと直接又は間接に相互作用し、膜内の強度を感知している可能性を想定しても不自然ではない。この伸展感受性には上記の相互作用が必要であることから考察すると、ERA配列を有するSTREXが過剰になると結合パートナーを占有することになり、その結果、SAKCaC内STREXのパートナーとの結合がブロックされる(図3A、図式)。かかる仮説を実証するために本発明者らは、SAKCa発現CHO細胞において、トリSTREX(ERAを含む)−EGFP融合タンパク質を過剰発現させた。図3Aに示すように、GFPシグナルは膜で検出され、STREX−GFPが細胞質膜に局在することが示唆された。さらに興味深いことに、SAKCaCの伸展感受性は顕著に抑制されており、SAKCaCの伸展感受性には、STREX配列及び数種の膜会合タンパク質との相互作用が重要であることが示唆された(図3B)。このことは、切除したinside-outパッチにLERAFPLペプチドのSTREX断片を塗布すると、SAKCaCの伸展感受性が顕著に抑制される一方で、LERTFPL、LGRAFPL及びLAEFRL等、他のペプチドを用いても伸展感受性は抑制されなかったとの観察結果によって裏付けられている(図4A.B)。
(STREX結合するタンパク質の単離と質量分析器を用いての同定)
伸展感受性には、STREXと未知のコンポーネントが会合することが重要であることが示唆されることから、本発明者らは、STREXペプチド及びトリ心臓抽出液を用いてインビトロ結合分析を行った。製造者マニュアルに従い、STREXペプチド(LERAFPL、LERTFPL、LGRAFPL、LAPEFRL;各1mg)を、NHS活性化HiTrapカラム(1ml)(Amersham Biosciences社製)に交差結合させた。1%NP40、25mMのトリス、プロテイナーゼインヒビター(Roche社製、complete, Mini, Protease inhibitor cocktail tablets)を含む溶解緩衝液(pH7.40)において、4℃でトリ胚心臓(生後12日(12D))をホモジェナイズし、その後、15000×g、4℃、20分間の条件下で遠心分離にかけた。上清(タンパク質1mg)を上記カラムに適用し、1%NP40、100mMのグリシンを含む溶液(pH3.0)を用いて結合したタンパク質を溶出させた。
溶出タンパク質を直ちにSDS−PAGEによって分離し、シルバー染色又はクマシーブルー染色を施し、質量分析器による分析及びin-gelタンパク質分解に供した。SDS−PAGE実験の結果、トリSTREXにおいてのみ、明確な分子量(42kDa及び50kDa)を有するバンドが認められ、マウス、ウサギ及び混合型STREXでは認められなかった(図5A、左図)。ゲル内の染色タンパク質のバンドを清潔なレーザー刃で切断し、ゲル内のタンパク質を10mMのDTTで減少させ、10mMの重炭酸アンモニウム中において100mMのヨードアセタミドで修飾した。10mMの重炭酸アンモニウム中において50%アセトニトリルでゲル片を処理し、タンパク質の染色を除去し、ゲル片を乾燥させた。乾燥したゲル片を、300ngのトリプシン(Promega社製)を含む10mMの重炭酸アンモニウムで再水和させた。かかるゲル片を一晩37℃でインキュベートし、得られたペプチドを、0.1%トリフルオロ酢酸を含む60%アセトニトリルを用いて回収した。
上記トリプシンペプチドを溶解させ、エレクトロスプレーイオン化(ESI)ソース及びMAGIC2002液体クロマトグラフィーシステム(Michrom BioResources社製)を備えたLCQイオントラップ(IT)質量分析器(ThermoFinnigan社製)にかけて分析した。質量分析データを用い、マスコットサーチエンジンを利用して、タンパク質データベースを検索した。すなわち、質量分析アプローチと配列データベース検索法を組み合わせ、トリSTREX(LERAFPL)と会合するタンパク質を分析した。スペクトラムにおけるシグナルは、ゲル中トリプシン消化によってタンパク質から産生したトリプシンペプチドに相当するものだった。測定したペプチド質量を用い、類似のトリプシンペプチド質量マップをもたらすタンパク質を求めて配列データベース(マスコットサーチエンジン;Mascot search engines)を検索した。42kDaのタンパク質はアクチンであると同定され、50kDaのタンパク質は、EF−1αであると同定された。抗EF−1α抗体を用いた免疫ブロッティングの結果、50kDaの精製タンパク質がEF−1であることがさらに確認された(図5A、右図)。
(siRNAトランスフェクション及び細胞培養)
