JP4667724B2 - 光化学反応方法、液体の処理方法、および液体処理装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、光化学反応方法に関し、詳細には光化学反応と触媒を利用して液相の反応分子を分解したり、あるいは合成したりすることが可能な光化学反応方法、液体の処理方法、および液体処理装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
有害物質の処理に光エネルギーを利用する技術として、例えば以下のものが提案されている。
(1)特開2000−5562号公報(特許文献1)には、抽出処理と、吹込み処理と、紫外線照射処理とを行うことにより、土中、水中に含まれた有機塩素化合物を分解処理する方法が開示されている。
【0003】
この特許文献1は、酸化剤および/または触媒により有機塩素化合物を分解処理し、さらに紫外線の照射により処理するものである。この方法は、酸化剤と、触媒と、紫外線とを個別に作用させるものであり、触媒は必須ではなく、触媒作用と紫外線の作用との関係については何ら説明されていない。また、紫外線の作用に着目すると、有機塩素化合物を直接に光分解(紫外線酸化分解)しているため、高エネルギーかつ大エネルギーの紫外線が必要であり、エネルギー損失が大きい。
【0004】
(2)特開2002−18240号公報(特許文献2)には、真空紫外領域を含む紫外線を排ガスに照射して有害有機物を分解する光分解反応工程と、真空紫外領域を含まない紫外線を光触媒に照射して前工程を経た排ガスを光触媒に接触させて有害有機物を分解する光触媒反応工程とを行うことにより、排ガスに含まれる有害な有機化合物を無害化する処理方法が開示されている。
【0005】
この特許文献2によれば、光分解反応工程において発光効率が低く、かつ空気中での透過率が極めて低い真空紫外光を用いるため、投入したエネルギーのうち熱エネルギーとして消費される割合が高く効率が悪いうえ、1段の処理工程だけでは充分な分解効率を得ることができない。また、光触媒反応工程においては、光触媒を用いて光励起された触媒表面への有害有機物の接触反応により分解処理を行っているが、光触媒としては具体的に二酸化チタンを使用した実施例しか記載されておらず、反応は二酸化チタンの特長が利用できるものに限定されてしまい、多種多様な有害物質への適用は困難である。
【0006】
(3)特開2001−327961号公報(特許文献3)には、光触媒を用いて水中のダイオキシン類や内分泌攪乱化学物質、農薬、有機着色物質等の有機物を含む被処理水を処理する装置において、被処理水を流入させる水槽内に光触媒を担持した網状シートを設置し、紫外線を含有する光を照射して分解処理する技術が開示されている。この場合、照射光は光触媒の励起に用いられ、光触媒効果により生成したヒドロキシラジカルが有機物を分解処理する多段反応系であるため、エネルギー利用効率が低い欠点がある。
【0007】
以上示したように、光エネルギーを利用した化学反応の実用技術は多数提案されているが、これらは以下の2種類に大別することができる。
▲1▼反応分子を光エネルギーで直接光分解する方法:
この方法では、光エネルギーを利用して分子内の化学結合を切断する(すなわち、結合性軌道に存在する電子を反結合性軌道に励起させる)ため、真空紫外光などの高エネルギー光を用いる必要がある。光エネルギーだけによる結合の切断を考慮した場合には、一般に、小さいエネルギー(浅いエネルギー準位)で結合している電子よりも、大きいエネルギー(深いエネルギー準位)で結合している複数の電子を反結合性軌道へ励起することが有効であるから、当該深いエネルギー準位に束縛されている複数の電子を自由にするだけの高エネルギー、且つ、大エネルギーの光照射が必要となり、消費エネルギーが大きく、経済的に劣る。
【0008】
▲2▼光触媒を利用して反応分子を反応させる方法:
バンドギャップ以上のエネルギーを有する光を触媒に照射して励起された触媒を用いて化学反応を行う、いわゆる「光触媒」に係る化学反応プロセスである。この方法では、光エネルギーは光触媒の励起に用いられるため、化学反応によらず、光触媒を励起させるだけの一定のエネルギーを有する光が常に必要であり、エネルギー効率が低い。また、この場合励起した光触媒が水などと反応して生成されるヒドロキシラジカル、スーパーオキサイドイオンなどを媒介して反応が進行する多段反応であることが多く、触媒の光励起に必要なエネルギーは、反応に必要とされるエネルギーより大きくエネルギー効率が低い。また、現在のところ実用的な効率で利用可能な光触媒は、二酸化チタンを主としたものにほぼ限定されるため、そのエネルギーギャップに相当する光(紫外線)の照射が必須であり、可視光の利用は一般に困難であるため効率が低い。また、事実上、二酸化チタンの特性を利用したものに限定されるため、二酸化チタンのエネルギーギャップ相当以上のエネルギーを要する反応に用いることはできず、また、それ以下のエネルギーで進行する反応については、その差が無駄に消費されることとなる。
【0009】
【特許文献1】
特開2000−5562号公報
【特許文献2】
特開2002−18240号公報
【特許文献3】
特開2001−327961号公報
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、液体中に含まれる有機物等を低コストで効率良く分解、除去等する方法を提供することを課題とする。
【0011】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するため、本発明の第1の態様に係る発明は、反応分子に光化学反応を起こさせて前記反応分子を所望の生成分子に変える光化学反応方法であって、前記反応分子を前記生成分子に変える反応を進行させない範囲で該反応分子の反応性を高めるエネルギーであって、前記触媒に対しては該触媒だけで前記反応を進行させない範囲のエネルギーを有する光を照射して液体中に存在する前記反応分子を光励起させ、該光励起した反応分子に、該反応分子の当該励起状態における電子状態と前記所望の生成分子との間の活性化障壁を低減する触媒を作用させることにより、前記光照射手段から照射される前記範囲のエネルギーの光と前記触媒の両者の作用によって前記反応分子から前記生成分子を得る前記光化学反応を起こさせることを特徴とする。この第1の態様に係る光化学反応方法によれば、反応分子を光励起させることにより反応分子の反応性が高まった状態で触媒を作用させ、活性化障壁を低下させる。このように光励起状態で触媒を作用させることによって、所望の反応を容易に進行させることが可能になる。この反応に必要となる光エネルギーは、狭義の光化学反応における光分解などに比べて格段に小さくてよいため、低エネルギー、低コストで液相反応を行うことができる。
【0012】
本発明の第2の態様に係る光化学反応方法は、第1の態様において、反応分子が有機ハロゲン化合物であることを特徴とする。また、本発明の第3の態様に係る光化学反応方法は、第2の態様において、触媒が、金属酸化物を含有することを特徴とする。これらの特徴によれば、液体中に存在する環境汚染物質であるダイオキシン類等の有機ハロゲン化合物を、第1の態様による作用効果を得ながら、効率的に分解・除去等することができる。
【0013】
本発明の第4の態様に係る液体の処理方法は、第1の態様から第3の態様のいずれかの光化学反応方法を行って液体を処理することを特徴とする。この液体の処理方法では、第1の態様から第3の態様のいずれかと同様の作用効果を得ながら液体中の反応分子を反応させ、例えば分解・除去して浄化するといった処理が可能になる。
【0014】
本発明の第5の態様に係る発明は、液体中に存在する反応分子に光化学反応を起こさせて前記反応分子を所望の生成分子に変える液体処理装置であって、反応容器中に、前記反応分子を前記生成分子に変える反応を進行させない範囲で該反応分子の反応性を高めるエネルギーであって、前記触媒に対しては該触媒だけで前記反応を進行させない範囲のエネルギーを有する光を照射して該反応分子を光励起させる光照射手段を設け、前記反応容器中において液体中に存在する前記反応分子に前記エネルギーの光を照射することにより該反応分子を励起させ、励起状態の前記反応分子に前記反応容器中において該反応分子の当該励起状態における電子状態と前記所望の生成分子との間の活性化障壁を低減する触媒を作用させることにより、前記光照射手段から照射される前記範囲のエネルギーの光と前記触媒の両者の作用によって前記反応分子から前記生成分子を得る前記光化学反応を起こさせるように構成したことを特徴とする。この液体処理装置では、光照射手段と触媒反応手段とを備えているため、光化学反応を利用した液体の処理を容易に行うことができる。