SAKCaCの伸展感受性におけるEF−1の役割を調べるために、短い干渉RNA(siRNA)を用い、培養トリ胚心筋におけるEF−1の発現を消失させた。EF−1をコードするmRNAのコード領域と、コントロールとしての蛍ルシフェラーゼをそれぞれ標的とするsiRNAデュプレックス(duplex)における機械感受性の抑制能を調べた。EF−1(Gallus gallus elongation factor 1 alpha)cDNA配列(アクセッションナンバー:L00677)に対するトリEF−1のsiRNAは、B-Bridge International Inc.(San Jose, CA)が設計したもので、Dharmaconで合成した。実験で使用した配列は以下のとおり:5’−CCAUGUGUGUUGAGAGCUU−3’(ORF中の1226−1244ヌクレオチド)。また、標的配列の位置は、開始コドンの1番目のヌクレオチドとの関連で決定した。蛍(Photinus pyralis)ルシフェラーゼ遺伝子のsiRNAをコントロールとした。このsiRNAを、siFECTOR(B-Bridge International Inc.社製)を用いて培養トリ胚心筋細胞にトランスフェクトした。
標的タンパク質が実際に前記胚心筋細胞から除去されたことを明らかにするために、抗EF−1α抗体を用いてウエスタンブロッティングを行った。図5Bに示すように、ルシフェラーゼに対するsiRNAデュプレックスで処理したコントロール細胞の場合と比べ、EF−1αに対するsiRNAデュプレックスを用いた場合にEF−1αタンパク質の発現は顕著に減少した。アクチンの発現はsiRNA処理によって影響されなかった。
siRNA−ルシフェラーゼで処理した細胞におけるSAKCaCの伸展感受性は影響を受けなかったが、siRNA−EF−1αで処理した細胞における伸展感受性は顕著に抑制された(図5C)。
以上の結果から、SAKCaCの伸展感受性にEF−1αが重要な役割を担っていることが示唆される。
トリ心臓由来のSAKCAチャネルの推定アミノ酸配列を示し、枠内はSTREX配列を示す図である。 トリ、ヒト、マウス及びウサギの各STREXのアミノ酸配列を示す図である。黒文字は分岐を示す図である。 STREXが膜結合コンポーネントに結合することの重要性を示す図である。(A)SAKCa及びSTREX−GFPで共トランスフェクトしたCHO細胞の共焦点蛍光画像(左)及びDIC画像(右)である。(B)STREX−GFPの共存下又は不在下におけるinside-outパッチでのSAKCaの開口可能性を示す図である(−40mmHg、+10mV、n=6)。 (A)1mg/mlのSTREXペプチド(LERAFPL:−40mV)の塗布前(左)及び塗布後(右)におけるSAKCa発現CHO細胞から単離したinside-outパッチにみるチャネル活性の代表的な単一チャネルのトレースを示す図である。(B)1mg/mlのSTREXペプチド各種及び混合ペプチド配列の塗布前(コントロール)及び塗布後におけるSAKCaの開口可能性を示す(−40mmHg、+10mV、n=6)。 STREX結合タンパク質の同定を示す図である。(A)トリ胚心臓抽出液のSTREX結合タンパク質のシルバー染色(左)、及び抗EF−1αを用いたウエスタンブロッティング(右)を示す代表的な図である。(B)siRNAデュプレックスによりEF−1αが消失することを示す図である。ウエスタンブロッティングの結果、トリ胚心筋ではEF−1αが効率よく消失することが示されたが、アクチンは消失しなかった。(C)siRNAデュプレックスによりEF−1αを消失させた結果、SAKCaの伸展感受性が消失した(−40mmHg、+10mV、n=3)。

Claims (4)

  1. LERAFPLに示されるアミノ酸配列からなり、機械受容(Stretch Activated)チャネルの活性化を抑制するペプチド。
  2. 請求項1記載のペプチドと、マーカータンパク質及び/又はペプチドタグとを結合させた融合ペプチド。
  3. LERAFPLに示されるアミノ酸配列からなるペプチド又は該ペプチドをコードするDNAを有効成分とする機械受容(Stretch Activated)チャネルの活性化抑制剤。
  4. インビトロで、LERAFPLに示されるアミノ酸配列からなるペプチドと被検物質とを接触させ、その結合の程度を測定・評価することを特徴とする機械受容(Stretch Activated)チャネルの活性化抑制剤のスクリーニング方法。
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