【0015】
【発明の実施の形態】
本発明の光化学反応方法は、液体中に存在する反応分子に光を照射して光励起させ、該光励起した反応分子を触媒に接触させて触媒作用により反応させることにより実施される。
【0016】
<反応分子>
反応分子は、光を吸収して励起しやすい物質であることが望ましく、各種の有機化合物はこの特徴を有している。有機化合物の例としては、カルボニル化合物、アルカン、アルケン、芳香族炭化水素、共役不飽和カルボニル化合物、カルボン酸、ハロゲン化有機化合物、カルボニトリル、アルコール、エーテル、窒素含有有機物、硫黄含有有機物、リン含有有機物、ケイ素含有有機物、複素芳香族化合物、有機金属錯体等が挙げられるが、特に芳香環を有する化合物は、官能基により可視光によって励起される場合も多く、低コストな反応が期待できる。芳香族有機ハロゲン化合物としては、例えばダイオキシン類や、ハロゲン化ベンゼン類、ハロゲン化フェノール類などのダイオキシン類前駆体などに代表される1環もしくは多環の芳香族有機ハロゲン化合物が挙げられる。また、ビスフェノールAやノニルフェノールなどの内分泌攪乱物質(環境ホルモン)や、トリクロロエタンやテトラクロロエチレンなどの有機ハロゲン化合物にも有効である。
前記液体中における反応分子の存在形態は特に限定されず、例えば反応分子が溶け込んだ溶存状態のほか、反応分子が分散している懸濁状態などでもよい。
【0017】
<光照射>
光は、反応分子を光励起させ得る波長を含む光であればよく、自然光(太陽光)または人工光を利用できる。本発明において「光照射」の語は、集光や採光も含む広義に用いられる。光源としては、例えば、長時間の曝露処理が許容される場合や、低コストが要求される場合には、自然光を利用することが好ましく、また、短時間で効率的な処理が必要な場合には、反応分子を励起状態に遷移させるために必要なエネルギーを含む人工光源を用いることが可能である。人工光源としては、比較的安価なインコヒーレント光源(例えば、キセノンランプ、ハロゲンランプ、水銀ランプ、重水素ランプ、メタルハライドランプなど)と選択性の高いコヒーレント光源(例えば、エキシマレーザー、アルゴンイオンレーザー、ルビーレーザー、半導体レーザーなど)等から適宜選択することができる。例えば、反応分子がダイオキシン類の場合には、紫外域に吸収端があることから水銀ランプなどの紫外光源が有効である。
【0018】
反応分子を光励起させ得る波長は、反応分子の状態に固有であり、例えば反応分子が、塩素のないダイオキシンである場合は350nm、4塩素価ダイオキシン類である場合には300nm、8塩素価ダイオキシン類である場合には400nm、クロロホルム・四塩化炭素では170nm、低級アルコール類では180nm、アルデヒド類では300nm前後、ナフタレン・ピレン・フェナントレン等の縮合多環式芳香族では300〜400nm、インジゴでは620nm、エオシンでは520nm、βカロテンでは480nm、クロロフィルaでは660nm、亜鉛フタロシアニン・銅フタロシアニン・フタロシアニンでは700nm、マラカイトグリーンでは620nm、メチレンブルーでは660nm、青色色素1号の場合には、630nm付近、アントラセンの場合は400nm付近、2,4,5−トリクロロフェノールの場合は350nm付近などである。なお、本発明方法では、少なくとも反応分子を光励起させ得る波長の光を照射すればよいため、反応分子のみを光励起させ、かつ触媒を光励起させない波長の光を用いることも可能である。
【0019】
光の照射時間、光度などの条件は、反応分子、反応時間、温度などの条件に応じて適宜設定できる。
【0020】
<光化学反応>
光化学反応は、反応分子が光を吸収したときにおこる化学反応の総称であり、本発明では、光エネルギーを反応分子の励起に用いるが、光エネルギーだけで反応分子の分解等の反応が完結するのではなく、併せて、後述するように触媒作用を利用する。従って、反応分子の励起は基本的に1電子励起で済み、通常の光化学反応のように反応分子を完全に光分解する場合に比べて低エネルギーの光で反応を進行させることが可能となる。また、照射光は、個々の反応分子の励起に必要十分なエネルギーがあればよいため、光触媒の場合に比べて原理的に無駄に消費されるエネルギーを削減することができる。
【0021】
光化学反応は、結合の開裂、異性化(転位)、付加環化、閉環・開環、付加・置換、酸化・還元などの各種の反応に適用可能であるが、特に反応分子が芳香族有機ハロゲン化合物である場合の脱ハロゲン、酸化分解には有効に作用する。これは、基底状態では結合性軌道にあった電子が反結合性軌道に励起された結果、炭素・ハロゲン間および芳香族環内の特定の炭素・炭素間の結合が弱くなり、分解反応性が著しく向上するためと考えられる。
【0022】
<触媒>
本発明に用いる触媒は、励起した反応分子の電子状態と生成分子の間の活性化障壁を低減する効果のある物質であれば、何ら限定されるものではない。例えば、有機塩素化合物の分解には、固体金属酸化物触媒が有効である。また、触媒は光触媒である必要はない。
【0023】
好ましい触媒の具体例として、Mg、Al、Si、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Zr、Nb、Ru、Rh、Pd、Ag、Ta、W、Re、Os、Ir、Pt、Au等の金属、またはこれらの金属の金属酸化物や複合金属酸化物を挙げることができる。ここで、金属酸化物としては、例えば、酸化マグネシウム、酸化アルミニウム、酸化シリコン、酸化チタン、酸化バナジウム、酸化クロム、酸化マンガン、酸化鉄、酸化コバルト、酸化ニッケル、酸化銅、酸化亜鉛、酸化ジルコニア、酸化ニオブ、酸化銀、酸化タリウム、酸化タングステンなどを、また、複合酸化物としては、例えば、チタンと、シリコン、アルミニウム、白金、ルテニウム、ニオブ、タンタル、ストロンチウム、バリウム、ナトリウム、カリウム、タングステン、ビスマス、セリウム、アンチモン、インジウム、イットリウム、ガリウムなどとの多成分複合系などを挙げることができる。
【0024】
触媒は、例えば任意の担持体に支持された状態で使用することが可能であり、固定式でもよく、液体中に金属酸化物などの工業用触媒を添加したり、あるいは、液体通路となる反応容器の内表面自体を触媒作用を持つ物質で形成することも可能である。また、触媒を粉粒状にして添加し、液体とともに流通させ別途回収手段により回収する方式でもよい。触媒の添加量は、光源、反応分子、反応時間、温度などの条件に応じて適宜設定できる。光励起状態の反応分子に触媒を接触させることによって、活性化障壁が低下するため、反応分子の分解等の反応が進行する。この際、反応を有利に進めるために、液体を例えば50〜100℃程度に加熱することもできる。反応場に熱エネルギーを供給することによって、反応分子が励起しやすくなるとともに、触媒活性も向上させることができる。
【0025】
本発明の光化学反応方法は、特にダイオキシン等の有害物質で汚染された廃水、地下水等の液体の処理に有効に利用できる。本発明の液体処理方法において、処理対象となる液体の内容に制限はないが、例えば河川の水や地下水、工業排水、生活排水などの水を主な対象とすることができる。また、ダイオキシン類等の有害物質によって汚染された土壌や灰などから、該有害物質を液相に抽出した液体を対象とすることもできる。
【0026】
<液体処理装置>
本発明の液体処理装置は、液体中に存在する反応分子に、該反応分子を光励起させ得る光を照射する光照射手段と、前記反応分子に前記触媒を接触させて触媒作用により反応させる触媒反応手段と、を備えている。
【0027】
光照射手段は、人工光源のほか、自然光を集光もしくは採光する設備が含まれる。集光設備としては、例えば反射板などが挙げられ、採光設備としては、例えば太陽光を非選択的あるいは特定の波長の光のみを選択的に透過させる光透過板などを挙げることができる。本発明では、反応分子と触媒の種類に応じ、自然光をそのまま照射することもできるが、目的とする反応分子に固有の波長のみを照射することにより、液体中に含まれる多数の化合物の中の反応分子のみを選択的に反応させることも可能である。
【0028】
触媒反応手段は、液体と触媒とを収容する反応容器により構成される。光照射による反応分子の光励起状態は、一般に極めて短時間であるため、反応容器中では、液体と触媒とを効率よく接触させることが好ましい。この目的のため、液体処理装置には、液体に対流を生じさせ得る攪拌装置や水流形成装置(例えば、水流ポンプ)等を設けることができる。なお、反応容器は特に限定されるものではなく、個別の事情により全長数m以上の大型リアクターから数〜数十mm以下のマイクロリアクターまで適宜選択して設計することができる。
【0029】
次に、図面に基づき本発明の液体処理方法を利用した液体処理装置について説明する。
図1は、液体処理装置の一実施形態に係る排水処理装置100の構成を概念的に説明する図面である。この排水処理装置100は、光照射手段としての採光部10と、触媒反応手段としての反応容器内に形成された反応部20と、さらに図示しない排水入口と排水出口とを備えている。
【0030】
採光部10は、自然光のうち、特定の波長の光(例えば紫外線)のみを選択的に透過させる光透過板を備え、液体としての排水中に存在する反応分子としての有害物質40に対し、該有害物質40を光励起させ、かつ触媒30を光励起させない波長の光を照射するように作用する。これにより、有害物質40は光励起する。
【0031】
反応部20は、光励起状態の有害物質40’と触媒30とを接触させて触媒作用により反応(ここでは分解反応)を生じさせ、反応生成物50が生成する。必要に応じて図示しない排水出口からの排水を、排水入口に循環させることにより、有害物質40から反応生成物50への転換をより確実にすることもできる。
【0032】
排水処理装置100は、自然光を利用するために採光部10を設けているが、人工光源を利用することも可能である。また、例えば、反応部20に臨むように、異なる波長の光を照射可能な複数の人工光源を配備し、異なる種類の有害物質40を同時に処理したり、あるいは有害物質の分解に応じて段階的に反応場を移動させて順次処理したりすることもできる。さらに、排水処理装置100を直列的に連続配置し、第1の排水処理装置で生成した第一次反応生成物に対し、これを励起させ得る波長の光を第2の排水処理装置で照射して励起させ、相応の触媒によって触媒反応を行うことにより第2次反応生成物に変化させる、という処理過程を順次行うことによって、有害物質を順次変化させ、最終的に無害な物質まで分解させる処理も可能である。
【0033】
【作用】
光化学反応と触媒作用を利用した本発明光化学方法の反応機構は、以下のように考えれば合理的な説明が可能となる。
本発明では、反応分子を励起するのに充分なエネルギーを有する光を反応分子に照射することにより、反応分子は結合性軌道に電子が充満し強固な結合を形成している基底状態から、一部の電子が励起(結合性軌道の一部の電子がエネルギーを得てより反応性の高い反結合性軌道へ移動する)され、分子全体が不安定な状態に変化する。この不安定な状態に励起された反応分子は、基底状態の分子に比べて反応性が高いので、基底状態の分子に比べて低エネルギーで反応が進む上、触媒を媒介することで活性化障壁を低下させることができるため、反応をより有利に進めることが可能となる。
【0034】
図2は、本発明の反応機構を説明する原理図である。通常の化学反応(図2中、点線で示す)では、反応分子が障壁を超えて生成分子となるには、E1の活性化エネルギーを必要とする。すなわち、E1に相当するエネルギーが供給されなければ反応が進行しないので、反応速度が遅く、反応を促進するために高エネルギーを要する。
【0035】
一方、本発明における光化学反応方法(図2中、実線で示す)では、反応分子を励起させ得るだけのエネルギーを有する光を照射することによって、反応分子を励起状態にするため、反応分子自体の内部エネルギーを高めて反応性を高める。さらに、この励起状態にある反応分子を触媒に接触させることによって、活性化障壁を下げる。すなわち、前記E1よりも小さいE2の活性化エネルギーを有する新たな反応経路を構成させる。このように、通常の化学反応より小さい活性化障壁となるため、反応が進行しやすいとともに、反応の効率が高く、省エネルギーである。
【0036】
この際の化学反応は、基底状態の触媒反応とは全く異なる反応機構となること(電子授受の方向が逆転する)からも、さらに好適な光源の選定、好適な触媒種の選定、温度、圧力・共存物質等の反応条件の選定、光照射装置、触媒反応容器等の装置の好適設計により広範囲な応用が可能である。
【0037】
【実施例】
次に、実施例、試験例により、本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらによって制約されるものではない。
反応分子の例として、青色色素一号(東京化成製;型番F−0147。630nm付近の光で励起される)、アントラセン(和光純薬製;型番011−09855。400nm付近の光で励起される)、2,4,5−トリクロロフェノール(和光純薬製;型番500−34441。350nm付近の光で励起される)を用い、触媒上の反応分子に光を照射した場合と、比較のため触媒がない状態で反応分子に光を照射した場合と、触媒上の反応分子に光を照射せずにおいた場合の分解反応の比較を行った。触媒には酸化ケイ素(富士シリシア製;型番CARiACT−Q30。およそ200nm以下の光で励起される)、酸化ジルコニウム(第一稀元素化学工業製;RC100。およそ250nm以下の光で励起される)を用い、光源にはブラックライト(ニッポ電気製;型番FL15BLB。15W。発光波長300〜400nm)を用いた。光源に用いたブラックライトからの光は、反応分子の励起には充分なエネルギーであるが、触媒の励起には不十分なエネルギー範囲のものである。
【0038】
実施例1
青色色素一号0.5gを1000ccの蒸留水に溶解させ、触媒としての酸化ケイ素10gにホールピペットで一定量滴下し、充分攪拌して試料を調製した。この試料を暗室中に用意した光源の真下1cmに24時間静置した後、GC−MSで定量分析することにより分解率を評価した。
【0039】
比較例1
光照射を実施しなかった以外は、上記実施例1と同様にして試験を行った。
【0040】
実施例2
触媒として酸化ケイ素に替えて酸化ジルコニウムを使用した以外は実施例1と同様にして試験を行った。
【0041】
比較例2
光照射を実施しなかった以外は、上記実施例2と同様にして試験を行った。
【0042】
比較例3
触媒を使用しなかった以外は、上記実施例2と同様にして試験を行った。
【0043】
比較例4
触媒を使用しなかったこと、および光照射を実施しなかったこと以外は、上記実施例2と同様にして試験を行った。
【0044】
実施例3
青色色素一号に替えて、アントラセンを濃度100ppmのアセトン水混合溶液として試料を調製した以外は、実施例2と同様にして試験を行った。
【0045】
比較例5
光照射を実施しなかった以外は、上記実施例3と同様にして試験を行った。
【0046】
比較例6
触媒を使用しなかった以外は、上記実施例3と同様にして試験を行った。
【0047】
比較例7
触媒を使用しなかったこと、および光照射を実施しなかったこと以外は、上記実施例3と同様にして試験を行った。
【0048】
実施例4
青色色素一号に替えて、2,4,5−トリクロロフェノールを濃度100ppmのアセトン水混合溶液として試料を調製した以外は、上記実施例2と同様にして試験を行った。
【0049】
比較例8
光照射を実施しなかった以外は、上記実施例4と同様にして試験を行った。
【0050】
比較例9
触媒を使用しなかった以外は、上記実施例4と同様にして試験を行った。
【0051】
比較例10
触媒を使用しなかったこと、および光照射を実施しなかったこと以外は、上記実施例4と同様にして試験を行った。
【0052】
【表1】
【0053】
表1から、以下の知見が得られる。
(1)実施例1〜実施例4から、光照射を行い、かつ触媒を作用させることによって、何もしない状態(比較例4、比較例7、比較例10)に比べ、青色色素、アントラセン、2,4,5−トリクロロフェノールのいずれにおいても格段に分解反応が進行していることが判る。これらの実施例で照射した光は、使用した触媒を励起させるには不十分なエネルギー範囲のものであることから、生じた分解反応は、いわゆる光触媒反応とは区別できることが判る。
【0054】
なお、実施例3のアントラセンについては、その一部がヘプタノール等の脂肪族化合物に転換しており、芳香環の開環反応、酸化分解反応が進行していることを確認している。
【0055】
(2)比較例1、比較例2、比較例5、比較例8から、触媒が存在しても、光照射が行われないと、分解が進まないことが判る。
【0056】
(3)比較例3、比較例6、比較例9から、光照射を行っても、触媒が存在しない場合には分解が進まないことが判る。このことより、実施例1〜実施例4の反応は、従来の光分解反応とは異なることが確認された。
【0057】
以上の結果から、反応分子を直接光分解するような高エネルギーの光照射を行うことなく、触媒を用いることで反応分子の吸収波長程度の光エネルギーで反応が進行することが判った。また、光触媒のように触媒を励起しなくても反応分子の励起により反応が進行することも示された。
【0058】
以上、本発明を種々の実施形態に関して述べたが、本発明は上記実施形態に制約されるものではなく、特許請求の範囲に記載された発明の範囲内で、他の実施形態についても適用可能である。
【0059】
【発明の効果】
本発明によれば、液相の反応分子を光励起して反応分子の反応性を高めるとともに、触媒作用により反応の活性化障壁を下げることにより、触媒を用いた光化学反応による化合物の合成・分解、例えば、金属酸化物触媒を用いた光化学反応による有機化合物の分解、さらに詳しくは、ダイオキシン類や環境ホルモンなど含有する汚染水や、有機物を含有する工業排水、農業排水等の処理を、低コスト・高効率で行うことが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【図1】液体処理装置の概要を示す模式図。
【図2】光化学反応方法の原理を説明する図面。
【符号の説明】
10 採光部
20 反応部
30 触媒
40 有害物質
50 反応生成物
Claims (5)
- 反応分子に光化学反応を起こさせて前記反応分子を所望の生成分子に変える光化学反応方法であって、
前記反応分子を前記生成分子に変える反応を進行させない範囲で該反応分子の反応性を高めるエネルギーであって、前記触媒に対しては該触媒だけで前記反応を進行させない範囲のエネルギーを有する光を照射して液体中に存在する前記反応分子を光励起させ、
該光励起した反応分子に、該反応分子の当該励起状態における電子状態と前記所望の生成分子との間の活性化障壁を低減する触媒を作用させることにより、
前記光照射手段から照射される前記範囲のエネルギーの光と前記触媒の両者の作用によって前記反応分子から前記生成分子を得る前記光化学反応を起こさせることを特徴とする、光化学反応方法。 - 請求項1に記載された光化学反応方法において、前記反応分子は、有機ハロゲン化合物であることを特徴とする、光化学反応方法。
- 請求項2に記載された光化学反応方法において、前記触媒は、金属酸化物を含有することを特徴とする、光化学反応方法。
- 請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の光化学反応方法を行って液体を処理することを特徴とする、液体の処理方法。
- 液体中に存在する反応分子に光化学反応を起こさせて前記反応分子を所望の生成分子に変える液体処理装置であって、
反応容器中に、前記反応分子を前記生成分子に変える反応を進行させない範囲で該反応分子の反応性を高めるエネルギーであって、前記触媒に対しては該触媒だけで前記反応を進行させない範囲のエネルギーを有する光を照射して該反応分子を光励起させる光照射手段を設け、前記反応容器中において液体中に存在する前記反応分子に前記エネルギーの光を照射することにより該反応分子を励起させ、
励起状態の前記反応分子に前記反応容器中において該反応分子の当該励起状態における電子状態と前記所望の生成分子との間の活性化障壁を低減する触媒を作用させることにより、
前記光照射手段から照射される前記範囲のエネルギーの光と前記触媒の両者の作用によって前記反応分子から前記生成分子を得る前記光化学反応を起こさせるように構成したことを特徴とする、液体処理装置。
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